JP5586264B2 - 高速増殖炉の炉心及び高速増殖炉用燃料集合体 - Google Patents

高速増殖炉の炉心及び高速増殖炉用燃料集合体 Download PDF

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Description

本発明は、高速増殖炉の炉心及び高速増殖炉用燃料集合体に関する。
高速増殖炉の炉心及び燃料集合体については、平川直弘、岩崎智彦著「原子炉物理入門」(東北大学出版会、2003年10月30日、p279〜286)及びJAEA-Evaluation 2009-003, p.37及び43, 2009年に記載されている。高速増殖炉の炉心に装荷される燃料集合体は、プルトニウム(Pu)を富化した劣化ウランを含む複数の燃料ペレットを収納した複数の燃料棒を束ねた燃料棒束、この燃料棒束を取り囲む横断面が正六角形のラッパ管、燃料棒束より上方に位置している冷却材流出部、及び燃料棒束の下方に位置する中性子遮蔽体及び冷却材流入部(エントランスノズル)を備えている。高速増殖炉の炉心には、上記した複数の燃料集合体が装荷される。高速増殖炉の標準的な均質炉心は、内側炉心燃料領域、及び内側炉心燃料領域を取り囲む外側炉心燃料領域を有する炉心燃料領域、及び炉心燃料領域を取り囲む半径方向ブランケット領域を含んでいる。外側炉心燃料領域のPu富化度が内側炉心燃料領域Pu富化度よりも高くなっている。これにより、炉心の半径方向の出力分布が平坦化される。
核燃料の形態としては、これ迄、金属燃料、窒化物燃料、及び酸化物燃料等が検討されている。これらの核燃料のうち、酸化物燃料が最も実績が豊富である。内側炉心燃料領域及び外側炉心燃料領域に装荷される燃料集合体に用いられる燃料棒は、軸方向の中央部に、Pu及び劣化ウランの酸化物を混合した混合酸化物燃料、すなわち、MOX燃料で作られた複数の燃料ペレットを80〜100cm程度の高さに充填している。さらに、その燃料棒は、MOX燃料で作られた燃料ペレットが充填された領域の上方及び下方に、劣化ウランの酸化物燃料で作られた複数の燃料ペレットを充填した軸方向ブランケット領域を形成している。内側炉心燃料領域及び内側炉心燃料領域を含む炉心燃料領域は、炉心の軸方向及び半径方向において、前述したMOX燃料製の多数の燃料ペレットが配置されている領域である。
半径方向ブランケット領域に装荷されるブランケット燃料集合体は、劣化ウランの酸化物燃料で作られた複数の燃料ペレットのみを充填した複数の燃料棒を有する。半径方向ブランケット領域及び軸方向ブランケット領域では、炉心燃料領域で核分裂性物質(例えば、Pu−239)の核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏れた中性子がU−238に吸収されて核分裂性核種であるPu−239を生成する。これらのブランケット領域は、炉心全体のPuの増殖(増殖比>1.0)に貢献する。
高速増殖炉の起動時及び停止時、及び原子炉出力の調整時には、制御棒が操作される。制御棒は、炭化ホウ素(BC)の複数のペレットを充填した複数の中性子吸収棒を、横断面が正六角形のラッパ管内に収納して構成される。制御棒として、複数の主炉停止系制御棒及び複数の後備炉停止系制御棒が独立して設けられる。主炉停止系制御棒及び後備炉停止系制御棒のいずれか一方のみで、高速増殖炉を緊急停止できる。
各ブランケット領域の燃焼度は炉心燃料領域のそれよりも低い。燃料集合体を炉心から取り出したときにおけるPuの同位体組成を炉心燃料領域と各ブランケット領域で比較すると、前者の領域よりも後者の領域で核分裂性核種の割合が多くなっている。SAITOは、「Advanced Core Concepts with Enhanced Proliferation Resistance by Transmutation of Minor Actinides」, Proceedings of GLOBAL2005, Paper No. 172, 2005年において、種々の原子炉の炉心に装荷される燃料集合体に用いられる核燃料物質にマイナーアクチニド(MA)を添加し、炉心から取り出された燃料集合体内の核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238の割合を、暫定的に20wt%以上にして、Puの品質を原子炉級とする方策を提案している。
一般に、高速増殖炉の炉心で炉心燃料領域に装荷する燃料集合体に用いる核燃料物質にMAを添加した場合には、ボイド反応度及びドップラー係数などの炉心安全性に係わる反応度係数が変化する。特開平6−347579号公報は、MAをブランケット燃料集合体だけに使用し、半径方向ブランケット領域から取り出されたブランケット燃料集合体、及び炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体のそれぞれから回収したMAを、再度、ブランケット燃料集合体にリサイクルし、回収したPuを炉心燃料領域に装荷される燃料集合体にリサイクルすることによって、炉心の反応度係数への影響を抑制しつつ、MAを効率的に核変換する技術を記述している。
JAEA-Evaluation 2009-003, p.37及び41, 2009年も、高速増殖炉の核燃料としてMAを5.2%含む超ウラン核種(TRU)を用いることを記載している。
B. Pellaud,「Proliferation aspects of plutonium recycling」, C. R. Physique 3, pp.1067-1079 (2002)は、全Pu中のPu−240の割合を18wt%以上にすることを記載する。
特開平6−347579号公報
平川直弘、岩崎智彦著「原子炉物理入門」、東北大学出版会、pp.279―286、2003年10月30日 JAEA-Evaluation 2009-003, p.37, 41及び43, 2009年 M. SAITO,「Advanced Core Concept with Enhanced Proliferation Resistance by Transmutation of Minor Actinides」, Proceedings of GLOBAL2005, Paper No. 172, 2005年 B. Pellaud,「Proliferation aspects of plutonium recycling」, C. R. Physique 3, pp.1067-1079 (2002)
平川直弘、岩崎智彦著「原子炉物理入門」、東北大学出版会、pp.279―286、2003年10月30日に示される標準的な高速増殖炉の均質炉心の炉心燃料領域に装荷されている各燃料集合体の上下の各軸方向ブランケット領域では、核分裂性核種の割合が多いPuが生成される。このため、炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体の上下の各軸方向ブランケット領域内の核燃料物質では、核分裂性核種、すなわち、Puの奇数核種の割合が多くなる。換言すれば、使用済燃料集合体の上下の各軸方向ブランケット領域内の核燃料物質に含まれるPuの偶数核種が少ない。その核燃料物質を、核燃料再処理施設の溶解槽で溶解するとき、臨界性を考慮した場合に、軸方向ブランケット領域に存在していた核燃料物質の、溶解槽に供給する量を、少なくしなければならない。したがって、使用済の核燃料物質の再処理に要する時間が長くなる。
高速増殖炉の炉心内の炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体の全ての領域に存在するそれぞれの使用済の核燃料物質に含まれる、Puの核分裂性核種(偶数核種)の割合を減少し、核燃料物質に含まれるPuのレベルをPuの偶数核種の割合が多い原子炉級にすることができれば、使用済の核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
本発明の目的は、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる高速増殖炉の炉心及び高速増殖炉用燃料集合体を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、炉心の炉心燃料領域に装荷された燃料集合体が、軸方向の中央部にプルトニウムを含む燃料領域を形成し、燃料領域の上方にブランケット燃料物質を含む第1軸方向ブランケット領域を、燃料領域の下方にブランケット燃料物質を含む第2軸方向ブランケット領域をそれぞれ形成しており、冷却材として液体ナトリウムが供給され、
燃焼度ゼロの燃料集合体における第1軸方向ブランケット領域及び第2軸方向ブランケット領域にそれぞれ存在するブランケット燃料物質が、燃料核種である重金属としてウラン235,ウラン238及びネプチニウム237を含んでおり、
燃焼度ゼロの燃料集合体における第1軸方向ブランケット領域及び第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいてウラン235,ウラン238及びネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれるネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にある。
燃焼度ゼロの燃料集合体における第1軸方向ブランケット領域及び第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいてブランケット燃料物質に含まれるウラン235,ウラン238及びネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれるネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にあるので、炉心から使用済燃料集合体として取り出されたその燃料集合体のブランケット燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値が、原子炉級を区分する指標である、Pu−238及びPu−240の割合の合計値18wt%よりも大きくなる。このため、使用済燃料集合体として取り出されたその燃料集合体のブランケット燃料物質(使用済核燃料物質)が原子炉級になるので、このブランケット燃料物質を再処理する際、臨界性を考慮しても、そのブランケット燃料物質を溶解槽により多く供給することができる。結果として、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
炉心の炉心燃料領域に装荷された燃料集合体が、軸方向の中央部にプルトニウムを含む燃料領域を形成し、燃料領域の上方にブランケット燃料物質を含む第1軸方向ブランケット領域を、燃料領域の下方にブランケット燃料物質を含む第2軸方向ブランケット領域をそれぞれ形成しており、
燃焼度ゼロの燃料集合体における第1軸方向ブランケット領域及び第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいて、ブランケット燃料物質に含まれる燃料核種である重金属に対するそのブランケット燃料物質に含まれるマイナーアクチニドの割合を10.5%〜40%の範囲内にすることによっても、上記の目的を達成することができる。
燃焼度ゼロの燃料集合体における第1軸方向ブランケット領域及び第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいてブランケット燃料物質に含まれる重金属に対するそのブランケット燃料物質に含まれるマイナーアクチニドの割合が10.5%〜40%の範囲内にあるので、炉心から使用済燃料集合体として取り出されたその燃料集合体のブランケット燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値が、原子炉級を区分する指標である、Pu−238及びPu−240の割合の合計値18wt%よりも大きくなる。このため、使用済燃料集合体として取り出されたその燃料集合体のブランケット燃料物質(使用済核燃料物質)が原子炉級になり、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
本発明によれば、高速増殖炉から取り出された使用済燃料集合体に含まれている使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の高速増殖炉の炉心に用いられる燃料集合体の概略縦断面図である。 実施例1の高速増殖炉の炉心の1/4での横断面図である。 燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合と、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuのうち、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値との関係を示す特性図である。 燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合と、高速増殖炉の増殖比との関係を示す特性図である。 燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるマイナーアクチニドの割合と、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuのうち、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値との関係を示す特性図である。 燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるマイナーアクチニドの割合と、高速増殖炉の増殖比との関係を示す特性図である。 本発明の他の一実施例である実施例2の高速増殖炉の炉心に用いられる燃料集合体の概略縦断面図を示し、(A)は内側炉心燃料領域に装荷される燃料集合体の概略縦断面図、(B)は外側炉心燃料領域に装荷される燃料集合体の概略縦断面図である。 実施例2の高速増殖炉の炉心の1/4での横断面図である。
発明者らは、炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体に含まれている使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮する方策を検討した。
高速増殖炉の運転中、炉心の炉心燃料領域に装荷されている燃料集合体の、軸方向で、中央部に存在する炉心燃料領域では、核分裂性Puが核分裂をして冷却材である液体ナトリウムを加熱する熱を発生する。その燃料集合体の炉心燃料領域に存在するU−238が核分裂によって発生する中性子を吸収し、核分裂性PuであるPu−239が生成される。生成されたPu−239は、高速増殖炉の運転中において中性子を吸収して核分裂する場合と、直接核分裂しないでPu−240等の高次Puに核変換する場合がある。この結果、炉心の炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体中に存在する使用済核燃料物質に含まれるPuの偶数核種の割合が多くなっており、この使用済核燃料物質に含まれたPuは原子炉級になっている。
これに対し、炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体の軸方向ブランケット領域では、U−238の中性子の吸収によって生成された核分裂性核種であるPu−239(奇数核種)等が蓄積され、炉心全体のPuの増殖に貢献している。この結果、軸方向ブランケット領域に存在した使用済核燃料物質が、再処理時間を長くする要因になっている。
軸方向ブランケット領域に存在した使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができれば、再処理に要する時間を短くできると、発明者らは考えた。軸方向ブランケット領域に存在した使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にする方策を検討した結果、発明者らは、高速増殖炉の炉心内の内側炉心燃料領域及び外側炉心燃料領域のそれぞれに装荷する燃料集合体に形成される上下の各軸方向ブランケット領域に存在するそれぞれの核燃料物質にネプチニウム237(Np−237)を含ませることによって、その燃料集合体の軸方向における全ての領域、すなわち上下の各軸方向ブランケット領域を含む全ての領域において、使用済の核燃料物質に含まれるPuの核分裂性核種の割合を減少させて偶数核種の割合を多くすることができ、その燃料集合体の軸方向の全ての領域内の核燃料物質に含まれるPuのレベルを原子炉級にすることができることを、新たに見出した。
軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質にネプチニウム237を添加することについての検討結果を、以下に説明する。発明者らは、150万kW級の電気出力が得られる高速増殖炉を対象に検討を行った。この高速増殖炉に設けられた炉心は、半径方向に、炉心燃料領域及び炉心燃料領域を取り囲む遮へい体領域を有し、軸方向に、炉心燃料領域、及び炉心燃料領域の上方及び下方に配置された2つの軸方向ブランケット領域を有する。炉心燃料領域には、炉心の半径方向に、内側炉心燃料領域、及び内側炉心領域を取り囲む外側炉心燃料領域を有する。炉心の軸方向においては、炉心燃料領域である内側炉心燃料領域及び外側炉心燃料領域の上方及び下方に前述した各軸方向ブランケット領域が存在する。炉心燃料領域の高さは100cmであり、上下の各軸方向ブランケット領域の高さはそれぞれ20cmである。炉心燃料領域に装荷された各燃料集合体のPuを装荷したMOX(ウラン及びプルトニウムの混合酸化物)燃料領域の平均取り出し燃焼度は約150GWd/tである。
内側炉心燃料領域及び外側炉心燃料領域にそれぞれ装荷される燃料集合体は、軸方向において、中央部に燃料領域(高さ:100cm)を形成し、この燃料領域の上方及び下方にそれぞれ軸方向ブランケット領域(高さ:20cm)を形成している。
炉心燃料領域に装荷した燃料集合体を4バッチで取替え、高速増殖炉を連続運転期間約28ヶ月(850日)で運転すると、炉心燃料領域から取り出された各使用済燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する使用済核燃料物質に含まれる全Puに占める核分裂性Puの同位体の割合が約95%となる。
発明者らは、上記した高速増殖炉の炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体の軸方向の全ての領域に含まれるそれぞれの使用済核燃料物質が原子炉級になる方策を検討した。B.Pellaud, 「Proliferation aspects of plutonium recycling」, C. R. Physique 3, pp.1067-1079 (2002)が、原子炉級のPu組成の判定条件の指標として、「全Pu中におけるPu−240の割合が18wt%以上」を記載している。発明者らは、Pu−240と比べて単位重量あたりの自発核分裂率及び崩壊熱がいずれも大きなPu−238も考慮して、「全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計が18wt%以上」を新たな指標とした。炉心燃料領域から取り出された使用済燃料集合体の軸方向ブランケット領域内の使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の偶数核種を増やす方策として、発明者らは、まず、現状、高レベル放射性廃棄物に区分されるマイナーアクチニド(MA)のうち、軽水炉の使用済燃料集合体内の核燃料物質において約50%を占めるネプチニウム237を、軸方向ブランケット領域内の核燃料物質に添加することを考えた。発明者らは、さらに、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域内の核燃料物質がネプチニウム237を含んでいるとき、この燃料集合体を高速増殖炉の炉心燃料領域に装荷し、その後、炉心から使用済燃料集合体として取り出された場合における軸方向ブランケット領域内の核燃料物質のPu組成に及ぼす影響を評価した。図3にその評価結果を示す。横軸は、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域での核燃料物質に含まれる燃料核種である重金属(HM)に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合を示している。図3に示す評価結果で考慮した燃料核種である重金属は、ウラン235、ウラン238及びネプチニウム237である。縦軸は軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合(%)の合計値を示している。図3に示す破線26は、発明者らが新たに設定した指標である、全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計18wt%のラインである。図3に示す特性によれば、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる燃料核種である重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合を3%以上にすれば、炉心から取り出された使用済燃料集合体の軸方向ブランケット領域内の使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の同位体割合の合計を18wt%以上にすることができ、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができる。
他方、電力の安定供給の観点からは、核燃料の増殖性の確保が重要である。2050年頃と想定される我が国の商業用の高速増殖炉の導入時期から、今後延長が予想される軽水炉の寿命に相当する約60年間で全ての軽水炉を高速増殖炉に置換するためには、1.1程度の増殖比が必要であると考えられる。そこで、発明者らは、燃料集合体の軸方向ブランケット領域へのNp−237の添加が増殖比に及ぼす影響を検討した。この検討結果を図4に示す。横軸は、図3と同様に、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる燃料核種である重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合を示している。縦軸は高速増殖炉の平衡サイクル中期における高速増殖炉の増殖比を示す。図4に示された破線27は高速増殖炉の増殖比の目標値である1.1を示すラインである。図4によれば、軸方向ブランケットに存在するNp−237の割合を10%以下にすることにより、増殖比の目標値である1.1以上の増殖性能を維持できることが分かった。
以上の検討結果に基づけば、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合を、3%〜10%の範囲内にすれば、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができると共に、増殖比1.1以上の増殖性能を達成できる。その使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができるため、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
発明者らは、上記の検討により、燃料集合体の軸方向ブランケット領域の核燃料物質にNpを含ませればよいとの結論を得た。Npは、使用済核燃料物質の再処理によって得ることができるが、使用済核燃料物質から単独で回収する必要がある。しかしながら、使用済核燃料物質は、マイナーアクチニド(MA)として、ネプチニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)を含んでいる。このため、使用済核燃料物質から、Npを単独で分離回収するよりは、Npを含むMAを一括して分離回収する方が、技術的、経済的に有利である。特に、高速増殖炉の実用化研究では、高速増殖炉のみの平衡期には全てのMAを核燃料物質としてリサイクルすることが想定されている。
そこで、発明者らは、Npのみではなく、MAを、燃料集合体の軸方向ブランケット領域の核燃料物質に添加することを考えた。添加したMAの組成は、MA全体を100wt%とした場合、Np−237が5.8wt%、Am−241が57.8wt%、Am−242mが1.9wt%、Am−243が19.2wt%、Cm−244が11.5wt%、及びCm−245が3.8wt%である。発明者らは、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域内の核燃料物質がその組成を有するMAを含んでいるとき、この燃料集合体を高速増殖炉の炉心燃料領域に装荷し、その後、炉心から使用済燃料集合体として取り出された場合における軸方向ブランケット領域内の核燃料物質のPu組成に及ぼす影響を評価した。図5にその評価結果を示す。MAについての検討も、Npの場合と同様に、150万kW級の電気出力が得られる高速増殖炉を対象に検討を行った。この高速増殖炉の炉心において、炉心燃料領域の高さは100cmであり、上下の各軸方向ブランケット領域の高さはそれぞれ20cmである。
図5の横軸は、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域での核燃料物質に含まれる燃料核種である重金属(HM)に対するその核燃料物質に含まれるMAの割合を示している。図5の縦軸は、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合(%)の合計値を示している。図5に示す破線26は、図3と同様に、発明者らが新たに設定した指標である、全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値18wt%のラインである。図5に示す特性によれば、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対する核燃料物質に含まれるMAの割合を10.5%以上にすれば、炉心から取り出された使用済燃料集合体の軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計を18wt%以上にすることができ、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができる。
高速増殖炉のみの平衡期には、高速増殖炉プラントの所要の発電容量を維持するのに必要な増殖比は1.03程度で良い。そこで、発明者らは、燃料集合体の軸方向ブランケット領域へのMAの添加が増殖比に及ぼす影響を検討した。この検討結果を図6に示す。図6の横軸は、図5と同様に、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるMAの割合を示している。図6の縦軸は、高速増殖炉の平衡サイクル中期における高速増殖炉の増殖比を示す。図6に示された破線28は高速増殖炉の平衡期に必要な増殖比1.03を示すラインである。図6によれば、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域に存在する核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるMAの割合を40%以下にすることにより、増殖比の目標値である1.03以上の増殖性能を維持できることが分かった。
以上の検討結果に基づけば、燃焼度ゼロの燃料集合体の軸方向ブランケット領域内の核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるMAの割合を、10.5%〜40%の範囲内にすれば、軸方向ブランケット領域の使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができると共に、増殖比1.03以上の増殖性能を達成できる。その使用済核燃料物質に含まれるPuを原子炉級にすることができるため、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の高速増殖炉の炉心を、図1及び図2を用いて説明する。図2は、高速増殖炉の炉心1の水平断面の1/4を示している。
本実施例の高速増殖炉の炉心1は、半径方向において、炉心燃料領域2、炉心燃料領域2を取り囲む第1遮へい体領域5、及び第1遮へい体領域5を取り囲む第2遮へい体領域6を有する。本実施例の炉心1は、半径方向ブランケット領域を有していない。炉心燃料領域2は内側炉心燃料領域3及び外側炉心燃料領域4を有し、外側炉心燃料領域4が内側炉心燃料領域3を取り囲んでいる。炉心1は、図示されていないが、高速増殖炉の原子炉容器内に配置されている。
複数の燃料集合体7(図1参照)が内側炉心燃料領域3に装荷され、複数の燃料集合体8(図1参照)が外側炉心燃料領域4に装荷される。炭化ホウ素を充填した複数の制御棒集合体17が、内側炉心燃料領域3内に配置される。これらの制御棒集合体17を炉心1に出し入れすることによって、高速増殖炉の原子炉出力が制御される。ステンレス鋼製で横断面が正六角形の複数の第1遮へい体18が、第1遮へい体領域5に装荷されている。炭化ホウ素を含み横断面が正六角形の複数の第2遮へい体19が、第2遮へい体領域6に装荷されている。
炉心燃料領域2に装荷された燃料集合体7,8は、燃料領域9、上部軸方向ブランケット領域10、下部軸方向ブランケット領域11、上部ガスプレナム12、下部ガスプレナム13、上部遮へい体領域14及び下部遮へい体領域15を有する。燃料領域9は、燃料集合体7,8のそれぞれにおいて、軸方向の中央部に配置される。上部軸方向ブランケット領域10が燃料領域9の上方に配置され、下部軸方向ブランケット領域11が燃料領域9の下方に配置される。上部ガスプレナム12が上部軸方向ブランケット領域10の上方に配置され、下部ガスプレナム13が下部軸方向ブランケット領域11の下方に配置される。上部遮へい体領域14が上部ガスプレナム12の上方に配置され、下部遮へい体領域15が下部ガスプレナム13の下方に配置される。燃料領域9の高さが100cmであり、上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11のそれぞれの高さが20cmである。
燃料集合体7,8は、それぞれ、複数の燃料棒(図示せず)を有する。実際には、軸方向において、上方より以下の順番に配置される、上部遮へい体領域14、上部ガスプレナム12、上部軸方向ブランケット領域10、燃料領域9、下部軸方向ブランケット領域11、下部ガスプレナム13及び下部遮へい体領域15が、燃料集合体7,8のそれぞれの燃料棒内に形成される。
炉心1が適用される高速増殖炉は、電気出力が150万kW級の原子炉である。炉心燃料領域2に装荷された燃料集合体7,8の燃料領域9の平均取り出し燃焼度が約150GWd/tである。燃料集合体7,8では、ウラン及びプルトニウムの混合酸化物燃料(MOX燃料)で作られた複数の燃料ペレットが、各燃料棒内の燃料領域9に充填されている。この混合酸化物燃料は、核分裂性Pu(例えば、Pu−239及びPu−241等)を含んでいる。外側炉心燃料領域4に装荷された燃焼度ゼロの燃料集合体8の燃料領域9における核分裂性Puの富化度が、内側炉心燃料領域3に装荷された燃焼度ゼロの燃料集合体7の燃料領域9における核分裂性Puの富化度よりも高くなっている。このため、炉心燃料領域2の半径方向における出力分布が平坦化される。
燃料集合体7,8のそれぞれの燃料棒内の上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11には、劣化ウランの酸化物で作られた複数の燃料ペレットが充填されている。炉心燃料領域2に装荷された燃焼度ゼロの燃料集合体7,8のそれぞれの上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11に存在する各燃料ペレット(核燃料物質)は、U−235,U−238及びNp−237を含んでいる。U−235,U238及びNp−237は燃料核種である重金属である。燃焼度ゼロの燃料集合体7,8では、それぞれの上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11に存在する核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるNp−237(重量%)の割合が5%であり、残りのUの割合が95%である。全Uに対する割合はU−235が0.2%でU−238が99.8%である。
炉心1の内側炉心燃料領域3が各燃料集合体7の燃料領域9によって形成され、内側炉心燃料領域3の高さはこの燃料領域9の高さである100cmになる。外側炉心燃料領域4が各燃料集合体8の燃料領域9によって形成され、外側炉心燃料領域4の高さもこの燃料領域9の高さである100cmになる。炉心1において、燃料集合体7,8のそれぞれの上部軸方向ブランケット領域10により、高さ20cmの上部軸方向ブランケット領域が、内側炉心燃料領域3及び外側炉心燃料領域4の上方に形成される。炉心1において、燃料集合体7,8のそれぞれの下部軸方向ブランケット領域11により、高さ20cmの下部軸方向ブランケット領域が、内側炉心燃料領域3及び外側炉心燃料領域4の下方に形成される。
炉心1を有する高速増殖炉は、1つの運転サイクルでの運転期間が約28ヶ月(850日)であり、炉心1に装荷された燃料集合体7,8が4バッチで取替えられる。すなわち、1つの運転サイクルでの運転終了後に、内側炉心燃料領域3に存在する全燃料集合体7のうち、1/4の燃料集合体7が使用済燃料集合体として高速増殖炉外に取り出され、替りに、燃焼度ゼロの燃料集合体7が内側炉心燃料領域3に装荷される。外側炉心燃料領域4に存在する燃料集合体8についても、全燃料集合体8のうち、1/4の燃料集合体8が使用済燃料集合体として高速増殖炉外に取り出され、替りに、燃焼度ゼロの燃料集合体8が外側炉心燃料領域4に装荷される。本実施例では、燃焼度ゼロの燃料集合体は、高速増殖炉の炉心1内に4つの運転サイクルの期間が経過するまで滞在する。
燃料集合体7,8の交換が終了した後、高速増殖炉が起動され、次の運転サイクルにおける運転が開始される。高速増殖炉の運転中においては、炉心1内に冷却材である液体ナトリウムが供給される。燃料集合体7,8のそれぞれの燃料領域9に存在する核分裂性Puの核分裂によって発生する熱で液体ナトリウムが加熱される。燃料領域9に存在する核分裂性Puの核分裂によって発生した核分裂生成ガスが、燃料集合体7,8のそれぞれに形成された上部ガスプレナム12及び下部ガスプレナム13に蓄えられる。
高速増殖炉から使用済燃料集合体として取り出された各燃料集合体7,8の上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11に存在する各燃料ペレット(使用済核燃料物質)に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の割合の合計値は、燃焼度ゼロのときに領域10,11内のそれぞれにおいて核燃料物質に含まれる重金属に対するその核燃料物質に含まれるNp−237の割合が5%であったので、約20wt%になる。使用済燃料集合体として取り出された各燃料集合体7,8の上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11に存在する使用済核燃料物質に含まれる全Pu中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値が約20wt%であるため、領域10,11に存在する使用済核燃料物質に含まれるPuが原子炉級になる。この使用済核燃料物質に含まれるPuが原子炉級であるため、この使用済核燃料物質を核燃料再処理施設の溶解槽で溶解するとき、臨界性を考慮しても、軸方向ブランケット領域に存在していた使用済核燃料物質の溶解槽への投入量を増やすことができる。したがって、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができる。
さらに、燃焼度ゼロの燃料集合体7,8の領域10,11に存在する核燃料物質(燃料ペレット)では、重金属に対するNp−237の割合が10%以下である5%になっているので、本実施例になる高速増殖炉の炉心の平衡サイクル中期における増殖比が約1.12になる。
本発明の他の実施例である実施例2の高速増殖炉の炉心を、図7及び図8を用いて説明する。
本実施例の高速増殖炉の炉心1Aは、高速増殖炉の炉心1において炉心燃料領域2を炉心燃料領域2Aに替えた構成を有する。高速増殖炉の炉心1Aの他の構成は高速増殖炉の炉心1Aと同じである。炉心燃料領域2Aは、内側炉心燃料領域3A及び内側炉心燃料領域3Aを取り囲む外側炉心燃料領域4Aを有する。複数の燃料集合体7Aが内側炉心燃料領域3Aに装荷され、複数の燃料集合体8Aが外側炉心燃料領域4Aに装荷される。
燃料集合体7Aは、図7(A)に示すように、実施例1で用いた燃料集合体7の燃料領域9を上部燃料領域20、内部ブランケット領域24及び下部燃料領域22に替えた構成を有する。燃料集合体7Aの他の構成は燃料集合体7と同じである。燃料集合体7Aにおいて、上部燃料領域20、内部ブランケット領域24及び下部燃料領域22は、この順番に、上部軸方向ブランケット領域10から下部軸方向ブランケット領域11に向って配置される。上部燃料領域20,下部燃料領域22の高さはそれぞれ40cmであり、内部ブランケット領域24の高さは20cmである。上部燃料領域20、内部ブランケット領域24及び下部燃料領域22のそれぞれの高さの合計は100cmであり、燃料集合体7の燃料領域9の高さと同じである。
燃料集合体8Aは、図7(B)に示すように、実施例1で用いた燃料集合体8の燃料領域9を上部燃料領域21、内部ブランケット領域25及び下部燃料領域23に替えた構成を有する。燃料集合体8Aの他の構成は燃料集合体8と同じである。燃料集合体8Aにおいて、上部燃料領域21、内部ブランケット領域25及び下部燃料領域23は、この順番に、上部軸方向ブランケット領域10から下部軸方向ブランケット領域11に向って配置される。上部燃料領域21,下部燃料領域23の高さはそれぞれ45cmであり、内部ブランケット領域25の高さは10cmである。内部ブランケット領域25の高さは内部ブランケット領域24の高さよりも低くなっている。上部燃料領域21、内部ブランケット領域25及び下部燃料領域23のそれぞれの高さの合計は100cmであり、燃料集合体8の燃料領域9の高さと同じである。
上部燃料領域20,21及び下部燃料領域22,23には、実施例1における燃料領域9と同様に、ウラン及びプルトニウムの混合酸化物燃料(MOX燃料)で作られた複数の燃料ペレット(核燃料物質)が存在する。燃焼度ゼロの燃料集合体7A,8Aでは、上部燃料領域21及び下部燃料領域23のそれぞれの核分裂性Puの富化度は、上部燃料領域20及び下部燃料領域22のそれぞれの核分裂性Puの富化度と同じになっている。内部ブランケット領域24,25には、上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11と同様に、劣化ウランの酸化物で作られた複数の燃料ペレット(核燃料物質)が存在する。燃焼度ゼロの燃料集合体7A,8Aでは、領域10,11だけでなく、内部ブランケット領域24,25のそれぞれにおいても核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるNp−237(重量%)の割合が5%になっている。
複数の燃料集合体7Aが内側炉心燃料領域3Aに装荷され、複数の燃料集合体8Aが外側炉心燃料領域4Aに装荷されることによって、内側炉心燃料領域3A及び外側炉心燃料領域4Aの軸方向の中央部に内部ブランケット領域がそれぞれ形成される。さらに、内側炉心燃料領域3A及び外側炉心燃料領域4Aにおいて、上部燃料領域が上部軸方向ブランケット領域と内部ブランケット領域の間に形成され、下部燃料領域が内部ブランケット領域と下部軸方向ブランケット領域の間に形成される。このような炉心1Aは軸方向非均質炉心である。
1つの運転サイクルの期間において、炉心1Aを有する高速増殖炉を運転する。その運転サイクルが終了したとき、高速増殖炉の運転が停止され、内側炉心燃料領域3A内の一部の燃料集合体7A及び外側炉心燃料領域4A内の一部の燃料集合体8Aが、使用済燃料集合体として高速増殖炉から取り出される。高速増殖炉から使用済燃料集合体として取り出された各燃料集合体7A,8Aの上部軸方向ブランケット領域10、下部軸方向ブランケット領域11及び内部ブランケット領域24,25に存在する各燃料ペレット(使用済核燃料物質)に含まれるPu−238及びPu−240の各割合の合計値は、燃焼度ゼロのときに領域10,11,24,25内のそれぞれにおいて核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるNp−237(重量%)の割合が5%であったので、約20wt%になる。このため、領域10,11,24,25に存在する使用済核燃料物質に含まれるPuが原子炉級になる。
本実施例は、実施例1と同様に、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができ、燃料集合体7A,8Aを装荷した炉心の増殖比を約1.12にすることができる。さらに、本実施例では、燃料集合体8Aの上部燃料領域21及び下部燃料領域23の軸方向の長さを燃料集合体7Aの上部燃料領域20及び下部燃料領域22の軸方向の長さよりも長くしているので、上部燃料領域20,21及び下部燃料領域22,23における核分裂性Puの富化度を同じにしても、上部燃料領域21及び下部燃料領域23に含まれる核分裂性Puの量を上部燃料領域20及び下部燃料領域22に含まれる核分裂性Puの量よりも多くすることができる。この結果、炉心燃料領域2Aの半径方向の出力分布を平坦化することができる。したがって、上部燃料領域20,21及び下部燃料領域22,23における核分裂性Puの富化度を同じにすることができ、使用するMOX燃料を一種類にすることができ、MOX燃料を用いた燃料ペレットの製造が容易になる。
本発明の他の実施例である実施例3の高速増殖炉の炉心を用いて説明する。本実施例の高速増殖炉の炉心は、実施例1の高速増殖炉の炉心1において燃料集合体7,8の上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11での核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるNp−237(重量%)の割合の替りに、核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるMA(重量%)の割合を特定した構成を有する。本実施例の高速増殖炉の炉心における他の構成は高速増殖炉の炉心1と同じである。
本実施例の高速増殖炉の炉心の炉心燃料領域2に装荷された燃焼度ゼロの燃料集合体7,8では、上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11のそれぞれにおいて劣化ウラン製の各燃料ペレット(核燃料物質)に含まれる燃料核種である重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるMA(重量%)の割合が20%である。燃焼度ゼロの燃料集合体7,8の上部軸方向ブランケット領域10及び下部軸方向ブランケット領域11に存在する燃料ペレットに含まれる重金属の重量割合はUが80wt%でMAが20wt%である。Uの同位体割合はU−235が0.2wt%、U−238が99.8wt%である。MAの重量内訳は、Np−237が1.2wt%、Am−241が11.5wt%、Am−242mが0.4wt%、Am−243が3.8wt%、Cm−244が2.3wt%、及びCm−245が0.8wt%である。本実施例で用いられる燃料集合体7,8の他の構成は、実施例1で用いられる燃料集合体7,8の構成と同じである。
1つの運転サイクルの期間において、本実施例の炉心1を有する高速増殖炉を運転する。その運転サイクルが終了したとき、高速増殖炉の運転が停止され、内側炉心燃料領域3内の一部の燃料集合体7及び外側炉心燃料領域4内の一部の燃料集合体8が、使用済燃料集合体として高速増殖炉から取り出される。高速増殖炉から使用済燃料集合体として取り出された各燃料集合体7,8の上部軸方向ブランケット領域10、下部軸方向ブランケット領域11に存在する各燃料ペレット(使用済核燃料物質)に含まれる全PU中の、Pu−238及びPu−240の各割合の合計値は、燃焼度ゼロのときに領域10,11内のそれぞれにおいて核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるMA(重量%)の割合が20%であったので、約26wt%になる。このため、領域10,11に存在する使用済核燃料物質に含まれるPuが原子炉級になる。また、本実施例になる高速増殖炉の平衡サイクル中期における炉心の増殖比を1.08にすることができる。このため、増殖比を、高速増殖炉の平衡期に必要な増殖比の目標値である1.03よりも大きくすることができ、所要の増殖性能を得ることができる。
本実施例は、実施例1と同様に、使用済核燃料物質の再処理に要する時間を短縮することができ、増殖比を目標値よりも大きくすることができる。
実施例2の高速増殖炉の炉心1Aに対しても、内側炉心燃料領域3A及び外側炉心燃料領域4Aに装荷された燃焼度ゼロの燃料集合体7A,8Aのそれぞれの上部軸方向ブランケット領域10、下部軸方向ブランケット領域11及び内部ブランケット領域23,25において、本実施例と同様に、例えば、核燃料物質に含まれる重金属(重量%)に対するその核燃料物質に含まれるMA(重量%)の割合を20%にしてもよい。これによって、実施例3の炉心1で生じる各効果を得ることができる。さらに、実施例2で生じるMOX燃料を用いた燃料ペレットの製造が容易になるという効果を得ることができる。
1,1A…炉心、2,2A…炉心燃料領域、3,3A…内側炉心燃料領域、4,4A…外側炉心燃料領域、7,7A,8,8A…燃料集合体、9…燃料領域、10…上部ブランケット領域、11…下部ブランケット領域、12…上部ガスプレナム、13…下部ガスプレナム、17…制御棒集合体、20,21…上部燃料領域、22,23…下部燃料体領域、24,25…内部ブランケット領域。

Claims (6)

  1. 複数の燃料集合体が装荷された炉心燃料領域及び前記炉心燃料領域を取り囲む遮へい体領域を有し、冷却材として液体ナトリウムが供給される高速増殖炉の炉心において、
    前記燃料集合体が、軸方向の中央部にプルトニウムを含む燃料領域を形成し、前記燃料領域の上方にブランケット燃料物質を含む第1軸方向ブランケット領域を、前記燃料領域の下方に前記ブランケット燃料物質を含む第2軸方向ブランケット領域をそれぞれ形成しており、
    燃焼度ゼロの前記燃料集合体における前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域にそれぞれ存在する前記ブランケット燃料物質が、燃料核種である重金属としてウラン235,ウラン238及びネプチニウム237を含んでおり、
    燃焼度ゼロの前記燃料集合体における前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいて前記ウラン235,前記ウラン238及び前記ネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれる前記ネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にあることを特徴とする高速増殖炉の炉心。
  2. 前記炉心燃料領域に装荷された前記燃料集合体が、前記燃料領域として第1燃料領域及び第2燃料領域を有し、前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域以外のブランケット領域として前記ブランケット燃料物質を含む内部ブランケット領域を有し、
    前記燃料集合体の軸方向において、前記内部ブランケット領域が前記第1燃料領域と前記第2燃料領域の間に配置され、
    燃焼度ゼロの前記燃料集合体における前記内部ブランケット領域において前記ブランケット燃料物質に含まれる前記ウラン235,前記ウラン238及び前記ネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれる前記ネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にある請求項1に記載の高速増殖炉の炉心。
  3. 前記炉心燃料領域が、第1炉心燃料領域及び前記第1炉心燃料領域を取り囲む第2炉心燃料領域を含んでおり、
    前記第2炉心燃料領域に装荷された燃焼度ゼロの前記燃料集合体の前記燃料領域のプルトニウムの富化度が、前記第1炉心燃料領域に装荷された燃焼度ゼロの前記燃料集合体の前記燃料領域のプルトニウムの富化度よりも高い請求項1に記載の高速増殖炉の炉心。
  4. 前記炉心燃料領域が、第1炉心燃料領域及び前記第1炉心燃料領域を取り囲む第2炉心燃料領域を含んでおり、
    前記第2炉心燃料領域に装荷された前記燃料集合体の前記第1燃料領域の軸方向の長さが、前記第1炉心燃料領域に装荷された前記燃料集合体の前記第1燃料領域の軸方向の長さよりも長く、前記第2炉心燃料領域に装荷された前記燃料集合体の前記第2燃料領域の軸方向の長さが、前記第1炉心燃料領域に装荷された前記燃料集合体の前記第2燃料領域の軸方向の長さよりも長い請求項2に記載の高速増殖炉の炉心。
  5. 軸方向の中央部にプルトニウムを含む燃料領域を形成し、前記燃料領域の上方にブランケット燃料物質を含む第1軸方向ブランケット領域を、前記燃料領域の下方に前記ブランケット燃料物質を含む第2軸方向ブランケット領域をそれぞれ形成しており、冷却材として液体ナトリウムが供給され、
    燃焼度ゼロの状態で、前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域のそれぞれ存在する前記ブランケット燃料物質が、燃料核種である重金属としてウラン235,ウラン238及びネプチニウム237を含んでおり、
    燃焼度ゼロの状態で、前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域のそれぞれにおいて前記ウラン235,前記ウラン238及び前記ネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれる前記ネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にあることを特徴とする高速増殖炉用燃料集合体。
  6. 前記燃料領域として第1燃料領域及び第2燃料領域を有し、前記第1軸方向ブランケット領域及び前記第2軸方向ブランケット領域以外のブランケット領域として前記ブランケット燃料物質を含む内部ブランケット領域を有し、
    前記燃料集合体の軸方向において、前記内部ブランケット領域が前記第1燃料領域と前記第2燃料領域の間に配置され、
    燃焼度ゼロの状態で、前記内部ブランケット領域において前記ブランケット燃料物質に含まれる前記ウラン235,前記ウラン238及び前記ネプチニウム237の合計に対するそのブランケット燃料物質に含まれる前記ネプチニウム237の割合が3%〜10%の範囲内にある請求項に記載の高速増殖炉用燃料集合体。
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