JP3989851B2 - 中空構造物の中空室遮断具 - Google Patents

中空構造物の中空室遮断具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡性基材を外部加熱により発泡膨張させて発泡体とすることで中空構造物の中空室を遮断する中空室遮断具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両ボディの中空パネル(ピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等)のような中空構造物の中空室内を発泡体で遮断し、その中空構造物の制振、補強、防音等の効果を高めるために用いられる中空室遮断具として、例えば、[特許文献1]に開示された中空構造物の中空室遮断具が知られている。
[特許文献1]に開示された中空室遮断具によれば、外部加熱により発泡膨張して発泡体となる発泡性基材と、その発泡性基材を中空室内に保持するためのホルダプレートとがそれぞれ中空室の断面に対応して形成されている。ホルダプレートの外周縁と中空室の内壁面との間にはほぼ一定の隙間が確保されており、発泡性基材が外部加熱により発泡膨張した場合には、中空構造物の中空室内が発泡体によってほぼ隙間無く遮断される。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−79845号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の中空構造物の中空室遮断具によれば、発泡性基材及びホルダプレートを中空室の断面に対応した形状に成形する必要がある。この場合、中空室の断面形状が種々異なる毎に、発泡性基材及びホルダプレートを製造するための射出成形用の金型等を準備しなければならず、コスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みて創案されたものであり、中空構造物の中空室の形状が種々異なる場合でも安価かつ容易に製造できる中空構造物の中空室遮断具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、中空室内に配設される一対のホルダプレートと、その一対のホルダプレートの間に保持されかつ加熱により発泡し発泡体となることで前記中空室を遮断する粒状の発泡性基材とを備えている。前記一対のホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートの対向面側には、前記発泡性基材を保持する保持領域を構成するための外周側壁部が設けられている。前記発泡性基材が外部加熱により発泡膨張すると、外周側壁部が発泡圧を受けて外側に向けて倒れるようになっている。したがって、例えば、一対のホルダプレートが中空室の長手方向に対して略垂直に配設された場合には、発泡体の進行方向が中空室の内壁面へ向けて規制されるので、中空構造物の中空室内をほぼ隙間無く遮断することができる。
また、請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、中空室の断面に対応した一対のホルダプレートを準備し、その一対のホルダプレートの間に構成される保持領域の内部に粒状の発泡性基材を収容するだけで中空室遮断具を構成することができる。つまり、発泡性基材の形状を中空室の断面に対応した形状にわざわざ成形する必要がないので、発泡性基材を成形するための射出成形用の金型等を準備する必要がなくなるというメリットがある。
【0007】
請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、外周側壁部は、薄肉ヒンジ部を介してホルダプレートに対して一体状に設けられている。これにより、発泡体の発泡圧を受けて外周側壁部が外側に向けて倒れた場合でも、その倒れた外周側壁部が中空室内に落下して異音を発生させる等の不具合が防止される。
【0008】
請求項3に記載の中空構造物の中空室遮断具によれば、一対のホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートの対向面側には、発泡性基材を保持するための保持領域を複数に分割する分割リブが設けられている。これにより、粒状の発泡性基材を偏在させることなく保持領域に収容することができるので、中空室内において発泡体をまんべんなく充填することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本実施の形態における中空室遮断具1は、例えば車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等の中空構造物の中空室内を発泡体で遮断し、その中空構造物の制振、防音、補強等の効果を高めるための装置である。ここで、図1は、本実施の形態における中空室遮断具1の組み立て前の構造を示す斜視図である。また、図2は、中空室遮断具1の組み立て後の完成状態を示す斜視図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、中空室遮断具1は、略台形の板状に成形された一対のホルダプレート2a,2bと、その一対のホルダプレート2a,2bの間に保持される粒状の発泡性基材3とを備えている。
一対のホルダプレート2a、2bは、耐熱性の熱可塑性合成樹脂(例えばポリプロピレン等)が板状に射出成形されたものが用いられている。一方のホルダプレート2aの片側面には、組付け用のクリップ4a,4bが一体状に設けられている。他方のホルダプレート2bには、クリップ4a、4bがそれぞれ挿通される挿通孔5a,5bが設けられている。クリップ4a,4bが挿通孔5a,5bにそれぞれ挿通されてその孔縁部に弾性的に係合し、これにより、一対のホルダプレート2a,2bが発泡性基材3を間に保持した状態で組み付けられる。
【0011】
図1に示すように、一方のホルダプレート2aの表裏両面のうち他方のホルダプレート2bに向かい合う対向面には、クリップ4a,4bの周囲を取り囲むようにして環状保持壁部8が設けられるとともに、その環状保持壁部8のさらに外周を取り囲むようにして外周側壁部6a〜6dが設けられている。一対のホルダプレート2a,2bがクリップ4a,4bにより対向した状態で組み付けられると、環状保持壁部8と外周側壁部6a〜6dとの間に挟まれた空間である保持領域5が構成される。この保持領域5の内部に粒状の発泡性基材3が収容される。
【0012】
発泡性基材3は、外部加熱(例えば、110℃〜190℃前後の温度)により発泡、硬化し、発泡体となって金属面や塗装面等に密着する発泡剤混合の合成樹脂やゴム等の材料で構成された発泡性材料が粒状(ペレット状)に成形されたものである。保持領域5の内部に収容する発泡性基材3の分量は、その発泡性基材3を発泡膨張させたときに発泡体によって中空室の断面を隙間なく遮断できるように適宜に設定されている。なお、本実施の形態では、発泡性基材3が球形に成形されている例を示しているが、他の形状に成形されたものを用いても良い。例えば、立方体状に成形された発泡性基材3を用いてもよいし、円柱体状に成形された発泡性基材3を用いてもよい。
【0013】
また、図1及び図2に示すように、外周側壁部6a〜6dは、ホルダプレート2aの外周縁部に沿って薄肉ヒンジ部7を介して一体状に設けられている。発泡性基材3が外部加熱により発泡膨張して発泡体になると、外周側壁部6a〜6dが薄肉ヒンジ部7を基点として外側(保持領域5を内側としたときの外側)に向けて容易に屈曲できるように構成されている(詳しくは後述する)。
【0014】
また、図1及び図2に示すように、ホルダプレート2aの下端部には、中空構造物の中空室内に中空室遮断具1を取り付けるための取付用クリップ30が一体状に設けられている。この取付用クリップ30は、板状に形成された台座部31と、その台座部31から突出して設けられる脚部32と、その脚部32の先端から左右に延出して設けられる弾性係止片33とを一体状に備えて構成されている。弾性係止片33が中空構造物のパネル面に設けられた取付孔の孔縁部に弾性的に係合することにより、中空室遮断具1が中空構造物の中空室内に取り付けられる。
【0015】
次に、上記のように構成される中空室遮断具1が中空構造物20の中空室23内に配設される態様を、図3及び図4を参照しながら説明する。
図3は、中空構造物20の中空室23内に中空室遮断具1が配設されている状態を示す正面図である。図4は、図3に示す中空室遮断具1のA−A線に対応する断面拡大図である。
図3及び図4に示すように、中空構造物20は、インナパネル21とアウタパネル22とが互いのフランジ部21f、22fにおいてスポット溶接されて筒状とされた構造物であり、その内部に構成された中空室23の断面形状は略台形の形状を有している。
一対のホルダプレート2a、2bは、中空室23の断面に対応した略台形の形状を有しており、また、一対のホルダプレート2a,2bの大きさは、中空室23の内壁面との間に所定の隙間(中空室23の内壁面に電着塗装液等の塗料を通過させることができる程度の隙間)が生じる寸法に設定されている。
例えば、中空構造物20が車両ボディを構成するパネルである場合、その車両ボディが完成すると焼付け塗装が施される。その焼付け塗装の際の外部加熱によって、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体25になる。
【0016】
図5は、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体25となることにより中空室23の断面を遮断した状態における中空室遮断具1の正面図である。図6は、図5における中空室遮断具1のB−B線に対応する断面拡大図である。
図5及び図6に示すように、発泡性基材3は、中空室遮断具1の全周縁部において発泡している。中空室23の断面は略台形の形状を有しているが、一対のホルダプレート2a、2bはそれと相似した略台形の形状に成形されているため、発泡体25が中空構造物20の内壁面に追従して密着し、中空室23をほぼ隙間なく遮断している。
また、発泡性基材3は一対のホルダプレート2a、2bによって両側から挟持されているため、その発泡方向がホルダプレート2a、2bの表面に沿う方向に規制される。これにより、発泡膨張により生じた発泡体25が中空室23の内周壁面に向けて重点的に広がることになるので、一対のホルダプレート2a,2bの間には必要最小限の発泡性基材3を保持するだけで中空室23の断面を効率的に遮断することが可能である。中空構造物20の中空室23の断面が発泡体25によって隙間なく遮断されると、中空構造物20の補強、制振、防音等の効果が高められる。
【0017】
また、図6に示すように、粒状の発泡性基材3が外部加熱により発泡膨張して発泡体25になると、発泡体25の発泡圧によって外周側壁部6a〜6dが薄肉ヒンジ部7を基点にして外側に向けて容易に倒れるようになっている。これにより、中空室23の内周壁面に向けて発泡体25を広げることができる。
外周側壁部6a〜6dは、ホルダプレート2aに対し薄肉ヒンジ部7を介して一体状に設けられており、外周側壁部6a〜6dがホルダプレート2aから分離して中空構造物20の中空室23内に落下してしまうことが防止されている。これにより、外周側壁部6a〜6dが分離して中空室23内に落下することに伴う異音の発生等の不具合が防止されている。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態における中空室遮断具1によれば、一対のホルダプレート2a,2bの間に構成される保持領域5の内部に粒状の発泡性基材3を収容することができる。したがって、発泡性基材3自体を中空室23の断面に対応した略台形の形状に成形する必要がなく、中空構造物20の中空室23の形状が異なる毎に異なる形状の発泡性基材3を準備する必要がない。
【0019】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、図7に示すように、一方のホルダプレート2aの他方のホルダプレート2bに向かい合う対向面に対して、保持領域5をさらに複数に分割する分割リブ40a〜40dを一体状に設けてもよい。この分割リブ40a〜40dを設けることにより、保持領域5の内部における粒状の発泡性基材3の偏在が防止されるので、中空室23の断面において発泡体25をまんべんなく広げることができる。
【0020】
また、図8に示すように、外周側壁部6a〜6dを、ホルダプレート2aの外周の末端の縁部に沿って設けるようにしてもよい。この場合には、薄肉ヒンジ部7が溝状に形成されるのではなく、薄肉ヒンジ部7がホルダプレート2aの外周に沿って面取り状に形成されることになる。
【0021】
また、上記実施の形態では、薄肉ヒンジ部7が外周側壁部6a〜6dの外側(保持領域5を内側としたときの外側)に溝状に形成される例を示したが、図9に示すように、薄肉ヒンジ部7が外周側壁部6a〜6dの内側に形成されるようにしてもよい。この場合、外周側壁部6a〜6dが発泡体25の発泡圧を受けてさらに容易に外側に向けて倒れるという効果がある。
【0022】
また、上記実施の形態では、外周側壁部6a〜6dが一方のホルダプレート2aの対向面側にのみ設けられる例を示したが、例えば、図10に示すように、外周側壁部6e,6fが、一対のホルダプレート2a,2bのそれぞれの対向面に対して突き合わせ状に設けられるようにしてもよい。つまり、本発明の外周側壁部は、一対のホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートに対して設けられていればよい。
【0023】
また、上記実施の形態では、ホルダプレート2aの対向面側に環状保持壁部8が設けられる例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、図11に示すように、ホルダプレート2aの中央部に内側に向けて突出する凸部8aを形成し、この凸部8aの側面と外周側壁部6a〜6dとの間に保持領域5を構成するようにしてもよい。
【0024】
また、上記実施の形態では、一対のホルダプレート2a,2bがそれぞれ別体に形成されている例を示したが、例えば、一対のホルダプレート2a,2bが、側縁部に設けられた薄肉ヒンジを介して一体にかつ開閉可能に結合され、一対のホルダプレート2a,2bをその薄肉ヒンジを基点として閉じることにより保持領域5の内部に発泡性基材3が保持されるようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施の形態では、ホルダプレート2a、2bが耐熱性の熱可塑性合成樹脂によって形成されている例を示したが、その他の材料、例えば、剛性を有する厚紙、木質系ハードボード、金属製プレート等によって形成されたホルダプレート2a,2bを用いることもできる。
【0026】
また、上記実施の形態では、一対のホルダプレート2a、2bがクリップ4a,4bによって組み付けられる例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、一対のホルダプレートを相互に組付ける手段としては、一対のホルダプレート2a,2bの周囲に粘着テープ等を巻き付けるようにしてもよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、中空構造物20の中空室23の断面形状が略台形である例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、中空室23の断面形状が三角形や五角形である場合にも本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態では、中空構造物20が車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル等である場合を例示したが、これに限るものではなく、車両のボディ以外、例えば、建築物、船舶等の建造物等を構成する中空構造物に対しても本発明を適用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、中空構造物の中空室の形状が種々異なる場合でも安価かつ容易に製造できる中空構造物の中空室遮断具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における中空室遮断具の組み立て前の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における中空室遮断具の完成状態を示す斜視図である。
【図3】中空構造物の中空室内に中空室遮断具が取付けられた状態を示す正面図である。
【図4】図3における中空室遮断具のA−A線断面拡大図である。
【図5】中空室遮断具の発泡性基材が発泡して発泡体となり、中空室を遮断した状態を示す正面図である。
【図6】図5における中空室遮断具のB−B線断面拡大図である。
【図7】分割リブが設けられた中空室遮断具の斜視図である。
【図8】薄肉ヒンジ部がホルダプレートの外周の末端の縁部に沿って形成されている別実施例を示す断面拡大図である。
【図9】薄肉ヒンジ部がホルダプレートの内側に形成されている別実施例を示す断面拡大図である。
【図10】外周側壁部が一対のホルダプレートのそれぞれの対向面側に対して設けられる別実施例を示す断面拡大図である。
【図11】ホルダプレートに設けられた凸部の側面と外周側壁部との間に保持領域が構成される別実施例を示す断面拡大図である。
【符号の説明】
1 中空室遮断具
2a,2b ホルダプレート
3 発泡性基材
4a,4b クリップ
5 保持領域
5a,5b 挿通孔
6a〜6f 外周側壁部
7 薄肉ヒンジ部
8 環状保持壁部
20 中空構造物
23 中空室
25 発泡体
30 取付用クリップ
40a〜40d 分割リブ

Claims (3)

  1. 中空構造物の中空室内に配設される一対のホルダプレートと、その一対のホルダプレートの間に保持されかつ加熱より発泡し発泡体となることで前記中空室を遮断する粒状の発泡性基材とを備える中空構造物の中空室遮断具であって、
    前記一対のホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートの対向面側には、前記発泡性基材を保持する保持領域を構成するための外周側壁部が設けられており、前記発泡性基材が発泡するときの発泡圧を受けて前記外周側壁部が外側に向けて倒れる構成にしてある中空構造物の中空室遮断具。
  2. 請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
    外周側壁部は、薄肉ヒンジ部を介してホルダプレートに対して一体状に設けられていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
  3. 請求項1または請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
    一対のホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートの対向面側には、保持領域を複数に分割する分割リブが設けられていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
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