JP6641394B2 - 食品の殺菌方法 - Google Patents

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本発明は、主に厚焼き玉子、卵焼き等の玉子製品を含む食品を殺菌する食品の殺菌方法に関する。
従来、厚焼き玉子等の食品を殺菌する方法としては、通常、食品を真空包装後、100℃以下の低温により二次殺菌が行われる。このような二次殺菌により、細菌の繁殖を抑えることができるので、これにより食中毒を防止し、また、食品の腐敗も防止することができる。
しかしながら、上記二次殺菌をすると、加熱不快臭(いわゆる「ムレ臭」)を発生させてしまう欠点があった。
このような不快臭を防止するために、添加剤を用いる方法(特許文献1、2)、容器を開放状態で二次殺菌を行い、二次殺菌後に容器を密封する方法、包装材料に孔を設けて通気を行う方法等(特許文献2)が知られているが、二次殺菌のムレ臭等の発生を十分に防止することはできていない。
ところで、ムレ臭とは、卵や植物たんぱくは、メチオニンなど硫黄を含んだアミノ酸を成分に持ち、この含硫アミノ酸が加熱されることで含硫化合物が生成されて発生する。
また、レトルト食品で問題になるレトルト臭は、レトルト食品を高温高圧で加熱殺菌する際、高温にさらされることで含硫化合物が生成されて発生する。
特開昭60−075266号公報 特開2005−323571号公報 特開平01−168247号公報
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、食品の殺菌を確実に行うことができ、かつ、ムレ臭等の不快臭の発生を十分に防止することができる食品の殺菌方法を得ることを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の食品の殺菌方法は、凹所状の食品収納部を有する収納容器に食品を収納する収納工程と、次に前記食品収納部を密封する密封工程と、次に密封した収納容器を60℃乃至85℃の温度で3分乃至5分加温し、前記食品を殺菌する殺菌工程とで構成され、前記食品収納部は、前記食品を収納した際に、10%以上の空間率を有し、前記食品は、玉子製品又は玉子製品を主とする食品のいずれかであることを特徴とする。
また、前記空間部は、食品収納部の体積の10%乃至20%であることを特徴とする。
加えて、前記殺菌工程では、収納容器を加圧した状態で行うことを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、食品を収納した際に、10%以上の空間率を有する食品収納部を形成し、この食品収納部に厚焼き玉子等の食品を密封して加温殺菌することにより、ムレ臭の発生を抑えることができる。
(2)請求項2乃至請求項3に記載された各発明も、前記(1)と同様の効果が得られるとともに、合理的手段により、ムレ臭等の不快臭の発生を抑えることができる。
(3)請求項4に記載された各発明も、前記(1)〜(2)と同様の効果が得られるとともに、シール不良を防止することができる。
図1乃至図3は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
第1実施形態の食品の殺菌方法の工程図。 収納工程及び密封工程の概要説明図。 殺菌工程後の官能試験結果を示す表。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図3に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は例えば厚焼き玉子、卵焼き等の玉子製品又は玉子製品を主とする食品2の二次殺菌する本発明の食品の殺菌方法(以下、「殺菌方法」という)である。
なお、本実施形態では、食品2として厚焼き玉子2を用いる場合について説明する。
この殺菌方法1は、例えば図1に示すように、食品収納部3を有する収納容器4に厚焼き玉子2を収納する収納工程5と、前記食品収納部3を含気状態で前記収納容器4を密封する密封工程6と、前記厚焼き玉子2が内在した状態で密封した収納容器4を所定時間所定温度で加温し、殺菌する殺菌工程7とで構成されている。
前記収納容器4は、本実施形態では、ポリプロピレン等の樹脂で成型され、凹所状の食品収納部3が形成された容器本体8と、該容器本体8のフランジ部8aに溶着等により固定されるフィルム状の蓋体9とで構成されている。この収納容器8の食品収納部3は、厚焼き玉子2が収納された状態で、10%以上の空間率を有するように形成されている。
なお、食品収納部3は、普通一般に見受けられる「豆腐容器」の如く、横長直方体空間であるが、容器本体8の形状如何により、略短円筒状空間、略四角台状空間等になり得る。
ところで、10%以上の空間率を有する理由としては、空間率が10%を下回った状態で加温殺菌した場合、従来のごとくムレ臭やドリップが発生し、食味や風味が格段に落ちることになるためである。
ところで、空間率とは、「(食品収納部3の体積−厚焼き玉子2の体積)/食品収納部3の体積」により求められるものである。本実施形態では、この空間率が10%となるように、食品収納部3の体積及び厚焼き玉子2の容積を決定している。
この空間率は10%以上であればムレ臭を防止することができるが、空間率が大きすぎる場合、見栄えが良くなかったり、輸送時等に内部の厚焼き玉子2が動いてしまうため、製品としては空間率が25%以下となるようにすることが望ましい。すなわち空間率を10%乃至25%とすることが望ましい。また、より好適には15%乃至20%とすることが望ましい。
このように、10%以上の空間率を有した状態で殺菌工程7を行うことにより、食品2が加熱されたことにより発生する蒸気を、容器との間の空間により冷却し気体状態から液体状態等に戻すことができ、収納容器4の内部の圧力が過剰に上昇することを防止できる。これにより、食品2が過剰に加圧されることを防止することができ、ムレ臭等の不快臭の発生を抑制することができる。
前記収納工程5は、厚焼き玉子2を容器本体8の食品収納部3に収納する。しして、厚焼き玉子2を容器本体8の食品収納部3に収納した後、密封工程6が行われる。
前記密封工程6は、容器本体8のフランジ部8aに溶着、接着等により透明樹脂製でフィルム状の蓋体9を固定し、容器本体8の食品収納部3をシールする。この時、食品収納部3内に気体が存在する状態で密封してもよいし、真空状態(半脱気程度の状態)で密封してもよい。含気状態で密封する場合、食品収納部3内の気体については、食品に添加しても問題ない気体であれば空気でもよいし、窒素ガス、炭酸ガス、混合ガス等でもよい。
前記殺菌工程7は、主に60℃乃至85℃の温度で低温殺菌を行う。この温度以上の温度(例えば100℃や120℃)で殺菌してもよいが、風味を損なうおそれがあるため、60℃乃至85℃の温度で低温殺菌を行うことが望ましく、より好適には75℃前後の温度で低温殺菌をすることが望ましい。
この殺菌工程7は、本実施形態では、収納容器4を収納できる加温庫を有する加温装置により行う。加温の方法については、様々な方法を用いることができ、例えば、熱湯、蒸気、熱湯シャワー方式、電気ヒーター等で加温することができる。
殺菌時間としては、高温状態を3分乃至5分程度維持し、その後、食品2を冷却する。冷却に関しては、25分程度かけて5℃程度まで冷却することが望ましいが、これよりも短時間又は長時間での冷却を行ってもよい。
この殺菌工程7において加温殺菌する際に、加温庫の内部を若干加圧した状態(例えばゲージ圧で0.01MPa程度)で殺菌を行ってもよい。加温庫の内部に圧力をかけ、収納容器4を加圧することにより、蓋体9が押さえつけられ、シール不良が発生することを防止することができる。
このような殺菌工程7を行うことにより、ムレ臭を防止することができ、未殺菌に近い食味や風味を有する食品2とすることができる。
厚焼き玉子等の食品2を加熱殺菌した場合には、加熱することにより水が水蒸気に変わり100℃の場合には体積が約1700倍になり、100℃以下の場合であっても体積が約1244倍になる。
このため、収納容器4の食品収納部3内部は圧力が上昇するため、化学分解、化学結合を促進する。この変化は、温度が高いほど圧力が高いほど変化が起きやすくなるため、本願発明のように食品収納部3の空間率を10%以上にすることにより、高くなった圧力を空間により吸収し、周辺環境との温度差により蒸気を水に変換して(気体状態から液体状態へと変化させ)食品収納部3内部に高圧が掛からないようにしている。
これにより化学分解や化学結合が抑えられ、ムレ臭等の不快臭の発生を十分に防止することができるものである。
ここで、種々の条件で殺菌工程7を行い官能試験した結果を図3に示す。この官能試験では、ムレ臭「無し」の記載については、10人中10人がムレ臭を検知できなかったことを示すものである。一方ムレ臭「有り」の記載については、10人中10人がムレ臭を検知したことを示すものである。
また、「75℃3分ホールド」の記載は、例えば75℃で3分加温した後、冷却したことを示す。
この図3に示すように、空間率10%以上であればムレ臭等の不快臭の発生を抑えることができることがわかった。また、食感についても、空間率が5%の場合には、やや硬くなり良好な食感を保つことができなかった。
ところで、図3には記載されていないが、空間率を30%以上とした場合について試験を行った結果、ムレ臭等の不快臭は発生しなかった。
一方、空間率が10%であれば、不快臭の発生は抑えられるものの、多少のドリップが発生するため、空間率は見栄えも考慮し15%乃至20%とすることが望ましい。
なお、本発明の実施形態では、主に厚焼き玉子等の玉子製品についての殺菌方法について説明しているが、玉子製品に限られず、玉子製品を主とする食品についても用いることができ、その他の食品、例えば鶏肉の炊き込みご飯、鶏肉の焼肉等の鶏肉料理、大豆等を使用した豆製品等にも用いることができる。これらの鶏肉料理や豆製品も加温殺菌すると不快臭を発生させるもので、本発明の殺菌方法を用いることで、ムレ臭等の不快臭の発生を防止することができる。
また、本発明の実施形態では、硬質の容器本体とフィルム状の蓋体で収納容器を構成しているが、熱耐性が有り、食品収納部の空間率を維持した状態で包装できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
本発明の殺菌方法は、食品、特に玉子製品又は玉子製品を主とする食品を製造する産業等で利用される。
1:食品の殺菌方法、 2:食品、
3:食品収納部、 4:収納容器、
5:収納工程、 6:密封工程、
7:殺菌工程、 8:容器本体、
9:蓋体。

Claims (3)

  1. 凹所状の食品収納部を有する収納容器に食品を収納する収納工程と、次に前記食品収納部を密封する密封工程と、次に密封した収納容器を60℃乃至85℃の温度で3分乃至5分加温し、前記食品を殺菌する殺菌工程とで構成され、
    前記食品収納部は、前記食品を収納した際に、10%以上の空間率を有し、前記食品は、玉子製品又は玉子製品を主とする食品のいずれかである食品の殺菌方法。
  2. 前記空間率は、15%乃至20%であることを特徴とする請求項1に記載の食品の殺菌方法。
  3. 前記殺菌工程では、収納容器を加圧した状態で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の食品の殺菌方法。
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