JP4109804B2 - 香味油含有マイクロカプセルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香味油含有マイクロカプセルの製造方法およびこの方法により製造されたマイクロカプセルに関する。さらに詳しくは、本発明はW/O型エマルションを内包する香味油含有マイクロカプセルの製造方法およびこの方法で製造されたマイクロカプセルに関する。本発明の方法は、種々の成分系を含む香味油をマイクロカプセル化し、乾燥粉体とするのに適している。
【0002】
【従来の技術】
香味油は粘性のある油性液体である場合が多く、取り扱いが煩雑となるため、粉末化して用いられることが多い。従来から行われている粉末化の手法としては、サイクロデキストリンなどによる包接、担体への吸着、噴霧乾燥などが行われている。しかしながら、これらの手法では高含油量の粉体を得ることが困難であり、香味の強度を維持することができず、また高含油量粉体での高い流動性を確保することも難しい。
【0003】
これに対し、マイクロカプセルによる粉末化が、他の方法では達成困難な50%以上の高い含油量を可能とし、しかも粉末としての良好な流動性を確保できる手法として期待されている。オリフィス法は、現在実用化されているマイクロカプセル化法であるが、生産効率が悪いためコストの上昇を招き、また得られるマイクロカプセルの粒子径が大きくなる傾向があり、高含油量の粉末としてのマイクロカプセルを得ることは困難である。
【0004】
一方、香味油をコアセルベーションによりマイクロカプセル化して香味油含有マイクロカプセルを得る方法が提案されている(特表平8−501441公報)。この方法によれば、小さな粒子で高い含油量及び流動性を保ち、安価な含油粉末を提供することができる。このコアセルベーション法によれば、精製された油をマイクロカプセル化することはできるが、未精製の動植物油脂、天然オレオレジン等、複雑な成分系を持つ香味油のマイクロカプセル化を試みた場合、マイクロカプセルが形成されないか、又は調製されたマイクロカプセルが元の風味と全く違ったものになってしまうという問題点を有している。
【0005】
コアセルベーションによらないマイクロカプセル化方法として、W/O/W型エマルション粒子を親水性膜形成物質で覆い、膜形成物質を硬化させてマイクロカプセル化する方法が提案されている(特開平10−174861公報)。この方法においてコアセルベーション法を採らない理由として、ゼラチンによるコアセルベーション法によりW/O型エマルションをカプセル化する提案が特公昭37−3874号および同37−3875号公報等に記載されているが、これらの場合、W/O型エマルションを調製する際に配合する界面活性剤により、ゼラチンのコアセルベートがW/O型エマルションに吸着するのを阻害したり、低濃度のマイクロカプセル分散液しか得られないなどの欠点があることがあげられている。上記方法によれば、使用される香味油は特に制限されないという利点はあるが、硬化した膜形成物質相を砕いてマイクロカプセルを取り出すか、あるいは有機溶媒中で分散硬化させた後有機溶媒を蒸発させて取り出すため、機械的衝撃によりカプセルが破壊される可能性があり、また、食品用としては溶剤の残存が問題となるなど、有機溶媒の取り扱い上の問題などの不利点を有している。またこの方法では油性液体の含有量を大きくするのが困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、素材が複雑な成分系を有する香味油であっても高含油量でマイクロカプセル化することのできる、簡便なマイクロカプセルの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来マイクロカプセル化が困難とされていた香味油には、微量の界面活性物質或いは少量の極性物質が含有されていることが原因であることを突き止め、そのような香味油は水性液体およびレシチンまたはHLB値0.1〜4の乳化剤を加えW/O型エマルションを形成させ、該エマルションをゼラチン水溶液に加え、コアセルベート化することによりマイクロカプセル化することができること、該マイクロカプセルには香味油本来の風味がよく保持されていることを発見し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は香味油、水性液体およびレシチンまたはHLB値0.1〜4の乳化剤からなる混合物を攪拌してW/O型エマルションを形成させ、該W/O型エマルションをゼラチン水溶液にゼラチンのゲル化点以上の温度で加えて攪拌し、次いでコアセルベート化剤の水溶液を加えて該W/O型エマルションの粒子の周りにゼラチンのコアセルベートを形成させ、次いで該W/O型エマルションをゼラチンのゲル化点より低い温度に保持することを特徴とする香味油含有マイクロカプセルの製造方法及びこの方法により製造されたマイクロカプセルよりなる。
【0009】
本発明で用いられる香味油には特に制限はなく、従来コアセルベーション法でマイクロカプセル化できなかった香味油も使用することができる。即ち、微量の界面活性物質あるいは少量の極性物質を含有するもの、例えばラード、ヘット、バター、エキストラバージンオリーブオイルなどの未精製動植物油脂類、カプシカムオレオレジン、バニラエキストラクト、カツオ節抽出物などの天然物オレオレジン類、ラー油などの香味油類、脂肪酸類、アミン類、アルコール類、フェノール類、含硫化合物及び界面活性物質などの極性物質を好ましくは0.001〜20.0重量%、更に好ましくは0.01〜10.0重量%を含有する油溶性香料類があげられる。上記極性物質は、例えば水−オクタノール分配係数の対数、LogKOW値で−0.3〜3.0、より好ましくは0.05〜2.0の範囲にある化合物と言い換えることもできる。これら香味油は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0010】
本発明で用いられる水性液体は、水または水溶液であり、水溶液としては可食性物質の水溶液であれば特に限定されるものではない。可食性物質の例としては、例えば塩および酸類として、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、クエン酸、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、コハク酸、乳酸、乳酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウムなどが例示される。
【0011】
上記物質以外に多価アルコール、あるいは糖アルコール、糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質も可食性物質として使用できる。多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオール類などが例示され、糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マルチトールなどが例示され、糖としては、フルクトース、グルコース、リボース、シュークロース、マルトース、ラクトース、トレハオース、水飴、デキストリン類、アラビアゴム、カラギーナン、キチン、アルギン酸など水溶性のものが例示され、アミノ酸として、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジンなどが例示され、ペプチドおよびタンパク質としては、グルタチオン、ゼラチンなどが例示される。これらの1種又は2種以上の組み合わせた水溶性溶液として用いることができる。
【0012】
濃度は多価アルコールには特に限定はないが、多価アルコール以外の物質の水溶液では、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満が用いられる。塩濃度が20%を越えた場合、W/O乳化物の経時安定性が悪くなる可能性がある。水性液体として上記のような可食性物質の水溶液を用いることにより、W/O型エマルションを安定化することができる。
【0013】
香味油と水性液体との重量比は特に限定されるものではないが、好ましくは100:0.1〜300であり、更に好ましくは100:1.0〜100である。この比が100:0.1未満或いは100:300を越えた場合は、マイクロカプセルの収率が悪くなる傾向にある。
【0014】
本発明で用いられる乳化剤は、レシチンまたはHLB値が0.1〜4.0の乳化剤であれば特に限定されないが、好ましくはHLB値が0.1〜3.0、より好ましくは0.1〜2.0のものが用いられる。そのような乳化剤としてはポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、大豆レシチン、卵黄レシチンなどの中から適宜選択され、1種又は2種以上の組み合わせで用いることができる。香味油と乳化剤との重量比は特に限定されるものではないが、好ましくは100:0.01〜10、より好ましくは100:0.05〜8、更に好ましくは100:0.1〜5で用いることができる。100:0.01未満であれば乳化が不完全になる可能性があり、100:10を越えると経済的に効率が悪くなる。
【0015】
本発明で用いられるゼラチンとしては、未精製ゼラチン、精製ゼラチン、酸分解ゼラチン、酵素分解ゼラチンなどが例示され、特に限定されるものではないが、好ましくは精製ゼラチンが用いられる。香味油とゼラチンとの重量比は特に限定されるものではないが、好ましくは100:1〜100、より好ましくは100:10〜60の範囲で用いられる。この比が100:1未満であればマイクロカプセルの皮膜が薄く、強度に問題が生じることがあり、100:100を越えると、マイクロカプセルの皮膜が厚く、香味に悪影響を与える可能性がある。
【0016】
本発明で用いられるコアセルベート化剤としては、通常ゼラチンのコアセルベート化に使用されるものを特に制限なく用いることができる。特にアラビアガム、カラギーナン、CMC類、有機または無機の塩からなる電解質物質、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムのような陽イオンを有する塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩のような陰イオンを有する塩が使用される。さらに水溶解性の液体であって、その中にゼラチンが水よりも少なく溶解するような液体物質、例えば、エタノール、プロパノールのようなアルコール類を用いることもできる。
【0017】
本発明の方法におけるエマルション形成工程およびコアセルベーション工程は、W/O型エマルション形成工程でレシチンまたはHLB値0.1〜4の乳化剤を使用する以外はそれ自体公知の方法によって実施される。
【0018】
例えば、本発明の方法は、香味油に水性液体および乳化剤を加え、乳化機を用いてW/O型エマルションを形成させ、これをゼラチン水溶液中に50〜60℃で加え、攪拌下可食性塩水溶液を加え、徐々に冷却してエマルション粒子の周りにコアセルベーションを形成硬化させ、水溶液中から形成されたマイクロカプセルを濾過などにより取り出し、必要によりデンプンなどの乾燥助剤とともに乾燥することによって容易に実施される。このようにして得られるマイクロカプセルは、香味油の種類に影響されることなく、かつ香味油本来の風味を忠実に再現したものである。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0019】
【実施例】
実施例 1
チキンオイル100gに、HLB 0.3のテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1gを溶解させ、1%の食塩水25gとともにクレアミックス(エム・テクニック社製)で20000rpm、3分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として通風乾燥を行いマイクロカプセルを35g得た。
【0020】
比較例 1
チキンオイル75gに、 HLB 4.3のモノグリセリド1gを溶解させ、1%の食塩水25gとともにクレアミックスで20000rpm、3分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却したが、コアセルベートをエマルション油滴のまわりに付着させカプセル壁を形成させることはできなかった。
【0021】
実施例 2
チキンオイル100gに、大豆レシチン0.03gを溶解させ、水0.3gを加え、超音波で15分間乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として流動層で乾燥しマイクロカプセルを20g得た。
【0022】
比較例 2
チキンオイルを30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却しても、コアセルベートはエマルション油滴のごく一部にしか付着せずカプセルとすることができなかった。
【0023】
実施例 3
ジンジャーオレオレジンを50%含むなたね油50gに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.5gを加え、1%の食塩水50gとともにホモミキサー(特殊機化社製)で10000rpm、15分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥しマイクロカプセルを33g得た。
【0024】
比較例 3
ジンジャーオレオレジンを50%含むなたね油30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却したが、コアセルベートはエマルション油滴のごく一部にしか付着せずカプセルとすることができなかった。
【0025】
実施例 4
カツオ節の香味油50gに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.5gを加え、1%の食塩水50gとともにホモミキサーで10000rpm、15分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥しマイクロカプセルを35g得た。
【0026】
比較例 4
カツオ節の香味油30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却して、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。しかしながら、このカプセル壁は皮膜が極めて弱く、乾燥工程中でコアセルベートが崩壊するため、乾燥マイクロカプセルとして得ることはできなかった。
【0027】
実施例 5
エタノールを3.75%含む醤油香料75gに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.5gを加え、1%の食塩水50gとともにホモミキサーで10000rpm、15分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥しマイクロカプセルを35g得た。
【0028】
比較例 5
エタノールを2.5%含む醤油香料30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を60mL添加し、ついで炭酸ナトリウム9gを水36mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却したが、コアセルベートはエマルション油滴のごく一部にしか付着せずカプセルとすることができなかった。
【0029】
実施例 6
カプロン酸1%を含むコーン油50gに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.5gを溶解させ、0.9%の食塩水50gとともにクレアミックスで20000rpm、2分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.7gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥しマイクロカプセルを35g得た。
【0030】
比較例 6
カプロン酸1%を含むコーン油30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.7gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却したが、コアセルベートはエマルション油滴のごく一部にしか付着せずカプセルとすることができなかった。
【0031】
実施例 7
ロースト醤油風味の香味油75gに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.5gを加え、10%の醤油水溶液50gとともにホモミキサーで10000rpm、15分間で攪拌乳化した。得られたエマルションの30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥しマイクロカプセルを30g得た。このマイクロカプセルは、元々の香味油が有していた、ローストした醤油の風味をそのまま保持していた。
【0032】
比較例 7
ロースト醤油風味の香味油30gを、50℃に加温した10%ゼラチン水溶液60mLに加え、エマルション滴を形成させた。水を70mL添加し、ついでメタリン酸0.6gを水60mLに溶解させた塩溶液を滴下し、滴下後ゼラチン溶液を徐々に冷却し、エマルション油滴のまわりにコアセルベートを付着させカプセル壁を形成させた。得られたカプセルを水溶液中より濾別し、デンプンを乾燥助剤として、流動層で乾燥し、マイクロカプセルを37g得た。しかしながら、このマイクロカプセルは、香味油が元々持っていたローストした醤油の風味とかけはなれた風味であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、未精製動植物油脂類、天然物オレオレンジ、極性物質や界面活性剤を含んだ香味油類など従来コアセルベーション法によるマイクロカプセル化が困難であった複雑な成分系を有する香味油を簡便にかつ本来の風味を保持したままマイクロカプセル化することができる。本発明の方法によって得られる香味油含有マイクロカプセルは、W/O型エマルション粒子の外面をコアセルベートにより形成され、冷却により硬化されたゼラチン層で被覆した構造を有している。カプセルは、水存在下50℃以上に温められると破壊されるので、本発明の香味油含有マイクロカプセルを添加した調味料や食品を温めるかあるいは温められた調味料や食品にこれを添加することにより封入されていた香味が溶け出し、所望の香味を呈させることができる。
Claims (8)
- 香味油、水性液体およびレシチンまたはHLB値0.1〜4の乳化剤からなる混合物を攪拌してW/O型エマルションを形成させ、該W/O型エマルションをゼラチン水溶液にゼラチンのゲル化点以上の温度で加えて攪拌し、次いでコアセルベート化剤の水溶液を加えて該W/O型エマルションの粒子の周りにゼラチンのコアセルベートを形成させ、次いで該W/O型エマルションをゼラチンのゲル化点より低い温度に保持して該コアセルベートを硬化させることを特徴とする香味油含有マイクロカプセルの製造方法。
- 香味油が未精製動植物油脂、天然物オレオレジンまたは0.001〜20.0重量%の極性物質を含有する油性香料またはこれらの2種以上の混合物である請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 極性物質が、酸類、アミン類、アルコール類、フェノール類または含硫化合物からなる香味を有する化合物または界面活性物質である請求項2記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 香味油と水性液体との重量比が、100:0.1〜300である請求項1〜3記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 水性液体が、水、0.01〜20重量%濃度の塩水溶液、多価アルコール水溶液あるいは0.01〜20重量%濃度の糖アルコール、糖、アミノ酸、ペプチドもしくはタンパク質水溶液である請求項1〜4記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 香味油と乳化剤との重量比が、100:0.05〜8であることを特徴とする請求項1〜5記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 香味油とゼラチンとの重量比が、100:5〜60である請求項1〜6記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 請求項1〜7記載のマイクロカプセルの製造方法により製造された香味油含有マイクロカプセル。
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1999
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