(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
図1(a)、(b)は本発明の実施の形態1によるセンサの構成を示した斜視図と断面図であり、図1(a)の切断部105における断面が図1(b)に相当するものである。
図1(a)、(b)において100は基板であり、この基板100上には絶縁層101を介して所定の配線102が形成されている。また、複数の102を接続するように金属焼結体103が形成されている。また、104は保護層であり、この保護層104は少なくとも金属焼結体103の全面と配線102の一部を覆っている。また、配線102はホイーストンブリッジ回路を形成しているが、図1(a)においてはホイーストンブリッジ回路や他の実装部品までは図示していない。
次に、図1(b)を用いて更に詳しく説明すると、基板100の上には絶縁層101を介して複数の配線102が形成され、この複数の配線102の間には金属焼結体103が形成され、少なくとも金属焼結体103の全面と配線102の一部分以上が保護層104で覆われているものである。
このように、本発明においては、センサの主要部分である感歪抵抗部を、従来の酸化ルテニウム系の材料の代わりに金属部とガラス部からなる金属焼結体を用いることになり、このような金属焼結体を用いることにより、酸化ルテニウム系の材料に比べてノイズを大幅に低減することができるようになるものである。
以下、本発明による構造や材料を用いることによりノイズ特性が大幅に改善される理由を説明すると、一般的にどのような抵抗体にも電荷のキャリアが運動することにより発生する基本的な雑音があり、このような雑音は一般的に熱雑音と呼ばれている。このような熱雑音は温度、抵抗値、測定周波数にボルツマン定数を掛けることにより求めることもできる。
また、抵抗に直流電流を流すと、このような熱雑音に加えて過剰な雑音も発生する。特に酸化ルテニウムを用いた厚膜抵抗体のような複合的な構造を持つものでは、膜中の導電率が一様ではないため、電流が揺らぐことによっても雑音が発生する。こうした雑音は電流雑音(あるいは接触雑音)と呼ばれ、このように、厚膜抵抗体に発生する雑音は上記熱雑音と電流雑音の和となるものである。
一方、歪み抵抗等のセンサで問題になるのは低周波数領域での雑音になり(一般の歪み測定においては、数MHz以上の高周波での歪みは測定する必要はない)、そのため、一般のセンサでの雑音は低周波数領域での雑音が重要になる。一般的にこのような低い周波数領域では、熱雑音よりも電流雑音が顕著になるため、感歪抵抗体の場合には電流雑音が問題となる。
次に、従来の酸化ルテニウムを感歪抵抗体に用いた場合について説明すると、従来の酸化ルテニウムを用いた厚膜抵抗体は酸化ルテニウム(導電粒子)とガラス粒子の複合焼結体である。そのために、出現する抵抗値は導電粒子とガラス粒子の混合比率(すなわち導電粒子/ガラス粒子)によって決定される。この比が小さくなると導電粒子間の距離が長くなるために抵抗値が高くなる。また、電流雑音の発生源はこの導電粒子間に発生することになり、この結果、抵抗値が高くなるほど電流雑音が高くなってしまう。
また、酸化ルテニウムを用いた感歪抵抗体はトリミングすることにより抵抗体に雑音(いわゆるノイズ)が発生することが知られている。一般的に印刷によって形成された感歪抵抗体の抵抗値精度は低いため、製品(例えば角チップ抵抗器等)にするには、トリミング(多くの場合レーザートリミングが用いられる)が不可欠な工程になる。しかしながら酸化ルテニウムを用いた感歪抵抗体をレーザートリミングすると、雑音の程度が急激に増加することが知られている。このように雑音が急増する原因は、トリミングすることによって電流が流れる有効断面積が減少したことによるものと、レーザーパワーによる切り込み部分の変質(レーザーという非常に強いパワーの影響を受けて、トリミング切り込みの周辺にマイクロクラックが発生し、電流が不安定になると思われる)と考えられる。
一方、本発明で提案する場合、酸化ルテニウム粒子(酸化ルテニウムは酸化物粉に相当する)を用いた感歪抵抗体に比べ、導電粒子が金属であり、酸化物粉に対して抵抗値が数桁低くなる。また、導電粒子の割合がガラスに対して多いため、導電粒子間の距離が短くなり、電流雑音の発生源を少なくできる。
言い換えれば、熱雑音はキャリアと格子との衝突による速度分布の揺らぎによる雑音なので、本発明による感歪抵抗体の場合でも低減することは難しい。一方の電流雑音(1/f雑音と呼ばれることもある)の場合、電流を制御している因子が揺らぎ、その結果としてキャリアの密度と電流が変調されて生じる雑音であるため、本発明で提案するように電流パスを改善することで低減できる。また、センサを構成する感歪抵抗体では、熱雑音よりも電流雑音(1/f雑音)の方が圧倒的に大きいため、この電流雑音を低減することでセンサの大幅な特性改善が可能になるものである。
なお、図1において、基板100に金属基板を用いた場合、絶縁層101にはガラス絶縁層を用いることが望ましい。なお、ガラス絶縁層の厚みは10μm以上500μm未満が望ましい。ガラス絶縁層の厚みが10μm未満の場合にはピンホール等によって絶縁劣化する場合があり、またガラス絶縁層の厚みが500μmを超えるとガラス材料費が製品の材料コストを増加させる場合があり好ましくない。
また、金属焼結体の厚みは0.001μm以上100μm未満が望ましい。金属焼結体の厚みが0.001μm未満の場合には金属焼結体を均一な厚みで形成することが難しく、感歪抵抗体として必要な特性が得られない場合がある。また厚みが100μmを超えると製品の材料コストを増加させる場合があるので好ましくない。
また、少なくとも金属焼結体の全面と配線の一部は厚み1μm以上500μm未満のガラス絶縁層で覆われていることが望ましい。ガラス絶縁層の厚みが1μm未満の場合にはガラス絶縁層のピンホール等が信頼性に影響を与える場合がある。また厚みが500μmを超えるとガラス材料費が製品の材料コストを増加させる場合があるので好ましくない。
このように基板表面に複数の配線とこの配線の一部に接するようにして複数個の金属焼結体を形成することにより、各種センサを安価に製造することができるようになる。
なお、基板100に金属基板を用いた場合、絶縁層101としてはガラス絶縁層を用いることが望ましい。この際、ガラス絶縁層の厚みは10μm以上500μm未満が望ましい。ガラス絶縁層の厚みが10μm未満の場合には絶縁層101のピンホール等で基板100と配線102の間で所定の絶縁抵抗が得られない場合がある。またガラス絶縁層の厚みが500μmを超えるとガラス絶縁層を形成するガラス材料費がコストアップの一因になる可能性があるので好ましくない。
なお、上記金属焼結体は、金属粉、合金粉またはこれらの酸化物粉が70wt%以上99.9wt%未満、または70Vol%以上99.9Vol%未満含まれていることが望ましい。合金粉としては、NiやCr、Mn、Fe等の合金や酸化物粉を用いることができる。金属焼結体におけるこれらの合金粉や酸化物粉の含有率が90wt%未満、または70Vol%未満の場合には導電性が得られない場合があり、感歪抵抗体として機能しない場合がある。また、金属焼結体における合金粉や酸化物粉の含有率が99.9wt%以上、または99.9Vol%以上の場合には金属焼結体中に含まれるガラス成分の割合が少なくなるため、金属焼結体103の強度が不足する場合があり、所定の感歪抵抗体として機能しない場合がある。
なお、金属粉は1種類の金属元素からなっても良いし、複数の金属元素の混合物であっても、または合金であっても良い。また、金属粉としてCu、Ni、Cr等の単一金属元素を用いる場合、例えばCu粉とCr粉を混合すればCu−Cr合金に相当する特性が、Cu粉とNi粉を混合して用いればCu−Ni合金に相当した特性が得られるようになるものである。
また、金属粉や合金粉だけでなく、これらの金属粉や合金粉の酸化物も添加しておくことにより、金属粉とガラス材料との濡れ性が改善でき、焼結体の強度を高くすることができる。また、これらの金属や合金の酸化物を粉と粉の接合点に形成することにより、GF等の特性を改善することもできる。なお、金属粉や合金粉は予め酸化させたものを用意して使用することもできるが、金属粉や合金粉を焼成する際の焼成条件(焼成温度、焼成雰囲気等)を調整することにより、上記金属粉や合金粉の表面に酸化層を形成することができ、これらを金属酸化物(または酸化物)として使用することもできる。
また、これらの合金粉、金属粉または酸化物粉の粒径は0.001μm以上50μm未満が望ましい。粒径が0.001μm未満の場合にはコストが高くなってしまう場合がある。また粒径が50μmを超えると金属焼結体103における金属粉どうしの接触箇所が少なくなってしまうためにノイズが大きくなったり、抵抗値がバラツキ易くなる場合があるので好ましくない。
また、金属焼結体におけるガラス材またはセラミック材の添加量は0.1wt%以上30wt%未満、または0.1Vol%以上30Vol%未満が望ましい。添加量が0.1wt%未満や0.1Vol%未満の場合には金属焼結体103の強度が不足する場合があり、感歪抵抗体としての信頼性が得られない場合がある。またこれらの添加量が30wt%以上または30Vol%以上の場合には金属焼結体が絶縁体となってしまい、感歪抵抗体として機能しない場合があるので好ましくない。
なお、金属焼結体の厚みは0.0001μm以上100μm以下が望ましい。金属焼結体の厚みが0.0001μm未満の場合には厚みが薄すぎて抵抗値バラツキが大きくなる場合がある。また厚みが100μmを超えると金属焼結体の形成や焼成が難しくなったり、あるいは金属焼結体の材料費が製品コストを押し上げる要因になる可能性があるために好ましくない。
なお、複数の金属焼結体や、金属焼結体の一部に接続された配線の一部をガラス絶縁層で覆うことにより、耐久性や信頼性を改善することができる。この場合、ガラス絶縁層の厚みは1μm以上500μm未満が望ましい。ガラス絶縁層の厚みが1μm未満の場合にはガラス絶縁層にピンホールが発生し易く、耐水性等の信頼性に課題が発生する場合がある。またガラス絶縁層の厚みが500μmを超えるとガラス絶縁層の材料費がコストアップの要因になる場合があるので好ましくない。
また、複数の金属焼結体や、金属焼結体の一部に接続された配線の一部を樹脂を主体とする絶縁層で覆うことにより、耐久性や信頼性を改善することができる。この場合、絶縁層の厚みは1μm以上500μm未満が望ましい。絶縁層の厚みが1μm未満の場合には絶縁層にピンホールが発生し易く、耐水性等の信頼性に課題が発生する場合がある。また絶縁層の厚みが500μmを超えると絶縁層の材料費がコストアップの一因になる場合があるので好ましくない。なお、このような絶縁層としては、エポキシやシリコン系の樹脂に、各種フィラー(添加剤)を添加したオーバーコート材が市販されており、このようなものを用いることができる。
また、このような金属焼結体を複数個、ブリッジ回路として配線によって接続することにより、抵抗値の変化を高精度に検出することができるようになるため、センサとしての感度を向上させることができるものである。
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
図2(a)、(b)は本発明の実施の形態2によるセンサの構成を示した断面図と要部拡大断面図であり、図2(a)は金属焼結体近傍の断面図、図2(b)は金属焼結体を更に拡大した断面図である。
図2(a)に示すように、基板100上には絶縁層101を介して複数の配線102が形成されており、さらに複数の配線102の間に金属焼結体103が形成されている。図2(b)においては、金属焼結体103は金属部106とガラス部107により構成されていることが分かる。
まず、金属焼結体の主成分である金属材料(図2(b)の金属部106に相当する)について説明すると、金属焼結体に用いる金属材料はTCRが低いことが望まれる。金属材料自体のTCRが高い場合、センサの出力が温度によって大きく変化してしまうため、センサとしての特性を低下させる場合がある。
そこで本実施の形態においては、金属焼結体に用いる金属材料について説明する。センサに求められる感歪抵抗体の特性として、TCR(温度に対する抵抗値の変化率、センサとしてはTCRが低いことが望まれる)を改善した場合について図3(a)、(b)を用いて説明する。
図3(a)、(b)はNi−Cu合金を用いてTCRを最適化する方法を示した特性図であり、図3(a)はNi−Cu合金を用いて作製した金属焼結体のTCR、図3(b)はNi−Cu合金自体のTCRを示したものである。また、同図においてX軸はNi−Cu合金の組成割合(Niの場合)、Y軸はTCR(抵抗値の温度係数、単位はppm/℃)である。
図3(a)、(b)より、Niが0%→10%→20%と増加するにつれて、TCRが徐々に低下することが分かる。そして、Niが40%〜60%付近でTCRがゼロに近づき、Niが80%、90%と増加するにつれてTCRも増加することが分かる。そしてこのような傾向は図3(a)に示した焼結体の場合でも、図3(b)に示した合金の場合でも同じような傾向を示すことが分かった。このように、金属焼結体としてNiが30〜70%のNi−Cu合金を用いることにより、金属焼結体のTCRを低減することができるものである。
なお、金属焼結体における金属とガラスの比率は金属やガラスの種類によって多少変化する場合もあるが、本発明者らの実験では、金属焼結体におけるガラス添加量は0.1wt%以上30wt%未満が適当な範囲であった。金属焼結体におけるガラス添加量が0.1wt%未満では金属焼結体の強度が不足する場合がある。またガラス添加量が30wt%以上になるとTCRが元の合金の特性から大きくずれてしまう場合があった。また、ガラス添加量が3wt%未満と少ない場合には、同じNi−Cu合金を用いた場合でも、僅かであっても更にTCRが低下する場合があった。また、ガラス添加量が10wt%を超えるとTCRが増加する場合もある。
なお、ガラス材としては硼珪酸系ガラスを用いることができる。また、必要に応じてMgOやアルミナ、マグネシア等のセラミック材を添加することにより、熱膨張係数を基板とマッチングさせることもできるようになるものである。
次に、金属焼結体の一成分であるガラス材料(ガラス材料は図2(b)のガラス部107に相当する)について説明する。図2において、金属焼結体103に用いるガラス材料は、金属焼結体103どうしを焼結(あるいは液相焼結)させるために添加されるものである。
図4(a)、(b)はNi−Cu合金を用いた場合の抵抗値を示した特性図であり、図4(a)は金属焼結体の抵抗値、図4(b)は合金自体の抵抗値を示したものである。また、同図において、X軸はNi−Cu合金の組成割合(Ni%)、Y軸はNi−Cu合金の抵抗値(単位はΩ)を示すものである。
図4(a)、(b)より、Niが0%、20%と増加するにつれて抵抗値が徐々に増加し、40%から80%付近で抵抗値が最大値を示した後、90%、100%と増加するにつれて抵抗値が下がることが分かる。このように、金属焼結体と合金の特性は同じような傾向を示すことが分かり、これにより、元々の合金として抵抗値の高いものを選ぶことによって焼結体としても抵抗値を増加させることができるものである。
なお、上記金属焼結体における金属とガラスの比率は、金属やガラスの種類によって多少変化する場合もあるが、本発明者らの実験では、金属焼結体におけるガラス添加量は1wt%以上30wt%未満が適当であった。ガラス添加量が1wt%未満では金属焼結体の強度が不足する場合がある。また、ガラス添加量が30wt%以上になるとTCRが大きく変化してしまう場合があった。また、ガラス添加量が3%〜10%の場合、抵抗値はそれほど変化しないものの、30%を超えると抵抗値が大幅に増加する場合がある。
なお、このような合金粉としては、アトマイズ法等の粉体化技術を用いることにより容易に入手可能である。また、ガラス材料としては、ホウケイ酸等の一般的なガラス材料を用いることができる。
なお、配線の厚みは2μm以上500μm未満が望ましい。配線の厚みが2μm未満の場合には配線にピンホールが発生する場合があり、金属焼結体との接続が不安定になる場合がある。また、配線の厚みが500μmを超えると、配線の材料費が増加するためにコストアップになる可能性があり、好ましくない。
また、配線としてAgを50wt%含むものを用いることが望ましい。更に、必要に応じてPdを1wt%以上40wt%未満添加することにより、配線に半導体や各種チップ部品を直接半田付けした場合の配線の半田喰われを防止することができ、更にマイグレーションも防止することができる。なお、上記Pdの添加量が1wt%未満の場合には半田喰われやマイグレーション防止の効果が少ない場合がある。また、Pdの添加量が40wt%を超えると配線の抵抗値が高くなり、ブリッジ回路に影響を与え、更には配線自体の材料コストが上がってしまうので好ましくない。
また、配線にPtを1wt%以上30wt%未満添加することにより、配線に半導体や各種チップ部品を直接半田付けする場合に無鉛半田を使用することができる。配線にPtを加えることにより、無鉛半田は半田喰われや半田付け後の各種信頼性を改善することができる。なお、配線に添加するPtの添加量が1wt%未満の場合には無鉛半田での半田喰われや信頼性の改善効果が少ない場合がある。また、Ptの添加量を30wt%以上に増やすことは配線材料のコストアップの要因になるので好ましくない。
なお、Ni−Cu合金の場合、Ag電極と組み合わせる場合に焼成温度を高くするとCuとAgが反応してしまう場合があり、このような場合にはAgとCuの反応(一種の合金化)を防止するためには焼成温度を下げることにより対応できる。具体的には、高温で焼成したAg電極上にNi−Cu合金ペーストを印刷して低温でNi−Cu合金を焼成したり、高温で焼成したNi−Cu合金上に低温でAg電極を焼成しても良い。また、Ni−Cu合金の焼成条件によっては表面が酸化されやすい場合があり、このような場合には酸化雰囲気ではなく、中性雰囲気で焼成すれば良い。
なお、金属焼結体のTCRは、−1000ppm/℃以上+1000ppm/℃未満が望ましい。TCRが−1000ppm/℃より低い場合、あるいは+1000ppm/℃より高い場合にはセンサとしての温度特性が低下するため、センサとしての特性が低下するので好ましくない。
なお、金属焼結体のTCRは±100ppm/℃以下(すなわち、−100ppm/℃〜+100ppm/℃の範囲)が望ましい。しかしながら、金属焼結体自体の特性が±500ppm/℃以下(すなわち、−500ppm/℃〜+500ppm/℃の範囲)であっても、このTCRの大きな金属焼結体に別の配線部材を組み合わせることにより、トータルとしてのTCRを低下(すなわち、0に近づける)させることも可能なものである。
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
本実施の形態では、Ni−Cr合金を用いて金属焼結体を作製する例について説明する。
図5(a)、(b)はNi−Cr合金を用いてTCRを最適化する方法を示した特性図で有り、図5(a)はNi−Crを用いて作製した金属焼結体のTCR、図5(b)はNi−Cr合金自体のTCRである。また、同図においてX軸はNi−Cr合金におけるCrの含有率(%)であり、Y軸は同サンプルのTCR(抵抗値の温度係数、単位はppm/℃)である。
図5(a)、(b)より、Cuが0%→10%→20%と増加するにつれてTCRが徐々に低下し、20%以上になると殆ど一定になるというのが分かるものである。
図6(a)、(b)はNi−Cr合金を用いた場合の抵抗値を示した特性図であり、同図においてX軸はNi−Cr合金の組成割合(Cr%)、Y軸はNi−Cr合金の抵抗値(単位はΩ)である。
図5(a)、(b)より、Crが0%→10%と増加するにつれて抵抗値が急激に増加し、Crが20%程度で抵抗値が増加し難くなる。本発明者らが調べたところ、抵抗値の最大値はCr44%付近であり、その値は110μΩcmであった。このようにNi−Cr合金中のCr量を最適化することにより、Ni−Cr合金で作製した感歪抵抗体の抵抗値を増加することができる。
なお、一般的にCrの多い合金材料は硬すぎて加工し難いことが多いが、例えばアトマイズ法等を用いて合金粉化することにより合金粉化できる。また、合金粉化した後は、金属粉がガラスを用いて液相焼結させることにより金属焼結体を形成するため、特に課題は発生しない。
なお、このような合金粉としては、アトマイズ法等の粉体化技術を用いることにより容易に入手可能である。また、ガラス材料としては、ホウケイ酸鉛ガラスやホウケイ酸ビスマスガラス等の一般的なガラス材料を用いることができる。
また、このようなNi−Cr合金としては、日本電熱線1号(Ni=78.6%、Cr=17.2%、Fe=1.4%、Mn=2.7%、Cu=0.03%、Si=0.07%)、日本電熱線2号(Ni=69.3%、Cr=16.9%、Fe=12.0%、Mn=1.7%、Si=0.08%)、ドライバーハリスIII(Ni=84.0%、Cr=15.0%、Fe=1.0%)、クロメルA(Ni=78.6%、Cr=19.0%、Fe=1.05%、Mn=1.04%、Cu=0.003%、Si=0.28%)、クロメルB(Ni=90.0%、Cr=10.0%)、クロメルC(Ni=64.0%、Cr=11.0%、Fe=25.0%)等を用いることもできる。
更にFe−Cr−Al合金として、鉄クロム電熱線1号(Cr=23〜26%、Al=4〜6%、Mn<1.0%、残部Fe)、鉄クロム電熱線2号(Cr=17〜21%、Al=2〜4%、Mn<1.0%、残部Fe)、日本電熱線3号(Fe=69〜76%、Cr=20〜25%、Al=4〜6%)、カンタルA−I(Cr=24%、Al=5.5%、Co=1〜2.5%、残部Fe)、マスコロイ(N=70〜75%、Cr=22〜25%、Mn=3〜5%)等を用いることができる。
このような材料は抵抗値も高く、耐熱性、耐酸化性にも優れているため、感歪抵抗体として用いることができる。なお、このような合金粉としては、アトマイズ法等の粉体化技術を用いることにより容易に入手可能である。また、ガラス材料としては、ホウケイ酸等の一般的なガラス材料を用いることができる。
なお、配線の厚みは2μm以上500μm未満が望ましい。配線の厚みが2μm未満の場合には配線にピンホールが発生する場合があり、金属焼結体との接続が不安定になる場合がある。また、配線の厚みが500μmを超えると配線の材料費が増加してコストアップになる可能性があるために好ましくない。
また、配線としてAgを50wt%含むものを用いることが望ましい。更に必要に応じてPdを1wt%以上40wt%未満添加することにより、配線に半導体や各種チップ部品を直接半田付けした場合の半田喰われを防止することができ、更にマイグレーションも防止することができる。
なお、配線へのPdの添加量が40wt%を超えると配線の抵抗値が高くなってブリッジ回路に影響を与える場合があり、更に配線自体の材料コストが上がってしまうので好ましくない。
また、配線にPtを1wt%以上30wt%未満添加することにより、配線に半導体や各種チップ部品を直接半田付けする場合に無鉛半田を使用することができる。配線にPtを加えることにより、無鉛半田は半田喰われや半田付け後の各種信頼性を改善することができる。なお、配線へのPtの添加量が1wt%未満の場合には無鉛半田での半田喰われや信頼性の改善効果が少ない場合がある。また、Ptの添加量を30wt%以上に増やすことは配線材料のコストアップの要因になるために好ましくない。
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて、本発明の特に請求項11に記載の発明について説明する。
本実施の形態では、金属焼結体として使用可能な合金材料の一例について説明する。
本発明の金属焼結体に用いる合金粉としては、金属焼結体に加工した後のTCRが低いこと(100ppm/℃未満が望ましい)である。本発明で用いる金属焼結体は、電流は合金体の中を流れるため、TCRの低い合金材料を用いることが望ましい。また、TCRの低い合金材料を用いた場合でも、添加するガラスの量や種類によってTCRが上がる場合もある。このようなことから、合金材料としてはできるだけTCRの低いものを選び、金属焼結体を形成するためのガラス材料や焼成温度は、できるだけTCRを増加させない組み合わせにすることが望ましい。
なお、このような合金として、以下のような合金を感歪抵抗体に用いることができる。
名称:Advance、化学成分(Ni=45%、Cu=54%、Mn=1%)、非抵抗=49μΩcm、TCR=略ゼロ。
名称:Ideal、化学成分(Ni=45%、Cu=55%)、非抵抗=49μΩcm、TCR=約5ppm。
名称:Constantan、化学成分(Ni=40〜45%、Cu=55〜60%)、非抵抗=50μΩcm、TCR=略ゼロ。
名称:Manganin、化学成分(Ni=2〜16%、Cu=50〜85%、Mn=12〜30%)、非抵抗=42〜48μΩcm、TCR=約10ppm。
名称:Reistin、化学成分(Cu=84〜86%、Fe=2%、Mn=11〜13%)、非抵抗=50μΩcm、TCR=10ppm。
また、これらの合金以外に、Corsoninte合金(別名Corson合金、ニッケル青銅合金の一種で、Ni20%未満のもの)を用いることもできる。更に、Mnを銅の脱酸素剤として加えたマンガン青銅合金を使用することもできる。マンガン青銅合金の一例として、Mnを15%含ませることにより、TCRが2〜3ppm、比抵抗が50μΩcmのものが知られている。特にMn15%のものは、融解点が960℃であるために焼成温度が900℃で使用することができる。また、抵抗体の焼成温度として高いものが必要な場合には、Mnの含有率を減らすことによりマンガン青銅合金の融解温度を上げることもできる。
このように、金属粉または合金粉にNi、Cr、Cu、Mn、Feのうち少なくとも1種類以上を含有させることにより、金属焼結体を感歪抵抗体として活用することができるものである。
(実施の形態5)
以下、実施の形態5を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
本実施の形態においては、基板としてセラミック基板を用いた場合について説明する。
図7(a)、(b)は本発明の実施の形態5によるセンサを示した斜視図と断面図であり、図7(a)の切断部105における断面が図7(b)に相当するものである。
同図において108は絶縁基板であり、ガラスやセラミック等で形成されており、この絶縁基板108上に所定の配線102が形成されている。また、複数の配線を接続するように金属焼結体103が形成されている。また、104は保護層であり、少なくとも金属焼結体103の全面と配線102の一部を覆っている。また、配線102はホイーストンブリッジ回路等を形成しているが、図7(a)においてはそこまで図示していない。
図7(b)において、絶縁基板108上には複数の配線102が形成され、この複数の配線102の間には金属焼結体103が形成され、少なくとも金属焼結体103の全面と配線102の一部分以上が保護層104で覆われている。
このように構成された本実施の形態のセンサと上記実施の形態1で示した図1のセンサとの違いは、センサの母体となる基板材料が導体(図1の場合)であるか、絶縁体(図7の場合)であるかの違いである。このように本実施の形態のように基板に絶縁体を用いることによりガラス層を省略することができるようになるものである。また、このように基板に絶縁体を用いた場合には、基板と複数の配線や、この配線の一部に接するようにして形成した複数の金属焼結体の間にガラス絶縁層を形成する必要は無くなるものである。
(実施の形態6)
図8(a)〜(c)は本実施の形態による金属焼結体のパターンの一例を示した平面図と、この金属焼結体パターンと配線の接続状態を示した断面図であり、同図において109は金属焼結体パターンであり、ジグザグ(またはつづら折り)状に形成されており、このように金属焼結体パターン109の引き回しを長くする(言い換えると配線長さを長く、配線幅を短く)することにより、金属焼結体の抵抗値を高めることができるものである。なお、図8(a)においては、金属焼結体パターン109を覆っている保護層は図示していない。
また、図8(b)に示すように、基板100の上に絶縁層101を介して複数の配線102が形成され、この複数の配線102上にこれらを接続するように金属焼結体パターン109が形成されている。
また、図8(c)に示すように、基板100の上に絶縁層101を介して複数の配線102が形成されると共に、絶縁層101上に形成された金属焼結体パターン109の両端に配線102が形成されている。
なお、上記配線102として銀を主体として構成した場合には、繰り返し焼成することにより金属焼結体パターン109が銀に喰われてしまったり、金属焼結体パターン109の内部に銀が拡散して抵抗値やTCRを変化させる場合がある。このような場合には、配線材料にもNi−CrやNi−Cu合金等を用いることにより解決することができる。
また、このような金属材料を配線に用いた場合には、半田付けが難しい場合があり、このような合金材料を配線に用いた場合には、ニッケルや錫メッキ、あるいは半田メッキ等を行うことにより半田付けできるようになるものである。
(実施の形態7)
以下、実施の形態7を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
本実施の形態においては、金属焼結体を金属ペーストの焼結によって形成する方法について説明する。このような方法により、所定の金属粉をペースト化(以下、合金ペーストという)し、これを焼成することにより、本発明の焼結体を安価に、かつバラツキを抑えながら所定の形状に形成することができる。
図9は本発明の実施の形態7による合金ペーストの構成を示した拡大図であり、図9において21は合金粉、22はガラス粉である。合金ペーストはこのような合金粉21をガラス粉22と共にビヒクル(樹脂を溶剤に溶解したもので、図9には図示していない)の中に分散されている。
このように、本実施の形態においては、合金粉21は変形することなくガラス粉22と共にビヒクル中に分散されているため、この合金ペーストは印刷性に優れたものとなっている。合金粉21が変形(ガラス粉22によって削られたり、潰されたり)した場合には、ペーストの印刷性も影響を受ける(例えば、スクリーン印刷する際に用いるスクリーン版をつめてしまう場合や、印刷したペーストの流動性が影響を受けるためにレベリング性が低下して塗膜にピンホールが発生し易くなる場合がある)が、本発明のように合金粉21が殆ど変形していない場合には、ペーストが乾燥してなる乾燥塗膜も緻密になり、内部にボイド(空隙)が発生し難い。そのため、このような緻密な乾燥塗膜が焼結してなる金属焼結体103も緻密になり、諸特性のバラツキを抑えながら高いレベルで安定化させることが可能になるものである。
図10(a)〜(c)と図11(a)〜(d)は本実施の形態による合金ペーストの製造方法を示した製造工程図であり、図10(a)において22はガラス粉、23は樹脂、24は溶剤、25は有機添加剤であり、このように合金ペーストを構成する部材の合金ペースト粉以外の材料を図10(b)に示すように分散させるものである。
図10(b)において、28は分散装置27が回転する方向を示す矢印であり、26はアルミナやジルコニア等のビーズである。このビーズ26が入った分散装置27に図10(a)のガラス粉22、樹脂23、溶剤24、有機添加剤25を投入し、分散装置27を矢印28のように回転させることによりガラス粉22を分散し、ガラス粉22、樹脂23、溶剤24、有機添加剤25よりなるガラスペースト(図10では示していない)を形成した後、このようにして作製されたガラスペーストを図10(c)に示すように濾過し、ガラス粉22の凝集体や大粒子を除去する。
図10(c)において29はメッシュ、30は濾過装置、31は回収タンクであり、上記図10(b)で作製されたガラスペーストは矢印32に示すようにして濾過装置30にセットされたメッシュ29で濾過され、回収タンク31に回収される。
図11は合金粉をペースト化する方法を示したものであり、図11(a)において33は合金粉、23は樹脂、24は溶剤、25は有機添加剤であり、このように合金ペーストを構成する部材の合金ペースト粉以外の材料を図11(b)に示す攪拌装置35に投入し、矢印34のように回転する攪拌部分36によって混練させるものである。
また、図11(c)は混練装置である三本ロールを示したものであり、必要に応じて三本ロール37を用いても良い。更に、必要に応じて図11(d)に示すように、メッシュ29がセットされた濾過装置30で濾過し、回収タンク31に回収することもできる。
このように、本実施の形態においては、ガラス粉22と合金粉33を別々に分けて分散することにより、合金粉33の変形を防止することができるようになるものであり、このように別々に分散させたペーストどうしをブレンドすることにより、目的とする合金ペーストを製造することができる。
このようにして製造された合金ペーストは、上記図9に示すように、特に合金粉21の変形も少なく、このように作製された合金ペーストは所定の粘度に調整された後に所定のパターンに印刷されて焼成される。このようにして作製された金属焼結体103は緻密な構造を示し、特性のばらつきも極めて少ないものであった。
なお、本発明者らの実験によれば、ガラス粉22の分散が重要な場合が多かった(ガラス粉22に破砕粉を用いた場合には分散が難しく、破砕粉を分散したとしても比較的大きなガラス粉22が残っている場合が多く、このような大きなガラス粉22が金属焼結体の特性に影響を与える場合が多かった)。一方、合金粉33に球形の物を用いた場合には、合金粉33の分散はそれほど重要ではない(ガラス粉22に比較して簡単に解れ、分散し易い)場合があった。そのため、このようにガラス粉22と合金粉33を最後まで別々に分散する必要はない。
本発明者らの実験によると、予めガラス粉22を図10(a)〜図10(c)のようにペースト状に分散、濾過した後、ここに合金粉33を所定量添加して図11(c)に示す三本ロール37を用いて分散し、最後に図11(d)に示すように濾過させることも可能であった。このようにガラス粉22をペースト化した後に合金粉33を添加することにより、合金ペーストの製造コストを低減することができるが、三本ロールを用いた分散方法に熟練していない場合には、かえって合金粉33を変形させてしまう場合がある。
なお、本実施の形態のように、合金粉を感歪抵抗体に用いる場合には、原理的にGFの値を従来の箔ゲージよりも高くすることができる。従来の箔ゲージの場合、箔ゲージを構成する合金は均質である。しかしながら、本実施の形態のように合金粉を感歪抵抗体に用いる場合には、焼成雰囲気や合金粉の組成を最適化することによりGFを高めることができる。このようなGFアップの一手段として、合金粉の中心部は低抵抗(酸化されていないため)であり、合金粉の高抵抗層(合金表面が酸化されるため)を組み合わせることができる。このように合金粉どうしの接触部分の抵抗を利用することによりGFを高めることができるものである。
また、金属焼結体に用いるガラス材料を工夫することによってもGFを高めることができ、またガラス粉に酸化クロム等の酸化物を添加することによってもGFを高めることができる。このようにクロムと酸化クロム等の金属/金属酸化物を組み合わせることによりGFを高めることができるものである。
なお、感歪抵抗体ペーストとしては、ニッケル、クロム、銅のうち少なくとも1種類以上を含む、粒径0.001μm以上50μm未満の金属粉体が、濃度5wt%以上90wt%未満で、軟化点が300℃以上900℃未満でのガラス粉が、濃度0.1wt%以上20wt%未満で、樹脂溶液中に0.01ポイズ以上1000ポイズ未満に分散されていることが望ましい。このように、ニッケル、クロム、銅を一種類以上含んだ金属粉を用い、これをペーストとして所定の形状に印刷した後、焼成して金属焼結体を形成することにより、感歪抵抗体として機能させることができるようになるものである。
なお、これらの金属粉体の粒径は、0.001μm以上50μm未満が望ましい。金属粉体の粒径が0.001μm未満の場合には、粉体のBET値(比表面積)が大きくなり、ペースト化し難い場合がある。また、粒径が50μmを超えるとスクリーン版のスクリーンを詰めてしまう場合があるので好ましくない。
また、ペースト中の金属粉体の濃度は5wt%以上90wt%未満が望ましい。濃度が5wt%未満の場合には、ペーストが乾燥してできた塗膜中の金属粉体の密度が低く、焼結した後でも所定の特性が得られない場合がある。また、濃度が90wt%を超えた場合には、ペースト中に占める金属含有率が高すぎてペーストの印刷特性に影響を与え、印刷した時に塗膜にピンホールが発生し易かったり、レベリング(印刷後、ペーストが平坦化すること)し難くなる場合がある。
また、感歪抵抗体ペーストの粘度は0.01ポイズ以上1000ポイズ未満が望ましい。ペーストの粘度が0.01ポイズ以下の場合には、本発明者らが提案したインキジェット技術(例えば、米国特許第6,487,774号)を用いてもパターニングすることは難しい。なお、ペーストの粘度が0.01ポイズ以上1ポイズ程度では、上記インキジェット技術を用いることによりパターン形成を行うことができる。また、粘度が1ポイズ以上10ポイズ程度では、本発明者らが提案したグラビア技術(例えば、登録特許第3180718号)を用い、また粘度が10ポイズ以上1000ポイズ程度では、一般的なスクリーン印刷を用いることができる。なお、ペーストの粘度は、ズリ速度(単位は1/s、一般的な回転式粘度計の場合、粘度計の回転数に比例する)が0.01/s〜10000/sの範囲の任意の点であればよい。
また、このようにして形成した感歪抵抗ペーストを300℃以上950℃未満で焼成することにより、感歪抵抗体として機能する金属焼結体を形成することができる。焼成温度が300℃未満の場合には、金属焼結体の焼結が不十分なために所定の強度が得られない場合がある。また、焼成温度が950℃を超えると、金属焼結体の焼結が進みすぎて感歪抵抗体として所定の特性が得られない場合があったり、金属基板を用いた場合は高価な高耐熱性金属材料を使う必要があるためにコストアップになるために好ましくない。
なお、感歪抵抗体ペーストのTCRは200ppm/℃以下(すなわち−200ppm/℃〜+200ppm/℃の範囲)が望ましい。この範囲を超えると、配線材料を組み合わせてもTCRを下げる(すなわちゼロに近づける)ことが難しくなる場合がある。また、TCRが200ppm/℃以下の合金粉もしくは金属粉をペースト中に10wt%以上80wt%未満含ませることにより、ペーストを感歪抵抗体として機能させることができるようになるものである。
なお、感歪抵抗体ペーストには、軟化点が300℃以上900℃未満のガラス粉が0.1wt%以上20wt%未満含まれていることが望ましく、ガラスの軟化点が300℃未満の場合には荷重センサとしての使用温度の影響を受け易く、安定性に影響を与える場合がある。また、軟化点が900℃以上の場合には、金属焼結体の焼成温度を高くする必要があり、基板材料に耐熱性の高い材料を使う必要があると共に焼成炉も高価になるために好ましくない。
また、ガラス粉の濃度が0.1wt%未満の場合には金属焼結体の強度が不足する場合がある。また、ガラス粉の濃度が20wt%を超えると金属焼結体が絶縁体になってしまい、感歪抵抗体として機能しない場合がある。
また、感歪抵抗体ペースト中には樹脂が0.1wt%以上20wt%未満含まれていることが望ましい。樹脂の含有量が0.1wt%未満の場合には、感歪抵抗体が乾燥されてなる塗膜の強度が低下し、基板表面から剥がれ易くなる場合がある。また、樹脂の含有量が20wt%以上の場合には、感歪抵抗体が焼成されてなる金属焼結体にボイド(小さな穴)が発生し易くなる場合があり、その結果、感歪抵抗体の特性にバラツキが発生し易くなるので好ましくない。
なお、感歪抵抗体ペーストを作製する場合、ガラス粉を分散して作製したガラスペーストの中に、合金粉や金属粉を添加してインキ化することが望ましい。ガラス粉と合金粉や金属粉を同時に混練した場合には、合金粉や金属粉にダメージや変形が発生する場合があるためである。
以上のように金属粉をペースト化してセンサを製造することができるものであり、すなわち、複数の配線が形成された基板の上に、ニッケル、クロム、銅のうち少なくとも1種類以上を含む、粒径0.0001μm以上50μm未満の金属粉体が濃度5wt%以上90wt%未満で、樹脂溶液中に0.01ポイズ以上1000ポイズ未満に分散されてなる感歪抵抗パターンを形成した後、300℃以上950℃未満で焼成することにより製造することができる。ニッケル、クロム、銅のうち1種類以上を含む金属粉でペーストを作製し、これを焼成することによりセンサを製造することができる。
以上のように合金粉をペースト化してセンサを製造することができるものであり、すなわち、複数の配線が形成された基板の上に、ニッケル、クロム、銅のうち少なくとも1種類以上を含む、粒径0.0001μm以上50μm未満の合金粉体が濃度5wt%以上90wt%未満で、樹脂溶液中に0.01ポイズ以上1000ポイズ未満に分散されてなる感歪抵抗パターンを形成した後、300℃以上950℃未満で焼成することによりセンサを製造することができる。
あるいは、TCRの低い金属粉を選ぶことでもセンサを製造できる。すなわち、複数の配線が形成された基板の上に、TCRが200ppm/℃未満で、粒径0.0001μm以上50μm未満の合金粉が濃度5wt%以上90wt%未満で、樹脂溶液中に10wt%以上80wt%未満で分散されてなる感歪抵抗ペーストパターンを形成した後、300℃以上950℃未満で焼成することによりセンサを製造することができる。