JP5348661B2 - 軟磁性ターゲット材 - Google Patents

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Description

本発明は、軟磁性薄膜を形成するためのFe−Co系ターゲット材に関するものである。
近年、磁気記録技術の進歩は著しく、ドライブの大容量化のために、磁気記録媒体の高記録密度化が進められている。しかしながら、現在広く世の中で使用されている面内磁気記録方式の磁気記録媒体では、高記録密度化を実現しようとすると、記録ビットが微細化し、記録ビットで記録できないほどの高保持力が要求される。そこで、これらの問題を解決し、記録密度を向上させる手段として垂直磁気記録方式が検討されている。
垂直磁気記録方式とは、垂直磁気記録媒体の磁性膜中の媒体面に対して磁化容易軸が垂直方向に配向するように形成したものであり、高記録密度に適した方法である。そして、垂直磁気記録方式においては、記録感度を高めた磁気記録膜層と軟磁性膜層とを有する2層記録媒体が開発されている。この磁気記録膜層には一般的にCoCrPt−SiO2 系合金が用いられている。
一方、2層記録媒体の軟磁性膜として、Fe−Co−B系合金の軟磁性膜を用いることが提案されており、例えば、特開2004−346423号公報(特許文献1)に開示されているように、断面ミクロ組織においてホウ化物相の存在しない領域に描ける最大内接円の直径が30μm以下であるFe−Co−B系合金ターゲット材が提案されている。
特開2004−346423号公報
上述した軟磁性膜の成膜には、一般にマグネトロンスパッタリング法が用いられている。このマグネトロンスパッタリング法とは、ターゲット材の背後に磁石を配置し、ターゲット材の表面に磁束を漏洩させて、その漏洩磁束領域にプラズマを収束させることにより高速成膜を可能とするスパッタリング法である。このマグネトロンスパッタリング法はターゲット材のスパッタ表面に磁束を漏洩させることに特徴があるため、ターゲット材自身の透磁率が高い場合にはターゲット材のスパッタ表面にマグネトロンスパッタリング法に必要十分な漏洩磁束を形成するのが難しくなる。そこで、ターゲット材自身の透磁率を極力低減しなければならないという要求から特許文献1が提案されている。
しかしながら、上述でのターゲット製品の厚みの限界は5mm程度で、それ以上厚くするとターゲット表面に十分な漏れ磁束が出ないため正常なマグネトロンスパッタが行なえないという問題がある。また、マグネトロンスパッタ用に用いられるターゲット材の膜とした時に高磁束密度であることが求められていることから、Feをベースとした材料が望ましいがその場合耐食性に課題があり、また、ターゲット材の酸化により膜の品質が劣化したり、スパッタ時に酸化部に異常放電を起こしてスパッタ不良となる場合があった。
上述の問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めるべく、各種添加元素が耐候性に及ぼす影響について調査した結果、AlまたはCrの添加により磁気特性を損なうことなく、耐候性を向上できることを見出した。すなわち、本発明は、飽和磁束密度の大きいFe−Co系合金にAlまたはCrを0.2〜5at%添加した耐候性を向上させた軟磁性ターゲット材を提供する。ここで、耐候性とは、室内での電子部品を組み込んだ機器を使用する環境下においての耐候性能を言う。
その発明の要旨とするところは、
(1)スパッタ性に優れた軟磁性Fe−Co系合金スパッタターゲットにおいて、AlまたはCrの1種または2種を0.2〜5at%、および、B,Zr,Ta,Tiのいずれか1種または2種以上を30at%以下を含有し、残部がFeおよびCoであり、そのFe:Coのat比が90:10〜30:70であって、その厚さが5mmを超え10mm以下であるを特徴とする軟磁性Fe−Co系合金スパッタターゲットにある。
以上述べたように、本発明により磁気特性を劣化させることなく、耐候性を向上させた軟磁性ターゲット材の作製を可能にした極めて優れた効果を奏するものである。
以下、本発明についての成分組成の限定理由について詳細に説明する。
Fe:Coのat比が90:10〜30:70
Fe−Co系合金は、飽和磁束密度の大きい合金系として、垂直磁気記録膜として使用される。さらに、Fe:Coのat比が90:10〜30:70としたのは、Feに対して、Coが70%を超えると磁気特性が劣化するためである。なお、FeおよびCoの含有量は、100at%から後述するAl、CrやB等の含有量を差し引いた値である。
Al、またはCrの1種または2種を0.2〜5at%
AlまたはCrの1種または2種が、0.2at%未満では耐候性の改善に効果が不十分であり、また、5at%を超えると磁気特性の劣化が大きくなり好ましくない。従って、その範囲を0.2〜5at%とした。好ましくは0.5〜3at%とする。
,Zr,Ta,Tiのいずれか1種または2種以上を30at%以下
,Zr,Ta,Tiは、薄膜のアモルファス化を促進するためであり、これらの添加元素のトータルで30at%を超えると磁気特性が劣化することから、その上限を30at%とした。好ましくは5〜20at%とする。
本発明に係る成形方法は、HIP、ホットプレス等高密度に成形可能であればいずれでも構わない。粉末の作製方法としては、ガスアトマイズ、水アトマイズ、鋳造−粉粉砕のいずれにも限定されるものでない。
上述したように、軟磁性膜の成膜には、一般にマグネトロンスパッタリング法が用いられている。このマグネトロンスパッタリング法とは、上述したように、ターゲット材の背後に磁石を配置し、ターゲット材の表面に磁束を漏洩させて、その漏洩磁束領域にプラズマを収束させることにより高速成膜を可能とするスパッタリング法である。
このマグネトロンスパッタ装置は、2極DCグロー放電スパッタ装置の欠点を解消するため、ターゲットの裏側に磁石を置き、磁界をかけてターゲット近傍にγ電子を閉じ込めようとしたのが特徴で、γ電子は磁力線に絡みついた軌道をとるため、プラズマがターゲット近傍に集中し、基板へのダメージを低減することができる。また、同時にγ電子の運動距離が長くなるため、低ガス圧で高速なスパッタが可能となるものである。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示すように、Fe−Co系合金をガスアトマイズ法、ないし鋳造法によって作製した。ガスアトマイズ法の場合は、ガス種類がアルゴンガス、ノズル径が6mm、ガス圧が5MPaの条件で行い、また、鋳造法の場合は、セラミックルツボ(φ200×30L)により溶解し、その後粉砕して粉末とする。作製した粉末を500mm以下にて分級し、それぞれの粉末をV型混合機により1時間攪拌した。
そのようにして作製したそれぞれの粉末を直径200mm、高さ100mmのSC材質からなる封入缶に充填し、到達真空度10-1Pa以上で脱気真空封入した後、HIP(熱間等方圧プレス)にて、温度1173K、圧力150MPa、保持時間5時間の条件で、成形体を作製し、次いで機械加工により最終計上として外径180mm、厚さ3〜10mmのターゲット材を得た。上述したターゲット材の特性を表1に示す。
Figure 0005348661
作製したターゲット材の特性の評価項目としては、次のような耐候性試験(加速試験)と磁気特性(飽和磁束密度)の測定を行った。
(1)耐候性試験(加速試験)
ターゲット材を用いた塩水噴霧試験としては、JIS Z 2371に基づき、NaCl:5質量%溶液を24時間噴霧した後のターゲット材外観を目視により発銹の有無を確認した。その評価基準として下記で評価した。
○:発銹なし
△:ターゲット材の一部に発銹
×:ターゲット材の全面に発銹
(2)磁気特性(飽和磁束密度)
リング試験片作製:外径15mm、内径10mm、高さ5mm
装置:BHトレーサー
印加磁場:8kA/m
表1に示すように、No.1〜は本発明例であり、No.6〜7は比較例である。比較例No.は、Feの含有量が低く、Coの含有量が高いために、磁気特性である飽和磁束密度が低い。比較例No.7は、Taの含有量が高いために、磁気特性である飽和磁束密度が低い。これに対し、本発明例No.1〜のいずれも本発明の条件を満たしていることから、飽和磁束密度および耐候性に優れていることが分かる。
以上のように、飽和磁束密度の大きいFe−Co系合金にAlまたはCrの1種または2種を0.2〜5at%を添加することにより、磁気特性を劣化させることなく、耐候性を向上させた軟磁性ターゲット材の作製が可能となり、室内での電子部品を組み込んだ機器を使用する環境下においての耐候性能を充分に発揮することが出来る極めて優れた効果を奏するものである。

Claims (1)

  1. スパッタ性に優れた軟磁性Fe−Co系合金スパッタターゲットにおいて、AlまたはCrの1種または2種を0.2〜5at%、および、B,Zr,Ta,Tiのいずれか1種または2種以上を30at%以下を含有し、残部がFeおよびCoであり、そのFe:Coのat比が90:10〜30:70であって、その厚さが5mmを超え10mm以下であることを特徴とする軟磁性Fe−Co系合金スパッタターゲット
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