JP4358208B2 - 垂直磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、垂直磁気記録方式のハードディスクドライブ(HDD)に搭載され、高記録密度化が可能、かつ長時間駆動可能な高信頼性を有する垂直磁気記録媒体に関する。
HDDは、情報の記録再生を行なう磁気記憶装置として大容量の記録ができ低コストであることに加え、データのアクセスが速く、データ保持の信頼性が高いなどの多くの利点を有することから、コンピュータを中心とした利用から、徐々にその利用範囲が広がっており、家庭用ビデオデッキ、オーディオ機器や車載ナビゲーションシステムなど、様々な分野でも利用されるようになってきた。HDDの利用範囲がこうして広がるにつれ、HDDの記憶容量の大容量化への要求が高まり、これに応じて、磁気記録媒体の記録密度を高密度化することによる大容量化が急激に進められた。
HDDにおける磁気記録媒体の記録密度を高めたことにより、記録ビットサイズの微細化が進み、磁性層の磁化反転単位の径は非常に小さくなった。この結果、情報記録された磁化の熱揺らぎ効果により熱的に消去され、記録再生特性が劣化する現象が顕著に起きるようになった。また、高記録密度化によって磁気記録媒体における記録ビットサイズの微細化が進められた結果、記録ビット間の境界領域で発生するノイズが、信号対雑音比(SNR)に大きな影響を及ぼすようになってきた。このため、高記録密度化のためには、磁気記録媒体における記録磁化の熱的な安定性を確保する一方で、高記録密度における磁気記録媒体の低ノイズ化が必要となっている。低ノイズ化は、従来、記録層を構成する磁性粒子の微細化と磁性粒子と非磁性粒子の分離化により促進されてきた。
垂直磁気記録媒体は、基本的には基板上に軟磁性材料からなる軟磁性裏打ち層と、磁性層の磁化容易軸を基板面に対して垂直に配向させる下地膜、Co合金からなる磁気記録層および保護膜の順で構成されている。磁気記録層には酸化物を含むグラニュラー構造である材料を用いた垂直磁気記録媒体が提案されている(特許文献1または2参照)。高記録密度化へは、こういった酸化物の導入の他、非磁性基体と磁気記録層の間に非磁性NiFeCrシード層、Ru合金中間層の導入(特許文献3参照)、2層の軟磁性下地層の間にFe、Co、Niの少なくとも1種を含む合金からなるシード膜の導入(特許文献4参照)、NiCrBあるいはNiCrBCoからなるfcc構造のシード層の導入(特許文献5参照)等、さまざまな試みがなされている。
また、垂直磁気記録媒体を構成する下地層と垂直磁性層との間に、アモルファス構造を有する層を設けることにより、垂直磁性層の結晶粒径を微細化し、また、粒径分布を均一化し、垂直磁気記録媒体のノイズを低減させること(例えば、特許文献6参照。)、さらに、垂直磁気記録媒体を構成する軟磁性下地層と垂直磁性層との間に、非晶質材料からなるCrTa層を設けることにより、S/Nが高く、高記録密度化に適した垂直磁気記録媒体が得られること(例えば、特許文献7参照。)、垂直磁性層をグラニュラ構造とし、その結晶粒子を柱状構造とすることにより高いSNRと耐熱減磁性が両立できることが開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
一方で、車載ナビゲーションシステムに搭載されるなどの背景から、過酷な環境下での信頼性も求められている。従来の方式では、高温高湿環境下で、軟磁性裏打ち層が腐食して、Coイオンが溶出することによって、媒体表面に軟磁性裏打ち層構成元素が析出する(コロージョン)という大きな問題がある。例えば、特許文献9には、非磁性支持体とCo磁性層との間に、Cr下地層を設けることにより、Co磁性層の腐食が防止できることが開示されている
特開2003−168207号公報 特開2003−346334号公報 特開2003−123239号公報 特開2004−327006号広報 特開2006−099951号公報 特開2003−115106号広報 特開2004−273046号公報 特開2006−127588号公報 特開2006−059397号公報
垂直磁気記録媒体は上記のようにSNR改善、記録密度の向上、腐食防止のため多くの提案がなされているが、垂直磁気記録媒体の特性は積層される各層の成分、組成、層の積層順序などにより変わり、従来提案されているものも一長一短であり、さらに改善が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、耐環境性等の信頼性を向上し高密度の情報の記録再生が可能な磁気記録媒体および磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)基板と、
前記基板上に形成された軟磁性裏打ち層と、
前記軟磁性裏打ち層上に形成されたシード層と、
前記シード層上に形成された下地層と、
前記下地層上に形成された垂直磁気記録層と、
前記垂直磁気記録層上に保護膜、潤滑層をこの順に備えた垂直磁気記録媒体において、
前記シード層は、Ta、Crを主成分とする合金であり、
前記垂直磁気記録層が、CoとPtとCrと酸化物を含む柱状グラニュラー構造であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
(2)前記軟磁性裏打ち層が、Co、Fe、Niの少なくとも1種を含む非晶質構造の合金からなることを特徴とする上記(1)に記載の垂直磁気記録媒体。
(3)前記軟磁性裏打ち層が、Coを60原子%以上含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の垂直磁気記録媒体。
(4)前記軟磁性裏打ち層が、非晶質または微細結晶構造からなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(5)前記基板と軟磁性裏打ち層の間にCr、Ti、Taの少なくとも1種を含有する合金からなる非晶質の密着層を有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(6)前記シード層のCr含有量が50〜80原子%であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(7)シード層が、非晶質または微細結晶構造であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(8)シード層の厚さが、1〜15nmであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(9)前記下地層が、Ruもしくは、Ru合金からなることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(10)前記下地層の厚さが、3〜30nmであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(11)前記垂直磁気記録層の柱状グラニュラー構造を構成する結晶粒子の短軸の平均径が4〜8nmであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
12)前記垂直磁気記録層の柱状グラニュラー構造を構成する結晶粒子の長軸径と短軸径の比率(長軸径/短軸径)が、1.5以上であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(13)前記垂直磁気記録層の酸化物が、SiO2、Cr23、TiO、TiO2、Ta25からなる群から選ばれた何れかの一種を含むことを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(14)前記垂直磁気記録層の厚さが、5〜20nmであることを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
(15)前記保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC(Diamond Like Carbon))からなることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
本発明の構造の磁気記録媒体を採用することにより、磁気記録層において安定した柱状グラニュラー構造が形成され、また過酷な使用環境においても、磁気記録層の耐腐食性が向上した。これにより高密度の情報の記録再生が可能で、かつ信頼性に優れた垂直記録媒体を提供できるようなった。
以下部面を参考にして本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の磁気記録媒体の第一の実施形態の一例を示すものである。ここに示されている磁気記録媒体は、ガラス基板1上に、密着層2、軟磁性裏打ち層3、シード層4、下地層5、磁気記録層6、保護膜7、潤滑膜8とが順次形成された構成となっている。シード層はTaおよびCrを主成分とすることが特徴であり、好ましくは非晶質もしくは微細結晶構造からなる。そしてCr含有量は好ましくは50〜80原子%である。これにより下地層の配向を良好なものとし、SNRを改善し、かつ、軟磁性裏打ち層の腐食性を抑えることで、高密度の情報の記録再生が可能で、かつ信頼性に優れた垂直記録媒体を実現させることができる。
非磁性基板1としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラス、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。
ガラス基板としては、アモルファスガラス、結晶化ガラスがあり、アモルファスガラスとしては汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスを使用できる。また、結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスを用いることができる。
非磁性基板1上には好ましくは密着層2が設けられる。密着層は、非磁性かつ非晶質構造を特徴として、Cr,Ti,Taのうち少なくとも1種を含有する合金であることが好ましい。そしてこれらの元素の少なくとも1種を主成分とする合金が好ましく、合金の他の元素としてはMo,Nb,Al,V,W,Hf,Bなどを挙げることができる。密着層を設けることにより、基板と膜との密着性、耐腐食性などの特性がよくなる。
密着層の厚さは好ましくは5〜30nmである。
基板上もしくは密着層上の軟磁性裏打ち層3は、非晶質、または微細結晶構造からなることが好ましい。非晶質構造または微細結晶構造とすることで、表面が平滑化することにより、垂直磁気記録層の結晶配向性を悪化させることがないからである。
軟磁性裏打ち層の材料としては、Fe、Ni、Coの少なくとも1種を含む材料を用いることができる。特に、Coを60原子%以上含有し、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、Al等のうち少なくとも1種を含有するCo合金を用いることが好ましい。
軟磁性裏打ち層は少なくとも2層の軟磁性裏打ち層とし、その2層の軟磁性裏打ち層の間にRu層が設けられた構成からなることが好ましい。なお、このRu層に代えてRe層を設けるようにしてもよい。軟磁性裏打ち層31,33の間にRu層32またはRe層32を設け、所定の厚さに設定することで、上下に設けられた軟磁性裏打ち層31,33を反強磁性結合させることができるためである。このような構成とすることで、垂直磁気記録媒体特有の問題であるWATE( Wide Area Track Erasure)の現象をより改善することが可能となる。
軟磁性裏打ち層の厚さ(多層の場合、合計)は好ましくは20〜80nmであり、Ru層の厚さは好ましくは0.5〜1.5nmである。
シード層4はTaおよびCrを主成分(好ましくはTaとCrの合計が70原子%以上)として含む、好ましくは非晶質もしくは微細結晶構造からなる合金である。このような構成とすることにより、下地層の配向を良好なものとし、SNRを改善し、かつ、軟磁性裏打ち層の腐食性を抑えることができる。この合金はさらに好ましくは、Cr濃度が50〜80原子%である。上記の効果を高めるためCr濃度は50原子%以上が特に好ましく、また80原子%を越えるとBCC構造への結晶化の問題が生じるので80原子%以下が特に好ましい。合金のTaおよびCr以外の元素としてはCu,Nb,Ni,Mo,Al,V,B,Cなどの元素を含有させることができる。なお、ここにおける非晶質、微細結晶構造とは、長距離秩序を備えないため、X解回折像には結晶質に由来する鋭利なピークが観測されない構造をいう。
シード層の膜厚は1〜15nm、より好ましくは、3〜10nmである。このような膜厚を得るには例えばスパッタリング法で、成膜時のガス圧を0.7〜10Pa程度にするのが好ましい。1〜15nmのシード層を導入することで、シード層表面を平滑化し、シード層上に形成される下地層の配向を改善し、これにより、その上に形成される記録層の垂直配向を改善することができる。膜厚が1nm未満ではこの改善効果が十分でなく、また膜厚が15nmを越えると、表面粗さが増し、下地層の配向が悪化する。
下地層5は、垂直磁気記録層(磁気記録層と略す場合もある)の配向および粒径を制御するためのものである。材料としては、RuまたはRu合金が好ましい。その結晶構造はhcp(六方細密充填)構造であることが好ましい。Ru合金はRuとC、Cu、W、Mo、Ir、Pt、Ta、V等の少なくとも1種を含有するもので、好ましくはRuが60原子%以上である。
下地層の厚さは3nm以上30nm以下とするのが好ましい。膜厚が上記範囲であるとき、垂直磁気記録層の配向性がよく、かつ記録時における磁気ヘッドと裏打ち層との距離を小さくすることができるので、再生信号分解能を低下させることなく記録再生特性を高めることができるからである。
垂直磁気記録層6は、その磁化容易軸が基板に対して主に垂直方向に向いたものであり、少なくともCoとPtとCrと酸化物からなるグラニュラー構造を有するものである。グラニュラー構造とは、隣接する結晶粒子間の相互作用を小さくする目的で、磁性結晶粒の周辺部分(結晶粒界)を非磁性層で取り囲んだ(偏析)構造をいい、相互作用を小さくすることで媒体ノイズを減少することができる。垂直磁気記録媒体においては、Crの粒界への偏析がおこりにくいため、酸化物を添加することによって、酸化物の粒界への偏析により、粒界分離構造を促進させて、グラニュラー構造を形成することで低ノイズ化を実現することができる。
特にCoPtCrにSiO2、TiO、TiO2、ZrO2、Cr23、CoO、Ta25などの酸化物を含むグラニュラー構造であることが好ましい。
特にPtの含有量が10原子%以上22原子%以下、Coの含有量が50原子%以上75原子%以下、Crの含有量が8原子%以上25原子%以下であることが好ましい。
垂直磁気記録層はターゲットに酸化物を添加して成膜して作成する方法やCoPtCr合金を成膜する際に酸素を添加して反応性スパッタで成膜する方法などにより作製される。
磁気記録層は、少なくともCoとPtとCrと酸化物を含む材料からなる1層構造とすることもできるし、組成の異なる材料からなる2層以上の構造とすることもできる。金属としては他にMo,W,Ta,Ti,V,Bなどの元素を含有させることができる。
磁気記録層の厚さは、5〜20nmとすることが好ましい。磁気記録層の厚さが5nm以上であると、十分な磁束を得ることができ、再生時における出力が低くならず、出力波形がノイズ成分に埋もれてしまうことがないので、より高記録密度に適した磁気記録再生装置として動作するので好ましい。また、磁気記録層の厚さが20nm以下であると、垂直磁気記録膜内の磁性粒子の粗大化を抑えることができ、ノイズの増大といった記録再生特性の劣化が生じるおそれがないため好ましい。
磁気記録層の保磁力は、4000(Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が4000(Oe)未満であると、高記録密度における必要な分解能が得られず、また熱揺らぎ耐性が劣るため好ましくない。
磁気記録層の逆磁区形成磁界(−Hn)は、1500以上であることが好ましい。−Hnが1500未満の磁気記録媒体は、熱揺らぎ耐性に劣るため好ましくない。
磁気記録層は、結晶粒子の平均粒径(短軸)が4nm以上8nm以下であることが好ましい。またグラニュラー構造における長軸径と短軸径の比率(長軸径/短軸径)は1.5以上であることが好ましい。この平均粒径は、例えば磁気記録層の結晶粒子をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察像を画像処理することにより求めることができる。
保護膜7は磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、ダイヤモンド状炭素膜(DLC(Diamond Like Carbon))であることが好ましい。保護膜の厚さは、1nm以上5nm以下とするのがヘッドと媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から望ましい。
以上の各層の生成にはスパッタリング法、メッキ法などを用いることができる。
潤滑膜には従来公知の材料、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いるのが好ましい。成膜には例えばディッピング法が用いられる。
図2は、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置の例を示すものである。ここに示す磁気記録再生装置は、磁気記録媒体と磁気記録媒体を回転駆動させる媒体駆動部と、磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気記録ヘッドと、ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系を備えている。記録再生信号処理系は入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッドに送り、磁気ヘッドからの再生信号を処理してデータを出力することができるようになっている。
以下、実施例を示して本発明の作用効果を明確にする。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
洗浄済みのガラス基板(KMG社製アモルファス化基板MEL、直径2.5インチ)をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3010)成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、このガラス基板上に密着層として、50Cr−50Ti合金(Cr含有量50原子%、Ti含有量50原子%、以下同様に元素の前の数字は原子%を表す)を10nm成膜した。
次いで、密着層上に、軟磁性裏打ち層として、93(70Co−30Fe)−4Zr−3Nb合金を30nm、Ruを0.8nm、93(70Co−30Fe)−4Zr−3Nb合金を30nm成膜した。裏打ち層の磁化容易軸が基板半径方向であることを振動式磁気特性測定装置(VSM)で確認した。
次いで、裏打ち層上にシード層として、65Cr−35Taを5nm成膜した。その上に下地層として、RuをArガス圧0.8Pa中に12nm、ついで、Arガス圧10Pa中で12nm成膜した。磁気記録層として、90(74Co−10Cr−16Pt)−10SiO2をArガス圧10Pa下で8nm、90(69Co−15Cr−16Pt)−10SiO2をArガス圧10Pa下で8nm、66Co−19Cr−14Pt−1BをArガス圧0.8Pa下で8nm成膜した。
次いで、CVD法により、4nmの保護膜を形成した。次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を形成し、垂直磁気記録媒体を得た。
(実施例2〜4)
シード層に50Cr−50Ta(実施例2)、80Cr−20Ta(実施例3),20Cr−80Ta(実施例4)を用いたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。
(実施例5〜8)
65Cr−35Taの膜厚を1nm(実施例5)、3nm(実施例6)、10nm(実施例7)、15nm(実施例8)成膜をおこなった以外は、実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。
(比較例1〜6)
シード層に成膜せず(比較例1)、Ni(比較例2)、81Ni−19Fe(比較例3)、90Ni−10W(比較例4)、Ta(比較例5)、Cr(比較例6)を用いたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。
これら実施例1〜8および比較例1〜6の磁気記録媒体について、膜構造および記録再生特性を評価した。膜構造の評価にはXRD解析を用い、下地膜の結晶構造、垂直磁気記録膜の配向性を調べた。記録再生特性の評価は、米国GUZIK社製リードライトアナライザRWA1632、およびスピンスタンドS1701MPを用いて測定した。
記録再生特性の評価には、書き込みをシングルポール磁極、再生部にTuMR素子を用いたヘッドを用いて、記録周波数条件を線記録密度900kFCIとして測定した。評価結果を表1に示す。
Figure 0004358208
表1から、実施例1〜4は、比較例1〜6に比較して配向が改善し、SNRが上回ることが確認できた。この結果より、下地にCrTaを用いることで、配向の改善がSNRの改善をもたらしていることがわかった。
(実施例9)
密着層を成膜しないこと、保護膜を2nmにしたこと以外は、実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。
(実施例10〜12)
シード層に50Cr−50Ta(実施例10)、80Cr−20Ta(実施例11)、20Cr−80Ta(実施例12)を用いたこと以外は実施例4に準じて磁気記録媒体を作製した。
(比較例7〜11)
シード層に、成膜せず(比較例7)、Ni(比較例8)、90Ni−10W(比較例9)、Cu(比較例10)、Pt(比較例11)を用いたこと以外は実施例9に準じて磁気記録媒体を作製した。
これら実施例9〜12および比較例7〜11の磁気記録媒体について、耐腐食性を評価した。媒体をドライブ内に高湿度(90%)高温(85℃)環境下で48h放置し、表面に析出したディフェクト数を光学表面検査機(OSA)にてカウントすることで、評価を行なった。評価結果を表2に示す。
Figure 0004358208
表2から、実施例9〜12は、比較例7〜11と比較して耐腐食性が上回ることが確認できた。この結果より、下地層にCrTa(Cr原子濃度20〜80%)合金を導入することで、腐食性を改善し、高信頼性の媒体を得られることがわかった。
以上に述べたように本発明により、CrTaを下地層に導入することで、高SNR、耐腐食性を併せ持った垂直磁気記録媒体を得ることができる。
本発明の構造の磁気記録媒体を採用することにより、磁気記録層において安定した柱状グラニュラー構造が形成され、また過酷な使用環境においても、磁気記録層の耐腐食性が向上した。これにより高密度の情報の記録再生が可能で、かつ信頼性に優れた垂直記録媒体を提供でき、コンピュータ、家庭用ビデオデッキ、オーディオ機器や車載ナビゲーションシステムなど、様々な分野に利用できる。
本発明の磁気記録媒体の一実施形態を模式的に示す図である。 磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置の例を示す図である。
符号の説明
1 非磁性基板
2 密着層
3 裏打ち層
31 第1軟磁性層
32 Ru層
33 第2軟磁性層
4 シード層
5 下地層
6 垂直磁気記録層
7 保護膜
8 潤滑膜
10 磁気記録媒体
11 媒体駆動部
12 磁気ヘッド
13 ヘッド駆動部
14 記録再生信号処理系

Claims (15)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された軟磁性裏打ち層と、
    前記軟磁性裏打ち層上に形成されたシード層と、
    前記シード層上に形成された下地層と、
    前記下地層上に形成された垂直磁気記録層と、
    前記垂直磁気記録層上に保護膜、潤滑層をこの順に備えた垂直磁気記録媒体において、
    前記シード層は、Ta、Crを主成分とする合金であり、
    前記垂直磁気記録層が、CoとPtとCrと酸化物を含む柱状グラニュラー構造であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 前記軟磁性裏打ち層が、Co、Fe、Niの少なくとも1種を含む非晶質構造の合金からなることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  3. 前記軟磁性裏打ち層が、Coを60原子%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 前記軟磁性裏打ち層が、非晶質または微細結晶構造からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  5. 前記基板と軟磁性裏打ち層の間にCr、Ti、Taの少なくとも1種を含有する合金からなる非晶質の密着層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  6. 前記シード層のCr含有量が50〜80原子%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  7. シード層が、非晶質または微細結晶構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  8. シード層の厚さが、1〜15nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  9. 前記下地層が、Ruもしくは、Ru合金からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 前記下地層の厚さが、3〜30nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  11. 前記垂直磁気記録層の柱状グラニュラー構造を構成する結晶粒子の短軸の平均径が4〜8nmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  12. 前記垂直磁気記録層の柱状グラニュラー構造を構成する結晶粒子の長軸径と短軸径の比率(長軸径/短軸径)が、1.5以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  13. 前記垂直磁気記録層の酸化物が、SiO2、Cr23、TiO、TiO2、Ta25からなる群から選ばれた何れかの一種を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  14. 前記垂直磁気記録層の厚さが、5〜20nmであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  15. 前記保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC(Diamond Like Carbon))からなることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。

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