JP5086728B2 - 垂直磁気記録媒体の製造方法及び磁気記憶装置 - Google Patents
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しかし、軟磁性裏打ち層材料は、広域トラックイレーズ(WATER)抑制のため、APS−軟磁性裏打ち層の磁性層交換結合力磁界(Hex)の大きい高飽和磁束密度(高Bs)材料が必要とされている。このために、磁気モーメントの大きい材料が有利であり、その材料としては、Fe、Co又はこれらの合金を主成分とした材料となることが多く、したがって、Feを含むことになるから、酸化による耐蝕性が常に問題視されている。
また、特許文献2では、基板上に少なくとも軟磁性層、シード層、中間層、磁気記録層、保護層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記シード層がCoを20at.%以上60at.%以下含有するWCo合金からなり、前記中間層がRu又はRu合金からなり、前記磁気記録層がCoCrPt合金からなる柱状粒子と酸化物を含む粒界層とによって構成されたグラニュラ構造を有していて、高い媒体S/Nと耐食性、スクラッチ耐力とを両立させ、媒体S/Nが高く、かつ、耐食性及びスクラッチ耐力に優れた垂直磁気記録媒体を実現することを可能にしている。
また、特許文献3では、軟磁性下地膜を有する、垂直磁気記録媒体用基板において、前記軟磁性下地膜上に、該軟磁性下地膜の腐食を防止する防食膜が設けられていて、軟磁性下地膜上に、該軟磁性下地膜の腐食を防止する防食膜が設けられることにより、耐食性の高い垂直磁気記録媒体用基板が得られることを可能にしている。
本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法は、基板上に形成された、軟磁性体からなる軟磁性層と非磁性体からなる非磁性層とを備える軟磁性裏打ち層と、軟磁性裏打ち層上に形成された非磁性体からなる配向制御層と、その上に形成されて磁気データを記録する記録層とを有し、軟磁性裏打ち層と配向制御層との間に、スッパタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法で作製された軟磁性裏打ち層保護膜が設けられている。この軟磁性裏打ち層保護膜は、一般にグラニュラ構造からなる垂直磁気記録層の直下にRu等から成る配向制御層が設けられる。このため、配向制御層の結晶配向性を向上させるため、結晶構造が面心立法構造(fcc)である材料を用いることで、配向制御層、垂直磁気記録層の配向性を損なうことがない。さらに、Niを主成分とすることで、軟磁性裏打ち層の酸化を防止して、かつ軟磁性裏打ち層に対する保護膜として機能する。さらに、軟磁性にすることで、軟磁性裏打ち層と垂直磁気記録層との間に設けても、垂直磁気記録媒体の磁気特性を阻害することなく保護することができる。
また、本発明の磁気記憶装置によれば、垂直磁気記録媒体におけるS/N比の低下を防止して、長期間に渡り安定した特性を得ることができる。
本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法による垂直磁気記録媒体10は、基板11と、基板11上に、軟磁性層121と非磁性層122を有する軟磁性裏打ち層(SUL層)12、軟磁性裏打ち層保護膜13、配向制御層14、記録層15、表面保護層16、及び潤滑層17を順次積層した構成となっている。
基板11は、本体は非磁性材料からなるものであればよく、また基板本体の形状としては、ディスク状であってもよいし、他の形状であってもよい。例えば、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、Si基板、アルミニウム合金基板などから構成され、垂直磁気記録媒体10がテープ状である場合はポリエステル(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、耐熱性に優れたポリイミド(PI)などのフィルムを用いることができる。
軟磁性層121間の中間層であう非磁性層122は、Ru、Rh、Ir及びこれらの合金等の適当な非磁性体を用いればよい。また、その膜厚も適宜設定できる。
軟磁性裏打ち層12は、メッキ法、スパッタ法、蒸着法、CVD法(化学的気相成長法)などにより形成される。軟磁性裏打ち層12は、記録ヘッドからのほぼ総ての磁束を吸収するためのもので、飽和記録するためには飽和磁束密度Bsと膜厚の積の値が大きい方が好ましい。また、軟磁性裏打ち層12は、高転送レートでの書込性の点では高周波透磁率が高い方が好ましい。
垂直磁気記録層15は、膜厚方向に磁化容易軸を有するいわゆる垂直磁化膜であり、厚さ3nm〜30nmのNi、Fe、Co、Ni系合金、Fe系合金、CoCrTa、CoCrPtを含むCo系合金からなる群のうちいずれかの材料から構成される。このような強磁性合金は柱状構造を有し、hcp構造の場合は、膜厚方向すなわち成長方向が(001)面となり、膜厚方向に磁化容易軸を有する。垂直磁気垂直磁気記録層15としては、例えば、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtTaNb等が好ましい。
また、垂直磁気記録層15はCo/Pd、CoB/Pd、Co/Pt、CoB/Ptなどの人工格子膜であってもよい。人工格子膜は、例えばCoB(厚さ:0.3nm)/Pd(厚さ0.8nm)を交互に各々を5層から30層を積層して構成される。これらの人工格子膜は垂直磁気異方性が大きいので熱的安定性に優れている。
さらに、その上には、潤滑層17は、引き上げ法、スピンコート法などにより塗布され、厚さが0.5nm〜5nm、パーフルオロポリエーテルが主鎖の潤滑剤などのより構成される。
さらに、軟磁性裏打ち層保護膜13は、結晶構造として面心立方晶(fcc)の構造を有している。
これは、軟磁性裏打ち層12の軟磁性層121が、Fe、Co及びその合金を主体としている材料であることから、fcc構造を有している。また、その一方の片側で接触しているのは配向制御層14であり、最密六方晶(hcp)構造を有している。fcc構造、hcp構造は、共に、最密充填構造であり、結晶面を揃えることで、同一の配列を達成することができ、軟磁性裏打ち層12と配向制御層14との間に設けても整合性を取ることができ、結晶構造を維持することができる。
また、この軟磁性裏打ち層保護膜13は、軟磁性裏打ち層12を完全に被覆する。図1に示すように、軟磁性裏打ち層保護膜13は、軟磁性裏打ち層12の上にのみ形成するのではなく、端部を含めて露出部分がないように被覆して保護する。これによって、雰囲気中の酸素、水分と接触するのを防止して、軟磁性裏打ち層12のFe等の酸化による劣化を防ぐ。
図2は、本発明の磁気記憶装置の構成を示す概略断面図と平面図である。図2において、この磁気記憶装置100は、ハウジング101内に、モータ103、ハブ102、複数の垂直磁気記録媒体10、ライト・リードヘッド112、サスペンション111、アーム110及びアクチュエータユニット113が設けられている。垂直磁気記録媒体10は、モータ103により回転されるハブ102に取り付けられている。この磁気記憶装置100では、磁気データを書き込む単磁極ヘッドのライトヘッドだけではなく、信号記録再生手段としてのライト・リードヘッド112を設けている。ライト・リードヘッド112は、インダクティブヘッド等のライトヘッドと、GMRヘッドやTMRヘッド等のリードヘッドとからなる。各ライト・リードヘッド112は、対応するアーム110の先端にサスペンション111を介して取り付けられている。アーム110は、アクチュエータユニット113により駆動される。図2においては、1つのアームに複数のライト・リードヘッドを設けても良いし、垂直磁気記録媒体10は、勿論、数は限定されない。図2の磁気記憶装置には、図示省略した信号処理回路が設けられており、この信号処理回路は、例えば少なくとも制御演算部、記録再生制御部およびメモリを備えている。
(垂直磁気記録媒体の作製)
本実施例に係る垂直磁気記録媒体を以下に示す構成とした。基板側からガラス基板/軟磁性裏打ち層:軟磁性層FeCoB(25nm)・非磁性層Ru(0.8nm)・軟磁性層FeCoB(25nm)/軟磁性裏打ち層保護膜Ni−X(5nm)/配向制御層Ru(10nm)/垂直磁気記録層:CoCPt−SiO2(10nm)/保護膜:CN(4nm)とした。jこれらはいずれも、Arガス雰囲気のスパッタ装置を用いて形成し、成膜時の雰囲気ガス圧力をそれぞれ適宜選択した。なお、上記括弧内の数値は膜厚を表す。このときに、軟磁性裏打ち層保護膜は、組成を変えたターゲットを用いて、添加元素Xとして、Nb、Zrを変えて製造した。表1にその組成を示す。
(垂直磁気記録媒体の評価項目・評価結果)
<耐蝕性指標>
耐蝕性試験は、酸浸漬試験により行ない、2時間連続暴露を行った。評価は、浸漬前後の膜重量差より評価し、添加元素0のときの酸浸漬前後の重量差(残存量)を基準(1)とし、各評価材料の耐蝕性を相対的に示した。また、この評価には、軟磁性裏打ち層保護膜まで成膜した試料を用いた。
<規格化保磁力(規格化Hc)>
保磁力HcはVSM(振動型磁気測定装置)を用いて測定した。ここでの規格化保磁力とは、添加元素を添加した垂直磁気記録媒体の保磁力Hc1と添加元素を添加しない垂直磁気記録媒体の保磁力Hc2とを測定して、Hc1/Hc2の比として表した。
記録層下層の変化により保磁力Hcが変化(低下)しても、記録層組成等のチューニングによりHcの補正は可能であるが、その変化量が大きすぎると補正対応が困難となる。この面から、規格化保磁力Hcは0.8以上であることが望ましい。
<S/N比>
垂直磁気記録媒体の信号とノイズの比を示している。測定は、浮上量12nmの複合型磁気ヘッド(記録ヘッド:単磁極ヘッド、ライトコア幅0.2μm、再生ヘッド(GMR素子):リードコア幅0.1μm)を用いて測定し、記録密度は400kFCIとした。
NiFe膜(膜厚5nm)が形成されているので、その上に形成された磁束スリット層としてのNiFe膜(雰囲気ガス圧力:4.0Pa、膜厚5nm)の結晶性が向上し、その優れた結晶性の効果により記録層の磁性粒子の結晶性が向上したものと考えられる。
図3は、軟磁性裏打ち層保護膜に添加した添加元素Xの添加量(at.%)に対する耐蝕性指標との関係を示すグラフである。
図3に示すように、添加元素Xとして、Nb、Zr添加においても効果がみとめられ、その効果はある量以上で飽和して一定となる。耐蝕性指標1.2以上で、従来より十分効果が認められ、実用上問題のないレベルになる。この結果より、軟磁性裏打ち層保護膜に添加する元素量は0.5at.%以上、より好ましくは1.0at.%以上が好ましい。ここでは、Nb、Zrを添加した例を示したが、その他に、Ta、Ti、Hfでも、同程度の効果が認められた。
また、表2に、実施例・比較例の評価結果を一覧表にして示す。
図4に示すように、Nbを、10at.%を越えて添加することで磁気記録層の保磁力の減少が認められる。さらに、表2に示すように、磁気特性の劣化だけでなく、S/N比も大幅に低下した。
磁気記録層の組成、組織構造を調整することで、保磁力は適宜設定できるが、軟磁性裏打ち層保護膜の添加元素のNbが10at.%を越えると、保磁力の低下率が大きくなるため、それ以上の添加は適当でない。さらに、図1を参照すると、10at.%を越えると、耐蝕性は引き続き向上するものの、その効果の割合は小さくなってきている。このことからも、必要以上の元素の添加は不必要であり、10at.%以下の範囲が好ましい。
表2から明らかなように、実施例1ないし4のいずれもが、耐蝕性指標は、何も添加していない比較例1よりも大きな値で、耐蝕されていない結果を示している。規格化Hcも、0.8以上と十分大きな値で、保磁力Hcの低下が小さいことがわかる。S/N比も、比較例1と同等であり、添加元素によってS/N比が低下していないことがわかる。
一方、比較例1は、耐蝕性指標は、1.0であるが、これでは、実用上記録層の酸化による劣化があり問題である。比較例2は、比較例3は、いずれも耐蝕性は十分であるが、Hc低下が著しく、これに伴い、S/N比も大幅に低下しているため実用に適さない。
11 基板
12 軟磁性裏打ち層(SUL層)
121 軟磁性層
122 非磁性層
13 軟磁性裏打ち層保護膜
14 配向制御層
15 記録層
16 保護層
17 潤滑層
100 磁気記憶装置
101 ハウジング
102 ハブ
103 モータ
110 アーム
111 サスペンション
112 ライト・リードヘッド
113 アクチュエータユニット
114 イレーズヘッド
Claims (3)
- 基板と、
前記基板上に形成された、非磁性体からなる非磁性層とこれを両側から挟む軟磁性体からなる最密充填構造の軟磁性層とを備える軟磁性裏打ち層と、
Niを主成分とし、添加元素Xとして、Nb、Ta、Zr、Ti、Hfから構成される群から選択された少なくとも1つの金属を1〜10at.%の範囲で含有させた合金で最密充填構造を有する単層である軟磁性裏打ち層保護膜と、
前記軟磁性裏打ち層保護膜上に形成された最密充填構造を有する非磁性体からなる配向制御層と、
前記配向制御層上に形成されて磁気データを記録する記録層とを、
スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法のいずれかの物理蒸着法で形成し、かつ、前記軟磁性裏打ち層を前記軟磁性裏打ち層保護膜で完全に被覆する
ことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 - 請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法において、
前記最密充填構造は、面心立方結晶構造又は最密六方晶である
ことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法で製造された垂直磁気記録媒体と、
少なくとも、前記垂直磁気記録媒体に磁気データを書き込む単磁極ヘッドと、を有する
ことを特徴とする磁気記憶装置。
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