JP2010008624A - 蓄光性と防滑性を有する視線誘導シート - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な防滑性と視線誘導効果を有し、さらにシートに対して傾斜した方向からの視線に対しても十分に視認できるだけの輝度を発する視線誘導シートを提供する。
【解決手段】シート状基材3に、接着剤6を介して無機粒子4と蓄光性発光粒子5を担持してなるものであり、無機粒子4を透光性あるものとし、無機粒子の60容量%以上が蓄光性発光粒子の径の2倍以上の径を有するものとし、シート状基材表面における無機粒子を担持する面と蓄光性発光粒子を担持する面の面積比が30〜90:70〜10であるものとした。
【選択図】図2

Description

本発明は、蓄光性と防滑性を有する視線誘導シートに関し、特に、シート表面に対する視線の角度が変化しても、効果的に視線誘導可能な視線誘導シートに関する。
従来、工場や作業場などの工業施設、公共の建築物内などの商業施設や宿泊施設において、災害時や停電時に避難誘導するために、または消灯時に通路や障害物・危険物を認識させるために、階段や床面、路面などに、蓄光性や蛍光性を有する材料を、線や文字、マーク等として塗装したり、テープとして貼りつけたりすることが広く実施されている。
また、滑りやすい階段や床面、路面には、防滑性(滑り止め性)の材料を塗装したり、テープとして貼ることにより、安全性を確保することが行われている。
なかでも、テープ状やシート状のものは、塗装に比べ、施工が容易であるため、近年、特に消防法による設置義務のない箇所においても、災害時や停電時の避難誘導や安全確保のために、使用されることが多い。
このような状況下、防滑性と視線誘導の機能を併せ持つシートが種々研究されている。
例えば、特許文献1(特開平10−102436号公報)には、無機質セラミック発光体を発光性骨材として、プラスチックシートや布等のシート材の表面に固着させた視線誘導シートが開示されており、ここでは、発光性骨材を硬質セラミックスや石材等のスリップ防止用骨材に混合して、使用することも提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示された蓄光性発光物質を含有させてなる無機質セラミック発光体は輝度が低く、十分な視線誘導性が得られない。それ故に十分な輝度を得るために、発光物質の含有量を増加させて無機質セラミック発光体を作る、或いは、無機質セラミック発光体の散布量を増加させる必要がある。しかし、前者の場合は無機質セラミック発光体の強度が著しく低下する問題があり、後者の場合は、スリップ防止用骨材の担持量が少なくなり、滑り止め性が低下する問題がある。また、特許文献1で使用されるようなアルミナ、炭化珪素やエミリーなどのスリップ防止用骨材は、無機質セラミック発光体から放たれる光を吸収又は遮断し、シートとした場合の輝度が著しく低下するという問題もあった。さらに、特許文献1の視線誘導シートは、スリップ防止用骨材が無機質セラミック発光体から放たれる光を遮断するので、シートに対して傾斜した方向からの視線に対しては十分に視認できるだけの輝度を得ることができないものである。
また、特許文献2(特開平8−326254号公報)には、ベースシートの上面側に塗料が付着されて形成される表示層と、その上面側にすべり止め用の粒子を含んだ層を有し、表示層の内容を透視することが可能なすべり止めシートが提案されており、表示層に蛍光性や蓄光性のインクが用いられても良いとされている。
しかし、この製品は、表示層の文字や図柄は全て、すべり止め用の粒子を含んだ層で覆われているため、表示層に垂直な視線から見ると、図柄等は明確に見えるが、視線の角度が変化すると見にくくなる。
また、特許文献3(実用新案登録第3073012号公報)は、床面や階段等に貼り付けて滑りを防いで足元の安全を図る滑り止めシートを開示しているが、この製品は、シート状の透明な基材と、基材の表面に固着された透明な粒子と、粒子を基材の表面に接着して一部を露出して接着して固着する透明な接着剤と、基材の裏面に粘着され被貼付対象物の粘着面にライナーを設けた透明な粘着剤とを備えた滑り止めシートであり、ここで使用される粒子はホワイトアルミナやガラス粉などが使用されるだけであり、蛍光性や蓄光性を有するものではなく、この製品が、災害時や停電時の視線誘導シートとして役立つものではない。
また、特許文献4(特開平6−57715号公報)には、道路の表示において路面法線に対する入射角が大なる場合も反射性能を高度に保持し、従来の滑りやすい路面に滑り抵抗性を付与する反射性滑り止めシート材が提案されている。
この製品は、シートに対して傾斜した方向からの視線に対して十分に視認できるものであるが、再帰反射を利用するため、光源が必要であり、災害時や停電時の視線誘導において懐中電灯などの光源を持たない避難者にとっては役立たないものである。
特開平10−102436号公報 特開平8−326254号公報 実用新案登録第3073012号公報 特開平6−57715号公報
上記のように、従来の視線誘導シートは、防滑性(滑り止め性)と視線誘導効果を両立出来ておらず、さらに、シートに対して傾斜した方向からの視線に対しては、防滑材が発光材料の光を遮断し、視認できるだけの輝度を有さないものであった。
そこで、本発明は、十分な防滑性と視線誘導効果を有し、さらにシートに対して傾斜した方向からの視線に対しても十分に視認できるだけの輝度を発する視線誘導シートを提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、防滑材として、透光性ある無機粒子を使用し、該無機粒子に特定の関係で蓄光性発光粒子を併用することにより、防滑性と視線誘導効果を安定して両立できることを見出した。
即ち、本発明では、シート状基材表面に無機粒子及び蓄光性発光粒子が接着剤により担持されている視線誘導シートにおいて、無機粒子が透光性を有するものであり、該無機粒子の60容量%以上が蓄光性発光粒子の径の2倍以上の径を有すること、シート状基材表面に無機粒子は分散状態で担持されており、蓄光性発光粒子は無機粒子の間隙に担持されていること、及びシート状基材表面における無機粒子を担持する面と蓄光性発光粒子を担持する面の面積比が30〜90:70〜10であることを特徴とするものとすることにより、上記課題を解決した。
本発明の視覚誘導シートは、テープ状に形成し、視線誘導テープとしてもよい。
本発明の製品は、シートに対して視線の角度を変えても、安定した輝度を保ち、視認性および防滑性共に優れた視線誘導シートとなる。
本発明の視線誘導シートは、シート状基材表面に無機粒子及び蓄光性発光粒子を接着剤により接着担持しているものであって、無機粒子を透光性を有するものとし、無機粒子の大きさを蓄光性発光粒子より大きく、無機粒子の60容量%以上(好ましくは80容量%以上)が蓄光性発光粒子の径の2倍以上の径を有するものとし、また、無機粒子をシート状基材表面に分散状態(即ち、シート状基材表面に偏在することなく、ほぼ均一に分散した状態)で、接着担持させ、該無機粒子の間隙に、蓄光性発光粒子が担持されるようにしたものであり、シート状基材表面における無機粒子を担持する面と蓄光性発光粒子を担持する面の面積比を30〜90:70〜10とすることに特徴を有するものであり、このように、無機粒子を透光性あるものとしたことにより、蓄光性発光粒子から放たれる光が無機粒子に吸収又は遮断されることがなく、十分な視線誘導効果を発揮するものとなり、しかも、無機粒子と蓄光性発光粒子の大きさを特定の関係とし、蓄光性発光粒子が無機粒子の間隙に担持されるようにしたことにより、無機粒子に起因する良好な防滑性を安定して得ることができ、蓄光性発光粒子は劣化しにくく、耐久性に優れた製品を得ることができるのである。
さらに本願発明の視線誘導シートは、蓄光性発光粒子から放たれるりん光が、無機粒子の表面で反射され、内部で散乱され、或いは透過することによって、蓄光性発光粒子からりん光を受けた無機粒子は、見かけ上無機粒子全体が発光しているかのような状態となり、高度に光り輝き、高水準の輝度を得ることができると考えられる。
本発明において、無機粒子はその60容量%以上が蓄光性発光粒子の径の2倍以上の径を有するものであればよいが、通常、無機粒子の数平均粒径D1が100〜500μm程度、蓄光性発光粒子の数平均粒径D2が2〜150μm程度のものを使用するのがよい。なお、無機粒子と蓄光性発光粒子の粒径比はD1/D2≧2であるのが好ましい。
また、シート状基材表面に接着剤で担持される無機粒子と蓄光性発光粒子の比率は、面積比で30〜90:70〜10とすることで所望の効果を得ることができるが、防滑性をより確実とし、しかも蓄光性発光粒子による視認性を高めるためには、無機粒子と蓄光性発光粒子の比率を面積比で40〜85:60〜15程度とするのが好ましい。
なお、本発明で使用する無機粒子は、透光性を有するものであればよく、着色又は無着色いずれでもよいが、透明、半透明又は白色粒子であるのが、無機粒子の間隙に位置する小さな蓄光性発光粒子を視認しやすく好ましい。透光性を有し白色であるとは、粒子であるので、無機粒子が光の一部を散乱させて白色に見えるものをいう。
ここで、透光性とは可視光透過率が40%以上である性質をいい、より蓄光性発光粒子を視認しやすくするために、可視光透過率は60%以上であることが好ましい。無機粒子の可視光透過率の上限は100%であるが、後述する光反射性を得る場合は、可視光透過率の上限は90%であることが好ましい。なお、可視光とは380nm〜780nmの波長である。
[可視光透過率]
(試料作成)
幅18mmのセロハンテープ(ニチバン社製 商品名 セロテープ(登録商標)No.405)の接着面に無機粒子間に無機粒子が充填できる隙間がない程度に散布し接着させた。その後、セロハンテープに接着されていない無機粒子を軽くはたいて除去した。さらに、上記セロハンテープを接着面側が無機粒子面側となるように積層した。次いで、11cm×18mmに切断し、試料とした。なお、試料は2層のセロハンテープの間に無機粒子同士が重なることなく存在していた。
(測定方法)
JIS R3106に準じて、波長380nm〜780nmの範囲においての分光透過率を波長10nm間隔で測定した。測定した分光透過率から、JIS R3106で規定される可視光透過率の算出式を用いて、可視光透過率を算出した。
本発明で使用する無機粒子は、蓄光性発光粒子から放たれるりん光を無機粒子によって反射或いは散乱させて、見かけ上無機粒子全体が発光しているかのような状態とし、高水準の輝度を得る観点から、光反射性を有するものであることが好ましい。ここで、光反射性とは可視光反射率が10%以上である性質をいい、より高水準の輝度を得るために、可視光反射率は20%以上であることが好ましい。また、透光性と光反射性を両立する観点から、無機粒子は、可視光反射率の上限は60%であることが好ましい。このような無機粒子は、見かけ上、白色(乳濁色)として観察される。
[可視光反射率]
(試料作成)
幅18mmのセロハンテープ(ニチバン社製 商品名 セロテープ(登録商標)No.405)の接着面に無機粒子間に無機粒子が充填できる隙間がない程度に散布し接着させた。その後、セロハンテープに接着されていない無機粒子を軽くはたいて除去した。さらに、上記セロハンテープを接着面側が無機粒子面側となるように積層した。次いで、11cm×18mmに切断し、試料とした。なお、試料は2層のセロハンテープの間に無機粒子同士が重なることなく存在していた。
(測定方法)
JIS R3106に準じて、波長380nm〜780nmの範囲においての分光反射率を波長10nm間隔で測定した。測定した分光反射率から、JIS R3106で規定される可視光反射率の算出式を用いて、可視光反射率を算出した。
かかる無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、及びガラスなどで光透過性あるものがいずれも使用でき、これらは白色粒子であってもよい。また、光透過性ある粒子の1種又は2種以上の固溶体や混合物も使用できる。特に、無機粒子は、白色アルミナであるのが好ましく、白色アルミナを使用した場合、耐久性や耐候性に優れ、長期間にわたり、滑り止め効果を有する製品を得ることがで、さらに、白色アルミナは、蓄光性発光粒子から放たれる光を内部で散乱させ、見かけ上無機粒子が発光しているかのような状態となり、高度な輝度を得ることができる。
無機粒子の数平均粒径D1は、100μm以上500μm以下であることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましい。無機粒子の数平均粒径D1が100μm以上であると、滑り止め効果を得ることができ、無機粒子の数平均粒径D1が500μm以下であると、担持させやすく、脱落しにくい。そして、数平均粒径D1が500μmを超えると、無機粒子の過度な滑り止め効果が働き、歩行者の転倒の原因となる場合がある。また、無機粒子は1種又は2種以上の数平均粒径又は粒度分布を有するものを混合して用いてよい。
無機粒子は、天然鉱物又は人工鉱物等を粉砕して得られた粉砕物であることが好ましい。無機粒子が粉砕物であると、無機粒子の形状がランダムな異形となり、鋭角部を多く含む無機粒子を得ることができ、より優れた滑り止め効果を得ることができる。なお、これら無機粒子は、例えば、防滑材又は研削材として入手可能である。
本発明の無機粒子の粒度は、JIS R 6010に規定されるP36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、及びP150の粒度、或いは、JIS R 6001に規定されるF30,F36、F40、F46、F54、F60、F70、F80、F90、F100、及びF120の粒度であるであることが好ましい。無機粒子の粒度が、上記粒度のいずれかであると、粒度分布にバラツキが少ない。
次に本発明の蓄光性発光粒子について説明する。
蓄光性発光粒子は、蓄光性を有する。ここで、蓄光性とは明るい場所で主に紫外線を吸収してりん光を発し、暗い場所で光を放つ性質をいう。
蓄光性発光粒子は、特に限定されないが、硫化亜鉛系やアルミン酸ストロンチウム系からなる蓄光性物質の1種又は2種以上を含む発光粒子から構成されてよい。なかでも、耐候性の観点からアルミン酸ストロンチウム系の蓄光性物質が好ましい。
蓄光性発光粒子の数平均粒径D2は、2μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。蓄光性発光粒子の数平均粒径D2が2μm以上であると、暗い場所で光を放つ機能が十分であり、視線誘導効果を得ることができる。また、蓄光性発光粒子の数平均粒径D2が150μm以下であると、蓄光性発光粒子が視線誘導シートの表面に突出しにくく、耐久性に優れる。
本発明の視線誘導シートでは、前述した如く、無機粒子の数平均粒径D1と蓄光性発光粒子の数平均粒径D2の粒径比がD1/D2≧2であるのが好ましいが、これは、無機粒子の粒径が蓄光性発光粒子の粒径より、2倍以上大きい構成であると、見かけ上無機粒子全体が発光しているかのような状態となりやすく、視線誘導シートとして高水準の輝度を得ることができるからである。また、視線誘導シートの表面を靴などで踏む場合に、粒径の大きい無機粒子が、粒径の小さい蓄光性発光粒子より、靴などの表面に接しやすく、良好な滑り止め効果を有し、蓄光性発光粒子は靴などの表面に接しにくいので、劣化しにくく又は劣化が遅くなり、耐久性に優れる。かかる効果をより確実に得るためには、D1に対するD2の粒径比を、D1/D2≧3とするのがより好ましく、D1/D2≧5とするのが更に好ましい。
次に本発明のシート状基材について説明する。
シート状基材は、無機粒子及び蓄光性発光粒子を接着担持することができる基材であれば、特に限定されない。例えば、不織布、織物又は編物等の布帛、紙、フィルム、金属箔又はそれらの積層体がいずれも使用できるが、不織布、織物又は編物等の布帛であることが好ましい。シート状基材が布帛であると、柔軟で、引張りおよび引裂き強度に優れ、加工時にシワになりにくく、また、熱処理時にシート状基材が変形し難く、都合がよい。
シート状基材の素材は、特に限定されないが、布帛あるいは紙である場合には、シート状基材の素材はパルプ、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等からなる合繊繊維であってよい。また、シート状基材がフィルムである場合には、シート状基材の素材はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、アイオノマー樹脂等からなるフィルムであってよく、また、シート状基材が金属箔である場合には、アルミ箔、銅箔、鉛箔等の金属箔であってもよく、または布帛やフィルムの表面に金属を蒸着又はメッキしたものであってもよい。また、シート状基材はこれらの積層体であってもよい。
シート状基材は、布帛表面に合成樹脂膜を設けたものであるのが特に好ましい。布帛表面を合成樹脂で被覆することにより、シート状基材に接着剤を介して無機粒子及び蓄光性発光粒子を担持させる場合に、接着剤が、シート状基材の裏面に抜けることを防ぐことができる。また、蓄光性発光粒子から放たれる光が合成樹脂膜で被覆されたシート面に反射して、視線誘導効果が大きくなる。この効果をより顕著にするという観点から、布帛表面を被覆する合成樹脂膜は白色であるのが好ましい。
布帛表面に合成樹脂膜を設ける方法としては、合成樹脂溶液や分散液を塗布する方法、合成樹脂フィルムをラミネートする方法等がいずれも使用できる。なお、ここで用いられる合成樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリル系またはメタアクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
本発明の視線誘導シートは、シート状基材表面における無機粒子を担持する面と蓄光性発光粒子を担持する面の面積比が30〜90:70〜10であれば、防滑性と視線誘導効果を両立することができる。
無機粒子の担持量がシート状基材表面の30%以上であると、十分な防滑性を得ることができ、また、蓄光性発光粒子を十分に担持し、視線誘導効果を得るためには、無機粒子の担持量は90%以下であるのがよい。なお、防滑性をより確実とするためには、無機粒子はシート状基材表面の40〜85%に担持されるのが好ましく、50〜80%に担持されるのがより好ましい。
また、蓄光性発光粒子の担持量はシート状基材表面の10%以上であると、実用性ある視線誘導効果を得ることができるが、視線誘導効果をより確実とするためには、蓄光性発光粒子がシート状基材表面の15〜60%に担持されるようにするのが好ましく、20〜50%に担持されるようにするのがより好ましい。
シート状基材表面に無機粒子及び蓄光性発光粒子を接着担持するための接着剤としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の接着剤が使用できるが、中でもウレタン変性エポキシ樹脂の使用が、接着力と耐候性の観点で好ましい。
本発明の視線誘導シートは、シート状基材表面に無機粒子及び蓄光性発光粒子が接着担持されたものであるが、接着担持された蓄光性発光粒子の上に、更に、合成樹脂層を設けてもよい。合成樹脂層は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、又は、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂であってよい。合成樹脂層を設けることにより、無機粒子及び蓄光性発光粒子が脱落しにくくなり、耐久性により優れた製品を得ることができる。なお、合成樹脂層は、顔料や染料を含んでよい。
また、この合成樹脂層は、合成樹脂のみからなるものであってもよいが、蓄光性発光粒子を含むものとするのが好ましい。合成樹脂層が蓄光性発光粒子を含むことにより、蓄光性発光粒子が表面近くに確実に多く配されるので、さらに視線誘導効果に優れたものとなる。なお、合成樹脂層に含まれる蓄光性発光粒子は、シート状基材表面に最初に接着担持されたものと同種でよい。
本発明の視線誘導シートが、シート状基材表面に接着担持した蓄光性発光粒子の上に更に合成樹脂層を設けてなる場合、無機粒子の少なくとも一部が合成樹脂層から突出しているのが好ましい。無機粒子の少なくとも一部、例えば5容量%以上、10容量%〜50容量%が合成樹脂層から突出している構成とすることにより、無機粒子の突出した部分に起因して防滑性により優れた製品を得ることができる。なお、無機粒子の合成樹脂層から突出した部分の割合を、シート状基材の表面積に対する面積比率で表わすと、10〜50%程度、特に20〜40%であるのが好ましい。
また、蓄光性発光粒子は少なくとも一部が合成樹脂層から突出したものであってよい。蓄光性発光粒子の一部を合成樹脂層から突出させ、シート表面に蓄光性発光粒子が存在するようにすることにより、視線誘導効果により優れるものとなる。
なお、粒子の少なくとも一部が合成樹脂層から突出しているとは、合成樹脂層の表面よりも上に粒子の少なくとも一部が突き出ている構成をいい、粒子が合成樹脂により薄く被覆された構成であってよい。
本発明の視線誘導シートは、シート状基材の裏面に感圧接着剤層を設け、その上に離型シートを積層し、離型シートを剥離して、所望箇所に、視線誘導シートを容易に感圧接着できるようにしてもよい。なお、この場合、シート状基材として布帛や紙などの多孔性基材を使用した場合には、裏面を合成樹脂で裏打ちし、その上に感圧接着剤層を設けるのが好ましい。
本発明の視線誘導シートは使用の形態や用途に合わせて、視線誘導テープに形成されてもよい。視線誘導テープは、例えば、テープ幅が5mm以上500mm以下のものが挙げられる。
次に本発明の視線誘導シートの製造方法について説明する。
まず、シート状基材を準備する。シート状基材が布帛である場合には、予め布帛表面に合成樹脂膜を設けたものを使用するのが好ましい。次に、シート状基材の表面に接着剤を塗布する。その後、シート状基材に無機粒子を散布し、その後に、蓄光性発光粒子を散布する。次に、シート状基材に担持した無機粒子及び蓄光性発光粒子を固着する。固着の方法は乾燥、熱、紫外線硬化等公知の方法を用いることができる。このとき、未固着の無機粒子及び蓄光性発光粒子を除去することが好ましい。更に、その上層に合成樹脂を塗布するか、又は、合成樹脂フィルム等を積層して固着させて、合成樹脂層を形成するのがよい。なお、合成樹脂を塗布する場合は、塗布する合成樹脂は蓄光性発光粒子を含む合成樹脂液であってよく、合成樹脂フィルム等である場合は、蓄光性発光粒子を含むフィルム等であるのが好ましい。合成樹脂を塗布する場合は、スプレーコートやロールコート、ファウンテンコート、カーテンコート等公知の方法を用いて塗布するとよく、無機粒子の少なくとも一部が合成樹脂層から突出するように、塗布方法に応じて、粘度、濃度等を調整するとよい。
また、視線誘導シートの裏面に合成樹脂で裏打ちし、その上に感圧接着剤層を設ける場合には、シート状基材裏面に感圧接着剤を塗布し乾燥した後に、その表面に離型シートを積層する方法、又は離型シートの離型面に感圧接着剤を塗布し、乾燥したものを、感圧接着剤がシート状基材裏面側に接するように積層する方法がいずれも使用できる。
次に、本発明の実施例を示すが、実施例における物性試験は下記の方法によるものである。
[りん光輝度]
JIS Z 9107 6.3.2に準じて、常用光源D65・200(lx)の照度で20分間照射し、照射を止めた直後に、図1に示すように、試験片2に対する輝度計1の測定角度(入射角度)[90−α]を90°、45°、30°、15°に設定し、所定時間後のりん光輝度(mcd/m2)を測定した。
[防滑性]
水平面に平滑な鉄板を設置し、鉄板上に幅5cmにカットした試料を15cm間隔で固定し、上からシート面が濡れる程度に水を撒き、その上を革靴で歩行し、防滑性を評価した。
A: 全く滑ることがなく、通常どおり歩くことができた。
B: 滑ることはなかったが、足下に注意する必要があった。
C: 滑りやすく、足下に注意して歩く必要があった。
(実施例1)
(シート状基材の作製)
ポリエステル不織布(旭化成社製、商品名“EE5100”)の片面に、ポリビニルアルコール水溶液を塗布し、熱風循環式乾燥機で乾燥して、シート状基材を得た。なお、ポリビニルアルコールの樹脂膜を形成した面を表面とする。
(視線誘導シートの作製)
図2に示すように、上記方法で得たシート状基材3の表面に、接着剤6としてエポキシ樹脂(DIC社製、商品名 エピクロン850)を塗布し、次いで、無機粒子4として数平均粒径300μm(JIS R 6010に基づく粒度P50)の半透明で透光性ある白色アルミナ(鶏西松見研磨材社製、商品名 WA砂#54)をシート状基材3の表面に散布し、無機粒子4の存在する箇所が該表面の80%となるようにした後、数平均粒径60μmの蓄光性発光粒子5(根本特殊化学社製、商品名“G300C−L”)をシート状基材3の表面積に対して20%となるように(無機粒子4の間隙を埋めるように)散布し、その後、80℃で90分間加熱して、接着剤6を硬化させ、無機粒子4と蓄光性発光粒子5をシート状基材3の表面に固着させた。さらに、その上に、先に散布したものと同様の蓄光性発光粒子5を45質量%含有するアクリル系樹脂液を塗布し、乾燥し、合成樹脂層7を形成し、視線誘導シートとした。この製品では、無機粒子4の約30容量%の先端が、合成樹脂層7から突出していた(シート状基材3の表面積に対する、突出部分の面積比率は25%であった)。
(比較例1)
無機粒子として数平均粒径300μm(JIS R 6010に基づく粒度P50)の透光性のない褐色アルミナ(銀星有限公司社製、商品名 A砂P50)を用いたこと以外は実施例1を作製するときに採用した手順と同様の手順に従って視線誘導シートを得た。なお、無機粒子の先端は、実施例1同様、合成樹脂層から突出していた(シート状基材の表面積に対する、突出部分の面積比率は35%であった)。
(比較例2)
無機粒子として数平均粒径300μm(JIS R 6010に基づく粒度P50)の透光性のない黒色炭化ケイ素(鶏西松見研磨材社製、商品名 C砂#54)をシート状基材の面積に対して60面積%となるように散布した後、蓄光性発光粒子をシート状基材の面積に対して40面積%となるように散布したこと以外は実施例1を作製するときに採用した手順と同様の手順に従って視線誘導シートを得た。なお、無機粒子の先端は、実施例1同様、合成樹脂層から突出していた(シート状基材の表面積に対する、突出部分の面積比率は35%であった)。
(比較例3)
数平均粒径60μmの蓄光性発光粒子(根本特殊化学社製、商品名“G300C−L”)のみをシート状基材の面積に対して95面積%散布したこと以外は実施例1を作製するときに採用した手順と同様の手順に従って視線誘導シートを得た。なお、蓄光性発光粒子の担持量は実施例1と同等であった。
比較例3は無機粒子を用いず、蓄光性発光粒子のみをシート状基材表面に担持させて得た視線誘導シートである。
実施例及び比較例で得た視線誘導シートのりん光輝度を表1に示す。
Figure 2010008624
実施例1の製品は、比較例1及び2と比較して、測定角度に関係なく、4倍以上の非常に優れたりん光輝度を示した。これは実施例では、無機粒子が透光性を有するため、光は、無機粒子(防滑性骨材)の表面で反射され、内部で散乱、あるいは透過することによって、全体として蓄光性発光粒子からりん光を受けて高度に光り輝き、高水準の輝度を得ることができるのに対し、比較例では、無機粒子が透光性に欠けるため、蓄光性発光粒子から同量のりん光の放射があったとしても、りん光の一部が無機粒子に当り、その表面で吸収又は遮断されることとなり、優れたりん光輝度を得ることができなかったものと認められる。
また、実施例1は、測定角度によらず、ほぼ一定のりん光輝度を示した。これに対して、比較例1及び2は測定角度が鋭角になるほど、りん光輝度が減少する結果となった。これは、傾斜した試料は、りん光の一部が無機粒子に当り、その表面で吸収又は遮断されることの影響が大きくなるためである。また、実施例1は、測定角度が鋭角になるほど、小程度ながら、りん光輝度が増加している。これは、測定面積(投影面積)に対する試料の実際の発光面積(放射面積)の割り合いが増大するためであると思われる。
りん光輝度の試験は、床面、階段等に設置された数メートル先にある視線誘導シートを視認した際の視線誘導効果の擬似試験である。無機粒子の担持されていない比較例3のシートは、測定角度(入射角)が鋭角になるほど、りん光輝度が減少する結果となった。理由は不明であるが、この結果はりん光が無機粒子に吸収又は遮断されることがなくても、視線誘導シートを斜めから見た場合は、視線誘導効果が低下することを示している。
(実施例2)
シート状基材として、ガラスクロスとアルミニウム箔との積層体(カンボウプラス社製、商品名“ALGC アルミガラスクロス”)を用い、アルミニウム箔面に接着剤を塗布し、無機粒子4及び蓄光性発光粒子5を散布したこと、アクリル系樹脂液に青色顔料を添加したこと以外は実施例1を作製するときに採用した手順と同様の手順に従って視線誘導シートを得た。なお、無機粒子の先端は、実施例1同様、合成樹脂層から突出していた。また、蓄光性発光粒子の担持量は実施例1の0.33倍であった。
(実施例3)
シート状基材として、ポリエステルの平織り織物の両面に塩化ビニルのフィルムを積層した白色のターポリンを用いたこと、アクリル系樹脂液に青色顔料を添加したこと以外は実施例1を作製するときに採用した手順と同様の手順に従って視線誘導シートを得た。なお、無機粒子の先端は、実施例1同様、合成樹脂層から突出していた。また、蓄光性発光粒子の担持量は実施例1の0.33倍であった。
実施例2及び実施例3で得た視線誘導シートのりん光輝度を表2に示す。
Figure 2010008624
実施例2及び実施例3の製品は十分な輝度を有しており、シート状基材の種類、合成樹脂層の着色の有無によらず十分な輝度を得ることができた。なお、実施例1と実施例2及び実施例3を比較すると、実施例2及び実施例3の方が、比較的低いりん輝度を示しているが、これは、蓄光性発光粒子の担持量を減少させたためであると予想される。
実施例1〜3及び比較例1〜3の視線誘導シートの防滑性を表3に示す。
Figure 2010008624
実施例1〜3、及び比較例1、2の製品はいずれも、良好な防滑性を有していたが、比較例3の製品は滑り止めシートとして十分な防滑性を有していなかった。
本発明の視線誘導シートは、防滑性と視線誘導効果を同時に有しており、視線の角度が変化しても、明確に視線誘導シートのりん光輝度を認識でき、しかも、該りん光輝度は、暗闇の中、比較的長時間、安定して視認できるため、工業施設(工場や作業場など)、公共の建築物(役所、病院、駅構内など)、商業施設、宿泊施設などの階段や床面、路面等に避難誘導用として広く使用することができる。
実施例における「りん光輝度」の測定方法を示す説明図である。 本発明の視線誘導シートの一例の拡大断面図である。
符号の説明
1 輝度計
2 試験片
3 シート状基材
4 無機粒子
5 蓄光性発光粒子
6 接着剤
7 合成樹脂層

Claims (8)

  1. シート状基材表面に無機粒子及び蓄光性発光粒子が接着剤により担持されている視線誘導シートであって、
    前記無機粒子が透光性を有するものであり、
    前記無機粒子の60容量%以上が、前記蓄光性発光粒子の径の2倍以上の径を有するものであること、
    前記シート状基材表面に前記無機粒子が分散状態で担持されており、前記蓄光性発光粒子が前記無機粒子の間隙に担持されていること、及び
    前記シート状基材表面における前記無機粒子を担持する面と前記蓄光性発光粒子を担持する面の面積比が30〜90:70〜10であることを特徴とする視線誘導シート。
  2. 前記無機粒子が、透明、半透明又は白色である請求項1に記載の視線誘導シート。
  3. 前記無機粒子が、白色アルミナである請求項1又は2に記載の視線誘導シート。
  4. 前記シート状基材が布帛表面に合成樹脂膜を設けたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の視線誘導シート。
  5. 前記シート状基材表面に接着剤で担持された前記蓄光性発光粒子の上に、更に蓄光性発光粒子を含む合成樹脂層が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の視線誘導シート。
  6. 前記シート状基材表面に接着剤で担持された前記蓄光性発光粒子の上に、合成樹脂層が設けられており、前記無機粒子の少なくとも一部が、前記合成樹脂層より突出している請求項1〜5のいずれか1項に記載の視線誘導シート。
  7. 前記シート状基材の裏面に感圧接着剤層が離型シートで覆われた状態で設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の視線誘導シート。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の視線誘導シートからなる視線誘導テープ。
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