JP4078609B2 - パラペット及び陸屋根構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、陸屋根若しくはバルコニーに溜まった水を外部へオーバーフローさせる機能を有するパラペット及びこれを使用した陸屋根構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅の陸屋根において、ドレン管の目詰まりや排水能力を越える集中豪雨によって雨水等が陸屋根に溜まり、これによって陸屋根よりも上方に立ち上がった住宅本体の外壁部が浸ると、雨水等が室内に浸入する可能性がある。そこで、陸屋根の外周部に立設したパラペットに、横抜き型のオーバーフロー管を貫通させて、陸屋根に溜まった雨水等を外部へオーバーフローさせることが一般的に行われている。このようなオーバーフローのための構造は、例えば特許文献1にも開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−102697号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パラペットに横抜き型のオーバーフロー管を貫通させる場合、パラペットの内面側や外面側において流入口や流出口が開口することになり、外観を損なうといった不具合があった。
【0005】
また、流入口に目詰まり防止用のメッシュ状キャップを設けたり、流出口にガラリを取り付けることもあるが、この場合においても、これらがパラペットの内外面において露出した状態で見えることになることから、依然として意匠上好ましくなく、しかも余分な部材使用によるコスト高を招いていた。
【0006】
また、パラペットにオーバーフロー管を貫通させるための孔を形成する作業や、その孔とオーバーフロー管との隙間を塞ぐ防水処理(シーリング)が必要となり、施工に手間がかかっていた。
【0007】
さらに、パラペットに横抜き型のオーバーフロー管を設置する場合には、ある程度のパラペット高さを確保する必要があるが、屋根面の中央部に内部縦樋方式のドレン管を設けた陸屋根においては、その屋根面の外周部から中央部に向かって水勾配がつくことになり、このため屋根面の外周部の高さが高くなって、パラペットの上端部と屋根面との間の距離が近くなり、オーバーフロー管を設置することができないといった不具合を生じることがあった。
【0008】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、屋根面の水勾配の状態に関わりなく、オーバーフロー機能を確実に持たせることができ、しかも外観が良好で、施工性にも優れたパラペット及び陸屋根構造の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明のパラペットは、陸屋根若しくはバルコニーの外周部に立設されるパラペットであって、パラペット本体の上端部を上方から覆うようして取り付けた笠木下側において、前記パラペット本体の上端部にその厚み方向に沿って排水用の凹溝を設けて、この凹溝を前記笠木で覆い隠し、陸屋根若しくはバルコニーに溜まった水を、前記凹溝を通して外部へオーバーフローさせるようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、前記凹溝を、パラペット延長方向に適宜間隔をあけて複数箇所に設けるようにしている。さらに、前記凹溝を、パラペット本体の上端部に設けた捨て水切材に形成している。さらにまた、前記凹溝は、内側の浅溝部と外側の深溝部を連続させてなる。
【0011】
この発明の陸屋根構造は、上記構成のパラペットを外周部に立設したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係るパラペット(1)を備えた陸屋根(2)は、例えば戸建て住宅の下屋の屋根として適用されている。この陸屋根(2)は、図2に示すように、H形鋼からなる構造梁(3)(3)…上にALC(4)を敷き込んで、さらにALC(4)の上面に、外周部に向かって下り勾配を持たせた勾配断熱材(5)及び防水シート(6)を敷設し、外周部にパラペット(1)を立設することによって構成されている。なお、図2において、(7)は、下屋の外壁パネル、(8)は、陸屋根(2)よりも上方に立ち上がった住宅本体の外壁パネルである。また、陸屋根(2)には、図示しないドレン管等の排水手段が設けられている。
【0013】
パラペット(1)は、陸屋根(2)の外周部に沿って配置された構造梁(3)(3)…から立ち上がったパラペット本体(10)と、このパラペット本体(10)(10)…の上端部を覆う笠木(11)(11)…とを備えている。
【0014】
パラペット本体(10)は、例えば陸屋根(2)の外周部に位置する構造梁(3)(3)…上に固定されて、互いに連結された複数の支持フレーム(16)(16)…と、ALC(4)の上面から立ち上がるようにして、支持フレーム(16)(16)…の内側に固定された立ち上げ板(17)(17)…と、下屋の外壁パネル(7)(7)…の直上において、支持フレーム(16)(16)…の外側に固定された外壁パネル(18)(18)…と、支持フレーム(16)(16)…の上端部に固定された下地レール材(19)(19)…と、これら下地レール材(19)(19)…に被せるようにして取り付けられた捨て水切材(20)(20A)…を備えている。
【0015】
そして、支持フレーム(16)は、複数の溝形鋼からなるフレーム材(21)(21)…を略門型若しくは枠型に組み合わせてなる。また、立ち上げ板(17)には、延設した防水シート(6)が張り付けられている。
【0016】
さらに、下地レール材(19)は、図3に示すように、例えば金属板を略コ字形に折曲してなる。そして、複数の下地レール材(19)(19)…は、パラペット延長方向に沿って適宜隙間(24)(24)…をあけて配置されており、この隙間(24)(24)…に後述する捨て水切材(20A)(20A)…の凹溝(30)(30)…部分が落とし込まれるようになっている。
【0017】
捨て水切材(20)(20A)は、例えば金属製であって、図1及び図3に示すように、内外の垂直片(25)(26)の上端部同士を水平片(27)によって一体的に連結してなり、下地レール材(19)に被せたときに、立ち上げ板(17)及び外壁パネル(18)の上端部を覆い隠すようになっている。外側の垂直片(26)の下端部は、外方向へ折り曲げられて斜め下方に傾斜した水切り片(28)となっている。外側の垂直片(26)の内面側には、パッキン(29)が取り付けられており、捨て水切材(20)(20A)を下地レール材(19)に被せたときに、パッキン(29)が外壁パネル(18)の上端部に圧接して、捨て水切材(20)(20A)と外壁パネル(18)との間の隙間からの水の浸入を防止するようになっている。
【0018】
そして、オーバーフロー用の捨て水切材(20A)においては、その略中央部を凹入することによって、排水用の凹溝(30)が設けられている。この凹溝(30)は、内側の浅溝部(31)と外側の深溝部(32)を連続させることで、パラペット本体(10)の厚み方向すなわち内外方向に沿って階段状に形成されており、その溝底の高さは、図2に示すように、住宅本体の外壁パネル(8)の下端部と同等の高さ若しくはそれよりも低い高さに設定されている。なお、本実施形態では、凹溝(30)おける浅溝部(31)の内外方向の幅は、深溝部(32)の内外方向の幅よりも大きくなっているが、これとは逆にしても良く、また浅溝部(31)や深溝部(32)を設けて階段状にすることなく、溝底をフラットにしても良い。
【0019】
一般の捨て水切材(20)は、単に下地レール材(19)(19)に被せて取り付けられるが、オーバーフロー用の捨て水切材(20A)は、図3及び図4に示すように、その凹溝(30)を下地レール材(19)(19)間の隙間(24)に落とし込みながら、下地レール材(19)(19)に被せて取り付けられる。
【0020】
また、捨て水切材(20)(20A)…には、その内側角部に防水役物(35)(35A)…が取り付けられる。この防水役物(35)(35A)は、例えば金属製であって、縦片(36)と、その縦片(36)の上端部から外方向へ向かって延出した横片(37)とから略L字形に形成されている。
【0021】
そして、オーバーフロー用の捨て水切材(20A)の凹溝(30)に対応した防水役物(35A)においては、その上端中央を凹入することによって、凹溝(30)に対応した嵌合溝(38)が形成されている。そして、嵌合溝(38)を凹溝(30)に嵌め込んだ状態で、防水役物(35A)が捨て水切材(20A)に取り付けられる。
【0022】
防水役物(35)(35A)…における縦片(36)(36)…の内面には、図1に示すように、立ち上げ板(17)に沿って立ち上がった防水シート(6)の上端部が延出されて張り付けられ、さらに図4に示すように、その上端の一部が延出されて、防水役物(35)(35A)間の境界部分を塞ぐようにしている。なお、捨て水切材(20)(20A)と防水役物(35)(35A)との間に生じる隙間には、図5に示すように、止水材(39)が充填されて、水の浸入を防止している。
【0023】
そして、このように構成されたパラペット本体(10)の上端部すなわち捨て水切材(20)(20A)…に、図4及び図5に示すように、取付金具(40)やジョイナー(41)を介して笠木(11)(11)…が取り付けられるようになっている。
【0024】
笠木(11)は、例えば金属製であって、内外の縦片(42)(43)の上端部同士を横片(44)によって一体的に連結してなる。そして、笠木(11)(11)…をパラペット本体(10)の上端部に取り付けることで、笠木(11)(11)…によって捨て水切材(20)(20A)…が覆い隠されて、凹溝(30)(30)…が外部から見えなくなり、見栄えを良好に維持する。
【0025】
図6は、陸屋根(2)のパラペット(1)におけるオーバーフロー部(50)(50)…の配置を示している。すなわち、オーバーフロー用の捨て水切材(20A)を、パラペット延長方向に適宜間隔をあけて複数箇所に設けることで、オーバーフロー部(50)(50)…を要所要所に配置している。このオーバーフロー部(50)(50)…は、例えば陸屋根(2)の床面積30m2当たりに一箇所の割合で設けるのが望ましいが、これに限定する必要はない。
【0026】
上記構成の陸屋根(2)おいて、ドレン管の目詰まりや排水能力を越える集中豪雨によって雨水等が溜まると、住宅本体の外壁パネル(8)が浸る前に、オーバーフロー部(50)(50)…すなわち笠木(11)(11)…の下側における捨て水切材(20A)(20A)…の凹溝(30)(30)…を通って、雨水等が外部へオーバーフローされ、これによって雨水等の室内への浸入を防止することができる。
【0027】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、この発明のパラペットは、陸屋根の外周部に立設するものだけに限らず、バルコニーの外周部に立設するものであっても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明では、笠木の下側におけるパラペット本体の上部に設けた凹溝を通してオーバーフローさせるようにしているので、従来のような横抜き型のオーバーフロー管を設ける場合と比べて、パラペットの内外面に流入口や流出口が開口せず、またキャップやガラリも不要となり、外観を良好に維持することができるとともに、施工性の向上も図ることができる。特に、笠木によって凹溝を完全に覆い隠せば、外観をさらに良好にすることができる。
【0029】
しかも、パラペット本体の上部に凹溝を設けることで、屋根面の水勾配の状態によってパラペット高さを十分に確保できなくても、オーバーフロー機能を確実に持たせることができる。
【0030】
さらに、高さを一段低くした凹溝から優先的に排水させることで、パラペット本体の上端部における凹溝以外の部分に特別な防水対策を施す必要がなく、例えば笠木とパラペット本体との間の隙間全体から一様に排水させる構造のものと比較して、防水対策面での軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るパラペットの上端部を示す縦断面図である。
【図2】陸屋根の縦断面図である。
【図3】パラペット本体の上端部の分解斜視図である。
【図4】パラペットの上端部の分解斜視図である。
【図5】パラペットの凹溝部分の斜視図である。
【図6】陸屋根におけるオーバーフロー部分の配置を示す図である。
【符号の説明】
(1) パラペット
(2) 陸屋根
(10) パラペット本体
(11) 笠木
(20A) 捨て水切材
(30) 凹溝
(31) 浅溝部
(32) 深溝部
Claims (5)
- 陸屋根若しくはバルコニーの外周部に立設されるパラペットであって、パラペット本体の上端部を上方から覆うようして取り付けた笠木下側において、前記パラペット本体の上端部にその厚み方向に沿って排水用の凹溝を設けて、この凹溝を前記笠木で覆い隠し、陸屋根若しくはバルコニーに溜まった水を、前記凹溝を通して外部へオーバーフローさせるようにしたことを特徴とするパラペット。
- 前記凹溝を、パラペット延長方向に適宜間隔をあけて複数箇所に設けた請求項1記載のパラペット。
- 前記凹溝を、パラペット本体の上端部に設けた捨て水切材に形成した請求項1又は2記載のパラペット。
- 前記凹溝は、内側の浅溝部と外側の深溝部を連続させてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のパラペット。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のパラペットを、外周部に立設したことを特徴とする陸屋根構造。
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