JP2023151133A - 炉心損傷防止構造体及びそれを備えた原子炉炉心 - Google Patents

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Abstract

【課題】受動的炉停止を可能にする炉心損傷防止構造体を提供することである。【解決手段】本発明の炉心損傷防止構造体100は、デバイス燃料ピン100Aと、機能強化ピン100Bとを備え、デバイス燃料ピン100Aは燃料集合体が有する燃料より低い融点の核分裂性物質を含む燃料からなるデバイス燃料部111Aと、デバイス燃料部よりも下方に離間配置する遮蔽層115Aと、を有し、デバイス燃料部111Aは中空形状の部位であって、定常運転時に固体であり、事故時には周囲の冷却材温度が上昇することにより炉心の燃料より先に溶融して液相化し、下部へ流れ落ちるものであり、遮蔽層115Aは、液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料部の少なくとも一部を受け止めうるように、デバイス燃料部よりも融点が高い物質からなり、機能強化ピン100Bは、事故時に遮蔽層上に溜まったデバイス燃料と重なる位置に中性子吸収層114Baを有する。【選択図】図3A

Description

本発明は、炉心損傷防止構造体及びそれを備えた原子炉炉心に関する。
一般に大型高速炉において、事象の発生要因が何であっても、制御棒挿入失敗事象が発生した際には何らかの方法で炉心に負の反応度を投入する必要がある。負の反応度を投入する方法として、原子炉冷却材の温度上昇を利用して中性子吸収材を炉心内に投入する方法等がある(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。さらに、燃料排出ダクトを備えた燃料集合体を用い、溶融した核燃料をダクトから炉心外へ排出する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
特許第6615605号公報 特開2002-055187号公報
International Atomic Energy Agency, Passive shutdown systems for fast neutron reactors, IAEA Nuclear Energy Series No. NR-T-1.16 (2020);Chapter 3 Basic Design principles of Passive Shutdown Systems 電力中央研究所報告、報告書番号T01029、"金属燃料FBRの炉心損傷時安全性評価 -溶融燃料と冷却材の熱的相互作用および燃料排出に関する検討"、平成14年4月(2002/04) International Atomic Energy Agency, 2016, "Safety of Nuclear Power Plants: Design," IAEA Safety Standard Series No. SSR-2/1 (Rev. 1). Sowa, E.S., Barthold, W.P., Eggen, D.T., Huebotter, P.R., Josephson, J., Pizzica, P.A., Turski, R.B., van Erp, J.B., 1976, "LMFBR Self-Actuated Shutdown Systems", Proc. International Meeting on Fast Reactor Safety and Related Physics, American Nuclear Society, La Grange Park, IL, pp. 673-682. Burke, T.M., 1998, "Summary of FY 1997 Work Related to JAPC-US DOE Contract Study on Improvement of Core Safety-Study on GEM (III)", HNF-2195-VA. Tentner, A.M., Parma, E., Wei, T., Wigeland, R., 2016, "Severe Accident Approach-Final Report Evaluation of Design Measures for Severe Accident Prevention and Consequence Mitigation," Argonne National Laboratory, Argonne, IL, ANL-GENIV-128. Miao Y., Stauff N., Oaks A., Yacout A. M., Kim T. K.,Fuel performance evaluation of annular metallic fuels for an advanced fast reactor concept, Nuclear Engineering and Design, 362, (2019)110157
福島原子力発電所の事故以降、設計基準事故を超えたシビアアクシデントを含む設計拡張状態を考慮することが求められており、その発生防止方策を原子炉の設計上考慮することが重要となっている(例えば、非特許文献3参照)。
制御棒等による工学設計設備・システムが不作動な過渡事象状況に対する受動的炉停止設備の検討は行われてきている。自己作動型炉停止システム(例えば、非特許文献4参照)、ガス膨張モジュール集合体(例えば、非特許文献5参照)はじめ炉心損傷を防ぐための手段が考案・検討されている(例えば、非特許文献1、6参照)。
これらの公知事例では、異常な過渡事象における炉心状態の変化が炉心を通過する冷却材の流量や温度に変化を与える影響を駆動力として炉心に中性子吸収体物質を挿入または炉心周辺から中性子の漏洩を増加させ、炉心の反応度を低下させることになる。燃料物質の移動現象を利用していないものが殆どと言える。
例えば、ナトリウム冷却高速炉の炉心損傷事故に対する発生防止対策の「多様性」と「頑健性」を強化する集合体型のデバイスを提供するために、特許文献1に液体燃料を用いた受動的炉停止デバイスが開示されている。この液体燃料を内封した構造体の場合、定常運転時に液体燃料を封入した多数の燃料ピンが使用されるので、それらの燃料ピンのうちのいずれかかが破損した場合に燃料が炉内に流出し、原子炉容器炉内に核燃料物質が流失・分散するおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、受動的炉停止を可能にする炉心損傷防止構造体及びそれを備えた原子炉炉心を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
本発明の第1態様に係る炉心損傷防止構造体は、原子炉の炉心に、核分裂性物質を含む燃料を有する燃料集合体と共に並列に配され、鉛直方向に延びる炉心損傷防止構造体であって、複数のデバイス燃料ピンと複数の機能強化ピンとを備え、前記デバイス燃料ピンは、前記燃料集合体が有する前記燃料より低い融点の核分裂性物質を含む燃料からなるデバイス燃料部と、該デバイス燃料部よりも下方に離間して配置する遮蔽層と、を有し、前記デバイス燃料部は、前記鉛直方向に延びる中心孔を有する中空形状の部位であって、定常運転時に固体であり、事故時には周囲の冷却材温度が上昇することにより前記炉心の燃料より先に溶融して液相化し、少なくとも一部が前記デバイス燃料ピンの下部へ流れ落ちるものであり、前記遮蔽層は、前記液相化して流れ落ちてきた前記デバイス燃料部の少なくとも一部を受け止めうるように、前記デバイス燃料部よりも融点が高い物質からなり、前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、事故時に前記遮蔽層上に溜まったデバイス燃料と重なる位置に中性子吸収層を有する。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記デバイス燃料ピンが、下部に核分裂物質を含む下部発熱領域を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記機能強化ピンが、下部に核分裂物質を含む下部発熱領域を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記遮蔽層が中性子吸収作用及び断熱作用を有し、厚みが中性子平均自由工程の1/3又は5cm以上であってもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記機能強化ピンが、中性子吸収層よりも上方であって、前記原子炉の炉心に配備されたときに該炉心を構成する炉心燃料集合体の燃料要素の下端より下方に、前記中性子吸収層と異なる物質又は前記中性子吸収層と同じ組成であるが異なる密度の物質からなる第2中性子吸収層を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は 前記機能強化ピンが、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料部と重なる位置に核燃料物質を含む核燃料物質層を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記機能強化ピンが、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料部の上端近傍に減速材層を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記デバイス燃料ピンが、事故時に前記デバイス燃料部から液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料が溜まる部位のピン径が、定常運転時に前記デバイス燃料部が配置する部位のピン径よりも細い細径部を有し、前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料ピンの細径部に重なる部位に、定常運転時に前記デバイス燃料部が配置する部位に重なる部位のピン径よりも太い太径部を有してもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記デバイス燃料ピンのデバイス燃料部が中心孔を有する中空金属合金燃料からなり、前記デバイス燃料部は、原子炉内に装荷され中性子照射前の状態において、被覆管内の円環上の金属合金燃料の中心孔の断面積と金属合金燃料の外径で決まる断面積比が0.5以下(スメア密度50%以下)となるように形成されてなってもよい。
上記態様に係る炉心損傷防止構造体は、前記機能強化ピンが、前記中性子吸収層より上方に、核分裂物質を含む発熱領域を有してもよい。
本発明の第2態様に係る原子炉炉心は、上記態様に係る複数の炉心損傷防止構造体と、
互いに並列に配され鉛直方向に延びて固体状の燃料を有する複数の炉心燃料集合体と、前記複数の炉心燃料集合体および前記複数の炉心損傷防止構造体と並列に配されて上下に移動可能な複数の制御棒集合体と、を備える。
上記態様に係る原子炉炉心は、上記態様に係る複数の炉心損傷防止構造体が互いに隣接せずに配置しており、前記炉心損傷防止構造体が備えるデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの本数の組み合わせが複数種類あってもよい。
上記態様に係る原子炉炉心は、上記態様に係る複数の炉心損傷防止構造体が互いに隣接せずに配置しており、下部軸ブランケット領域を有さない炉心燃料集合体を含んでもよい。
本発明に係る炉心損傷防止構造体によれば、受動的炉停止を可能にする炉心損傷防止構造体を提供できる。
第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体を備える原子炉炉心を模式的に示す水平断面図である。 第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面図である。 第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体が備えるデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの主要な作用効果を説明するための概念図である。 デバイス燃料ピン及び機能強化ピンのより具体的な構成例を模式的に示す縦断面図である。 炉心燃料集合体30の構成を模式的に示す縦断面図である。 (a)は、燃料ピン32が混合酸化物燃料(MOX燃料)である場合の典型的な構成の縦断面図であり、(b)は、燃料ピン32が中実の金属燃料である場合の典型的な構成の縦断面図であり、(c)は、(a)において燃料ピン32が中空形状の金属燃料である場合の典型的な構成の縦断面図である。 原子炉炉心を鉛直方向(Z方向)に直交する平面で切断した状態を示す縦断面図である。 デバイス燃料ピンと機能強化ピンの外径が異なる炉心損傷防止構造体100aの水平断面図である。 第2実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。 炉心燃料ピンと、炉心損傷防止構造体を構成するデバイス燃料ピン及び機能強化ピンとの軸方向の物質配置の基本となる物質配置を示す縦断面図である。 反応度価値について数値的検討を行った配置B2~B4を示す縦断面図である。 数値的検討のために設定したモデルであり、(a)は炉心損傷防止構造体モデルの水平断面模式図であり、(b)は炉心モデルの水平断面模式図である。 配置B1の反応度価値を基準として、配置B2~B4の反応度価値の相対値を示すグラフである。 反応度価値について数値的検討を行った配置M1、NB、EB、F4を示す縦断面図である。 配置B1の反応度価値を基準として、配置M1、NB、EB、F4の反応度価値の相対値を示すグラフである。 反応度価値について数値的検討を行った配置F25,F33を示す縦断面図である。 配置B1の反応度価値を基準として、配置F25,F33の反応度価値の相対値を示すグラフである。 機能強化ピン内に固体状の核燃料物質層、固体状の中性子吸収層、固体状の減速材層、及び、空隙部(ガスプレナム)を組み合わせた物質配置の例を示す縦断面図である。 中空低融点合金からなるデバイス燃料部の直下に中空高融点合金からなる燃料部を有し、機能強化ピン内に固体状の核燃料物質層、固体状の中性子吸収層、固体状の減速材層、及び、空隙部(ガスプレナム)を組み合わせた物質配置の例を示す縦断面図である。機能強化ピン内に固体状の中性子吸収層の一部が、デバイス燃料ピン中の中空高融点合金からなる燃料部と同じ軸方向位置に配置されている。 第3実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。 第4実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。 第5実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。 第6実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図であり、(a)は製造時の仕様例、(b)は30%スウェリングによる膨張時の例である。 (a)は炉心燃料ピンの概略図であり、(b)はデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの概要図であり、(c)は、P/F=3想定時、横軸に温度、縦軸に炉心下端からのデバイス燃料下端からの軸方向位置を示すグラフである。 (d)はP/F=2想定時、横軸に温度、縦軸に炉心下端からのデバイス燃料下端からの軸方向位置を示すグラフである。 タイプI型の炉心損傷防止構造体、タイプII型の炉心損傷防止構造体を備える原子炉炉心の水平断面図である。 (a)はタイプI型の炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面図であり、(b)はタイプII型の炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面図である。 2種類の炉心燃料ピンとデバイス燃料ピン及び機能強化ピンが備える下部加熱領域との関係を説明するための模式図である。 図16に示した“下部軸ブランケット無し“の炉心燃料集合体を配した原子炉炉心の水平断面図である。 本発明に係る炉心損傷防止構造体及びそれを備えた原子炉炉心を適用した高速炉の概要を示す縦断面図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、各図において、その図で説明する構成要素以外の当業者に周知の構成要素については省略している場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体を備える原子炉炉心を模式的に示す水平断面図である。図2は、第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す水平断面図である。図3Aは、第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体が備えるデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの主要な作用効果を説明するための概念図である。図3Bはデバイス燃料ピン及び機能強化ピンのより具体的な構成例を模式的に示す縦断面図である。
本明細書においては高速炉を例に挙げて説明するが、本実施形態に係る炉心損傷防止構造体は高速炉に限らず、他の種類の原子炉においても適用可能である。
<原子炉炉心>
以下では、典型的な炉心構成をベースにして、炉心燃料集合体の一部を本実施形態に係る炉心損傷防止構造体と置換して構成された炉心を例に挙げて説明する。
図1に示す原子炉炉心10は、複数の炉心燃料集合体30、複数の炉心損傷防止構造体100、複数の制御棒集合体15、複数の径方向ブランケット燃料集合体12、複数の反射体13、および複数の中性子遮へい体14を備える。
炉心損傷防止構造体100は、炉心燃料集合体30に並行して鉛直方向に延びており、炉心燃料集合体30が配列されている領域内に配される。
白抜きで表示している炉心燃料集合体30は、平面視でほぼ円形に配置している。
炉心損傷防止構造体100は、炉心燃料集合体30に並行して鉛直方向に延びており、炉心燃料集合体30が配列されている領域内に分散して配置している。
制御棒集合体15では制御棒集合体が引抜・挿入される。制御棒には安全棒・運転調整用制御棒と独立二系統で複数本ずつ配置される。図6において、代表例として運転用調整棒を例にとり、黒塗りで表示している制御棒中性子吸収体15aが炉心の軸方向の途中まで引き抜かれている状況を模式的に示す。炉心燃料集合体30が配列されている領域に互いに間をおいて点在するように配置されている。制御棒集合体15は、原子炉炉心10への挿入、引き抜きの程度により原子炉炉心10の出力を制御するとともに、異常時には、原子炉炉心10に挿入され炉心の反応度を低下させる。
径方向ブランケット燃料集合体12は、中性子を吸収することにより核分裂性物質となる燃料親物質を収納し、炉心燃料集合体30の径方向外側を囲むように配置している。炉心燃料集合体30から径方向外側への中性子の漏れを抑制するための反射体13は、径方向ブランケット燃料集合体12のさらに径方向外側を囲むように配置している。原子炉炉心10の中心側から外部への、中性子の漏えいを抑制するために設けられた中性子遮へい体14は、反射体13のさらに径方向外側を囲むように配置している。
<炉心損傷防止構造体>
図2に示すように、炉心損傷防止構造体100は、複数のデバイス燃料ピン100Aと、複数の機能強化ピン100Bとを備える。デバイス燃料ピン100Aの数と機能強化ピン100Bの数はそれぞれの構成に基づいて適宜、設定され、同じであるとか異なる必要があるとかの制限はない。
図2に示す炉心損傷防止構造体100では、デバイス燃料ピン100aと機能強化ピン100bの外径が同一とする場合を例示したが、後述するように外径が異なっていてもよい。
なお、図面において、デバイス燃料ピン100a及び機能強化ピン100bの対に対して符号100を付している場合は、デバイス燃料ピン100a及び機能強化ピン100bがそれぞれ複数集まって炉心損傷防止構造体100を構成することを意味する。
図3Aに示すように、各デバイス燃料ピン100Aは、燃料集合体が有する燃料より低い融点の核分裂性物質を含む燃料からなるデバイス燃料部111Aと、デバイス燃料部111Aよりも下方に離間して配置する遮蔽層115Aと、を有する。
デバイス燃料部111Aは、支持部112によって支持されている。
符号116Aは、ガスプレナムを含む領域である。ガスプレナムは、燃料の核分裂によって生じる各分裂生成物(FP)のうち、ガス状のもの(FPガス)は燃料ピン内のガス内圧を増加させるため、この増加を緩和するに燃料ピン内に設けられたガス溜のための空間である。
デバイス燃料部111Aは、鉛直方向に延びる中心孔を有する中空形状の部位であって、定常運転時に固体であり、事故時には周囲の冷却材温度が上昇することにより炉心の燃料より先に溶融して液相化し、少なくとも一部がデバイス燃料ピン100Aの下部へ流れ落ちるものである。このように、デバイス燃料が下部へ流れ落ちて反応するゾーンを下側に移動させると、原子炉の全体的な出力が安定化することにつながる。本発明は、アクティブな制御棒などが何らかの原因で作動しなくなったときでも、こういった自然現象を利用して安全を担保するものである。
遮蔽層115Aは、液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料部111Aの少なくとも一部を受け止めうるように、デバイス燃料部111Aよりも融点が高い物質からなる。
遮蔽層115Aに、液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料部111Aは再固化されて蓄積されていく(図3Aの符号111Aa、111Aaa参照)。デバイス燃料ピン100A’、及び、デバイス燃料ピン100A’’は、デバイス燃料部111Aが流れ落ちていく過程のデバイス燃料ピンを示す図である。
デバイス燃料部111Aは、定常運転時には固体燃料であるために、液体燃料である場合と異なり、デバイス燃料ピン100Aのうちのいずれかかが破損した場合であってもデバイス燃料が炉内に流出するおそれはなく、一方で、事故時には、溶融してデバイス燃料ピン100Aの下部に流れ落ちることで、炉心へ負の反応度を投入して炉心損傷を防止することができる。
遮蔽層115Aは、中性子吸収作用及び断熱作用を有する物質からなることが好ましい。
遮蔽層115Aは、劣化ウラン(U)または天然ウランや回収ウランとジルコニウム(Zr)やモリブデン(Mo)、チタニウムとの高融点合金や、ボロンカーバイドや、これらの積層状態や混合物の層とすることができる。
機能強化ピン100Bは、鉛直方向(Z方向)に直交する方向(図3Aの符号D1の矢印が示す方向)から見て、事故時に遮蔽層115A上に溜まった前記デバイス燃料部111Aaと重なる位置に中性子吸収層114Baを有する。符号116Bはガスプレナムを含む領域を示す。
事故時に、デバイス燃料ピン100Aの遮蔽層115A上に固化された再配置された燃料領域111Aa、111Aaaに対して、機能強化ピン100Bの下部に備える中性子吸収層114Baは、再固化燃料領域111Aa、111Aaaの中性子インポータンスの増加を抑制する。これによってデバイスが動作した後の原子炉全体としての未臨界状態の反応度を維持することが可能になる。
本実施形態に係る炉心損傷防止構造体100では、事故時に、デバイス燃料ピン100Aにおいて、固体状態のデバイス燃料部111Aが溶融して下部に流れ落ちることで炉心へ負の反応度を投入し、下部の遮蔽層115Aに新たに形成された再固化燃料領域111Aa、111Aaaに対しては、機能強化ピン100Bが備える中性子吸収層114Baがその中性子インポータンスの増加を抑制することができる。このようにデバイス燃料ピン100Aと機能強化ピン100Bと連携して、原子炉の安全性の強化を図ることができる。
図3Bに、デバイス燃料ピン及び機能強化ピンのより具体的な構成例を模式的に示す。図3Aでは主要な構成要素のみを図示していたが、図3Bでは他の構成要素の例を図示している。図3Bにおいて、図3Aと同じ符号は同様な構成要素であり、説明を省略する。
図3Bに示すように、デバイス燃料ピン100AAは、デバイス燃料ピン100Aと同様に、中空形状の燃料からなるデバイス燃料部111Aと、デバイス燃料部111Aよりも下方に離間して配置する遮蔽層115Aと、を有するとともに、デバイス燃料部111Aの直下に中空形状の燃料ヒーター118Aを備える。デバイス燃料ピン100AA’は、デバイス燃料部111Aが流れ落ちた後のデバイス燃料ピンを示す図である。
符号116Aa及び符号116Abはガスプレナムを含む領域を示す。
機能強化ピン100BBは、機能強化ピン100BBと同様に、事故時に遮蔽層115A上に溜まったデバイス燃料部111Aaと重なる位置に中性子吸収層114Baを有すると共に、鉛直方向Z方向に直交する方向から見て、中空燃料ヒーター118Aと重なる位置に、燃料ヒーター118Bを備える。
燃料ヒーター118Bは、中空形状の燃料からなるものでも、中実の燃料からなるものでもよい。中実の金属燃料からなる場合には、図に示す液面レベルまでナトリウムボンドを入れたものとする。図中の矢印はナトリウムボンドの範囲を例示するものであり、上端はナトリウムボンドの液面レベルを例示するものである。
符号116Ba及び符号116Bbはガスプレナムを含む領域を示す。
図4は、炉心燃料集合体30の構成を模式的に示す縦断面図である。炉心燃料集合体30は、細い被覆管に炉心燃料ペレットを封入した多数の炉心燃料ピン(以下、単に「燃料ピン」と称することもある。)32を正三角形状の配列で収納し、多数の燃料ピン32全体を径方向に囲む六角形状のラッパ管31を有する。ラッパ管31の下部にはエントランスノズル33、上部にはハンドリングヘッド34が溶接固定されている。ハンドリングヘッド34、ラッパ管31及びエントランスノズル33のそれぞれに六角形の各面にスペーサパットが設けられており、スペーサパットは炉心に装荷した燃料集合体相互の間隔を保つ役目を有している。
燃料ピン32間の間隙は、被覆管にスパイラル状に巻かれたワイヤスペーサ(ラッピングワイヤとも呼ぶ)またはグリッドスペーサで保たれて、冷却材150の流路となっている。
エントランスノズル33から炉心燃料集合体に流入した原子炉冷却材150は、燃料ピン32間の間隙を通過しながら、炉心燃料ピン32を除熱し、自身は温度上昇した後に、ハンドリングヘッド34に形成された出口開口34aから流出する。
原子炉冷却材150は、高速炉の場合、液体金属であり、例えば、ナトリウム(Na)である。
各燃料ピン32は、ステンレス鋼製の薄肉細管の被覆管に、例えば劣化ウランにPu239などの核分裂性プルトニウム(Pu)を富化したものを主成分とする炉心燃料(炉心燃料ペレット)と、その上下に、例えば劣化ウランなどを主成分とする上部ブランケット燃料(上部軸ブランケット)及び例えば同様に劣化ウランなどを主成分とする下部ブランケット燃料(下部軸ブランケット)を充填し、被覆管の上部と下部を端栓で溶接密封したものである。被覆管は通常316ステンレス鋼である。燃料ピンの直径は原型炉クラスで5mm~7mm程度、被覆管の肉厚は0.3mm~0.5mm程度である。上部軸ブランケットと上部端栓の間は、長さ約200mm程度の空間(ガスプレナム)がある。この空間の中にペレットを押えつけているスプリングが封入されている。
ここで、炉心燃料、下部および上部ブランケット燃料は、それぞれ、複数の焼結ペレッ
トで形成されている。それぞれの燃料の形態は酸化物であるが、炭化物あるいは窒化物で
もよい。また、焼結ペレットには限定されない。たとえば、これらが金属燃料であっても
よい。金属燃料の場合は、通常、ジルコニウムを付加するウラン-プルトニウムとの合金形態(U-Pu-Zr)で使用される。
燃料ピン32としては公知の種類の燃料ピンを用いることができる。図5(a)~(c)に3種類の燃料ピンの構成例を示す。
図5(a)は、燃料ピン32が酸化物燃料(MOX燃料)ピンである場合の典型的な構成の縦断面図、図5(b)は、燃料ピン32が金属燃料ピン(中実スラグ)である場合の典型的な構成の縦断面図である。図5(c)は、燃料ピン32が金属燃料ピン(中空スラグ(非特許文献7参照))である場合の典型的な構成の縦断面図である。
図5(a)に示す酸化物燃料ピンである燃料ピン32は、軸方向に下側から順に、ガスプレナム32d1、下部軸ブランケット32b、酸化物燃料(MOX燃料ペレット)からなる炉心燃料部32a、および上部軸ブランケット32c、ガスプレナム32d2が配置し、上部及び下部を下部端栓32e1、上部端栓32e2で溶接密封されている。
一方、図5(b)に示す金属燃料ピンである燃料ピン32Aは、軸方向に下側から順に、下部軸ブランケット32Ab、中実の金属燃料(スラグ)からなる炉心燃料部32Aa、上部軸ブランケット32Ac、ガスプレナム32Adが配置し、金属燃料はナトリウムとの共存性がよいため、これらの燃料と被覆管32Agとの間にナトリウム(ナトリウムボンド)32Afが充填され、炉心燃料部(炉心燃料スラグ)32Aaから冷却材への熱の伝達を促進している。また、上部及び下部を下部端栓32Ae1、上部端栓32Ae2で溶接密封されている。図5(b)において、水平断面図も示した。
なお、燃料ピン32が金属燃料ピンである場合には、燃料ピン内部に占める合金の割合(すなわち、スミア密度)をおよそ75%に低減し、被覆管とのギャップを広く確保することで、核分裂生成ガス(FPガス)の蓄積による燃料合金のスエリング(すなわち膨張)に起因する過大な応力(FCMI)の発生を抑制することや燃料と被覆管のギャップ部分に金属ナトリウム(Na)を熱的ボンド材として充填することでギャップ熱伝達が向上し、燃料温度の低減化が図られている。U-Pu-Zr合金などの金属燃料には、酸素などの軽核が含まれていないため、スミア密度を75%に下げた場合にも高い重金属密度が確保できる。燃料集合体軸方向配置としては、デバイス集合体の軸方向配置と整合するように図5(b)ピン下端から下部の形状は調整される。
更に、図5(c)に示す金属燃料ピンである燃料ピン32Bは、軸方向に下側から順に、ガスプレナム32Bd1、下部軸ブランケット32Bb、中空の金属燃料(スラグ)からなる炉心燃料部(炉心燃料スラグ)32Ba、ガスプレナム32Bd2が配置し、上部及び下部を下部端栓32Be1、上部端栓32Be2で溶接密封されており、中空形状の軸ブランケット及び金属燃料が被覆管内面に密着している。そのため金属燃料で発生する熱は直接被覆管に伝わり冷却性が確保され、被覆管内はナトリウムでなくヘリウムガスを初期充填され、主なガスプレナム領域は冷却材温度の低い炉心燃料下部領域に大きく配置できる。スミア密度を75%に下げ、核分裂生成ガス(FPガス)の蓄積による燃料合金のスエリング分をピン断面中央の初期の中空部分で吸収し、被覆管への過大な応力発生を回避している。U-Pu-Zr合金などの金属燃料には、酸素などの軽核が含まれていないため、スミア密度を75%に下げた場合にも高い重金属密度が確保できる。
なお、図5(c)では上部軸ブランケットを有さない例を示したが、上部軸ブランケットを有してもよい。
多数の炉心燃料ピン32を収納する炉心燃料集合体30の内部は、炉心燃料ピン32内の収納物に対応して、軸方向(Z方向)に下側から順に、下部ブランケット部30b、炉心燃料部30a、および上部ブランケット部30cに区分できる。
図6は、原子炉炉心を鉛直方向(Z方向)に直交する平面で切断した状態を示す縦断面模式図である。
中央の領域の径方向外側には、径方向ブランケット領域23が形成され、その径方向外側には反射体領域24が形成され、さらにその径方向外側には中性子遮へい体領域25が形成されている。径方向ブランケット領域23は径方向ブランケット燃料集合体12が設けられている領域であり、反射体領域24は反射体13が設けられている領域である。また中性子遮へい体領域25は中性子遮へい体14が設けられている領域である。
中央の領域は、軸方向の下側から、下部軸方向ブランケット領域22a、燃料領域21、および上部軸方向ブランケット領域22bに分割されている。これらの領域は、図3Aで示した炉心燃料集合体30内の軸方向の領域に対応している。すなわち、下部軸方向ブランケット領域22aは下部ブランケット部30bに対応し、燃料領域21は炉心燃料部30aに対応し、また上部軸方向ブランケット領域22bは上部ブランケット部30cに対応する。
図6における燃料領域21は、各炉心燃料集合体30が収納する炉心燃料を含む領域である。同様に、下部軸方向ブランケット領域22aおよび上部軸方向ブランケット領域22bは、それぞれ下部ブランケット燃料および上部ブランケット燃料を含み、かつ、事故時でない正常な状態においては炉心燃料を含まない領域である。
炉心損傷防止構造体100が収納する燃料部分は、軸方向についての燃料領域21内に存在する。図5に示したように、軸方向における燃料部分の位置は燃料ピン32が酸化物燃料ピンである場合と、金属燃料ピン(b)、(c)である場合とで異なるので、燃料ピン32の種類によって、炉心損傷防止構造体100の構成は適宜、変更される。
図7に、デバイス燃料ピンと機能強化ピンの外径が異なる炉心損傷防止構造体100aの水平断面図を示す。
炉心損傷防止構造体100aは、複数のデバイス燃料ピン100Aaと、デバイス燃料ピン100Aaの外径と異なる外径を有する、複数の機能強化ピン100Baとを備える。デバイス燃料ピン100Aaの数と機能強化ピン100Baの数はそれぞれの構成に基づいて適宜、設定され、同じであるとか異なる必要があるとかの制限はない。
炉心損傷防止構造体100及び炉心損傷防止構造体100aのいずれにおいても、デバイス燃料ピンと機能強化ピンの組合せ本数と配置は、炉心内に配置される本構造体の装荷位置に合わせて、集合体内の冷却材出口温度設計値やデバイス集合体の冷却材圧力損失値の選択・流動の均一性やデバイス燃料が運転中に固体を維持する線出力および径方向出力ピーキング係数を小さくする観点から構造体毎に適切に選定することができる。
本発明に係る炉心損傷防止構造体は、炉心損傷事故に対する発生防止対策の「多様性」及び「頑健性」を強化する新しい集合体型の受動的炉停止デバイスを提供するものであり、受動的炉停止能力を高めるために金属燃料物質を利用する炉停止デバイス概念である。例えば、混合酸化物燃料大型高速炉を対象に炉停止機能喪失(ATWS:Anticipated Transient Without Scram)事象の過出力時原子炉停止機能喪失(UTOP:Unprotected Transient Over-Power)および炉心流量喪失時原子炉停止機能喪失(ULOF:Unprotected Loss Of Flow)事象時の双方に負の反応度効果を発揮するものである。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。
第2実施形態に係る炉心損傷防止構造体では、デバイス燃料ピン及び機能強化ピンの下部に核分裂物質を含む加熱領域(下部加熱領域)を有する点が、第1実施形態に係る炉心損傷防止構造体と異なる。下部に配置する加熱領域(下部加熱領域)は、炉心損傷防止構造体の温度を一定に保つヒーターの役割を有する。これによって、炉心損傷防止構造体は定常運転時には固体燃料が一定温度に担保され、異常時にデバイス燃料部に達する冷却材温度が一定温度以上に担保され、デバイスが動作する。
なお、同じ符号を有する部位で既に説明したものは同様な機能を有するものとして詳細な説明を省略する。
図8に示す炉心損傷防止構造体110は、デバイス燃料ピン110Aと、機能強化ピン110Bとを備え、デバイス燃料ピン110A及び機能強化ピン110Bのそれぞれの下部には、核分裂物質を含む下部加熱領域113A、核分裂物質を含む下部加熱領域113Bを有する。
下部加熱領域113A及び下部加熱領域113Bは、冷却材の温度上昇を決めるヒーター機能を果たしている。デバイス燃料部111Aは熱伝導度が大きい合金燃料からなり、また、デバイス燃料ピン110Aの被覆管内面に接触・付着するかたちで設置されているので、冷却材の温度上昇量はデバイス燃料ピン110Aの温度決定にも大きく作用する。下部発熱領域の作用効果について、後で改めて数値的な解析に基づいて説明する。
本実施形態に係る炉心損傷防止構造体110においては、遮蔽層115Aの厚みは中性子平均自由工程の1/3又は5cm以上であることが好ましい。
かかる厚みとすることにより、事故時にデバイス燃料部111Aから液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料と下部加熱領域113Aとの間の核的な結合状態を弱めることができ、結果として、炉心損傷防止構造体110の作動後の炉の反応度を負側にシフトさせることができるからである。
図8に示すように、デバイス燃料ピン110Aと同様に、機能強化ピン110Bが下部加熱領域113Bの上に遮蔽層115Aと同じ物質からなる層115Bを備えてもよい。
これにより、デバイス作動後に、デバイス燃料ピン内に溶融落下し、遮蔽層115Aに蓄積したときに、遮蔽層115Bにより中性子吸収機能が増強され、炉の反応度を負側にシフト効果が強化される。
デバイス燃料ピン110Aが備える下部加熱領域113Aが含む核分裂物質と、機能強化ピン110Bが備える下部加熱領域113Bが含む核分裂物質とは同じであっても異なっていてもよい。
図8に示す炉心損傷防止構造体110では、デバイス燃料ピン110A及び機能強化ピン110Bのいずれにも核分裂物質を含む下部加熱領域を有するが、デバイス燃料ピン110A及び機能強化ピン110Bの一方にのみ有する構成であってもよい。
デバイス燃料ピン110Aが備える下部加熱領域113Aは、デバイス燃料部111Aが溶融落下した時に接触する可能性があることを想定して、デバイス燃料部111Aを構成する物質の融点より高い融点を持つ物質からなることが好ましい。
事故発生時に本構造体が作動する上で、作動前後のデバイス燃料物質の移動に伴う炉心の反応度変化を負側に大きくすること、および負の反応度挿入率の絶対値が大きくできることが求められる。
本炉心損傷防止構造体が作動した前後において、デバイス燃料ピン内の物質位置の状況は、図3Aに示したように変化する。すなわち、炉心損傷防止構造体が作動前では、デバイス燃料部111Aは固体状態で支持部112に支持された状態であるが、事故状態が発生し作動後では、デバイス燃料部111Aは溶融して液相化し、下部に流れ落ち、遮蔽層115A上で再固化されていく。本構造体のかかる動作により炉心出力が低下し安定冷却を達成する。そのためデバイス燃料ピン内の物質位置の違いによる反応度変化量(反応度価値)が、本構造体の炉停止能力の確保に重要なポイントとなる。反応度価値は機能強化ピン内の物質配置により変動するため、機能強化ピン内の種々の物質配置について、反応度価値について数値的に検討した。なお、炉心燃料ピン32については酸化物燃料ピンとした。
まず、図9Aに、炉心燃料集合体30が備える炉心燃料ピン32と、炉心損傷防止構造体を構成するデバイス燃料ピン100A及び機能強化ピン100Bとの軸方向(Z方向)の物質配置の基本となる物質配置を示す。
炉心燃料ピン32は、軸方向に下側から順に、ガスプレナム32d、下部軸ブランケット32b、炉心燃料部32a、および上部軸ブランケット32cが配置する。
デバイス燃料ピン110Aは、軸方向に下側から順に、下部発熱領域113A、遮蔽層115A、デバイス燃料部111Aが配置する。デバイス燃料部111Aは、炉心燃料ピン32の炉心燃料部32aの中心レベルL11から、その下端L12までの範囲に配置されている。
機能強化ピン110Bは、軸方向に下側から順に、下部発熱領域113B、遮蔽層115B、中性子吸収層114Baが配置する。
図9Bに、反応度価値について数値的検討を行った中性子吸収層114Baの軸方向位置の3つの場合(B2~B4)を示す。デバイス燃料ピン110Aの構成との関係を示すために、デバイスの動作前後のデバイス燃料ピン110Aの状態を合わせて示した。また、機能強化ピン110Baが中性子吸収層114Baを有さない場合(B1)も示した;
配置B1:中性子吸収層114Baなし。
配置B2:遮蔽層115Bと中性子吸収層114Baとの間に空隙部があり、中性子吸収層114Baが“鉛直方向に直交する方向から見て、再固化されると想定される燃料領域111Aaaと重なる位置”に配置していない。
配置B3:図9Aの機能強化ピン110Bと同じ。
配置B4:中性子吸収層114Baの厚みは、デバイス燃料ピン110Aの遮蔽層115A上に再固化されると想定される燃料領域111Aaaの厚みと同程度。
数値的検討のために設定した計算体系について、図9C(a)、(b)のそれぞれに、数値的検討のための炉心損傷防止構造体計算体系の水平断面模式図、炉心計算体系の水平断面模式図を示す。
炉心損傷防止構造体計算体系は、図9C(a)に示すように、デバイス燃料ピン110Aを240本、及び、機能強化ピン110Bを91本備え、それらが正三角形状の配列で収納されたものとした。
デバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111AはPu-U-10at%Fe合金材からなるものとした。デバイス燃料ピン110Aの下部加熱領域113AはPu-U-10wt%Zr合金材からなるものとした。デバイス燃料ピン110Aの遮蔽層115Aは、例えば、劣化ウランまたは天然ウランや回収ウランとジルコニウムやモリブデン、チタニウムとの高融点合金や、ボロンカーバイドや、これらの積層状態や混合物からなるものとした。
また、機能強化ピン110Bのデバイス燃料ピン110Aの遮蔽層115Bは、例えば、劣化ウランまたは天然ウランや回収ウランとジルコニウムやモリブデン、チタニウムとの高融点合金や、ボロンカーバイドや、これらの積層状態や混合物からなるものとした。機能強化ピン110Bの下部加熱領域113BはPu-U-10wt%Zr合金材からなるものとした。機能強化ピン110Bの中性子吸収層114Baは濃縮ボロン吸収体からなるものとした。
炉心計算体系は図9C(b)に示すように、炉心損傷防止構造体16本、内側炉心燃料141本、外側炉心燃料128本、主炉停止系制御棒21本、後備停止系制御棒6本を備え、それらが正三角形状の配列で収納されたものとした。
また、その他、以下の設定とした;1)750MWe級、冷却材炉心入口温度395℃、出口平均温度550℃、2)炉心サイズコンパクト化を目指す線出力設定、3)炉心高さ100cm、集合体ピッチ20.6cm、4)高燃焼度炉心 炉心取出平均燃焼度 約150MWd/Kg、5)長期運転サイクル長さ832日/サイクル、4バッチ分散燃料交換、6)炉心部ナトリウムボイド反応度約+8$、等である。
この数値的検討において、デバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111Aは30cm長さの中空燃料であり、被覆管内部の断面領域の25%(新燃料の照射前状態)が金属合金燃料となる厚さをもつ円環形状で被覆管内面に密着されている。通常運転中には核分裂を生ずるので金属合金燃料はスウェリングを生じ約30%断面が増加する(金属燃料密度はその分低下する)が、中空部分は残る(中空部の断面比率は75%から65%に変化)ので事故時にこの燃料が溶融して中空部分を通過して下部に落下する(図2参照)。この落下した燃料はデバイス燃料ピン下部の温度が低いので再固化し、ピン内の所定の場所でピンの断面の100%を占めるので、金属合金燃料長さが7.5cmにコンパクション(圧縮)して蓄積する。このコンパクションによる反応度がプラス側に寄与する。また、下部加熱領域113Aに近接するプラス効果もある。すなわち炉心部から燃料がなくなるマイナス反応度効果と下部に局所的にコンパクションによるプラス効果の合計が本構造体のもつ反応度価値となる。
図9Dに、配置B1の反応度価値を基準として、配置B2~B4の反応度価値の相対値((配置B2~B4の反応度価値)/(配置B1の反応度価値を基準))を示す。
下部でコンパクションすることによるプラス反応度効果を打ち消すために、機能強化ピン110Bのコンパクション領域のある部分に中性子吸収層114Baを配置した効果を示したものである。これらの結果から、中性子吸収層114Baを有さない配置B1と比べ、再固化する燃料受け領域111Aaa付近に配置する中性子吸収層114Baは、次の作用を奏することがわかる。
(1)再固化する燃料受け領域111Aaa周りの機能強化ピン内に、中性子吸収層114Baを配置することは本構造体の機能強化をもたらしえる。
(2)一方、配置B2のように、中性子吸収層114Baの上端が炉心下端レベルL12(図9A、図9B参照)に近づくと反応度価値の強化につながらない場合がある。
従って、落下再固化燃料のコンパクションが完全な100%密度とならないこともあるので、機能強化ピン110B内の燃料受け領域111Aaa周りでは、配置B4と配置B2のそれぞれの中性子吸収層114Baの上端位置の中間位置まで中性子吸収層114Baを配置することが効果的であることがわかった。
図9Eに、反応度価値について数値的検討を行った他の物質配置の4つの場合(M1、NB、EB、F4)を示す。これらの4つの配置は、鉛直方向から見てデバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111Aと重なる位置に、減速材層114BM1、天然ボロンからなる中性子吸収層114BNB、濃縮ボロンからなる中性子吸収層114BEB、Pu冨化度4%の核分裂物質層114BF4が配置する場合であり、これらの層の効果を検討した。
デバイス燃料ピン110Aの構成との関係を示すために、デバイスの動作前後のデバイス燃料ピン110Aの状態を併せて示した;
配置M1:減速材層。
配置NB:天然ボロンからなる中性子吸収層。
配置EB:濃縮ボロンからなる中性子吸収層。
配置F4:Pu冨化度4%の核分裂物質層。
図9Fに、配置B1の反応度価値を基準として、配置M1、NB、EB、F4の反応度価値の相対値((配置M1、NB、EB、F4の反応度価値)/(配置B1の反応度価値を基準))を示す。
これらの物質配置例は定格運転中の作動前のデバイス燃料部111Aが有する30cm長さのデバイス中空燃料111Aに隣接する軸方向レベルの機能強化ピン110B内に配置する物質の違いが、反応度変化量(反応度価値)に与える影響を調べた結果である。
基準とする機能強化ピン110B内にデバイス中空燃料111Aに隣接する物質がない構造(配置B1)と配置M1との比較から、炉心燃料側から本構造体側への中性子の供給に対し、減速材(中性子吸収物資がほとんど含まれない物質)層114BM1ではデバイス燃料部分への中性子束レベルへの影響は小さいので、落下反応度変化への影響がほとんどないことを示している。
一方、機能強化ピン110B内に中性子吸収体物質を配置する場合(配置NB、配置EB)は、炉心側からの中性子供給が減り、デバイ燃料ピン111Aにいきわたる中性子束レベルが下がる影響が大きいことの結果である。
中性子吸収体物質量の影響は大きいがそれとは対照的に、機能強化ピン110B内に核燃料物質を配置する場合(配置F4)は、炉心からの中性子の流れを受け、機能強化ピンからの中性子発生分が加わり中性子束レベルが増加する効果が表れている。
機能強化ピン110B内にPu冨化度4%の核分裂物質層を配置する場合(配置F4)を含め、本構造体を適用する原子炉の炉心燃料集合体の長さ等の形状に合わせて、本構造体の運転中の熱的な境界条件の調整に、減速材・中性子吸収物質との組み合わせが有効な手段となる。
図9Gに、反応度価値について数値的検討を行った他の物質配置の2つの場合(F25、F33)を示す。この2つの配置は、鉛直方向から見てデバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111Aの下端より下方で、再固化燃料受け領域111Aaaの上端より上方の中間位置レベルの機能強化ピン110B内に、核燃料物質を配置する場合であり、これらの層の効果を検討した。
デバイス燃料ピン110Aの構成との関係を示すために、デバイスの動作前後のデバイス燃料ピン110Aの状態を合わせて示した;
配置F25:Pu冨化度25%の核分裂物質層を配置する場合。
配置F33:Pu冨化度33%の核分裂物質層を配置する場合。
図9Hに、配置B1の反応度価値を基準として、配置F25、F33の反応度価値の相対値((配置F25、F33の反応度価値)/(配置B1の反応度価値を基準))を示す。
この2つの物質配置例は、デバイス燃料部111Aの中性子束レベルの増強の手段として、デバイス燃料部111Aの下端より下方で、再固化燃料受け領域111Aaaの上端より上方の中間位置レベルの機能強化ピン110B内に、核燃料物質を配置する場合である。
そこで核分裂反応により中性子が発生する機能が付加され、デバイス燃料部111Aの中性子束レベルを増加させる効果が大きいことが示されている。もともと機能強化ピン110Bの下部にはヒーターとしての核燃料物質(下部加熱領域113B)が配置されている。これはデバイス燃料部111Aの下端の温度を目標値レベルとするために冷却材の温度上昇のためであるが、炉心からの距離がはなれていることから、運転中はデバイス燃料領域の中性子束レベル増加への寄与は無視できる。この2つの物質配置例ではデバイス燃料部111Aの下端の温度を目標値レベルとするために冷却材の温度上昇のためだけでなく、さらに、再固化燃料受け領域111Aaa周辺に配置する中性子吸収物資の配置位置と炉心との位置関係に基づく要因がもたらす影響を打ち消し、反応度変化増大に寄与する機能を発揮する。
本構造体を適用する原子炉の炉心燃料集合体長さ等の形状に合わせて、本構造体の運転中の熱的な境界条件の調整に、中間領域の核燃料物質の組み合わせが有効な手段となる。
本構造体の構成では、デバイス燃料部111Aの出力、デバイ燃料ピン110A下部の下部加熱領域113Aの出力、機能強化ピン110Bの全体出力を、本構造体の運用における温度条件を満たすように出力量のバランスをとるために、機能強化ピン内に減速材層、中性子吸収層及び核燃料物質層を組み合わせて機能強化を図ることができる。事故時に動作する性能を確保できる組み合わせ配置の適正化ができる。
なお、デバイ燃料ピン110A下部の下部加熱領域113Aの出力、機能強化ピン110Bの全体出力が所定の範囲内で十分に得られる形状や核分裂燃料密度の仕様が選択できるが場合には、デバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111Aの下方位置には、再固化燃料受け領域111Aaaの位置より上方の中間位置レベルには、補助的な核燃料物質による加熱領域を配置しない選択ができる。かかる加熱領域を配置しなくてもデバイス燃料下端部の燃料温度が、事故時に所定のレベル以上とできるためである。機能強化ピン110B内の各種機能を有する物質配置との組み合わせにより、デバイス燃料下部の燃料物質配置を単純化することで本構造体の動作時の性能信頼性を高めることができる。機能強化ピン110B内に配置する核燃料物質を有する物質114b、114cにおいては、事故事象時にそれらの物質自身が溶融しないこと、機能強化ピン被覆管破損を生じさせない範囲の仕様を選択することになる。
図9Iは、機能強化ピン110B内に固体状の核燃料物質層、固体状の中性子吸収層、固体状の減速材層、及び、空隙部(ガスプレナム)を組み合わせた物質配置の例を示すものである。
本構造体の熱的な設定の基本は、定格運転状態では、この集合体に配分される冷却材流量は、炉心燃料集合体の被覆管温度と集合体出口温度の設定範囲となるように設定されることになる。燃料部分は燃料領域21の範囲に入るが装荷軸方向長はその範囲の1/4~1/2程度であり、デバイス燃料部分の長さは、炉心燃料集合体の軸方向燃料長の半分以下であり、本構造体内のデバイス燃料ピンと機能強化ピンのそれぞれのピン内の下部に核分裂発熱領域である下部発熱領域113A、113Bが配置されている。デバイス燃料中の核分裂性物質割合が同一とすると、たとえば1/2のときはスメア密度25%、1/4のときはスメア密度50%とすることに対応する選択ができる。
デバイス燃料部111Aのデバイス燃料物質は例えば、合金でU-Pu-10at%FeやU-10at%Feを用いることができる。下部発熱領域113A、113Bの予加熱燃料物質は例えば、デバイス燃料物質より溶融温度が高い合金ではU-Pu-10wt%ZrやU-10wt%Zrを用いることができる。
また、中性子吸収体作用を有する固体燃料物質には例えば、劣化Uまたは天然Uまたは回収UのZr合金(U-10wt%Zr)や(Mo合金(U-Mo))を用いることができる。また、固体中性子吸収体物質には例えば、ボロンカーバイド(B4C;ボロンB中の同位体B10の比率は天然ボロン以上のもの)や、ユーロピウムEuとボロンの結合体(EuB6)またはハフニュームHfを利用できる。
符号114BBaは減速材層である。機能強化ピン110B内で上部に配置されている減速材層114BBaの機能は、デバイス燃料部111Aの上端は冷却材温度が最も高くなるのでデバイス燃料ピン110A内の燃料温度が高くなることに加えて、炉心側から供給される中性子による発熱密度(線出力)が大きい。運転中は運転用制御棒が徐々に引き抜かれてことにより、炉心の中性子束の軸方向最大となる位置が変動する。減速材の散乱能力により、この炉心領域の変動をデバイス燃料部111Aに対して緩和する。減速材層114BBaの位置として、デバイス燃料部111Aの上端から5cmから15cmの長さの領域としている。中性子平均自由工程長さ(およそ15cm)以内で燃料要素としてのデバイス燃料部111Aの上端に大きな局所出力ピーク発生を回避する例である。
符号114BBbは核燃料物質層である。核燃料物質層114BBb(核燃料物質は例えば、Pu-U-10wt%Zr(核分裂性物質密度は核燃料物質層114cより低い。))は、運転中の中性子束レベルの高い軸方向位置における発熱量の変動を抑制し、デバイス燃料部111A位置の中性子束レベルの低下を防き、落下反応度の大きさを確保するためである。
符号114BBcは核燃料物質層である。核燃料物質114BBc(核燃料物質は例えば、Pu-U-10wt%Zr(核分裂性物質密度は核燃料物質層114BBbより高い))は、炉心内で中性子束軸方向分布がつくので、デバイス燃料部111Aのプルトニウム冨加度を軸方向に一様とすると線出力が低下する。このために符号114BBc位置に配置する核燃料物質114BBcからの核分裂中性子によるデバイス燃料部111Aの軸方向下部の中性子束レベルの軸方向平坦化をもたらす。この結果、デバイス燃料部111Aの下部位置の温度が上昇し、軸方向温度分布平坦化機能を果たす。これによって、事故時にデバイス燃料要素溶融が軸方向の広い範囲で生じ、溶融落下が促進され、負の反応度挿入率を大きくする効果をもたらす。また、デバイス燃料内の中空燃料において、軸方向にプルトニウム冨加度分布を持たせることを避けることができる。
符号114BBdは中性子吸収層である。中性子吸収層114BBd位置は、炉心下端より下方に配置する。中性子吸収体密度は中性子吸収層114BBeより低い。本デバイス動作時に、デバイス燃料ピン110A内で落下する溶融燃料の一部が何らかの理由で被覆管内面に付着・凝固したとき、炉心に近い位置に落下する燃料の一部が再固化すると、炉心近傍に燃料が残るので、反応度的にプラス効果となり、燃料落下反応度を低下させる作用を有する。落下燃料が再固化する軸方向位置の本構造体断面全体としての炉物理量νΣf/Σa(当該断面位置の混合物質の無限増倍率)を低くするためである。断面全体の中性子吸収能力を示すマクロ断面積Σsの値を大きくする上で中性子吸収物質が寄与する。なお、落下燃料の一部がこの軸方向位置の被覆管内面に付着・凝固したしても、量的に限られるので、中性子吸収体密度は114BBeの吸収体密度より低くしてよい。
符号114BBeは中性子吸収層である。中性子吸収層114BBeは、動作時に溶融落下燃料が再固化し、高い密度となる領域である(落下燃料受け機能を有する位置)。そのために、中性子吸収物質中の中性子吸収体密度は中性子吸収層114BBdより高くなる。
一方、炉心燃料ピン・集合体の軸方向仕様の選択によっては、デバイ燃料ピン110A下部の下部加熱領域113Aの出力、機能強化ピン110Bの全体出力が所定の範囲内で十分に得られる形状や核分裂燃料密度の仕様が選択に条件が課せられる。このような場合には、デバイス燃料ピン110Aのデバイス燃料部111Aの下方位置には、再固化燃料受け領域111Aaaの位置より上方の中間位置レベルには、補助的な核燃料物質による加熱領域を配置する選択ができる。
図9Jは、中空低融点合金からなるデバイス燃料部111AAの直下に中空高融点合金からなる燃料部111ABを有し、機能強化ピン内に固体状の核燃料物質層、固体状の中性子吸収層、固体状の減速材層、及び、空隙部(ガスプレナム)を組み合わせた物質配置の例を示す縦断面図である。図9Jにおいて、図9Iその他で示した符号と同じ符号の構成要素は同じ機能を有する。
ここで、「低融点合金」とは、融点800℃以下の合金を意味し、Fe合金を例示できる。また、「高融点合金」とは、融点1000℃以上の合金を意味し、Zr合金を例示できる。中空高融点合金からなる燃料部111ABは、作動中のデバイス燃料部111AAの温度低下を防止する機能として配置され、定格運転時の低融点合金の上端温度を指定の温度とするために発熱量を適正化するものである。
機能強化ピン内に固体状の中性子吸収層の一部が、デバイス燃料ピン中の中空高融点合金からなる燃料部111ABと同じ軸方向位置に配置されている。
デバイス燃料ピン110Aにはデバイス燃料111Aの下方に、この補助的な核燃料物質による加熱領域113Aが配置された例を示している。
本構造体においては、デバイス燃料ピンと機能強化ピンのそれぞれのピン内の下部に核分裂発熱領域である下部発熱領域113A、113Bが配置されていることに加え、デバイス燃料111AA下端の温度を所定の範囲とするために、“中空燃料部(デバイス燃料よりも融点が高い)”111ABを設置することができる。中空部の大きさと燃料組成仕様は、デバイス作動時に、溶融したデバイス燃料の落下通過を、この補助的な核燃料物質による加熱領域が妨げない範囲に設定することになる。
機能強化ピンの機能として、デバイス作動時に、溶融したデバイス燃料が、この補助的な核燃料物質による加熱領域111ABが妨げる深層防護の考え方を適用した時に、機能強化ピンの機能として、この補助的加熱領域と重なる軸方向領域の長さを含む位置に、中性子吸収体114BBdや114BBeを配置し、燃料落下中または一時的な滞留状態において、炉の反応度が増加しないようにする物質配置を選ぶことになる。この領域の上下の範囲は、図9Iの機能強化ピン110Bと同様の考え方で設定できる。
別な実施形態として、機能強化ピンにおいてはナトリウムボンド形態を利用することが可能である。実施例では、核燃料物質としてはPu-U-10wt%Zr、中性子吸収物質としてはボロンカーバイド、減速材としてはボロン10割合を小さくした減損ボロンカーバイドを用いているが、これはいずれの物質もナトリウムとの化学的共存性は良好なためである。また、この場合には核燃料物質には窒化物形態も利用できる。
さらに、別な実施形態として、核燃料物質として酸化物形態(ヘリウムボンド型ピン)を利用できる。ただし、この場合は、炉心から離れた下部加熱領域など運転中の燃料温度上昇の少ない領域に限定することが望ましい。事故時に酸化物燃料の温度が、運転時の燃料温度より下がることによるドップラー効果による正の反応度効果が生ずるためである。この影響が無視できる領域で酸化物形態の核燃料物質を機能強化ピン内に配置することができる。
事故時の初期段階で炉心燃料・冷却材・構造材の温度が上昇する場合、炉心を構成する燃料物質の固有に有するドップラー効果や熱膨張による密度変化に対応する正負の反応度変化要因がある。上記で記述した機能強化ピン中に酸化物形態の燃料物質をヒーター機能として利用できるが、酸化物燃料の利用形態(ヘリウムボンド型ピン)や物性(合金燃料き比較して熱伝導が小さい)による事故時の温度変化量により、ドップラー効果は正側に作用すると過渡挙動中の炉出力を高めにする作用要因となる。この要因を負として過渡挙動中の炉出力を低下させる方策として、本構造体のデバイス燃料ピン・機能強化ピン中に、熱伝導度のよい合金燃料を利用することができる。この機能は本構造体の炉内の本数が炉心燃料集合体本数に比較して少ないので、炉心燃料のドップラー効果に比べて小さいが、金属燃料ピンの特徴として冷却材温度上昇事象にともない合金燃料温度が上昇するという熱伝導度のよいという特徴(被覆管・燃料の熱伝導が早いこと、燃料自体の熱伝導度がよいことによること)を利用できる。図9Jにその実施例を示した。デバイス燃料ピンでは、デバイス燃料が配置されない、炉心中心レベルより上に、デバイス燃料物質(U-Pu-10at%Fe)より融点の高いU-Pu-10wt%Zr合金が利用できる。中空燃料(被覆管内面に密着させ、スメア密度は75%以下)で、かつドップラー係数に寄与の多いU238を含むものを配置する。U238/Pu比率は、デバイス燃料より小さくし、この合金燃料の出力を抑制する範囲となるように配置量を設定することが考えられる。また、機能強化ピンにも炉心中心レベルより上にドップラー効果を増強するために、配置できる。機能強化ピン内の配置は、機能強化ピン機能を果たすための他の領域の物質・形状と合わせて、中空形態だけでなく、ナトリウムボンドとの組み合わせで中実合金燃料も利用可能である。また、このU238を多く含む付加的ドップラー効果のための工夫を、デバイス燃料に含める場合、機能強化ピンに含める場合の組合せまたはどちらか一方とするかを含め仕様・ピン本数は、事前に事故時の炉心の過渡特性の特徴により選択することができる。
本実施形態に係る炉心損傷防止構造体が機能強化ピンに核燃料物質層を備える場合、原子炉内にドライバー燃料とは異なる新たな核燃料物質の利用を図るものである。
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。
第3実施形態に係る炉心損傷防止構造体では、デバイス燃料ピンの下部に位置する空隙領域から下のピン径をそれより上のピン径より細く絞った構成を有する点が先述した実施形態に係る炉心損傷防止構造体と異なる。また、図10に示す例では、デバイス燃料ピンのピン径の変化に合わせて機能強化ピンも上部のピン径よりも下部のピン径を増加させた構成とした。なお、同じ符号を有する部位で既に説明したものは同様な機能を有するものとして詳細な説明を省略する。
図中の2つの点線のうち、上に配置する点線はデバイス燃料ピンの中心孔を有するペレット状又は棒状の積み重ねた燃料配置領域の上端を示すものであり、下に配置する点線は炉心領域の下端レベルを示すものである。
図10に示す炉心損傷防止構造体120は、デバイス燃料ピン120Aが、事故時にデバイス燃料部111Aから液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料が溜まる部位のピン径が、定常運転時にデバイス燃料部111Aが配置する部位120Aaのピン径よりも細い細径部を120Ab有する。
この構成によって、デバイス作動後に溶融落下し、下部の空隙部に移動して再固化・蓄積するデバイス燃料物質の体積割合を、集合体断面内で減少させることができる(再固化・蓄積するデバイス燃料物質の軸方向長さは大きくなる)。
また、図10に示す炉心損傷防止構造体120は、機能強化ピン120Bが、鉛直方向に直交する方向から見て、デバイス燃料ピン120Aの細径部120Abに重なる部位に、定常運転時にデバイス燃料部111Aが配置する部位に重なる部位120Baのピン径よりも太い太径部120Bbを有する。
この構成によって、機能強化ピンに内包する中性子吸収作用能力の大きい物質の体積割合を、集合体断面内で増加させることができる。
図10に示す炉心損傷防止構造体120において、機能強化部114は中性子吸収層114Ba以外に、図9Iに例示したような符号114BBa~114BBeで示した層を適宜、組み合わせて構成された層である。また、機能強化部114は適宜、ガスプレナムとして機能する空隙部を1つ又は複数有してもよい。
デバイス燃料ピン120A及び機能強化ピン120Bの組み合わせによって、デバイス作動後の炉の反応度を負側に導くことが可能となることになる。機能強化ピンに内包する中性子吸収作用能力の大きい物質配置との組み合わせで、集合体内に配置するピンの直径を上下で変化させることにより炉の反応度をできる。
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。
第4実施形態に係る炉心損傷防止構造体では、機能強化ピンが下部加熱領域113B以外に、その上方に加熱領域を有する点が先述した実施形態に係る炉心損傷防止構造体と異なる。図11に示す例では、機能強化部114の間に1つの加熱領域113Baを有する構成であるが、加熱領域113Baは離間して複数配置する構成であってもよい。また、加熱領域113Baは下部加熱領域113Bとは異なる組成や異なる物質からなる加熱領域であってもよいし、また、加熱領域113Baは離間して複数配置する構成において、それら複数の加熱領域113Baが異なる組成や異なる物質からなってもよい。なお、同じ符号を有する部位で既に説明したものは同様な機能を有するものとして詳細な説明を省略する。
図11に示す炉心損傷防止構造体130は、機能強化ピン130Bにおいて、下部加熱領域113B以外に、下部加熱領域113Bの上方に離間して加熱領域113Baを有する。すなわち、機能強化ピン130Bにおいて、加熱領域が分散配置されている。
かかる構成では、機能強化ピンに求められる発熱量を達成するための燃料中の核分裂性物質の割合の低減または発熱領域の長さを減少できる利点がある。
加熱領域と中性子吸収層とを交互に分散配置する構成では、中性子吸収作用能力の大きい物質領域の間に配置する核分裂発熱領域は、隣接するデバイス燃料ピン内の下部空隙部と隣接する構成にできる。デバイス作動後の溶融燃料の落下後の再固化領域は事前に予測できるので、機能強化ピン内の核分裂発熱領域の軸方向位置は、落下燃料の再固化位置と軸方向位置が重ならないように配置することができる。これにより、デバイス作動後の炉の反応度が図6aの例からの増大を抑制することができる。
デバイス燃料ピン130Aの構成としては、図10に示したデバイス燃料ピン120Aと同様な構成としてもよい。
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す縦断面模式図である。
第5実施形態に係る炉心損傷防止構造体では、デバイス燃料ピンの下部加熱発熱を含む下部が定常運転中は液体ナトリウムに浸漬されている、いわゆるナトリウムボンド型である構成である点が先述した実施形態に係る炉心損傷防止構造体と異なる。なお、同じ符号を有する部位で既に説明したものは同様な機能を有するものとして詳細な説明を省略する。
図12に示す炉心損傷防止構造体140は、デバイス燃料ピン140Aの下部加熱発熱113Aを含む下部が定常運転中は液体ナトリウム116に浸漬されている。
下部加熱発熱113Aを構成する加熱用燃料物質としてU-Pu-Zr合金、U-Zr合金などを用いることができる。
デバイス作動によって溶融落下するデバイス燃料の温度は、デバイス燃料ピン140A内のナトリウムの温度より高いので溶融した金属合金燃料がナトリウム液面に落下することにより冷却が進むので合金燃料が微粒子化して再固化する(非特許文献2参照)。これによって、落下後の燃料物質の空間密度が低減するので、落下後の炉の反応度の低減化につながる。隣接する機能強化ピン140B内に配置される中性子吸収作用能力の大きい中性子吸収層114Baとの組み合わせによって、炉の反応度低下を促進できる。
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態に係る炉心損傷防止構造体を模式的に示す断面模式図であり、(a)は製造時の仕様例、(b)は30%スウェリングによる膨張時の例であり、具体的な寸法は以下の通りである;
(a):被覆管外径:8.5mm、被覆管内径:7.5mm、合金燃料外径:7.5mm(合金燃料外周は被覆管内周と密着)、合金燃料内径:6.5mm。
(b):被覆管外径:8.5mm、被覆管内径:7.5mm、合金燃料外径:7.5mm(合金燃料外周は被覆管内周と密着)、合金燃料内径:6.18mm。
第6実施形態に係る炉心損傷防止構造体では、デバイス燃料部が、被覆管内の円環上の金属合金燃料の中心孔の断面積と金属合金燃料の外径で決まる断面積比が、原子炉内に装荷され中性子照射前の状態である前記(a)に対して、0.5以下(スメア密度50%以下)となるように形成されてなる。
デバイス燃料部を構成する金属合金燃料(U-Pu-10wt%Zr、U-Pu-10at%Feなど)は一般的に炉内で運転中に核分裂反応により中性子スウェリングが発生して膨張し、体積で約25%程度断面が増加する。そのため、金属合金燃料をスメア密度75%として設計検討・照射挙動試験が行われてきた。その結果、金属合金燃料(U-Pu-10wt%Zr、U-10wt%Zr、U-Pu-10at%Fe、U-10at%Fe等)は、スメア密度75%以下とすると被覆管断面部分内まで広がるが被覆管と機械的相互作用をするスウェリング力は大きくならないが、実効密度を低減してピン内まで広がることが知られている。
図13に示す例では、燃料製造初期状態では被覆管と燃料要素の形状例として25%スメア密度としたときのデバイス燃料ピンのデバイス燃料の断面仕様である。この例ではデバイス燃料が30%照射スウェリングを受けても中空孔が残る。中空金属合金燃料は初期のスメア密度50%の場合でも30%照射スウェリングによる内径が縮小すると中心孔径は約3.41mm(合金肉厚3.09mm)となる。したがって、定格運転状態から原子炉停止機能喪失(ATWS)事象が発生し、溶融したデバイス燃料の落下は可能である。
(下部加熱領域の効果)
デバイス燃料ピン及び機能強化ピンの双方の下部位置に下部加熱領域を有する構成については上述した。
これら下部加熱領域の金属合金燃料は中空または中実のいずれも選択可能である。これらの核分裂による発熱量は、デバイス燃料の下端位置における冷却材温度上昇を決めるヒーター機能を果たしている。デバイス燃料は熱伝導度が大きい合金燃料であり、また、デバイス燃料ピンの被覆管内面に接触・付着するかたちで設置されているので、冷却材温度上昇量はデバイス燃料の温度決定にも大きく作用している。
図14A(a)に軸長さ100cmを有する炉心燃料ピンの概略図を示す。また、図14A(b)にデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの概要を示す。ただし、双方のピン内の物質配置は運転中に主要な発熱源となる領域に対応する部分のみを図示している。この例では、中空合金燃料であるデバイス燃料部は炉心中心面から下部に30cm(炉心燃料軸長さの約1/3)の例を示す。
図14A(c)のグラフは、横軸に温度、縦軸に炉心下端からのデバイス燃料下端からの軸方向位置を示している。
定格運転中に冷却材の入口温度395℃からの冷却材ナトリウムの温度上昇の様子を実線で示されている。本実施例の定格運転時では、デバイス燃料が固体であるので制限燃料温度は567℃以下としている。本実施例のU-Pu-10at%Feの固相温度はおよそ630℃で、それ以上の温度で溶融がはじまり、およそ780℃超で液相になる。一方、燃料温度評価には工学的安全係数を考慮した上述の定格運転における制限燃料温度値となる冷却材流量を設定している例である。下部ヒーター領域でナトリウム温度が上昇し約473℃となり、デバイス燃料部の発熱により集合体出口では約503℃となっている。デバイス燃料部の中心温度は短い破線で示され上端位置で約566℃となり、U-Pu-10at%Feの固相温度630℃以内となる流量が流れている。
流量低下型のATWS(ULOF)発生時には入口ナトリウム温度は変わらないので下端で395℃であり、ドライバー燃料内の冷却材沸騰前の状況(出力P/流量F比3時点)のデバイス燃料内のナトリウム温度の軸方向分布が一点鎖線で示されている。流量低下に伴うナトリウム温度上昇幅が約3倍と拡大していることが分かる。さらにデバイス燃料部の発熱分を加えるとナトリウム出口温度は約720℃となっている。これは冷却材ナトリウム温度の沸点約880℃十分低い。
一方、このグラフの右側には間隔の詰まった鎖線で表示されている温度は前述のP/F=3に到達した時点のデバイス燃料部の中心温度で、この時点で、本実施例では出力は定格の40%程度に低下しているが、デバイス燃料上端からおよそ20cm下方の領域で燃料移動開始温度695℃(粘性後低下落下可能とする温度;固相割合40%、液相割合60%、温度がさらに高い状態では粘性が一層低下し流動性が上がる)を超えていることを示している。このためデバイス燃料の中心孔表面における溶融と中心孔表面を伝い下部方向に落下が開始され、負の反応度が投入される。このように、下部ヒーター領域を配置することは不可欠であり、さらに所要の発熱量が得られるようにすることが、デバイス作動のために重要な機能を果たすことが分かる。
反応度印加型のATWS(UTOP)発生時に相当する結果を図14Bのグラフに示す。入口ナトリウム温度は変わらないので下端で395℃であり、冷却材流量F=1(定格時)の状態で、炉心出力が2倍(P=2,P/F=2)となっている。このときドライバー燃料内の冷却材沸騰前の状況(出力P/流量F比2)のデバイス燃料内のナトリウム温度の軸方向分布が一点鎖線で示されている。デバイス燃料下端温度はほぼ液相形成温度695℃になり、作動する状況になっていることを示している。
ULOF,UTOPの両方の事故事象に本構造体が有効に設定できることを示した。
ここまでの実施例ではデバイス燃料物質がU-Pu-10at%Feとして説明した。固相―液相境界温度などの物性値が異なる物質であるU-10at%Feも、基礎物性値に対応するデバイス燃料や機能強化ピン内の物質配置の調整により、本構造体に利用できる。
(原子炉炉心の変形例)
上述した通り、本発明に係る炉心損傷防止構造体は種々の態様が可能であり、原子炉炉心が備える複数の炉心損傷防止構造体は、すべて同じ態様ものとすることもできるし、一部が異なる態様とすることもできる。また、すべてが異なる態様ものとすることもできる。複数の炉心損傷防止構造体の態様は任意に選択可能である。
図15Aに示す原子炉炉心10Aは、デバイス燃料の組成・形状が異なるまたは同時に機能強化ピンの本数や配置の違いを持つ、タイプI型の炉心損傷防止構造体、タイプII型の炉心損傷防止構造体を備える例である。
炉内の径方向中性子束の勾配が大きくなる位置へ配置されるデバイスと径方向中性子束分布の勾配が小さい領域に配置されるデバイスとはデバイス燃料ピンと機能強化ピンの配置パターンや本数比を調整して、多数の本デバイス動作における非同時性を小さくするための手段の一つとなる。図15Bに、(a)タイプI型と、(b)タイプII型の例を示した。この実施例では、炉心中央部に配置されているタイプI型と、それらより外側に配置されるタイプII型では、デバイス燃料下端位置の冷却材温度上昇が所定の範囲で一致するようにデバイス燃料ピン・予加熱燃料ピン内の下部ヒーター(下部発熱領域)113A、113Bの位置や下部ヒーター113A、113Bに含まれる核分裂性物質の割合を調整し、下部ヒーター位置に到達する中性子束レベルの違いの影響を小さくする工夫例である。この結果、本構造体動作時に投入される負の反応度挿入率の低下を回避することに寄与する。
図16を用いて、デバイス燃料ピン及び機能強化ピンが備える下部加熱領域の設計について、炉心燃料集合体の構成との関係を説明する。
図16に、2種類の炉心燃料ピンを示す。
炉心燃料ピン32は図5(a)に示したものと同様であり、軸方向に下側から順に、下部ガスプレナム32d、下部軸ブランケット32b、炉心燃料部(炉心燃料ペレット)32a、上部軸ブランケット32c及び上部ガスプレナム32dが配置し、上部及び下部を端栓で溶接密封されている。
炉心燃料ピン32Bは下部軸ブランケットを有さない点が炉心燃料ピン32と異なり、軸方向に下側から順に、下部ガスプレナム32Bd、炉心燃料部(炉心燃料ペレット)32Ba、上部軸ブランケット32Bc及び上部ガスプレナム32Bdが配置し、上部及び下部を端栓で溶接密封されている。
また、炉心燃料ピン32と炉心燃料ピン32Bとの間に、本発明に係る炉心損傷防止構造体100exを具体的な寸法例と共に示している。図中の炉心損傷防止構造体100exの各寸法とそれに対応する構成要素を上から順に示す;
10cm:上部ガスプレナム
20cm:上部軸ブランケット
50cm:炉心中心から炉心上端までの距離
30cm:デバイス燃料部111A
20cm:デバイス燃料部下端から炉心下端までの距離
20cm:炉心下端から下部軸ブランケット下端までの距離
30cm:下部軸ブランケット下端からボロンカーバイド(B4C)上端までの距離
5cm:ボロンカーバイド(B4C)
40cm:下部ヒーター(下部発熱領域)
40cm:ガスプレナム
炉心損傷防止構造体のデバイス燃料ピン及び機能強化ピン内に配置される下部発熱領域の発熱量は、下部発熱領域における中性子束レベルと核分裂性物質の濃度が発熱量を決める主要因である。中性子束レベルは、デバイス燃料集合体上部から漏れ出してくる中性子のほかに、炉心領域から流れてくる中性子量によって決まる。
図16では、2種類の炉心燃料ピンを示したが、各炉心燃料ピンをそれぞれ備える2種類の炉心燃料集合体と、デバイス燃料ピン及び機能強化ピンが備える下部加熱領域との関係を説明する。
図16は、デバイス燃料ピン及び機能強化ピンと、炉心領域の炉心燃料部分(核分裂中性子発生源)と下部軸ブランケット領域の位置関係の概要を示すものである。下部軸ブランケット領域は、中性子吸収能力の大きいU238(親物質)を主成分とし、炉心から流れ出す中性子を吸収して燃料物質を生成する機能を有するので、この領域を透過する中性子束レベルは低下する。一方、この領域をガスプレナム領域とすることで、炉心領域からの中性子透過が増加する。この特徴を本炉心損傷防止構造体内の下部発熱領域の位置・サイス・組成と組み合わせることによって、例えば、下部発熱領域のU-Pu-10wt%Zr燃料中のPu/U比率の低減や下部ヒーター領域の体積の低減が可能となる。
図17に、図16に示した“下部軸ブランケット無し“の炉心燃料集合体を配した原子炉炉心の水平断面図を示す。
図17に示す原子炉炉心10Bは、本発明に係る16本の炉心損傷防止構造体100の周りに、81本の“下部軸ブランケット無し“の炉心燃料集合体30B(△で示した炉心燃料集合体)を備える。
下部軸ブランケットの量は炉心の燃料冨化度や増殖比などへの影響があるので、炉心設計の要求に応じて調整可能である。
(原子炉)
図18は、本発明に係る炉心損傷防止構造体及びそれを備えた原子炉炉心を適用した高速炉の概要を示す縦断面図である。
高速炉1000は、本発明に係る炉心損傷防止構造を備えた原子炉炉心1100を有する。炉心1100は炉心支持板4に支持される。原子炉容器2は、これらを収納しかつ冷却材150を内部に保持する。原子炉容器2の上部を覆う遮へいプラグ11を有する。
炉心燃料集合体30等で構成される原子炉炉心1100の上方には、遮へいプラグ11を貫通して、遮へいプラグ11に支持された炉心上部機構7が、原子炉容器2内に向けて吊り下げられている。炉心上部機構7は、制御棒集合体15(図1参照)を駆動する制御棒駆動機構7aや、図示しない高速炉炉心計装等を有する。
原子炉容器2には、冷却材150を原子炉容器2に送り込む冷却材入口配管8と、冷却材150を原子炉容器2から送り出す冷却材出口配管9が接続されている。
冷却材入口配管8から原子炉容器2内に流入した冷却材150は、下部プレナム2aに流入する。下部プレナム2aに流入した冷却材150は、上方に方向転換した後に、炉心支持板4から原子炉炉心1100に流入し、原子炉炉心1100で熱を受け原子炉炉心1100を通過後に、上部プレナム2bに流入する。上部プレナム2bに流入した冷却材150は、冷却材出口配管9を通って、外部との熱交換のために原子炉容器2から流出する。
100 炉心損傷防止構造体
100A デバイス燃料ピン
100B 機能強化ピン
111A デバイス燃料部
113A 下部発熱領域
113B 下部発熱領域
114 機能強化部
114Ba 中性子吸収層
114Bb 第2中性子吸収層
114Bc 核燃料物質層
114Bd 減速材層
115A 遮蔽層

Claims (13)

  1. 原子炉の炉心に、核分裂性物質を含む燃料を有する燃料集合体と共に並列に配され、鉛直方向に延びる炉心損傷防止構造体であって、
    複数のデバイス燃料ピンと複数の機能強化ピンとを備え、
    前記デバイス燃料ピンは、前記燃料集合体が有する前記燃料より低い融点の核分裂性物質を含む燃料からなるデバイス燃料部と、該デバイス燃料部よりも下方に離間して配置する遮蔽層と、を有し、
    前記デバイス燃料部は、前記鉛直方向に延びる中心孔を有する中空形状の部位であって、定常運転時に固体であり、事故時には周囲の冷却材温度が上昇することにより前記炉心の燃料より先に溶融して液相化し、少なくとも一部が前記デバイス燃料ピンの下部へ流れ落ちるものであり、
    前記遮蔽層は、前記液相化して流れ落ちてきた前記デバイス燃料部の少なくとも一部を受け止めうるように、前記デバイス燃料部よりも融点が高い物質からなり、
    前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、事故時に前記遮蔽層上に溜まったデバイス燃料と重なる位置に中性子吸収層を有する、炉心損傷防止構造体。
  2. 前記デバイス燃料ピンは、下部に核分裂物質を含む下部発熱領域を有する、請求項1に記載された炉心損傷防止構造体。
  3. 前記機能強化ピンは、下部に核分裂物質を含む下部発熱領域を有する、請求項1又は2のいずれかに記載された炉心損傷防止構造体。
  4. 前記遮蔽層は中性子吸収作用及び断熱作用を有し、厚みが中性子平均自由工程の1/3又は5cm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  5. 前記機能強化ピンは、中性子吸収層よりも上方であって、前記原子炉の炉心に配備されたときに該炉心を構成する炉心燃料集合体の燃料要素の下端より下方に、前記中性子吸収層と異なる物質又は前記中性子吸収層と同じ組成であるが異なる密度の物質からなる第2中性子吸収層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  6. 前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料部と重なる位置に核燃料物質を含む核燃料物質層を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  7. 前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料部の上端近傍に減速材層を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  8. 前記デバイス燃料ピンは、事故時に前記デバイス燃料部から液相化して流れ落ちてきたデバイス燃料が溜まる部位のピン径が、定常運転時に前記デバイス燃料部が配置する部位のピン径よりも細い細径部を有し、
    前記機能強化ピンは、前記鉛直方向に直交する方向から見て、前記デバイス燃料ピンの細径部に重なる部位に、定常運転時に前記デバイス燃料部が配置する部位に重なる部位のピン径よりも太い太径部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  9. 前記デバイス燃料ピンのデバイス燃料部は中心孔を有する中空金属合金燃料からなり、前記デバイス燃料部は、原子炉内に装荷され中性子照射前の状態において、被覆管内の円環上の金属合金燃料の中心孔の断面積と金属合金燃料の外径で決まる断面積比が0.5以下(スメア密度50%以下)となるように形成されてなる、請求項1~8のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  10. 前記機能強化ピンは、前記中性子吸収層より上方に、核分裂物質を含む発熱領域を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載された炉心損傷防止構造体。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の複数の炉心損傷防止構造体と、
    互いに並列に配され鉛直方向に延びて固体状の燃料を有する複数の炉心燃料集合体と、
    前記複数の炉心燃料集合体および前記複数の炉心損傷防止構造体と並列に配されて上下に移動可能な複数の制御棒集合体と、を備える、原子炉炉心。
  12. 請求項1~10のいずれか一項に記載の炉心損傷防止構造体が互いに隣接せずに配置しており、
    前記炉心損傷防止構造体が備えるデバイス燃料ピン及び機能強化ピンの本数の組み合わせが複数種類ある、請求項11に記載の原子炉炉心。
  13. 請求項1~10のいずれか一項に記載の炉心損傷防止構造体が互いに隣接せずに配置しており、
    下部軸ブランケット領域を有さない炉心燃料集合体を含む、請求項11又は12のいずれかに記載の原子炉炉心。
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