JP4107445B2 - 缶入り烏龍茶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶入り烏龍茶の製造方法に関し、特に、高温高圧下での長時間のレトルト殺菌に代る新たな殺菌方法を用いた缶入り烏龍茶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、烏龍茶は日本茶等と並んで広く嗜好されるようになり、この烏龍茶の抽出液はペットボトル、紙パック、缶などの容器に詰められて販売されるに至っている。
【0003】
このように烏龍茶抽出液を容器に詰めて販売するためには、食品衛生上烏龍茶抽出液を殺菌する必要がある。一般に、ペットボトルや紙パックなどの容器に詰められて販売される烏龍茶抽出液は、抽出後に超高温で短時間の加熱殺菌が行われ、その後、高温(85〜86℃)に保持された状態で容器への充填が行なわれる。このように紙パックやペットボトル入り烏龍茶では、販売時の温度が冷蔵から常温程度であるため、このような殺菌方法で十分な殺菌が行える。一方、缶入り烏龍茶の場合には、販売形態がこれらとは若干異なりホットベンダのように55℃程度の温度に保持された状態で販売が行なわれる場合があるため、上記殺菌方法では殺菌が不十分となるおそれがある。従って、缶入り烏龍茶の場合には、より高度な衛生状態が要求され、従来から厳格な殺菌方法が採用されている。
【0004】
従来の缶入り烏龍茶抽出液の殺菌方法としては、先ず、烏龍茶抽出液を93〜95℃程度で殺菌し、その後90℃前後の高温に維持しながら容器中に封入される。容器への封入後、レトルト装置と呼ばれる高温高圧殺菌釜を用いて、120℃前後の温度で15〜30分間殺菌が行なわれる。
【0005】
また、特許第2686268号公報には、この従来の方法を改良した殺菌方法が開示されている。すなわち、この方法は、従来の方法では特にレトルト装置による殺菌時間が長いことに鑑み、この工程をより短くすることを目的としてなされている。具体的には、予め、烏龍茶抽出液を130〜145℃程度の超高温で瞬間殺菌を行い、その後高温で缶に封入後、レトルト装置により100〜110℃下で1〜10分間殺菌を行うものである。この方法によれば、レトルト装置における殺菌工程の時間を短縮し、さらにレトルト装置の温度を従来よりも比較的低くすることにより、従来の殺菌能力を維持しつつ全体として生産性の向上を図っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記改良方法によっても、依然としてレトルト装置による高温高圧殺菌が必要とされている。従って、上記改良方法により缶入り烏龍茶を殺菌するためには、レトルト装置を設置するためにスペースを確保する必要があり、さらにレトルト装置を稼動させるためのエネルギーを確保する必要もある。また、改良方法によってレトルト装置による滅菌時間は短くなったが、まだ殺菌時間にかなりの時間が必要とされているため、生産性の低さが認められた。
【0007】
また、このレトルト装置による長時間の高温高圧殺菌は、単に生産性等の経済面の問題だけでなく、缶入り烏龍茶の味覚的な面にも影響を与え、香味や色調の著しい変化をもたすことにもなっている。
【0008】
そこで、本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レトルト装置による高温高圧殺菌に代る殺菌方法により、烏龍茶の味覚を維持しつつ経済的にも向上された缶入り烏龍茶の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の缶入り烏龍茶の製造方法は、予め烏龍茶抽出液を超高温瞬間殺菌を行いFo=10以上とし、この抽出液を缶に封入後、缶を反転させて90℃以上20秒間程度保温し、次いで85℃以上4〜5分間保温することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本願発明者らは、予め超高温殺菌によりFo=10以上となるように十分殺菌を行えば、缶封入後は缶を転倒させて高温に保持して殺菌することにより従来のレトルト殺菌と同等の殺菌効果があることを見い出したことに基くものである。よって、上記発明によれば、従来のようにレトルト装置による高温高圧殺菌が不要となり、烏龍茶の味覚や色調を維持し、より高い品質の缶入り烏龍茶を経済的にも向上が図られた方法により提供することが可能となる。
【0011】
上記において「超高温下での瞬間殺菌」の条件は、烏龍茶の味覚を損なわない範囲で適宜決定することができるが、好適には、「超高温」は、ここでは130℃以上の温度を意味し、より好適には、130℃〜137℃である。また、「瞬間的」とは、最終的な缶入り烏龍茶の味覚が損なわれなければ数分に及ぶ場合も含まれるが、好適には、60秒から100秒程度である。尚、ここで「味覚を損なう」とは、烏龍茶本来の味に他の好ましくない味、臭いが付加されることをいい、例えば、渋味加熱臭などが加わることをいう。
【0012】
すなわち、超高温瞬間殺菌によりFo=10以上に滅菌するための温度と時間の組合わせとしては、130〜137℃の温度下60〜100秒間という条件を採用することが望ましい。この条件によれば、烏龍茶抽出液の味覚や色調を損なうことなく十分に滅菌された烏龍茶抽出液を得ることが可能となる。
【0013】
また、上記発明において、超高温瞬間殺菌後の烏龍茶抽出液を缶へ封入する工程が無菌条件下でおこなわれることが望ましい。すなわち、この発明によれば、缶封入工程における雑菌等の混入が防止され、より高品質の缶入り烏龍茶を提供することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0015】
1、烏龍茶抽出工程
烏龍茶の抽出方法は本実施の形態において特に限定はなく、いかなる方法を採用してもよい。従って、烏龍茶の茶葉の種類、ブレンドなどの有無並びその割合、抽出する水の温度、抽出時間、抽出するための装置、抽出後茶殻を除去する方法並びに装置等は適宜選択でき、好適な条件で抽出液を回収することができる。また、必要であれば、抽出後、抽出液に脱イオン水等を添加して適宜調製することもできる。例えば、抽出液に脱イオン水を添加してBrix0.2〜0.4、pH6〜6.5、L値80、a値4.5、b値35を有する調合液を抽出することができる。
【0016】
2、抽出後の第一殺菌工程
この第一殺菌工程では上記抽出液を超高温瞬間殺菌を行う。この「超高温瞬間殺菌」は、130℃以上の温度で瞬間的に殺菌を行うことにより、特に耐熱性菌を殺菌することを目的とするものであり、本実施の形態では殺菌後のFo値が10以上となるように実施する。Fo値が10以上とするためには、例えば、130〜137℃、好ましくは132〜134℃にて60〜100秒間殺菌を行うことにより実施することができる。
【0017】
なお、このFo値は、容器に詰められた食品、特に、低酸性食品缶詰めにおける加熱殺菌条件を示す「致死値」として広く食品業界に用いられている値である。この値は、基準温度(通常、121.1℃)における加熱時間(分)として表され、藤巻正生等編「食料工業」(株式会社恒星社厚生閣、1985年9月25日発行、1048〜1051頁)等に記載の方法に従って算出することができる。
【0018】
3、缶封入工程
超高温瞬間殺菌後の抽出液は突沸等の危険がない取扱い可能な温度、例えば90〜95℃まで冷却し、この高温を維持した状態で缶への充填、巻締め等の封入を実施する。この缶への封入の際に周囲の雑菌の混入のおそれがあることから、好適には、この工程は無菌条件下、例えば、バイオクリーンルーム級別100,000等のクリーンブース内で実施することが望ましい。このように雑菌の混入が極めて制限された条件下で缶への充填、巻締めを行うことにより、上記超高温瞬間殺菌により高度に殺菌された抽出液の状態が維持されることになる。
【0019】
4、第二殺菌工程
缶に封入された滅菌済み抽出液は缶ごと滅菌され、缶封入工程等に混入しているおそれのある雑菌を滅菌する。従来、この工程は高温高圧殺菌釜であるレトルト装置により行なわれていたが、本実施の形態ではこの装置は不要であり、缶を反転させて一定時間高温に維持するすることにより滅菌操作を実施することができる。このように缶を反転させながら一定時間高温に維持することにより缶蓋や空寸空気を殺菌することができ、内容物を含めた缶内の殺菌をより確実にすることができる。従って、ここで「反転」としているが、この目的が達成できる操作であれば例えば、回転振動などに適宜変更することは可能である。
【0020】
好適には、この工程は抽出液が封入された缶を反転させ、90℃以上(100℃未満)の温度に20秒間維持し、次いで85℃以上で4〜5分間保持する。これにより、烏龍茶の香味、色調を維持したままレトルト装置による殺菌と同等の殺菌効果が得られる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0022】
[実施例1]実施品Aの調製
中国福建省産ウーロン茶(170kg)を90℃の両イオン交換処理した水(5000l)を用いて約4分間抽出を行った。茶粕を除去し、濾過、さらに遠心力分離を行った後、両イオン交換処理した水により最終的に20000lに調整した。この調合液を瞬間型殺菌機を使用して132.5℃で70秒間殺菌を行った。超高温瞬間殺菌後、97℃に冷却し、クリーンブース(バイオクリーンルーム級別100000)内で、缶に充填し缶蓋を巻締め密封した。その後容器を反転させ、91℃にて20秒間、続いて85℃以上で4〜5分間保持して缶入りウーロン茶を得た。これを実施品Aとした。
【0023】
[比較例]比較品B、C、Dの調製
実施例と全同様の方法でウーロン茶調合液を調整し、以下の3種類の方法により殺菌を行った。
【0024】
第1番目は、調合液を瞬間型殺菌機を用いて132.5℃、70秒間殺菌を行い、97℃に冷却後、缶に充填し缶蓋を巻締め密封し、缶入りウーロン茶を得た。これを比較品Bとした。
【0025】
第2番目は、瞬間型殺菌機を使用して調合液を85℃に昇温した後、缶に充填し、缶蓋を巻締め、缶のまま118℃、20分間殺菌を行い、缶入りウーロン茶を得た。これを比較品Cとした。
【0026】
第3番目は、瞬間型殺菌機を用いて調合液を140℃で8秒間殺菌を行い、91℃に冷却後缶に充填し缶蓋を巻締め密封した。巻締め後105℃で8分間殺菌を行って缶入りウーロン茶を得た。これを比較品Dとした。
【0027】
[実施例2]実施品と比較品との比較試験
上記において調製された実施品A及び比較品B、C、Dの香味を官能的に試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
表1に示すように、缶封入後の第2殺菌において100℃以上で殺菌(レトルト殺菌)した比較品C、Dでは加熱臭や渋味が発生した。一方、100℃以下で加熱殺菌した実施品Aでは、加熱臭のような臭いは発生さず、缶封入後加熱殺菌を行っていない比較品Bと同等に良好な結果が得られた。
【0029】
次に、実施品、比較品について保存テストを行った。この保存テストは、実施品A、各比較品B、C、Dを室温、37℃、55℃の各温度下でそれぞれ300本を1ヶ月間保存し、その際の微生物の有無を検査した。その結果実施品Aでは、缶封入後レトルト殺菌が行われた比較品C、Dと同様に各温度における保存状態においても細菌の生存(発生)は観察されなかった。このことから、実施例1の製法によれば、従来のレトルト殺菌と同様の十分な殺菌が行えることが明らかとなった。
【0030】
以上の結果より、本実施品では、ホットベンダーのように55℃の保存下でも従来のレトルト殺菌を施した製品と同様に細菌の発生を防止することができ、さらに、味覚の上でも優れた製品であることが示された。
【0031】
【発明の効果】
以上より、本発明によれば、従来、レトルト装置のような高温高圧殺菌釜を用いることなく缶入り烏龍茶を十分に滅菌することが可能となったことから、缶入り烏龍茶の製造設備を簡略化することができるとともに、生産性を向上することが可能となる。さらに、本発明は、経済面だけでなく、食品として最も重要な味覚面でも、より優れた製造方法を提供することが可能となる。
Claims (3)
- 烏龍茶抽出液を超高温で60〜100秒間の殺菌によりFo=10以上とする第一殺菌工程と、
缶に封入後に缶を反転させて90℃以上100℃未満で20秒間保温し、次いで85℃以上100℃以下で4〜5分間保温する第二殺菌工程と、
を含む缶入り烏龍茶の製造方法。 - 第一殺菌工程後の烏龍茶抽出液を缶へ封入する工程が無菌条件下でおこなわれる
ことを特徴とする請求項1に記載の缶入り烏龍茶の製造方法。 - 請求項1又は2の製造方法により製造された缶入り烏龍茶。
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JP10092498A JP4107445B2 (ja) | 1998-04-13 | 1998-04-13 | 缶入り烏龍茶の製造方法 |
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1998
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