JP4101836B2 - 磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体、その製造方法、およびこの磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置に関するものである。
垂直磁気記録方式は、従来、媒体の面内方向に向けられていた磁気記録層の磁化容易軸を媒体の垂直方向に向けることにより、記録ビット間の境界である磁化遷移領域付近での反磁界が小さくなるため、記録密度が高くなるほど静磁気的に安定となって熱揺らぎ耐性が向上することから、面記録密度の向上に適した方式である。
また、基板と垂直磁気記録膜との間に軟磁性材料からなる裏打ち層を設けた場合には、いわゆる垂直2層媒体として機能し、高い記録能力を得ることができる。このとき、軟磁性裏打ち層は磁気ヘッドからの記録磁界を還流させる役割を果たしており、記録再生効率を向上させることができる。
一般的に前記の裏打ち層を形成する軟磁性材料として、CoZrNb、CoTaZr、FeCoBなどのアモルファス材料が提案されている。例えばCoZr合金(特許文献1参照)やFeAlSi、FeTaN(特許文献2参照)などを挙げることができる。前記裏打ち層上に設けられる下地膜としては、各種材料が提案されている。例えば、Ti合金(特許文献3参照)やNiFeCr(特許文献4参照)など、hcp構造やfcc構造、またTaなど非晶質構造などを挙げることができる。
前記裏打ち層の材料としてCoZrNb、CoTaZrを用いた場合、CoFe合金いずれの場合においても高温高湿化でのCoまたはFeの腐食が発生するという問題が生じる。特に飽和磁束密度(Bs)を上げるためにFeを添加したCoFe合金においては、その問題がより顕著に生じることがわかっている。
また、下地膜に磁性を有さない材料を用いると、ヘッドと裏打ち層表面の距離が下地膜の厚さにより遠くなり、十分な書き込みを行うためには、裏打ち層を厚くする必要が生じる。下地膜に軟磁気特性を有する材料を用いることで、裏打ち層の役割と、上に設けられた中間層の結晶配向の両方を制御することが可能となる。しかしながら、下地膜にNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金の材料を用いた際には、裏打ち層材料によって、大きく結晶配向が変化することがわかってきた。
特開平6−282834号公報 特開平11−149628号公報 特許第2669529号公報 特開2003−123239号公報
従来提案されてきた媒体構成では、記録再生特性と生産性に優れた磁気記録媒体を得るには不十分であり、この問題を解決しかつ安易に製造が可能な磁気記録媒体が要望されていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、裏打ち層を形成する軟磁性膜の材料と下地膜の材料を最適化することで、高密度の情報の記録再生が可能な磁気記録媒体、その製造方法、および磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間膜と垂直磁気記録膜を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層を構成する軟磁性膜が非晶質構造で飽和磁束密度Bsが1.1(T)以上であるCoAl合金からなることを特徴とする。
(2)本発明の磁気記録媒体は、前記非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間膜と垂直磁気記録膜を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層を構成する軟磁性膜が非晶質構造で飽和磁束密度Bsが1.4(T)以上であるCoFeAl合金からなることを特徴とする。
(3)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜のAl含有量が0.2原子%以上7原子%以下であることを特徴とする。
(4)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜のAl含有量が0.3原子%以上3原子%以下であることを特徴とする。
(5)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜のFeの含有量が50原子%以下であること特徴とする。
(6)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜がさらにTa、Nb、Zrのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
(7)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜がさらにNi、Crのいずれかを含むことを特徴とする。
(8)本発明の磁気記録媒体は、前記裏打ち層は2層の軟磁性膜とその間に形成されたRu膜から構成され、2層の軟磁性膜がAFC(Anti−Ferro−Coupling)結合していることを特徴とする。
(9)本発明の磁気記録媒体は、前記裏打ち層の飽和磁束密度と膜厚の積Ms・t(T・nm)が3以上8以下であることを特徴とする。
(10)本発明の磁気記録媒体は、前記下地膜がNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金のいずれかの材料からなり、その上に設けられたRu合金のΔθ50が6°以下であることを特徴とする。
(11)本発明の磁気記録媒体は、前記中間膜がRuまたはRu合金であることを特徴とする。
(12)本発明の磁気記録媒体は、前記裏打ち層の膜厚が20nm以上80nm以下であることを特徴とする。
(13)本発明の磁気記録媒体は、前記中間膜の厚さが16nm以下であることを特徴とする。
(14)本発明の磁気記録媒体は、前記軟磁性膜がCoFeAlZrNb、CoFeAlHfNb、CoFeAlTaNb、CoFeAlZrNbCr、CoFeAlZrNbNiの何れかであることを特徴とする。
(15)本発明の磁気記録再生装置は、磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記磁気ヘッドが単磁極ヘッドであり、前記磁気記録媒体が、請求項1乃至14の何れか1項に記載の磁気記録媒体であることを特徴とする。
以上述べたように本発明によれば、非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間膜と垂直磁気記録膜を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層を構成する軟磁性膜の飽和磁束密度Bsが1.1(T)以上であるCoAl合金からなり、かつ前記下地膜がNi、Ni合金、NiFe合金、NiCo合金のいずれかからなるので、生産性に優れ、かつ高密度の情報の記録再生が可能な磁気記録媒体、その製造方法、および磁気記録再生装置を提供できる。
図1は、本発明の磁気記録媒体の第1の実施形態の一例を示すものである。
ここに示されている磁気記録媒体Aは、非磁性基板1上に、裏打ち層aとして第1軟磁性膜2と、Ruの非磁性中間膜3と、第2軟磁性膜4、これらの上にさらに下地膜5と、中間層6と、垂直磁気記録膜7と、保護膜8と潤滑膜9とが順次形成された構成となっている。
前記非磁性基板1としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラス、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。
本実施の形態においてガラス基板としては、アモルファスガラス、結晶化ガラスがあり、アモルファスガラスとしては汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスを使用できる。また、結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスを用いることができる。
非磁性基板1は、平均表面粗さRaが0.8nm以下、好ましくは0.5nm以下であることが中間膜および垂直磁気記録膜の結晶配向を高めることで記録再生特性を向上することができるとともに、ヘッドを低浮上させることが好ましい高記録密度記録に適している点から望ましい。また、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下)であるのが磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。
裏打ち層aは、2層の軟磁性膜と2層の軟磁性膜の間に形成されたRuからなる構成とされる。Ruの上下の軟磁性膜はAFC結合しており、この構成にすることで外部からの磁界に対しての耐性、および垂直磁気記録特有の問題であるWATE現象に対しての耐性を高めることができる。
前記軟磁性膜2、4はCoAl合金、好ましくはCoFeAl合金からなり、飽和磁束密度Bsが1.1(T)以上、好ましくは1.4(T)以上である。これらの材料にすることで高い飽和磁束密度と高い耐腐食性を有するとともに、下地膜5にNi、Ni合金、NiFe合金またはCoNi合金を用いた際に優れた記録再生特性を得ることができる。
軟磁性膜2、4にAlを添加することで、記録再生特性と耐腐食性の両方を著しく向上することができる。Alの添加量は0.2原子%以上7原子%以下(好ましくは0.3原子%以上5原子%以下)であることが好ましい。Alの添加量が0.2原子%未満の場合はCoまたはFeの腐食を十分に抑えることができないので好ましくない。Alの添加量が7原子%を超えると記録再生特性が悪化するので好ましくない。軟磁性膜2、4において、さらにCoAlまたはCoFeAlに、Ta、Nb、Zrのいずれか1種以上を加えることが好ましい。これら元素の添加により軟磁性膜2、4のアモルファス化が促進されるとともに耐腐食性の向上することができる。また、軟磁性膜4に対するこれらの元素の添加により下地膜5および中間層6の結晶配向性が向上するために好ましい。
Ta、Zr、Nbの添加量は5原子%以上12原子%以下であることが好ましい。これらの元素の添加量が5原子%未満であると、軟磁性膜2、4が結晶構造をとることにより、下地膜5の結晶粒径が大きくなることによりノイズの増大や対腐食性の低下が生じるので好ましくない。また、添加するAl、Ta、Nbの総量は15原子%(好ましくは12原子%以下)であることが飽和磁束密度の点から好ましい。
Ni、Crは膜の腐食性を改善するために添加するもので、添加量は5原子%未満であることが好ましい。添加量が増加するにつれて耐腐食性は向上するが、飽和磁束密度が低下するために好ましくない。
軟磁性膜2、4のFeの含有量は50原子%以下(好ましくは10原子%以上40原子%以下)であることが好ましい。Feの含有量が50原子%を超えると対腐食性が悪化するために好ましくない。
裏打ち層aの厚さは20nm以上80nm以下であることが好ましい。裏打ち層aの厚さが20nm未満であると、磁気ヘッドからの磁束を十分に吸収することができず、書き込みが不十分になり記録再生特性が悪化するために好ましくない。裏打ち層aの厚さが80nmを超えると、生産性が著しく低下するために好ましくない。
軟磁性膜2、4の材料として、CoFeAlZrNb、CoFeAlHfNb、CoFeAlTaNb、CoFeAlZrNbCr、CoFeAlZrNbNiを用いた際に、その上に設けた所定材料を用いた下地膜5の配向性を高めることができるとともに、中間層6の厚さを低減することができ、その結果、軟磁性膜2、4の厚さを薄くすることが可能となる。よって、良好な記録再生特性と生産性の両立をすることが可能となる。
軟磁性膜2、4は、アモルファス構造であることが特に好ましい。アモルファス構造とすることで、表面粗さRaが大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらに高記録密度化が可能となるためである。また結晶構造を有することで、腐食の原因のひとつになっている結晶と結晶の粒界部分を形成するために好ましくない。
裏打ち層aを構成する2層の軟磁性膜2、4のAFC結合の大きさを示す指標である、Hbiasは50(Oe)以上であることが好ましい。
Hbiasについて図2を用いて説明する。裏打ち層aの基板面内成分(裏打ち層aを形成する軟磁性膜2、4の磁化容易軸方向)のMHループを図2に示す。飽和磁束密度をMsとして、飽和磁束密度Msの半分であるMs/2である磁界をHbiasと定義する。軟磁性膜2、4として上記材料を用いて、2層の軟磁性膜2、4の間に設けたRuの非磁性中間膜3の厚さを所定の厚さ(0.6〜0.8nm)とすることで裏打ち層aを得ることできる。これによって、外磁場耐性およびWATE耐性を高めることが可能となる。
軟磁性膜2、4の保磁力Hcは10(Oe)以下(好ましくは10(Oe)以下)とするのが好ましい。なお、1(Oe)は、約79A/mである。
前記構成の軟磁性膜2、4の形成方法としては、一例としてスパッタリング法を用いることができる。裏打ち層aを形成する際に、基板の半径方向に磁界を与えた状態で成膜することが好ましい。下地膜5は、その上に設けられる垂直磁気記録膜7の配向や結晶サイズを制御するためのものである。下地膜5はNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金であることが好ましい。
前記下地膜5のNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金には結晶サイズ低減および中間層6との結晶格子サイズの整合性を高める目的で元素を添加することができる。結晶サイズ低減の目的で特にB、Mnなどを挙げることができ、添加量は6(原子%)以下であることが好ましい。また中間層6との結晶格子サイズの整合性を高める目的で、Ru、Pt、W、Mo、Ta、Nb、Tiなどを添加してもよい。
下地膜5であるNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金の飽和磁束密度Bsは0.1(T)以上、好ましくは0.3(T)以上であることが好ましい。0.1(T)未満であると、書き込みの際に裏打ち層の一部としての働きが弱くなり、記録再生特性の悪化をもたらすため好ましくない。
下地膜5の膜厚は1(nm)以上10(nm)以下であることが好ましい。下地膜5が1(nm)未満であると、下地膜としての効果が不十分となり、粒径の微細化の効果を得ることができず、また配向も悪化するので好ましくない。また、下地膜5の厚さが10(nm)を超えると、結晶サイズが大きくなるために好ましくない。
非磁性中間膜3はRuまたはRu合金であることが好ましい。
非磁性中間膜3の厚さは16nm以下(好ましくは12nm以下)であることが好ましい。軟磁性膜2、4にCoAl合金またはCoFeAl合金、下地膜5に所定の材料を用いることで可能となる。非磁性中間膜3を薄くすることで、磁気ヘッドと裏打ち層aとの距離が小さくなり、磁気ヘッドからの磁束を急峻にすることができる。その結果、軟磁性膜2、4の厚さをさらに薄くすることができ、生産性を向上することが可能となる。
垂直磁気記録膜7は磁化容易軸が基板面に対し垂直方向に有している。構成元素としては、少なくともCoとPtを含んでおり、さらにSNR特性改善などの目的で酸化物やCr、B、Cu、Ta、Zrを添加することもできる。
垂直磁気記録膜7を構成する酸化物としては、SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiOを挙げることができる。酸化物の体積率は15〜40体積%であることが好ましい。酸化物の体積率が15体積%未満であると、SNR特性が不十分となるため好ましくない。酸化物の体積率が40体積%を超えると、高記録密度に対応するだけの保磁力を得ることができないため好ましくない。
垂直磁気記録膜7のニュークリエーション磁界(−Hn)は2.0(kOe)以上であることが好ましい。−Hnが2.0(kOe)未満であると、熱揺らぎが発生するので好ましくない。
垂直磁気記録膜7の厚さは6〜20nmであることが好ましい。垂直磁気記録膜7を例えば酸化物グラニュラー層とした場合、酸化物グラニュラー層の厚さがこの範囲であると、十分な出力を確保することができ、OW特性の悪化が生じないために好ましい。
垂直磁気記録膜7は、単層構造とすることもできるし、組成の異なる材料からなる2層以上の構造とすることもできる。特に酸化物を含む層と酸化物を含まない層を順次積層した構造であることが好ましい。
保護膜8は垂直磁気記録膜の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用でき、例えばC、SiO、ZrOを含むものが使用可能である。保護膜の厚さは、1nm以上5nm以下とするのが磁気ヘッドと媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から望ましい。
潤滑膜9には従来公知の材料、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いるのが好ましい。
本形態の磁気記録媒体Aにあっては、非磁性基板1上に、少なくとも裏打ち層aと下地膜5と中間層6と垂直磁気記録膜7を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層aを構成する軟磁性膜2、4の飽和磁束密度Bsが1.1(T)以上であるCoAl合金からなり、かつ前記下地膜がNi、Ni合金、NiFe合金、CoNi合金のいずれかからなるので、生産性に優れた高密度の情報の記録再生が可能な磁気記録媒体となる。
図3は、上記磁気記録媒体Aを用いた磁気記録再生装置の例を示すものである。ここに示す磁気記録再生装置12は、磁気記録媒体10と、磁気記録媒体10を回転駆動させる媒体駆動部13と、磁気記録媒体10に情報を記録再生する磁気ヘッド14と、ヘッド駆動部15と、記録再生信号処理系16とを備えている。記録再生信号処理系16は、入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド14に送ったり、磁気ヘッド14からの再生信号を処理してデータを出力することができるようになっている。
以下、実施例を示して本発明の作用効果を明確にする。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス基板(MYG社製アモルファス基板MEL3、直径2.5インチ)をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3010)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した。
この基板上に軟磁性膜1として70Co−20Fe−2Al−4Zr−4Nb(Co含有量70原子%、Fe含有量20原子%、Al含有量2原子%、Zr含有量4原子%、Nb含有量4原子%)を30nm、非磁性中間膜3としてRuを0.6nm、第1軟磁性膜2、第2軟磁性膜4として70Co−20Fe−2Al−4Zr−4Nbを30nm成膜して裏打ち層aを形成した。第1、第2軟磁性膜2、4の結晶構造がアモルファス構造であることをXRDで確認した。
次いで、下地膜5としてNiを5nm、中間層6としてRuを12nm、垂直磁気記録膜7として60Co−10Cr−20Pt−10SiOを10nm、65Co−18Cr―14Pt−3Bを6nm成膜した。
次いで、CVD法により4nmの保護膜8を形成した。
次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜9を形成し、垂直磁気記録媒体Aを得た。
(比較例1、2)
第1軟磁性膜、第2軟磁性膜の材料を91Co−5Zr−4Nbから、あるいは、71Co−20Fe−5Zr−4Nbから構成したこと以外は実施例1に準じて比較例1、2の磁気記録媒体を作製した。
これら実施例および比較例の磁気記録媒体について、静磁気特性および記録再生特性を評価した。静磁気特性の評価にはネオアーク社製Kerr効果測定装置を用い、記録再生特性の評価は、米国GUZIK社製リードライトアナライザRWA1632、およびスピンスタンドS1701MPを用いて測定した。
記録再生特性の評価には、書き込みをシングルポール磁極、再生部にTMR素子を用いた薄膜磁気ヘッドを用いて、記録周波数条件を線記録密度1000kFCIとして測定した。上書き特性(OW)特性の評価には、500kFCIの信号を書いた上に67kFCIの信号を書いたあとの、最初の信号の残りを測定することで評価した。腐食テストは高温高湿下(80℃80%)に240時間放置した後のコロージョンスポットの数を光学顕微鏡を用いて観察した。以上の評価結果を表1に示す。
Figure 0004101836
表1の実施例1は、比較例1、2に比較して記録再生特性が優れていることが確認できた。Ruの非磁性中間膜が12nmと薄い条件でも優れた記録再生特性を得ることできることがわかった。またCoZrNb、CoTaZrなどBsが低い材料を用いた際は、上書き(OW)特性が低下しており、膜厚が足りないことを示唆していることがわかった。また、実施例1の試料は腐食試験において、コロージョンスポットが見られないことが確認できた。このことより、Alを添加したことにより、記録再生の改善および腐食耐性が著しく改善したことがわかった。
(実施例2〜10)
軟磁性膜の組成を変えたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。評価結果を表2に示す。
Figure 0004101836
表2に挙げたいずれの実施例の組成の試料も優れた特性を得ることができた。
表2に示す実施例2の試料はAlを0.3原子%含む資料であるがコロージョンスポットが若干発生している。これに対してAlを2原子%、3原子%、7原子%含む各試料はいずれもコロージョンスポットが発生していない上に、表1の比較例2の如くAlを含まない試料は大幅にコロージョンスポットの発生が認められるので、CoFeZrNb系にAlを添加することで耐食性を高められることが明らかである。ただし、実施例4の試料の如くAlを7原子%添加した試料ではAlを3原子%添加した実施例3の試料と比較して記録再生特性のSNRが低下し始めているので、Al添加量の上限を7原子%とすることが望ましいと思われる。
また、表1の実施例1と比較例1、2との比較からCoFeZrNb系合金にFeを含有させることで飽和磁束密度が向上するが、表2の実施例6が示す如く50原子%のFeを含む試料はコロージョンスポットの発生が出現している。このことから、この系において飽和磁束密度を向上させるためにはFeを含有させることが必要であるが、Feを多く含めるとAlを添加していてもコロージョンスポットの発生が見られるようになることから、Alを添加したCoFeZrNb系合金においてもFeの含有量は50原子%以下が望ましいと考えられる。
(実施例11、12、13)
軟磁性膜の厚さを変えたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。評価結果を表3に示す。
Figure 0004101836
表3に示す結果から、軟磁性膜の厚さが20nm以上である実施例の試料はいずれも優れた特性を得ることができた。なお、軟磁性膜の厚さが15nmの実施例13の試料は他の試料より保磁力が若干低下し、SNRも若干低下する傾向となった。
(実施例14−20)
下地膜の材料と厚さを変えたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。評価結果を表4に示す。
Figure 0004101836
表4に示す結果から、下地膜にNi、Ni合金、NiFe合金、NiCo合金を用いた実施例は特に優れた特性を得ることができた。即ち、保磁力が高く、SNRにも優れ、耐食性にも優れていることが判明した。
(実施例21−32)
中間層の材料および厚さを変えた以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。評価結果を表5に示す。
Figure 0004101836
表5に示す結果から、中間層の材料として、CoFeAlZrNb、CoFeHfTaAlを用いた試料は優れた特性を得ることができた。また、中間層の厚さ8〜25nmの範囲のいずれの試料も優れた特性を得ることができた。即ち、保磁力が高く、SNRにも優れ、耐食性にも優れていることが判明した。
図1は本発明に係る磁気記録媒体の第1の実施の形態を示す断面図。 図2は本発明に係る磁気記録媒体に適用される裏打ち層の基板面内成分のMHループを示す図。 図3は本発明に係る磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置の一例を示す構成図。
符号の説明
A 磁気記録媒体
a 裏打ち層
1 非磁性基板
2 第1軟磁性膜
3 非磁性中間膜
4 第2軟磁性膜
5 下地膜
6 中間層
7 垂直磁気記録膜
8 保護膜
9 潤滑膜

Claims (15)

  1. 非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間膜と垂直磁気記録膜を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層を構成する軟磁性膜が非晶質構造で飽和磁束密度Bsが1.1(T)以上であるCoAl合金からなることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間膜と垂直磁気記録膜を有する垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層を構成する軟磁性膜が非晶質構造で飽和磁束密度Bsが1.4(T)以上であるCoFeAl合金からなることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 前記軟磁性膜のAl含有量が0.2原子%以上7原子%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記軟磁性膜のAl含有量が0.3原子%以上3原子%以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記軟磁性膜のFeの含有量が50原子%以下であること特徴とする2乃至4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記軟磁性膜がさらにTa、Nb、Zrのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 前記軟磁性膜がさらにNi、Crのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  8. 前記裏打ち層は2層の軟磁性膜とその間に形成されたRu膜から構成され、2層の軟磁性膜がAFC(Anti−Ferro−Coupling)結合していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 前記裏打ち層の飽和磁束密度と膜厚の積Ms・t(T・nm)が3以上8以下であることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  10. 前記下地膜がNi、Ni合金、NiFe合金またはNiCo合金のいずれかの材料からなり、その上に設けられたRu合金のΔθ50が6°以下であることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  11. 前記中間膜がRuまたはRu合金であることを特徴とする請求項1乃至10いずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  12. 前記裏打ち層の膜厚が20nm以上80nm以下であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  13. 前記中間膜の厚さが16nm以下であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  14. 前記軟磁性膜がCoFeAlZrNb、CoFeAlHfNb、CoFeAlTaNb、CoFeAlZrNbCr、CoFeAlZrNbNiの何れかであることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  15. 磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記磁気ヘッドが単磁極ヘッドであり、前記磁気記録媒体が、請求項1乃至14の何れか1項に記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。


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