高速炉の燃料集合体及び炉心に関しては、平川直弘、岩崎智彦著「原子炉物理入門」、東北大学出版会、p279~286、2003年10月30日に記載されている。一般的に、高速増殖炉は、原子炉容器内に炉心を配置しており、冷却材である液体ナトリウムを原子炉容器内に充填している。その炉心に装荷される燃料集合体は、プルトニウムを富化した劣化ウラン(U-238を含むUO2)を封入した複数の核燃料要素(燃料棒)、束ねられた複数の核燃料要素を取り囲むラッパ管、これらの核燃料要素の下端部を支持し、さらに、核燃料要素の下方に配置された中性子遮へい体を支持するエントランスノズル、及び各核燃料要素の上方に位置する冷却材流出部を有する。
高速増殖炉の炉心は、内側炉心領域及びこの内側炉心領域を取り囲む外側炉心領域を有する炉心燃料領域、炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域及びブランケット領域を取り囲む遮へい体領域を有する。標準的な均質炉心の場合、外側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度は、内側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度よりも高くなっている。この結果、炉心の半径方向における出力分布が平坦化される。
燃料集合体の各核燃料要素に収納される核燃料物質の形態としては、金属燃料、窒化物燃料及び酸化物燃料がある。
Pu及び劣化ウランのそれぞれの酸化物を混合した混合酸化物燃料、すなわち、MOX燃料で製造された複数の燃料ペレットが、核燃料要素内で軸方向の中央部において80~100cm程度の高さに充填される。さらに、核燃料要素内には、劣化ウランで製造された複数の二酸化ウランペレットを充填した軸方向ブランケット領域が、MOX燃料の充填領域の上端よりも上方及びその充填領域の下端よりも下方にそれぞれ配置される。内側炉心領域に装荷される内側炉心燃料集合体及び外側炉心領域に装荷される外側炉心燃料集合体のそれぞれは、MOX燃料で製造された複数の燃料ペレットを軸方向の中央部に充填し、この中央部の上方及び下方のそれぞれに複数の二酸化ウランペレットを充填した複数の核燃料要素を有する。外側炉心燃料集合体のPu富化度は、内側炉心燃料集合体のそれよりも高くなっている。
炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域には、劣化ウランで製造された複数の二酸化ウランペレットを充填した複数の核燃料要素を有するブランケット燃料集合体が装荷される。炉心燃料領域に装荷された燃料集合体内で生じる核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏洩した中性子が、ブランケット燃料領域に装荷されたブランケット燃料集合体の各核燃料要素内のU-238に吸収される。この結果、ブランケット燃料集合体の各核燃料要素内において、核分裂性核種であるPu239が新たに生成される。
また、制御棒が、高速増殖炉の起動時、停止時及び原子炉出力の調節時に用いられる。制御棒は、炭化ホウ素(B4C)の複数のペレットをステンレス製の被覆管内に封入した複数の中性子吸収棒を有し、これらの中性子吸収棒を、内側炉心燃料集合体及び外側炉心燃料集合体と同様に、横断面が正六角形をしたラッパ管内に収納して構成される。制御棒は、主炉停止系及び後備炉停止系の独立した2系統の構成となっており、主炉停止系及び後備炉停止系のいずれか一方の制御棒のみで高速増殖炉の緊急停止が可能である。
上記は酸化物燃料を用いた例であるが、一方、Alan E. Walter等編著、高木直行監訳、“高速スペクトル原子炉”p.569,ERC出版、2016年11月1日には、金属燃料を用いた高速炉の例が記載されている。一般的に、金属燃料を用いる高速炉の炉心は、酸化物燃料(MOX)を用いる高速炉と比べると、核燃料物質に軽核種である酸素O2が含まれず、重金属の密度も大きいので、炉心の中性子スペクトルが硬く、増殖比が高いなどの利点がある。しかしながら、冷却材であるNa(ナトリウム)が仮に沸騰した場合には、炉心に投入されるボイド反応度が大きくなる。スクラム失敗を伴う過渡事象(ATWS)のうち、外部電源喪失などでポンプ流量が低下する冷却材流量喪失(ULOF)に対しては、ボイド反応度を小さく出来れば安全性を向上することが可能となる。
酸化物燃料を用いた高速炉では、核燃料要素に形成されるガスプレナムは、核燃料要素内で軸方向の中央部のMOX燃料の充填領域の下方に配置された軸方向ブランケット領域の下端よりも下方に形成される。
一方、金属燃料を用いた高速炉では、核燃料要素が1本の丸棒状の金属燃料(燃料スラグ)である。この丸棒状の金属燃料の、中性子照射によるスェリングに伴う半径方向の膨張を吸収するため、その金属燃料棒のスミヤ密度が75%TDとなるように、核燃料要素の被覆管とこの被覆管内に収納された金属燃料丸棒との間に、比較的大きいギャップが設定され、液体金属Naがそのギャップ内にボンド材として充填される。このような核燃料要素内では、その金属燃料丸棒が液体金属Na内に浸漬されている。このため、ガスプレナムは核燃料要素内で核燃料物質充填領域よりも上方に形成される。
酸化物燃料を用いた高速炉では、炉心に装荷された各燃料集合体内において、高速炉の原子炉容器内の液体金属Naが存在するNaプレナム領域が、複数の核燃料要素の上端よりも上方に形成される。このNaプレナム領域には、核燃料要素束が存在していない。燃料集合体内のNaプレナム領域は、高速炉の冷却材流量喪失時のNa沸騰時に炉心上方に漏れる中性子を増やすことによって、Naボイド反応度を負にするためにもしくは小さくするために形成される。
金属燃料を用いた高速炉では、上述した通り、ガスプレナムが核燃料要素内で核燃料物質充填領域よりも上方に形成されるため、燃料集合体内で核燃料要素の上端よりも上方にNaプレナム領域を形成したとしても、炉心水平断面における、冷却材である液体金属Naの面積割合が小さいため、Naプレナム領域の形成によるボイド反応度の低減効果は小さい。
特開2016-85118号公報は、高速炉に用いられる燃料集合体を記載する。この燃料集合体は、核燃料物質を密封された被覆管内に充填した複数の核燃料要素をラッパ管内に配置しており、ラッパ管内で複数の核燃料要素の上方にNaプレナム領域が形成される。被覆管内の、核燃料物質が充填された核燃料物質領域の上端と被覆管の上端部を密封する上部端栓との間に、上部ガスプレナム領域が形成されており、この上部ガスプレナム領域内において核燃料物質領域の上端と上部端栓との間に、皿ばねを配置している。皿ばねの配置により、Naプレナム領域の構造材の体積割合が低減され、この結果、ボイド反応度が低減される。
特開2017-26372号公報も、高速炉に用いられる燃料集合体を記載する。この燃料集合体は、被覆管の軸方向に伸びる金属燃料丸棒を被覆管内でこの被覆管の横断面の中央部に配置し、金属燃料粒子を金属燃料丸棒と被覆管の内面の間に形成される環状間隙に充填して構成された複数の核燃料要素を有する。各核燃料要素は、筒状体であるラッパ管内に配置される。ラッパ管内で各核燃料要素の上端よりも上方に、Naプレナム領域が形成されている。金属燃料丸棒のマイナーアクチニド(MA)含有率は、金属燃料粒子のそれよりも高くなっている。マイナーアクチニド含有率が高い金属燃料丸棒が周囲に充填された金属燃料粒子によって被覆管の内面に接触することを防止し、燃料被覆管の健全性を向上させている。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料集合体を、図1ないし図3を用いて説明する。本実施例の燃料集合体は、高速炉の炉心に装荷される。
図2に示す本実施例の燃料集合体10は、外面にワイヤスペーサ(図示せず)が巻き付けられた複数の核燃料要素1の束を、横断面が正六角形の筒状の構造物であるラッパ管12内に配置している。複数の核燃料要素1は、ラッパ管12内で正三角形格子状に配置される。それぞれの核燃料要素1の下端部は、エントランスノズル(図示せず)によって支持される。ラッパ管12の下端部が、エントランスノズルに取り付けられる。巻き付けられたワイヤスペーサによって、隣り合う核燃料要素1の相互間に所定幅の間隙が形成される。この間隙は、冷却材である液体金属Naが流れる冷却材通路13である。エントランスノズルは核燃料要素1の下端部を支持する下部燃料支持部材であり、エントランスノズル内には、エントランスノズルの外部からラッパ管12内の冷却材通路13に液体金属Naを導く冷却材流路(図示せず)が形成されている。燃料集合体10のラッパ管12内で各核燃料要素1の上端よりも上方に、ナトリウムプレナム(冷却材プレナム)11が形成される。ナトリウムプレナム11には、核燃料要素1が存在しない。
核燃料要素1の構造を図1を用いて詳細に説明する。核燃料要素1は、第1核燃料領域2、第2核燃料領域3、被覆管4及び中間端栓7を有する。被覆管4は、上端部が上部端栓5で封鎖され、下端部が下部端栓6で封鎖されて密封されている。複数の貫通孔が形成された中間端栓7が、ステンレス鋼製の被覆管4内に配置されて被覆管4の内面に固定され、被覆管4内を核燃料物質領域9とガスプレナム8に分離している。ガスプレナム8は中間端栓7の下方に形成され、核燃料物質領域9はガスプレナム8の上方であって中間端栓7よりも上方に配置される。中間端栓7に形成された複数の貫通孔は、ガスプレナム8と核燃料物質領域9を連通している。
核燃料物質領域9は、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3を含んでいる。第2核燃料領域3は中間端栓7上に配置される。第2核燃料領域3には、Pu富化度がPu3(wt%)の、3元合金であるU-Pu-Zrの金属燃料粒子が多数充填される。第2核燃料領域3よりも上方に配置された第1核燃料領域2には、Pu富化度がPu2(wt%)の、3元合金であるU-Pu-Zrの金属燃料粒子が多数充填される。Pu2>Pu3を満足しており、上方に位置する第1核燃料領域2のPu富化度は、下方に位置する第2核燃料領域3のPu富化度よりも高くなっている。なお、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれにおけるMA富化度は、0wt%である。すなわち、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3は、共に、マイナーアクチニド(MA)を含んでいない。
なお、Pu富化度Pu2(wt%)及びPu3(wt%)は燃焼度0GWd/tの燃料集合体10でのPu富化度であり、MA富化度0wt%は燃焼度0GWd/tの燃料集合体10でのMA富化度である。
第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれに充填された金属燃料粒子のPu富化度が過大となると、被覆管4と被覆管4の内面に接触するそれらの金属燃料粒子との共晶反応により被覆管4の融点が低下して被覆管4の健全性に影響を及ぼす可能性がある。一次冷却材である液体金属Naの温度が550℃の場合には、燃焼度0GWd/tのときの燃料集合体内の金属燃料のPu富化度(=Pu/(U+Pu)×100)の上限は25wt%とされている。したがって、Pu富化度Pu2の上限は、燃焼度0GWd/tのときの燃料集合体において25.0wt%である。なお、金属燃料粒子におけるZrの含有率が実績の豊富な10wt%の条件では、燃焼度0GWd/tのときの燃料集合体におけるPu富化度25.0wt%は、Pu含有率(=Pu/(U+Pu+Zr)×100)で22.5wt%に相当する。ここで、Pu富化度は金属燃料であるU-Pu-Zrに含まれるU及びPuの核燃料物質の合計重量に対するPuの重量割合を意味しており、Pu含有率は金属燃料全体に対するPuの重量割合を意味している。
なお、Pu富化度の下限は、炉心平均で12wt%である。このため、核燃料要素1において、第1核燃料領域2におけるPu富化度の下限値は13.1wt%であり、第2核燃料領域3におけるPu富化度の下限値は10.9wt%である。
第1核燃料領域2に充填された金属燃料粒子のPu富化度は、25.0wt%以下の範囲で、例えば、23wt%である。また、第2核燃料領域3に充填された金属燃料粒子の富化度は、燃焼度0GWd/tのときの燃料集合体において、第1核燃料領域2に充填された金属燃料粒子のそれよりも低い、例えば、20wt%である。第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれにおけるZrの含有率は10wt%である。なお、燃焼度0GWd/tのときの燃料集合体において、第2核燃料領域3に充填された金属燃料粒子の富化度の上限値は、第1核燃料領域2に充填された金属燃料粒子のPu富化度の上限値である25.0wt%よりも低い。すなわち、第2核燃料領域3に充填された金属燃料粒子の富化度の上限値は25.0wt%未満である。
金属燃料粒子の替りに棒状の金属燃料を用い、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれに棒状の金属燃料を配置してもよい。第1核燃料領域2に配置されるその棒状の金属燃料の軸方向の長さは、第1核燃料領域2の軸方向の長さと同じにし、第2核燃料領域3に配置されるその棒状の金属燃料の軸方向の長さは、第2核燃料領域3の軸方向の長さと同じにする。なお、第1核燃料領域2の軸方向の長さよりも軸方向の長さが短い複数本の棒状の金属燃料を第1核燃料領域2に配置し、第2核燃料領域3の軸方向の長さよりも軸方向の長さが短い複数本の棒状の金属燃料を第2核燃料領域3に配置することも可能である。
核燃料要素1の第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれにおける金属燃料粒子の充填率は、スエリングによる被覆管4の破損を回避するために約75%を超えないように、金属燃料粒子の粒径が調整されている。金属燃料粒子は粒子間に間隙を有するため、核分裂によって発生するガス状の核分裂生成物FP(Fission Product)は、中間端栓7に形成された複数の貫通孔を通して、核燃料物質領域9からガスプレナム8に移動することが可能であるので、本実施例においてガスプレナム8は核燃料物質領域9、すなわち、中間端栓7の下方に配置される。また、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3内に存在する金属燃料粒子は被覆管4と接触し、核分裂により金属燃料粒子内で発生した熱が、被覆管4を介してラッパ管12内の核燃料要素1相互間に形成される冷却材通路13内を上昇する液体金属Naに伝わり、除熱されるため、従来の核燃料要素のように被覆管内にボンドナトリウムを充填する必要がない。
本実施例の燃料集合体10は、高速炉の原子炉容器(図示せず)内に配置された炉心14に装荷される。この炉心14の概略構成を、図4を用いて説明する。複数の燃料集合体10が装荷された炉心14には、各燃料集合体10が複数の核燃料要素1を有する関係上、各核燃料要素1内に存在するガスプレナム8、第2核燃料領域3及び第1核燃料領域2に対応して、下方より上方に向かって、ガスプレナム領域18、第2核燃料層17及び第1核燃料層16が形成されている。すなわち、ガスプレナム領域18には各核燃料要素1のガスプレナム8が配置され、第2核燃料層17には各核燃料要素1の第2核燃料領域3が配置され、第1核燃料層16には各核燃料要素1の第1核燃料領域2が配置される。炉心14内の炉心燃料領域15は、第1核燃料層16及び第2核燃料層17を含んでいる。当然のことながら、第1核燃料層16のPu富化度は、第2核燃料層17のそれよりも高くなっている。炉心14内で、第1核燃料層16の上方には、燃料集合体10に形成されたナトリウムプレナム11に対応したナトリウムプレナム領域(冷却材プレナム領域)19が形成される。
高速炉の原子炉容器内には冷却材である液体金属Naが充填され、原子炉容器内に配置された炉心14は液体金属Na内に存在する。炉心14に装荷された各燃料集合体10は、その液体金属Naに浸漬されている。
高速炉の運転時では、原子炉容器内で炉心14よりも下方に存在する液体金属Naは、前述のエントランスノズル内に形成された冷却材流路を通して燃料集合体10のラッパ管12内に導かれ、核燃料要素1相互間に形成される冷却材通路13内を上昇する。核燃料要素1の外面に接触して上昇する液体金属Naは、核燃料要素1内の金属燃料粒子に含まれる核分裂性物質(例えば、Pu239)の核分裂によって発生する熱を除去する。この熱除去によって加熱されて温度が上昇した液体金属Naは、冷却材通路13から、ラッパ管12内で各核燃料要素1の上端より上方に形成されたナトリウムプレナム11(図2参照)に排出される。ナトリウムプレナム11に達した液体金属Naは、燃料集合体10から排出され、原子炉容器内の、炉心14よりも上方の領域に達する。
万が一のスクラム失敗と外部電源喪失等によるポンプ停止に起因する冷却材流量喪失が発生した場合には、最も液体金属Naの温度が高いナトリウムプレナム領域19で液体金属Naの密度の低下、もしくは液体金属Naの沸騰が始まり、炉心燃料領域15から上方への中性子の漏れ量が増える。このため、金属燃料を用いた従来の高速炉と比べると、本実施例の炉心14では、反応度の増加、すなわち、原子炉出力の増加が抑制される。
本実施例では、核燃料要素1内で第2核燃料領域3の上方に位置する第1核燃料領域2に存在する金属燃料粒子のPu富化度がその第2核燃料領域3に存在する金属燃料粒子のPu富化度よりも高いので、燃料集合体10の核燃料物質領域の上端部、すなわち、炉心14の炉心燃料領域15の上端部における中性子束が大きくなり、冷却材流量喪失時において、核燃料物質領域9からナトリウムプレナム11への、すなわち、炉心燃料領域15からナトリウムプレナム領域19への中性子の漏れ量が更に増え、ボイド反応度を大幅に低減できる。このため、高速炉の安全性が大幅に向上する。
炉心燃料領域15からナトリウムプレナム領域19への中性子の漏れ量の増加は、ナトリウムプレナム領域19の高さが高いほど多くなる。これは、ナトリウムプレナム領域19に装荷された各燃料集合体10において、ナトリウムプレナム11の高くなるほど、ナトリウムプレナム11における燃料集合体10の構造材の体積割合が減少し、核燃料物質領域9からナトリウムプレナム11に漏洩した中性子が、その構造材によって散乱されて核燃料物質領域9に戻ってくる割合が低下するからである。このため、ナトリウムプレナム11の高さが高いほど、すなわち、ナトリウムプレナム領域19の高さが高いほど、中性子の漏洩量が増大し、ボイド反応度を大幅に低減することができる。
本実施例では、第1核燃料領域2に存在する金属燃料粒子のPu富化度が25.0wt%以下であるため、被覆管4の、第1核燃料領域2に存在する金属燃料粒子と接触する部分での共晶生成温度の低下が防止される。第2核燃料領域3に存在する金属燃料粒子の富化度が第1核燃料領域2に存在する金属燃料粒子のPu富化度よりも低いため、被覆管4の、第2核燃料領域3に存在する金属燃料粒子と接触する部分での共晶生成温度の低下も防止される。このため、被覆管4の健全性を確保することができる。
本発明の好適な他の実施例である実施例2の高速炉の炉心を、炉心縦断を、図5及び図6を用いて説明する。図5は、本実施例の高速炉の炉心20の横断面の1/2を示している。
本実施例の高速炉の炉心20は、図5に示すように、炉心20の横断面中央部に配置された中央領域21、この中央領域21を取り囲むブランケット燃料領域22及びブランケット燃料領域22を取り囲む遮へい体領域47を有する。中央領域21は、内側炉心燃料領域23及び外側炉心燃料領域24を含んでいる。内側炉心燃料領域23は中央領域21の横断面中央部に配置され、外側炉心燃料領域24は内側炉心燃料領域23の周囲に配置されて内側炉心燃料領域23を取り囲んでいる。複数の内側炉心燃料集合体25が内側炉心燃料領域23に配置され、複数の外側炉心燃料集合体26が外側炉心燃料領域24に配置される。内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26のそれぞれは、実施例1の燃料集合体10と同様な構成を有し、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3を含む核燃料物質領域9が被覆管4内に存在する複数の核燃料要素1を有する。第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれには、U-Pu-Zr製の、多数の金属燃料粒子が充填されており、これらの金属燃料粒子のMA富化度は0wt%である。
炉心20の半径方向における出力分布を平坦化するため、外側炉心燃料集合体26の平均Pu富化度は内側炉心燃料集合体25の平均Pu富化度よりも高くなっている。内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26のそれぞれにおいて、第1核燃料領域2に充填された金属燃料粒子のPu富化度は、第2核燃料領域3のPu富化度よりも高い。また、第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれのPu富化度は、外側炉心燃料集合体26の方が内側炉心燃料集合体25よりも高くなっている。具体的には、炉心20に装荷された燃焼度0GWd/tの内側炉心燃料集合体25において、第1核燃料領域2内の金属燃料粒子のPu富化度は、例えば、19.2wt%であり、第2核燃料領域3内の金属燃料粒子のPu富化度は、例えば、16.7wt%である。また、燃焼度0GWd/tの外側炉心燃料集合体26において、第1核燃料領域2内の金属燃料粒子のPu富化度は、例えば、23wt%であり、第2核燃料領域3内の金属燃料粒子のPu富化度は、例えば、20wt%である。
内側炉心燃料領域23及び内側炉心燃料領域23を取り囲む外側炉心燃料領域24のそれぞれには、複数の制御棒集合体28が挿入される(図5参照)。各制御棒集合体28は、中性子吸収材、例えば、ボロンカーバイト(B4C)を内部に充填した複数の中性子吸収棒を有する。
中央領域21、すなわち、外側炉心燃料領域24を取り囲むブランケット燃料領域22には、複数のブランケット燃料集合体27が配置される。ブランケット燃料集合体27は、図2に示す燃料集合体10と同様に、複数の核燃料要素を有する。ブランケット燃料集合体27の各核燃料要素(図示せず)は、燃料集合体10の核燃料要素1と同様に、密封された被覆管4内に中間端栓7を設けている。ブランケット燃料集合体27の核燃料要素には、被覆管4内で中間端栓7よりも上方に、劣化ウランの多数の金属燃料粒子を充填している。この金属燃料粒子は、U-Zr製の金属燃料粒子であり、Puは実質的に含まれていない。
さらに、ブランケット燃料領域22を取り囲む遮へい体領域47には、横断面が正六角形である複数の遮へい体集合体48が配置される。遮へい体集合体48はステンレス鋼で製作される。また、遮へい体集合体48は炭化ホウ素を封入して構成してもよい。
内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26のそれぞれの核燃料要素1では、中間端栓7が、核燃料要素1の軸方向で同じ位置に配置されている。このため、内側炉心燃料集合体25の各核燃料要素1における第2核燃料領域3の下端は、外側炉心燃料集合体26の各核燃料要素1における第2核燃料領域3の下端と同じ位置にある。内側炉心燃料集合体25の各核燃料要素1における第2核燃料領域3の軸方向における長さは、外側炉心燃料集合体26の各核燃料要素1における第2核燃料領域3のその長さよりも短くなっている。また、内側炉心燃料集合体25の各核燃料要素1における第1核燃料領域2の軸方向における長さも、外側炉心燃料集合体26の各核燃料要素1における第1核燃料領域2のその長さよりも短い。このため、内側炉心燃料集合体25の各核燃料要素1における核燃料物質領域9の軸方向における長さは、外側炉心燃料集合体26の各核燃料要素1における核燃料物質領域9の軸方向における長さよりも短く、内側炉心燃料集合体25の各核燃料要素1における核燃料物質領域9の上端は外側炉心燃料集合体26の各核燃料要素1における核燃料物質領域9の上端よりも下方に位置する。内側炉心燃料集合体25内で各核燃料要素1よりも上方に形成されるナトリウムプレナム11の軸方向の長さは、外側炉心燃料集合体26内で各核燃料要素1よりも上方に形成されるナトリウムプレナム11の軸方向の長さよりも長くなっている。
ブランケット燃料領域22に装荷されたブランケット燃料集合体27は、内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26と異なり、ナトリウムプレナム11を形成していない。
内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26のそれぞれが装荷された中央領域21の、炉心20の軸方向における構成を、図6を用いて説明する。
複数の内側炉心燃料集合体25が配置された内側炉心燃料領域23には、内側炉心燃料領域23の下端から内側炉心燃料領域23の上端に向かって、ガスプレナム8が存在するガスプレナム領域33A、第2核燃料領域3が存在する第2核燃料層30、第1核燃料領域2が存在する第1核燃料層29、及びナトリウムプレナム11が存在するナトリウムプレナム領域19Aが形成される。複数の外側炉心燃料集合体26が配置された外側炉心燃料領域24には、外側炉心燃料領域24の下端から外側炉心燃料領域24の上端に向かって、ガスプレナム8が存在するガスプレナム領域33B、第2核燃料領域3が存在する第2核燃料層32、第1核燃料領域2が存在する第1核燃料層31、及びナトリウムプレナム11が存在するナトリウムプレナム領域19Aが形成される。内側炉心燃料領域23における炉心燃料領域(第1炉心燃料領域)15Aは第1核燃料層29及び第2核燃料層30を含んでおり、外側炉心燃料領域24における炉心燃料領域(第2炉心燃料領域)15Aは第1核燃料層31及び第2核燃料層32を含んでいる。内側炉心燃料領域23の第1炉心燃料領域の高さ(第1炉心燃料領域の炉心20の軸方向の長さ)は、外側炉心燃料領域24の第2炉心燃料領域の高さ(第2炉心燃料領域の炉心20の軸方向の長さ)よりも低くなっている。
第2核燃料層32の上端は第2核燃料層30の上端よりも上方に位置しており、第1核燃料層31の上端は第1核燃料層29の上端よりも上方に位置している。第2核燃料層32の高さは、第2核燃料層30の高さよりも高い。第1核燃料層31の高さは、第1核燃料層29の高さよりも高い。また、外側炉心燃料領域24におけるナトリウムプレナム領域19Aの高さ(外側炉心燃料領域24におけるナトリウムプレナム領域19Aの炉心20の軸方向における長さ)は、内側炉心燃料領域23におけるナトリウムプレナム領域19Aの高さ(外側炉心燃料領域24におけるナトリウムプレナム領域19Aの炉心20の軸方向における長さ)よりも高い。
このため、内側炉心燃料領域23において第1核燃料層29の上端と中央領域21の上端との間に形成されるナトリウムプレナム領域19Aの高さは、外側炉心燃料領域24において第1核燃料層31の上端と中央領域21の上端との間に形成されるナトリウムプレナム領域19Aの高さよりも高くなっている。
高速炉の炉心20の熱出力は1000MWtであり、中央領域21に装荷された内側炉心燃料集合体25の取出平均燃焼度は外側炉心燃料集合体26のそれよりも高くなっている。内側炉心燃料集合体25の取出平均燃焼度は約110GWd/tであり、外側炉心燃料集合体26の取出平均燃焼度は約90GWd/tである。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、前述したように、内側炉心燃料領域23でのナトリウムプレナム領域19Aの高さが外側炉心燃料領域24でのナトリウムプレナム領域19Aの高さよりも高くなっているため、内側炉心燃料領域23における炉心燃料領域15Aからナトリウムプレナム領域19Aへの中性子の漏洩量が、外側炉心燃料領域24における炉心燃料領域15Aからナトリウムプレナム領域19Aへのそれよりも多くなる。本実施例における第1核燃料層31の上端の、炉心の軸方向における位置が実施例1における第1核燃料層16の上端の、炉心の軸方向における位置と同じであるため、本実施例における第1核燃料層29の上端の、炉心の軸方向における位置が実施例1における第1核燃料層16の上端の、炉心の軸方向における位置よりも低くなっている分、すなわち、本実施例における内側炉心燃料領域23のナトリウムプレナム領域19Aの高さが実施例1におけるナトリウムプレナム領域19の高さよりも高くなっている分、本実施例は、実施例1に比べてボイド反応度を負側により小さくすることができる。
内側炉心燃料領域23における炉心燃料領域15Aの高さが外側炉心燃料領域24における炉心燃料領域15Aの高さよりも低く、内側炉心燃料領域23よりも外側炉心燃料領域24において燃料集合体一体当りの出力も小さくなるため、本実施例における炉心20の半径方向の出力分布が実施例1における炉心のその出力分布よりも平坦化される。
本発明の好適な他の実施例である実施例3の燃料集合体を、図7を用いて説明する。本実施例の燃料集合体は、高速炉の炉心に装荷される。
軽水炉の炉心から取り出された使用済燃料集合体に含まれている使用済核燃料は核燃料再処理が施され、核分裂性のウラン235及び核分裂性のプルトニウム等の核分裂性物質が回収され、回収された核分裂性物質を用いて燃焼度0GWd/tの新たな燃料集合体が製造される。この新たな燃料集合体は、軽水炉及び高速炉等の炉心に装荷されて再利用される。しかしながら、その使用済核燃料の再処理によって、高レベル放射性廃棄物が発生する。この高レベル放射性廃棄物に含まれるマイナーアクチニド(MA)、具体的には、ネプチニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)等が存在し、超半減期の放射性核種も含まれている。このマイナーアクチニドを、プルトニウムと共に、高速炉の炉心に装荷する燃料集合体の核燃料物質として用い、マイナーアクチニドを高速炉内で消費して環境負荷の低減を図ることが検討されている。
金属燃料は、酸化物燃料に比べて、燃料密度が高く、中性子を減速する酸素を含まないため核分裂により生成される中性子の平均エネルギーが高いので、マイナーアクチニド核変換の効率が高い。このため、マイナーアクチニドの効率良く消費させるためには、金属燃料を用いることが好ましい。
金属燃料を用いて高速炉でマイナーアクチニドを燃焼させるためには、比較的高い富化度のマイナーアクチニドを含有する合金であるU-Pu-MA-Zrを用いる必要がある。ところが、マイナーアクチニドの富化度が高い金属燃料が核燃料要素の被覆管の内面に接触すると、マイナーアクチニドとステンレス鋼製の被覆管の主成分である鉄との共晶反応の発生によって、金属燃料と接触する部分での被覆管の融点が低下し、被覆管の健全性が確保できなくなる可能性がある。
このような問題を解消するために、その対応策として、特開2017-26372号公報には、核燃料要素の横断面の中央部にマイナーアクチニド含有率が高い金属燃料を配置し、その中央部と核燃料要素の被覆管の内面の間の周辺部に、中央部に配置された金属燃料よりもマイナーアクチニド含有率が低い金属燃料を配置することが開示されている。
図7に示された核燃料要素1Aは本実施例の燃料集合体に用いられる。核燃料要素1Aの構造を、以下に詳細に説明する。
核燃料要素1Aは、実施例1と同様に、上端部が上部端栓5で封鎖され、上端部が上部端栓5で封鎖され、下端部が下部端栓6で封鎖されて密封されたステンレス鋼製の被覆管4、及び被覆管4内に設けられた中間端栓7を有する。ガスプレナム8が、被覆管4内で中間端栓7よりも下方に形成される。
第1核燃料領域2A及び第2核燃料領域3Aを含む核燃料物質領域9Aが、被覆管4内で中間端栓7の上方に配置される。第2核燃料領域3Aが中間端栓7上に存在し、第1核燃料領域2Aが第2核燃料領域3Aよりも上方に存在する。第1核燃料領域2Aでは、燃料中央領域2Bが核燃料要素1Aの横断面の中央部に配置され、燃料周辺領域2Cが燃料中央領域2Bを取り囲んでその横断面の周辺部に配置される。第2核燃料領域3Aでは、燃料中央領域3Bがその横断面の中央部に配置され、燃料周辺領域3Cが燃料中央領域3Bを取り囲んでその横断面の周辺部に配置される。燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれには、マイナーアクチニド(MA)を含む合金、すなわち、U-Pu-MA-Zrで作られた、図8において被覆管4の右側に記載された金属燃料粒子41が充填されている。
核燃料要素1Aの製造方法、特に、核燃料要素1Aの被覆管4内への金属燃料粒子の充填方法を、図8を用いて説明する。下端部が下部端栓6で封鎖されて中間端栓7が内面に取り付けられた被覆管4内に、金属燃料粒子41が充填される。金属燃料粒子41を充填する前に、図8に示された冶具35及び38のそれぞれを、被覆管4の解放された上端から被覆管4内に挿入する。冶具35及び38は、既存の高速炉に用いられる低密度の燃料ペレットの製造に使用された実績のある結晶セルロースを用いて作られる。結晶セルロースは、原子炉起動後の高温状態で分解されるが、核燃料物質及び炉心特性には影響を与えない。冶具35は、上端及び下端が解放された円筒部36及び円筒部36の下端に取り付けられて円筒部36を取り囲むリング状の薄い台座37を有している。冶具38も、冶具35と同じ構成を有しており、上端及び下端が解放された円筒部39及び円筒部39の下端に取り付けられて円筒部39を取り囲むリング状の薄い台座40を有している。冶具35の円筒部36の高さは第2核燃料領域3Aの高さと同じであり、円筒部36の内径は第2核燃料領域3Aの燃料中央領域3Bの直径と同じである。冶具38の円筒部39の高さは第1核燃料領域2Aの高さと同じであり、円筒部39の内径は第1核燃料領域2Aの燃料中央領域2Bの直径と同じである。
まず、冶具35が、上方より、上端が解放された被覆管4内に挿入されて、台座37が中間端栓7の上面に置かれた状態で中間端栓7上に配置される。前述の金属燃料粒子41が、被覆管4の上方から冶具35の円筒部36内に供給され、円筒部36内で円筒部36の上端まで充填される。円筒部36内が金属燃料粒子41で満たされた後、円筒部36の外面と被覆管4の内面との間に形成される環状空間に、金属燃料粒子41が充填される。金属燃料粒子41が円筒部36の外面と被覆管4の内面との間で円筒部36の上端まで充填されたとき、円筒部36の外面と被覆管4の内面との間への金属燃料粒子41の充填が停止される。このようにして、燃料中央領域3Bが円筒部36内に形成されて燃料周辺領域3Cが被覆管4内で円筒部36の外側に形成され、第2核燃料領域3Aの形成が終了する。
第2核燃料領域3Aが被覆管4内に形成された後、冶具38が、上方より、上端が解放された被覆管4内に挿入されて、台座40が燃料周辺領域3Cの上端に置かれた状態で冶具35上に配置される。冶具38の円筒部39の下端が冶具35の円筒部36の上端に接触している。金属燃料粒子41が、被覆管4の上方から冶具38の円筒部39内に供給され、円筒部39内で円筒部39の上端まで充填される。円筒部39内が金属燃料粒子41で満たされた後、円筒部39の外面と被覆管4の内面との間に形成される環状空間に、金属燃料粒子41が充填される。金属燃料粒子41が円筒部39の外面と被覆管4の内面との間で円筒部39の上端まで充填されたとき、円筒部39の外面と被覆管4の内面との間への金属燃料粒子41の充填が停止される。このようにして、燃料中央領域2Bが円筒部39内に形成されて燃料周辺領域2Cが被覆管4内で円筒部39の外側に形成され、第1核燃料領域2Aの形成が終了する。
第1核燃料領域2Aの形成が終了した後、被覆管4の上端が上部端栓5によって封鎖される。以上の工程により、核燃料要素1Aの製造が終了する。
燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3CのそれぞれのPuの富化度(wt%)及びマイナーアクチニド(MA)の富化度(wt%)は、表1の通りである。
燃料中央領域2Bでは、Pu富化度がPu21(wt%)であり、MA富化度がMA21(wt%)であり、体積がVol21(cm3)になっている。燃料周辺領域2Cでは、Pu富化度がPu22(wt%)であり、MA富化度がMA22(wt%)であり、体積がVol22(cm3)になっている。燃料中央領域3Bでは、Pu富化度がPu31(wt%)であり、MA富化度がMA31(wt%)であり、体積がVol31(cm3)になっている。燃料周辺領域2Cでは、Pu富化度がPu32(wt%)であり、MA富化度がMA32(wt%)であり、体積がVol32(cm3)になっている。
Pu富化度は金属燃料であるU-Pu-MA-Zrに含まれるU,Pu及びMAの核燃料物質の合計重量に対するPuの重量割合を意味しており、MA富化度はU-Pu-MA-Zrに含まれるU,Pu及びMAの核燃料物質の合計重量に対するMAの重量割合を意味している。
Pu富化度Pu21(wt%)、Pu22(wt%)、Pu31(wt%)及びPu32(wt%)、及びMA富化度MA21(wt%)、MA22(wt%)、MA31(wt%)及びMA32(wt%)のそれぞれは、0GWd/tの燃料集合体に対する値である。
燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれでは、Pu富化度及びMA富化度のそれぞれが上記した通りであるが、実質的には、燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填された各金属燃料粒子のPu富化度及びMA富化度である。
核燃料要素1を有する燃料集合体10と同様に、ラッパ管12内で正三角形格子状に配置された複数の核燃料要素1Aによって、燃料集合体が構成される。複数の核燃料要素1Aは、ラッパ管12の下端部に取り付けられたエントランスノズルによって支持される。燃料集合体のラッパ管12内で各核燃料要素1Aの上端よりも上方に、核燃料要素1Aが存在しないナトリウムプレナム11が形成される。
そのような複数の燃料集合体が炉心に装荷され、図4に示す実施例1における、ナトリウムプレナム領域19が形成された高速炉の炉心14(図4)が構成される。ナトリウムプレナム領域19の負のボイド反応度効果を増大させるために、各核燃料要素1A内の燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれにおける金属燃料粒子のPu富化度は、以下の(1)式及び(2)式を満足する必要がある。
Pu21 > Pu31 …(1)
Pu22 > Pu32 …(2)
より具体的には、第1核燃料領域2Aの平均のPu富化度を第2核燃料領域3Aの平均のPu富化度よりも大きくする必要があり、以下の(3)式を満足する必要がある。
(Pu21×Vol21+Pu22×Vol22)/(Vol21+Vol21) >
(Pu31×Vol31+Pu32×Vol32)/(Vol31+Vol32)
………(3)
実施例1で述べたように、金属燃料粒子のPu富化度が過大になると、ステンレス鋼製の被覆管とこの被覆管の内面に接触する金属燃料粒子との共晶反応によりその被覆管の融点が低下し、被覆管の健全性に影響を及ぼす可能性がある。一次冷却材である液体金属Naの温度が550℃の場合には、Pu富化度の上限は25wt%とされている。
また、MAを含んでいる金属燃料粒子と被覆管との共晶反応を回避するために、燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填された各金属燃料粒子のMA富化度は、(4)式及び(5)式の関係を満足する必要がある。
MA21 > MA22 …(4)
MA31 > MA32 …(5)
被覆管との共晶反応を回避する観点から、金属燃料粒子のMA富化度は5wt%以下であることが望ましい。本実施例では、より具体的には、燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれにおける各金属燃料粒子のMA富化度は、以下の(6)式を満足している。
MA21=MA31 >5wt% ≧ MA22=MA32 …(6)
なお、本実施例では、核燃料要素1Aを有する燃焼度0GWd/tの燃料集合体において、燃料中央領域2B及び燃料周辺領域2CのそれぞれのPu富化度は、例えば、23wt%であり、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3CのそれぞれのPu富化度は、例えば、20wt%である。このため、第1核燃料領域2Aの平均Pu富化度は23wt%であり、第2核燃料領域3Aの平均Pu富化度は20wt%である。また、燃料中央領域2B及び燃料中央領域3BのそれぞれのMA富化度は、例えば、10wt%であり、燃料周辺領域2C及び燃料周辺領域3CのそれぞれのMA富化度は、例えば、4wt%である。
燃料中央領域2BのMA富化度MA21(wt%)及び燃料中央領域3BのMA富化度MA31(wt%)の上限値は、20wt%である。MA富化度が20wt%を超えた場合には、マイナーアクチニドの崩壊熱が大きいため、核燃料要素1A及び、核燃料要素1Aを有する燃料集合体の製造時には、強制的に徐熱する必要がある。このため、MA富化度MA21及びMA31の各上限値は、20wt%とする。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例によれば、第1核燃料領域2A及び第2核燃料領域3Aのそれぞれにおいて、燃料周辺領域(2C,3C)に充填された金属燃料粒子のMA富化度が、燃料中央領域(2B,3B)に充填された金属燃料粒子のMA富化度よりも小さく、例えば、5wt%以下であるため、燃料周辺領域2C及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに存在する金属燃料粒子が被覆管の内面と接触する部分での共晶生成温度の低下が防止される。このため、高速炉の運転中においても、被覆管4の健全性を確保することができる。
燃焼度0GWd/tの、高速炉の炉心に装荷された本実施例の燃料集合体内の核燃料要素1Aは、第1核燃料領域2A及び第2核燃料領域3Aのそれぞれにマイナーアクチニドを含んでいるため、高速炉から取り出された使用済燃料集合体内の使用済核燃料に含まれていて核燃料再処理により回収されたそのマイナーアクチニドを、その炉心内で燃焼させることができ、そのマイナーアクチニドの量を炉心内で低減することができる。
本実施例では、冶具35及び38を用いているため、燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに金属燃料粒子41を充填した核燃料要素1Aの製造が容易になる。
本実施例における核燃料要素1Aを有する燃料集合体は、図4に示す炉心14ではなく、図5に示す実施例2における高速炉の炉心20において、内側炉心燃料領域23に内側炉心燃料集合体25として、そして、外側炉心燃料領域24に外側炉心燃料集合体26として装荷してもよい。
本発明の好適な他の実施例である実施例4の燃料集合体を説明する。本実施例の燃料集合体に用いられる核燃料要素を、図9を用いて以下に説明する。本実施例の燃料集合体は、冷却材として液体金属Naを用いる高速炉の炉心に装荷される。
その核燃料要素1Bは、実施例1の核燃料要素1と同様に、上端部が上部端栓5で封鎖され、下端部が下部端栓6で封鎖されて密封されたステンレス鋼製の被覆管4、及び被覆管4内に設けられた中間端栓7を有する。ガスプレナム8が、被覆管4内で中間端栓7よりも下方に形成される。第1核燃料領域2D及び第2核燃料領域3Dを含む核燃料物質領域9Bが、被覆管4内で中間端栓7の上方に配置される。第2核燃料領域3Dが中間端栓7上に存在し、第1核燃料領域2Dが第2核燃料領域3Dよりも上方に存在する。
実施例3の燃料集合体に用いられる核燃料要素1Aでは、図8に示すように、粒径が同じである1種類の金属燃料粒子を被覆管4内に充填している。しかしながら、核燃料要素1A内の第1核燃料領域2A及び第2核燃料領域3Aのそれぞれの高さ、及びそれぞれの核燃料領域に充填される金属燃料粒子の粒径によっては、第1核燃料領域2A及び第2核燃料領域3Aのそれぞれにおいて、所定の燃料充填率を達成できず、核燃料物質のスミヤ密度が設定値を下回る可能性がある。
このため、核燃料要素1Bでは、第1核燃料領域2D及び第2核燃料領域3Dのそれぞれに、粒径が異なる2種類の金属燃料粒子が充填される。第1核燃料領域2D及び第2核燃料領域3Dのそれぞれの金属燃料粒子の充填状態を、第1核燃料領域2DのB部及び第2核燃料領域3DのA部について説明する。第1核燃料領域2Dの全域ではB部のように2種類の金属燃料粒子が充填され、第2核燃料領域3Dの全域ではA部のように2種類の金属燃料粒子が充填されている。
第1核燃料領域2DのB部では、図9の核燃料要素1Bの右側に示されたB部の拡大図のように、大きな粒径の複数の金属燃料粒子44及び金属燃料粒子44よりも粒径が小さい複数の金属燃料粒子45が充填されている。金属燃料粒子45は、隣り合う金属燃料粒子44相互間に形成される隙間に収まる程度の小さい粒径を有する。また、第2核燃料領域3DのA部では、図9の核燃料要素1Bの右側に示されたA部の拡大図のように、大きな粒径の複数の金属燃料粒子42及び金属燃料粒子42よりも粒径が小さい複数の金属燃料粒子43が充填されている。金属燃料粒子43は、隣り合う金属燃料粒子42相互間に形成される隙間に収まる程度の小さい粒径を有する。各金属粒子は、Pu及びMAを含んでいる。
第1核燃料領域2DのPu富化度は、例えば、23wt%であり、第2核燃料領域3DのPu富化度は20wt%である。すなわち、金属燃料粒子44及び45の各Pu富化度は23wt%である。また、金属燃料粒子42及び43の各Pu富化度は20wt%である。第1核燃料領域2D及び第2核燃料領域3Dの各MA富化度は5wt%以下の、例えば、4wt%である。具体的には、金属燃料粒子44,45,42及び43の各MA富化度は4wt%である。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、第1核燃料領域2D及び第2核燃料領域3Dのそれぞれに、粒径が異なる2種類の金属燃料粒子が充填される、具体的には、第1核燃料領域2Dに粒径の大きな複数の金属燃料粒子44及び金属燃料粒子44相互間の隙間に収まる粒径の小さな複数の金属燃料粒子45を充填し、第2核燃料領域3Dに粒径の大きな複数の金属燃料粒子42及び金属燃料粒子42相互間の隙間に収まる粒径の小さな複数の金属燃料粒子43を充填しているため、燃料集合体内の核燃料要素1Bにおいて、核燃料物質の充填率を向上させることができ、核燃料物質の所定の充填率を実現することができる。これによって、高速炉の炉心の中性子経済が改善され、取出燃焼度及び所要のPu及びMAそれぞれの富化度を維持することができ、経済性が向上する。
本実施例の核燃料要素1Bを有する燃料集合体は、実施例1の高速炉の炉心14に装荷される燃料集合体10として、また、実施例2の高速炉の炉心20に装荷される内側炉心燃料集合体25及び外側炉心燃料集合体26として用いてもよい。さらに、実施例3の燃料集合体に用いられる核燃料要素1Aの第1核燃料領域2Aにおける燃料中央領域2B及び燃料周辺領域2C、及び第2核燃料領域3Aにおける燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cに、本実施例の燃料集合体に用いられる核燃料要素1Bと同様に、粒径の大きな金属燃料粒子及びこの金属粒子相互間に形成される隙間に収まる粒径の小さい金属粒子を充填してもよい。
さらに、実施例3における核燃料要素1A(図7)において、前述の金属燃料粒子44及び45のそれぞれを、図9のB部に示すように、第1核燃料領域2Aの燃料中央領域2B及び燃料周辺領域2Cのそれぞれに充填してもよい。また、その核燃料要素1Aにおいて、前述の金属燃料粒子42及び43のそれぞれを、図9のA部に示すように、第2核燃料領域3Aの燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填してもよい。
以上に述べた実施例1ないし4では、核燃料物質として、劣化ウラン、プルトニウム及びZrの合金、及び劣化ウラン、TRU(超ウラン元素)及びZrの合金のいずれかを用いたが、濃縮ウラン、プルトニウム及びZrの合金、及び濃縮ウラン、TRU及びZrの合金のいずれかを用いてもよい。なお、TRUはPu及びMAを含む。
本発明の好適な他の実施例である実施例5の燃料集合体を説明する。本実施例の燃料集合体を、図10及び図11を用いて以下に説明する。本実施例の燃料集合体は、冷却材として液体金属Naを用いる高速炉の炉心に装荷される。
図10に示す本実施例の燃料集合体45は、燃料集合体10(実施例1)と同様に、外面にワイヤスペーサ(図示せず)が巻き付けられた複数の核燃料要素46の束を、横断面が正六角形の筒状の構造物であるラッパ管12内に配置している。複数の核燃料要素46は、図11に示すように、ラッパ管12内で正三角形格子状に配置される。それぞれの核燃料要素46の下端部は、エントランスノズル(図示せず)によって支持される。ラッパ管12の下端部が、エントランスノズルに取り付けられる。巻き付けられたワイヤスペーサによって、隣り合う核燃料要素46の相互間に所定幅の間隙が形成される。この間隙は、冷却材である液体金属Naが流れる冷却材通路13である。エントランスノズルは核燃料要素46の下端部を支持する下部燃料支持部材であり、エントランスノズル内には、エントランスノズルの外部からラッパ管12内の冷却材通路13に液体金属Naを導く冷却材流路(図示せず)が形成されている。燃料集合体45のラッパ管12内で各核燃料要素46の上端よりも上方に、ナトリウムプレナム11が形成される。ナトリウムプレナム11には、核燃料要素46が存在しない。
核燃料要素46は、燃料集合体10における核燃料要素1の核燃料物質領域9に含まれる第1核燃料領域2及び第2核燃料領域3のそれぞれに、金属燃料粒子の替りに酸化物燃料、例えば、混合酸化物燃料(MOX燃料)で製造された、複数のMAを含んでいない燃料ペレットを充填している。核燃料要素46において、第1核燃料領域2に充填された燃料ペレットのPu富化度は、第2核燃料領域3に充填された燃料ペレットのPu富化度よりも大きくなっている。第1核燃料領域2に充填されるMOX燃料のPu富化度の上限は25wt%である。このため、第1核燃料領域2に充填されるMOX燃料のPu富化度は25wt%以下にする必要がある。その第1核燃料領域2に充填された燃料ペレットのPu富化度は、例えば、23wt%であり、その第2核燃料領域3に充填された燃料ペレットのPu富化度は、例えば、20wt%である。
本実施例の燃料集合体45は、高速炉の原子炉容器(図示せず)内に配置された炉心14Aに装荷される。この炉心14Aの概略構成を、図12を用いて説明する。複数の燃料集合体45が装荷された炉心14Aには、各燃料集合体45が複数の核燃料要素46を有する関係上、各核燃料要素46内に存在するガスプレナム8、第2核燃料領域3及び第1核燃料領域2に対応して、下方より上方に向かって、ガスプレナム領域18、第2核燃料層17A及び第1核燃料層16Aが形成されている。すなわち、ガスプレナム領域18には各核燃料要素46のガスプレナム8が配置され、第2核燃料層17Aには各核燃料要素46の第2核燃料領域3が配置され、第1核燃料層16Aには各核燃料要素46の第1核燃料領域2が配置される。炉心14A内の炉心燃料領域15Bは、第1核燃料層16A及び第2核燃料層17Aを含んでいる。第1核燃料層16AのPu富化度は、第2核燃料層17Aのそれよりも高くなっている。炉心14A内で、第1核燃料層16Aの上方には、燃料集合体45に形成されたナトリウムプレナム11に対応したナトリウムプレナム領域19が形成される。
高速炉の原子炉容器内には冷却材である液体金属Naが充填され、原子炉容器内に配置された炉心14Aは液体金属Na内に存在する。炉心14Aに装荷された各燃料集合体45は、その液体金属Naに浸漬されている。
本実施例の燃料集合体に用いられる核燃料要素46の核燃料物質領域9にはMOX燃料が充填されているが、本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例の燃料集合体では、実施例1の燃料集合体10と同様に、核燃料物質領域9、具体的には、第1核燃料領域2から本実施例の燃料集合体におけるナトリウムプレナム11へ漏洩する中性子の量が増大する。このため、高速炉の炉心におけるボイド反応度を幅に低減することができ、高速炉の安全性が向上する。
本実施例の燃料集合体45は、図5に示す実施例2における高速炉の炉心20において、内側炉心燃料領域23に内側炉心燃料集合体25として、そして、外側炉心燃料領域24に外側炉心燃料集合体26として装荷してもよい。
また、本実施例の燃料集合体45の核燃料要素46において、核燃料要素46において、核燃料物質領域9を前述の実施例3における核燃料要素1A(図7)の核燃料物質領域9Aに変更してもよい。核燃料要素46内の中間端栓7上に核燃料物質領域9Aを形成する場合には、実施例3のように金属燃料粒子ではなく酸化物燃料、例えば、MOX燃料がその核燃料物質領域9Aに充填される。核燃料物質領域9Aに含まれる第1核燃料領域2Aの燃料中央領域2B及び燃料周辺領域2Cのそれぞれに、MOX燃料で製造された複数の燃料ペレットが充填される。核燃料物質領域9Aで第1核燃料領域2Aの下方に配置された第2核燃料領域3Aの燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれにも、MOX燃料で製造された複数の燃料ペレットが充填される。燃料中央領域2B及び燃料中央領域3Bのそれぞれには円柱状の燃料ペレットが配置され、燃料周辺領域2C及び燃料周辺領域3Cのそれぞれには円柱状の燃料ペレットが配置される。
燃料中央領域2B及び燃料周辺領域2Cのそれぞれに充填されたMOX燃料製の燃料ペレットのPu富化度は、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填されたMOX燃料製の燃料ペレットのPu富化度よりも大きい。また、燃料中央領域2B、燃料周辺領域2C、燃料中央領域3B及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填されたその燃料ペレットは、マイナーアクチニドを含んでおり、燃料周辺領域2C及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填されたその燃料ペレットのMA富化度は5wt%以下である。燃料中央領域2B及び燃料中央領域3Bのそれぞれに充填されたその燃料ペレットのMA富化度は、燃料周辺領域2C及び燃料周辺領域3Cのそれぞれに充填されたその燃料ペレットのMA富化度よりも大きい。
また、前述の各実施例では、冷却材として液体金属Naを用いているが、高速炉において、冷却材として鉛、鉛ビスマス及び溶融塩のいずれかを用いてもよい。