JP4117040B2 - 粘接着シートあるいは粘接着体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘接着シートあるいは粘接着体、及びこれらを用いた接着方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、常温で粘着性を有し、被着体に対する仮接着あるいは被着体同士の仮接着が可能であると共に、加熱により、接着強度が著しく向上して充分な接着強度が得られる粘接着シートあるいは粘接着体、及びこれらを用いた接着方法に関するものであり、例えば印刷物やその他情報記録体の表面保護,情報表示、あるいはフィルムやシート同士のラミネート,エンブレムなどの固定,絵柄層の転写などの用途に好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、粘着シートは、多くの分野において幅広く用いられている。例えばマスキング材,封かん材,表面保護材,接続材,固定材,情報表示(ラベル,ステッカー等)などとして多用されている。この粘着シートは、通常紙やプラスチックなどの基材上に粘着剤から成る層(粘着層)が設けられ、またさらにこの粘着層の上に、必要に応じて剥離シートが設けられている。一方、ロール状に巻いた構成の粘着シートにおいては、基材の粘着層側とは反対面に、必要に応じ剥離剤からなる剥離層が設けられている。
また、基材を用いない粘着体も知られており、このものは、フィルムやシート同士のラミネート、構造体同士の接着、絵柄層の転写用などとして用いられている。この粘着体は、通常粘着剤層の両面に剥離シートが設けられている。
【0003】
ところで、接着剤は、一般に溶剤型,感熱型,反応型及び感圧型の四種類に大別することができ、用途に応じて適宜選択使用されている。これらの中で、感圧型接着剤は、いわゆる粘着剤であって、「室温下無溶剤の状態において、指圧程度の圧力で押えるのみで接着できるもの」と理解されており、一般に再剥離用又は永久接着用として、前記の粘着シートや粘着体などに用いられている。一方、感熱型接着剤は、加熱することにより、接着力が著しく向上するものであり、主として永久接着用として用いられる。この感熱型接着剤の用途の一つとして、接着シートにおける接着層としての利用、あるいは基材を用いないヒートシール型接着体としての利用が知られている。
しかしながら、上記感圧型接着剤を用いた従来の粘着シートや粘着体は、常温で粘着性を有し、被着体に手軽に貼着できるという利点を有するものの、粘着強度は充分とはいえない。一方、上記感熱型接着剤を用いた従来のヒートシール型接着体は、加熱圧着することにより、充分な接着強度が得られるものの、接着剤自体には常温での粘着性がないため、被着体に対して、仮り止めや位置決めが難しいという欠点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、常温で粘着性を有し、被着体に対する仮接着あるいは被着体同士の仮接着が可能であって、位置決めすることができると共に、加熱により、接着強度が著しく向上して充分な接着強度が得られる粘接着シートあるいは粘接着体を提供すること目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の優れた機能を有する粘接着シートあるいは粘接着体を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、粘接着剤として、特定の粘接着挙動を示すものを用いることにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、基材の少なくとも片面に、常温圧着後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として30〜1500g/25mmを示すと共に、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として3500g/25mm以上を示し、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ジフェニルカルボン酸の中から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸成分と、エチレングリコール;プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオールの中から選ばれた少なくとも一種のジオール成分を重縮合させてなるTgが−60℃〜30℃のランダム共重合ポリエステル系樹脂からなる粘接着層を有することを特徴とする粘接着シートを提供するものである。
また、本発明は、常温圧着後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として30〜1500g/25mmを示すと共に、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として3500g/25mm以上を示し、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ジフェニルカルボン酸の中から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸成分と、エチレングリコール;プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオールの中から選ばれた少なくとも一種のジオール成分を重縮合させてなるTgが−60℃〜30℃のランダム共重合ポリエステル系樹脂からなる粘接着層からなることを特徴とする粘接着体をも提供するものである。
更に本発明は、被着体に対し、上記粘接着シートを、粘接着層が接するように常温で圧着して仮接着し、位置決めしたのち、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱することを特徴とする接着方法を提供するとともに、二つの被着体間に上記粘接着体を介挿し、常温で圧着して被着体同士を仮接着し、位置決めしたのち、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱することを特徴とする接着方法をも提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の粘接着シートは、基材の片面あるいは両面に、特定の粘接着挙動を示す粘接着層を有するものである。ここで基材としては特に制限はなく、従来粘着シート、ヒートシール型接着シートなどに慣用されているものを用いることができる。このような基材としては、例えば上質紙,グラシン紙,コート紙などの紙類、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート),ポリオレフィン(例えばポリプロピレン,ポリエチレン),ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリビニルアルコールなどのプラスチックフィルム、セルローストリアセテート,セルロースジアセテート,セロハンなどのセルロース系フィルム、さらには不織布,織布,金属箔などが挙げられる。この基材の厚さは、使用目的や状況に応じて適宜定めればよいが、通常10〜250μm、好ましくは25〜100μmの範囲である。
【0007】
また、この基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、その片面又は両面に、その上に設けられる層との接着性を向上させる目的で、所望により、サンドブラストや溶剤処理などによる凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理,オゾン・紫外線照射処理,火炎処理,クロム酸処理,熱風処理などの酸化処理などを施すことができる。
一方、基材として紙や不織布を用いる場合には、基材と粘接着層との間に、所望により目止め層を設けてもよい。この目止め層は、粘接着剤の基材への浸透防止の他に、基材と粘接着層との密着性をさらに向上させる目的で、また基材が紙で柔軟すぎる場合には、剛性を付与する目的で設けられる。このような目止め層としては、通常スチレン−ブタジエン共重合体,アクリル系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリスチレン系樹脂などを主成分とし、必要に応じ、クレー,シリカ,炭酸カルシウム,酸化チタン,酸化亜鉛などのフィラーを添加したものなどからなる層が挙げられる。この目止め層の厚さは、特に制限はないが、通常0.1〜30μmの範囲である。
【0008】
本発明の粘接着シートにおける粘接着層は、常温圧着により粘接着性を示すとともに、加熱により接着強度が増大する粘接着特性を有するものであって、特に常温圧着後のABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂板に対する接着力が、JIS Z−0237に準拠して30〜1500g/25mmであり、かつ加熱後のABS樹脂板に対する接着力が、JIS Z−0237に準拠して3500g/25mm以上であるのが好ましい。なお、ここで加熱条件等については、特に制限はないが、一般には温度60〜200℃の範囲で、0.1〜30秒間程度加熱することが好ましく、特に1〜10kg/cm2 の範囲で加熱圧着することがより好ましい。
ここで常温圧着後における該接着力が30g/25mm未満では常温接着強度が低すぎ、被着体に仮接着して位置決めを行う際に、粘接着体がずれやすく、位置決めが正確にできにくい。また1500g/25mmを超えると接着強度が高すぎて、一旦被着体に粘接着体が付着すると剥がしにくく、位置決めが困難となり、無理に剥がそうとすると被着体が破損するおそれが生じる。仮接着して位置決めが容易に行いうる点から、この粘接着層の常温圧着後における接着力は、50〜1000g/25mmの範囲にあるのが特に好ましい。一方、加熱した後における接着力が3500g/25mm未満では、加熱後の接着強度が不充分であり、時間が経過すると剥がれる場合があり、永久接着の目的が達せられないことがある。永久接着の点から、この粘接着層の加熱後における接着力は、4000g/25mm以上が特に好ましい。この接着力の上限については特に制限はない。
【0009】
なお、この常温圧着後及び加熱後の接着力は、次の方法に従って測定した値である。すなわち、常温圧着後の接着力は、幅25mm,長さ250mmの試験片の剥離シートを剥がし、ABS樹脂板(日本テストパネル工業(株)製)を被着体として、JIS Z−0237に準拠して求める。一方、加熱後の接着力は、上記方法により圧着した試験片を、圧着20分後にヒートシールテスター〔テスター産業(株)製、TP−701型〕を用いて所定時間加熱したのち、さらに常温放置で20分経過後にJIS Z−0237に準拠して求める。
本発明の粘接着シートにおける粘接着層の厚さは、各種の状況に応じて適宜選定すればよく、一義的に決めることはできないが、通常は10〜100μm、好ましくは20〜60μmの範囲である。この粘接着層の厚さが10μm未満では、一般に所望の粘接着特性が得られにくく、また100μmを超えるとその厚さの割には粘接着特性の向上は認められず、むしろ経済的に不利となる場合がある。
本発明の粘接着シートにおいては、上記粘接着層の上に、所望により剥離シーとを設けてもよい。この剥離シートとしては特に制限はなく、従来、粘着シートやヒートシール型接着シートにおいて剥離シートとして慣用されているものを用いることができる。このような剥離シートとしては、例えば上質紙,グラシン紙,コート紙,ラミネート紙などの紙に、所望により目止め層を設け、その上にポリエチレンなどの樹脂をラミネートし、さらにその上にシリコーン樹脂などを塗付したもの、あるいは各種プラスチックフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常は25〜200μmの範囲である。
【0010】
本発明の粘接着シートにおいては、前記基材の背面に所望により、情報表示用などとして印刷層を設けてもよい。この印刷層は、例えばアクリル系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ブチラール系樹脂,ニトロセルロース系樹脂,アセチルセルロース系樹脂,ポリエステル系樹脂,塩化ビニル系樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂などのバインダーと、顔料や染料などの着色剤,体質顔料,溶剤などを含有するインクを用い、一般的な印刷方法、例えばグラビア印刷,スクリーン印刷,オフセット印刷,フレキソ印刷などにより形成することができる。この印刷層の厚さは、通常0.1〜10μm程度である。
また、この印刷層の上に、所望により、さらに透明な保護層を設けてもよい。この保護層としては、例えばポリエチレン系樹脂,ポリビニルアルコール,アクリル系樹脂,でんぷん,アルキッド樹脂などからなる層が挙げられる。この保護層の厚さは、通常0.1〜30μmの範囲である。
【0011】
図1は、本発明の粘接着シートの一例を示す断面図であって、基材1,粘接着層2及び剥離シート3が順次積層された構造を示している。
また、図2は、本発明の粘接着シートの他の一例を示す断面図であって、背面に剥離層4を有する基材1及び粘接着層2が順次積層された構造を示している。この粘接着シートにおいては、基材背面と粘接着層2との剥離性を良くし、粘接着剤が基材背面に移行するのを防ぐ目的で、基材背面に剥離層4を設けてロール状に巻いた構成とすることもできる。この剥離層4の形成は、一般にシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布する方法が用いられる。該剥離層4の厚さは、通常0.1〜30μmの範囲である。なお、この構成の粘接着シートにおいても、基材の背面に、所望により情報表示用などとして印刷層を設け、その上に剥離層を設けてもよい。この場合、印刷層の厚さは、通常0.1〜30μmの範囲である。
【0012】
次に、本発明の粘接着体は、前記の粘接着シートにおけるような基材を有しないものであるが、該粘接着シートの粘接着層と同様に、常温圧着により粘着性を示すとともに、加熱により接着強度が増大する粘接着特性を有している。特に、粘接着層のそれぞれの面の常温圧着後のABS樹脂板に対する接着力が、JISZ−0237に準拠して30〜1500g/25mmであり、かつ加熱した後のABS樹脂板に対する接着力が、JIS Z−0237に準拠して3500g/25mm以上であるものが好ましい。常温圧着後における該接着力が30g/25mm未満では常温接着強度が低すぎ、この粘接着体を介して被着体同士を仮接着して位置決めを行う際に、ずれやすくて位置決めが正確にできにくい。また、1500g/25mmを超えると接着強度が高すぎて、一旦被着体同士を仮接着した場合に剥がしにくく、位置決めが困難となり、無理に剥がそうとすると被着体が破損するおそれが生じる。仮接着して位置決めが容易に行いうる点から、この粘接着剤の常温圧着後における接着力は、50〜1000g/25mmの範囲にあるのが特に好ましい。一方、加熱後の接着力が3500g/25mm未満では、加熱後の接着強度が不充分であり、時間が経過すると被着体同士が剥がれる場合があり、永久接着の目的が達せられないことがある。永久接着の点から、この粘接着剤の加熱後接着力は、4000g/25mm以上が特に好ましい。この接着力の上限については特に制限はない。なお、常温圧着後及び加熱後の接着力の測定方法は、前記粘接着シートの場合と同様である。
【0013】
この粘接着体の厚さは、通常10〜100μm、好ましくは20〜60μmの範囲である。この粘接着体の厚さが10μm未満では所望の粘接着特性が得られにくく、また100μmを超えるとその厚さの割には粘接着特性の向上は認められず、むしろ経済的に不利となる。
本発明の粘接着体は、通常その両面に剥離シートが設けられており、使用時にこの剥離シートを剥がして、両面接着用として用いられる。この剥離シートとしては、前記粘接着シートの説明において例示したものと同じものを挙げることができる。
図3は、本発明の粘接着体の一例を示す断面図であって、粘接着体5の両面に剥離シート3及び3’が設けられている構造を示している。
【0014】
また、この粘接着体は、両面接着用以外に、転写用シートとしても利用できる。三次元曲面を有する成形品の絵付け方法として、柔軟な転写シートを真空や圧空などによって被転写体に密着させ、絵柄層を転写する方法が知られている。この用途に本発明の粘接着体を利用する場合は、例えば、シリコーン樹脂などの剥離層を有する軟質塩化ビニル系樹脂フィルムなどの基材の剥離層上に、絵柄層,粘接着体及び剥離シートを順次積層した構造のものが用いられる。転写方法としては、例えば、まず、剥離シートを剥がして、絵柄層が被転写体の所望位置にくるように、粘接着体を被転写体に常温で圧着して、仮接着により位置決めしたのち、加熱処理し、次いで基材を剥離することにより、絵柄層が被転写体に転写される。なお、絵柄層の形成は、前記粘接着シートにおける印刷層の形成の場合と同様である。この絵柄層の厚さは、通常1〜10μm程度である。
【0015】
図4は、本発明の粘接着体を転写用に用いる場合の一例を示す断面図であって、剥離層4が設けられた基材1上に、絵柄層6,粘接着体5及び剥離シート3が順次積層された構造を示している。
本発明の粘接着シート及び粘接着体は、例えば印刷物やその他の情報記録体の表面保護用,情報表示用(ラベル,ステッカー),フィルムやシート同士のラミネート用,構造体同士又は構造体とフィルムやシートとの接着用,エンブレムなどの固定用,絵柄層の転写用などとして用いられる。
【0016】
次に、前記粘接着シートの粘接着層及び粘接着体に用いられる粘接着剤は、前記粘接着特性を有するものであり、このような粘接着剤は、主要樹脂成分として、ランダム共重合ポリエステル系樹脂を含むものである。
【0017】
発明に用いるランダム共重合ポリエステル系樹脂を含む粘接着剤においては、好ましい主要樹脂成分として、通常テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ジフェニルカルボン酸などの中から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸成分と、エチレングリコール;プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオールなどの中から選ばれた少なくとも一種のジオール成分と、さらにスチレン、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、メタクリル酸やアクリル酸などの第三成分とを重縮合させてなるTgが−60℃〜30℃程度のランダム共重合ポリエステル系樹脂が用いられる。
【0018】
また、上記単量体の中で、例えばアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの比較的炭素数の多い脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコールなどの比較的炭素数の多いジオールは、Tgの低いランダム共重合ポリエステル系樹脂を与えることが知られており(以下、低Tg成分ということがある)、したがって、例えばこれらの単量体を適当に用いてTgが約−10℃以下のランダム共重合ポリエステル系樹脂を製造し、一方、Tgの高いランダム共重合ポリエステル系樹脂を与えるジカルボン酸成分とジオール成分と、場合により第三成分を適当に選び重縮合させて、Tgが0〜50℃程度のランダム共重合ポリエステル系樹脂を製造し、両者を適宜割合にて混合したものを用いることもできる。
【0019】
本発明における粘接着剤においては、主要樹脂成分として、前記のようにして得られたランダム共重合ポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、あるいは所望によりこのランダム共重合ポリエステル系樹脂に、酢酸ビニル系、アクリル系、ウレタン系の樹脂を添加してもよい。さらに、必要に応じ、粘着付与剤、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、充填剤、着色剤などを含有させることができる。ここで、粘着付与剤としては、例えばロジン系、テルペン系、合成石油樹脂系、アルキルフェノール樹脂系、キシレン樹脂系、クマロンインデン樹脂系、ジシクロペンタジエン樹脂系のものなどが挙げられる。また、充填剤としては、例えば亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0020】
次に、本発明の接着方法について説明する。
本発明の粘接着シートを用いて被着体に接着させる場合には、まず粘接着シートをその粘接着層が接するように常温で圧着して仮接着し、位置決めしたのち、高温、例えば60〜200℃程度の温度で加熱、好ましくは加熱圧着する方法が用いられる。
一方、本発明の粘接着体を用いて二つの被着体同士を接着させる場合には、まず、二つの被着体間に該粘接着体を介挿し(つまり、二つの被着体の間に該粘接着体を挟み)、常温で圧着して該粘接着体を介して被着体同士を仮接着し、位置決めしたのち、高温、例えば60〜200℃程度の温度で加熱、好ましくは加熱圧着する方法が用いられる。
本発明の粘接着シートあるいは粘接着体が適用できる被着体としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。この被着体としては、例えば各種金属,ガラス,コンクリート,木質,紙,プラスチックなどからなる材料を挙げることができる。プラスチックとしては、極性基を有するものが好ましく、例えばABS樹脂,塩化ビニル系樹脂,アクリル系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ガラス繊維強化エポキシ樹脂,フェノール系ノボラック樹脂などを好ましく挙げることができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
粘接着剤の有機溶剤(トルエンと酢酸エチルの混合物)溶液〔固形分濃度40重量%,ランダム共重合ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,セバシン酸,ジフェニルカルボン酸を含み、ジオール成分としてエチレングリコール,ブタンジオール,ヘキサンジオール,ポリエチレングリコールを含む),Tg:−15℃〕を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の厚さが約25μmになるように塗布し、100℃で3分間乾燥して粘接着層を形成したのち、その上にシリコーン樹脂層が接するように剥離紙を設け、粘接着シートを作成した。なお、該剥離紙は、上質紙にポリエチレンをラミネートし、さらにその上にシリコーン樹脂層を設けたものである。
次に、ABS樹脂板に、上記のようにして得られた粘接着シートの剥離紙を剥がし、その粘接着層が接するようにして、以下JIS Z−0237に準拠して常温圧着後の接着力を測定した。その結果、接着力は250g/25mmであった。この場合、簡単に位置ずれすることがない上、被着体になんら損傷を与えることなく、剥離可能であった。次いで、荷量3kg/cm2 で、第1表に示す温度において、第1表に示す時間圧着し、その後JIS Z−0237に準拠して加熱圧着後の接着力を測定した。結果を第1表に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004117040
【0023】
第1表から分かるように、加熱圧着することにより、接着強度が著しく高くなっている。
【0024】
実施例2
粘接着剤の有機溶剤(トルエンと酢酸エチルの混合物)溶液〔固形分濃度40重量%,ランダム共重合ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,セバシン酸,ジフェニルカルボン酸を含み、ジオール成分としてエチレングリコール,ブタンジオール,ヘキサンジオール,ポリエチレングリコールを含む),Tg:−15℃〕を、剥離紙のシリコーン樹脂層上に、乾燥後の厚さが約25μmになるように塗布し、100℃で3分間乾燥して粘接着層を形成したのち、更にその上にシリコーン樹脂層が接するように剥離紙を設け、粘接着体を作成した。
次に、上記のようにして得られた粘接着体の一方の剥離紙を剥がし、ABS樹脂板上に、その粘接着体が接するように貼り合わせ、更にもう一方の剥離紙を剥がし、その上から厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせた。以下JIS Z−0237に準拠して常温圧着後の接着力を測定した。その結果、接着力は320g/25mmであった。第2表に示す温度において、第2表に示す時間加熱し、その後JIS Z−0237に準拠して加熱後の接着力を測定した。結果を第2表に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0004117040
【0026】
比較例1
通常のアクリル系粘着剤(サイデン化学(株)製,商品名:サイビノールT−200)を用い、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。次に、ABS樹脂板に、上記粘着シートの剥離紙を剥がして、その粘着層が接するようにして、以下JIS Z−0237に準拠して常温圧着後の接着力を測定したところ1300g/25mmであった。この場合、簡単に位置ずれすることがない上、被着体になんら損傷を与えることなく、剥離可能であった。次いで、荷重3kg/cm2 で、120℃にて5秒間圧着し、その後JIS Z−0237に準拠して加熱圧着後の接着力を測定したところ1500g/25mmであり、接着強度の向上はほとんど認められなかった。
【0027】
比較例2
通常の感熱型ポリエステル系接着剤(サイデン化学(株)製,商品名:サイビノールUF−30)を用い、実施例1と同様にしてヒートシール型接着シートを作成した。
次に、ABS樹脂板に、上記ヒートシール型接着シートの剥離紙を剥がして、その接着層が接するようにして、以下JIS Z−0237に準拠して常温圧着後の接着力を測定したところ15g/25mmであり、粘着性がほとんどなく、簡単に位置ずれを起こした。
【0028】
【発明の効果】
本発明の粘接着シート及び粘接着体は、常温で粘着性を有し、被着体に対する仮接着あるいは被着体同士の仮接着が可能で、かつ加熱圧着により接着強度が著しく向上して充分な接着強度が得られることから、例えば印刷物やその他情報記録体の表面保護,情報表示,フィルムやシート同士のラミネート,構造体同士又は構造体とフィルムやシートとの接着,エンブレムなどの固定,絵柄層の転写などに好適に用いられる。特に、壁面等の垂直な被着体に対する接着などに好適であり、また、本発明の粘接着シートは、被着体に仮接着して、その基材に印刷を施したのち、加熱圧着により接着する場合に特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粘接着シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の粘接着シートの他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の粘接着体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の粘接着体を転写用に用いる場合の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 粘接着層
3 剥離シート
3’剥離シート
4 剥離層
5 粘接着体
6 絵柄層

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも片面に、常温圧着後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として30〜1500g/25mmを示すと共に、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として3500g/25mm以上を示し、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ジフェニルカルボン酸の中から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸成分と、エチレングリコール;プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオールの中から選ばれた少なくとも一種のジオール成分を重縮合させてなるTgが−60℃〜30℃のランダム共重合ポリエステル系樹脂からなる粘接着層を有することを特徴とする粘接着シート。
  2. 常温圧着後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として30〜1500g/25mmを示すと共に、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱後のABS樹脂板に対する接着力(JIS Z−0237に準拠)として3500g/25mm以上を示し、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ジフェニルカルボン酸の中から選ばれた少なくとも一種のジカルボン酸成分と、エチレングリコール;プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ポリテトラメチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオールの中から選ばれた少なくとも一種のジオール成分を重縮合させてなるTgが−60℃〜30℃のランダム共重合ポリエステル系樹脂からなる粘接着層からなることを特徴とする粘接着体。
  3. 被着体に対して、請求項1に記載の粘接着シートを、粘接着層が接するように常温で圧着して仮接着し、位置決めしたのち、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱することを特徴とする接着方法。
  4. 二つの被着体間に請求項2に記載の粘接着体を介挿し、常温で圧着して被着体同士を仮接着し、位置決めしたのち、温度60℃〜200℃の範囲で0.1〜30秒間加熱することを特徴とする接着方法。
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