JP4109373B2 - 免震建物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、免震建物に関し、特に戸建て住宅等の免震建物の外装構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
戸建て住宅等において、上部構造体が免震支承装置によって基礎より免震支承(積層ゴム支承、転がり支承、滑り支承)された免震建物は、既に知られており、特開平10−306841号公報等に示されている。
上述の免震建物では、上部構造体は基礎に対して相対的に水平方向に変位可能であり、上部構造体と基礎との水平方向に相対変位により地震エネルギを吸収し、地震エネルギが上部構造体に作用することを回避する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような免震建物では、上部構造体と基礎との間に免震支承装置配置のための空隙部(免震層)が存在するので、建物外観の見栄えをよくし、免震層への小動物が侵入したり、子供が進入することを防ぐために、上部構造体と基礎との空隙部を、建物外壁の下部延長壁としての化粧板等により、覆い隠すことが要求される。
【0004】
空隙部(床下空隙)を覆い隠す化粧板は、上部構造体と基礎との水平方向に相対変位を阻害するものであってはならないと云う基本的な必要要件に加え、上部構造体と基礎との水平方向の相対変位に関して残留変位が発生しても、その残留変位を目立たなくして建物外観の見栄えを保ち、また、空隙部に雨水などが侵入することを防ぐ構造であることを要求される。
この発明は上述の如き要求を全て満足する化粧板を備えた免震建物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明による免震建物は、上部構造体が免震支承装置によって基礎より免震支承された免震建物において、前記上部構造体の下部に化粧板の上端部が水平ヒンジ軸によるヒンジによって回動可能に支持されており、化粧板は、前記基礎の中間高さ位置に到達する長さを有して前記ヒンジによる支持部より下方に垂下し、前記上部構造体と前記基礎との間の免震装置配置のための空隙部およびそれより下方の前記基礎を一括して覆い隠すものである。
【0006】
この構成によれば、地震によって上部構造体と基礎とに水平方向の相対変位が生じると、化粧板はヒンジの水平ヒンジ軸の軸線周り回動してその相対変位を許容し、化粧板は上部構造体と基礎との間の空隙部は勿論のこと、基礎まで充分に覆い、上部構造体と基礎との水平方向の残留変位によって化粧板下端と基礎との間に多少のずれが生じても目立たない。
請求項2に記載の発明による免震建物は、前記上部構造体のヒンジ配置部に当該上部構造体と前記化粧板の上端部との間隙より床下側へ雨水等が浸入することを防止するための弾性体製の水切りガスケットが設けられているものである。
【0007】
この構成によれば、水切りガスケットによるシール効果によって上部構造体と化粧板の上端部との間隙より床下側やヒンジ配置部に雨水等が浸入することが防止されるとともに、水切りガスケットが弾性体製であるから、水切りガスケットが上部構造体と基礎とに水平方向の相対変位を阻害することがない。
請求項3に記載の発明による免震建物は、前記水切りガスケットは、前記上部構造体に対する取付片部と、鉤形片部とを有し、前記鉤形片部の内側に前記化粧板の上端部を収容し、当該鉤形片部によって前記化粧板の上端部を覆い隠すものである。
【0008】
この構成によれば、水切りガスケットは、鉤形片部の内側に化粧板の上端部を収容して鉤形片部によって化粧板の上端部を覆い隠すので、上部構造体と化粧板上端部との間隙のシールが確実に行われ、この間隙より床下側やヒンジ配置部に雨水等が浸入することを確実に防止できる。
請求項4に記載の発明による免震建物は、前記化粧板の下部側に前記基礎の側面と当接するバンプラバーが取り付けられているものである。
【0009】
この構成によれば、化粧板はバンプラバーによって基礎の側面と当接し、基礎の保護が図られるとともに、剛体同士の衝突による衝突音などが発生することがない。
請求項5に記載の発明による免震建物は、前記上部構造体の下部に前記化粧板が前記空隙部側に入り込むことを禁止する化粧板押さえが設けられているものである。
【0010】
この構成によれば、風圧等により化粧板が空隙部側に入り込むことが化粧板押さえにより禁止される。
請求項6に記載の発明による免震建物は、前記化粧板が前記上部構造体の側方に設けられているものである。
この構成によれば、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
【0011】
請求項7に記載の発明による免震建物は、前記ヒンジが前記上部構造体の側方に設けられているものである。
この構成によれば、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
請求項8に記載の発明による免震建物は、前記化粧板が前記ヒンジより外側に設けられているものである。
この構成によれば、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1はこの発明による免震建物の全体構造を示しており、免震支承装置2は、一部のみを図示し、角部については図示を省略している。この免震建物は、地盤上の基礎1上に積層ゴム等による免震支承装置2を介して上部構造体である建物ユニット3を据え置かれている。これにより、建物ユニット3は免震支承装置2によって基礎1に対して水平方向に相対変位可能に免震支承される。
【0013】
建物ユニット3の一つは、玄関開口4を有しており、玄関開口4の前方部に余裕空間をおいて玄関ステップ5が設けられ、上部構造体である建物ユニット3より玄関ステップ5上に刎ね出す形態ではね出し板6が設けられる。
建物ユニット3の下部には建物外壁の下部延長壁としての塗装防錆鋼板等による化粧板7が設けられている。
【0014】
化粧板7の取付構造の詳細を図2を参照して説明する。建物ユニット3の下部には外壁面8より一段奥まったヒンジ配置用凹部9が建物ユニット3の下縁に沿って形成されており、このヒンジ配置用凹部9に水平ヒンジ軸10によるヒンジ11が取り付けられている。ヒンジ11には化粧板7の上端部7aが接続されており、ヒンジ11は化粧板7を水平ヒンジ軸10の軸線周りに回動可能に支持している。
【0015】
この構造により、ヒンジ11ならびに化粧板7は建物ユニット3の側方に設けられ、しかも化粧板7はヒンジ11より外側に設けられる。
そして、化粧板7が建物ユニット3等よりも外側に設けられることによって、免震支承装置2を建物ユニット3の角部(柱直下部)等に配置することができる。すなわち、前記免震支承装置2が直動レール支承等を備え、広い設置面積を要する場合にも、建物ユニット3の角部から内側にずらして配置する必要を少なくすることができ、免震支承装置2を建物ユニット3の角部等により接近させて配置できることによって、柱を介して伝達される建物ユニット3の上階からの荷重を充分に支持することができるようになる。
【0016】
化粧板7は、基礎1の中間高さ位置に到達する長さを有してヒンジ11による支持部より下方に外壁面8と面一で鉛直垂下しており、建物ユニット3と基礎1との間の免震支承装置配置のための空隙部12およびそれより下方の基礎1を一括して覆い隠している。
【0017】
建物ユニット3のヒンジ配置部、すなわちヒンジ配置用凹部9には、弾性体製の水切りガスケット13が設けられている。水切りガスケット13は、建物ユニット3に対する取付片部13aと、鉤形片部(逆L字形片部)13bとを有し、鉤形片部13bの内側に化粧板7の上端部7aおよびヒンジ11を収容し、鉤形片部13bによって化粧板7の上端部7aおよびヒンジ11を覆い隠している。
【0018】
化粧板7の下部側には基礎1の側面と当接するバンプラバー14が取り付けられている。
建物ユニット3の下部には化粧板押さえ15が取り付けられている。化粧板押さえ15は化粧板7との対向面15aが外壁面8より一段下がった鉛直面になっている。
【0019】
上述の構成により、地震によって建物ユニット3と基礎1とに水平方向の相対変位が生じると、化粧板7は、ヒンジ11の水平ヒンジ軸10の軸線周り回動してその相対変位を許容し、化粧板としての基本的な必要要件としての建物ユニット3の免震支承を阻害することがない。
【0020】
また、化粧板7は、基礎1の中間高さ位置に到達する長さを有しているから、建物ユニット3と基礎1との間の空隙部12は勿論のこと、基礎1まで充分に覆い、建物ユニット3と基礎1との水平方向の残留変位によって化粧板下端と基礎1との間に多少のずれが生じても目立たない。
なお、通常状態では、化粧板7は、化粧板押さえ15の対向面15aと対向して風圧等により空隙部12側に入り込むことを禁止され、外壁面8と面一で鉛直垂下状態を安定して維持し、建物の外観上の見栄えをよくする。
【0021】
さらに、建物ユニット3のヒンジ配置部に水切りガスケット13が設けられ、水切りガスケット13の鉤形片部13bの内側に化粧板7の上端部7aおよびヒンジ11を収容し、鉤形片部13bによって化粧板7の上端部7aおよびヒンジ11を覆い隠すことができるので、建物ユニット3と化粧板7の上端部7aとの間隙のシールが確実に行われ、この間隙より床下側やヒンジ配置部に雨水等が浸入することが確実に防止され、同時にヒンジ11の錆び付きも防止される。
そして、水切りガスケット13は弾性体製であるから、化粧板7の回動変位が許容され、水切りガスケット13が建物ユニット3と基礎1とに水平方向の相対変位を阻害することがない(図2中の矢印参照)。
【0022】
また、化粧板7はバンプラバー14によって基礎1の側面と当接するから、基礎1の保護が図られるとともに、剛体同士の衝突による衝突音などが発生することが回避される。
また、化粧板7、ヒンジ11が建物ユニット3の側方に設けられ、しかも、化粧板7がヒンジ11より外側に設けられているから、建物ユニット3の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置することができるようになる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、請求項1に記載の発明による免震建物によれば、上部構造体が免震支承装置によって基礎より免震支承された免震建物において、上部構造体の下部に化粧板の上端部が水平ヒンジ軸によるヒンジによって回動可能に支持されており、化粧板は、基礎の中間高さ位置に到達する長さを有してヒンジによる支持部より下方に垂下し、上部構造体と基礎との間の免震装置配置のための空隙部およびそれより下方の前記基礎を一括して覆い隠す構成としたので、地震によって上部構造体と基礎とに水平方向の相対変位が生じると、化粧板はヒンジの水平ヒンジ軸の軸線周りに回動してその相対変位を許容し、化粧板は上部構造体と基礎との間の空隙部は勿論のこと、基礎まで充分に覆い、上部構造体と基礎との水平方向の残留変位によって化粧板下端と基礎との間に多少のずれが生じても目立つことがなく、建物外観の見栄えを保つ。
【0024】
請求項2に記載の発明による免震建物によれば、上部構造体のヒンジ配置部に当該上部構造体と化粧板の上端部との間隙より床下側へ雨水等が浸入することを防止するための弾性体製の水切りガスケットが設けられている構成としたので、水切りガスケットによるシール効果によって上部構造体と化粧板の上端部との間隙より床下側やヒンジ配置部に雨水等が浸入することが防止され、さらに水切りガスケットが弾性体製であるから、水切りガスケットが上部構造体と基礎とにおける水平方向の相対変位を阻害することがない。
【0025】
請求項3に記載の発明による免震建物によれば、水切りガスケットは、上部構造体に対する取付片部と、鉤形片部とを有し、鉤形片部の内側に化粧板の上端部を収容し、当該鉤形片部によって化粧板の上端部を覆い隠す構成としたので、上部構造体と化粧板上端部との間隙のシールが確実に行われ、この間隙より床下側やヒンジ配置部に雨水等が浸入することが確実に防止される。
請求項4に記載の発明による免震建物によれば、化粧板の下部側に基礎の側面と当接するバンプラバーが取り付けられている構成としたので、化粧板はバンプラバーによって基礎の側面と当接し、基礎の保護が図られるとともに、剛体同士の衝突による衝突音などが発生することがない。
【0026】
請求項5に記載の発明による免震建物によれば、上部構造体の下部に化粧板が空隙部側に入り込むことを禁止する化粧板押さえが設けられている構成としたので、風圧等により化粧板が空隙部側に入り込むことが禁止され、建物外観の見栄えが良好に保たれる。
請求項6に記載の発明による免震建物によれば、化粧板が上部構造体の側方に設けられている構成としたので、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
【0027】
請求項7に記載の発明による免震建物によれば、ヒンジが上部構造体の側方に設けられている構成としたので、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
請求項8に記載の発明による免震建物によれば、化粧板がヒンジより外側に設けられている構成としたので、建物の外周縁の床梁や角部柱直下の近傍に免震支承装置を効果的に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の免震建物の全体構造を示す斜視図である。
【図2】図1の免震建物の化粧板の取付構造を示す側面図である。
【符号の説明】
1 基礎
2 免震支承装置
3 建物ユニット
4 玄関開口
5 玄関ステップ
7 化粧板
9 ヒンジ配置用凹部
10 水平ヒンジ軸
11 ヒンジ
12 空隙部
13 水切りガスケット
13a 取付片部
13b 鉤形片部
14 バンプラバー
15 化粧板押さえ

Claims (8)

  1. 上部構造体が免震支承装置によって基礎より免震支承された免震建物において、
    前記上部構造体の下部に化粧板の上端部が水平ヒンジ軸によるヒンジによって回動可能に支持されており、前記化粧板は、前記基礎の中間高さ位置に到達する長さを有して前記ヒンジによる支持部より下方に垂下し、前記上部構造体と前記基礎との間の前記免震支承装置配置のための空隙部およびそれより下方の前記基礎を一括して覆い隠すことを特徴とする免震建物。
  2. 前記上部構造体の前記ヒンジ配置部に当該上部構造体と前記化粧板の上端部との間隙より床下側へ雨水等が浸入することを防止するための弾性体製の水切りガスケットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の免震建物。
  3. 前記水切りガスケットは、前記上部構造体に対する取付片部と、鉤形片部とを有し、該鉤形片部の内側に前記化粧板の上端部を収容し、当該鉤形片部によって前記化粧板の上端部を覆い隠すことを特徴とする請求項2に記載の免震建物。
  4. 前記化粧板の下部側に前記基礎の側面と当接するバンプラバーが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の免震建物。
  5. 前記上部構造体の下部に前記化粧板が前記空隙部側に入り込むことを禁止する化粧板押さえが設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の免震建物。
  6. 前記化粧板は前記上部構造体の側方に設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の免震建物。
  7. 前記ヒンジは前記上部構造体の側方に設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の免震建物。
  8. 前記化粧板は前記ヒンジより外側に設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の免震建物。
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