JP4101654B2 - 身体インピーダンス測定装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の身体の生体電気インピーダンスを測定し、更には、このインピーダンスの測定値や身長、体重、年齢、性別等の身体特定化情報を利用して当該被検者の体脂肪量、筋肉量、骨量、骨密度、除脂肪量、体脂肪率、基礎代謝量等の身体組成や健康状態に関連した各種情報を推算して提示するための身体インピーダンス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肥満等の健康管理のためには専ら体重測定を行うことが一般的であったが、近年、単に体格上の肥満のみならず、肥満を測る一つの指標として、皮下脂肪や内臓脂肪などの体脂肪の量や体重に対する体脂肪の割合を示す体脂肪率が注目されている。
従来より、身体内の生体電気インピーダンス(以下、単に「インピーダンス」という)を測定し、この測定値を利用して体脂肪率等を推定するという研究は各所で行われている。その方法の一つはいわゆる4電極法と呼ばれるもので、例えば被検者の右手甲と右足甲に通電用電極を装着するとともに、その通電用電極の内側、例えば右手首と右足首とに測定用電極を装着する。そして、両通電用電極間に身体をほぼ縦貫する高周波電流を流し、そのときに測定用電極間の電位差を測定する。その電圧値と電流値とからインピーダンスを求め、その測定値を利用して体脂肪率等を推定する、という方法である。
【0003】
また最近は、より簡便に体脂肪率を測定するための装置(いわゆる体脂肪計)も開発され、広く市販されている。例えば特開平7-51242号公報に記載の装置では、両手で握持するグリップの左右それぞれに通電用電極及び測定用電極を配置し、被検者が該グリップを握持した際に、両手の指側に通電用電極が密着するとともに手首側に測定用電極が密着する構成とし、これによって取得したインピーダンスに基づいて除脂肪量、体脂肪率、体内水分量、基礎代謝量等の各種情報を推算するようにしている。また、特公平5-49050号公報に記載の装置では、被検者が測定台上に両足を載せたときに両足の裏側に電極が密着する構成とし、体重と体脂肪率とを同時に測定できるようにしている。
【0004】
上述した身体組成測定装置では、片手と片脚との間、両手の間、又は両脚の間を電流経路としてインピーダンスを測定している。片手と片脚との間を電流経路としてその間の電圧を測定する場合には、脚部や腕部と比較して断面積が数十倍大きな胸部や腹部(体幹部)が電流経路の一部となっているため、インピーダンスに対する脚部や腕部の寄与が相対的に大きく、逆に、腹部の皮下脂肪、腹腔内脂肪(内臓脂肪)の寄与が低い。そのため、腹部の皮下脂肪、腹腔内脂肪の増減が結果に現れにくく、結果として信頼性を欠くことになる。一方、両手間や両脚間を電流経路としてその間の電圧を測定する場合には、体幹部の殆どが電流経路に含まれないため、身体全体の体脂肪率等を推定する際の誤差が大きくなり易いという問題がある。
【0005】
また、従来、インピーダンス測定値から体脂肪率等を推定する際には、水中体重秤量法を推定基準とした検量線に則って作成された生体電気インピーダンス法(BIA)による推定式が用いられている。しかしながら、このような方法では、除脂肪構成組織である筋肉、骨のインピーダンスへの寄与度合の相違が考慮されていないなどの不備な点があり、推定誤差を小さくすることが困難である。
【0006】
更にまた、このような測定法を適用する前提として、人体の構成組織である骨、筋肉及び脂肪の電気的特性の違いを利用して各組織が並列に接続されている並列モデルを想定し、各組織の構成比率、及び構成組織全体と個々の組織との電気的特性(体積抵抗率)は一定であるとの条件の下に、インピーダンスから身体組成を算出している。実際、一般的な成人の集団では、統計的にこのような条件はかなり高い信頼性を有していると言われている。しかしながら、子供等の非成人や老齢者、或いは運動選手のような身体的に特殊な集団、などに於いては、構成比率及び電気的特性ともに一定しておらず、個人差によって上記条件から大きく外れる場合が多く、信頼性の高い結果を得るのが難しいのが実状である。
【0007】
一方、単に肥満の防止といった観点ではなく、身体の強化度合や老化度合の把握という観点から言うと、身体の筋肉量、筋力等の測定が非常に重要である。具体的に言えば、例えば、運動選手等、特に身体能力の向上を図っている者にとっては、筋肉量はトレーニング等の成果を測る1つの指標値であり、また、トレーニングの際の目標にも成り得る。また、事故や疾病による長期の入院により弱った身体部位を強化・回復すべくリハビリテーション治療を行っている者などに対しても、同様のことが言える。更には、今後の高齢者層の増加を考えると、例えば高齢者介護の現場等で高齢者個人毎の筋肉量や筋力、それらの左右半身に於けるバランスなどを手軽に測定し、自立生活能力を事前に判断可能とすることによってパフォーマンスの高い日常生活をおくることができるように、日常生活をおくる上で不充分な点をカバーするような生活環境の改善及びダイエット(食事及び運動メニュー)を提供するといった必要性は大きく増大するものと思われる。
【0008】
しかしながら、従来のこの種の装置は、このような情報を提供することができないか、或いは、精度の低い情報しか提供することができないものである。
勿論、大病院に備え付けられているような磁気共鳴イメージング装置やX線CTスキャンなどを用いれば、この種の正確な測定が可能であることは言うまでもない。しかし、このような装置は大掛かりで費用も掛かり、被検者の長幼を問わず、拘束時間も長く、身体的、精神的ともに負担が大きい。
【0009】
また、各個人が容易に取り扱えるほどではなくとも、例えば、老人家庭を個別に訪問する福祉担当者等が必要に応じて携帯し、訪問先の家庭で簡便に被検者の測定を行える程度に簡便な装置であれば、つまり、測定に関して或る程度の訓練を受けた者が容易に測定が行え、しかもその装置自体のコストがそれほど大きなものでなければ、非常に大きな利用価値がある。
【0010】
このような課題に鑑みて、本出願人は特願2000-362896号に於いて新規の身体組成測定方法及び装置を提案している。この身体組成測定方法及び装置によれば、身体を複数に分割した各身体部位に於ける筋肉量、骨量、脂肪量等の身体組成情報を非常に精度よく推算することができる。勿論、こうした身体組成測定装置に於いて測定精度を高めるには、外部から飛来する又は電源線等を伝播してくる各種雑音の影響をできる限り除去する等、細部に亘る配慮が要求される。このような要求は従来のような比較的精度の低い身体組成測定装置では殆ど問題にならなかったが、本出願人が先に提案したような、より高精度な測定を行い得る装置に於いては、非常に大きな問題である。
また、このような身体組成測定装置では、正常な測定時には身体の組織を損傷することがないようなごく微弱な電流を身体中に流すのみであるが、装置に何らかの異常等が発生した場合でも、被検者の身体を損傷するような過剰な電流が電極を通して被検者の身体に流れることを防止するような配慮が望まれる。
更にまた、このような身体組成測定装置は、医療施設のように比較的設置スペースに余裕がある場所で使用するのみならず、その装置の形態によっては、上述したように例えば看護・福祉担当者等が独居高齢者の自宅を訪問してその場で測定を行う等、比較的狭い設置スペースに装置を置くことも考慮する必要がある。また、或る程度、搬送の容易性も確保する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの点に鑑みて成されたものであり、その目は、被検者の感電事故等を確実に防止することができる安全性の高い身体インピーダンス測定装置を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された発明に係る身体インピーダンス測定装置は、被検者の身体に接触した通電用電極を通して該身体中に微弱電流を流し、それによって生じる電圧を身体に接触した測定用電極により計測する測定部と、身体に通した電流値及び計測された電圧値に基づいて身体のインピーダンスを算出する演算部と、を具備する身体インピーダンス測定装置に於いて、
a)商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換手段と、
b)変換された直流電力を蓄積しておき、少なくとも前記交流電力の供給がない場合に当該装置の駆動電力として供給する蓄電手段と、
c)商用交流電源と前記電力変換手段とを接続する又は該電力変換手段と前記蓄電手段とを接続する電源経路を閉成・開成自在の電源経路開閉手段と、
d) 前記測定部に含まれる測定回路部と前記通電用電極及び測定用電極とをそれぞれ接続する信号経路を閉成・開成自在の信号経路開閉手段と、
e)少なくとも身体中に通電して電圧を計測する期間中には、前記電源経路開閉手段を開成し、前記蓄電手段から当該装置の各回路に駆動電力を供給させ、身体に通電して電圧を計測する期間以外のときに、前記信号経路開閉手段を開成して前記通電用電極及び測定用電極を前記測定回路部から切り離す制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
発明に係る身体インピーダンス測定装置によれば、身体に通電する必要のない期間、例えば測定前の各種入力設定などの準備時や測定前の待機時、或いは電圧計測後のインピーダンス算出時、更にはこのように算出されたインピーダンス測定値や被検者の身長、体重などの身体特定化情報を利用して被検者の全身又は一部身体の筋肉量、脂肪量、骨量などの各種身体組成情報を推算する際などに於いては、制御手段は電源経路開閉手段を閉成し、商用交流電源が本装置に接続されるようにする。このときには、商用交流電源から供給される交流電力が電力変換手段によって適宜の電圧を有する直流電力に変換され、蓄電手段に蓄積される。また、測定部の回路や演算部などには、この直流電力が駆動電力として供給される。
【0014】
測定開始の指示に応じて通電用電極を通して身体に通電を行うとき、その通電に先立って、上記制御手段は電源経路開閉手段を開成して商用交流電源を本装置から切り離し、蓄電手段からの直流電力を本装置の駆動電力として供給させる。そして、被検者の身体への通電に応じた電圧の計測が終了し通電が停止されると、電源経路開閉手段を閉成して再び商用交流電源を本装置に接続し、当該装置の駆動電力を蓄電手段から電力変換手段により得られる直流電力に切り替える。勿論、商用交流電源のコンセントに本装置の電源プラグが差し込まれていない、或いは停電時であるといった商用交流電源からの電力の供給が不可能な状況下では、電源経路開閉手段が閉成された場合でも蓄電手段からの直流電力を使用して本装置を駆動することが可能である。また、ここで言う「身体中に通電して電圧を計測する期間」とは、純粋に身体中に通電を行っている期間のみならず、その期間を含んで前後に適宜の時間を設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
発明の構成によれば、身体インピーダンスに対応する電圧を計測する際には商用交流電源が測定部から切り離されるので、商用交流電源の電源線を通した外部からの雑音の侵入を防止でき、計測値のS/N比が向上する。そのため、高い精度でインピーダンスを算出することができる。また、回路の故障や不具合があった場合でも、身体への通電時に商用交流電流が通電用電極を通して被検者の身体に漏洩することがない。したがって、被検者の感電事故を防止し、高い安全性を確保することができる。
また発明に係る身体インピーダンス測定装置によれば、身体への非通電時には通電用電極及び測定用電極が測定回路部から切り離される。したがって、仮に通電の指示がないにも拘わらず商用交流電流が通電用電極又は測定用電極に漏れ込んでしまうような回路上の不具合が生じた場合であっても、通電用電極又は測定用電極を通して被検者の身体に商用交流電流が流れてしまうことを防止できる。これにより、更に高い安全性を確保することができる。
【0016】
またこの構成では、前記制御手段は、身体への通電を行う前に、まず電源経路開閉手段を開成して商用交流電源を本装置から切り離し、そのあとに信号経路開閉手段を閉成して通電用電極及び測定用電極を測定回路部に接続するようにし、逆に通電終了後には、まず信号経路開閉手段を開成して通電用電極及び測定用電極を測定回路部から切り離し、そのあとに電源経路開閉手段を閉成して商用交流電源を本装置に接続する構成とすることが好ましい。これにより、通電用電極及び測定用電極が測定回路部に接続されている期間中は商用交流電源が本装置から必ず切り離されているので、非常に高い安全性を保証することができる。
【0017】
なお、前記電源経路開閉手段及び/又は信号経路開閉手段としては電磁リレーを用いることができる。これによれば、確実に導通・遮断が行えるとともにコストも安価ですむ。
また、その電磁リレーは、身体への通電時に開成又は閉成のための駆動電流が不要であるような電磁リレーであることが好ましい。即ち、電源経路開閉手段は身体への通電時に開成するから、開成時に駆動電流が不要である(つまりノーマルブレイク型)ような電磁リレーが好ましく、一方、信号経路開閉手段は身体への通電時に閉成するから、閉成時に駆動電流が不要である(つまりノーマルメイク型)ような電磁リレーが好ましい。このような通電時には本装置は蓄電手段からの直流電力によって駆動されているが、この構成によればそのような蓄電手段の利用時に消費電力が小さくてすむという利点がある。
【0018】
また、発明に係る身体インピーダンス測定装置の一実施態様としては、前記演算部による演算処理は汎用のパーソナルコンピュータで所定の制御プログラムを実行することにより具現化するとともに、前記測定部は前記パーソナルコンピュータと相互に通信自在の同一の筐体を有する本体部内に配設された構成とすることができる。
この構成によれば、既存のパーソナルコンピュータに所定の制御プログラムをインストールし、このパーソナルコンピュータに本体部を接続しさえすれば、本装置を得ることができる。したがって、量産品であるパーソナルコンピュータを活用できるので、本装置を低コストで提供することができる。また、ユーザが手持ちのパーソナルコンピュータを利用すれば、更にコストが安価ですむ。なお、ここで言う「パーソナルコンピュータ」とは、ノート型、デスクトップ型等のコンピュータとしての形状を限定するものではなく、更にまた、情報端末機器等の実体としてパーソナルコンピュータと同等の機能を有するべくCPUを搭載し、外部から制御プログラムをインストールすることが可能である機器も含むものとする。
また、ノート型のパーソナルコンピュータであればバッテリを内蔵しているから、前記蓄電手段としてパーソナルコンピュータに内蔵のバッテリを用いる構成とすることができる。これにより、バッテリを特別に用意する必要がない。
【0019】
また、前記パーソナルコンピュータと本体部との間の通信手段はシリアルインタフェイスとすることができる。更に、近年、パーソナルコンピュータと周辺装置等とを接続するためにUSB(ユニバーサルシリアルバス)規格に準拠するインタフェイスが盛んに用いられているが、USB規格では、1ポート当たり最大で5V/500mAの電力が供給できるように規定されている。そこで、前記通信手段はUSB規格に準拠したインタフェイスであり、前記本体部の駆動電力を該インタフェイスを介してパーソナルコンピュータ側より受ける構成とすることができる。この構成によれば、パーソナルコンピュータと本体部との間で電源用のケーブルと信号用のケーブルとが一体化されるので、接続が容易になる。
【0020】
なお、パーソナルコンピュータで算出した測定結果などを印刷したい場合、プリンタ(印刷手段)を有線の信号線で接続すると、そのパーソナルコンピュータとプリンタとの接地が繋がり、プリンタの電源(商用交流電源)からの雑音が侵入してくるおそれがある。そこで、パーソナルコンピュータと印刷手段と間の通信は非接触で行う構成とすることが好ましい。具体的には、一般に利用されている赤外線を用いた各種通信インタフェイスが有用であるが、電波によるインタフェイスでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る身体インピーダンス測定装置を用いた身体組成測定装置の一実施例について、図面を参照して説明する。
【0022】
まず、本実施例の身体組成測定装置の構成及び動作を説明するに先立って、本身体組成測定装置に於けるインピーダンスの測定方法について説明する。図21はこの測定方法に対応する人体のインピーダンス構成の近似モデル図である。本実施例の装置では、人体を複数のセグメントに細分化し、各セグメント単位でインピーダンスを求める。また、インピーダンスに基づく身体組成情報の推定精度を向上させるために、身体組成が比較的一定である、つまり後述する円柱モデルに近似し易い部位毎にセグメントを構成するようにしている。
【0023】
具体的に説明すると、図21に示すように、頭部及び手先、足先を除く身体全体について、左右腕部(手首より先は除く)をそれぞれ肘近傍で上腕部及び前腕部に分割し、左右脚部(足首より先は除く)をそれぞれ膝近傍で大腿部及び下腿部に分割する。このように四肢を合計8個のセグメントに細分化し、それに胸部及び腹部を含む体幹部を加え、身体全体を9個のセグメントに細分化している。この9個の各セグメントにそれぞれ独立したインピーダンスを対応させ、各インピーダンスが図21に示すように接続されたモデルを想定する。ここで、左前腕部、左上腕部、右前腕部、右上腕部、左大腿部、左下腿部、右大腿部、右下腿部及び体幹部の9個のセグメントのインピーダンスはそれぞれ、ZLFA、ZLUA、ZRFA、ZRUA、ZLFL、ZLCL、ZRFL、ZRCL、及びZであるとする。
このような9個のインピーダンスを測定するために、仰臥姿勢で横たわった被検者の四肢に対し、4個所の電流供給点Pi〜Pi、及び8個所の電圧測定点Pv〜Pvを設定する。本例では、電流供給点Pi〜Piは両手の甲部の中指の付け根付近、両足の甲部の中指の付け根付近である。一方、電圧測定点Pv〜Pvは、左右の手首、左右の肘、左右の足首、左右の膝である。このうち、左右手首の電圧測定点Pv、Pvと左右足首の電圧測定点Pv、Pvとは相対的に体幹部から遠い位置にあるため、これら4個所の電圧測定点で電圧を測定することを遠位測定と呼ぶこととする。他方、左右肘の電圧測定点Pv、Pvと左右膝の電圧測定点Pv、Pvとは相対的に体幹部から近い位置にあるため、これら4個所の電圧測定点で電圧を測定することを近位測定と呼ぶこととする。
【0024】
4個所の電流供給点Pi〜Piのうちの2個所を選択してその間に高周波電流を流し、所定の2個所の電圧測定点の間の電位差を測定すると、その電位差は1個のインピーダンス又は複数の直列接続されたインピーダンスの両端に発生する電位差であると看做せる。この場合、電流の通過経路にあたっていない身体部位には電流が殆ど流れないので、その部位のインピーダンスは無視して、測定対象のインピーダンスの両端からそれぞれ引き出された単なる導電線であると看做すことができる。
【0025】
例えばいま両手の電流供給点Pi、Piの間に電流を流す場合を考える。このとき、両手首の電圧測定点Pv、Pv間(つまり遠位測定)の電位差は、ZLFA、ZLUA、ZRFA及びZRUAを直列に接続したインピーダンス、つまり左右両腕部のインピーダンスに対応した電圧となる。また、両肘の電圧測定点Pv、Pv間(つまり近位測定)の電位差は、ZLUAとZRUAとを直列に接続したインピーダンス、つまり左右両上腕部のインピーダンスに対応した電圧となる。更に、左手首の電圧測定点Pvと左足首の電圧測定点Pv (又は右足首の電圧測定点Pv)との間の電位差は、上述したように左右脚部及び体幹部を単なる導電線と看做すことによって、ZLFAとZLUAとを直列に接続したインピーダンス、つまり左腕部のインピーダンスに対応した電圧となる。更にまた、左肘の電圧測定点Pvと左膝の電圧測定点Pv(又は右膝の電圧測定点Pv)との間の電位差は、左右大腿部及び体幹部を単なる導電線と看做すことによって、ZLUAなるインピーダンス、つまり左上腕部のインピーダンスに対応した電圧となる。
【0026】
他の身体部位に於いても同様の測定が行え、このような測定結果を利用すれば、上述した9個のセグメントのインピーダンスをそれぞれ独立に精度よく求めることができる。このようにして取得されたインピーダンスの測定値に基づいて、或いはインピーダンス測定値と身体特定化情報とに基づいて身体組成情報を推定する。その推定の際には、例えば、MRIによって収集された身体組成情報を活用して作成された推定式を用いることができる。
【0027】
本実施例の身体組成測定装置では、予め、身長、体重、年齢、性別等の身体特定化情報が相違する多数のモニタをMRIにより測定し、その測定結果に基づいて信頼性の高い回帰分析定数を算出することにより、推定式自体の精度も高めている。次に、身体組成情報を推定するための推定方法の一例を説明する。
【0028】
周知のように、MRIでは、人体の任意の部位の断面画像を得ることができる。その断面画像によれば、その断面の中の筋肉、脂肪、骨といった身体組織の量やそれぞれの比率を知ることができる。そこで、図22(a)に示すように、対象とする身体部位の長手方向に所定厚さD毎に該身体部位を輪切りにした断面画像を取得し、各断面画像より脂肪、筋肉、骨といった組織の量(面積)をそれぞれ算出する。その結果、図22(b)に示すような身体部位の長さ方向に於ける各組織の面積の分布が得られるから、これを長さ方向に積分し、当該身体部位に対する各組織の量を決定する。本測定方法では、上述したように身体を9個のセグメントに分割しているため、各セグメント単位に対してこのようなMRI法を適用し易く、しかも各セグメントは円柱体に近似し易いので高い精度で各組織の量を求めることができる。
各セグメント単位毎の身体組成の推定方法に関し、除脂肪量の推定方法の一例を挙げる。
【0029】
9個の各セグメントに対して、それぞれ図23(a)に示すような円柱形状の組成モデルを適用する。即ち、各セグメントは、断面積Aの脂肪組織、断面積Aの筋肉組織、断面積Aの骨組織を有し、その長さはいずれもLであるとする。脂肪組織、筋肉組織及び骨組織の体積抵抗率をそれぞれρ、ρ及びρとすると、脂肪組織、筋肉組織及び骨組織のインピーダンスZ、Z及びZは、
=ρ・(L/A
=ρ・(L/A
=ρ・(L/A
である。セグメント単位のインピーダンスZは、電気的には、図23(b)に示すような各組織のインピーダンスZ、Z、Zの並列モデルとして近似できる。したがって、インピーダンスZ は次の(1)式となる。
1/Z=(1/Z)+(1/Z)+(1/Z) …(1)
除脂肪層の体積をVLBM、密度をDLBMとする。密度DLBMは先行研究より既知である。除脂肪量LBMは、
LBM=VLBM・DLBM
となる。ここで、
LBM =ALBM・L=(A+A)・L=ρ・(L/Z)+ρ・(L/Z) …(2)
である。(1)式を変形して(2)式に代入すると、
LBM=ρ・L・〔(1/Z)−(1/Z)〕+(ρ−ρ)・(L/Z) …(3)
となる。ここで、各組織の体積抵抗率の関係は、ρ<ρ<<ρである。
【y0030】
まず、手首、足首などの遠位局部の影響を除いて考えると(条件A)、
<<A
と看做すことができる。したがって、
(=ρ・(L/A))>Z(=ρ・(L/A))>>Z(=ρ・(L/A))>Z
これを(3)式に適用すると、
LBM=ρ・(L/Z)+(ρ−ρ)・(L/Z) …(4)
となる。ここで、
ρ・(L/Z)>>(ρ−ρ)・(L/Z
であるから、
LBM =ρ・(L/Z
である。したがって、
LBM=DLBM ×ρ・(L/Z
故に、所定の関数f(x)を用いて次の関係が成り立つ。
LBM=f(L/Z
他方、手首、足首などの遠位局部の影響を考慮する場合には(条件B)、
<A
とすることができる。したがって、
ρ・(L/Z)>(ρ−ρ)・(L/Z)=ΔV
一般に体重Wが重いほど、身体を保持するために骨組織の体積Vは増加するから、V∝ΔV∝f(W)の関係が推定できる。そこで、(4)式より、
LBM=ρ・(L/Z)+(ρ−ρ)・(L/Z
=ρ・(L/Z)+ΔV≒ρ・(L/Z)+f(W)
よって、
LBM =f(L/Z,W)
更に、各組織の加齢による変化及び、性差による相違などを考慮して多重回帰分析で推定式を作成すると、
LBM=a”+b”・(L/Z)+c”・W+d”・Ag …(5)
となる。ここで、a”、b”、c”、d”は定数(多重回帰係数)であり、性別により値が異なる。MRI法により求めた除脂肪量LBMを上記多重回帰分析の推定式に適用し、性別毎に定数a”、b”、c”、d”を求めておけばよい。
【0031】
次に、筋肉量の推定方法の一例を挙げる。上述した除脂肪量の推定と基本的に同様である。筋肉層の体積をVMM、密度をDMMとすると、筋肉量MMは、
MM=VMM・DMM
となり、筋肉層のインピーダンスZを用いれば、
MM=ρ・(L/Z
である。上記の条件Aの下では、
MM ≒LBM=a+b・(L/Z)+c・Ag …(6)
と考えられる。しかしながら、条件Bの下では、
LBM=MM+BM=a+b・(L/Z)+c・W+d・Ag …(7)
であり、L/Zの項に筋肉量MM以外の骨BMの情報も含まれてしまい、分離が不可能である。そこで、9個のセグメントの中で条件A、Bを満足するセグメントを考えてみると、
条件Aを満足するセグメント:上腕部、大腿部
条件Bを満足するセグメント:前腕部、下腿部
である。
【0032】
上腕部と前腕部、及び、大腿部と下腿部のそれぞれの筋肉量間の相関は、各個人毎に非常に高いことが知られている。そこで、上腕筋肉量情報MM、前腕筋肉量情報MMを推定する。即ち、MRI法で算出したMMUA及びMMFAの回帰分析を基に次のような推定式を抽出する。
MMFA=a+b・MMUA …(8)
同様にMRI法で算出した大腿筋肉量情報MMFLを用いて、下腿筋肉量MMCLを推定する。
MMCL=a'+b'・MMFL …(9)
よって、上腕部及び大腿部等の近位セグメントの筋肉量は条件Aを満足するため、(6)式で求めることができる。また、この(6)式で求めた上腕筋肉量及び大腿筋肉量を(8)、(9)式に適用することにより、前腕筋肉量及び下腿筋肉量を推算することができる。
更に、同様の方法を用いて、各セグメント毎の骨量を求めることもできる。
【0033】
全身の除脂肪量、筋肉量、骨量を推算する際には、上述したように各セグメント単位で身体組成を推算し、その推算値を身体全体の身体組成の推定式に組み込むのが1つの方法である。また、四肢及び体幹部のセグメント単位を個々に独立変数と看做し、多重回帰式を作成する方法とすることもできる。こうしたインピーダンス測定値と身体特定化情報を用いた身体組成情報及び健康状態に関連した各種情報の推算方法に関しては、本出願人が上記の特願2000-362896号で提案したような各種方法を利用することができるが、それ以外の方法を用いてもよい。
【0034】
次いで、本実施例の身体組成測定装置の構成及び動作を説明する。
図1は本実施例による身体組成測定装置の外観図である。本身体組成測定装置は、被検者の身体に微弱な高周波電流を流し、その電流によって身体中の所定部位に生じる電圧を検出し、その電圧値と電流値とからインピーダンスを算出し、このインピーダンス測定値と、外部から入力された身長、体重、年齢、性別等の身体特定化情報とを所定の推定式に適用することにより演算処理し、被検者の体脂肪率、除脂肪量、脂肪量、体内水分量、筋肉量、筋力、骨量、骨密度、肥満度、基礎代謝量、ADL指標値等の身体組成情報や健康状態に関連した情報を算出して提示するものである。
【0035】
図1に示すように、本身体組成測定装置は、主として各種制御やデータ処理を行うためのノート型のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と称す)1と、主としてインピーダンスの測定を実行する本体部2とから成り、その本体部2の背面から測定に必要な電極群がケーブル4を介して取り出されている。商用交流電源の電源ケーブルはAC−DCアダプタ3を介して本体部2に接続されている。
電極群は、電流供給用の電極(以下「通電用電極」と称す)10と電圧測定用の電極(以下「測定用電極」と称す)11とを含み、それぞれ1個ずつを1組として低誘導性のケーブル4を介して本体部2に接続されている。通電用電極10及び測定用電極11はともに、被検者の皮膚面に確実に且つ安定的に装着が可能であって、電極自体のインピーダンス(接触抵抗)を小さくするように、面状の貼着式電極となっている。
【0036】
この身体組成測定装置によるインピーダンス測定では、4個の通電用電極10、及び4個の測定用電極11という2個一対の電極構成を採用している。即ち、後述するように8個所の電圧測定点の測定を行う場合には、4個所の測定を終了する毎に検査者が被検者の身体上で測定用電極11を貼り替える方式としている。これは、電極の個数が多くなると装置のコストアップになるほか、ケーブルが絡まったりして測定準備が煩雑になるとともに被検者への装着ミスも起こり易いからである。勿論、このような点が問題にならなければ、8個の測定用電極を始めから用意する構成としてもよい。
【0037】
図2は本身体組成測定装置の電気構成図である。4個の通電用電極10a、10b、10c、10dは信号線開閉リレー201を介して通電用電極切替部202に接続され、ここで電流源203に接続される2個の電極が選択されるようになっている。電流源203は周波数fの定電流高周波信号を発生するものであって、周波数fは通常10kHz〜100kHzの範囲で設定される。一方、4個の測定用電極11a、11b、11c、11dは同様に信号線開閉リレー201を介して測定用電極切替部204に接続され、ここで2個の電極が選択されてその電極で得られた信号がそれぞれ独立したバンドパスフィルタ(BPF)205に入力される。
【0038】
このBPF205により周波数f以外の信号成分が除去され、そのあと検波部206にて検波・整流が行われて周波数fの信号成分が取り出される。並行して検波された信号は差動増幅器207により差動増幅され、更に増幅器208により増幅される。そして、この信号をアナログ−デジタル(A/D)変換器209によりデジタル信号に変換し、ホトカプラ210を介してCPU211に入力している。CPU211はUSB端子214と接続されており、USBインタフェイスのためのデータ変換・逆変換を行う機能を備えている。CPU211はUSB端子214に対してA/D変換器209の出力信号に対応するデータを送信するのみならず、USB端子214を介して受け取った制御信号に基づいて、ホトカプラ210を介して電流源203の動作を制御するとともに、信号線開閉リレー201及び後記電源線開閉リレー213の動作を制御する。このようにホトカプラ210でCPU211とアナログ測定回路系とを光学的に接続することにより、CPU211で発生する又はパソコン1から侵入してくるデジタル的なノイズがアナログ測定回路系に入ることを防止することができる。
【0039】
商用交流電源5に接続されたAC−DCアダプタ3の直流電力出力は本体部2に入力され、上記電源線開閉リレー213を介して電源出力端子215に接続されている。パソコン1に電力を供給するための電源ケーブルは電源出力端子215に接続されるから、AC−DCアダプタ3の直流電力出力は電源線開閉リレー213を介挿していることを除けば、本体部2を単に通過してパソコン1に接続されている。
【0040】
パソコン1は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、バッテリ102等を内蔵したパソコン本体101の周囲に、キーボートやマウス等のポインティングデバイスである操作部105、液晶ディスプレイである表示部106、フロッピーディスクドライブ(FD)装置等の補助記憶装置6などを備え、更にプリンタ8との接続のために赤外線インタフェイス(IF)104を有している。これは、ケーブルを介する電気的な接続を行わないことによってプリンタ8側からの電源系の雑音の影響を排除するとともに、部品の故障等が発生した場合でもプリンタ8から過大な電流が流れ込むことを防止して、被検者の身体に異常な電流が流れるような事故を確実に回避するためである。なお、プリンタ8自体にもバッテリ81が搭載されており、このプリンタ8を含む装置全体がバッテリ駆動可能であるようにも配慮されている。
【0041】
また、パソコン1は標準的なUSB端子103を備えている。周知のようにUSBインタフェイスはシリアルデータとともに直流電力を供給可能な線を有しており、ここでは、パソコン1のUSB端子103は5V/最大500mAの電力を外部に供給する能力を有している。USBケーブルを介してパソコン1と接続される本体部2は、パソコン1から上述した直流電力を受け取り、DC−DCコンバータ212により各回路へと分配する。したがって、本体部2に含まれる全ての電気回路は最大でも5V/500mAの電力で動作可能なように設計されている。また、DC−DCコンバータ212を通すことにより、アナログ系の測定回路に電源を通じたノイズが混入するのを防止している。
【0042】
パソコン1のハードディスクドライブには、インピーダンスの測定及びその測定値に基づいて前述したような各種身体組成情報や健康状態に関連した各種情報を推定するための演算処理を行うための演算プログラムと、これら測定を実行するための制御プログラムとが格納されている。そして、操作部105を介して外部から与えられる指示に従って上記プログラムを実行することによって、後述のようなインピーダンスの測定及びそれに引き続く各種演算処理や表示処理などを具現化している。
【0043】
本身体組成測定装置の特徴の1つは、通電用電極10及び測定用電極11に接続される各ケーブル4つまり各信号経路に対し、開閉自在の信号線開閉リレー201を設けている点、及びAC−DCアダプタ3を介して商用交流電源5に接続される電源供給経路を開閉自在の電源線開閉リレー213を設けている点にある。信号線開閉リレー201は、被検者の身体のインピーダンスを測定する期間以外に全ての電極10、11を本体部2から実質的に切り離すことによって、回路系の故障や不具合が生じた場合でも、電極10、11を経て被検者の身体に不所望の電流が流れることを防止することを目的としている。つまり、被検者の安全性を確保するためのものである。
一方、電源線開閉リレー213は、上述のようなインピーダンスの測定時に、商用交流電源5をこの本体部2及びパソコン1から実質的に切り離すことによって、商用交流電源5を介して外部から侵入するノイズを遮断することを目的の1つとしている。つまり、インピーダンス測定時のノイズを抑制して、より精度よく測定を行うためのものである。更に、インピーダンスの測定時、つまり測定回路系が電極10、11を介して身体に接続される際に商用交流電源5を切り離すことによって、回路系の故障や不具合が生じた場合でも、少なくとも100Vの交流電流が身体に漏れ出すことを防止することを目的としている。即ち、上記信号線開閉リレー201とともに2重の安全対策を果たすものである。測定時の具体的な動作については後述する。
【0044】
本身体組成測定装置では、上述したような身体の各部に電極を装着する必要があるため、本体部2から引き出されたケーブル4はかなり長くならざるをえない。一般に、このように長く引き出されたケーブルはアンテナとして作用し、外部からの誘導雑音を拾う可能性がある。精度のよい測定を行うには、このような誘導雑音をできるだけ抑制することが必要となる。また、ケーブル4(厳密に言えば信号経路)はそれ自体が寄生容量等の静電容量を有しており、このような容量を生体電気インピーダンスと混同してしまうと、測定の精度を劣化させる一因になる。このようなことから、本実施例の装置では、誘導雑音の抑制及びケーブル自体の容量の影響の排除をするために、特に配慮された構造を採用している。
【0045】
図3(a)は本装置で使用するケーブル4の外観図、図3(b)は図3(a)中のa−a’矢示切断線での断面図である。図3(a)に示すように、このケーブル4にあっては、2芯シールドケーブル42の一端に本体部2と接続するためのストレートプラグ41が取り付けられ、他端に2本の芯線とそれぞれ導通する単線ケーブル44に分岐する分岐モールド43が取り付けられている。この単線ケーブル44の末端には電極取付用のプラグ45が取り付けられている。この単線ケーブル44とプラグ45との取付けは図3(c)に示す断面構造を有しており、単線ケーブル44の芯線441はプラグ45の棒状の導体部452と半田付け(符号46の個所)で固着されている。この固着部分はプラグ45の樹脂製のハウジング451に埋設されているが、単線ケーブル44が回転して断線に至るのを防止するため、ハウジング451と単線ケーブル44との境界を挟んで熱収縮チューブ47による固着が成されている。この固着は熱収縮チューブ47の代わりに、接着剤によるモールドとしてもよい。
【0046】
図3(b)に示すように、2芯シールド線は、第1、第2芯線を形成する導体421の周囲を取り巻く内部シース423との間隙に、75〜80%程度の発泡率を有する発泡ポリエチレン樹脂から成る絶縁体422を充填した構造を有する。こうした構造体を2本並べ、更に2本の介在糸424を入れて和紙テープ425で被覆する。その外側に円筒状に横巻シールド426を設け、その外側を外部シース427で覆う。本装置に於いては、全体のケーブル長は約200cm、2芯シールド線のケーブル長は約160cmであって、これは4本ともに同一である。
【0047】
このような構造によって、ケーブルの静電容量を抑えるとともに、複数のケーブル間のばらつきも抑え、更に、屈曲時、引張によるストレス付加時の容量変化も抑えている。具体的には、次のような諸特性を実現している。
・ケーブル容量(周波数50kHzに於いて):100pF以下
・屈曲時の容量変化:±10pF以下(300gの引張荷重を付加した状態での曲げ角度±60°の試験をケーブル途中の3個所で各20回実行したときの、その前後の容量変化)
・引張ストレス印加前後の容量変化:±10pF以下(500g引張荷重を付加した状態で60秒間放置した前後の容量変化)
【0048】
また、四肢のうちの同一上肢部又は下肢部に装着する通電用電極と測定用電極とを一対とし、この一対の電極に接続される信号経路は同一ケーブルの第1芯線、第2芯線を利用している。例えば、或るケーブルの第1芯線を右手用の通電用電極に至る信号経路、第2芯線を右手用の測定用電極に至る信号経路として利用する構成としている。このため、4個の測定用電極11a〜11dに至る信号経路はそれぞれ異なるケーブルのシールド内に収容される。それによって、電圧測定時の両測定用電極間の静電容量を小さくすることができるとともに、電圧測定時の雑音の影響を抑制している。
更にまた、4本のケーブルの各シールド線は本体部2の入口付近で互いに短絡され、その接地電位がほぼ同一になるようにしている。それによって、測定用電極切替部204を切り替えて2個の測定用電極及びその測定用電極に至るケーブル4が後段の測定回路に接続されたときに、被検者の身体に並列に加わるケーブル4の全静電容量をほぼ一定に維持することができる。
なお本例では、絶縁体422として75〜80%程度の発泡率を有する発泡ポリエチレン樹脂を用いているが、これは単に一例である。
【0049】
一般に、2芯ケーブルの静電容量Cは次式で求まる。
C=12.08×ε/Log10(1.2×B/K1×D)〔pF/m〕
B:導体間隔〔mm〕、K1:内部導体実効径係数、D:導体外径〔mm〕
即ち、静電容量Cは実効比誘電率εに比例する。ここで、
ε=ε 1−V
ε:誘電体の比誘電率、V:発泡率(空気の占有率)
であるから、比誘電率の低い材料で、発泡率を高くするほど静電容量Cを小さくすることができる。但し、発泡率を高くするほど耐ストレス性等が劣化するので、このような各種条件を考慮して材料と発泡率を決めればよい。
【0050】
本実施例の身体組成測定装置では、上述したような配慮によってケーブル4自体の静電容量を抑えるとともに、誘導雑音の侵入も軽減しているが、ケーブル4自体の静電容量はゼロにはならない。また、高精度な測定を行う場合には、ケーブル4のみならず、測定用電極切替部204を構成するアナログスイッチの静電容量等も無視できない。そこで、本実施例の身体組成測定装置では、インピーダンスを算出する演算の過程で、上述したようなケーブル4やアナログスイッチの静電容量の影響を除去するような補正処理を行うようにしている。
【0051】
次に、この静電容量の補正処理方法について説明する。ケーブル(上述したように実際にはケーブル以外にアナログスイッチの容量等も存在するが、ここではケーブルの容量と総称することとする)を考慮した場合のモデルとして、図24に示すモデルを想定する。このモデルによれば、測定によって得られるインピーダンスZは生体電気インピーダンスZにケーブル容量Cが並列に接続されたものとなる。
このようなモデルに於いて、Z、Z、R、C、Cの関係は次のようになる。
【数1】
Figure 0004101654
ここで、C+C=Cとおくと、上記(12)式は次の(13)式と書き換えることができる。
【数2】
Figure 0004101654
(11)式より、次の(14)式が導出される。
【数3】
Figure 0004101654
また(12)式より、
【数4】
Figure 0004101654
これを変形すると、次の(15)式が導出される。
【数5】
Figure 0004101654
(15)式を(14)式に代入して整理すると、
【数6】
Figure 0004101654
となるから、Zは次の(16)式になる。
【数7】
Figure 0004101654
即ち、この(16)式が、被検者を測定した結果得られたインピーダンスの測定値Zから、ケーブル容量Cの影響を除去して生体電気インピーダンスZを算出する補正式である。ここで、Cの値としては、実験的に予め測定したものの平均値を採用し、身体部位には無関係に一定であると看做している。また、ケーブル容量Cは、例えば既知の値を持つコンデンサ及び抵抗をケーブル4の末端に接続してインピーダンスメータ等により予め測定しておくことができる。
【0052】
なお、上記補正式では、実際にはケーブル4の持つ静電容量のみならず、図24に於いて身体側から装置を見た静電容量、つまり2個の測定用電極11間の装置側の入力容量全体が補正されることになる。即ち、この容量には、ケーブル容量のほかに、アナログスイッチ(図2に於ける測定用電極切替部204)の入力静電容量、その後段のBPF205を構成する例えば演算増幅器の入力静電容量なども含んでいる。なお、ケーブル4には容量成分のみならず抵抗成分も存在するものの、インピーダンスに占める割合は低く、実際上、無視しても差し支えない程度であるが、勿論、このような抵抗成分を考慮して補正式を作成するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施例の身体組成測定装置の他の特徴の1つは、その外観上の構造にある。図4は本身体組成測定装置の本体部2の上面平面図、図5は本体部の正面平面図、図6は側面平面図である。また、図7は本体部2上にパソコン1を載置した通常の使用状態での正面図である。
【0054】
本実施例の身体組成測定装置の外観的な特徴として、本体部2の箱形状の筐体21は、その天面に横方向に延在する凹部22を有している。この凹部22は前後方向の幅W1がちょうどパソコン1に用意されている外付け用のFD装置6の筐体の幅よりも若干大きく、また凹部22の深さW2はそのFD装置6の高さよりも若干大きく形成されている。これにより、FD装置6は図6に示すように凹部22の内部にすっぽりと収まるようになっている。また、凹部22内の底面にはFD装置6の後方位置を規制するためのストッパ23が突設されており、FD装置6の後面がストッパ23に当接するように収納すると、FD装置6の前面は本体部2の筐体21側面と略面一になる。更に、凹部22内の底面には、FD装置6とパソコン1とを接続するためのケーブル7を固定するための固定具24を備えている。この固定具24は、ケーブルの両端付近をそれぞれ固定するためのものであって、図4に示すように、ケーブル7を凹部22の内に収容した状態で固定することができる。また、筐体21の天面の前縁部及び後縁部にはそれぞれストッパ25が突設されており、天面上にパソコン1を載置したときに前後方向の位置決めを行うことができる。
上述したように、FD装置6は凹部22内にすっぽりと収まり筐体21の天面よりも上には突出しないため、天面上に安定してパソコン1を載置することができる。更に、FD装置6を使用したい場合には、ケーブル7の一端を固定している固定具24からケーブル7を取り外し、図7に示すようにそのままパソコン1の端子へ接続することが可能である。FD装置6はストッパ23により後方位置が規制されているので、例えば、フロッピーディスクの出し入れを行う際にFD装置6の前面を指で押しても後退することがない。
このように本実施例の身体組成測定装置では、本体部2の筐体の一部にパソコン1の外付け用FD装置を収納することができ、且つ使用時にもその状態で使用することができるので、場所をとらず、操作性も良好である。また、パソコン1やFD装置6が本体部2の上に積載されて一体化しており、特に前後方向にはストッパ25によってパソコン1の滑動も規制されているので、搬送の際にも本体部2のみを持って運ぶことができる。
【0055】
なお、図2の電気構成では、差動増幅器207の前にBPF205及び検波部206を配置しているため、2系統の入力経路にこれら回路をそれぞれ設ける必要があるが、図25に示すように、差動増幅器207の後段にBPF205及び検波部206を配置する構成としてもよい。この図25の構成では、差動増幅器207によりコモンモードノイズが相殺されるのでノイズの影響を受けにくいという利点がある。一方、図2の構成では、ケーブルや回路の浮遊容量の影響を受けにくく、測定用電極を介してBPF205の入力に接続される2つの負荷がアンバランスになった場合でも位相回転が少なくてすむので、測定誤差が小さくできるという利点がある。
【0056】
次に、本身体組成測定装置に於ける実際の測定動作の一例について説明する。図8及び図9は、本身体組成測定装置に於いて、上述した9個のセグメント毎のインピーダンス測定及びその測定値を用いた身体組成情報を推算する際の測定動作を示すフローチャートである。
【0057】
検査者等がパソコン1の電源スイッチを投入すると(ステップS1)、パソコン1が起動して、各種の初期化処理、バッテリ102の残量検知処理、測定回路系の自己検査処理などを含む測定準備処理を実行する(ステップS2)。測定準備処理が終了すると、表示部106に図10に示すような初期画面Aを表示する(ステップS3)。
初期画面Aには、電池を模したバッテリマーク画像を含むバッテリ残量表示部A1と、バッテリ残量状態を文字で知らせるメッセージ表示部A3とを含み、バッテリ残量をバッテリマーク画像の塗りつぶし部分の面積や色、数値表示等で知らせるとともに、残量が不足している場合には充電促進メッセージ等を表示する。また、初期画面Aには、測定回路系の検査結果を知らせる測定回路検査結果表示部A2と、その結果を文字で知らせるメッセージ表示部A4とを含み、測定回路系検査の異常の有無を知らせるとともに、異常がある場合の異常個所を知らせる。
【0058】
バッテリ102の残量が所定以上(例えば10%以上)であって且つ測定回路系が正常でないと、以降の測定処理には進めない。例えばバッテリ102の残量が不足している場合にはAC−DCアダプタ3の電源プラグが商用交流電源5のコンセントに挿入されることによって通電が開始されれば、一方、測定回路系に異常がある場合には異常個所が修正されれば、ステップS4以降の処理に進むことが可能となる。
バッテリ102の残量が所定以上あって且つ測定回路系が正常である場合には、初期画面A上で、検査者がファンクションボタンA5をマウス等のポインティングデバイスにより選択操作するか、又は同様の機能を有する操作をキーボード上で行うと(ステップS4)、身体組成測定モードへと移行する。すると、表示部106の画面は身体組成測定画面Bに切り替わる(ステップS5)。
【0059】
図11は身体組成測定画面Bの概略構成図、図12〜図20はその画面B中の主要部の詳細図である。
身体組成測定を行う場合、推奨する測定条件としては、被検者がベッド等に横たわった仰臥姿勢とする。このとき、体内の体液バランス変動の影響を排除するには、この姿勢で5分程度の安静時間を確保することが好ましい。また、四肢はできる限り真っ直ぐに伸ばし、両腕部は体幹部に接触しないように、また両脚部も互いに接触しないように、30°程度の角度で開いた姿勢とするとよい。
【0060】
表示部106に身体組成測定画面Bが表示された状態で、検査者がファンクションボタンB12を選択指示すると、図12に示す身体情報表示部B1に於いて、被検者の名前及び識別子(ID)と、性別、年齢、身長及び体重といった身体特定化情報とを入力表示するためのテキストボックスに入力すべき項目がカーソルの点滅によって指示される。検査者はこれを見ながらキー入力を行い、被検者の名前や識別番号のほか、身体特定化情報を入力する(ステップS6)。
上記身長の項目が入力されると、所定の計算式に基づいて左右の四肢長が推算され、その結果が図14に示す四肢長表示部B3のテキストボックス内に表示される。例えば実際に被検者の四肢長を計測した結果を入力したい場合には、ファンクションボタンB14を選択指示すると、四肢長表示部B3に於いてテキストボックスに入力すべき項目がカーソルの点滅によって指示されるから、そこで数値を変更すればよい(ステップS7)。このような変更が為されない場合には、上記計算値が四肢長サイズとして後述の演算処理に利用される。
【0061】
また、検査者は、測定部位選択ファンクションボタンB13を選択指示し、図13に示す測定部位表示部B2のテキストボックスに於いて「遠位」「近位」又は「遠位→近位」測定のいずれかを選択する。ここでは、先に述べたような9個のセグメントの測定を行うので「遠位→近位」測定を選択するが、「遠位」又は「近位」のみを選択することもできる。
全ての身体特定化情報が入力された場合、入力完了と判定し(ステップS9で「Y」)、図15に示す電極貼着位置表示部B5に於いて遠位測定の電極装着位置を指示するべく表示を行う(ステップS10)。即ち、電極貼着位置表示部B5には、頭部や手先、足先を除く身体を9個のセグメントに分割した身体模式図が表示されており、それに重畳して、通電用電極10の装着位置が記号”■”で、測定用電極11の装着位置が記号”◎”で描出される。遠位測定の待機時には、図15(a)に示すように、両手首、両足首に測定用電極装着位置を示す記号”◎”が、手足の甲部に通電用電極装着位置を示す記号”■”が表示される。したがって、検査者は、この表示を参照して通電用電極10及び測定用電極11を被検者の身体に装着する。
【0062】
こうして電極10、11を装着し終えたら、検査者はスタートファンクションボタンB15を操作して測定開始を指示する(ステップS11)。この操作に応じて測定が自動的に開始されるわけであるが、まず、測定に先立って、電源線開閉リレー213を開成し(ステップS12)、それに少し遅れて信号線開閉リレー201を閉成する(ステップS13)。これによって、まず、本体部2から商用交流電源5が切り離され、そののちに電極10、11が本体部2に接続される。したがって、万が一何らかの不具合があっても、商用交流電源5からの100Vの交流電流が被検者の身体に漏出することはない。また、以降の測定期間中には商用交流電源5からのノイズの混入も防止できる。
そのあと、通電用電極切替部202、測定用電極切替部204により、測定部位が、右腕部、左腕部、右脚部、左脚部、体幹部と順次移行するように、通電用電極10及び測定用電極11を適宜切り替える。そして、選択された2個の通電用電極10間に微弱な高周波電流を流し、その電流によって生じた電位を2個の測定用電極11で順次測定する。なお、電極貼着位置表示部B5の身体模式図に於いては、測定前に測定対象である全セグメントがそれぞれ灰色で点滅表示され、測定が終了したセグメント毎に緑色の点灯表示に変わるようになっている。これによって、その表示の状態を見るだけで測定の進行状況を知ることができる。
【0063】
1個所の部位のインピーダンスを測定する際には、インピーダンスが或る程度安定した状態になるまで待って、そのあと、その測定値をメモリに取り込むようにしている。しかしながら、例えば測定値がいつまでも安定せず、規定の時間を経過したにも拘わらず1個の部位の測定も終了していない場合には測定不能と判断する(ステップS15)。一方、5個全ての測定部位の測定が終了するか、又は規定の時間が経過したときに1個の部位でも測定が終了していれば、測定終了と判断する(ステップS17)。測定不能であると判断した場合には、測定に何らかの異常があると考えられるから、身体組成測定画面B中のメッセージ表示部B112に測定不可能、異常発生といったエラーを意味するメッセージを表示し(ステップS16)測定を終了する。
【0064】
上述したステップS15の処理により、測定状態が不安定であるために異常に測定が長引くことを回避することができる。即ち、或る程度、測定時間が経過して既に幾つかの部位(実際には1個でもよい)に対する測定が終了している場合には、その測定済みのデータを利用して未測定の部位の値を推定し、インピーダンスの測定自体は終了させる。これによって、被検者に無理な負担を強いることがない。
測定が終了すると、信号線開閉リレー201を開成し(ステップS18)、電極10、11を本体部2から切り離す。それに遅れて電源線開閉リレー213を閉成し(ステップS19)、商用交流電源5に接続されたAD−DCアダプタ3を本体部2に接続する。したがって、電極10、11は純粋にインピーダンスの測定を行う期間、つまり被検者の身体に電流を流し、その電流によって生じる電圧を計測する期間を含むごく短期間だけ測定回路系に接続されている。また、そうしたインピーダンス測定期間には、商用交流電源5は切り離されて、本体部2及びパソコン1はバッテリ102から供給される直流電力で動作する。
【0065】
そのあと、測定によって得られた5個の測定部位(遠位測定では、右腕部、左腕部、右脚部、左脚部及び体幹部)に対するインピーダンスと、身体特定化情報とを所定の推算式又はこれに相当する変換テーブル等に適用して演算処理し、身体組成、四肢筋肉量、ADL指標値、体型判定などを算出する(ステップS20)。このときの演算処理には、上述したようなMRI法によって得られた身体組成情報を利用した推算式を利用できるが、推定方法は必ずしもこれに限るものではない。なお、遠位測定のみが終了した段階では、腕部、脚部をそれぞれ上腕部及び前腕部、大腿部及び下腿部に分割した精密な推算は行えないが、身体特定化情報等を利用して各セグメントに対応する概略推定値を算出している。
上述した演算処理の結果得られた数値は、身体組成測定画面B中の測定結果表示部B6、測定値表示部B7、ADL指標値表示部B8、筋肉量表示部B9及び体型表示部B10に、次のように表示される(ステップS21)。
【0066】
即ち、各セグメントのインピーダンスは、図17に示す測定値表示部B7の左欄に表示される。また、全身の身体組成を示す情報は、図16に示す測定結果表示部B6に表示される。ここでは、脂肪、筋肉、骨及びその他の比率、脂肪及び除脂肪の比率、脂肪、水分及びその他の比率、という3種類の身体組成比率が人体を模した1つの円グラフ内で示され、そのほかに、体重や身長等の身体特定化情報から算出される体格指数(BMI)と、肥満度、基礎代謝量の推算値も表示される。
【0067】
また、図19に示す筋肉量表示部B9には、左右の上腕部、前腕部、腕部、大腿部、下腿部、脚部毎に筋肉量の推算値が棒グラフで表示され、左右のバランス度を示す左右の筋肉量比率や、腕部と脚部との筋肉量比率も同時に表示される。これにより、左右の筋肉の付き方のバランスが視覚的に容易に理解でき、例えば利き腕、利き足が左右のいずれであるのかがわかるほか、不自然に左右のバランスが悪いときには健康状態に何らかの問題がある等の簡易的な判断に供することができる。
【0068】
更には、図18に示すADL指標値表示部B8には、日常生活動作の能力を測るADL指標値として、左右それぞれの大腿四頭筋量、大腿四頭筋最大筋力、体重支持指数の推算値が表示される。図20に示す体型表示部B10には、身体特定化情報として入力された体重W及び身長Hを基に算出される体格指数(BMI:W/H)に応じて、外観上の体型が痩せ、標準又は堅太のいずれかに区分されて表示されるとともに、更に、測定結果である体脂肪率に基づいて、脂肪の付き方の状態が薄脂、並脂又は脂満のいずれかに区分されて表示される。なお、遠位及び近位全ての測定が終了していなくとも、このように遠位測定が終了した時点でもって、その時点で推定可能な情報を表示することができる。
遠位測定が終了すると、電極貼着位置表示部B5の身体模式図に於いて測定用電極11の装着位置を図15(b)に示すような近位位置に変更する(ステップS22)。具体的には、左右手首及び足首に表示されていた表示記号を左右肘及び膝に変更する。検査者はこの表示の変更を確認し、4個の測定用電極11を被検者の左右肘及び膝に貼着し直す。そして、再度スタートファンクションボタンB15を操作して測定開始を指示する(ステップS23)。
【0069】
そのあと、上記遠位測定に於けるステップS12〜S19に相当するステップS24〜31の処理によって、四肢及び体幹部の近位のインピーダンス測定が実行される。このときには、遠位測定の結果と、近位測定の結果とが揃うので、9個のセグメントに対応するインピーダンスの測定値が得られる。したがって、ステップS32の演算処理にあっては、身体組成等の各情報がその前の遠位測定終了時のときよりも高い精度で推算される。そして、このような算出された数値を、身体組成測定画面B中の測定値表示部B7、測定結果表示部B6、ADL指標値表示部B8、筋肉量表示部B9及び体型表示部B10に既に表示されている値に替えて表示し(ステップS33)、測定を終了する。
このように、本身体組成測定装置に於いては、比較的短時間の間に身体組成や健康状態を反映した各種情報を精度よく求めることができる。したがって、被検者にとっては身体的、精神的な負担も軽く、検査者にとっては電極を途中で貼り替えるという作業は必要であるものの画面に表示された指示通りに装着位置を定めればよいので、困難で煩雑な操作や作業を伴わず、気軽に測定を行うことができる。しかも、測定の結果として得られる情報は、単に体脂肪量や筋肉量といった身体組成の情報に留まらず、ADL指標値、筋肉量の左右半身、上下半身のバランスといった健康状態を反映した情報が得られ、健康管理、運動トレーニング、リハビリテーション等の様々な用途に有効に活用することができる。
【0070】
なお、上記実施例は本発明の単に一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種の形態の変形や修正を行っても、本発明に含まれることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例による身体組成測定装置の外観図。
【図2】本実施例による身体組成測定装置の要部の電気構成図。
【図3】本装置で使用するケーブルの外観図(a)、a−a’矢示切断線での断面図(b)、及び単線ケーブルとプラグとの取付け個所の断面構造を示す図(c)。
【図4】本身体組成測定装置の本体部の上面平面図。
【図5】本体部の正面平面図。
【図6】本体部の側面平面図。
【図7】本体部上にパソコンを載置した通常の使用状態での正面図。
【図8】本実施例による身体組成測定装置に於ける測定動作の流れを示すフローチャート。
【図9】本実施例による身体組成測定装置に於ける測定動作の流れを示すフローチャート。
【図10】初期画面の概略図。
【図11】身体組成測定画面の概略図。
【図12】図11の画面中の一部詳細図。
【図13】図11の画面中の一部詳細図。
【図14】図11の画面中の一部詳細図。
【図15】図11の画面中の一部詳細図。
【図16】図11の画面中の一部詳細図。
【図17】図11の画面中の一部詳細図。
【図18】図11の画面中の一部詳細図。
【図19】図11の画面中の一部詳細図。
【図20】図11の画面中の一部詳細図。
【図21】本実施例による身体組成測定装置で用いられる測定方法に対応する人体のインピーダンスのモデル図。
【図22】MRIによる断層画像の取得の状態を示す模式図(a)及び切り分けた各部分毎の組織量の分布の一例を示す図(b)。
【図23】身体を分割した各セグメントの組成モデルを示す図(a)及び各組織のインピーダンスの等価回路モデルを示す図(b)。
【図24】ケーブルの静電容量を考慮した測定系のモデルを示す図。
【図25】本発明の他の実施例による身体組成測定装置の要部の電気構成図。

Claims (9)

  1. 被検者の身体に接触した通電用電極を通して該身体中に微弱電流を流し、それによって生じる電圧を身体に接触した測定用電極により計測する測定部と、身体に通した電流値及び計測された電圧値に基づいて身体のインピーダンスを算出する演算部と、を具備する身体インピーダンス測定装置に於いて、
    a)商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換手段と、
    b)変換された直流電力を蓄積しておき、少なくとも前記交流電力の供給がない場合に当該装置の駆動電力として供給する蓄電手段と、
    c)商用交流電源と前記電力変換手段とを接続する又は該電力変換手段と前記蓄電手段とを接続する電源経路を閉成・開成自在の電源経路開閉手段と、
    d) 前記測定部に含まれる測定回路部と前記通電用電極及び測定用電極とをそれぞれ接続する信号経路を閉成・開成自在の信号経路開閉手段と、
    e)少なくとも身体中に通電して電圧を計測する期間中には、前記電源経路開閉手段を開成し、前記蓄電手段から当該装置の各回路に駆動電力を供給させ、身体に通電して電圧を計測する期間以外のときに、前記信号経路開閉手段を開成して前記通電用電極及び測定用電極を前記測定回路部から切り離す制御手段と、
    を備えることを特徴とする身体インピーダンス測定装置。
  2. 前記制御手段は、身体への通電を行う前に、まず前記電源経路開閉手段を開成して商用交流電源を本装置から切り離し、そのあとに前記信号経路開閉手段を閉成して前記通電用電極及び前記測定用電極を前記測定回路部に接続するようにし、逆に通電終了後には、まず前記信号経路開閉手段を開成して前記通電用電極及び前記測定用電極を前記測定回路部から切り離し、そのあとに前記電源経路開閉手段を閉成して商用交流電源を本装置に接続することを特徴とする請求項に記載の身体インピーダンス測定装置。
  3. 前記電源経路開閉手段及び/又は前記信号経路開閉手段は電磁リレーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の身体インピーダンス測定装置。
  4. 前記電磁リレーは、身体への通電時に開成又は閉成のための駆動電流が不要であるような電磁リレーであることを特徴とする請求項に記載の身体インピーダンス測定装置。
  5. 前記演算部による演算処理は汎用のパーソナルコンピュータで所定の制御プログラムを実行することにより具現化するとともに、前記測定部は前記パーソナルコンピュータと相互に通信自在の同一の筐体を有する本体部内に配設されたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の身体インピーダンス測定装置。
  6. 前記蓄電手段は前記パーソナルコンピュータに内蔵のバッテリであることを特徴とする請求項に記載の身体インピーダンス測定装置。
  7. 前記パーソナルコンピュータと本体部との間の通信手段はシリアルインタフェイスであることを特徴とする請求項5又は6に記載の身体インピーダンス測定装置。
  8. 前記通信手段はUSB規格に準拠したインタフェイスであり、前記本体部の駆動電力を該インタフェイスを介してパーソナルコンピュータ側より受けることを特徴とする請求項に記載の身体インピーダンス測定装置。
  9. 少なくとも測定結果を印刷する印刷手段を更に備え、前記パーソナルコンピュータと該印刷手段との間の通信を無線方式で行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の身体インピーダンス測定装置。
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