JP4109830B2 - 静電的に制御されるトンネリング・トランジスタ - Google Patents

静電的に制御されるトンネリング・トランジスタ Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に固体スイッチング・デバイスおよび増幅デバイス、すなわちトランジスタに関する。より詳細には、本発明は、トンネル接合を有するトンネリング・トランジスタ・デバイスに関する。
【0002】
(背景)
MOSFETトランジスタなどの相補形金属酸化物半導体(CMOS)デバイスは通例、高速、高度集積回路に使用される。集積回路メーカは常に、動作速度を高め、MOSFETトランジスタのサイズを縮小している。そのような改善によって、より低いコストでより多くの機能をもつ、より小さく、より速いICを生じている。
【0003】
しかしながら、MOSFETデバイスを0.1ミクロン未満でスケーリングすることに関する様々な問題がある。例えば、0.1ミクロン未満のチャネル長では、所要のチャネル・ドーピング・レベルが非常に高くなる。ウエハの表面に高い均一性で高いドーピング・レベルを生じることは困難である。したがって、高いドーピング・レベルを使用する場合、同じウエハに製造される異なるMOSFETは全く異なる特性を有することになる。また、個々のMOSFETのドレイン領域とソース領域との間の容量結合が大きくなる。また、そのようなデバイスを大量生産する際の問題がある。
【0004】
これらの理由で、研究員たちは、非常に小さいデバイスにおける電子の量子挙動に基づいてトランジスタ・デバイスを調査している。電子のトンネル効果を利用したいくつかのそのようなデバイスが当技術分野において知られている。
【0005】
例えば、Baba他の米国特許出願第5705827号には、絶縁ゲートを有するトンネリング・トランジスタ・デバイスが開示されている。トランジスタの動作は、MOSFETデバイスの場合と同様に、ゲート電極に隣接する電流チャネルにおけるバンド曲げによって行われる。ドレイン電極は電流チャネルとのエサキ・トンネル接合を形成している。
【0006】
Harder他の米国特許出願第4675711号には、トンネル効果層に隣接して配設された絶縁ゲート電極を使用したトンネリング・トランジスタが開示されている。トンネル効果層は、半導体ソースおよびドレイン・コンタクトのものとは異なるバンド・ギャップ・エネルギーを有する。ゲートに電圧を印加するとトンネル効果層のエネルギー障壁高さが変化し、それによってトンネル層中のトンネル電流を制御する。このデバイスは、熱的に励起されるキャリヤによりトンネル層中に伝導が生じないように、低温で動作しなければならない。
【0007】
Shibataの米国特許出願第5834793号には、絶縁ゲート・コンタクトを有するトンネル効果MOSFETトランジスタ・デバイスが開示されている。ゲート・コンタクトに隣接して短い電流チャネルがある。ソースおよびドレイン・コンタクトは、厚さ約30オングストロームの誘電体トンネル障壁によって電流チャネルから分離される。このデバイスは、電流チャネルにおける離散的エネルギー状態のために負の抵抗特性を示す。
【0008】
Tamuraの米国特許出願第5291274号には、トンネリング・トランジスタが開示されている。Tamuraのトランジスタは、2つのトンネル接合の間に配設された中間層高誘電率材料を有する。中間層はゲート電極と直接接触する。ソースとドレイン電極はトンネル接合に接触して設けられる。ゲート電極に電圧を印加したとき、中間層の電位が変化し、それにより電子がソースとドレインの間を突き抜けることができる。Tamuraのデバイスに関する問題は、デバイスがオンのときにゲート電極との間で電流が流れることである。したがって、Tamuraのデバイスは連続動作のために連続ゲート電流を必要とする。このことは、多くの用途において非常に望ましくない。
【0009】
上記の他に、他の研究員たちが、トンネル接合を有する単電子トランジスタの使用を調査している。単電子トランジスタは、高い抵抗を有する2つのトンネル接合の間に配設された非常に小さい金属または半導体のアイランドを有する。ソースおよびドレイン・コンタクトがトンネル接合に形成される。アイランドに容量結合されたゲート電極によりスイッチング制御を行う。アイランドは、アイランドを単電子で充電するために必要なエネルギーがソースおよびドレイン・コンタクトにおける電子に対して利用可能な熱エネルギーよりも大きくなるように、十分に小さく製作される。アイランドを単電子で充電するために必要なエネルギーは、eを電子の電荷とし、Cをアイランドの容量として、EC=e2/2Cで与えられる。アイランドを充電するこのエネルギー要件はクーロン閉塞(Coulomb blockade)と呼ばれる。
【0010】
動作に際しては、ゲート電極に電圧を印加するとアイランドの電位が容量的に上昇または下降する。アイランド電位がある量だけ降下したとき、電子が一つのトンネル接合を突き抜けてアイランドに達し、他のトンネル接合を突き抜けてアイランドから離れることができる。このようにして、ゲート電圧のある値に対して電流がアイランド中を流れることができる。単電子トランジスタの抵抗は、ゲート電圧が単調に変化するにつれて振れる。
【0011】
もちろん、利用可能な熱エネルギーは温度とともに増大し、したがって単電子トランジスタは、それが動作可能な最大温度を有する。最大動作温度は、アイランドのサイズの関数であるアイランドの容量によって決定される。室温で動作するデバイスの場合、容量Cは約10アットファラッド未満でなければならない。そのような低容量を実現するには、アイランドを非常に小さく(すなわち、ある面において10nm未満に)し、かつソース、ドレインおよびゲートから比較的遠くに配置する必要がある。室温で動作する単電子トランジスタを製作することは非常に困難である。
【0012】
単電子トランジスタの設計における重要な関心はトンネル接合の抵抗である。単電子トランジスタは、比較的高い(すなわち、hをプランク定数として、量子抵抗Rq=h/2e2=26Kオームよりもはるかに大きい)抵抗をもつトンネル接合を有することが最善である。トンネル接合の抵抗が低すぎる場合、アイランド上の電子の数は明確でなくなる。単電子トランジスタが動作するには、電子位置がアイランド中にあるかまたはアイランド外にあるかが明確になるように、トンネル接合が十分に高い抵抗を有する必要がある。しかしながら、トンネル接合抵抗が高いと、十分な「オン」状態でも、ソースおよびドレイン・コンタクトの間の抵抗が高くなる。高い抵抗はスイッチング速度を制限し、デバイスの電力消費を増大させる。したがって、単電子トランジスタは、その電気的特性および潜在的用途が制限される。
【0013】
単電子トランジスタの顕著な特徴は、アイランドを半導体材料または金属で製作できることである。アイランドは、電子エネルギー・バンド・ギャップを有する材料で製作する必要はない。
【0014】
(発明の概要)
それぞれほぼ量子抵抗に等しいかまたはそれよりも小さい抵抗を有する一対のトンネル接合(または障壁)を有するトランジスタを本明細書で開示する。トンネル接合は、エネルギー状態の不均一密度を有する材料で形成されたアイランド(例えば、利用可能なエネルギー状態を含有しない少なくとも1つの領域に隣接する利用可能なエネルギー状態を含有する少なくとも1つの領域)によって互いに分離される。トンネル接合はそれぞれ、一対の導体(例えば、ソースおよびドレイン導体)のそれぞれの導体とアイランドの間に配設され、ゲート電極がアイランドに容量結合される。
【0015】
ある場合には、アイランドを半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウムまたは他の半導体で形成することができる。他の場合には、超伝導体を使用することができる。トンネル障壁は、導体(および/またはゲート電極)またはアイランドを製造した材料の酸化物で形成することができ、あるいはすべて異なる材料で形成することもできる。動作に際しては、ゲート電極への電圧の印加によってアイランドのエネルギー状態をシフトすることによって、トンネル接合間の伝導経路を形成することができる。次いで、ソースおよびドレイン電極を介して伝導経路に電流を突き抜けさせることができる。
【0016】
一実施態様では、電流切り換え用装置は、バンド・ギャップを有する材料(例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体材料)で製作されたオーム的に絶縁されたアイランドを有する。アイランドは、アイランド内の電子エネルギー準位が好ましくは100meV未満で分離されるように十分に大きい。この装置はまた、ソース・コンタクトを有し、かつソース・コンタクトとアイランドの間に配置された第1のトンネル接合障壁を有する。第1のトンネル接合障壁は、ソース・コンタクトと第1のトンネル接合障壁とアイランドとの相互接続によって形成された第1のトンネル接合が量子抵抗よりも小さい、すなわち26Kオームよりも小さい抵抗を有するように選択された厚さと面積を有する。この装置はまた、ドレイン・コンタクトを有するとともにドレイン・コンタクトとアイランドの間に配置された第2のトンネル接合障壁を有する。第2のトンネル接合障壁は、ドレイン・コンタクトと第2のトンネル接合障壁とアイランドとの相互接続によって形成された第2のトンネル接合が量子抵抗よりも小さい抵抗を有するように選択された厚さと面積を有する。この装置はまた、アイランドに容量結合されたゲート電極を有する。
【0017】
ある場合には、第1および第2のトンネル接合は10Kオーム未満の抵抗を有することができる。さらに、他の実施態様では、第1および第2のトンネル接合は1Kオーム未満、さらには100オーム未満の抵抗を有することができる。
【0018】
第1および第2のトンネル接合障壁は、二酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの絶縁材料で製作することができ、また、約0.2〜2.0ミクロンの距離だけ分離することができる。
【0019】
この装置は、ゲート電極とアイランドの間に配設された絶縁層を含むことが好ましい。
【0020】
本トランジスタを、制限ではなく例として添付の図面に例示する。
【0021】
(詳細な説明)
低抵抗トンネル接合を使用するスイッチング・デバイスを本明細書で開示する。より詳細には、それぞれほぼ量子抵抗に等しいかまたはそれよりも小さい抵抗(Rq=h/2e2)をもち、かつエネルギー状態の不均一密度を有する材料で形成されたアイランドによって互いに分離される一対のトンネル接合を有するトランジスタのようなデバイスを提案する。低抵抗トンネル接合の使用は、単電子トランジスタなどにおいて使用される手法と対照をなす。本質的に、クローン閉塞手法を避けることによって、本回路は、クローン閉塞デバイスに加えられる厳しいサイズ制限なしに室温で動作することができる。さらに、本回路は、動作のためのデバイスのエネルギー・スケールを設定するために量子ウェルに依拠する、共振トンネリング・トランジスタ(RTT)および同様のデバイスとは異なる。いくつかの例示する実施形態に関して本デバイスについて論じるが、本明細書を再検討すれば、本回路がいくつかのやり方で構成でき、また様々なシステムに応用できることを当業者なら理解するであろう。したがって、以下の説明では、例示する実施形態は、例示的なものにすぎないと考えるべきであり、範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0022】
より正確には、本トランジスタは、バンド・ギャップを有する材料で製作されたアイランドを含む。アイランドは、電子エネルギー状態が100meV未満(すなわち、バンド・ギャップではなく、価電子帯または伝導帯におけるエネルギー状態)によって分離されるように十分に大きいことが好ましい。したがって、室温では、アイランドの価電子帯および伝導帯は連続的なエネルギー・バンドとして作用する。アイランドは、オーム性伝導経路によってトランジスタの他の領域に接続されていない領域と見ることができる。金属リード線をソースおよびドレイン電極用に使用することができ、またゲート電極をアイランドに容量結合することができる。トンネル接合は、アイランドとソースおよびドレイン電極との間に配設されるトンネル接合障壁の相互接続に形成することができ、またこれらのトンネル接合障壁は絶縁材料で形成することができる。上記のように、トンネル接合は量子抵抗よりも小さい、例えば26Kオーム未満の抵抗を有する。これは、本トランジスタがスイッチング作用を達成するためにクーロン閉塞に依拠しないために可能となる。
【0023】
図1に本トランジスタの一実施形態を示す。厚さ40の絶縁層22(例えばSiO2)が基板20上に配設される。基板は、適切な半導体材料、例えばシリコンで製作される。したがって、層22は、半導体処理分野において通例行われるようにウェットまたはドライ酸化によって成長させることができる。ゲート電極24が基板20と層22の間に配置される。
【0024】
アイランド26は、層22の上に配置され、ゲート24の反対側に整合され、それによりゲートとアイランドが容量結合される。アイランドは、ドーピングなしを含む広い範囲のドーピング・レベルを有する。ソース・コンタクト28およびドレイン・コンタクト30がアイランド26の両側に設けられ、薄い絶縁膜32がソース28とアイランド26の間に第1のトンネル接合34を形成する。膜32はまた、ドレイン30とアイランド26の間に第2のトンネル接合36を形成する。第1のトンネル接合34(すなわち、第1のトンネル接合の点における膜32)は厚さ35を有し、第2のトンネル接合36(すなわち、第2のトンネル接合の点における膜32)は厚さ37を有する。厚さ35、37は膜32の厚さによって決定される。膜32は、アイランド26を製作した材料(例えば、その酸化物)、ソースおよびドレイン・コンタクト28および30を製作した材料(例えば、その酸化物)、またはすべて異なる材料から形成することができることに留意されたい。
【0025】
ソース・コンタクト28およびドレイン・コンタクト30は、アルミニウム、銅、金、チタンなどの金属で製作することが好ましい。金属で製作したソースおよびドレイン・コンタクトは、金属がより高いキャリア移動度を有するので好まれる。したがって、金属のソースおよびドレイン・コンタクトは、(例えば、半導体などの他の材料で形成したコンタクトよりも)優れた高周波性能およびスイッチングおよび低電力特性を与える。
【0026】
図1の装置は対称形であることに留意されたい。すなわち、ソース28とドレイン30は交換可能であり、トンネル接合34とトンネル接合36も交換可能である。本トランジスタのほとんどの実施形態は対称形である。ただし、本トランジスタのいくつかの実施形態では第1のトンネル接合34と第2のトンネル接合36は等しくなく、したがって、これらの実施形態では装置は対称形ではない。
【0027】
膜32は、トンネル接合34および36が比較的低い抵抗を有するように非常に薄いことが好ましい。例えば、膜32は厚さ1〜40オングストロームにすることができる。膜32は、例えば気相成長法(CVD)プロセスによって、またはアイランド材料を酸化することによって形成することができる。もちろん、膜32を製作する材料に応じて、他の製造プロセスを使用することができる。図において、膜32はアイランド26全体を覆うように示されているが、他の実施形態では、膜32は、トンネル接合34および36に近い領域内でのみアイランドを覆うようにしてもよい。
【0028】
アイランド26は、シリコン、ゲルマニウムまたは他の半導体材料などの、バンド・ギャップを有する材料で製作される。アイランド26はまた、臨界温度以下に冷却したときのバンド・ギャップを有する半導体材料で製作することができる。アイランド26は金属では製作されない。アイランド26は、ドープされた(またはドープされていない)半導体材料で製作されることが好ましい。したがって、本トランジスタの実施形態は、pおよびnドープされた半導体アイランドを有するp型およびn型デバイスを含む。
【0029】
トンネル接合34および36はそれぞれ、量子抵抗(例えば、約26Kオーム)未満の抵抗を有する。第1のトンネル接合34の抵抗は、厚さ35、およびソース28とアイランド26の間の膜32のコンタクト表面積(すなわち、接合面積)によって決定される。第2のトンネル接合36の抵抗は、厚さ37、およびドレイン30とアイランド26の間の膜32のコンタクト表面積によって決定される。トンネル接合34、36の抵抗は、接合面積とともに直線的に変化し(接合面積が大きいほど抵抗は小さくなる)、厚さとともに指数関数的に変化する。(接合が薄いほど抵抗は小さくなる)。以下の表に、異なる抵抗を有するトンネル接合の例示的(および近似的)厚さおよび接合面積を示す。
【表1】
Figure 0004109830
【0030】
トンネル接合34および36はそれぞれ10Kオーム未満の抵抗を有することがより好ましく、1000Kオーム未満の抵抗を有することが最も好ましい。これらの抵抗値は、トンネル接合34および36の区域内の膜32の厚さおよび接合面積を適切に選択することによって達成される。接合厚さと接合面積の多数の異なる組合せが量子抵抗よりも小さい接合抵抗を与えることは当業者には明らかであろう。
【0031】
ゲート24は層22を介してアイランド26に容量結合される。厚さ40は、ゲート24とアイランド26の間の抵抗が、本質的が電流が流れないように非常に高くなるように十分に厚い。例えば、この抵抗は108 オーム程度またはそれ以上、より好ましくは、1010〜1012オーム程度またはそれ以上にすることができる。ゲート24とアイランド26は容量結合されているだけなので、本質的にトンネル電流またはオーム性電流がゲート24とアイランド26の間に流れることはできない。
【0032】
図2に、ソース28、ドレイン30またはゲート26に電圧が加えられていないn型デバイスの概略バンド図を示す。この実施形態では、アイランド26はnドープされた半導体材料で製作される。ソース28とドレイン30は金属で、したがってそれぞれ明確なフェルミ準位42sおよび42dを有する。アイランド26はフェルミ準位43を有する。アイランド26は、例えば0.5〜3電子ボルト程度のバンド・ギャップ52を有する。トンネル接合34および36(すなわち、ソース/ドレインとアイランドの間に配設されたトンネル接合障壁)は絶縁材料で製作され、したがってアイランド26と比較して大きいバンド・ギャップ50を有する。また、アイランド伝導帯54およびアイランド価電子帯56も示されている。アイランド26はnドープされた半導体材料で製作されているので、価電子帯56は完全に充満しており、伝導帯54は部分的に充満している。また、アイランドのフェルミ準位43は伝導帯54に比較的近く、ドナー準位45は伝導帯縁部のすぐ下にある。
【0033】
伝導帯54および価電子帯56は水平線で示される多数の電子エネルギー準位58を有する。当技術分野において知られているように、エネルギー準位58間の間隔はアイランド26のサイズおよびアイランドをなしている材料に依存する。本トランジスタでは、アイランド26は、エネルギー準位58がエネルギーにおいて約100meV未満、より好ましくは約50meV未満、最も好ましくは約25meV未満で分離されるように設計される。これは、本トランジスタでは、室温で、価電子帯および伝導帯がほぼ連続的なバンドとして作用することが保証されるので好ましい。これは、室温(すなわち、Tが約300K)では、Kb をボルツマン定数とすると、KbT が25meVとなるからである。言い換えれば、エネルギー準位58が25〜100meVより狭く分離される場合、室温の電子はエネルギー準位58間を進むのに十分な熱エネルギーを有する。
【0034】
図3に、(一実施形態において)本トランジスタが電気回路においてどのように使用されるかを例示する電気概略図を示す。ソース28、ドレイン30、アイランド26、およびトンネル接合34、36が示されている。コンデンサ60はゲート24とアイランド26の間の容量を表す。バイアス電圧供給源Vb 61はソース28とドレイン30の間に電圧を供給する。このバイアス供給源はソースおよびドレインに両方の極性の電圧を供給することができる。ゲート電圧供給源Vg 62はゲート24およびドレインの間に電圧を供給する。ゲート電圧供給源62はドレイン30に対してゲート24に正ならびに負の電圧を供給することができる。
【0035】
図4に、バイアス供給源61がドレイン30に対してソース28に小さい負の電圧を印加している間のn型デバイスのバンド図を示す。ゲート電圧Vg はゼロである(すなわち、ゲート24とドレイン30は同じ電圧である)。第1のトンネル接合34の両端間の電圧55は、一部接合容量が異なるために第2のトンネル接合36の両端間の電圧57に等しくない。より一般的には、トンネル接合34および36の両端間の相対電圧はソース28と、アイランド26と、ドレイン30と、ゲート24との間の相対容量に依存する。また、トンネル接合34および36の両端間の電圧が異なるのはゲート24がドレイン30と同じ電圧であることによる。
【0036】
伝導帯54の底縁部がエネルギーにおいてソースのフェルミ準位よりも高いので、電流がソース28とドレイン30の間を突き抜けない。したがって、ソースのフェルミ準位42sにある電子は伝導帯54中のエネルギー準位58まで突き抜けることができない。また、価電子帯56中の電子はドレインのフェルミ準位42dにあるエネルギー準位に突き抜けることができない。
【0037】
図5に、バイアス供給源61が伝導を引き起こすのにちょうど十分なバイアス電圧を加えている間のデバイスのバンド図を示す。この場合も、ゲート電圧Vg はゼロである。図5において印加されるバイアス電圧は図4において印加されるバイアス電圧よりも大きい。(ゲート電圧を印加しないで)伝導に必要なバイアス電圧は、ソースのフェルミ準位42sを伝導帯54またはドナー準位45と整合させる電圧である。ソース28中のフェルミ準位Ef にある電子は、64で伝導帯54まで突き抜け、次いで66で伝導帯からドレインまで突き抜ける。これらの電子はドレインのフェルミ準位42dより上の熱電子としてドレインに到達する。この場合も、トンネル接合34および36の両端間の電圧は、場合によっては相対容量が異なるため、ならびにゲート24とドレイン30が同じ電圧であることにより、等しくないものとして示されている。接合34および36の両端間の電圧は本トランジスタでは等しくすることも、等しくなくすることもできることに留意されたい。
【0038】
図6に、ドレイン30に対して正の電圧がゲート24に印加されたn型デバイスのバンド・ギャップ図を示す。伝導帯54は、エネルギーにおいてソースとドレインのフェルミ準位42s、42dと整合するように引き下げられる。したがって、ドレイン30に対して小さい負の電圧をソース28に印加すると、電子がソース28からアイランド26へ、ドレイン30へ突き抜けることができる。あるいは、ドレイン30に負の電圧を印加すると、電子がドレイン30から、アイランド26へ、ソース28へ突き抜けることになる。したがって、ドレイン30に対して十分な正のバイアスをゲート24に印加すると、デバイスは電流を両方向に伝導することとなる。
【0039】
要約すると、アイランド26がnドープされた半導体材料で製作されている場合には、正のゲート電圧Vg を印加すると、伝導を可能にするのに必要なバイアス電圧Vb が減少する。反対に、nドープされたデバイスの場合には、負のゲート電圧Vgにより、伝導を引き起こすのに必要なバイアス電圧Vbが増大する。
【0040】
図7に、ゲート電圧Vg の様々な値に対するバイアス電圧(すなわち、ソース28とドレイン30の間の電圧)対ドレイン電流のプロットを示す。図7のプロットはnドープされた半導体アイランド26をもつデバイスの場合である。Vd はドレイン電圧を表し、Vs はソース電圧を表す。しきい値バイアス電圧70は、ソースのフェルミ準位42sが伝導帯54の底縁部と整合するバイアス電圧である。図5のエネルギー・バンド図はほぼしきい値70に対応する。
【0041】
相補形しきい値バイアス電圧72は、ドレインに負の電圧を印加した場合のバイアス電圧を表す。しきい値バイアス70と相補形しきい値バイアス電圧72は必ずしも同じ電圧強度を有するとは限らない。しきい値70および72はゼロ・ゲート電圧に対して定義される。
【0042】
しきい値バイアス電圧70および72は一部アイランド26のバンド・ギャップ52によって決まることに留意されたい。バンド・ギャップ・エネルギー52が高い(例えば4〜5電子ボルトの)場合、しきい値バイアス電圧70および72は相対的に高くなる。バンド・ギャップ・エネルギーが低い(例えば0.2〜1.5電子ボルトの)場合、しきい値バイアス電圧70および72は相対的に低くなる。
【0043】
また、しきい値バイアス電圧70および72はアイランド26のドーピング・レベルに依存する。アイランドが高度にドープされている場合、しきい値バイアス電圧は相対的に低くなり、アイランドが軽度にドープされている場合、しきい値バイアス電圧は相対的に高くなる。
【0044】
しきい値バイアス電圧70および72はまたトンネル接合34および36の相対容量に依存する。例えば、ソース28がドレイン30に対して負であり、かつ第1のトンネル接合34が相対的に低い容量を有する場合について考えてみる。ソース28とドレイン30の間に印加される電圧は、たいてい第1のトンネル接合34の両端間となる。したがって、ソースのフェルミ準位42sと伝導帯54を整合させるために相対的に低い電圧だけが必要である。すなわち、しきい値電圧70は相対的に低くなる。相補形しきい値バイアス電圧72は相対的に高くなる。最も一般的には、第1および第2のトンネル接合特性の間の差はしきい値バイアス電圧70および相補形しきい値バイアス電圧72の差を生じる。
【0045】
図8に、アイランドがpドープされている、すなわち「p型」デバイスである本トランジスタの一実施形態を示す。伝導帯54および価電子帯56は、nドープされたアイランド26を有する図2のデバイスと比較してエネルギーにおいて上にシフトされる。図8のpドープされたアイランド26は、価電子帯縁部よりわずかに上にあるアクセプタ状態78を有する。p型デバイスは、価電子帯56がソースのフェルミ準位42sまたはドレインのフェルミ準位42dと整合しているときにソース28とドレイン30の間で伝導する。
【0046】
図9に、負のゲート電圧が印加されたp型デバイスを示す。価電子帯56およびアクセプタ状態78はエネルギーにおいて高められており、かつソースのフェルミ準位42sまたはドレインのフェルミ準位42dと整合している。ドレイン30に対して負の電圧がソース28に印加されたとき、電子が80でソース28、ゲート26およびドレイン30の間を突き抜ける。あるいは、ソース28に対して負の電圧がドレイン30に印加される。もちろん、アイランド26はドープされていないこともあることを想起されたい。
【0047】
上記の実施形態は本発明のより広い範囲から逸脱することなく多くのやり方で変更できることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は首記の請求の範囲およびその法的等価物によって決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるトランジスタ構造を示す図である。
【図2】 アイランドがnドープされている特定の実施形態における、図1に例示されたデバイスのエネルギー・バンド図である。
【図3】 図1に示されたデバイスを使用するための回路を例示する図である。
【図4】 ソースとドレインの間に電位が印加され、ゲートとドレインの間にゼロ電位が印加された、図2に例示されたデバイスのエネルギー・バンド図である。
【図5】 伝導のために十分な電位がソースとドレインの間に印加された、図2のデバイスのエネルギー・バンド図である。
【図6】 ドレインに対して正の電位がゲートに印加された、図2のデバイスのエネルギー・バンド図である。
【図7】 本発明によって構成したn型デバイスの1組のI−V(電流−電圧)曲線を示す図である。
【図8】 アイランドがpドープされている本トランジスタ、すなわちp型デバイスの一実施形態を示す図である。
【図9】 負のゲート電圧が印加された、本発明によって構成したp型デバイスのエネルギー・バンド図である。

Claims (11)

  1. a)バンド・ギャップを有する材料で構成されたオームミックに絶縁されたアイランドであって、アイランド内の電子エネルギー準位が100meV未満で分離されるように十分に大きいアイランドと、
    b)ソース・コンタクトと、
    c)アイランドと金属のソース・コンタクトの間に配設された第1のトンネル接合障壁であって、ソース・コンタクトと第1のトンネル接合障壁とアイランドとによって形成された第1のトンネル接合が量子抵抗よりも小さい抵抗を有するように選択された厚さと面積を有する第1のトンネル接合障壁と、
    d)ドレイン・コンタクトと、
    e)アイランドと金属のドレイン・コンタクトの間に配設された第2のトンネル接合障壁であって、ドレイン・コンタクトと第2のトンネル接合障壁とアイランドとによって形成された第2のトンネル接合が量子抵抗よりも小さい抵抗を有するように選択された厚さと面積を有する第2のトンネル接合障壁と、
    f)アイランドに容量結合されたゲート電極と
    を備えている電流切り換え用装置。
  2. アイランドが、シリコンまたはゲルマニウムから選択された半導体材料を含んでいる請求項1に記載の装置。
  3. 第1のトンネル接合および第2のトンネル接合がそれぞれ、10Kオーム未満の抵抗を有する請求項1に記載の装置。
  4. 第1のトンネル接合および第2のトンネル接合がそれぞれ、1Kオーム未満の抵抗を有する請求項1に記載の装置。
  5. 第1のトンネル接合および第2のトンネル接合がそれぞれ、100オーム未満の抵抗を有する請求項1に記載の装置。
  6. 第1のトンネル接合障壁および第2のトンネル接合障壁がそれぞれ、24オングストロームより小さい厚さおよび0.04ミクロン2 より大きい面積を有する請求項1に記載の装置。
  7. 第1のトンネル接合障壁および第2のトンネル接合障壁がそれぞれ、18オングストロームより小さい厚さおよび0.01ミクロン2 より大きい面積を有する請求項1に記載の装置。
  8. 第1のトンネル接合障壁および第2のトンネル接合障壁がそれぞれ、12オングストロームより小さい厚さおよび0.0025ミクロン2 より大きい面積を有する請求項1に記載の装置。
  9. 第1および第2のトンネル接合障壁が、酸化ケイ素または酸化アルミニウムから選択された絶縁材料を含んでいる請求項1に記載の装置。
  10. さらに、ゲート電極とアイランドの間に配設されたゲート絶縁層を含んでいる請求項1に記載の装置。
  11. 第1のトンネル接合と第2のトンネル接合の間のチャネル長さが、0.02〜0.2ミクロンの範囲内である請求項10に記載の装置。
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