JP4085551B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料及び画像形成方法に関するものであり、特に加熱により画像を形成する熱現像感光材料及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光性層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる。
【0003】
近年医療や写真製版分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、高解像度および高鮮鋭性を有する黒色画像を形成することができる感光性熱現像材料である熱現像感光材料に関する技術が必要とされている。これら熱現像感光材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0004】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号、同第3,457,075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)A」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に記載されている。このような熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。熱現像感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃〜140℃)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0005】
しかし、これら熱現像感光材料では、画像形成に必要な素材がすべて感光材料中に共存していることから現像によるカブリが生じやすく、現像後も残存する感光性成分のためプリントアウトが生じる等の問題があった。これらの問題を解決するためカブリ防止剤を添加することはほとんど必須となっている。
【0006】
従来のカブリ防止技術として最も有効な方法は、カブリ防止剤として水銀化合物を用いる方法であった。感光材料中にカブリ防止剤として水銀化合物を使用することについては、例えば米国特許第3,589,903号に開示されている。しかし、水銀化合物は環境的に好ましくなく、非水銀系のカブリ防止剤の開発が望まれていた。
【0007】
非水銀系のカブリ防止剤としては、これまで各種のポリハロゲン化合物が開示されている(例えば米国特許第3,874,946号、同第4,756,999号、同第5,340,712号、欧州特許第605,981A1号、同第622,666A1号、同第631,176A1号、特公昭54−165号、特開平7−2781号、同9−160164号、同9−244178号、同9−258367号、同9−265150号、同9−281640号、同9−319022号)。
【0008】
しかし、これら記載の化合物は、カブリ防止の効果が低かったり、画像銀の色調を悪化させるという問題があった。
【0009】
また、写真工学の基礎銀塩編(日本写真学会編 コロナ社)354頁、写真の化学(笹井 明著 写真工業出版社)168〜169頁、或いはザ・セオリー・オブ・フォトグラフィック・プロセス(T.H.ジェームズ編、マックミラン社)369〜399頁等に記録されているようなカブリ防止剤を用いると、現像によるカブリは抑制されるものの、銀色調が悪く、感度の低下を招きやすいという問題があった。さらに、印刷用感光材料にこれらの化合物を適用した場合、硬調化剤との併用においても軟調化が著しく、改善が必要とされていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第一の目的は、濃度や感度の低下を招くことなく、カブリやプリントアウトが抑えられた、銀色調のよい熱現像感光材料およびそれを用いる画像形成方法を提供することにある。第2の目的は、写真製版用、特にスキャナー、イメージセッター用として、硬調性を損なうことなく、カブリやプリントアウトが抑えられた、保存性の良好な熱現像感光材料およびそれを用いる画像形成方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0012】
1.有機銀塩、ハロゲン化銀および還元剤を含有し、かつ前記一般式(I)、一般式(II)または一般式(III)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0013】
2.前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、R11、R12、R13、R21、R22およびR23がそれぞれ、置換又は無置換の、フェニル基またはメチル基であることを特徴とする1記載の熱現像感光材料。
【0014】
3.前記一般式(III)で表される化合物において、Y31が置換または無置換の、フェニル基またはピリジル基であることを特徴とする1記載の熱現像感光材料。
【0017】
4.有機銀塩、ハロゲン化銀、還元剤および硬調化剤を含有し、かつ前記一般式(IV−b)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0021】
5.前記硬調化剤がヒドラジン誘導体であって前記一般式(VIII)で表される化合物であることを特徴とする4記載の熱現像感光材料。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
前記一般式(I)〜( III )および(IV−b)において、A11、A21、A31 、A 101 で表されるカブリ防止剤残基としては、例えば写真工学の基礎銀塩編(日本写真学会編 コロナ社)354頁、写真の化学(笹井 明著 写真工業出版社)168〜169頁、或いはザ・セオリー・オブ・フォトグラフィック・プロセス(T.H.ジェームズ編、マックミラン社)369〜399頁に記載されているような、コンベンショナルなハロゲン化銀写真感光材料においてカブリ防止剤として知られている有機化合物の残基である。
【0027】
以下に、カブリ防止剤残基の更に具体化した一般式(1)〜(15)を示す。尚、式中、*はカブリ防止剤残基が他の基と結合する位置を示す。
【0028】
【化8】
【0029】
一般式(1)〜(6)において、Ra、Rbは各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Yaは−N(Rk)−、−O−または−S−を表し、Rkは水素原子又はアルキル基を表す。
【0030】
一般式(7)〜(12)において、Rcは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rd、Reは各々、水素原子、アルキル基、アリール基又はニトロ基を表し、RdとReが結合して5員または6員の環を形成しても良い。Ybは−N(Rl)−、−CH(Rl)−、−O−または−S−を表し、Rlは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0031】
一般式(13)、(14)において、Rf、Rgは各々、水素原子、アルキル基、アリール基又はニトロ基を表す。
【0032】
一般式(15)において、Ri、Rjは各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、RiとRjは結合して5員または6員の環を形成しても良い。Ycは−N=又は−C(Rm)=を表し、Rmは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0033】
一般式(I)、( II )、(IV−b)において、A11、A21 、A 101 で表されるカブリ防止剤残基としては、一般式(1)〜(15)のような基が挙げられるが、一般式(2)、(7)、(8)及び(10)で表される化合物が特に好ましい。一般式(III)において、A31は窒素原子で結合しているカブリ抑制剤残基を表し、例えば一般式(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(13)等の基が挙げられ、一般式(7)、(8)及び(10)で表される化合物が特に好ましい。
【0034】
一般式(I)、一般式(II)において、R11、R12、R13、R21、R22およびR23はそれぞれ独立に、置換または無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。アルキル基として具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。アリール基として具体的には、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ヘテロアリール基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、フラン残基、チオフェン残基などがあげられる。R11、R12、R13、R21、R22およびR23として好ましい置換基はメチル基、フェニル基である。
【0035】
以下に、一般式(I)および一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(III)において、Y31は置換または無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表す。アリール基として具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ヘテロアリール基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、フラン残基、チオフェン残基などがあげられる。該アリール基、ヘテロアリール基が置換基を有する場合、置換基の総炭素原子数は6以下であり、置換基の例としては、ニトロ基、メチル基、メトキシ基等があげられる。Y31として好ましいのは置換または無置換の、フェニル基、ピリジル基であり、特に好ましいのはo−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、ピリジル基である。
【0040】
以下に、一般式(III)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0044】
一般式(IV−b)において、R 101 、R102およびR103は、一般式(I)のR11、R12およびR13と同義であり、また好ましい範囲も同様である。R 101 、R102およびR103の特に好ましい置換基はメチル基、フェニル基である。
【0047】
以下に、一般式( IV −b)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
なお、一般式( IV −b)で表される化合物の具体例としては、一般式( IV −b)は一般式( II )と同義であるので、化合物 II−1〜II−19が含まれる。
【0055】
本発明の熱現像感光材料には、硬調化剤を用いることができる。本発明の熱現像感光材料に用いることができる硬調化剤としては、下記一般式( VII )で表される化合物およびヒドラジン誘導体が挙げられる。
本発明に用いることができる一般式( VII )で表される化合物について説明する。
【化A】
〔一般式( VII )において、R 111 、R 112 およびR 113 はそれぞれ独立に、水素原子または一価の置換基を表し、Zは電子吸引性基を表す。R 111 とZ、R 112 とR 113 、R 111 とR 112 、およびR 113 とZは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。〕
前記一般式(VII)において、R111、R112およびR113はそれぞれ独立に、水素原子または一価の置換基を表す。一価の置換基の例としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニウム基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、メルカプト基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、(アルキルまたはアリール)スルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、リン酸アミド基などが挙げられる。
【0056】
Zは電子吸引性基であり、本発明中で電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値をとる置換基のことであり、電子吸引性基の例としてはハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、スルホンアミド基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、イミノ基、σpが正の値をとるヘテロ環基またはこれらの電子吸引性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0057】
ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な文献に記載があり、「Lange’s Handbook of Chemistry(J.A.Dean著)」第12版、1979年(Mc Graw−Hill);「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南光堂);Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年等に詳しく述べられている。本発明における電子吸引性基及び電子供与性基は、σp値により規定しているが、上記の文献に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
【0058】
R111とZ、R112とR113、R111とR112、およびR113とZは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0059】
一般式(VII)において、好ましくはR111が電子供与性基であり、R113が水素原子である化合物である。本発明中で電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値を取る置換基のことであり、電子供与基の例としては、ヒドロキシル基(又はその塩)、メルカプト基(又はその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値を取るヘテロ環基またはこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0060】
以下に、一般式(VII)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらの化合物において、互変異性体又は幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0061】
【化20】
【0062】
本発明において用いられるヒドラジン誘導体に制限はないが、特に一般式(VIII)で表される化合物であることが好ましい。一般式(VIII)において、R121、R122及びR123は各々独立に、置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表すが、アリール基として具体的には、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。ヘテロアリール基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、フラン残基、チオフェン残基などがあげられる。また、R121、R122及びR123はそれぞれ任意の連結基を介して結合しても良い。R121、R122及びR123が置換基を有する場合、置換基としては一般式(VII)で述べたR111、R112およびR113と同様の一価の置換基が挙げられる。R121、R122及びR123として好ましくはいずれもが置換もしくは無置換のフェニル基であり、より好ましくはR121、R122及びR123のいずれもが無置換のフェニル基である。
【0063】
R124はヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基を表すが、ヘテロ環オキシ基として具体的には、ピリジルオキシ基、ピリミジルオキシ基、インドリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基、フリルオキシ基、チエニルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等が挙げられる。ヘテロ環チオ基として具体的にはピリジルチオ基、ピリミジルチオ基、インドリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンズイミダゾリルチオ基、フリルチオ基、チエニルチオ基、ピラゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基等が挙げられる。R124として好ましくはピリジルオキシ基、チエニルオキシ基である。
【0064】
B121、B122は、ともに水素原子、又は一方が水素原子で他方はアシル基(例えばアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル、トルエンスルホニル等)又はオキサリル基(例えばエトキサリル等)を表す。好ましくはB121、B122がともに水素原子の場合である。以下に、本発明において用いられるヒドラジン誘導体の具体例H−1〜H−26を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
【化21】
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
【化24】
【0069】
本発明の一般式(I)〜( III )、( IV −b)で表される化合物は、従来公知の方法によって合成することができる。以下に合成例を示す。
【0070】
1.例示化合物I−9の合成
ナトリウムハイドライド0.22gのTHF溶液10mlに5−ニトロベンツイミダゾール1.5gを加えた後、ジ−tert−ブチルジカルボネート2gを加え、室温で30分間撹拌した。反応物を酢酸エチルで抽出したあと、溶媒を留去し、得られた結晶を酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶することにより目的化合物I−9を1.4g得た。収率57%であった。
【0071】
2.例示化合物III−2の合成
ナトリウムハイドライド0.27gのTHF溶液10mlに5−メチルベンゾトリアゾール1.5gを加えた後、2−ニトロベンジルブロマイド2.4gを加え、3時間還流した。反応物を酢酸エチルで抽出したあと、溶媒を留去し、得られた結晶をトルエンで再結晶することにより目的化合物III−2を1.4g得た。収率45%であった。
【0072】
本発明の一般式(VII)で表される化合物およびヒドラジン誘導体は、公知の方法により容易に合成することができ、また薬品メーカーから直接購入することが可能な化合物も存在する。
【0073】
一般式(I)〜( III )、( IV −b)、(VII)で表される化合物およびヒドラジン誘導体の添加層は、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層及び/又は感光層に隣接した層であることが好ましい。また、本発明に係る化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により最適量が異なり、一様ではないが、概ねハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜10-1モル程度、特には10-5モル〜10-2モルの範囲が好ましい。
【0074】
本発明の一般式(I)〜( III )、( IV −b)、(VII)で表される化合物およびヒドラジン誘導体は、適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。また、既に良く知られている乳化分散法によっても組み入れることができる。例えば、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどの高沸点有機溶媒及び酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化して乳化分散物を作製し、所望の構成層に添加することができる。また、固体分散法として知られている方法、例えば、本発明の一般式(I)〜(VII)で表される化合物およびヒドラジン誘導体の粉末を、例えばボールミル、コロイドミル、あるいは超音波分散機等の分散手段を用いて水系微粒子分散物として、任意に添加することもできる。
【0075】
本発明の熱現像感光材料には、上記化合物の他に米国特許第5,545,505号に記載のヒドロキシルアミン化合物、アルカノールアミン化合物やフタル酸アンモニウム化合物、米国特許第5,545,507号に記載のヒドロキサム酸化合物、米国特許第5,558,983号に記載のN−アシル−ヒドラジン化合物、米国特許第5,937,449号に記載のベンズヒドロールやジフェニルフォスフィンやジアルキルピペリジンやアルキル−β−ケトエステルなどの水素原子ドナー化合物を適宜添加することができる。これらの化合物を含有させることにより、ヒドラジン誘導体を用いて形成した画像において、Dmaxをさらに向上することができる。
【0076】
また、本発明に記載のカブリ防止剤と、例えば米国特許第3,874,946号、同第4,756,999号、同第5,340,712号、欧州特許第605,981A1号、同第622,666A1号、同第631,176A1号、特公昭54−165号、特開平7−2781号、同9−160164号、同9−244178号、同9−258367号、同9−265150号、同9−281640号、同9−319022号等に記載のポリハロゲン化合物を併用することによって、さらにカブリ低減効果が増大する。これらの中でも、一般式(IX)で表される化合物を本発明に係る化合物と共に用いることが、特に好ましい。
【化B】
〔一般式( IX )において、Qは、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R 131 およびR 132 は各々独立に、ハロゲン原子を表し、Xはカルボニル基、スルホ基またはスルホニル基を表し、Dは水素原子、ハロゲン原子または電子吸引性基を表し、mは0または1を表す。〕
【0077】
前記一般式(IX)において、Qは、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R131およびR132は各々独立に、ハロゲン原子を表し、Xはカルボニル基、スルホ基またはスルホニル基を表し、Dは水素原子、ハロゲン原子または電子吸引性基を表し、mは0または1を表す。一般式(IX)で表される化合物については特願平11−361048号に記載されている。
【0078】
以下に一般式(IX)で示される化合物の具体例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
【化29】
【0084】
【化30】
【0085】
一般式(IX)で表される化合物は、当業者に周知の通常の方法により合成することができる。
【0086】
これらの一般式(IX)で表される化合物の添加量に特に制限はないが、10-4〜1モル/Agモルが好ましく、特に10-3〜0.3モル/Agモルが好ましい。
【0087】
本発明の熱現像感光材料について説明する。
本発明の熱現像感光材料に用いられる有機銀塩は、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、その中でも特に長鎖(炭素原子数10〜30、好ましくは15〜25)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環が好ましい。配位子が、銀イオンに対する総安定定数として4.0〜10.0の値を有する有機又は無機の銀錯体も本発明においては有用である。好適な銀塩の例は、リサーチ・ディスクロージャー(以降、単にRDとも言う)第17029及び同第29963に記載されており、以下のものを挙げることができる:有機酸の銀塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換芳香族カルボン酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸)とのポリマー反応生成物の銀錯体);チオン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール、1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプチド類の銀塩等である。好ましい銀源は、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀及びそれらの混合物である。
【0088】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて、有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際には、以下に述べる感光性ハロゲン化銀粒子(以降、単にハロゲン化銀粒子という)を混在させてもよい。
【0089】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の感光材料の白濁化の抑制、及び良好な画質を得るため平均粒子サイズは小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に好ましくは0.02μm〜0.08μmである。ここでいう粒子サイズ(粒径)とは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を想定したときの球の直径をいう。また、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1%以上20%以下となる粒子である。
【0090】
単分散度={(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)}×100
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が平均粒径0.1μm以下でかつ単分散粒子であることが好ましく、この範囲にすることで画像の粒状度も向上する。
【0091】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特には80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani、J.Imaging Sci.29、165(1985)に記載の方法により求めることができる。
【0092】
また、本発明における好ましい他のハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとし、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3〜50である。また平板粒子における粒径は、0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これら平板粒子は、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載の方法により、容易に得ることができる。本発明においては、該平板状粒子を用いることにより、さらに画像の鮮鋭度も向上することができる。
【0093】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成は、特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic EmulsionChemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and CoatingPhotographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0094】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、相反則不軌特性改良や階調調整のために、元素周期律表の第6族から第10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有せしめることが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0095】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により不要の塩類を除去(脱塩)することができるが、本発明においては脱塩は行っても行わなくてもいずれでもよい。
【0096】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感が施されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているような硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法等を用いることができる。
【0097】
本発明においては、感光材料の失透を防ぐため、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5g以上2.2g以下であることが好ましい。この範囲に銀量を設定することにより硬調な画像を得ることができる。また、銀総量に対するハロゲン化銀量の比率は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%である。
【0098】
本発明の熱現像感光材料に用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えば、フェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、さらに詳しくは例えば、米国特許第3,615,533号、同第3,679,426号、同第3,672,904号、同第3,751,252号、同第3,782,949号、同第3,801,321号、同第3,794,488号、同第3,893,863号、同第3,887,376号、同第3,770,448号、同第3,819,382号、同第3,773,512号、同第3,839,048号、同第3,887,378号、同第4,009,039号、同第4,021,240号、英国特許第1,486,148号もしくはベルギー特許第786,086号、特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号、特公昭51−35851号等に具体的に例示された還元剤等を挙げることができ、本発明は上記の公知な還元剤の中から適宜選択して使用することが出来る。選択方法としては、実際に還元剤を含む熱現像感光材料を作製し、その写真性能を直接評価することにより、還元剤の適否を確認する方法が最も効率的である。
【0099】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合の好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)又はアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号もしくは英国特許第1,486,148号各明細書及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号公報に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号明細書に記載されたビスナフトール類、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許第3,801,321号明細書に記載されているようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることが出来る。
【0100】
本発明の熱現像感光材料に使用される還元剤の適量は、使用する有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤により一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲が適当である。又この範囲内においては、上述した還元剤を2種以上併用してもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光層塗布液に添加し塗布することが、感光層塗布液の停滞時間による写真性能変動を小さくする上で好ましい。
【0101】
本発明の熱現像感光材料に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色である、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーとしては、親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像処理後のカブリを低減させるためには、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどが挙げられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びポリエステルが、特に好ましく用いられる。
【0102】
感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、感光層の外側に非感光層を塗設することが好ましい。これらの非感光層に用いられるバインダーは、感光層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0103】
本発明においては、熱現像速度を高めるため感光層のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは、1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では、未露光部の濃度(Dmin)が大幅に上昇し、実用上障害を起こす場合がある。
【0104】
本発明においては、感光層側にマット剤を含有せしめることが好ましく、熱現像処理後の画像の傷つき防止のため、感光材料の表面に配するマット剤量は、感光層側の全バインダーに対し質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。
【0105】
また、支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設ける場合には、該非感光層側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが、すべり性や指紋付着防止のためにも好ましく、そのマット剤量は該非感光層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜40%含有せしめることが好ましい。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、特には球形が好ましい。
【0106】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも一層の感光層を有している。支持体上に感光層のみを形成しても良いが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。また、感光層を通過する光の量又は波長分布を制御するため、感光層と同じ側にフィルター染料層及び/又は反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層を形成しても良いし、あるいは感光層に直接染料又は顔料を含ませても良い。
【0107】
これら非感光性層には、前記のバインダーやマット剤の他にポリシロキサン化合物、ワックス類や流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
【0108】
また、本発明の熱現像感光材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤を用いることができる。その中でも特にフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0109】
感光層は、複数層にしても良く、また階調を整えるため高感度層/低感度層又は低感度層/高感度層等の複数の層構成をとっても良い。
【0110】
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、リサーチ・ディスクロージャー第17029に開示されている。
【0111】
本発明の熱現像感光材料には、現像を抑制あるいは促進させ現像強度を制御するため、分光増感効率を向上させるためあるいは現像処理前後における保存安定性を向上させるため、メルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物等の抑制剤を含有させることができる。
【0112】
また、本発明の熱現像感光材料には、例えば界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はリサーチ・ディスクロージャー第17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0113】
上述の各種添加剤は、感光層、非感光層又はその他の形成層のいずれに添加しても良い。
【0114】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、及び現像処理後の画像の変形を防ぐためプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0115】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(以下SPSと略す)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0116】
また、熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前述のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とは、支持体を製膜後、感光層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することを指す。
【0117】
本発明においては、帯電性を改良するために金属酸化物及び/又は導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層などである。
【0118】
本発明の熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0119】
本発明に使用される有用な増感色素の具体例は、例えばRD第17643IV−A項(1978年12月p.23)、同第18431X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0120】
本発明においては、特に各種スキャナー光源の分光特性に適合した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えばA)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特願平3−189532号等に記載のシンプルメロシアニン類、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号等に記載の三核シアニン色素類、特願平6−103272号に記載のメロシアニン類、C)LED光源及び赤色半導体レーザーに対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、D)赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類などが有利に選択される。
【0121】
これらの増感色素は単独に用いても、あるいはそれらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せでは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。
【0122】
本発明の熱現像感光材料の露光は、Arレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(780nm、830nm)などのレーザー光源を用いて行うことが、1つの特徴であり、特に該レーザー光源の波長が700〜1000nmである赤外半導体レーザーが好ましい。
【0123】
本発明の熱現像感光材料には、ハレーション防止層として染料を含有する層を設ける事ができる。Arレーザー、He−Neレーザー、赤色半導体レーザー用には400nm〜750nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。赤外半導体レーザー用には750nm〜1500nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。染料は、1種でも数種を組み合わせても良い。該染料は、感光層と同じ側の支持体に近い染料層あるいは、感光層と反対側の染料層に添加することができる。
【0124】
本発明の熱現像感光材料は、いかなる方法で現像されても良いが、本発明においては、イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温し、温度として80〜250℃で熱現像処理を行うことが1つの特徴であり、好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒が更に好ましい。
【0125】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0126】
実施例1
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5に調整して、平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。その後に増感色素SD−1をハロゲン化銀1モルに対し5×10-5モルづつ添加した。その後60℃に昇温してチオ硫酸ナトリウムを2mg添加し100分間熟成した後に38℃に冷却して化学増感を終了し、ハロゲン化銀粒子を得た。
【0127】
【化31】
【0128】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分攪拌した状態で1mol/Lの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1/3mol/Lのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモコハク酸イミド0.01gを添加した。その後、上記であらかじめ調製したハロゲン化銀粒子を、ベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。さらに1mol/Lの硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後、東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し、1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0129】
(感光性層組成)
感光性層塗布液を下記のように調製した。溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0130】
有機脂肪酸銀乳剤 1.75g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 1.5×10-4mol/m2
臭化カルシウム 1.8×10-4mol/m2
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸 1.5×10-3mol/m2
増感色素−1 4.2×10-6mol/m2
2−メルカプトベンズイミダゾール 3.2×10-3mol/m2
カブリ抑制剤:本発明の一般式(I)〜(III)、( IV −b)の化合物、
比較化合物(表1に記載) 6.0×10-4mol/m2
【0131】
セルロースアセテート 4g/m2
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−
トリメチルヘキサン 4.8×10-3mol/m2
フタラジン 3.2×10-3mol/m2
4−メチルフタル酸 1.6×10-3mol/m2
テトラクロロフタル酸 7.9×10-4mol/m2
テトラクロロフタル酸無水物 9.1×10-4mol/m2
二酸化珪素(粒径2μm) 0.22g/m2
(バッキング層組成)
バッキング層塗布液を下記の如く調製した。
【0132】
セルロースアセテート 4g/m2
ハレーション防止染料
染料D−2 0.06g/m2
染料D−3 0.018g/m2
ポリメチルメタクリレート(粒径10μm) 0.02g/m2
【0133】
【化32】
【0134】
上記のような組成の塗布液を、二軸延伸された厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、乾燥して熱現像感光材料である試料を得た。
【0135】
(写真性能の評価)
上記で作製した熱現像感光材料である試料を半切サイズに加工し、810nmのレーザーダイオードを垂直面より13°傾いたビームで露光した。その後ヒートドラムを用いて120℃×15秒熱現像処理した。得られた熱現像済み試料の濃度を光学濃度計(コニカ社製:PDA−65)で測定し、濃度D−露光量LogEの特性曲線を作製した。特性曲線より、最大濃度(Dmax)を求めた。また感度は、カブリ(Dmin)より1.5高い濃度を与える露光量の比の逆数として求め、試料1−1の感度を100としたときの相対感度で示す。
【0136】
(画像保存性の評価)
写真性能の評価と同様の処理をした2枚の試料を1枚は25℃、55%で7日間遮光保存し、もう1枚は25℃、55%で7日間自然光に晒した後、両者のカブリ部分の濃度を測定し、下式で求めたカブリの増加を画像保存性として示す。
【0137】
(画像保存性)=(自然光に晒したときのカブリ)−(遮光保存したときのカブリ)
(銀色調の評価)
得られた処理済み感材の銀画像の濃度1.5の部分の色調を目視で観察し評価した。○が冷黒調であり、×が温黒調である。
【0138】
以上の経過および結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【化33】
【0141】
表1から明らかなように、本発明の試料(本発明の請求項1に係る発明の構成)は十分な感度、濃度があり、かつカブリやプリントアウトが低く、感光材料の銀色調も良好であることがわかる。
【0142】
実施例2
(下引済みPET支持体の作製)
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて下引層A−1とし、反対側の面には下記帯電防止加工用の下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0143】
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)、t−ブチルアクリレート(20質量%)、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート
(25質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0144】
《下引塗布液b−1》
水で1リットルに仕上げる。
【0145】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に塗設して下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0146】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる量
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0147】
《下引上層塗布液b−2》
(C−4) 60g
(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(重さ平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる。
【0148】
【化34】
【0149】
【化35】
【0150】
(支持体の熱処理)
上記下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0151】
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)のモル比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウム及び〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1モル当たり1×10-6モル、塩化ロジウム塩を銀1モル当たり1×10-6モルとを含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加し、NaOHでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い、平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体ハロゲン化銀粒子を得た。このハロゲン化乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させて脱塩処理を行いハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0152】
(ベヘン酸Na溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸Na溶液を得た。
【0153】
(ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤の調製)
上記ベヘン酸Na溶液に前記ハロゲン化銀乳剤Aを1.5g添加し、水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に1モル/Lの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。以上のようにして作製したベヘン酸銀は、平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。上記分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させ、ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤を調製した。
【0154】
(感光性乳剤の調製)
できあがったプレフォーム乳剤にポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)429gとトルエン84gを徐々に添加、混合した後に、0.5mmサイズZrO2のビーズミルを用いたメディア分散機で27.5MPaで30℃、10分間の分散を行い、感光性乳剤を調製した。
【0155】
前記下引き済み支持体上に以下の各層を両面同時塗布し、熱現像感光材料である試料を作製した。尚、乾燥は60℃、15分間で行った。
【0156】
(バック面側塗布)
バック面層1:支持体のB−2層の上に以下の組成の液を塗布した。
【0157】
(感光層面側塗布)
感光層1:支持体のA−2層の上に以下の組成の液を塗布銀量が2.4g/m2になる様に塗布した。
【0158】
感光性乳剤 240g
増感色素SD−1(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
ピリジニウムプロミドペルブロミド(6%メタノール溶液) 3ml
臭化カルシウム(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
カブリ防止剤:本発明の一般式(IX)の化合物IX−54
(10%メタノール溶液) 1.2ml
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸(12%メタノール溶液)
9.2ml
2−メルカプトベンズイミダゾール(1%メタノール溶液) 11ml
カブリ抑制剤:本発明の一般式(I)〜( III )、( IV −b)の
化合物、比較化合物(表2記載) 0.1g
硬調化剤(表2記載) 表2に記載の量
フタラジン 0.6g
4−メチルフタル酸 0.25g
テトラクロロフタル酸 0.2g
平均粒径3μmの炭酸カルシウム 0.1g
1,1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−
メチルプロパン(20%メタノール溶液) 20.5ml
イソシアネート化合物(モーベイ社製、Desmodur N3300)
0.5g
表面保護層1:以下の組成の液を前記感光層1の上に同時塗布した。
【0159】
【0160】
【化36】
【0161】
以上の様にして得られた試料について、以下に示す熱現像処理及び各性能評価を行った。
【0162】
(露光及び熱現像処理)
各試料を780nmの半導体レーザーを搭載したイメージセッター機であるサイテックス社製Dolev 2dryを用いて300線の網点を用い、5%刻みで露光量を変化させるように網点露光し、120℃で25秒の熱現像処理を行った。その際、露光及び現像はすべて23℃、50%RHに調温調湿した部屋で行った。
【0163】
(写真性能の評価)
得られた熱現像済み試料の濃度を光学濃度計(コニカ社製:PDA−65)で測定し、濃度D−露光量LogEの特性曲線を作製した。特性曲線より、最大濃度(Dmax)及び感度を求めた。なお、感度はカブリ(Dmin)より1.5高い濃度を与える露光量の逆数として求め、試料2−1の感度を100としたときの相対感度で表した。また、特性曲線で濃度0.3と3.0の点を結ぶ直線の傾き(tanθ)を階調γとして測定した。
【0164】
(画像保存性の評価)
写真性能の評価と同様の処理をした2枚の試料を1枚は25℃、55%で7日間遮光保存し、もう1枚は25℃、55%で7日間自然光に晒した後両者のカブリ部分の濃度を測定し、下式で求めたカブリの増加を画像保存性として示す。
【0165】
(画像保存性)=(自然光に晒したときのカブリ)−(遮光保存したときのカブリ)
以上の経過および結果を表2に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
表2から明らかなように、本発明の試料(本発明の請求項1に係る発明の構成)は、十分な感度、濃度、硬調性があり、かつ、カブリやプリントアウトも低く抑えられていることが分かる。尚、銀色調についても実施例1と同様、本発明の試料では良好な色調を得ることができた。
【0168】
実施例3
(有機酸銀微結晶分散物の調製)
ベヘン酸40g、ステアリン酸7.3g、蒸留水500mlを90℃で15分間かけて混合し、次いで激しく攪拌しながら1モル/LのNaOH水溶液187mlを15分間かけて添加し、1モル/Lの硝酸水溶液61mlを添加して50℃に降温した。次に、1モル/L硝酸銀水溶液124mlを添加して、そのまま30分間攪拌した。その後吸引濾過で固形分を濾別し、濾液の伝導度が30μS/cmになるまで固形分を水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウェットケーキとして取り扱い、乾燥固形分34.8%相当のウェットケーキに対して、ポリビニルアルコール12g及び水150mlを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ840gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4G−サンドグラインダーミル:アイメックス社製)で5時間分散し、粒子サイズが体積加重平均で1.5μmの有機酸銀微結晶分散物を得た。なお、粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製Master SizerXで行った。
【0169】
(素材固体微粒子分散物の調製)
テトラクロロフタル酸、4−メチルフタル酸、現像剤1、フタラジン、トリブロモメチルスルフォニルベンゼン及び染料Bについて、固体微粒子分散物を調製した。テトラクロロフタル酸固体分散物は、テトラクロロフタル酸に対して、ヒドロキシプロピルセルロース0.81gと水94.2mlとを添加して良く攪拌して、スラリーとして10時間放置した。その後、平均直径0.5mmのジルコニアビーズ100mlとスラリーとを一緒にベッセルに入れ、有機酸銀微結晶分散物の調製に用いたものと同型の分散機で5時間分散して、テトラクロロフタル酸の固体微粒子分散物を作製した。該固体微粒子の粒子サイズは、70質量%以上が1.0μm以下であった。その他の素材についても、所望の平均粒径を得るために適宜分散時間を調節して、同様の方法にて各素材の固体微粒子分散物を作製した。
【0170】
(感光層2の塗布液調製)
先に調製した有機酸銀微結晶分散物に対して下記の各組成物を添加して感光層2の塗布液を調製した。
【0171】
有機酸銀微結晶分散物 1モル
ハロゲン化銀乳剤A(実施例2で調製したハロゲン化銀乳剤Aと同じ)
0.05モル
SBRラテックス* 固形分として430g
テトラクロロフタル酸分散物 固形分として5g
現像剤1分散物 固形分として98g
フタラジン分散物 固形分として9g
トリブロモメチルスルフォニルベンゼン分散物 固形分として12g
4−メチルフタル酸分散物 固形分として7g
カブリ抑制剤:本発明の一般式(I)〜( III )、( IV −b)の
化合物、比較化合物(表3記載) 3g
硬調化剤(表3記載) 表3に記載の量
水 仕上がりが740mlになる量
*SBRラテックス:大日本インキ化学工業社製 商品名ラックスター3307B。ラテックス分散粒径は平均で0.1〜0.15μm、ガラス転移温度17℃である。
【0172】
(表面保護層2の塗布液調製)
下記の各組成物を順次添加して、表面保護層2塗布液を調製した。
【0173】
イナートゼラチン 10g
界面活性剤A 0.26g
界面活性剤B 0.09g
シリカ微粒子(平均粒径2.5μm) 0.9g
1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン 0.3g
水 仕上がりが110mlになる量
(バック面層2の塗布液調製)
スチレンブタジエン共重合ラテックスに対して、下記の各組成物を順次添加してバック面層2の塗布液を調製した。
【0174】
【0175】
【化37】
【0176】
実施例2で作製した下引き済みPET支持体のA−2層の上に、上記の感光層2の塗布液を銀付き量が1.6g/m2になるように、さらにその上に表面保護層2の塗布液をゼラチンの付き量が1.8g/m2になるよう塗布を行い、乾燥した。また支持体の裏面であるB−2層の上に、上記バック面層2の塗布液を780nmにおける光学濃度が1.1になるように塗布、乾燥して、試料を作製した。
【0177】
上記作製した試料について、実施例2と同様の熱現像処理、写真性能評価、画像安定性評価を行った。なお、写真性能評価における感度は、試料3−1の感度を100とした相対感度で表示した。
【0178】
以上の経過および結果を表3に示す。
【0179】
【表3】
【0180】
表3から明らかなように、実施例2と同様、本発明の化合物を用いること(本発明の請求項1に係る発明の構成)により、良好な写真性能の熱現像感光材料を得ることができた。
【0181】
【発明の効果】
本発明により、濃度や感度の低下を招くことなく、カブリやプリントアウトを抑えられた、銀色調のよい熱現像感光材料および画像形成方法を提供できる。また、硬調化剤併用の系においても、硬調性が低下することなくカブリやプリントアウトが抑えられた、保存性の良好な写真特性の熱現像感光材料熱現像感光材料および画像形成方法を提供がでる。
Claims (5)
- 有機銀塩、ハロゲン化銀および還元剤を含有し、かつ下記一般式(I)、一般式(II)または一般式(III)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記一般式(I)または一般式(II)で表される化合物において、R11、R12、R13、R21、R22およびR23がそれぞれ、置換又は無置換の、フェニル基またはメチル基であることを特徴とする請求項1記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(III)で表される化合物において、Y31が置換または無置換の、フェニル基またはピリジル基であることを特徴とする請求項1記載の熱現像感光材料。
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