JP4121867B2 - 中空構造物の中空室遮断具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡性基材を外部加熱により発泡膨張させて発泡体とすることで中空構造物の中空室内を遮断する中空室遮断具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両ボディの中空パネル(ピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等)のような中空構造物の中空室内を発泡体で遮断し、その中空構造物の制振、防音等の効果を高めるために用いられる中空室遮断具として、例えば、[特許文献1]に開示された中空構造物の中空室遮断具が知られている。
【0003】
[特許文献1]に開示された中空室遮断具によれば、外部加熱により発泡膨張して発泡体となる発泡性基材と、その発泡性基材を中空室内に保持するためのホルダプレートとがそれぞれ中空室の断面に対応して形成されている。ホルダプレートの外周縁部と中空室の内壁面との間にはほぼ一定の隙間が確保されており、発泡性基材が外部加熱により発泡膨張した後は、中空構造物の中空室内が発泡体によってほぼ隙間無く遮断される。
また、[特許文献1]には、発泡性基材を2枚のホルダプレートで挟む中空室遮断具、及び、発泡性基材の片側面だけを1枚のホルダプレートで支持する中空室遮断具、の2つのタイプの中空室遮断具が開示されている。発泡性基材を2枚のホルダプレートで挟む中空室遮断具によれば、発泡性基材の発泡方向を中空室の内壁面に向けて重点的に規制することができるので、中空室の断面を発泡体によってより確実に遮断することができる。一方、発泡性基材の片側面だけを1枚のホルダプレートで支持する中空室遮断具によれば、ホルダプレートを1枚しか必要としないので、中空室遮断具の軽量化、コストダウンなどを図ることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−79845号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発泡性基材の片側面だけを1枚のホルダプレートで支持する中空室遮断具によれば、例えば中空室の断面形状が複雑である場合、中空室の断面の隅々まで十分に発泡体が行き渡らずに未充填の部分が生じるおそれがある。その一方、発泡性基材の両面の全範囲を2枚のホルダプレートで挟む中空室遮断具を用いた場合は、軽量化やコストダウンをほとんど図ることができない。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量化やコストダウンを図りつつ、中空構造物の中空室の断面形状が複雑である場合でも未充填の部分が生じないようにする中空構造物の中空室遮断具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、中空構造物の中空室内に配設されるホルダ体と、そのホルダ体によって支持されかつ加熱により発泡し発泡体となることで前記中空室を遮断する発泡性基材と、を備えている。前記ホルダ体は、前記中空室の長手方向に略直交する方向に設けられて前記発泡性基材の片側面を支持する第1のホルダプレートと、前記発泡性基材の一部の範囲を前記第1のホルダプレートとの間で挟む第2のホルダプレートと、を有している。ここで、「前記発泡性基材の一部の範囲」とあるのは、第1のホルダプレートによって片側面が支持されている発泡性基材の反対面のうち、その反対面の全部の範囲を第1のホルダプレートとの間で挟むのでなく、その反対面の一部の範囲のみを第1のホルダプレートとの間で挟む、という意味である。つまり、発泡性基材は、第1のホルダプレートによって片側面だけを支持される部分もあるし、第1及び第2のホルダプレートによって両側面から挟まれる部分もある、ということである。
このような構成により、請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、中空室の長手方向に略直交する断面を見たときに、例えば発泡体が行き渡りにくい複雑な部分に対しては発泡性基材を2枚のホルダプレートで挟み、その他の部分に対しては発泡性基材の片側面のみを1枚のホルダプレートで支持することができる。つまり、発泡性基材の発泡方向を中空室の内壁面に向けてより規制したい範囲においてのみ、その発泡性基材を2枚のホルダプレートで挟むことができる。これにより、中空室遮断具の全体としての軽量化やコストダウンを図りつつ、中空室の断面形状が複雑な場合でも隅々まで発泡体を行き渡らせることが可能になる。
【0008】
請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、第1のホルダプレートは、中空室の長手方向に略直交する断面に対応した形状に形成されており、第2のホルダプレートは、前記断面の周縁部において充填困難な領域に対応して設けられている。ここで、「中空室の長手方向に略直交する断面に対応した形状」とあるのは、中空室の内壁面との間にほぼ一定の隙間が生じるような、その中空室の断面にほぼ相似する形状、という意味である。また、「充填困難な領域」とあるのは、中空室の断面形状が複雑であるために発泡体が十分に行き渡りにくい領域や、車両の内装品(例えばサンバイザ等)を取付けるための取付孔が設けられているために発泡体を充填することが困難な領域などのことを指している。
このような構成により、請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、中空室の断面の周縁部において充填困難な領域、すなわち、中空室の内壁面までの奥行きがあるために発泡体が十分に行き渡りにくい領域や、発泡体で埋めてはいけない取付孔が設けられているために発泡体を充填することが困難な領域においてのみ、発泡性基材を2枚のホルダプレートで挟むことができる。これにより、中空室遮断具の全体としての軽量化やコストダウンを図りつつ、中空室の断面形状が複雑な場合でも隅々まで発泡体を行き渡らせることが可能であり、かつ、内装品等を取り付けるために設けられた取付孔を発泡体で塞ぐのを防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本実施の形態における中空室遮断具1は、例えば車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等の中空構造物の中空室内を発泡体で遮断し、その中空構造物の制振、防音等の効果を高めるための装置である。ここで、図1は、第1のホルダプレート2a及び第2のホルダプレート2bにより構成されるホルダ体2、及びそのホルダ体2によって中空構造物の中空室内に保持される発泡性基材3を示す斜視図である。図2は、第1のホルダプレート2a及び第2のホルダプレート2bの間に発泡性基材3を配置した状態の中空室遮断具1を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、ホルダ体2は、中空構造物の中空室の断面に対応した形状を有する第1のホルダプレート2aと、その第1のホルダプレート2aとほぼ水平に配設される第2のホルダプレート2bと、を備えている。第1及び第2のホルダプレート2a,2bは、耐熱性の熱可塑性合成樹脂(例えば66ナイロンまたは6ナイロン・ポリプロピレン等)が板状に射出成形されたものであり、板状の連結リブ4を介して一体状に連結されている。
【0011】
また、図1及び図2に示すように、第1のホルダプレート2aの略中央部には、上方に向けて段差状に突出した凸部5が形成され、この凸部5の外周側面に沿って略環状に形成された発泡性基材3が嵌め込まれるようになっている。この発泡性基材3を嵌め込む際には、まず、発泡性基材3の左上部に相当する突出部3aを第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間に挿入する。発泡性基材3の突出部3aには、第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間を連結する連結リブ4が嵌め込まれる嵌込溝9が形成されており、突出部3aを第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間の深い位置まで挿入することができるようになっている。
【0012】
発泡性基材3は、外部加熱により発泡する発泡剤を混入した合成樹脂系の発泡性材料により形成されるが、特に、金属面や合成樹脂面に対し接着性を有する合成樹脂を主成分とし、これにガラス繊維のような繊維状物質等が混合され、車両ボディの焼き付け塗装の際の熱(例えば、110℃〜190℃前後の温度)等によって発泡し発泡体となる発泡性材料を用いるのが好ましい。このような接着性を有する発泡性材料としては、例えば、特開平9−176356号公報等に開示されたものが知られている。
なお、本実施の形態では、略環状に射出形成された発泡性基材3を予め準備し、この発泡性基材3を第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間に挿入する例を示しているが、このような態様に限るものではない。例えば、第1及び第2のホルダプレート2a,2bを予め成形しておき、この第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間に発泡性基材3をインサート成形により設けるようにしてもよい。
【0013】
また、図1及び図2に示すように、ホルダ体2の下端部には、中空構造物の中空室内に中空室遮断具1を取り付けるための取付用クリップ30が一体状に設けられている。この取付用クリップ30は、板状に形成された台座部31と、その台座部31から突出して設けられる脚部32と、その脚部32の先端から左右に延出して設けられる弾性係止片33とを一体状に備えて構成されている。弾性係止片33が中空構造物のパネル面に設けられた取付孔の孔縁部に弾性的に係合することにより、中空構造物の中空室内に中空室遮断具1が略垂直に取り付けられる。
【0014】
次に、上記のように構成される中空室遮断具1が中空構造物20の中空室23内に配設される態様を、図3〜図7を参照しながら説明する。
ここで、図3は、中空構造物20の中空室23内に中空室遮断具1が配設されている状態を示す正面図である。図4は、図3に示す中空室遮断具1のA−A線に対応する断面図である。図5は、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体25になった後における中空室遮断具1のA−A線に対応する断面図である。図6は、図3に示す中空室遮断具1のB−B線に対応する断面図である。図7は、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体25になった後における中空室遮断具1のB−B線に対応する断面図である。
図3〜図7に示すように、中空構造物20は、インナパネル21とアウタパネル22とが互いのフランジ部21f,22fにおいてスポット溶接されて筒状とされた構造物であり、その内部に構成された中空室23の断面形状は略四角形でありかつその周縁部の左上部において極端に突出した突出領域23aを有する複雑な(いびつな)形状を有している。
【0015】
図3に示すように、第1のホルダプレート2aは、中空室23の断面に対応した(ほぼ相似した)形状を有しており、また、第1のホルダプレート2a大きさは、中空室23の内壁面との間に所定の隙間(中空室23の内壁面に電着塗装液等の塗料を通過させることができる程度の隙間)が生じる寸法に設定されている。
例えば、中空構造物20が車両ボディを構成するパネルである場合、その車両ボディが完成すると焼付け塗装が施される。その焼付け塗装の際の外部加熱によって、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体25になる。
【0016】
図3〜図7に示すように、第2のホルダプレート2bは、第1のホルダプレート2aによって片側面6aを支持される発泡性基材3の一部の範囲を、前記第1のホルダプレート2aとの間において挟むようにして配設される。
すなわち、第1のホルダプレート2aは、中空室23の長手方向に対して略直交する方向に配設されるとともに、中空室23内において発泡性基材3の片側面6aを支持している。第2のホルダプレート2bは、第1のホルダプレート2aによって支持されている発泡性基材3の反対面6bのうち、その反対面6bの一部の範囲のみを第1のホルダプレート2aとの間で挟むように配設されている。つまり、図3に示すように、発泡性基材3は、中空室23の略中央の領域においては第1のホルダプレート2aによって片側面6aだけを支持されており、中空室23の左上部に突出した突出領域23aにおいては第1のホルダプレート2a及び第2のホルダプレート2bによって両側面から挟まれている。
【0017】
図5及び図7に示すように、発泡性基材3が外部加熱により発泡膨張すると、発泡体25が中空構造物20の内壁面に追従して密着し、中空室23をほぼ隙間なく遮断する。
中空室23の左上部に突出した突出領域23aにおいては、発泡性基材3の両側面が第1のホルダプレート2a及び第2のホルダプレート2bによって挟まれているので、その発泡方向が中空室23の内壁面に向かうように規制される。つまり、中空室23の内壁面までの奥行きがあるために発泡体25が行き渡りにくい突出領域23aでは、発泡性基材3を2枚のホルダプレート(第1及び第2のホルダプレート2a,2b)で挟み、その他の部分では、発泡性基材3の片側面6aのみを1枚のホルダプレート(第1のホルダプレート2a)で支持するので、中空室遮断具1の全体としての軽量化やコストダウンを図りつつ、中空室23の隅々まで発泡体25を行き渡らせることが可能になっている。
中空構造物20の中空室23の断面が発泡体25によって隙間なく遮断されると、中空構造物20の制振、防音等の効果が高められる。
【0018】
また、中空室23の突出領域23aでは、発泡性基材3が第1及び第2のホルダプレート2a,2bによって挟まれているので、発泡性基材3の発泡方向を中空室23の内壁面に向けてコントロールすることができる。したがって、例えば、図6,図7に示すように、インナパネル21に対して車両の内装品(例えばサンバイザ、アシストグリップ等)を取り付けるための取付孔24が設けられている場合に、発泡性基材3の発泡方向がこの取付孔24に向かわないようにコントロールすることができる。これにより、取付孔24が発泡体25によって塞がれてしまうのを防止できるという効果がある。
【0019】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
上記実施の形態では、第1及び第2のホルダプレート2a,2bが連結リブ4を介して一体に連結されている例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、図8に示すように、第1及び第2のホルダプレート2a,2bが、側縁部に設けられたヒンジ部7を介して一体にかつ開閉可能に結合され、第1及び第2のホルダプレート2a,2bをそのヒンジ部7を基点として閉じることで発泡性基材3を間に挟むようにしてもよい。あるいは、加熱等により流動化させた発泡性基材3に対してホルダ体2をインサート成形により一体状に結合し、これによってヒンジ部7により結合された第1及び第2のホルダプレート2a,2bの間に発泡性基材3を配設するようにしてもよい。
また、第1及び第2のホルダプレート2a,2bを発泡性基材3を間に挟んだ状態で組み付ける手段としては、その他にも、一方のホルダプレートに一体状に設けた樹脂クリップを用いたり、あるいは、第1及び第2のホルダプレート2a,2bの周囲にステッチャー・針金等を巻き付けるようにしてもよい。
【0020】
また、上記実施の形態では、第1及び第2のホルダプレート2a、2bが耐熱性の熱可塑性合成樹脂によって形成されている例を示したが、その他の材料、例えば、剛性を有する厚紙、木質系ハードボード、鉄板等の金属製プレートによって形成される場合であっても本発明を適用することができる。
【0021】
また、中空構造物20の中空室23の断面形状は、上記実施の形態で示したものに限定するものではない。
また、上記実施の形態では、中空構造物20が車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル等である場合を例示したが、これに限るものではなく、車両のボディ以外、例えば、建築物、船舶等の建造物等を構成する中空構造物に対しても本発明を適用できる。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、軽量化やコストダウンを図りつつ、中空構造物の中空室の断面形状が複雑である場合でも未充填の部分が生じないようにする中空構造物の中空室遮断具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1のホルダプレート及び第2のホルダプレートにより構成されるホルダ体、及びそのホルダ体によって中空構造物の中空室内に保持される発泡性基材を示す斜視図である。
【図2】第1のホルダプレート及び第2のホルダプレートの間に発泡性基材を配置した状態の中空室遮断具を示す斜視図である。
【図3】中空構造物の中空室内に中空室遮断具が配設されている状態を示す正面図である。
【図4】図3に示す中空室遮断具のA−A線に対応する断面図である。
【図5】発泡性基材が発泡膨張して発泡体になった後における中空室遮断具のA−A線に対応する断面図である。
【図6】図3に示す中空室遮断具のB−B線に対応する断面図である。
【図7】発泡性基材が発泡膨張して発泡体になった後における中空室遮断具のB−B線に対応する断面図である。
【図8】第1及び第2のホルダプレートが、側縁部に設けられたヒンジ部を介して結合されている別実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 中空室遮断具
2a 第1のホルダプレート
2b 第2のホルダプレート
2 ホルダ体
3 発泡性基材
3a 突出部
4 連結リブ
6a 片側面
6b 反対面
7 ヒンジ部
20 中空構造物
23 中空室
23a 突出領域
24 取付孔
25 発泡体
30 取付用クリップ
Claims (2)
- 中空構造物の中空室内に配設されるホルダ体と、そのホルダ体によって支持されかつ加熱により発泡し発泡体となることで前記中空室を遮断する発泡性基材と、を備える中空構造物の中空室遮断具であって、
前記ホルダ体は、前記中空室の長手方向に略直交する方向に設けられて前記発泡性基材の片側面を支持する第1のホルダプレートと、前記発泡性基材の一部の範囲を前記第1のホルダプレートとの間で挟む第2のホルダプレートと、を有していることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。 - 請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
第1のホルダプレートは、中空室の長手方向に略直交する断面に対応した形状に形成されており、
第2のホルダプレートは、前記断面の周縁部において充填困難な領域に対応して設けられていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
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