JP4106498B2 - 熱転写記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱転写印画方式の印画装置に使用して画像、特にカラー画像を形成するための熱転写記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、支持体の片面が耐熱滑性処理され、他方の面に、樹脂、ワックスおよび着色剤を含有する着色インク層を設けた構成の熱転写記録媒体が知られている。
【0003】
しかしながら、この熱転写記録媒体においては、基材と着色インク層の間の密着力が安定せず、印画装置における走行時等において容易に着色インク層が剥がれてしまう(一般にインクの粉落ち現象といわれている)という問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、支持体と着色インク層との間に、ワックスを主成分とする離型層を設けたものがあるが、この場合2色以上の着色インクの重ね印字が困難であるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決して、インクの粉落ちが発生せず、かつ高精細な画像、特にカラー画像を形成しうる熱転写記録媒体を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)支持体上に、少なくとも離型層、着色インク層をこの順に積層した熱転写記録媒体であって、前記離型層にプロピレン成分が90〜100モル%の量で、エチレン成分が0〜10モル%の量で、かつ炭素数が4〜20であるα−オレフィンから導かれるα−オレフィン成分が0〜10モル%の量で存在するプロピレン系重合体を、炭素数が3〜10の不飽和カルボン酸またはその酸無水物もしくはそのエステルから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で有機過酸化物の存在下にグラフト変成してなるグラフト変性プロピレン系重合体を含有することを特徴とする熱転写記録媒体に関する。
【0007】
さらに、本発明は、(2)離型層中における前記グラフト変性プロピレン系重合体が無水マレイン酸グラフト変性プロピレン系重合体であることを特徴とする前記(1)項記載の熱転写記録媒体に関する。
【0008】
さらに本発明は、(3)離型層にさらに有機系または無機系の粒子を含有することを特徴とする前記(1)または(2)項記載の熱転写記録媒体に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、離型層にグラフト変性プロピレン系重合体を含有せしめる。
【0010】
以下本発明に係るグラフト変性プロピレン系重合体について具体的に説明する。
【0011】
本発明に係るグラフト変性プロピレン系重合体のベースとなるプロピレン系重合体についてまず説明すると、このプロピレン系重合体では、プロピレン成分は90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%の量で存在し、エチレン成分は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%の量で存在し、かつ炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれるα−オレフィン成分は0〜10モル%、好ましくは0〜8モル%の量で存在している。
【0012】
プロピレン成分が100モル%であるプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体である。またエチレン成分が0モル%であるプロピレン系共重合体は、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンからなるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。さらに炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれるα−オレフィン成分が0モル%であるプロピレン系共重合体は、プロピレン・エチレンランダム共重合体である。さらにエチレン成分およびα−オレフィン成分がいずれも0モル%ではないプロピレン系共重合体は、プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
【0013】
上記のようなプロピレン系重合体において、プロピレン成分が90モル%未満であると、このプロピレン系重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性して得られるグラフト変性プロピレン系重合体は、熱転写記録媒体の製造工程において該重合体を含有する離型層を支持体に塗布した原反の巻き体に於いて、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明で用いられる炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどがあげられる。このうち特に1−ブテンが好ましい。
【0015】
ベースとなるプロピレン系重合体を変性する際には、不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルが用いられるが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の無水物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが用いられる。
【0016】
このようなグラフト変性プロピレン系重合体は、特許第2732476号公報、特開平4−363372公報に記載された方法で得ることができる。市販品としては、三井石油化学工業(株)製ユニストールPシリーズ等があげられる。
【0017】
このような特定のグラフト変性プロピレン系重合体を離型層に用いることによって非加熱時には支持体と着色インク層との密着性が良好でインクの粉落ちが発生せず、加熱時には着色インク層の離型性が良好で、熱転写感度が高く、高精細な画像を形成できる。
【0018】
さらに、先に転写されているインク画像のうえに別の色のインク画像を重ね転写する場合、先に転写されているインク画像の最上層の離型層とつぎに転写される着色インク層との間の接着性が良好であるため、重ね印字性が優れ、良好なカラー画像が得られる。
【0019】
本発明の離型層中には前記グラフト変性プロピレン系重合体を10重量%以上含有するのが好ましい。グラフト変性プロピレン系重合体の含有量が10重量%より少ないと、支持体と着色インク層の間の密着力が安定せず、インクの粉落ちが生じやすくなる傾向がある。
【0020】
本発明においては、離型層全体を前記グラフト変性プロピレン系重合体で構成せしめてもよいが、該グラフト変性プロピレン系重合体以外の熱可塑性樹脂を配合してもよい。その他の熱可塑性樹脂を併用する場合は熱転写感度の点から90重量%以下含有させるのが好ましい。
【0021】
かかる熱可塑性樹脂としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アルキルアクリレート共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂などがあげられる。
【0022】
前記特定のグラフト変性プロピレン系重合体と熱可塑性樹脂を併用する場合は、離型層中にグラフト変性プロピレン系重合体を10重量%以上、なかんづく20〜40重量%、熱可塑性樹脂を90重量%以下、なかんづく60〜80重量%含有せしめるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、離型層にメラミン樹脂、アクリル樹脂などの有機系粒子、シリカ、シリカゲル、アルミナなどの無機粒子を含有させることができる。このような粒子を離型層に分散させることにより離型層のタック性が低減される。離型層に粒子を含有させる場合、その含有量は50重量%以下とするのが望ましい。粒子の含有量が50重量%を超えると、離型層の支持体に対する密着力が小さくなり、インクの粉落ちが生じる傾向にある。
【0024】
離型層は、前記特定のグラフト変性プロピレン系重合体、必要に応じその他の熱可塑性樹脂を適宜の溶剤に溶解または分散させ、さらに必要に応じ粒子を添加した塗工液を支持体上に塗布、乾燥することによって形成できる。塗布量(乾燥塗布量をいう、以下同様)は0.1〜1g/m2の範囲が好ましい。塗布量が前記範囲より少ないと、離型性が充分でなく、一方前記範囲より多いと熱転写感度が低下する傾向がある。
【0025】
発明における着色インク層は感熱転写性の着色インク層であり、着色剤と熱可塑性ビヒクルを主要成分とするものである。該熱可塑性ビヒクルはワックスおよび/または熱可塑性樹脂からなる。本発明では、とくにビヒクル中における熱可塑性樹脂の割合が比較的多く、凝集力の比較的大きな着色インク層の場合に、重ね印字性の向上効果が顕著に奏される。たとえば、ヒビクル中の熱可塑性樹脂の割合が20重量%以上で、着色インク層の溶融粘度が5000cps(160℃)以上のものが好ましい。
【0026】
前記ワックスとしては、たとえばラノリン、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;酸化ワックス、合成エステルワックス、ポリエチレンワックス、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体ワックスなどの合成ワックスなどがあげられる。これらワックス類は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記熱可塑性樹脂としては、たとえばエチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クロマン/インデン樹脂などがあげられる。これら樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
着色剤としては各種の有機、無機の顔料、染料が使用できる。カラー画像形成用の熱転写記録媒体の場合は、通常イエロー、マゼンタ、シアンのインク層が使用され、これらの2色または3色のインク層を重ね転写することによって、減法混色により色を発現する領域を含むカラー画像を形成することができる。必要により、ブラックのインク層を使用してもよく、通常ブラックのインク層は他の色と重ね合わせられない。
【0029】
前記着色剤の着色インク層中における含有量は、5〜80重量%程度が好ましい。着色インク層にはその他必要に応じて分散剤、帯電防止剤などを配合してもよい。着色インク層の塗布量は0.5〜3g/m2程度が適当である。
【0030】
前記イエロー、マゼンタ、シアンおよび要すればブラックのインク層は、それぞれ別の支持体上に設けてもよく、あるいはこれらを単一の支持体上に設けてもよい。
【0031】
本発明の熱転写記録媒体における支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが使用できるが、特に限定されるものではない。支持体の背面(サーマルヘッドに摺接する側の面)に、従来から知られているスティック防止層を設けてもよい。支持体の厚さは通常1〜10μm程度であり、熱拡散を小さくして解像度を高める点からは1〜6μmの範囲が好ましい。
【0032】
なお、本発明の熱転写記録媒体は、サーマルヘッド以外の加熱手段、たとえばレーザー光照射などを使用した重ね印字に適用できることは勿論である。
【0033】
【実施例】
つぎに実施例をあげて本発明を説明する。
【0034】
実施例1
片面に厚さ0.2μmのシリコーンアクリル系樹脂からなるスティック防止層を設けた厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのステック防止層と反対側の面に、下記処方の離型層用塗工液を塗布、乾燥して、塗布量0.15g/m2の離型層を形成した。
【0035】
【0036】
前記離型層上に表1に示される各色のインク塗工液を塗布、乾燥して、イエロー、マゼンタ、シアンのインク層(各色のインク層の塗布量2.3g/m2)が支持体の長手方向に繰返して配置された熱転写記録媒体を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
比較例1
実施例1において、離型層を設けずに支持体上に直接着色インク層を設けたほかは実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0039】
比較例2
実施例1において、離型層用塗工液の処方をつぎのものに変えたほかは実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0040】
【0041】
前記で得られた各熱転写記録媒体について、インクの粉落ち、転写感度および重ね印字性を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
〈転写感度〉
前記各熱転写記録媒体を用い、下記条件下で印字し、得られた印字を目視にて観察し、つぎの基準で評価した。なお、イエロー、マゼンタ、シアンの各色について印字し、評価した。
【0043】
印字条件
熱転写プリンタ:(株)キングジム製 TEPRA PRO SR717
印字エネルギー:“ふつう”(プリンタ設定値)
印字速度:10mm/秒
印字パターン:テストパターン
受像体:白色の受像層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム
評価基準
○…良好
△…若干カスレがある
×…カスレがある
【0044】
〈重ね印字性〉
前記各熱転写記録媒体を用い、前記と同じ印字条件下にイエロー、マゼンタ、シアンのインクを重ね印字し、ベタ印字部の重ね部分を目視にて観察し、つぎの基準で評価した。
【0045】
○…重ねられるべきインク層が完全に転写されている。
△…重ねられるべきインク層の50%以上、100%未満が転写されている。
×…重ねられるべきインク層の50%未満が転写されている。
【0046】
〈インクの粉落ち〉
図1に示すように、テーブル1の端部から突出させた支持部材2に、垂直になるようにガラス板3を固定した試験装置を用いた。熱転写記録媒体4(幅24.0mm)をインク層側が上を向くように配置し、熱転写記録媒体4の垂下した方の端部におもり5を取り付け、他方の端部を移動片6に取り付け、移動片6を矢印の方向に水平に140cm/分の速度で移動させた。おもり5を順次重いものにかえ、何gのおもりのときにインク層が剥離するかを観察した。なお、おもりの重量が大きければ大きいほど、粉落ちしにくいことを意味する。
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明のグラフト変性プロピレン系重合体を含有する離型層を有する熱転写記録媒体では、離型層のない場合にくらべて、支持体と着色インク層との間の密着力が大きく、インクの粉落ちが発生しなくなり、しかもワックスを主成分とする離型層を用いる場合にくらべて重ね印字性が優れ、良好なカラー印像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクの粉落ち試験で使用した装置の概略断面図である。
【符号の説明】
3 ガラス板
4 熱転写記録媒体
5 おもり
Claims (3)
- 支持体上に、少なくとも離型層、着色インク層をこの順に積層した熱転写記録媒体であって、前記離型層にプロピレン成分が90〜100モル%の量で、エチレン成分が0〜10モル%の量で、かつ炭素数が4〜20であるα−オレフィンから導かれるα−オレフィン成分が0〜10モル%の量で存在するプロピレン系重合体を、炭素数が3〜10の不飽和カルボン酸またはその酸無水物もしくはそのエステルから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で有機過酸化物の存在下にグラフト変成してなるグラフト変性プロピレン系重合体を含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
- 離型層中における前記グラフト変性プロピレン系重合体が無水マレイン酸グラフト変性プロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録媒体。
- 離型層にさらに有機系または無機系の粒子を含有することを特徴とする請求項1または2記載の熱転写記録媒体。
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- 1998-10-09 JP JP28794398A patent/JP4106498B2/ja not_active Expired - Fee Related
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