JP4107867B2 - 包材入り柑橘調味料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂包材に入った柑橘果汁の香り成分が包材へ吸着されるのを防止した、長期に良好な柑橘風味が残存する柑橘調味料に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで柑橘類(あるいは香料)を使用したぽん酢、ドレッシング、たれ、ソース等の柑橘果汁を含有した調味料を小袋包材に詰めた場合、リモネンなどの柑橘果汁の芳醇な柑橘香り成分が包材に吸着してしまい、喫食事に開封して調味液を使用すると柑橘の香りや果汁感が著しく弱くなるという問題があった。
【0003】
そこで、小袋等の包材の最内層で使用する香り成分の吸着の少ない包材材料のシーラントとして、共重合ポリエチレンテレフタレート系、ポリアクリルニトリル系、EVOH系等のシーラントを用いて柑橘香の吸着防止する方法が知られている。しかし、共重合ポリエチレンテレフタレート系の樹脂はヒートシールに高温が必要な為時間がかかり、高速で連続充填を行う小袋包材入り調味料の実生産を考えると実用的ではなかった。
【0004】
ポリアクリルニトリル系の樹脂は、ヒートシール温度が高温で樹脂臭があることから実用的ではない。EVOH系の樹脂は、かなり高めのヒートシール温度が必要となる点及び水分を吸収する点から実用的ではない。
さらに、共重合ポリエチレンテレフタレート系、ポリアクリルニトリル系、EVOH系等のシーラントは、加工方法に特殊な点があるためかなりコスト高となる。すなわち、小袋包材のような高速連続充填による生産に対処できる安価な包材はないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、柑橘香り成分が包材へ吸着されるのを実用レベルで減少させることにより、ぽん酢等の柑橘の香りを柑橘調味液中に保持することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意努力した結果、大根おろし等のすりおろし野菜、水溶性ヘミセルロース、水溶性食物繊維等を、包材への香りの吸着を減少させる素材として特定量調味液中に含有させることにより、柑橘の香りを保持することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)すりおろし野菜を包含するポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(2)水溶性ヘミセルロースを併せ包含する(1)記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(3)水溶性食物繊維を併せ包含する(1)記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(4)すりおろし野菜が大根おろしであることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(5)すりおろし野菜が20%以上であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(6)水溶性ヘミセルロースが1.5%以上であることを特徴とする(2)、(4)又は(5)の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(7)水溶性食物繊維が2.0%以上であることを特徴とする(3)、(4)又は(5)の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料、
(8)冷凍されていることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、安価で、柑橘調味料の風味に影響しない食品素材として、大根おろし等のすりおろし野菜、ソヤファイブ等の水溶性ヘミセルロース、ポリデキストロース等の水溶性食物繊維を使用できる。
【0009】
また、冷凍することにより、保存中に柑橘果汁の香り成分が包材へ吸着するのを遅延させたり、酸化による柑橘香の変敗を防止したりでき、結果として柑橘調味料中の香り成分全体の風味の減衰を下げることができる。
【0010】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂とは、小袋包材加工に適している、比較的安価で、加工しやすいという特徴を有するポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂のことである。
【0011】
本発明に使用される柑橘類とは、柚子、すだち、かぼす、橙、ゆこう、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、カラマンシー、シークアーサー等から搾汁等により得られるものであり、その種類は特に限定しない。
【0012】
また柑橘調味料の作製時には、前記柑橘類の果汁、さのう、皮、搾汁残さ、香料などが混在していてもよく、柑橘香付与に用いられるものであればよい。柑橘類の使用は、1種類であっても、数種の柑橘類の混合使用であっても良い。
【0013】
本発明の冷凍柑橘調味料とは、上記柑橘類を含有し、柑橘類特有の香を有する酸性調味料のぽん酢や味付けぽん酢、ドレッシング類、たれ、つゆ、ソース類等の調味料を急速冷凍などの常套手段によって凍結させたもののことである。
【0014】
大根おろし等のすりおろし野菜とは、大根、人参、かぶ、玉葱、ねぎ等、柑橘調味料として違和感なく美味しく食べられる素材であればよく、特に限定しない。
大根おろし等のすりおろし野菜は、摺り鉦等の一般的な方法ですりおろされたものであればよい。また搾ったパルプ分にすりおろし直後の重量まで加水したものや、乾燥品に乾燥前の元の大根重量まで加水したもの、すりおろした後水洗浄し脱水したものにすりおろし直後の重量まで加水したもの等を用いることが出来る。
【0015】
特に、大根おろしは、柑橘香に特別な風味を付与しないので、本発明の柑橘調味料に用いた場合には好適である。前記の大根パルプは、特別に風味の付与はないものの全体として生感がなくなり、生大根おろしよりは劣る。
乾燥大根おろし、大根パルプ等の柑橘調味料への添加量としてはすりおろし直後の生大根おろしの水分含量を目安として添加を計算すればよい。
【0016】
具体的な例を挙げると、すりおろし直後の生大根おろし100重量部を50%搾り50重量部となった大根パルプを使用する場合には、このパルプに水を50重量部加え、トータル100重量部になったものを大根おろしとして添加すればよい。
【0017】
乾燥品を使用した場合、例えば水分が15.5%の切干し大根だと、水分が94.6%になるまで水を加えたものを擂潰して大根おろしとして添加することが出来る。正確には、生の大根の水分割合である(五訂食品成分表)94.6%指標にすればよい。
【0018】
柑橘類以外の調味液成分としては、醤油、砂糖、塩、酢等の通常調理に使用する調味料素材であればよく、特に限定しなくてよい。
【0019】
本発明に用いる水溶性ヘミセルロースは、大豆、コーン、綿実、米、小麦等を原料とし、通常の方法で油脂、蛋白質、澱粉質を除いた殻又は粕を用いて、それらを酸性ないしアルカリ性の条件下で加熱抽出したり、各種酵素分解により抽出される。具体的には市販されているソヤファイブS−LNP(不二製油(株)製)などを使用することができる。使用にあたっては、水等に予め分散溶解させてから用いるとよい。
【0020】
本発明で用いる水溶性食物繊維は、ポリデキストロース、ペクチン、マンナン等の水溶性の難消化多糖類のことである。この中でも、味、臭い、粘性に影響の少ないポリデキストロースが好ましい。
具体的には市販されているライテスIII(カルター・フードサイエンス(株)製)などを使用することができる。
【0021】
すりおろし野菜、水溶性ヘミセルロース、水溶性食物繊維をそれぞれ組み合わせて使用する場合は、すりおろし野菜と水溶性ヘミセルロースの組み合わせの代表的な例としては、柑橘調味料中に大根おろし20%以上と水溶性ヘミセルロース1.5%以上を含有させることにより、柑橘果汁の香り成分の包材への吸着を防止出来る。またすりおろし野菜と水溶性食物繊維の組み合わせの代表的な例としては、柑橘調味料中に、大根おろし20%以上と水溶性食物繊維2.0%以上を含有させることにより同様の効果を得ることができる。
【0022】
本発明の冷凍柑橘調味料の製造方法としては、従来から実施されている方法であればよく、特に限定するものではないが、具体的には、各種原料を混合、攪拌、溶解して作製した柑橘調味料を包材に充填後1時間以内、好ましくは30分以内に冷凍する。
【0023】
以下に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
すりおろし野菜の代表例として大根おろし含量の異なる各々の柑橘調味料を、配合表の表1に示した配合で混合、攪拌、溶解して作製した。
【0024】
【表1】
【0025】
Oナイロン30μ/ポリエチレン20μ/直鎖状低密度ポリエチレン40μ(ダイワパックス製)の多層からなるポリオレフィン系樹脂包材を用いて縦12cm、横7cmの小袋包材を作製した。この小袋包材に上記方法にて作製した調味液20mlを充填し、ヒートシーラーにて密封した。密封後直ちに−30℃で急速冷凍、各冷凍保存期間保存した。
【0026】
冷凍保存したサンプルを経時的にサンプリングして自然解凍後の柑橘調味液の柑橘感、具体的にはすだち特有の爽やかな風味の有無について官能検査評価を行った。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
また、冷凍室にて−30℃で1ヶ月冷凍保存試験品を自然解凍し、室温の20℃でそれぞれの期間保存した。室温保存の試験品を経時的にサンプリングして同様の官能検査を実施した。結果を表3に示す。
【0029】
なお評価は経験豊富な20名のパネラーにより下記の基準で行った。官能評価は、冷凍後直ちに解凍した柑橘調味料の試験品とそれぞれの試験品を2点比較しながら下記の評価をした。
◎:絞りたての風味が非常に残っている、○:絞りたての風味が残っている、△:絞りたての風味が弱い、×:絞りたての風味がほとんどない
以下実施例2,3,4,5についても、実施例1で示した評価方法と同様の基準にて官能評価をした。
【0030】
【表3】
【0031】
表3に示した試験例1の結果からわかるように、解凍後室温の20℃で1日保存すると柑橘類の香味成分がほとんど包材に吸着されてしまい、柑橘調味液中の絞りたての風味がほとんど消失する。しかし、柑橘調味料を冷凍保存することによって、表2に示した通り、絞りたての風味を長期間保持することが出来た。ただし、微妙な柑橘香の劣化と色調の変化が認められた。
【0032】
そこですりおろし野菜の代表である大根おろしを20%以上80%まで使用した(試験例3,4,5)ところ、冷凍保存後に自然解凍しても室温で2日間経過した後でも、絞りたての風味が残存していることがわかった(表3)。
【0033】
次に、どの程度の柑橘香が減衰するかを、柑橘香の代表成分であるリモネンを指標としてその減少を分析した。
【0034】
試験例1及び試験例4の調味液中に残存したリモネンをジクロロメタンで抽出後、ガスクロマトグラフィーにより定量した。サンプル量は、調味液10mlをジクロロメタン40mlに設定し、リモネンを抽出した。各保存期間における調味液中のリモネン含量は、包材に充填する前の調味液中のリモネン量を100%として表したその調味液中のリモネンの残存率の結果を表4に示した。
【0035】
【表4】
【0036】
柑橘成分の代表成分であるリモネンがすりおろし野菜の代表例である大根おろしを40%含有させた(試験例4)ときでもかなり減少することがわかる。従って、解凍後にすぐに使用することが望ましいが、2日後でも10数%保持されており、添加されていないものに比較すれば、かなりの量が残存しており、充分実用的な濃度まで維持されていた。
従って、長期間小袋入り柑橘調味料を保存したい場合には、冷凍してすりおろし野菜をある程度添加することによって、充分課題を解決できることがわかった。
【0037】
(実施例2)
市販の水溶性ヘミセルロースのソヤファイブS−LNP(不二製油(株)製)量の異なる数種の調味料を、調味液の配合表の表5に示した配合で作製した。包材の作製、充填、密封、保管、及び官能検査を実施例1と同様の方法で実施した。
【0038】
【表5】
【0039】
官能検査は、具体的には橙特有の爽やかな風味の有無について評価を行った。その結果を表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
ソヤファイブ1.5%以上使用(試験例8,9,10)時においては、冷凍保存後に自然解凍しても室温で2日間経過した後でも、絞りたての風味が残存していることがわかる。
冷凍保存の1ヶ月から6ヶ月間の試験では、実施例1の大根おろしを用いたときの例と同様であった。
【0042】
(実施例3)
市販の水溶性食物繊維であるポリデキストロース(カルター・フードサイエンス(株)製商品名ライテスIII)量の異なる数種の調味料を、調味液の配合表の表7に示した配合で混合、攪拌、溶解して作製した。包材の作製、充填、密封、保管、及び官能検査を実施例1と同様の方法で実施した。
【0043】
【表7】
【0044】
官能検査は、具体的にはゆず特有の爽やかな風味の有無について評価を行った。その結果を表8に示す。
【0045】
【表8】
【0046】
ポリデキストロース2.0%以上使用(試験例13,14,15)時においては、冷凍保存後に自然解凍しても室温で2日間経過した後でも、絞りたての風味が残存していることがわかる。
冷凍保存の1ヶ月から6ヶ月間の試験では実施例1の大根おろしを用いたときの例と同様であった。
【0047】
(実施例4)
大根おろしと市販のソヤファイブS−LNP(不二製油(株)製)を、調味液の配合表の表9に示した配合で作製した。包材の作製、充填、密封、保管、及び官能検査を実施例1と同様の方法で実施した。
【0048】
【表9】
【0049】
官能検査は、具体的にはすだち特有の爽やかな風味の有無について評価を行った。その結果を表10に示す。
【0050】
【表10】
【0051】
冷凍保存の1ヶ月から6ヶ月間の試験では実施例1の大根おろしを用いたときの例と同様であった。
大根おろし20%以上とソヤファイブ1.5%以上使用(試験例18,19,20)時においては、冷凍保存後に自然解凍しても室温で2日間経過した後でも、絞りたての風味が残存していることがわかる。
【0052】
(実施例5)
大根おろしと市販のポリデキストロース(カルター・フードサイエンス(株)製商品名ライテスIII)を、調味液の配合表の表11に示した配合で作製した。包材の作製、充填、密封、保管、及び官能検査を実施例1と同様の方法で実施した。
【0053】
【表11】
【0054】
官能検査は、具体的にはすだち特有の爽やかな風味の有無について評価を行った。その結果を表12に示す。
【0055】
【表12】
【0056】
冷凍保存の1ヶ月から6ヶ月間の試験では実施例1の大根おろしを用いたときの例と同様であった。
大根おろし20%以上とポリデキストロース2.0%以上使用(試験例23,24,25)時においては、冷凍保存後に自然解凍しても室温で2日間経過した後でも、絞りたての風味が残存していることがわかる。
【0057】
(実施例6)
実施例1の配合表(表1)の大根おろしの代わりに人参おろしを20%以上使用した場合にも、絞りたての風味の低減効果は同様で充分実用的であった。
【0058】
(実施例7)
上記と同様に、大根おろしの代わりに乾燥品、例えば水分が15.5%の切干大根を水分が94.6%になるまで加水後擂潰したものを20%以上使用した場合にも、絞りたての風味の低減効果は同様で充分実用的であった。
【0059】
(実施例8)
また、上記の加水擂潰した乾燥切干大根20%とソヤファイブ1.5%を併用した場合や、人参おろし20%とポリデキストロース2.0%を併用した場合にも、同様の効果を得た。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、柑橘香の包材への吸着を防止し、長期間に渡って芳醇な柑橘香を実用的濃度で保持した柑橘調味料を提供することができる。
Claims (8)
- すりおろし野菜を包含するポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- 水溶性ヘミセルロースを併せ包含する請求項1記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- 水溶性食物繊維を併せ包含する請求項1記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- すりおろし野菜が大根おろしであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- すりおろし野菜が20%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- 水溶性ヘミセルロースが1.5%以上であることを特徴とする請求項2、4又は5の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- 水溶性食物繊維が2.0%以上であることを特徴とする請求項3、4又は5の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
- 冷凍されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂包材入り柑橘調味料。
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