JP4078791B2 - 写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真感光材料、熱現像感光材料及び画像形成方法に関し、詳しくは印刷製版用に適している熱現像感光材料及び画像形成方法に関し、更に詳しくは感度、最大濃度、硬調性に優れ、黒ポツ及び保存安定性を共に改良した熱現像感光材料及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷製版や医療の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターやレーザー・イメージャー等を用い、効率的な露光が可能で、かつ高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる写真用途の光熱写真材料に関する技術が求められている。この技術としては、例えば米国特許3,152,904号、同3,487,075号及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されるような、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料(以下、熱現感材と称す)が知られている。
【0003】
これらの熱現感材は、熱現像処理により写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を調整する色調剤等を、通常、(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。該熱現感材は常温で安定であるが、露光後、高温(80〜140℃程度)に加熱することで現像される。即ち、加熱することにより有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成するものである。この酸化還元反応は、露光でハロゲン化銀に発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応により生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成が為なされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなく進行する。
【0004】
この熱現感材は、マイクロフィルムやレントゲン用感光材料に多く用いられてきているが、印刷用感光材料(以下、印刷感材と称す)としては、一部で使われているのみである。印刷感材の分野で熱現像タイプの感光材料が普及していない理由の一つは、印刷感材用としては得られる画像の最大濃度が低く、かつ階調が軟調なために、得られる画質が著しく低いことである。
【0005】
一方、近年レーザーや発光ダイオードの急速な進歩により、700〜1000nmに発振波長を有するスキャナーに対する適性、あるいは感度、最大濃度(Dmax)が高く、かつ硬調な階調を有する感光材料の開発が強く望まれていた。又、それに加えて簡易処理、ドライ化への要望も一段と強まっている。
【0006】
上記の状況に対し、米国特許3,667,958号では、ポリヒドロキシベンゼン類とヒドロキシルアミン類、レダクトン類又はヒドラジン類を併用した熱現感材が、高い画質識別性と解像力を有すると開示されているが、これらの還元剤の組合せでは、カブリ上昇を引き起こし易いことが明らかとなった。
【0007】
又、米国特許5,464,738号や同5,496,695号には、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、ヒンダードフェノール類及び或る種のヒドラジン誘導体を含む熱現感材が開示されている。しかし、これらヒドラジン誘導体を用いた場合には、十分なDmax、あるいは印刷感材に求められている硬調な階調を得ることができず、それに加えて黒ポツ故障が発生し、画質の悪化を招くという問題があることが判明した。
【0008】
これに対し、黒ポツを改良したヒドラジン誘導体が、特開平9−292671号、同9−304870号、同9−304871号、同9−304872号、同10−31282号等に開示されている。更に、特開平10−62898号には、画像の再現性を改善したヒドラジン誘導体が開示されているが、何れも得られるDmax(最大濃度)、硬調な階調、黒ポツ故障耐性、高い画像再現性の全てを満足するには至っていない。
【0009】
更に、米国特許5,545,515号、同5,635,339号には、アクリロニトリル類の使用例が開示されているが、これらの化合物では硬調な階調が得られず、又、黒ポツの発生を抑制するには至っていない。
【0010】
又、上記特許で開示されるヒドラジン誘導体及びアクリロニトリル類を用いた場合は、何れも、それを用いた感光材料の保存安定性が劣化するという重大な問題を引き起こすことが明らかとなり、早急な改良が望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、高感度、高濃度及び硬調な階調を有し、更には黒ポツ耐性、保存安定性の何れもに優れた写真感光材料、熱現像感光材料及び画像形成方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のこれらの目的は、前記一般式(1)で表される化合物「化1」の少なくとも1種を含有する写真感光材料により達成された。
【0013】
尚、一般式(1)におけるR11が水素原子であり、R12がヒドロキシル基又はその塩であること、一般式(1)で表される化合物が前記一般式(2)「化2」で表されること、写真感光材料がスルホニウム塩化合物の少なくとも1種を含有すること、ヒドラジン誘導体を含有すること、ヒドラジン誘導体が前記一般式(H)で表される化合物「化4」であること、一般式(B)で表される化合物「化5」の少なくとも1種を含有することは好ましい態様である。
【0015】
更に、上記熱現像感光材料に画像様に露光を与え、次いで80〜250℃で熱現像する熱現像感光材料の画像形成方法によっても、本発明の目的は達成される。尚、該画像形成方法において、画像様に露光を与える手段がレーザー光源であること、レーザー光源の波長が700〜1000nmであることが好ましい。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における写真感光材料とは、印刷用感光材料、レントゲン用感光材料、マイクロフィルム、一般用黒白フィルム等で代表される黒白感光材料やカラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーペーパー等で代表されるカラー感光材料の何れでもよいが、好ましくは印刷製版用感光材料であり、特に好ましくは印刷製版用の熱現感材である。
【0017】
好ましく用いられる熱現感材において、前記一般式(1)である場合がより好ましく、より好ましくは前記一般式(2)である場合である。
【0018】
本発明に係る化合物を含有させることにより、高感度、高Dmaxで、かつ硬調な階調を実現すると共に、黒ポツ耐性を有し保存安定性に優れた熱現感材が得られる。更に、上述の効果は、ヒドラジン誘導体を併用することで更に向上することを見い出し、該ヒドラジン誘導体が前記一般式(H)で表される化合物である場合に、効果がより向上することも見い出した。
【0019】
一般式(1)、(2)及び(H)で表される化合物について詳細に述べる。
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0020】
R11、R12で表される1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含む複素環基(イミダゾリウム、ピリジニウム等)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(エチレンオキシもしくはプロピレンオキシ単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、アルキル、アリール又は複素環チオ基、メルカプト基、アルキル又はアリールスルホニル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、アルキル又はアリールスルホニルウレイド基、アルキル又はアリールスルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホスホルアミド基などが挙げられる。
【0021】
これらの内、好ましくはR11が水素原子であり、R12がヒドロキシル基又はその塩である。
【0022】
Z11により形成される芳香族環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チアゾール環等が挙げられ、これら芳香族環は更に置換基を有していてもよく、置換基同士が更に環を形成してもよい。該置換基の例としては、前述のR11及びR12で述べた1価の置換基が挙げられる。
【0023】
更に好ましくは、一般式(1)で表される化合物が一般式(2)で表される場合である。
【0024】
一般式(2)において、R21で表される1価の置換基としては、一般式(1)のR11及びR12で挙げた1価の置換基と同じ基が挙げられる。Xは酸素(−O−)、窒素(−NH−)又は硫黄(−S−)原子を表すが、窒素原子の場合は更に水素原子が置換されてもよい。
【0029】
以下に一般式(1)、(2)で表される化合物(本発明の化合物と称す)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。尚、これら化合物において、ケト−エノール型互変異性体又はシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0035】
これら本発明の化合物は公知の方法により容易に合成することができる。本発明の化合物の添加層は、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層及び/又は感光層に隣接した層であることが好ましい。又、添加量は、ハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により最適量が異なり、一様ではないが、概ねハロゲン化銀1モル当たり10-6〜10-1モル程度、特に10-5〜10-2モルの範囲が好ましい。
【0036】
次に、本発明に係るヒドラジン誘導体について説明する。本発明におけるヒドラジン誘導体とは下記一般式(A)で表される化合物である。
【0037】
一般式(A) R51−N(R53)−N(R54)−R52
式中、R51、R52、R53及びR54は各々、水素原子又は1価の置換基を表すが、該R51、R52、R53及びR54が1価の置換基で表される場合、その例としては前記一般式(1)のR11、R12で挙げた置換基が挙げられる。
【0038】
好ましくは該ヒドラジン誘導体が前記一般式(H)で表される化合物である場合である。
【0039】
一般式(H)において、R41、R42で表される1価の置換基としては、前記一般式(1)で述べた1価の置換基と同様の基が挙げられるが、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基が挙げられる。更に好ましくはアリール基、ヘテロアリール基又はアルコキシ基であり、特に好ましくは、R41が置換又は無置換のフェニル基の場合、R42が水素原子又はt−ブトキシカルボニル基である。
【0040】
G1、G2は、−(CO)p−、−CS−、スルホニル基、スルホキシ基、−P(=O)R43−又はイミノメチレン基を表すが、好ましくは−CO−、−COCO−、−SO2−又は−CS−であり、より好ましくは共に−CO−又は共に−SO2−である。
【0041】
A1、A2は共に水素原子、又は一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル等)、スルホニル基(メタンスルホニル、トルエンスルホニル等)又はオキザリル基(エトキザリル等)を表すが、好ましくはA1、A2共に水素原子の場合である。
【0042】
以下にヒドラジン誘導体及び一般式(H)で表される化合物(併せてヒドラジン化合物と称す)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
これらヒドラジン化合物は公知の方法により容易に合成することができる。例えば米国特許5,464,738号又は同5,496,695号を参考にして合成できる。ヒドラジン化合物の添加層は、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層及び/又は感光層に隣接した層であることが好ましい。又、ヒドラジン化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により最適量が異なり、一様ではないが、概ねハロゲン化銀1モル当たり10-6〜10-1モル程度、更には10-5〜10-2モルの範囲が好ましい。
【0048】
本発明に係る一般式(1)、(2)、ヒドラジン化合物は、適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、弗素化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等に溶解して用いることができる。
【0049】
又、既に良く知られている乳化分散法によっても組み入れることができる。例えば、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、グリセリルトリアセテート又はジエチルフタレート等の高沸点有機溶媒及び酢酸エチルやシクロヘキサノン等の補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化して乳化分散物を作製し、所望の構成層に添加することができる。
【0050】
又、固体分散法として知られている方法、例えば、本発明の化合物の粉末を、ボールミル、コロイドミル、あるいは超音波分散機等の分散手段を用いて水系微粒子分散物として任意に添加することもできる。
【0051】
熱現感材には、上記化合物の他に米国特許5,545,505号に記載のヒドロキシルアミン化合物、アルカノールアミン化合物やフタル酸アンモニウム化合物、同5,545,507号に記載のヒドロキサム酸化合物、同5,558,983号に記載のN−アシル−ヒドラジン化合物、同5,937,449号に記載のベンズヒドロールやジフェニルホスフィンやジアルキルピペリジンやアルキル−β−ケトエステル等の水素原子ドナー化合物を適宜添加することができる。
【0052】
これらの化合物を含有させることにより、Dmaxを更に向上できると共に、ヒドラジン化合物を用いて形成した画像において生じ易い黒ポツの発生を抑制することができ、結果として著しい画質の改良を果たすことができる。
【0053】
次に、スルホニウム塩化合物の適用について説明する。
本発明の感光材料の感光層中に、スルホニウム塩化合物を含有させることにより、長期保存時のカブリが更に改良され、又、高感度な熱現感材を提供することが出来るようになった。
【0054】
好ましく用いられるスルホニウム塩化合物としては、下記一般式(S)で表される化合物が好ましい。
【0055】
一般式(S) (R61)(R62)(R63)S+X-
式中、R61、R62、R63は各々、同じでも異なってもよく、かつ複素原子を有してもよい脂肪族基又は芳香族基を表す。R61〜R63の二つが互いに結合して環を形成してもよく、1個以上の別のスルホニウム塩基に結合されてもよい。X-は任意の対アニオンを表す。
【0056】
R61、R62又はR63で表される脂肪族基としては、炭素原子数1〜10の分岐又は直鎖のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、炭素原子数3〜10のアルケニル基(2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル、4−ヘキセニル等)、炭素原子数7〜10のアラルキル基(ベンジル、フェネチル等)等が挙げられる。
【0057】
R61、R62又はR63で表される芳香族基としては、フェニル又はナフチル基が好ましく、芳香族複素環基としては、チエニル、フラニル、ピラゾリル基等が好ましい。
【0058】
これらの基は、必要に応じて、5個までの炭素原子を有するアルキル基(メチル、ブチル等)、5個までの炭素原子を有するアルコキシル基(メトキシ、エトキシ等)、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素及び弗素)、5個までの炭素原子を有するカルボキシル基、シアノ基及びニトロ基、又はこれらの何れかの組合せを有し得る。
【0059】
X-で表される対アニオンとしては、ハライドアニオン、HSO4 -及びハロゲン含有錯アニオン、例えばテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート及びヘキサフルオロアンチモネート等の無機アニオン、RCOO-及びRSO3 -(Rはアルキル基又はアリール基を表し、更に置換基を有してもよい)で示される有機アニオン等が挙げられる。
【0060】
スルホニウム塩としては、R61、R62、R63が、それぞれ芳香族基であることが好ましく、特に好ましくは、それぞれフェニル基である、トリアリールスルホニウム塩が用いられる。ただし、該フェニル基は置換基を有してもよいし、未置換のものでもよい。
【0061】
以下に、本発明で用いられる一般式(S)で表される化合物(本発明のスルホニウム塩と称す)の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
【化18】
【0066】
上記スルホニウム塩の添加量は10-4〜1モル/Agモルが好ましく、特に10-3〜0.3モル/Agモルが好ましい。尚、該化合物は、本発明の熱現感材の如何なる構成層中に含有させてもよいが、本発明に用いられる還元剤の近傍に含有させるのが好ましい。
【0067】
又、本発明の効果をより発現するためには、上記スルホニウム塩と前記一般式(B)で表される化合物とを併用することが好ましい。
【0068】
以下に一般式(B)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
これらの化合物は、当業者に周知の方法により合成することができる。
一般式(B)で表される化合物の添加量に特に制限はないが、10-4〜1モル/Agモルが好ましく、特に10-3〜0.3モル/Agモルが好ましい。
続いて、本発明の熱現感材について説明する。
【0076】
熱現感材に用いられる有機銀塩は、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、その中でも特に長鎖(炭素原子数10〜30、好ましくは15〜25)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環の銀塩が好ましい。配位子が、銀イオンに対する総安定定数として4.0〜10.0の値を有する有機又は無機の銀錯体も有用である。
【0077】
好適な銀塩の例は、リサーチ・ディスクロージャ(以下、RDと略記)17029及び同29963に記載されており、以下のものを挙げることができる。
【0078】
有機酸の銀塩(没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸〔アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸等)〕とのポリマー反応生成物の銀錯体;チオン類の銀塩又は錯体(3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン));イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプチド類の銀塩等である。好ましい銀源は、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀及びそれらの混合物である。
【0079】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールド・ダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて、有機酸アルカリ金属塩ソープ(ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールド・ダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際、以下に述べる感光性ハロゲン化銀粒子(以下、単にハロゲン化銀粒子と言う)を混在させてもよい。本発明におけるハロゲン化銀粒子は、光センサーとして機能するものである。
【0080】
本発明においては、画像形成後の感光材料の白濁化の抑制、及び良好な画質を得るため平均粒子サイズは小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に好ましくは0.02〜0.08μmである。ここで言う粒子サイズ(粒径)とは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を想定した時の球の直径を言う。
【0081】
又、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下を言う。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0082】
単分散度=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が平均粒径0.1μm以下で、かつ単分散粒子であることが好ましく、この範囲にすることで画像の粒状度も向上する。
【0083】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特には80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)に記載の方法により求めることができる。
【0084】
本発明における好ましい他のハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここで言う平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとし、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比(r/h)が3以上のものを言う。その中でも好ましくはアスペクト比が3〜50である。
【0085】
又、平板粒子の粒径は、0.1μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.08μmが好ましい。これら平板粒子は、米国特許5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載の方法により、容易に得ることができる。該平板状粒子を用いることにより、更に画像の鮮鋭度も向上することができる。
【0086】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成は特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。
【0087】
本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著 PhotographicEmulsion Chemistry(The Focal Press刊,,1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0088】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、相反則不軌特性改良や階調調整のために、元素周期律表の第6族〜第10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有させることが好ましい。上記金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0089】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により不要の塩類を除去(脱塩)することができるが、本発明においては脱塩は行っても行わなくても何れでもよい。
【0090】
ハロゲン化銀粒子は、化学増感が施されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているような硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法等を用いることができる。
【0091】
感光材料の失透を防ぐため、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲に銀量を設定することにより硬調な画像を得ることができる。又、銀総量に対するハロゲン化銀量の比率は質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%である。
【0092】
本発明の熱現感材に用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えばフェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、更に詳しくは、米国特許3,615,533号、同3,679,426号、同3,672,904号、同3,751,252号、同3,782,949号、同3,801,321号、同3,794,488号、同3,893,863号、同3,887,376号、同3,770,448号、同3,819,382号、同3,773,512号、同3,839,048号、同3,887,378号、同4,009,039号、同4,021,240号、英国特許1,486,148号もしくはベルギー特許786,086号及び特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号もしくは特公昭51−35851号等に具体的に例示された還元剤等を挙げることができ、上記の公知な還元剤の中から適宜選択して使用することが出来る。
【0093】
選択方法としては、実際に還元剤を含む熱現感材を作製し、その写真性能を直接評価することにより、還元剤の適否を確認する方法が最も効率的である。
【0094】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合の好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル等)又はアシル基(アセチル、プロピオニル等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許3,589,903号、同4,021,249号もしくは英国特許1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることが出来る。
【0095】
熱現感材に使用される還元剤の適量は、使用する有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤により一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲が適当である。又、この範囲内においては、上述した還元剤を2種以上併用してもよい。
【0096】
本発明においては、還元剤を塗布直前に感光層塗布液に添加し塗布することが、感光層塗布液の停滞時間による写真性能変動を小さくする上で好ましい。
【0097】
本発明の熱現感材に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色である、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類〔ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール)〕、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
【0098】
バインダーとしては、親水性でも疎水性でもよいが、熱現像処理後のカブリを低減させるためには、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。
【0099】
好ましいバインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。その中でも、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びポリエステルが、特に好ましく用いられる。
【0100】
感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、感光層の外側に非感光層を塗設することが好ましい。これらの非感光層に用いられるバインダーは、感光層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0101】
熱現像速度を高めるため、感光層のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。更に好ましくは、1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では、未露光部の濃度(Dmin)が大幅に上昇し、実用上障害を起こす場合がある。
【0102】
感光層側にマット剤を含有せしめることが好ましく、熱現像処理後の画像の傷付き防止のため、感光材料の表面に配するマット剤量は、感光層側の全バインダーに対し質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。又、支持体を挟み感光層の反対側に非感光層を設ける場合には、該非感光層側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが、滑り性や指紋付着防止のためにも好ましく、そのマット剤量は、該非感光層の全バインダーに対し質量比で0.5〜40%含有せしめることが好ましい。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでもよいが、好ましくは定形で、特には球形が好ましい。
【0103】
本発明の熱現感材は支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。又、感光層を通過する光の量又は波長分布を制御するため、感光層と同じ側にフィルター染料層及び/又は反対側にアンチハレーション染料層、所謂バッキング層を形成してもよいし、あるいは感光層に、直接、染料又は顔料を含ませてもよい。
【0104】
これら非感光性層には、前記のバインダーやマット剤の他にポリシロキサン化合物、ワックス類や流動パラフィンのような滑り剤を含有してもよい。
【0105】
又、熱現感材には、塗布助剤として各種の界面活性剤を用いることができる。その中でも、特に弗素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0106】
感光層は、複数層にしてもよく、又、階調を整えるため、高感度層/低感度層、又は低感度層/高感度層等の複数の層構成を採ってもよい。
【0107】
本発明に用いられる好適な色調剤例は、RD17029に開示されている。
熱現感材には、現像を抑制あるいは促進させ現像強度を制御するため、分光増感効率を向上させるため、又は現像処理前後における保存安定性を向上させるため、メルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物等の抑制剤を含有させることができる。
【0108】
又、例えば界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤は、RD17029(1978年6月,9〜15頁)に記載される化合物を好ましく用いることができる。
【0109】
上述の各種添加剤は、感光層、非感光層又はその他の形成層の何れに添加してもよい。
【0110】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、及び現像処理後の画像の変形を防ぐためプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート等)であることが好ましい。その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(SPS)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0111】
又、熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前述のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とは、支持体を製膜後、感光層が塗布される迄の間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することを指す。
【0112】
本発明においては、帯電性を改良するために金属酸化物及び/又は導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらは何れの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層などである。
【0113】
熱現感材には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。
【0114】
有用な増感色素の具体例は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月,23頁)、同18431X項(1979年8月,437頁)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0115】
本発明においては、特に各種スキャナー光源の分光特性に適合した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許2,161,331号、西独特許936,071号、特願平3−189532号等に記載のシンプルメロシアニン類;ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号等に記載の三核シアニン色素類、特願平6−103272号に記載のメロシアニン類;LED光源及び赤色半導体レーザーに対しては、特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類;赤外半導体レーザー光源に対しては、特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類などが有利に選択される。
【0116】
これらの増感色素は単独に用いても、あるいはそれらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって強色増感を示す物、質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。
【0117】
本発明の熱現感材の露光は、Arレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(780nm、830nm)等のレーザー光源を用いて行うことが一つの特徴であり、特に該レーザー光源の波長が700〜1000nmである赤外半導体レーザーの使用が好ましい。
【0118】
熱現感材には、ハレーション防止層として染料を含有する層を設けることができる。Arレーザー、He−Neレーザー、赤色半導体レーザー用には、400〜750nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。赤外半導体レーザー用には、750nm〜1500nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。染料は、1種でも数種を組み合わせてもよい。該染料は、感光層と同じ側の支持体に近い染料層、又は感光層と反対側の染料層に添加することができる。
【0119】
本発明の熱現感材は如何なる方法で現像されてもよいが、イメージワイズに露光した感光材料を昇温し、温度として80〜250℃で熱現像処理を行うことが一つの特徴であり、好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒が更に好ましい。
【0120】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0121】
実施例1
(下引済みPET支持体の作製)
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に、8w/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引層塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて下引層A−1とし、反対側の面には下記帯電防止加工用の下引層塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0122】
【0123】
【0124】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8w/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に塗設して下引上層A−2とし、下引層B−1の上には、下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになるように、帯電防止機能を持つ下引上層B−2として塗設した。
【0125】
〈下引上層塗布液a−2〉
ゼラチン 0.4g/m2になる質量
化合物(C−1) 0.2g
化合物(C−2) 0.2g
化合物(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0126】
〈下引上層塗布液b−2〉
化合物(C−4) 60g
化合物(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
化合物(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる。
【0127】
【化25】
【0128】
【化26】
【0129】
(支持体の熱処理)
上記下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱した後、徐々に冷却した。
【0130】
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して35℃、pH3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)モル比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウム及びIr(NO)Cl5塩を1×10-6モル/モルAg、塩化ロジウム塩を1×10-6モル/モルAg含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールド・ダブルジェット法で添加した。その後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加し、水酸化ナトリウムでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い、平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体ハロゲン化銀粒子を得た。このハロゲン化乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させて脱塩処理を行い、ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0131】
(ベヘン酸Na溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させベヘン酸Na溶液を得た。
【0132】
(ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤の調製)
上記ベヘン酸Na溶液に前記ハロゲン化銀乳剤Aを15.1g添加し、水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1モル/Lの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、更に20分攪拌した後、限外濾過により水溶性塩類を除去した。
【0133】
以上のようにして作製したベヘン酸銀は、平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。上記分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させ、ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤を得た。
【0134】
(感光性乳剤の調製)
上記プレフォーム乳剤を2分割し、その1部にポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加、混合した後に、0.5mmサイズ酸化ジルコニウムのビーズミルを用いたメディア分散機で、27.5MPaにて30℃、10分間の分散を行い感光性乳剤を得た。
【0135】
(熱現像感光材料の作製)
前記下引き済み支持体上に、以下の各層を両面同時塗布し、熱現感材試料101を作製した。尚、乾燥は60℃、15分間で行った。
【0136】
(バック面側塗布)
バック面層1:支持体のB−2層の上に以下の組成の液を塗布した(添加剤の数値は1m2当たりの付量)。
【0137】
(感光層面側塗布)
感光層1:支持体のA−2層の上に以下の組成の液を塗布銀量が2.4g/m2になる様に塗布した。
【0138】
表面保護層1:以下の組成の液を前記感光層1の上に同時塗布した(添加剤の数値は1m2当たりの付量)。
【0139】
アセトン 5ml
メチルエチルケトン 21ml
セルロースアセテートブチレート 2.3g
メタノール 7ml
フタラジン 250mg
1,1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−2−メチルプロパン(20%メタノール溶液) 10ml
マット剤(単分散度10%,平均粒子サイズ4μm単分散シリカ)5mg
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 35mg
C12F25(CH2CH2O)10C12F25 10mg
p−C8F17−C6H4−SO3Na 10mg
次いで、試料101の感光層1における比較化合物−1、ヒドラジン誘導体(H−29)及びスルホニウム塩(S−1)を表1に記載の様に変更した以外は同様にして試料102〜131を作製した。尚、それぞれの化合物は、比較化合物−1、H−29又はS−1と同質量添加した。
【0140】
【化27】
【0141】
【化28】
【0142】
以上の様にして得られた試料101〜131について、以下に示す熱現像処理及び各性能評価を行った。
【0143】
(露光及び熱現像処理)
各試料を780nmの半導体レーザーを搭載したイメージセッター機であるサイテックス社製Dolev 2dryを用いて300線の網点を用い、5%刻みで露光量を変化させるように網点露光し、120℃で25秒の熱現像処理を行った。その際、露光及び現像は全て23℃・50%RH(相対湿度)に調温・調湿した部屋で行った。
【0144】
《写真性能の評価》
得られた熱現像済み試料の濃度を光学濃度計(コニカ社製:PDA−65)で測定し、濃度D−露光量LogEの特性曲線を作成した。特性曲線より、最大濃度(Dmax)及び感度(Dminより1.5高い濃度を与える露光量の逆数)を求めた。尚、感度は、試料101のそれを100とした時の相対感度で表した。又、特性曲線で濃度0.3と3.0の点を結ぶ直線の傾き(tanθ)を階調γとして測定した。
【0145】
《黒ポツの評価》
未露光の各試料について、上記と同様の熱現像処理を行った後、各熱現像済み試料を100倍のルーペを用いて目視評価を行い、下記の5段階にランク付けした。3〜5ランクを実用上使用可能レベルと判定した。
【0146】
5:黒ポツの発生全くなし
4:黒ポツの発生が僅かにあるが実用上問題なし
3:実用上の下限レベル
2:実用上不可
1:視野中全体に黒ポツが発生し使用不可のレベル
《保存安定性の評価》
25℃で相対湿度55%に保たれた容器中に各試料を入れた密封容器を2部用意し、一方を50℃の条件下で7日間保存した(強制劣化処理試料と言う)。他方は、比較用として25℃の条件下で同じく7日間保存した(比較用試料と言う)。次いで、各試料について同様の露光及び熱現像処理を行い、各処理済み試料の最低濃度(Dmin)を測定し、比較用試料に対する強制劣化処理試料のDmin上昇値(カブリ増加)を算出し、これを保存安定性の尺度とした。
【0147】
以上により得られた評価結果を併せて表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
表1より明らかなように、本発明に係る一般式(1)、(2)で表される化合物を使用することにより、比較試料に対し、感度、階調性は同等以上であり、黒ポツ耐性及び保存安定性のいずれをも大幅に改良された熱現感材を得ることができ、更にはヒドラジン誘導体と併用することにより、その効果は一段と高まることが確認できた。又、スルホニウム塩化合物を併用することにより、保存安定性が更に向上することが確認できた。
【0150】
実施例2
以下の方法に従い、熱現感材である試料201を作製した。
【0151】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
水700mlにフタル化ゼラチン22g及び臭化カリウム30mgを溶解して温度40℃にてpHを5.0に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールド・ダブルジェット法で10分かけて添加した。
【0152】
次いで、K3(IrCl6)3を8×10-6モル/Lと臭化カリウムを1モル/L、それぞれ含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールド・ダブルジェット法で30分かけて添加し、その後pH5.9、pAg8.0に調整した。
【0153】
得られたハロゲン化銀粒子は、平均粒子サイズ0.07μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率86%の立方体臭化銀粒子であった。
【0154】
上記ハロゲン化銀乳剤を温度60℃に昇温して銀1モル当たり8.5×10-5モルのチオ硫酸ナトリウム、1.1×10-5モルの2,3,4,5,6−ペンタフロロフェニルジフェニルスルフィンセレニド、3.3×10-6モルの塩化金酸、2.3×10-3モルのチオシアン酸を添加して120分間熟成した。その後、温度を50℃にして8×10-4モルの増感色素−1を攪拌しながら添加し、更に、3.5×10-2モルの沃化カリウムを添加して30分間攪拌し、30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤の調製を完了した。
【0155】
(有機酸銀微結晶分散物の調製)
ベヘン酸40g、ステアリン酸7.3g、蒸留水500mlを90℃で15分間かけて混合し、次いで激しく攪拌しながら1モル/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液187mlを15分間かけて添加し、1モル/L濃度の硝酸水溶液61mlを添加して50℃に降温した。次に、1モル/L濃度の硝酸銀水溶液124mlを添加して、そのまま30分間攪拌した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、濾液の伝導度が30μS/cmになるまで固形分を水洗した。
【0156】
得られた固形分は、乾燥させないでウェットケーキとして取り扱い、乾燥固形分34.8%相当のウェットケーキに対して、ポリビニルアルコール12g及び水150mlを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ840gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(アイメックス社製:1/4G−サンドグラインダーミル)で5時間分散し、体積加重平均で1.5μmの有機酸銀微結晶分散物を得た。尚、粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製Master SizerXで行った。
【0157】
(素材固体微粒子分散物の調製)
テトラクロロフタル酸、4−メチルフタル酸、還元剤−1、フタラジン、トリブロモメチルスルホニルベンゼン(B−19)及び染料−Bについて、固体微粒子分散物を調製した。テトラクロロフタル酸固体分散物は、テトラクロロフタル酸に対して、ヒドロキシプロピルセルロース0.81gと水94.2mlとを添加してよく攪拌して、スラリーとして10時間放置した。その後、平均直径0.5mmのジルコニアビーズ100mlとスラリーとを一緒にベッセルに入れ、有機酸銀微結晶分散物の調製に用いたものと同型の分散機で5時間分散して、テトラクロロフタル酸の固体微粒子分散物を作製した。該固体微粒子の粒子サイズは、70質量%以上が1.0μm以下であった。
【0158】
その他の素材についても、所望の平均粒径を得るために適宜分散時間を調節して、同様の方法にて各素材の固体微粒子分散物を作製した。
【0159】
(感光層2の塗布液調製)
先に調製した有機酸銀微結晶分散物に対して下記の各組成物を添加して感光層2の塗布液を調製した。
【0160】
有機酸銀微結晶分散物 1モル
ハロゲン化銀乳剤 0.05モル
SBRラテックス* 固形分として430g
テトラクロロフタル酸分散物 固形分として5g
還元剤−1分散物 固形分として98g
フタラジン分散物 固形分として9g
カブリ防止剤(B−19)分散物 固形分として12g
4−メチルフタル酸分散物 固形分として7g
比較化合物−1 7g
ヒドラジン誘導体(H−29) 2.4g
化合物(S−1) 5g
水 仕上がりが740mlになる量
*大日本インキ化学工業社製:商品名ラックスター3307B(ラテックス分散粒径は平均で0.1〜0.15μm,ガラス転移温度17℃)
(表面保護層2の塗布液調製)
下記の各組成物を順次添加して、表面保護層2塗布液を調製した。
【0161】
イナートゼラチン 10g
界面活性剤−A 0.26g
界面活性剤−B 0.09g
シリカ微粒子(平均粒径2.5μm) 0.9g
1,2−ビス(ビニルスルホンアセトアミド)エタン 0.3g
水 仕上がりが110mlになる量
(バック面層2の塗布液調製)
スチレンブタジエン共重合ラテックスに対して、下記の各組成物を順次添加してバック面層2の塗布液を調製した。
【0162】
【0163】
【化29】
【0164】
実施例1で作製した下引き済みPET支持体のA−2層の上に、上記感光層2の塗布液を銀付量が1.6g/m2になるように、更にその上に表面保護層2の塗布液をゼラチンの付き量が1.8g/m2になるよう塗布・乾燥した。又、支持体の裏面であるB−2層の上に、上記バック面層2の塗布液を780nmにおける光学濃度が1.1になるように塗布・乾燥して、熱現感材試料201を得た。
【0165】
次いで、試料201の感光層2における比較化合物−1及びヒドラジン誘導体(H−29)を表2に記載の様に変更した以外は同様にして試料202〜221を作製した。尚、各化合物は、比較化合物−1又はH−29と同質量添加した。
【0166】
試料201〜221について、実施例1と同様の熱現像処理、写真性能評価、黒ポツ評価及び保存安定性評価を行った。尚、写真性能評価における感度は、試料201の感度を100とした相対感度で表示した。
【0167】
以上により得られた結果を表2に示す。
【0168】
【表2】
【0169】
表2より明らかなように、実施例1と同様、本発明の一般式(1)、(2)で表される化合物を用いることにより、比較試料に対し、高感度、高Dmax、硬調な階調を有すると共に、かつ黒ポツ耐性、保存安定性の何れをも満足した熱現像感光材料を得ることができ、更には、ヒドラジン誘導体を併用することにより、その効果は一段と高まることが確認できた。又、スルホニウム塩化合物の併用により保存安定性が更に向上することが確認できた。
【0170】
【発明の効果】
本発明により、高感度、高Dmax及び硬調な階調を有し、更には黒ポツ耐性、保存安定性に優れた熱現像感光材料及び画像形成方法を提供することができた。
Claims (8)
- 一般式(1)におけるR11が水素原子であり、R12がヒドロキシル基又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の写真感光材料。
- 一般式(1)におけるR 11 が水素原子であり、R 12 がヒドロキシル基又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の写真感光材料。
- スルホニウム塩化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の写真感光材料。
- ヒドラジン誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の写真感光材料。
- ヒドラジン誘導体が下記一般式(H)で表される化合物であることを特徴とする請求項6記載の写真感光材料。
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