JP4111136B2 - 歪センサ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,人間の体重や自動車等の車両の重量等により生じる外力を感歪抵抗体の歪によって検出する歪センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2000−180255号公報に開示されている従来の歪センサは各々1つのガラス層およびオーバーコートガラス層で構成されている。以下、従来の歪センサについて、図面を参照しながら説明する。図7は従来の歪センサの上面図である。
【0003】
金属基板1の一端側に第1の固定孔20を設けるとともに、他端側に第2の固定孔21を設け、かつ略中央に検出孔22を設ける。金属基板1の上面にガラス層2を設けるとともに、ガラス層2の上面に4つの感歪抵抗体6を設ける。感歪抵抗体6を配線11及び第2の電極5によって電気的に接続することにより、ブリッジ回路を構成する。また感歪抵抗体6や第2の電極5は,オーバーコートガラス層7a,7bによって保護されている。
【0004】
図8は従来の歪センサの断面図である。図8は図7のA−A‘に相当する部分の断面を示している。ガラス層2a,2b,2cは同じホウケイ酸鉛系ガラスから構成されているため、焼結後は一体化して,互いに判別することはできない。
【0005】
図8ではガラス層2a,2b、2cの間に線を入れて便宜的に区別している。また丸空孔9は焼結後のガラス層2a,2b、2cの内部にランダムに発生しているものである。
【0006】
図8においてガラス層を3層として示したのは以下の理由による。特開平09-243472号公報は,ホーローや結晶化ガラスの代りに厚み20μmのホウケイ酸鉛系のガラスペーストを用いて,これを3回印刷焼成(印刷−焼成を互いに3回繰返す)して多層絶縁層を形成することを開示しているからである。
【0007】
以下、図7を用いて従来の歪センサの組立方法を説明する。
【0008】
まず、予め準備した金属基板1の上面にガラスペーストをスクリーン印刷した後、約850℃で焼成し、金属基板1の上面にガラス層2を形成する。次に、ガラス層2の上面にAgとPtとからなる導電性ペーストをスクリーン印刷する。次に、約850℃で焼成し、ガラス層2の上面に配線11や第2の電極5を形成する。次に、ガラス層2と第2の電極5の一部にまたがるように、Ru系抵抗ペーストを印刷した後、約850℃で焼成し、感歪抵抗体6を形成する。最後に、ガラス層2,配線11,感歪抵抗体6の上に,ガラスペーストをスクリーン印刷した後、焼成することにより、オーバーコートガラス層7a、7bを形成する。
【0009】
この時、オーバーコートガラス層のパターンに予め窓を形成しておくとこの窓から露出する配線11に、チップ部品や半導体を実装することができる。以上のように構成された従来の歪センサの動作を説明する。金属基板1における第1の固定孔20および第2の固定孔21をボルト(図示せず)およびナット(図示せず)により固定部材(図示せず)に固定した後、検出孔22に検出部材(図示せず)を固定する。そして、検出部材(図示せず)に上方より作用する外力により金属基板1が変形する。
【0010】
その結果、金属基板1の上面に設けた感歪抵抗体6に圧縮応力または引張応力が発生し、各々の感歪抵抗体6の抵抗値が変化する。感歪抵抗体6は配線11によりブリッジ回路を構成しており、ここで検出された差動電圧によって検出部材(図示せず)に加わる外力Fを検出する。図4Aは,図7,図8に示した従来の歪センサにおけるガラス層数と絶縁抵抗の関係を示すものである。図4Aより,ガラスの層数が3層,4層と多い時は絶縁抵抗が10の9乗から11乗あることが判る。しかしガラスの層数が2層になると絶縁抵抗が10の6乗から10の10乗の範囲に下がる。ガラスの層数が1層になると絶縁抵抗が更に下がっている。なお,ガラス1層での実測した絶縁抵抗はほとんど1Ω未満のショート状態で,ごく一部が数百KΩであった。図4Aのグラフには便宜上、ガラス1層の場合の絶縁抵抗を10の5乗として示している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように,従来構造の場合,ガラス層が少なくなるほど(あるいは薄くなるほど)絶縁抵抗が急激に下がると共にバラツキも大きいという信頼性の課題がある。
【0012】
さらに、実用上歪センサの絶縁抵抗は10の9乗以上必要なため,従来の構造では3層以上のガラス層が必要となる。
【0013】
そのため,製品のコストが高くなるという課題もある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
Crを含むステンレス製の金属基板と、前記金属基板の上に形成された焼成型のガラス層と、前記ガラス層の上に形成されたAgを含む焼成型の第2の電極と、前記第2の電極に電気的に接続された感歪抵抗体と、を有する歪センサであって、前記ガラス層と前記金属基板との間にAgを含む焼成型の第1の電極を設けたことを特徴とする歪センサを提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における歪センサの構造を示す図である。なお、図面は模式図であり各位置を寸法的に正しく示したものではない。金属基板1の上には第1の電極12が形成され,さらにガラス層2を介して第2の電極5と,第2の電極5に接続される感歪抵抗体6、配線11が形成される。
【0016】
また配線11は,第2の電極5と所定パターンで接続されている。さらに、オーバーコートガラス層7が設けられる。
【0017】
丸空孔9は焼結工程で発生する空孔である。図7の従来例と図1の本発明との大きな違いは,金属基板1とガラス層2の間に第1の電極12が形成されているか否かである。
【0018】
本発明では,第2の電極5や配線11と金属基板1との間に,第1の電極12を挿入することで,第2の電極5及び配線11と金属基板1との間の絶縁抵抗を高く保つことができる。
【0019】
その結果、ショート発生という不良も大幅に低減できる。
【0020】
次に,図2A〜図4Bを用いて更にその製造方法を説明する。
【0021】
図2A〜図2Dは,従来の歪センサの製造方法を説明するものである。図2Aは金属基板1を示している。なお、金属基板1の形状は必要に応じて様々な形状が使用可能である。
【0022】
次に図2Bに示すように,金属基板1の上にガラス層2を形成する。ここでガラス層の形成方法としては,市販のガラスペーストをスクリーン印刷し,850℃のベルト式焼成炉で焼成する。さらに,図2Cで示すようにガラス層3を形成する。このようにガラス層を1層以上,つまり複数層化することで,印刷時でのピンホール等の発生を防止できる。次に,図2Dに示すように,複数層からなるガラス層の上に,第2の電極5を形成する。
【0023】
実際の歪センサの製造工程においては,第2の電極5は複雑なパターン形状をしており,更にこの上に感歪抵抗体や保護層が形成されて,歪センサの完成品となる。
【0024】
さらに,図2Dは,第2の電極5と金属基板1の間の絶縁抵抗を絶縁抵抗計13で測定する様子を示している。図3は実施の形態1における本発明の歪センサの製造方法を説明するものである。図3Aは金属基板1の上に第1の電極12を形成したものである。金属基板1は厚みが2mmのステンレス基板である。ここで,第1の電極12は銀を主体とした電極インキをスクリーン印刷法により,金属基板の上に所定パターンで印刷し,ベルト炉を用いて850℃で焼成して形成する。次に図3Bに示すように,第1の電極12の上にガラス層2,3を形成する。
【0025】
次に図3Cに示すように,このガラス層3の上に第2の電極5を形成する。こうして形成したサンプルを用いて,第2の電極5と金属基板1の間,あるいは第2の電極5と第1の電極12との間の絶縁抵抗を図3Dに示すように絶縁抵抗計13を用いて測定する。図4A,図4Bは,図2や図3で説明した試作品のガラス層の層数と絶縁抵抗の関係を図示したものである。X軸はガラス層の数である。Y軸は絶縁抵抗であり,単位はΩである。
【0026】
複数の測定データ14を近似して作成したものが外挿線15である。図4Aは図2A〜図2Dで示した従来構造(図7相当)における第2の電極5と金属基板1との間の絶縁抵抗を示している。図4Aより,ガラスの層数が3層,4層と多いときは絶縁抵抗が高いが,層数が減るにつれて急激に絶縁抵抗が低下することがわかる。図4Aは,ガラス層を複数層形成してガラス層のピンホールの影響を少なくしようとしても、絶縁抵抗が大きくばらついていることを示している。図4Bは,図3Aから図3Dで示した本発明(図1相当)の構造での,第2の電極5と金属基板1との間の絶縁抵抗である。図4Bより,ガラス層の層数が1層から4層の間において絶縁抵抗が10の10乗から11乗の範囲にあることが判る。またガラスの層数が3層,2層,1層と少なくなるにつれて若干の絶縁抵抗の低下は観察されるが,ガラスの層数が1層でも,絶縁抵抗は10の10乗以上あることが判る。
【0027】
このように,図4Bの場合,ガラスは1層以上あれば,充分な絶縁抵抗が得られる。なお、ゴミ等によるピンホール発生を抑制するために、ガラス層を複数層設けても良い。
【0028】
次に第1の電極12と第2の電極5の材料を色々変更して,図2A〜図4Bに相当する実験を行った。すると金(Au)電極を用いた場合は,図4A,図Bに示したような違いは観察されなかった。そして,図4Aに示すようなガラス層の層数が低減すると,金属基板1と第2の電極5との間の絶縁抵抗が急激に低下する現象は,第2の電極5の材料としてAgを含む焼成型の電極(Ag-Pd、Ag−Pt、Ag−Pd−Pt等)の場合に発生しやすいことがわかった。また電極ペースト中にガラス成分を添加しない場合も,同様に図4Aの現象が発生した。またガラス層を形成するガラスの種類(材料,軟化点等)を変えて実験したところ,ガラスの軟化点未満では,こうした絶縁抵抗の急激な低下は観察されなかった。軟化点を超えるとこうした現象が発生しやすい傾向があった。一方,本発明のように,金属基板1の上に第1の電極12を形成した場合,ガラスの種類や軟化点の違いに関係なく,こうした絶縁抵抗の低下が防止できることが判った。
【0029】
なお,第1の電極12の形成されていないサンプル(図7の構造)と第1の電極12を形成した図3Bのサンプル(図1の構造)の両方の断面をSEMで観察すると,共に図で説明した丸空孔9が見られた。このように,第1の電極12を形成することでガラス層内の空孔を無くすことは出来ないが,ガラス層を少なく(薄くした)場合の製品の信頼性を大幅に改善できる。
【0030】
その結果、高品質で、工数を低減できるので製品のコストダウンができる。図5A,図5Bは,焼成中での金属基板と第2の電極間の電圧を説明する図である。図5Aは,サンプルを単炉内にセットし,焼成途中での電圧発生を測定した結果を示す。
【0031】
図5Bは,試作品での焼成途中での電圧を測定する様子を示す。図5Bに示すように,金属基板1や第2の電極5等に白金線を取り付け,この状態でサンプルを単炉の中にセットして昇温する(単炉は図示しない)。そしてサンプルに発生する電圧は,単炉から外に伸ばした白金線の一端に電圧計を取り付けて測定する。
【0032】
図5Aにおいて,曲線16は従来例,曲線17は本発明を示す。X軸は単炉の内部に設置した熱電対の温度であり,Y軸は電圧計で測定された電圧である。曲線17は第1の電極を形成した場合(図3の構造に相当する)の電圧を示している。金属基板1と第2の配線5の間には,ほとんど電圧が発生していないことが判る。一方,曲線16は第1の電極を設けていない場合(図2の構造に相当する)を示し,金属基板1と第2の配線5の間に電圧が発生することが判る。600℃付近から若干の電圧が発生し,850℃付近では,電圧は1V程度となる。850℃で30分間保持した場合、電圧は1.5V付近まで上がる。次に850℃から温度を下げても,まだ電圧は高めになっている。これは温度測定用の熱電対と,金属基板の熱容量の差によるものであり,単炉内の実測温度とサンプル自体の温度差の違いと考えられる。
【0033】
単炉以外の他の加熱手段を用いて、同様に各サンプルを加熱しながら電圧を測定したが,同様な結果が得られた。
【0034】
図4A〜図5Bの結果から,次のことが推定できる。つまり、図4Aの絶縁抵抗の低下現象は少なくともAgを含む焼成型の電極材料を第2の電極5に用いた時に特有的に発生するものであり,第2の電極5(850℃焼成)が形成される際に,ガラス(850℃焼成)が再溶融する。そして、ガラスが一種の固体電解質となり,金属基板1と第2の電極5間で電位差を発生させる。さらに、これが一種の電池となって絶縁抵抗の急激な低下を引き起こすと推定される。そして,金属基板1上に第1の電極12を形成することで,図5Aに示すような電圧発生が防止できる。
【0035】
その結果として,ガラス層が少ない(あるいはガラス層の厚みが薄い)場合でも、図4Bに示したような高い絶縁抵抗が得られると考えられる。なお,ガラス層を複数層にするか,あるいはガラス層の膜厚を一定以上に厚くすれば,ゴミ等によるピンホール発生を抑制し,歪センサを高歩留まりで製造することも可能である。
【0036】
(実施の形態2)
図6を用いて第1の電極12のパターン形状について説明する。
【0037】
第1の電極12は電極パターン18として形成され,金属基板1とガラス層2の間に設けられる。第2の電極5と金属基板1との間に発生する電池効果を防止するためには,第1の電極パターン18は,必ずしもベタパターンで有る必要はない。第1の電極パターン18としては,メッシュ,市松状,水玉,あるいはジグザグ等の規則正しいパターンであっても,ランダムなものであってもよい。このように,第1の電極パターンをベタでなくパターン状にすることで,第1の電極パターンに使用する電極材料の使用量を減らすことができる。そして、製品のコストダウンが可能となる。
【0038】
(実施の形態3)
実施の形態3では第1の電極のガラス成分について説明する。
【0039】
(表1)は,第1の電極12について実験した結果であり,ガラス成分がSiO2のみでは必要な接着強度が得られない。
【0040】
SiO2にPbO,CaO,Al23等の成分を1重量%程度加えることで必要な接着強度が得られる。またBi23の場合は,1重量%以上10重量%未満が適当であった。なおガラス成分が30重量%以上になると,接着強度は得られても電気的抵抗が高くなりすぎて,歪センサの電気特性を下げる可能性があり好ましくない。
【0041】
【表1】
Figure 0004111136
【0042】
上表において,(1-10)は1重量%以上10重量%未満を意味する。
【0043】
(実施の形態4)
実施の形態4では第2の電極の成分について説明する。
【0044】
(表2)は第2の電極5のガラス成分を検討した結果を示す。
【0045】
(Al23+SiO2)だけでは必要な接着強度が得られない。
【0046】
しかし,更にCaO,NiO,CuO等の成分を0.1から1重量%程度加えることで必要な接着強度が得られる。
【0047】
またBi23を添加する場合は,1重量%以上10重量%未満が好ましい。
【0048】
【表2】
Figure 0004111136
【0049】
上表において,(0.1-5)は0.1重量%以上5重量%未満,(0.5-5)は0.5重量%以上5重量%未満を意味する。
【0050】
なお、ガラス成分が30重量%以上になると,接着強度は得られても電気的抵抗が高くなりすぎ,歪センサの電気特性を下げる可能性があり好ましくない。さらに第2の電極5に,Pdを添加しておくことで,半田喰われを抑えられる。そして、第2の電極5と配線11を共通化することで,印刷回数を減らすことができる。これによりコスト低減が可能となる。また、第2の電極5は配線11として他のチップ部品や半導体を半田実装できる。
【0051】
なお,第2の電極にPdを添加する場合,Pdの添加量は5重量%以上15重量%未満が望ましい。5重量%未満の場合,半田喰われ防止効果が不充分である。また15重量%より多い場合,配線抵抗が上がり,電極コストも上がるので好ましくない。
【0052】
(実施の形態5)
実施の形態5では電極内に含まれているAg量について説明する。第1の電極や第2の電極の構成部材としては,Agを40重量%以上(望ましくは60重量%以上)含ませることで電極層に必要な抵抗値が得られる。更にPdやPt等を添加することで,配線としての各種信頼性を高められる。一方,これら第1及び第2の電極中にAgが40重量%未満しか含まれていない場合には電極層の抵抗値が高くなって,製品の特性を下げてしまう。また、ガラス成分の合計が30重量%以上になると電気的抵抗が高くなりすぎて,歪センサとしての特性を下げる場合があり好ましくない。
【0053】
以上のように,ガラス層が単層であっても絶縁抵抗を高く保つと同時に、ショートの発生率も大幅に低減できる。
【0054】
更に複数のガラス層を積層することで,ピンホール等の不良発生率を大幅に低減できるため,製品の歩留まりを高められる。
【0055】
なお、ガラス層としては,少なくともSiO2,Al23,BaOを主成分とすることで,金属基板と熱膨張係数をマッチングさせることができる。またガラス層の厚みは5μm以上500μm未満が望ましい。ガラス層の厚みが5μm未満の場合,第1の電極を形成したにも関わらず,ガラス層中の微細な孔等によって絶縁抵抗が低下する場合がある。またガラス層の厚みが500μmを超える場合,製品コストが高くなるので好ましくない。
【0056】
また,第1の電極,ガラス層,第2の電極などは600℃以上1000℃未満の酸化雰囲気内で焼成して形成することが望ましい。600℃未満で焼成した場合,電極やガラス層の焼結が不十分で所定の強度や特性が得られない場合がある。
【0057】
1000℃以上で焼成する場合,電極やガラス層,更には金属基板自体も高価で特殊な部材を選ぶ必要があり,焼成炉も高価になるので好ましくない。なお,これら部材の焼成は酸化雰囲気中で行うのが望ましい。還元雰囲気内で焼成した場合,ガラス層を形成する部材の一部(例えばPbO)が還元されて絶縁抵抗を下げる場合がある。また感歪抵抗体は500℃以上900℃未満で焼成することが望ましい。感歪抵抗体を500℃未満で焼成した場合や、900℃以上で焼成すると所定の感歪特性が得られない場合がある。また保護層にオーバーコートガラス層を用いる場合は,400℃以上800℃未満の酸化雰囲気が望ましい。
【0058】
400℃未満では所定の信頼性が得られない場合がある。
【0059】
また800℃以上で焼成すると感歪抵抗体の感歪特性を低下させる場合がある。また焼成雰囲気が還元雰囲気になると,オーバーコートガラス層の含まれているガラス成分(例えばPbO)が還元される場合があり,所定の信頼性が得られなくなる場合がある。また第1の電極の厚みは0.1μm以上100μm未満が望ましい。100μmより厚くなると焼成時に発生する内部応力によって,金属基板から剥離する場合がある。さらに、ガラス層に第1の電極の厚みに起因する大きな段差を形成するので,後の製造工程で課題が発生する可能性がある。同時に製品コストを上げる。また第1の電極の厚みが0.1μm未満の場合は,ガラス層の絶縁抵抗低下を防止する効果が得られない場合がある。
【0060】
なお,本発明において各成分の添加量は重量%で表し、酸化物は酸化物としての重量%である。こうした構成元素の割合を求めるには,完成品の断面等を,XMA(X線マイクロアナライザ)等の一般的な手法が使える。なお,この場合,元素は,酸化物(例えば,AlはAl23として)として計算できる。
【0061】
以上のように,金属基板−ガラス−配線の構成で焼成した場合,上述したようにガラスの種類や電極の材質によって,金属基板と配線間に電圧が発生する場合が有り,こうした電圧によって金属基板と配線間の絶縁抵抗が低下してしまうことがある。
【0062】
この場合,金属基板上に直接銀配線を形成しておくことで,金属基板と配線間の電圧発生を防止でき,金属基板と配線間の絶縁抵抗低下を防止できる。またこのように金属基板上に第1の電極を形成しておくことで,金属基板自体の電気抵抗を下げられるため,歪センサの電気回路的な設計やその最適化が容易になる。
【0063】
そのため,焼成時に電圧が発生しにくいガラスに対しても,同様に第1の電極を形成しておくことにより,歪センサの電気的特性を高められる。なお,金属基板としては,CrやAl23を含むフェライト系ステンレスが耐熱性の点から望ましい。
【0064】
例えばCrを5重量%以上20重量%未満,Al23を2重量%以上10重量%未満含ませたステンレス基板を用いることで,歪センサとして必要な強度と900℃付近まで充分耐えられる耐熱性が得られる。またこのとき,第1の電極側にも金属基板と共通元素であるCrやAl23を添加しておくことで互いの接続を安定化できる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば,金属基板上に第1の電極を設けることにより、金属基板と第2の電極間の絶縁抵抗を高め,信頼性の高い歪センサを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の歪センサの構造を説明する断面図
【図2】 A〜Dは,従来の歪センサの製造方法を説明する図
【図3】 A〜Dは,本発明の歪センサの製造方法を説明する図
【図4】 A、Bは,ガラス層の層数と絶縁抵抗の関係図
【図5】 A、Bは,焼成中での金属基板と第2の電極間の電圧を説明する図
【図6】 第1の電極のパターン形状を説明する断面図
【図7】 従来の歪センサの上面図
【図8】 従来の歪センサの断面図
【符号の説明】
1 金属基板
2 ガラス層
5 第2の電極
6 感歪抵抗体
7 オーバーコートガラス層
9 丸空孔
11 配線
12 第1の電極

Claims (6)

  1. Crを含むステンレス製の金属基板と、
    前記金属基板の上に形成された焼成型のガラス層と、
    前記ガラス層の上に形成されたAgを含む焼成型の第2の電極と、
    前記第2の電極に電気的に接続された感歪抵抗体と、
    を有する歪センサであって、前記ガラス層と前記金属基板との間にAgを含む焼成型の第1の電極を設けたことを特徴とする歪センサ。
  2. 請求項1記載の歪センサであって、前記第1の電極の厚みは、0.1μm以上100ミクロン以下である歪センサ。
  3. 請求項1記載の歪センサであって、前記ガラス層の厚みは5μm以上500μm以下である歪センサ。
  4. 請求項1記載の歪センサであって、前記第2の電極はAgを40重量%以上含み、Pdを5重量%以上15重量%未満含み、ガラス成分が30重量%未満である歪センサ。
  5. Crを含むステンレス製の金属基板上にAgを含む焼成型の第1の電極を形成する工程と、
    前記第1の電極の上に焼成型のガラス層を形成する工程と、
    前記ガラス層の上にAgを含む焼成型の第2の電極と配線を形成する工程と、
    前記第2の電極と電気的に接続された感歪抵抗体を形成する工程と、
    を有する歪センサの製造方法。
  6. 請求項5記載の歪センサの製造方法であって、前記第1の電極、前記ガラス層、前記第2の電極をすべて900℃未満の酸化雰囲気下で焼成して形成する歪センサの製造方法。
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