JP4103329B2 - 熱現像感光材料及びその画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料(以降、単に感光材料ともいう)に関するものであり、さらに詳しくは、十分な最高濃度を有すると共に、鮮鋭性が良好で、高温高湿度保存でのカブリ上昇が抑えられ、かつ熱現像処理における濃度ムラの少ない熱現像感光材料と熱現像感光材料の画像記録方法及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光層を有し、画像様露光することにより画像形成を行う感光材料は、多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,457,075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)等に記載されている。このような熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)および還元剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は、常温では安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は、露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は、黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。この熱現像感光材料は、近年益々高まっている処理の簡易化、環境保全という要求に合致するものである。
【0004】
従来、このタイプの熱現像感光材料の多くは、鮮鋭性向上のため感光層やバッキング層にアキュータンス染料やハレーション防止染料が用いられてきた。ところで、従来の熱現像感光材料の感光層をみると、十分な最高濃度を達成するために銀ソースとなる非感光性有機銀塩を必要十分な量添加する必要があった。さらに該非感光性有機銀塩や該銀塩の還元剤を感光層に保持するため、それらと同等量以上のバインダーを添加する必要があり、その結果として総乾燥膜厚が10μmより厚いものがほとんどであった。この総乾燥膜厚を下げることでさらに鮮鋭性を向上させることができるが、感光層の最高濃度を保ちながら総乾燥膜厚を10μm以下にすると、カブリが増大し、特に高温高湿下で保存した場合に、カブリの増大が顕著であることが判明した。
【0005】
さらに、熱現像処理方式として、従来より、ヒート・ドラムのような熱源に保護層を接触させながら行う熱現像処理方式、または、熱源にバッキング層を接触させながら熱現像処理する方式が知られているが、これらの方式で上記熱現像感光材料を熱現像処理させた場合に、現像濃度ムラが大きく劣化することもわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、十分な最高濃度を有すると共に、鮮鋭性が良好で、高温高湿下の保存でカブリ上昇が抑制された熱現像感光材料を提供することであり、更には保護層及び/又はバッキング層に加熱されたドラムなどの熱源を接触させて熱現像感光材料を現像した場合でも、濃度ムラの少ない熱現像感光材料の画像記録方法及び画像形成方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0008】
1.支持体の一方の面に、少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含む感光層と支持体から該感光層に対して遠い側に少なくとも1層の保護層を有する熱現像感光材料において、該感光層の銀密度が0.10〜0.45g/cm3、総乾燥膜厚が1〜10μmであり、かつ該保護層の総乾燥膜厚が3〜20μmであり、更に保護層の総乾燥膜厚/感光層の総乾燥膜厚の比が0.5〜2.0であることを特徴とする熱現像感光材料。
【0009】
2.2層以上の異なるバインダーからなる保護層を有し、該保護層の乾燥膜厚がそれぞれ1.5〜10μmであることを特徴とする前記1項記載の熱現像感光材料。
【0010】
3.支持体を挟んで感光層とは反対側の位置にバッキング層を有し、該バッキング層の総乾燥膜厚が0.5〜5μmであることを特徴とする前記1又は2項記載の熱現像感光材料。
【0011】
4.保護層及びバッキング層から選ばれる少なくとも1層が、コロイド状無機微粒子を含有することを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
【0012】
5.非感光性有機銀塩が、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子を有し、かつ主平面方向から計測される該平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均が1.1以上10.0未満であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
【0013】
6.非感光性有機銀塩が、酸基を有するモノマーを5〜95質量%の範囲で用いて重合されたポリマーとの銀塩であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
【0014】
7.非感光性有機銀塩が、下記一般式(1)で表されるポリマーとの銀塩及び/又は少なくともカルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物を含む混合物の重付加から形成されるポリマーとの銀塩であることを特徴とする前記6項記載の熱現像感光材料。
【0015】
一般式(1)
−(A)a−(B)b−
式中、Aはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。a、bはそれぞれ共重合比を表し、aは5〜95質量%、bは5〜95質量%である。ここでa+b=100質量%である。
【0016】
8.感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩の総銀量が、2.4g/m2以下であることを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
【0017】
9.溶媒を5〜1000mg/m2含有することを特徴とする前記1〜8項のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
【0018】
10.露光面と走査レーザー光のなす角度が実質的に垂直になることがない露光装置を用いて、前記1〜9項のいずれか1項記載の熱現像感光材料を露光せしめることを特徴とする画像記録方法。
【0019】
11.縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光装置を用いて、前記1〜9項のいずれか1項記載の熱現像感光材料を露光せしめることを特徴とする画像記録方法。
【0020】
12.前記1〜9項のいずれか1項記載の熱現像感光材料の保護層及び/又はバッキング層と熱源を接触させ現像せしめることを特徴とする画像形成方法。
【0021】
上記構成により、本件課題が解決される機構については以下のように考察している。すなわち、従来、感光層の膜厚を薄くすることにより劣化していた高温高湿条件下の保存におけるカブリは、保護層を厚くしたり、或いはバインダーを複数種用いたり、コロイド状無機微粒子を添加することにより、感光層と外部環境との間に強力なバリア層を形成し、その結果として湿度による影響が小さくなり良化したと考えられる。また、濃度ムラに関しては、上記保護層のコントロールやバッキング層のコントロールにより、感光層への熱伝導を現像面的に均質化したためと推察している。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に係る発明においては、感光層の銀密度と感光層及び保護層の総乾燥膜厚を規定することが特徴である。本発明における感光層の総乾燥膜厚は、1〜10μmであることが特徴の1つである。これより厚いと鮮鋭性へ悪影響を及ぼす結果となる。好ましくは2〜8μmであり、さらに好ましくは3〜6μmである。また、保護層の総乾燥膜厚は3〜20μmであることが特徴の1つである。これより薄いと目的である保存安定性等の効果が得らず、逆にこれより厚くなると最高濃度が劣化する。好ましくは、5〜18μmである。
また、本発明の効果を十分に出すためには、保護層の総乾燥膜厚/感光層の総乾燥膜厚の比が0.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。
【0023】
請求項2に係る発明においては、保護層が異なるバインダーにより2層以上で構成され、それぞれの保護層の乾燥膜厚が1.5〜10μmであることが特徴である。さらには、それぞれの保護層の乾燥膜厚が、保護層下層の乾燥膜厚≧保護層上層乾燥膜厚の関係にあることが好ましい。
また、上記保護層には、カブリの低減や現像前または現像後の保存性をさらに向上させるために熱現像時の熱で上記性能をコントロールする物質を放出するプレカーサーかを添加する事が好ましい。乾燥膜厚が制御された感光層のもとで、乾燥膜厚が制御された保護層に添加することにより、熱現像時の放出から感光層へ拡散するまでの時間をコントロールすることができ、上記プレカーサーかの効果を最大限にだすことができる。後述する好ましい現像温度及び現像時間の範囲では、上記プレカーサーかは感光層に隣接する保護層に添加するのが好ましい。上記プレカーサー化合物の例としては、米国特許第4510236号明細書に記載の色調剤を放出する化合物、米国特許第4351896号、特開平7−13296号、特開平7−49547号、特開平7−295139号、特開平11−316438号、特開2000−187299号、特開2000−275780号、特開2000−275781号明細書に記載の安定剤を放出する化合物、特願平11−258638号明細書記載のポリホロメタン化合物を放出する化合物などが挙げられる。上記プレカーサー化合物の添加量は、銀1モルに対して0.001〜0.1モルが好ましい。
【0024】
請求項3に係る発明においては、バッキング層の総乾燥膜厚が0.5〜5μmであることが特徴である。好ましくは、0.7〜4μmである。
【0025】
上述した各乾燥膜厚は、感光材料を表面に対して垂直に切断し、得られた断面を電子顕微鏡写真で撮影し、直接測定することにより求めることができる。
【0026】
また、本発明でいう感光層の銀密度とは、乾燥後の感光層1cm3中に含まれる感光性ハロゲン化銀及び非感光性有機銀塩の総銀量(g)のことをいい、0.10〜0.45g/cm3であることが本発明の特徴である。より好ましくは、0.15〜0.35g/cm3である。これより低いと、十分な最高濃度が得られず、逆に高すぎると現像ムラが劣化する要因となる。この銀密度は、1cm2あたりのハロゲン化銀及び有機銀塩の総銀量(g)を感光層の総乾燥膜厚(cm)で割ることにより求めてもよい。
【0027】
請求項2でいう異なるバインダーとは、以下に述べるバインダーから種類の異なるものを用いることであってもよいし、種類の異なる2種以上のバインダーを選択し、それらの混合比を複数の保護層間で変えたものであってもよい。
【0028】
これら保護層に用いることのできる好適なバインダーは、透明又は半透明で一般に無色であり、天然ポリマーや合成ポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、コポリ(スチレン-無水マレイン酸)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、コポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリビニルアセタール誘導体、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル誘導体、ポリウレタン誘導体、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリビニルアセテート誘導体、セルロースエステル誘導体、ポリアミド等が挙げられ、水溶性、水分散性または非水溶性でもよい。これらのバインダーの中でも好ましいのは、非水溶性のポリマーの場合は、ポリビニルアセタール誘導体、セルロースエステル誘導体、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリウレタン誘導体であり、水溶性、または、水分散性ポリマーの場合は、コポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックス、水分散性ポリウレタン誘導体である。
【0029】
本発明の感光材料に用いられる上記保護層以外の感光層、バック層などの各構成層のバインダーとしても、上記記載のものが好ましく用いることができる。
【0030】
請求項4に係る発明においては、保護層及びバッキング層の少なくとも1層中にコロイド状無機微粒子を含有することが特徴である。本発明に係るコロイド状無機微粒子とは、例えば、主成分がケイ素、アルミニウム、チタン、インジウム、イットリウム、スズ、アンチモン、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、モリブデン、ニオブ、ジルコニウム、バナジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などから選ばれる酸化物が好ましい。その中でも透明性、硬度の点でケイ素酸化物(コロイダルシリカ)、アンチモン酸化物がより好ましい。
【0031】
本発明におけるコロイド状無機微粒子とは、個数平均径として1〜100μmの無機微粒子のことをいい、5〜50μmがより好ましい。ここでいう個数平均径とは、一次元長さ(粒子を1列に並べた長さ)を個数で割った平均径のことであり、例えば微粒子ハンドブック(朝倉書店)の58〜59頁に記載の定義式によって求めることができる。
【0032】
本発明に係るコロイド状無機微粒子は、本発明の効果を十分発現する上でその表面に疎水化処理が施されていることが好ましい。コロイド状無機微粒子への疎水化処理の方法としては、例えばカップリング剤を用いる方法があり、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが用いられる。シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、チタンカップリング剤としては、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどが挙げられる。
【0033】
本発明に係るコロイド状無機微粒子は、例えば、日産化学工業(株)より市販されており、ケイ素酸化物としては、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスO、スノーテックスS、スノーテックスOL、オルガノシリカゾルXBA−ST、MIBK−ST、MA−ST−M、IPA−ST、アンチモン酸化物としては、サンコロイドA−1510LP、A−1510N、A−1550、A−2550、A−1530ZB、A−600、FR−104、FR−204、AME−130、AMT−103、ATL−130を入手し、用いることができる。
【0034】
本発明に係るコロイド状無機微粒子の添加量としては、添加される保護層バインダーに対して5〜35質量%が好ましい。これ以下では目的の効果は得られず、逆にこの範囲を越えると塗膜の脆弱性が劣化する。
【0035】
請求項5に係る発明では、非感光性有機銀塩(以降、単に有機銀塩という)が、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子を有し、かつ主平面方向から計測される該平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均が1.1以上10.0未満であることが特徴である。
【0036】
本発明に係る有機銀塩とは、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。また、配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。
【0037】
本発明において好ましく用いられる有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure(以降、単にRDともいう)No.17029及び同No.29963に記載されており、次のものが挙げられる。脂肪酸の銀塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸との重合反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換芳香族カルボン酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸等)との重合反応生成物の銀錯体等);チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプタン誘導体の銀塩。上記の有機銀塩の中でも、脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、更に好ましく用いられるのは、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及び/又はステアリン酸銀である。
【0038】
本発明でいうアスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子を有するとは、該平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の総個数の50%以上を占めることを表す。更に、本発明に係る有機銀塩は、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上の個数比率であり、特に好ましくは80%以上の個数比率である。
【0039】
本発明におけるアスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子とは、平均粒径と平均厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上の有機銀塩粒子である。
【0040】
AR=平均粒径(μm)/平均厚さ(μm)
本発明に係る平板状有機銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、さらに好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると、有機銀塩粒子が最密充填されやすくなり、また、アスペクト比があまりに高すぎる場合には、有機銀塩粒子同士が重複しやすくなり、また互いが密着した状態で塗膜中に分散されることにより、光散乱等を起こしやすくなり、その結果として感光材料の透明性の低下を引き起こすので、上記記載の範囲が好ましい。
【0041】
本発明における平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均値とは、各粒子の最大長(MX LNG)及び各粒子の最小幅(WIDTH)を少なくとも1000個の粒子について測定し、各粒子ごとに下記式により針状比率を求めた後、計測された全粒子の針状比率の平均値を算出することにより求められる。
【0042】
針状比率=(MX LNG)/(WIDTH)
ここで、粒子の最大長とは、粒子内の2点を直線で結んだ時の最大値をいう。また、粒子の最小幅とは、粒子に外接する2本の平行線を引いた時、平行線の距離が最小値になる時の値をいう。
【0043】
本発明に係る平板状有機銀塩粒子の針状比率の平均値は、1.1以上10.0未満であるが、好ましくは1.1以上5.0未満である。
【0044】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、その形成方法としては正混合法、逆混合法、同時混合法等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法を用いることも好ましい。具体的には、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、前記ソープに硝酸銀を添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよいが、上記一連の反応工程は、適当な攪拌部材を用いて反応槽内が均一になるように十分に攪拌しながら行う必要がある。また、本発明の好ましい形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/又は前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適に制御することなどが有効な手段である。
【0045】
本発明に係る有機銀塩は、必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザーなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散には、例えば、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザーとしては、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0046】
上記分散を行う際、バインダー濃度は、有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザーを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい条件として挙げられる。又、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0047】
本発明に係る有機銀塩は、単分散であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散とは、下記式で定義される。
【0048】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
上記記載の有機銀塩の平均粒径は0.01〜0.8μmが好ましく、更に好ましくは、0.05〜0.5μmであり、ここでいう平均粒径(円相当径)とは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0049】
請求項6に係る発明においては、有機銀塩として、酸基を有するモノマーを5〜95質量%の範囲で用いて重合されたポリマー銀塩を用いることが特徴であり、これにより本発明の効果をさらに高めることができる。ここでいう、酸基を有するモノマーを5〜95質量%の範囲で用いて重合されたポリマーとは、高分子鎖の側鎖構造としてカルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸部分の繰り返しユニットを5〜95質量%の範囲で含むポリマーであり、該酸基と銀塩を形成している有機銀塩を用いることが最も好ましい。
【0050】
ポリマーの構造としては、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系などが挙げられる。
【0051】
請求項7に係る発明では、ポリマーとして下記一般式(1)で表される構造を有するポリマーを用いることが特徴である。
【0052】
一般式(1)
−(A)a−(B)b−
式中、Aはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。a、bはそれぞれ共重合比を表し、aは5〜95質量%、bは5〜95質量%である。ここでa+b=100質量%である。
【0053】
上記一般式(1)において、Aで表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、スチレンカルボン酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらのモノマーは単独で用いられても良いし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。このうちアクリル酸およびメタクリル酸が特に好ましい。
【0054】
次に、Bで表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、以下に示すアクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、スチレン類、ハロゲン化ビニル類が好ましい。アクリル酸エステル類としては、例えばアクリル酸メチル、ア−Nリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルメチルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらのモノマーは単独で用いられても良いし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。このうち好ましいのはメタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、スチレンであり、特に好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0055】
また、B成分の一部として、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する架橋性モノマーを、C成分として含ませるとにより好ましい結果が得られる。この2つ以上のエチレン性不飽和基を有する架橋性モノマーとしては、例えばジビニルベンゼン、4,4′−イソプロピリデンジフェニレンジアクリレート、1,3−ブチレンジアクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−シクロヘキシレンジメチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロピリデングリコールジメタクリレート、ジビニルオキシメタン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチリデンジアクリレート、エチリデンジメタクリレート、1,6−ジアクリルアミドヘキサン、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N,N′−(1,2−ジヒドロキシ)メチレンビスアクリルアミド、2,2′−ジメチル−1,3−トリメチレンジメタクリレート、フェニルエチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラメチレンジアクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチリデンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3,5−トリアクロイルヘキサン−s−トリアジン、ビスアクリルアミド酢酸、エチリジントリメタクリレート、プロピリジントリアクリレート、ビニルアリルオキシアセテート、などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらのモノマーは単独で用いられても良いし、2種以上組み合わせて用いられても良い。このうち好ましいのは、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、N,N′−メチレンビスアクリルアミドであり、特に好ましくはエチレングリコールジメタクリレートである。
【0056】
上記一般式(1)中、aとしては10〜80質量%、特に15〜60質量%であることが好ましい。bとしては20〜90質量%、特に40〜85質量%が好ましい。B成分の一部としてのC成分の含有量は、1〜20質量%、特に3〜15質量%が好ましい。
【0057】
また、少なくともカルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物を含む混合物の重付加から形成されるポリマーも好ましく用いられる。このポリマーはポリウレタンポリマーの一種であり、その構造中にカルボキシル基を含有することに特徴がある。カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピルル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)ブタン酸などが挙げられる。ジイソシアネート化合物の具体例としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物の含有量は10〜60質量%が好ましく、より好ましくは、20〜50質量%である。上記成分のほかにポリウレタンの物性を調整したり、構造を3次元的にするために、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価ヒドロキシ化合物を成分として加えても良い。その場合、多価ヒドロキシ化合物の添加量は、1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜20質量%である。
【0058】
本発明に好ましく用いられる一般式(1)で表されるポリマー及び少なくともカルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物を含む混合物の重付加から形成されるポリマーの具体例を、以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない(数字は質量%を表す)。
【0059】
P−1 メタクリル酸/スチレン共重合体(30/70)
P−2 メタクリル酸/t−ブチルアクリレート共重合体(60/40)
P−3 メタクリル酸/ヘキシルアクリレート共重合体(50/50)
P−4 メタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体(40/60)
P−5 メタクリル酸/フェニルアクリレート共重合体(40/60)
P−6 メタクリル酸/シクロヘキシルアクリレート共重合体(40/60)
P−7 メタクリル酸/メチルメタクリレート共重合体(20/80)
P−8 メタクリル酸/エチルメタクリレート共重合体(30/70)
P−9 メタクリル酸/n−ブチルメタアクリレート/シクロヘキシルアクリレート共重合体(40/20/40)
P−10 メタクリル酸/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(40/60)
P−11 アクリル酸/スチレン共重合体(20/80)
P−12 アクリル酸/ヘキシルアクリレート共重合体(40/60)
P−13 アクリル酸/イソノニルアクリレート共重合体(60/40)
P−14 アクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体(60/40)
P−15 アクリル酸/フェニルアクリレート共重合体(50/50)
P−16 イタコン酸/スチレン共重合体(40/60)
P−17 イタコン酸/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体(40/60)
P−18 イタコン酸/ベンジルアクリレート共重合体(40/60)
P−19 マレイン酸/スチレン共重合体(40/60)
P−20 マレイン酸/ヘキシルアクリレート共重合体(20/80)
P−21 マレイン酸/フェニルアクリレート共重合体(40/60)
P−22 メタクリル酸/メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート(40/50/10)
P−23 メタクリル酸/n−ブチルアクリレート/エチレングリコールジメタクリレート(30/60/10)
P−24 アクリル酸/メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート(30/60/10)
P−25 アクリル酸/メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/ジビニルベンゼン(40/20/35/5)
P−26 アクリル酸/エチルアクリレート/メチレンビスアクリルアミド(40/55/5)
P−27 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸/4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート重付加体(50/50)
P−28 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸/トリレンジイソシアネート重付加体(50/50)
P−29 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸/4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート/ヘキサメチレンジイソシアネート/トリエチレングリコール重付加体(40/35/10/15)
上記ポリマーにおいて、ポリエチレン系のものは、一般的な乳化重合法により得ることができる。乳化重合法については、室井宗一著「高分子ラテックスの化学」(高分子刊行会:1970年)の中で詳細に記されている。ポリウレタン系のものは、ギュンター・オーテル著「ポリウレタンハンドブック」(Gunter Oertel:Polyurethane Handbook,21,1985)、村橋俊介ら編「合成高分子」V 309〜359頁などに記載の方法を参考にして行うことができる。
【0060】
本発明のポリマー銀塩のポリマー分子量は、重量平均分子量Mwが1000〜1000000が好ましく、より好ましくは3000〜500000である。
【0061】
本発明のポリマー銀塩は、上記ポリマーの水溶液または分散液と硝酸銀水溶液を混合することによって得られるが、その製造及び分散に関しては、前記アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子と同様にして行うことができる。
【0062】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は、シングルジェット法もしくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えば、アンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法でも調製できる。この様にして感光性ハロゲン化銀粒子を予め調製し、次いで本発明に用いられる他の成分と混合して、組成物中に導入する。この場合、感光性ハロゲン化銀粒子と有機銀塩の接触を充分に行わせるため、例えば感光性ハロゲン化銀粒子を調製するときの保護ポリマーとして米国特許第3,706,564号、同第3,706,565号、同第3,713,833号、同第3,748,143号、英国特許第1,362,970号等に記載されたポリビニルアセタール誘導体などのゼラチン以外のポリマーを用いる手段や、英国特許第1,354,186号に記載されているような感光性ハロゲン化銀粒子のゼラチンを酵素分解する手段、または米国特許第4,076,539号に記載されているように感光性ハロゲン化銀粒子を界面活性剤の存在下で調製することによって保護ポリマーの使用を省略する手段等を適用することが出来る。
【0063】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は、光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑える為又、良好な画質を得るためには粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子径としては、0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。
【0064】
又、感光性ハロゲン化銀粒子の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。またはハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよいが、好ましくは沃臭化銀である。
【0065】
請求項8に係る発明においては、熱現像感光材料におけるハロゲン化銀乳剤及び有機銀塩の総銀量が2.4g/m2以下であることが1つの特徴であり、好ましくは0.5〜2.4g/m2であり、さらに好ましくは1.0〜2.2g/m2である。また、銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。前記総銀量は、感光材料の使用目的、条件などに応じて決めることができるが、本発明に係る範囲で調製することにより、感度、カブリ、保存安定性などの性能が優れた熱現像感光材料を得ることができる。
【0066】
上記の各種方法により調製される感光性ハロゲン化銀乳剤には、例えば含硫黄化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物またはこれらの組み合わせによって化学増感を施すことができる。これらの化学増感の方法及び手順については、例えば、米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号、特開昭51−22430号、同51−78319号、同51−81124号等に記載されている方法を用いることができる。また、ハロゲン化銀形成成分により有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する際に、米国特許第3,980,482号に記載されているように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【0067】
これらの感光性ハロゲン化銀乳剤には、照度不軌改良や階調調整の為に元素周期表の6族から10族に属する金属、例えばRh、Ru、Re、Ir、Os、Fe等のイオン、その錯体または錯イオンを含有させることができる。これら化合物は、特に錯イオンとして添加することが好ましく、例えば照度不軌改良のためにIrCl6 2-等のIr錯イオンを添加してもよい。
【0068】
本発明に係る熱現像感光材料には、増感色素を用いることができる。増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので有ればいかなるものでも良く、例えば、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。本発明に使用される有用な増感色素は、例えばResearch Disclosure(以降、RDと略す)Item17643IV−A項(1978年12月23頁)、同Item1831X項(1979年8月437頁)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザーイメージャー、スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。また、赤色光への分光増感の例としては、He−Neレーザー光源に対しては、特開昭54−18726号に記載のI−1〜I−38の化合物、特開平6−75322号に記載のI−1〜I−35の化合物及び特開平7−287338号に記載のI−1〜I−34の化合物、LED光源に対しては特公昭55−39818号に記載の色素1〜20、特開昭62−284343号に記載のI−1〜I−37の化合物及び特開平7−287338号に記載のI−1〜I−34の化合物などが有利に選択される。750〜1400nmの範囲のいずれかの波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感するには、感光性ハロゲン化銀乳剤を、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノール及びキサンテン色素を含む種々の既知の色素を用いればよく、スペクトル的に有利に増感されることができる。有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。上記のシアニン及びメロシアニン色素において、イミノ基又はカルボキシル基を有するものが特に効果的である。例えば、米国特許第3,761,279号、同第3,719,495号、同第3,877,943号、英国特許第1,466,201号、同第1,469,117号、同第1,422,057号、特公平3−10391号、同6−52387号、特開平5−341432号、同6−194781号、同6−301141号に記載されている既知の色素から適宜選択し用いることができる。特に好ましい色素の構造としては、チオエーテル結合を有するシアニン色素であり、その例としては特開昭62−58239号、特開平3−138638号、同3−138642号、同4−255840号、同5−72659号、同5−72661号、同6−222491号、同2−230506号、同6−258757号、同6−317868号、同6−324425号、特表平7−500926号に記載されているシアニン色素が挙げられる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。特に、増感色素の組み合わせの一例として、強色増感の目的で用いることができる。すなわち、増感色素と共にそれ自身は分光増感作用を持たない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組み合わせ及び強色増感作用を示す物質はRD176巻17643第23頁IVのJ項(1978年12月発行)、あるいは特公昭49−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号等に記載されている。増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解しハロゲン化銀乳剤に添加してもよい。又、米国特許第3,469,987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水又は親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中に添加したり、酸又は塩基を共存させて水溶液としてハロゲン化銀乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、同第4,006,025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものをハロゲン化銀乳剤中に添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物をハロゲン化銀乳剤中に添加する方法、特開昭51−74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液をハロゲン化銀乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。又、増感色素の溶解に際しては超音波を用いることもできる。本発明に用いられる増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加せしめる時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば、米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程及び/又は脱塩前の時期、脱塩工程中及び/又は脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前又は化学熟成工程中の時期、及び化学熟成後から塗布までのいかなる時期、工程において添加されてもよい。又、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一の化合物を単独で、又は異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中又は化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前、化学増感工程中及び化学増感完了後に分割して添加してもよく、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を任意に変えて添加してもよい。
【0069】
本発明の熱現像感光材料に用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えば、フェノール誘導体、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール誘導体、ナフトール誘導体、ビスナフトール誘導体、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン誘導体、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン誘導体、アスコルビン酸誘導体、3−ピラゾリドン誘導体、ピラゾリン−5−オン誘導体、ピラゾリン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、ハイドロキノンモノエーテル誘導体、ヒドロオキサミン酸誘導体、ヒドラジド誘導体、アミドオキシム誘導体、N−ヒドロキシ尿素誘導体等があり、さらに詳しくは例えば、米国特許第3,615,533号、同第3,679,426号、同第3,672,904号、同第3,751,252号、同第3,782,949号、同第3,801,321号、同第3,794,488号、同第3,893,863号、同第3,887,376号、同第3,770,448号、同第3,819,382号、同第3,773,512号、同第3,839,048号、同第3,887,378号、同第4,009,039号、同第4,021,240号、英国特許第1,486,148号若しくはベルギー特許第786,086号及び特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号若しくは特公昭51−35851号に具体的に例示された還元剤があり、本発明はこのような公知の還元剤の中から適宜選択し使用することが出来る。選択方法としては、実際に熱現像感光材料を作製し、その写真性能を直接評価することにより使用した還元剤の優劣を確認する方法が最も簡便である。上記の還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合に好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール誘導体、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール誘導体、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号若しくは英国特許第1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号若しくは特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール誘導体、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール誘導体、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることができる。
【0070】
本発明の熱現像感光材料に使用される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には5×10-4〜1×10-1モル/m2で、好ましくは4×10-3〜8×10-3モル/m2の範囲である。又この範囲内において、上述した還元剤は、2種以上併用されてもよい。
【0071】
本発明に係る熱現像感光材料では、支持体の少なくとも一方の側に感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光層と、該感光層に対して支持体から遠い側に保護層をそれぞれ1層以上有している。また、感光層に通過する光の量又は波長分布を制御するために支持体を挟んで感光層と同じ側或いは反対側にフィルター層を形成しても良いし、感光層に染料又は顔料を含ませても良い。染料としては特開平8−201959号に記載の化合物が好ましい。感光層は、複数層にしても良く、又階調の調節のため層構成として高感度層/低感度層又は低感度層/高感度層の配列としても良い。また、本発明の熱現像感光材料には、各種の機能性添加剤、例えば、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆補助剤等を目的に応じて感光層、保護層、又はその他の形成層へ適宜添加しても良い。
【0072】
本発明の熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。色調剤は、米国特許第3,080,254号、同第3,847,612号及び同第4,123,282号に示されるように、写真技術において周知の材料である。好適な色調剤の例は、RD第17029号に開示されており、次のものが挙げられる。イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5-ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウム又は8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉-トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。上記色調剤の中で好ましくはフタラゾン又はフタラジンである。
【0073】
本発明には、現像進行性を制御するため、分光増感効率を向上させるため或いは現像前後での保存安定性を向上させるためメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有せしめることができる。本発明においてメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、ArSM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子又はアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム又はテルリウム原子を有する芳香環、縮合芳香環又は複素芳香環である。好ましくは、複素芳香環がベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、Br及びCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる置換基群から選択されるものを有しても良い。メルカプト置換複素芳香族化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2′−ジチオビスベンゾチアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4−(3H)キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらのメルカプト化合物の添加量としては、乳剤層中の銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲が好ましく、更に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.3モルの量である。その他の有効なカブリ防止剤として知られているものに、水銀イオンがある。感光材料中にカブリ防止剤として水銀化合物を使用することについては、例えば米国特許第3,589,903号に開示されている。しかしながら、水銀化合物は環境適性上好ましくなく、非水銀カブリ防止剤として、例えば米国特許第4,546,075号及び同第4,452,885号及び特開昭59−57234号に開示されている様なカブリ防止剤が好ましい。特に好ましい非水銀カブリ防止剤は、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号に開示されているような化合物、すなわち、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン、X3は水素又はハロゲンを表す。)で表される1以上の置換基を備えたヘテロ環状化合物である。好適なカブリ防止剤の例としては、特開平9−90550号段落番号〔0062〕〜〔0063〕に記載されている化合物等が好ましく用いられる。更に、より好適なカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号等に開示されている化合物を用いることができる。
【0074】
本発明の熱現像感光材料の感光層には、可塑剤及び潤滑剤として多価アルコール、例えば、米国特許第2,960,404号に記載された種類のグリセリン及びジオール、米国特許第2,588,765号及び同第3,121,060号に記載の脂肪酸又はエステルならびに英国特許第955,061号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0075】
本発明の熱現像感光材料の感光層、保護層、バック層などの各構成層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としては、イソシアネート化合物類、米国特許第4,791,042号などに記載されているエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などに記載されているビニルスルホン系化合物類などを用いることができる。
【0076】
本発明には、塗布性、帯電特性の改良などを目的として界面活性剤を用いても良い。界面活性剤の例としては、アニオン系、カチオン系、ベタイン系、ノニオン系、フッ素系などいかなるものも適宜用いられる。具体的には、特開昭62−170950号、米国特許第5,382,504号などに記載のフッ素系高分子界面活性剤、特開昭60−244945号、特開昭63−188135号などに記載のフッ素系界面活性剤、米国特許第3,885,965号などに記載のポリシロキサン系界面活性剤、特開平6−301140号などに記載のポリアルキレンオキサイドやアニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0077】
本発明においては、感光層側にマット剤を含有することが好ましく、熱現像後の画像の傷つき防止のためには、感光材料の表面にマット剤を配することが好ましい。又そのマット剤は、感光層側の全バインダーに対し、質量比で0.5〜10%含有することが好ましい。本発明において用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでも良い。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネート等の有機マット剤を用いることができる。マット剤の形状は、定形、不定形いずれでも良いが、好ましくは定形で、特に球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさは、マット剤の体積を球形に換算したときの直径で表され、本発明におけるマット剤の粒径とは、この球形換算した直径のことを示すものとする。本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。ここで、粒子サイズ分布の変動係数とは、
変動係数=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100(%)
で表される。本発明において、マット剤は任意の構成層中に含むことができるが、好ましくは感光層以外の構成層に添加することであり、更に好ましくは支持体から見て最も外側の層への添加である。マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であっても良いし、或いは塗布液を塗布し乾燥が終了する迄の間にマット剤を噴霧する方法を用いても良い。
【0078】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、及び現像処理後の画像の変形を防ぐためにプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)、ポリエチレンナフタレート及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチックの支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては、50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。又熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とは、これらの支持体を製膜後、感光層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することが良い。
【0079】
熱現像感光材料を構成する感光層、保護層等は、ディップ塗布法、エアナイフ塗布法、フロー塗布法、又は米国特許第2,681,294号に記載のスライドホッパーを用いる押出塗布法を含む種々の塗布方法により塗布することができる。また、必要により米国特許第2,761,791号及び英国特許第837,095号に記載の方法により2層又はそれ以上の層を支持体上に同時に塗布乾燥することもできる。
【0080】
請求項9に係る発明においては、熱現像感光材料が溶媒を5〜1000mg/m2含有していることが特徴である。
【0081】
本発明における溶媒としては、例えば、ケトン類として、アセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類として、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類として、エチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられる。アミン類として、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。その他として水、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、ピリジン、トルイジン、テトラヒドロフラン、酢酸等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は、単独または数種類組合わせて使用しても良い。
【0082】
また、本発明に係る熱現像感光材料において、上記溶媒の含有量を本発明に係る範囲内に制御するには、塗布後の乾燥工程等における乾燥温度、湿度等の条件を適宜制御することにより達成することができる。また、該溶媒の熱現像感光材料における含有量は、下記に示すガスクロマトグラフィーを用いた方法によって測定することができる。
【0083】
すなわち、熱現像感光材料中の含有溶剤量を測定する方法は、対象となる感光材料を一定面積切り出す。なお、この際正確な感光材料面積を測定する。これを細かく刻んで専用バイアル瓶に収納、密閉する。これをヘッドスペースサンプラー(ヒューレットパッカード社製HP7694)にセットし、設定温度に加温後ガスクロマトグラフィーに導入し、目的の溶媒ピークの面積を測定することにより溶媒含有量を測定することが出来る。1回の注入では熱現像感光材料中に含有される溶媒がすべて出きらない為、同じ試料の注入を何回か繰り返して測定を行うマルチヘッドスペース法を使用する。
【0084】
本発明の熱現像感光材料中に含有される溶媒の量は、合計量で5〜1000mg/m2、好ましくは10〜300mg/m2であることが好ましい。当該含有量を上記範囲に設定することにより、高感度でかつカブリ濃度が低い熱現像感光材料を得ることができる。
【0085】
本発明の熱現像感光材料の画像記録においては、露光手段を使用するのが好ましく、露光手段としては、Arレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(780nm、830nm)などレーザー走査露光により行うことが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを併せて用いることもできる。これらレーザーは必要とする出力を得るために、複数本合波して用いてもよい。本発明では、10-2秒以下の露光時間で感度の改善が著しく、好ましくは10-9秒以上10-5秒以下である。
【0086】
請求項10の発明においては、感光材料の露光面と走査レーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光装置を用いることが特徴であり、該レーザー走査露光装置を用いることにより、本発明の効果をより発揮することができる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。レーザー光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を本発明に係る感光材料に適用することにより、特に干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
【0087】
また、請求項11に係る発明においては、露光を縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光装置を用いて行うことが特徴である。縦単一モードの走査レーザー光に比べ本発明に係る方式は、干渉縞様のムラの発生等に起因する画質劣化を減少することができる。縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかけるなどの方法を用いることができる。なお、本発明で言う縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になることが好ましい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0088】
本発明の熱現像感光材料は、常温では安定であるが、露光後高温に加熱することにより現像がなされる。本発明の熱現像感光材料は、いかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した感光材料を昇温し現像される。
【0089】
請求項12に係る発明においては、保護層及び/又はバッキング層と熱源とを接触させて熱現像を行うことが特徴である。
【0090】
熱現像感光材料への熱供給手段としては、画像形成層のある面をヒートドラムなどに密着させる方式、画像形成層のある面の裏側をヒートパネルなどに密着させる方式、または、オーブン内をローラーで搬送させる方式などがあるが、画像形成層のある面をヒートドラムなどに密着させる方式、画像形成層のある面の裏側をヒートパネルなどに密着させる方式が、熱を安定して供給できる点で好ましく用いられる。熱現像材料と接触するヒートドラムや、ヒートパネルの表面には、密着性と熱伝導性の点でシリコンラバーが貼り付けてあるのが通常である。好ましい現像温度としては80〜200℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。加熱温度が80℃以下では短時間に十分な画像濃度が得られず、又200℃以上ではバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。現像時間は、迅速処理が望ましく、1〜60秒が好ましく、5〜30秒がさらに好ましい。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の供給なしに進行する。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0092】
実施例1
以下に示す方法に従って、熱現像感光材料を作製した。
【0093】
(写真用支持体の作製)
濃度0.170(コニカ(株)製デンシトメータPDA-65にて測定)に青色着色した、厚み175μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、写真用支持体を作製した。
【0094】
(感光性乳剤分散物の作製)
以下に示す方法に従い、感光性乳剤分散物を調製した。
【0095】
(感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
〈溶液A1〉
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
〈溶液B1〉
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
〈溶液C1〉
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
〈溶液D1〉
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
〈溶液E1〉
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
〈溶液F1〉
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
〈溶液G1〉
56%酢酸水溶液 18.0ml
〈溶液H1〉
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)mH 但し、m+n=5〜7である。
【0096】
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて溶液A1に溶液B1の1/4量及び溶液C1全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。6分間経過後、溶液B1の3/4量及び溶液D1の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0097】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0098】
(感光性乳剤分散液Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸217.6g、アラキジン酸28.2g、ステアリン酸6.4gを90℃で溶解した。次に4モル/LのNaOH93.3mlを添加し、40℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記脂肪酸ナトリウム溶液を40℃に保ったまま、45.3gの感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し、5分間攪拌した。
【0099】
次に1モル/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を施した後、40℃にて質量変化がなくなるまで温風循環乾燥機にて乾燥を行い、粉末有機銀塩Aを得た。
【0100】
次いで、ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製、ButvarB−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら前記作製した粉末有機銀塩A500gを徐々に添加し、十分に混合することにより予備分散液を調製した。次いで、GM−2型圧力式ホモジナイザー(エスエムテー社製)を用いて、前記で得た予備分散液を2回分散することにより、感光性乳剤分散液Aを調製した。得られた感光性乳剤分散液A中のアスペクト比3以上を有する平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均値は11.5であった。
【0101】
(感光層側の塗布液調製及び塗布)
(感光層塗布液Aの調製)
不活性気体雰囲気下で下記に示す添加剤を順次添加して、感光層塗布液Aを調製した。
【0102】
前記の感光性乳剤分散液A500gおよびメチルエチルケトン100gを攪拌しながら21℃に保温した。上記溶液に、ピリジニウムヒドロブロミドパーブロミド(PHP、0.45g)を加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液3.25ml)を添加して30分攪拌した。次に、赤外増感色素1と4−クロロ−2−ベンゾイル安息香酸および強色増感剤(5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール)の混合溶液(混合比率1:250:20、増感色素で0.1%メタノール溶液、7ml)を添加して1時間攪拌した後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社製Butvar B−79)を表1に記載の銀密度及び乾燥膜厚になる量添加し、それを充分に溶解した後、以下の添加物を順次添加し、感光層塗布液Aを調製した。
【0103】
【0104】
【化1】
【0105】
(保護層塗布液Aの調製)
メチルエチルケトン865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB381−20)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)4.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパン1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、シリカ(富士シリシア サイロイド320)1.6g及びフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)1.0gを添加、溶解し、保護層塗布液Aを調製した。
【0106】
(感光層面側塗布)
以上のようにして調製した感光層塗布液A及び保護層塗布液Aを用い、表1に記載の銀密度及び乾燥膜厚になるように支持体上へ、この順で各層同時重層塗布した。乾燥は75℃、5分間行い、熱現像感光材料である試料1〜5を作製した。なお、各試料の塗布銀量は、1.5g/m2になるように調節した。
【0107】
(バック面側の塗布液調製及び塗布)
(バック面塗布液Aの調製)
メチルエチルケトン830gに、攪拌しながらセルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。この溶液に、赤外染料1を0.30g添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社製メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに対し、1質量%の濃度でデゾルバー型ホモジナイザーで分散したシリカ(W.R.Grace社、サイロイド64X6000)75gを添加、攪拌しバック面塗布液Aを調製した。
【0108】
【化2】
【0109】
(バック面の塗布)
以上のようにして調製したバック面塗布液Aを、乾燥膜厚が3.5μmになるよう押し出しコーターを用いて、上記で作製した試料1〜5のバック面に塗布し、乾燥を行った。なお、乾燥は、乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて行った。
【0110】
上記により作製した試料1〜5に含まれる残留溶媒の総量は、それぞれ142mg/m2であった。
【0111】
【表1】
【0112】
以上のようにして作製した試料1〜5について、下記に示す方法に従い、最高濃度、鮮鋭性、高温高湿保存性並びに濃度ムラの評価を行った。
【0113】
〈最高濃度及び高温高湿保存性の評価〉
上記作製した各試料を2部作製し、1部は高温高湿条件として、50℃、80%RH条件下(条件1と称す)で遮光した状態で1週間保存した。また残りの1部は、基準試料として23℃、55%RHの条件下(条件2と称す)で同様にして1週間保存した。以上のように保存処理を施した各々の試料の乳剤面側に、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザーを露光源とした露光装置によりレーザー走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザー光の角度を75度として画像を形成した。これら露光済みの各試料の保護層をヒートドラムに接触させながら、120℃で15秒間熱現像処理を施し、現像済み試料を得た。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。次いで、現像済みの各試料の濃度測定を行い、条件2における最大濃度(Dmax)と条件2に対する条件1の最小濃度(カブリ濃度)の差を高温高湿保存性の尺度として求めた。
【0114】
〈鮮鋭性の評価〉
各試料に対し、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザーを露光源とした露光装置により、レーザー走査により1辺が1cmの正方形を露光した。この際、感光材料の露光面と露光レーザー光の角度を75度とした。ついで、濃度が2.5となる露光量を露光量x、濃度0.5となる露光量を露光量yとしたとき、短辺100μm、長辺1cmの長方形の長辺が接するように露光量xと露光量yを交互に露光し、得られた各々の領域の最高濃度と最低濃度をコニカ社製ミクロデンシトメーターで測定し、この最高濃度と最低濃度の差を2で除したものを鮮鋭度と定義した。ここで、鮮鋭度が大きいほど鮮鋭性に優れることとなり、具体的には鮮鋭性の劣化を全く生じない場合には、鮮鋭性は1.0となる。
【0115】
〈濃度ムラの評価〉
各試料を35cm×43cmサイズに裁断し、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザーを露光源とした露光装置によりレーザー走査露光を施し、光学濃度が1.0となるように試料全体に均一な露光を与えた。この際、感光材料の露光面と露光レーザー光の角度を75度とした。その後、保護層をヒートドラムに接触させながら、120℃で15秒間熱現像処理した。以上により得られた試料を1cm2サイズで1505の区画に分割し、その区画からランダムに300区画を抽出し、濃度計により濃度測定を行った。得られた各濃度値の標準偏差(σ)を算出し、以下の基準により5段階評価を行った。ここで、評価ランク4以上が実用上許容できるレベルであり、3以下が実用不可のレベルと判断した。
【0116】
5:0≦σ<0.01
4:0.01≦σ<0.02
3:0.02≦σ<0.03
2:0.03≦σ<0.04
1:0.04≦σ
以上の評価により得られた結果を、同じく表1に示す。
【0117】
表1より明らかなように、感光層及び保護層の各々総乾燥膜厚が、本発明の請求範囲にある試料2〜4は、最高濃度、鮮鋭性に優れ、かつ高温高湿保存性及び濃度ムラが極めて良好であることが判る。
【0118】
実施例2
以下に示す方法に従い、熱現像感光材料である試料6〜10を作製した。
【0119】
《感光層面側の塗布液調製及び塗布》
(感光層塗布液の調製)
実施例1における感光層塗布液Aと全く同様にして調製した。
【0120】
(表面保護層塗布液Aの調製)
メチルエチルケトン665gに、攪拌しながらポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製Butvar B−74)65g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)3.5gを添加し、溶解した。この溶液に、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパン4.5g、ベンゾトリアゾール3.0g、シリカ(富士シリシア社製サイロイド320)1.6gを添加溶解して、表面保護層塗布液Aを調製した。なお、後述の試料9、10においては、表2に示すように、本発明に係るコロイド状無機微粒子A又はBを固形分換算でポリビニルブチラールに対してそれぞれ30質量%に相当する量添加、攪拌して各々の表面保護層塗布液を調製した。なお、表2中のコロイド状無機微粒子A、Bは、下記に記載のものを使用した。
【0121】
コロイド状無機微粒子A:オルガノシリカゾルMIBK−ST(二酸化珪素/日産化学工業(株)製 粒子径分布10〜15μm)
コロイド状無機微粒子B:サンコロイドAME−130(アンチモン酸化物/日産化学工業(株)製 粒子径分布5〜50μm)
(保護下層塗布液Aの調製)
メチルエチルケトン865gに、攪拌しながらセルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB381−20)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)4.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパン1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、シリカ(富士シリシア社製サイロイド320)1.6g及びフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)1.0gを添加、溶解し、保護下層塗布液Aを調製した。
【0122】
(感光層面側塗布)
以上のようにして調製した感光層塗布液A、保護下層塗布液A及び表面保護層塗布液Aを用いて、各々が表2に示す銀密度及び乾燥膜厚になる様に、実施例1で作製した支持体上へ同時重層塗布した。乾燥は75℃、5分間で行い熱現像感光材料である試料6〜10を作製した。なお、塗布銀量は1.2g/m2になるよう調節した。
【0123】
(バック面側の塗布液調製及び塗布)
実施例1と全く同様にして、バック面塗布液Aの調製及びバック面側塗布を行った。
【0124】
以上により作製した試料6〜10に含まれる残留溶媒の総量は、150mg/m2であった。
【0125】
上記作製した試料6〜10を、実施例1と同様の方法にて、最高濃度、鮮鋭性、高温高湿保存性及び濃度ムラの評価を行い、得られた結果を同じく表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2より明らかなように、本発明に係る試料7〜10は、最高濃度、鮮鋭性及び高温高湿保存性に優れ、かつ濃度ムラに対し良好な結果を示し、とりわけ表面保護層にコロイド状無機微粒子を用いた試料9、10は、高温高湿保存性及び濃度ムラが一段と改良されていることが判る。
【0128】
実施例3
以下に示す方法に従い、熱現像感光材料である試料11〜15を作製した。
【0129】
(感光層面側の塗布液調製及び塗布)
(感光性乳剤分散液Bの調製)
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、実施例1で作製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aを45.3gと純水450mlを添加し、5分間攪拌した。
【0130】
以下、感光性乳剤分散液Aの調製と同様にして感光性乳剤分散液Bを得た。得られた感光性乳剤分散液B中のアスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均値は5.4であった。
【0131】
(感光層塗布液Bの調製)
不活性気体雰囲気下で下記の添加剤を順次添加し、感光層塗布液Bを調製した。前記の感光性乳剤分散液Bを500gおよびメチルエチルケトン100gを攪拌しながら21℃に保温した。その後、上記溶液に、ピリジニウムヒドロブロミドパーブロミド(PHP、0.45g)を加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液3.25ml)を添加して30分攪拌した。次に赤外増感色素1と4−クロロ−2−ベンゾイル安息香酸および強色増感剤(5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール)の混合溶液(混合比率1:250:20、増感色素で0.1%メタノール溶液、7ml)を添加して1時間攪拌した後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社製Butvar B−79)を表3に記載の銀密度及び乾燥膜厚になる量添加し、充分溶解した後以下の添加物を順次添加して感光層塗布液Bを調製した。
【0132】
(表面保護層塗布液Bの調製)
メチルエチルケトン865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB171−15)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)4.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパンを1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、シリカ(富士シリシア サイロイド320)1.6g及びフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)1.0gを添加、溶解し、表面保護層塗布液Bを調製した。なお、試料14,15については、本発明に係るコロイド状無機微粒子A又はBを固形分換算でセルロースアセテートブチレートに対し、各々20質量%に相当する量を添加した。
【0133】
(保護下層塗布液Bの調製)
メチルエチルケトン665gを攪拌しながら、ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製Butvar B−79)65g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)3.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパンを4.5g、ベンゾトリアゾール3.0g、シリカ(富士シリシア サイロイド320)1.6gを添加し溶解し、保護下層塗布液Bを調製した。
【0134】
(感光層面側塗布)
以上のようにして調製した感光層塗布液B、保護下層塗布液B及び表面保護層塗布液Bを用いて、表3に記載の銀密度及び乾燥膜厚になる量を、実施例1で作製した支持体上へ同時重層塗布し、乾燥は75℃、5分間で行い、熱現像感光材料である試料11〜15を作製した。なお、塗布銀量は1.0g/m2になるように調節した。
【0135】
《バック面側の塗布液調製及び塗布》
実施例1と全く同様にして、バック面塗布液Aの調製及びバック面側塗布を行った。
【0136】
なお、以上により作製した試料11〜15に含まれる残留溶媒の総量は138mg/m2であった。
【0137】
上記作製した試料11〜15を、実施例1と同様の方法により、最高濃度、鮮鋭性、高温高湿保存性及び濃度ムラの評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
表3より明らかなように、本発明に係る平板状非感光性有機銀塩粒子の針状比率が本発明の請求範囲にある試料12〜15は、実施例2の試料に比較し、更に最高濃度及び高温高湿保存性に優れ、特にコロイド状無機微粒子を用いた試料14、15は、高温高湿保存性及び濃度ムラが一段と向上することが認められた。
【0140】
実施例4
(感光層面側の塗布液調製及び塗布)
実施例3の試料13と同様にして感光層塗布液B、保護下層塗布液B及び表面保護層塗布液Bを調製し、塗布を行った。
【0141】
(バック面側の塗布液調製及び塗布)
(バック面塗布液B、Cの調製)
メチルエチルケトン830gに、攪拌しながらセルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。該溶液に、赤外染料1を0.30g添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社製メガファッグF120K)2.3gを添加し、溶解するまで十分に攪拌を行った。ついで、表4に示すように本発明に係るコロイド状無機微粒子Aを固形分換算でセルロースアセテートブチレートに対して15質量%に相当する量添加して攪拌し、最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でデゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社、サイロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバック面塗布液Cを調製した。同様にして、上記コロイド状無機微粒子Aを含まないバック面塗布液Bも併せて調製した。
【0142】
(バック面側塗布)
上記で得られた感光層面側塗布済試料に、乾燥膜厚がそれぞれ3μmになるようバック面塗布液B、Cをバック面側に塗布、乾燥し、試料16、17を作製した。
【0143】
以上のようにして作製した試料16、17について、実施例1と同様の方法に従い最高濃度、鮮鋭性、高温高湿保存性及び感光層の濃度ムラの評価を行った。ただし、各評価の際の熱現像処理は、ヒートパネルを用いバッキング層に接触させながら、125℃で20秒間熱現像処理を施した。以上により得られたその結果を表4に示す。
【0144】
【表4】
【0145】
表4より明らかなように、本発明に係る試料16、17は、最高濃度、鮮鋭性、及び高温高湿保存性に優れ、かつ濃度ムラに対し良好な結果を示した。
【0146】
実施例5
以下に示す方法に従い、試料18〜22を作製した。
【0147】
(感光性乳剤分散液Cの調製)
表5に示す各ポリマー水溶液または水分散液を、それぞれ酸基が0.7000モルに当たる固形分量になるように計りとり、1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液、濃硝酸及び純水にてpH5.9の液5000mlを調製した。溶液温度を30℃に保ちながら、45.3gの実施例1で作製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0148】
次に1モル/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、40℃にて質量変化がなくなるまで温風循環乾燥機にて乾燥を行い、粉末有機銀塩を得た。
【0149】
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら前記で作製した粉末有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液を調製した。次いで、GM−2型圧力式ホモジナイザー(エスエムテー社製)を用いて、前記で作製した予備分散液を2サイクル分散することにより感光性乳剤分散液Cを調製した。
【0150】
(感光層側の塗布液調製及び塗布)
(感光層塗布液Cの調製)
上記作製した感光性乳剤分散液Cを500gおよびメチルエチルケトン100gを攪拌しながら21℃に保温した。その後、不活性気体雰囲気下で下記の添加剤を加え、感光層塗布液Cを調製した。
【0151】
上記溶液に、ピリジニウムヒドロブロミドパーブロミド(PHP、0.45g)を加え1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液3.25ml)を添加して30分攪拌した。
【0152】
次に赤外増感色素1、4−クロロ−2−ベンゾイル安息香酸および強色増感剤(5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール)の混合溶液(混合比率1:250:20、増感色素で0.1%メタノール溶液、7ml)を添加して1時間攪拌した後に温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌する。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社製Butvar B−79)を表5に示す銀密度及び乾燥膜厚になる量添加して充分溶解してから、以下の添加物を順次添加し感光層塗布液Cを調製した。
【0153】
(表面保護層塗布液Cの調製)
メチルエチルケトン865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製CAB171−15)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)4.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパンを1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、シリカ(富士シリシア サイロイド320)1.6g及びフッ素系活性剤(旭硝子社製サーフロンKH40)1.0gを添加、溶解した。最後に表5に記載の本発明に係るコロイド状無機微粒子を固形分換算でセルロースアセテートブチレートに対して20質量%に相当する量添加して攪拌し、表面保護層塗布液Cを調製した。
【0154】
(保護下層塗布液Cの調製)
メチルエチルケトン665gを攪拌しながら、ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製Butvar B−79)65g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製パラロイドA−21)3.5gを添加し溶解した。この液に1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−ヒドロキシプロパンを4.5g、ベンゾトリアゾール3.0g、シリカ(富士シリシア サイロイド320)1.6gを添加し溶解し、保護下層塗布液Cを調製した。
【0155】
(感光層面側塗布)
以上のようにして調製した感光層塗布液C、保護下層塗布液C及び表面保護層塗布液Cを用いて、銀密度0.200g/cm3、感光層乾燥膜厚5μm、保護下層乾燥膜厚3μm、表面保護層乾燥膜厚2μmになる量で支持体上へ、この順で各層同時重層塗布し、乾燥は75℃、5分間で行った。
【0156】
(バック面側の塗布液調製及び塗布)
実施例1と同様にしてバック面塗布液を調製し、バック面側塗布を行った。
【0157】
なお、上記作製した感光材料に含まれる残留溶媒の総量は145mg/m2であった。
【0158】
以上のようにして、熱現像感光材料である試料18〜22を作製し、実施例1と同様な方法で、最高濃度、鮮鋭性、高温高湿保存性及び濃度ムラの評価を行い、得られた結果を表5に示す。
【0159】
【表5】
【0160】
表5より明らかなように、試料18〜22は、最高濃度、鮮鋭性、及び高温高湿保存性に優れ、かつ濃度ムラに対し良好な結果を示した。
【0161】
【発明の効果】
本発明により、十分な最高濃度を有すると共に、鮮鋭性が良好で、高温高湿下の保存でカブリ上昇が抑制された熱現像感光材料が提供され、更には保護層及び/又はバッキング層に加熱されたドラムなどの熱源を接触させて熱現像感光材料を現像した場合でも、濃度ムラの少ない熱現像感光材料の画像記録方法及び画像形成方法を提供することができた。
Claims (12)
- 支持体の一方の面に、少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含む感光層と支持体から該感光層に対して遠い側に少なくとも1層の保護層を有する熱現像感光材料において、該感光層の銀密度が0.10〜0.45g/cm3、総乾燥膜厚が1〜10μmであり、かつ該保護層の総乾燥膜厚が3〜20μmであり、更に保護層の総乾燥膜厚/感光層の総乾燥膜厚の比が0.5〜2.0であることを特徴とする熱現像感光材料。
- 2層以上の異なるバインダーからなる保護層を有し、該保護層の乾燥膜厚がそれぞれ1.5〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の熱現像感光材料。
- 支持体を挟んで感光層とは反対側の位置にバッキング層を有し、該バッキング層の総乾燥膜厚が0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱現像感光材料。
- 保護層及びバッキング層から選ばれる少なくとも1層が、コロイド状無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
- 非感光性有機銀塩が、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子を有し、かつ主平面方向から計測される該平板状有機銀塩粒子の針状比率の個数平均が1.1以上10.0未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
- 非感光性有機銀塩が、酸基を有するモノマーを5〜95質量%の範囲で用いて重合されたポリマーとの銀塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
- 非感光性有機銀塩が、下記一般式(1)で表されるポリマーとの銀塩及び/又は少なくともカルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物とジイソシアネート化合物を含む混合物の重付加から形成されるポリマーとの銀塩であることを特徴とする請求項6記載の熱現像感光材料。
一般式(1)
−(A) a −(B) b −
〔式中、Aはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。a、bはそれぞれ共重合比を表し、aは5〜95質量%、bは5〜95質量%である。ここでa+b=100質量%である。〕 - 感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩の総銀量が、2.4g/m 2 以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
- 溶媒を5〜1000mg/m 2 含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の熱現像感光材料。
- 露光面と走査レーザー光のなす角度が実質的に垂直になることがない露光装置を用いて、請求項1〜9のいずれか1項記載の熱現像感光材料を露光せしめることを特徴とする画像記録方法。
- 縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光装置を用いて、請求項1〜9のいずれか1項記載の熱現像感光材料を露光せしめることを特徴とする画像記録方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項記載の熱現像感光材料の保護層及び/又はバッキング層と熱源を接触させ現像せしめることを特徴とする画像形成方法。
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