JP4101424B2 - 反射体制御方式の高速増殖炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は中性子反射体を上下方向に移動させて炉心からの中性子の漏洩を調整して炉心の反応度を制御する反射体制御方式の液体金属冷却型高速増殖炉(以下、高速炉と記す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5及び図6により従来の反射体制御方式の高速炉の概要を説明する。
図5はこの種の高速炉の概略的縦断面図で、図6は図5におけるA−A矢視方向横断面図である。ただし、図6中には図5中に記載してないガードベッセル18を記載している。
【0003】
図5及び図6において、符号1は原子炉容器、2は原子炉容器1内の中央部に設置された炉心で、炉心2は外側が炉心バレル3により囲繞され内部に多数体の燃料集合体と、その中央部に装荷される中性子吸収用チャンネルとからなっている。炉心バレル3の外側には所定の隙間を有して隔壁4が配置され、炉心バレル3と隔壁4との隙間には中性子反射体5と、この中性子反射体5を駆動する中性子反射体駆動装置6が設置されている。
【0004】
炉心バレル3と隔壁4との隙間は炉心2の運転に使用する中性子反射体5の移動領域であるとともに、冷却材の流路ともなっている。隔壁4と原子炉容器1との間には多数の中性子しゃへい体7が配置されている。
【0005】
炉心2,炉心バレル3,中性子反射体5,隔壁4及び中性子しゃへい体7は支持構造物8上に設置されている。支持構造物8には冷却材通流孔(図示せず)が多数設けられており、支持構造物8と原子炉容器1との間は下部プレナム9となっている。また、隔壁4と原子炉容器1との間に配置された中性子しゃへい体7の上方には中間熱交換器10と電磁ポンプ11が上下に設けられており、中間熱交換器10には二次側冷却材通流配管12が取り付けられている。
【0006】
原子炉容器1の上端開口部はしゃへいプラグ13により閉塞されており、原子炉容器1内は液体ナトリウム等の液体金属の冷却材14で満たされている。冷却材14としゃへいプラグ13の間は上部プレナム15となっており、上部プレナム15には不活性ガスが封入される。
【0007】
炉心2は図6に示したように炉心バレル3と、この炉心バレル3によって囲まれハニカム状に配列された例えば18本の燃料集合体16と、これらの燃料集合体16の中央部に装荷される中性子吸収用チャンネル17とから構成されている。中性子吸収用チャンネル17は炉心2の炉停止用で、運転時には上方に引き抜かれる。なお、図6中符号18はガードベッセルで、原子炉容器1の周囲を包囲する保護容器である。
【0008】
ここで、冷却材14は電磁ポンプ11によって原子炉容器1の内部を矢印で示すように循環して炉心2内に流入し、炉心2からの熱を取り出して炉心2から流出する。流出した冷却材14は中間熱交換器10によって二次冷却材配管12内を流れる二次冷却材と熱交換する。
【0009】
すなわち、冷却材14は隔壁4の内側を下から上方向に流れ、その途中で炉心2に流入し、核分裂によって生じた熱を奪って温度が上昇する。そして、この温度が上昇した冷却材14は中間熱交換器10内に流入し、ここで二次冷却材との熱交換を行って冷却される。
【0010】
冷却された冷却材14は、中間熱交換器10から下方向に流出し、電磁ポンプ11によって昇圧され隔壁4と原子炉容器1との間と中性子しゃへい体7間を通り抜けて支持構造物8を流下し、下部プレナム9に流入してから上方に向けて炉心2の下部に回り込み、再び炉心2内に導入される。
【0011】
中性子しゃへい体7は原子炉容器1の中性子照射量を全プラント寿命にわたって所定値以下に制限するためのものである。中性子反射体5は中性子反射体駆動装置6の駆動に伴って、炉心バレル3と隔壁4との間の移動領域内をこれに沿って上下方向に移動する。この動作により炉心2からの中性子の漏洩を調整し、炉心2の燃焼による反応度変化を補償する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の中性子反射体5を移動して炉心2の反応度を制御する高速増殖炉において、炉心2の寿命を延ばそうとすると、燃料集合体16の燃料長を長くする必要がある。すなわち、燃焼が進むに従い、燃料集合体16の有する反応度は負となり、その分、炉心2の下部から炉心2の高さを覆うように中性子反射体5を持ち上げ、中性子反射能力を増大させて、中性子反射体5の正の反応度を増大させて、炉心2全体としては常に反応度を0として、つまり臨界状態で燃焼を続ける運転を行わなければならない。
【0013】
このため、運転期間を延ばそうとすると、燃料長を長くしなければならない。燃料長を長くすると原子炉容器1の全体も長くなり、経済性が悪化する。また、炉心2の寿命中の変形による反応度の変化、燃料集合体16の引き抜き力の増加等の課題がある。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、燃料長を長く延ばすことなく、初期の余剰反応度を大きくするだけで炉心の寿命を延ばすことができ、経済性及び燃料の健全性が優れた中性子反射体制御方式の高速増殖炉を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、前記炉心内に中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質からなる可燃性毒物集合体を装荷してなることを特徴とする。
【0016】
本発明において、原子炉が最初に運転を開始した場合、つまり、炉心が臨界に達したとき、炉内の一部の中性子は炉心内に配置した中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質、例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質に吸収された状態にある。
【0017】
炉心の燃焼が進むに従い、燃料集合体から発生する中性子量は少なくなっていくが、炉心内に配置した水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質のガドリニウムも中性子を吸収し、核変換するので、減少する。このため、炉心の燃焼が進むに従い、水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質の中性子吸収能力も低下する。
【0018】
このことから、燃焼が進むことによる燃料の余剰反応度の変化を従来技術より見かけ上小さくすることができる。すなわち、炉心寿命を延ばすために燃料長を延ばさなくでも、初期の余剰反応度を大きくするだけで炉心寿命を延ばすことができる。したがって、本発明によれば、従来の炉心を長寿命化するための燃料長を延ばす方法による経済性の悪化、燃料健全性の課題を解決することができ、炉心寿命を延ばすことができる。
【0019】
請求項2に係る発明は、原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を含む中性子吸収体棒とし、この中性子吸収体棒を複数本ラッパ管内に組み込んで可燃性毒物集合体とし、この可燃性毒物集合体を前記炉心の中央部に装荷してなることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、中性子吸収材であるたとえばガドリニウムとともに中性子減速材である水素化ジルコニウムを混合した可燃性毒物を炉心の中央部に配置することにより、中性子を効果的に減速し、中性子吸収材に吸収させ、中性子吸収能力を高めることができる。
【0021】
請求項3に係る発明は、原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を前記中性子反射体の上部キャビティに装荷してなることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、従来、中性子反射体の上部は中性子反射体の価値を上げるためにキャビティになっているが、中性子反射体の上部の中性子吸収体には中性子しゃへい能力が加わることによって、上部構造物が簡素化できる。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を前記炉心内に装荷するにあたり、前記中性子吸収棒の径方向分布を内側ほど濃くしてなることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、初期の熱中性子の吸収効果の低下幅を下げ、吸収反応度の低下を直線的に減少させる。これにより、燃焼による余剰反応度の変化が見かけ上直線的となるため、反射体の駆動による燃焼制御も直線的で、一定速度で行うことができ、燃焼制御が容易になる。
【0025】
請求項5に係る発明は、前記中性子反射体の上部に装荷した中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質は黒鉛とガドリニウムとを混合した物質からなることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質を炉心内に装荷する場合、中性子減速材として黒鉛を使用すると高温での健全性に優れ、設計の裕度が増え、冷却材出口温度を高温化した場合にも十分対応できる。
【0027】
請求項6に係る発明は、前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を被覆管内に充填して中性子吸収体棒を形成するにあたり、前記中性子減速材と可燃性毒物を顆粒状に成形し、この顆粒状物を前記被覆管内に振動充填法により充填してなることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、中性子減速材含有中性子吸収体の製造工程が簡素化され、製造時に遠隔操作が容易となり、中性子減速材または中性子吸収材が放射性物質である場合などの危険物が存在しても中性子減速材含有中性子吸収体の製造が容易となる。
【0029】
請求項7に係る発明は、前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を収納する被覆管またはラッパ管の内面に水素の透過を防止する内張りを設けてなることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、被覆管またはラッパ管の内面に水素透過防止材を内張りすることにより、減速材含有中性子吸収体の炉心での燃焼によって生成される水素の被覆管またはラッパ管外への漏洩を防止できる。
【0035】
請求項8に係る発明は、前記減速材含有中性子吸収体を前記炉心内中央部近傍の燃料集合体に設けてなることを特徴とする。本発明によれば、燃料集合体内に中性子減速材と熱中性子吸収材を混合した中性子吸収体棒を配置することにより、炉心中央部に可燃性毒物集合体を装荷する必要がない。そのため、炉心中央部に設ける中性子吸収体棒の設計が容易になる。
【0037】
請求項9に係る発明は、前記液体金属冷却材は鉛または鉛−ビスマス合金からなることを特徴とする。本発明によれば、冷却材に鉛または鉛とビスマス合金を使用することにより、さらに中性子増殖性が高く、炉心寿命を延ばすことができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1(a),(b),図2及び図3により、本発明に係る高速増殖炉の第1の実施の形態を説明する。
図1(a)は本実施の形態に係る高速増殖炉の要部を示す横断面図、図1(b)は図1(a)の縦断面図、図2は図1(a),(b)における可燃性毒物集合体の横断面図、図3は本実施の形態の作用を説明するための特性図で、図1(a),(b)中、図5及び図6と同一部分または同様の機能を有する部分には同一符号を付して、重複する部分の説明は省略する。
【0039】
本実施の形態が従来例と異なる点は、図6に示した炉心2の中央部に装荷した中性子吸収用チャンネル17の代りに、図1に示したように可燃性毒物集合体19を装荷してなることにある。図1は例えば炉心2の等価直径約80cm,炉心2の有効長約200cm の反射体制御方式のナトリウム冷却小型高速増殖炉に適用した例を示している。
【0040】
炉心2の外側の中性子反射体5はカバーガス空間を含むグラファイトまたはステンレス鋼(SUS )等の構造材で構成され、長さ約200cm ,厚さ15cmのものが使用されている。中性子反射体5の外壁は隔壁4が、その外側は中性子しゃへい体7が、さらにその外側は原子炉容器1となっている。炉心2の中央には例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質を含んだ可燃性毒物集合体19が装荷されている。
【0041】
可燃性毒物集合体19は図2に示したように六角筒状のラッパ管20内に、中性子減速材と中性子吸収材との混合物質22を被覆管21内に充填して構成した中性子吸収体棒23を7本結束して組み込んでなるものである。被覆管21はステンレス鋼等の構造材で、中性子減速材と中性子吸収材との混合物質22は例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムの混合物である。
【0042】
つぎに本実施の形態の作用を説明する。
図3に図1の炉心の最終状態の炉心状態に対する燃焼中の各種反応度変化例を示す。図3では燃料集合体16の燃焼反応度の変化aと、中性子反射体5の価値の変化bと、可燃性毒物集合体19の反応度変化cを示す。30年間の燃焼による燃料集合体16の余剰の反応度変化が大きく、中性子反射体5の価値の変化だけでは初期の燃料の余剰の反応度をキャンセルすることができない。中性子反射体5の制御だけでは図3の燃焼反応度を持った30年間の長寿命炉心を構成すると初期炉心の中性子増倍が大きすぎて運転できない。つまり、初期炉心構成では大きく臨界を超過してしまう。
【0043】
これに中性子を吸収する可燃性毒物、例えばガドリニウムを炉内に挿入しておけば、燃料集合体16の初期の余剰な反応度をキャンセルし、さらに燃焼によってガドリニウムは減少するため、燃料の燃焼反応度の減少とともに、可燃性毒物の反応度も減少し、中性子反射体5の制御による中性子反射体5の反応度変化と可燃性毒物の反応度と合わせて長寿命の燃焼制御が可能となる。
【0044】
また、本炉心のような高速増殖炉では、中性子吸収材であるガドリニウムとともに中性子減速材である水素化ジルコニウムを混合した物質を炉内に配置すれば、中性子を減速させて効果的に中性子の吸収が可能となる。
【0045】
つぎに図4により本発明に係る高速増殖炉の第2の実施の形態を説明する。図4は本実施の形態の要部を示し、図1(a)と対応しており、図4中、図1(a)と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、中性子反射体5の上部に中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質を内蔵した中性子減速材付き中性子吸収体24を配置したことにある。
【0046】
従来、中性子反射体5の上部は中性子反射体5の価値を上げるためキャビティ(空所)になっているが、本実施の形態ではこのキャビティに中性子減速材付き中性子吸収体24を装荷する。これにより、第1の実施の形態の作用効果のほかに、中性子しゃへい機能が付与されるとともに、上部構造物が簡素化できる効果がある。
【0047】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第3の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質を炉心2内に装荷する場合、中性子減速材である可燃性毒物の径方向分布を内側ほど濃くすることにある。
【0048】
本実施の形態による作用効果は、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、その他、初期の中性子の吸収効果の低下幅を下げ、反濃度の低下を直線的にできる。したがって、本実施の形態によれば、反応度が直線的であるため、燃焼による余剰反応度の変化が見かけ上直線的になるため、中性子反射体5の駆動による燃焼制御も直線的にでき、中性子反射体5の駆動をほぼ一定速度で行うことができ、燃焼制御が容易となる。
【0049】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第4の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質を炉心2内に装荷する場合、中性子減速材として黒鉛を使用したことにある。本実施の形態によれば、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を有するが、その他高温での健全性に優れ、設計の裕度が増加し、冷却材出口温度を高温化した場合にも対応できる。
【0050】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第5の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、第1の実施の形態において、図2に示したように被覆管21内に中性子減速材と中性子吸収材との混合物質22を振動充填法により充填して中性子吸収体棒23を形成したことにある。
【0051】
すなわち、中性子減速材と中性子吸収材との混合物質22として例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合する場合に、両者を所定量秤量後、顆粒状に成形し、これらの顆粒を下端が封止された被覆管21に加振機により振動を与えながら上端開口から徐々に投入して充填する。振動充填後、被覆管21の上端開口に上端栓を取り付け封止して中性子吸収体棒23を完成させる。被覆管21は加振機の加振台に取り付けられて所定の振動が付与される。
【0052】
本実施の形態によれば、中性子減速材含有の中性子吸収体棒23の形成工程が簡素化され、形成時の遠隔操作が可能となり、中性子減速材または中性子吸収材が放射性物質である場合などの危険物であっても、中性子吸収体棒23の形成が容易になる。
【0053】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第6の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、図2に示す被覆管21またはラッパ管20の内面に水素の透過を防止する内張り、例えばクロムのコーティング層を設けたことにある。このクロムのコーティング層は中性子減速材と熱中性子吸収材を混合した物質、例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質と接触している。
【0054】
本実施の形態によれば、水素の透過を防止する内張りを設けた可燃性毒物集合体19を図1(a),(b)に示すように炉心2の中央部に装荷することにより、炉心の燃焼によって生成される水素の可燃性毒物集合体19外への漏洩を防止できる。その他の作用効果は第1の実施の形態と同様である。
【0055】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第7の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質、例えば水素化ジルコニウムと中性子吸収材として核分裂生成物(FP)を混合した物質を炉心2内に装荷して中性子吸収能力を高めたことにある。
【0056】
本実施の形態によれば、中性子吸収材に核分裂生成物(FP)を使用することによって、他の原子炉で生成された放射性物質を有効利用し、核分裂生成物の削減に寄与する。その他の作用効果は第1の実施の形態と同様である。
【0057】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第8の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、冷却材として液体金属を使用した高速増殖炉において、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質を炉心2内に装荷するにあたり、中性子減速材である可燃性毒物の径方向分布を内側ほど濃くすることにより、初期の中性子の吸収効果の低下幅を下げ、反応度を直線的にするとともに、中性子減速材付き中性子吸収体の燃焼による吸収度の低下を直線的にすることにある。
【0058】
本実施の形態によれば、余剰反応度の低下を見かけ上直線的にして、必要となる中性子反射体の駆動量の制御を容易にし、炉心の燃焼制御を容易にすることができる。
【0059】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第9の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、中性子減速材と熱中性子吸収材を混合した物質、例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質を炉心中央部近傍の燃料集合体16に設けて、中性子吸収能力を高めたことにある。
【0060】
本実施の形態によれば、燃料集合体16内に中性子減速材と熱中性子吸収材を混合した物質を設けることにより、炉心の中央部に可燃性毒物集合体19を装荷する必要がなく、中央部に装荷する中性子吸収体棒または図6に示した中性子吸収用チャンネル17の設計が容易となる。
【0061】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第10の実施の形態を説明する。
本実施の形態は上述した各々の高速増殖炉において、中性子減速材と中性子吸収材を混合した物質、例えば水素化ジルコニウムとガドリニウムを混合した物質を炉心中央部の可燃性毒物集合体に設け、燃焼末期のボイド反応度の正側への移行を緩和することにある。本実施の形態に係る反射体制御方式の高速増殖炉の場合、機能は第1の実施の形態とほぼ同様である。
【0062】
一般に高速増殖炉では、炉心が燃焼するに従いボイド反応度が正側に上昇する。これは燃焼末期の方がボイドが発生した場合のスペクトル硬化により正反応度が多く入ることを意味する。
【0063】
しかし、本実施の形態のように中性子減速材付き中性子吸収体棒を設けた高速増殖炉においては、燃焼末期に中性子エネルギーの小さな領域での吸収効果が減少するため、通常の高速増殖炉の炉心より燃焼末期でも中性子エネルギーの低い領域での核分裂の寄与が大きい。
【0064】
このため、燃焼末期でも冷却材ボイド生成によるスペクトルの硬化に対して正反応度への移行が大きくならない。したがって、燃焼末期にボイド反応度が正側に移行し難くなり、安全上優れた特性となる。
【0065】
つぎに本発明に係る高速増殖炉の第11の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、液体金属冷却材として使用した液体ナトリウムの代りに鉛または鉛−ビスマス合金を使用したことにある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0066】
本実施の形態によれば、高速中性子を減速し、中性子吸収材に吸収させて中性子吸収能力を高めることができるとともに、中性子増殖性が高く、炉心の寿命を延ばすことができる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、炉心の寿命を延ばすために必要であった燃料長を、延ばす必要がなく、中性子吸収能力を高めることによって初期の余剰反応度を大きくするだけで、炉心の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る高速増殖炉の第1の実施の形態を示す横断面図、(b)は(a)における概略的縦断面図。
【図2】図1(a),(b)における可燃性毒物集合体を示す横断面図。
【図3】本発明に係る高速増殖炉の作用を説明するための特性図。
【図4】本発明に係る高速増殖炉の第2の実施の形態の要部を示す縦断面図。
【図5】従来の反射体制御方式の高速増殖炉を概略的に示す縦断面図。
【図6】図5のA−A矢視方向断面を拡大して示す横断面図。
【符号の説明】
1…原子炉容器、2…炉心、3…炉心バレル、4…隔壁、5…中性子反射体、6…中性子反射体駆動装置、7…中性子しゃへい体、8…支持構造物、9…下部プレナム、10…中間熱交換器、11…電磁ポンプ、12…二次冷却材配管、13…しゃへいプラグ、14…冷却材、15…上部プレナム、16…燃料集合体、17…中性子吸収用チャンネル、18…ガードベッセル、19…可燃性毒物集合体、20…ラッパ管、21…被覆管、22…中性子減速材と中性子吸収材との混合物質、23…中性子吸収体棒、24…中性子減速材付き中性子吸収体、a…燃料集合体の反応度の変化、b…反射体の変化、c…可燃性毒物集合体の変化。
Claims (9)
- 原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、前記炉心内に中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質からなる可燃性毒物集合体を装荷してなることを特徴とする反射体制御方式の高速増殖炉。
- 原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を含む中性子吸収体棒とし、この中性子吸収体棒を複数本ラッパ管内に組み込んで可燃性毒物集合体とし、この可燃性毒物集合体を前記炉心の中央部に装荷してなることを特徴とする反射体制御方式の高速増殖炉。
- 原子炉容器内の液体金属冷却材に浸された炉心の外側に中性子反射体を配置し、この中性子反射体を上下方向に移動させて前記炉心からの中性子の漏洩を調整することによって前記炉心の反応度を制御する反射体制御方式の高速増殖炉において、中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を前記中性子反射体の上部キャビティに装荷してなることを特徴とする反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を前記炉心内に装荷するにあたり、前記中性子吸収棒の径方向分布を内側ほど濃くしてなることを特徴とする請求項1記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記中性子反射体の上部に装荷した中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質は黒鉛とガドリニウムとを混合した物質からなることを特徴とする請求項3記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を被覆管内に充填して中性子吸収体棒を形成するにあたり、前記中性子減速材と可燃性毒物を顆粒状に成形し、この顆粒状物を前記被覆管内に振動充填法により充填してなることを特徴とする請求項2記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記中性子減速材と可燃性毒物を混合した物質を収納する被覆管またはラッパ管の内面に水素の透過を防止する内張りを設けてなることを特徴とする請求項2記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記減速材と可燃性毒物を前記炉心内中央部近傍の燃料集合体に設けてなることを特徴とする請求項1記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
- 前記液体金属冷却材は鉛または鉛−ビスマス合金からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の反射体制御方式の高速増殖炉。
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