JP4099652B2 - 成形用金型の保全治具及び成形用金型の保全方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形用金型の保全治具及び成形用金型の保全方法に関し、特に、大物成形品用の大型で且つ重量の大きな成形用金型の保全治具及び成形用金型の保全方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイカスト鋳造法は、砂型鋳造法等の他の鋳造方法と比較して生産性が高く、また溶湯を高速、高圧でダイカスト金型のキャビティに射出するために湯流れがよく、大型部品や複雑な形状を高い精度で成形することが可能である。従って、ダイカスト鋳造法は、自動車用エンジンのシリンダブロック等の成形に広く用いられている。一般に、ダイカスト金型は、複数の製品間で共通化され、固定側主型と可動側主型とを含む汎用部と、キャビティを形成し、固定側入子と可動側入子とを含む専用部とで構成され、上記固定側主型には固定側入子が、可動側主型には可動側入子が、各々ボルトで締結されている。また、ダイカストマシン(成形機)は、ダイカスト金型の固定側主型が取り付けられる固定側プラテンと、該固定側プラテンに対して近接離反可能で、ダイカスト金型の可動側主型が取り付けられる可動側プラテンとを具備している。そして、上記可動側プラテンを固定側プラテンに向けて駆動してダイカスト金型を型締めすることにより、所要圧力で圧締されたダイカスト金型の専用部内にキャビティが形成される。
【0003】
上記ダイカスト金型では、キャビティ内に高速で充填された溶湯が高い圧力の下で凝固する。従って、金型表面の凸部が他の部位と比較して異常に温度上昇し、さらに溶湯充填時のエアの巻き込みにより金型表面に断熱層が形成されて温度上昇が助長され、凝固した溶湯が金型表面に凝着して焼き付くことがある。また、ダイカスト金型では、溶湯の接触による加熱、離型剤の塗布による冷却、金型内部に配した冷却水通路を流れる冷却水による冷却が1つの製造サイクル毎に順次繰り返され、金型表面に、膨張による引張り応力と収縮による圧縮応力とが繰り返し作用する。上記した過酷な条件下にあるダイカスト金型では、割れ、ヒートチャック、鋳抜きピンの破損等が生じ易い。そして、これらの不具合が生じた場合には、ダイカスト金型をダイカストマシンから離脱し、金型の保全(修理)が行われる。
【0004】
従来のダイカスト金型(例えば、特許文献1参照。)は、上記したように固定側主型に固定側入子が、可動側主型に可動側入子が各々ボルトで締結されており、保全時には、汎用部の固定側主型と専用部の固定側入子とが、汎用部の可動側主型と専用部の可動側入子とが、一体化された単位でクレーンにより吊り上げられてダイカストマシンから取り外される。そして、クレーンにより吊り上げられたダイカスト金型は、木片や製缶構造の架台に載置するか、或いはクレーンで吊持したままの状態で保全が施されていた。また、ダイカスト金型をダイカストマシンから取り外す際には、金型冷却用の冷却水の配管や金型各部に配した各種センサ等の電気機器の信号ケーブルのコネクタを全て取り外すといった煩雑で時間を要する作業が必要となる。成形品がエンジンのシリンダブロック等の複雑な形状である場合には、ダイカスト金型の汎用部に成形品のアンダーカット部分の形状が賦与されたスライドコアがキャビティを囲うようにして複数配設されている。従って、ダイカスト金型をダイカストマシンから取り外すに際して、これらスライドコアを駆動するための油圧シリンダの配管や信号ケーブルのコネクタ等をも全て取り外す作業が必要となり、ダイカスト金型の取り外し作業はより煩雑で時間を要するものとなる。
【0005】
また、固定側主型と固定側入子とが一体化された固定型、及び可動側主型と可動側入子とが一体化された可動型の単位でダイカストマシンから取り外されたダイカスト金型は、上記架台に載置されて汎用部(固定側主型又は可動側主型)と専用部(固定側入子又は可動側入子)とに分解される。そして、例えば金型表面の補修や鋳抜きピンの交換等の作業が施され、この際、必要に応じてクレーン等を用いてダイカスト金型を吊持したり、或いは反転させたりする。所要作業の終了後、汎用部(固定側主型又は可動側主型)に専用部(固定側入子又は可動側入子)を再度ボルトで締結してダイカスト金型を固定型又は可動型単位で一体化し、各々(固定型又は可動型)をダイカストマシンの固定プラテン又は可動プラテンに取り付ける。また、各プラテンに取り付けられたダイカスト金型には、再度冷却水及び上記油圧シリンダの配管が接続されると共に各種信号ケーブルのコネクタが接続される。そして、各部の動作を確認して保全作業が終了する。
【0006】
上記したように、特に大型で複雑な形状の成形品の場合、ダイカスト金型も大型で複雑な形状となる。従って、金型の保全作業には多大な手間と時間を要し、生産効率を大幅に低下させ、製造コストを増大させる要因となっていた。また、上記のような一連の作業は、例えば、鋳抜きピンを1本のみ交換したい場合であっても必要であり、保全作業の効率を極めて悪いものとし、ダイカストマシンの可動率を著しく低下させて生産効率を大幅に低下させていた。さらに、保全作業は、ダイカスト金型をクレーンでリフトしたり反転させることが多く、また中腰やかがんだ姿勢で行う作業が多いため、作業者への負担が大きかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−170750号公報(段落番号0019〜0024、第2図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、安全、且つ効率よく成形用金型の保全が行える成形用金型の保全治具を提供することにある。また第2の目的は、安全、且つ効率よく成形用金型の保全が行える成形用金型の保全方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、共通化された汎用部とキャビティを形成する専用部とで構成され、専用部が固定側入子と可動側入子とを含む成形用金型の保全治具であって、固定側入子と可動側入子とが一体化された専用部を対向する一対の支持面間に保持する支持台を備え、該支持台は、支持面と直交すると共に固定側入子と可動側入子との合わせ面に略平行に設けられた軸が治具本体に回動可能に軸支されて該軸の軸線回りに位置決め可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、支持台の軸に接続されて該軸に回動駆動力を伝動する減速機を備え、該減速機の所定位置にタイロッドの一端を連結させると共に該タイロッドの他端を治具本体に連結して減速機が軸の軸線回りに回動するのを規制することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、専用部の固定側入子又は可動側入子の両側面にクランプ溝を配設し、支持台に、各クランプ溝に係合して専用部を保持するクランパを設けることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、支持台の軸を駆動して支持台を軸の回りに回動させるモータと、軸と同軸上に配置されて軸と一体で回転するブレーキディスクと該ブレーキディスクの軸線回りの回転動作を規制するブレーキキャリパとを含んで構成されモータが停止することで作動してモータが停止している間作動状態を持続するブレーキと、を具備することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ブレーキは、ブレーキキャリパが治具本体に対して軸の軸線方向へ変位可能に設けられることを特徴とする。
【0014】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項6に記載の発明は、共通化された汎用部とキャビティを形成する専用部とで構成され、専用部が固定側入子と可動側入子とを含む成形用金型の保全方法であって、専用部を固定側入子と可動側入子とを一体化して成形機から取り外し、この成形機から取り外された専用部を保全治具の支持台の一対の支持面間に載置し、支持台に設けられたクランパを専用部の両側面に配設されたクランプ溝に係合させて専用部をクランパで把持して支持台に固定し、専用部が固定された支持台を、支持面と直交すると共に固定側入子と可動側入子との合わせ面に略平行な回動軸の回りに必要に応じて回動させて軸の回りに位置決めし、専用部を分解することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、支持台をモータで駆動して回動軸の回りに回動させ、モータを停止させると同時にブレーキを作動させて支持台の可動動作を規制し、支持台を回動軸の回りに位置決めして、モータが停止している間ブレーキを持続させることを特徴とする。
【0016】
従って、請求項1に記載の発明では、固定側入子と可動側入子とが一体化された専用部を支持台の対向する一対の支持面間に保持し、支持台を支持面と直交すると共に固定側入子と可動側入子との合わせ面に略平行な軸の軸線回りに回動させて該支持台を軸の軸線回りに位置決めする。
【0017】
請求項2に記載の発明では、減速機と治具本体とをタイロッドで連結することで、減速機が支持台の軸の軸線回りに回動するのが規制されると共に軸が撓んだ際に生じる支持台の軸の軸線方向への減速機の振れが許容される。
【0018】
請求項3に記載の発明では、クランパを専用部の固定側入子又は可動側入子の両側面のクランプ溝に係合させてクランパで専用部を把持することで、専用部が支持台に保持される。
【0019】
請求項4に記載の発明では、支持台の軸をモータで駆動することで支持台が軸の軸線回りに回動し、モータを停止させることでブレーキが作動して支持台が軸の軸線回りに位置決めされ、モータを停止させている間ブレーキの作動状態が持続されて支持台が軸の軸線回りに位置決めされた状態で保持される。
【0020】
請求項5に記載の発明では、例えば専用部の重量で支持台の軸が撓んだ場合であっても、ブレーキキャリパを治具本体に対して軸の軸線方向へ変位させることにより、支持台の軸の撓みに起因するブレーキディスクの振れを吸収することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、固定側入子と可動側入子とが一体化された専用部を成形機から取り外して支持台に載置し、専用部の両側面に配されたクランプ溝にクランパを係合して該クランパで専用部を把持することで専用部を支持台に固定する。そして、支持台を、支持面と直交すると共に固定側入子と可動側入子との合わせ面に略平行な軸の軸線回りに必要に応じて回動させて該軸の軸線回りの所要位置に位置決めし、専用部を分解する。
【0022】
請求項7に記載の発明では、支持台をモータで駆動して回動軸の回りに必要に応じて回動させ、所要のタイミングでモータを停止させることによりモータの停止と同時にブレーキが作動して、支持台の回動軸の回りの回動動作が規制されて支持台が回動軸の回りに位置決めされる。また、モータが停止している間ブレーキが持続して、支持台は位置決めされた状態で保持される。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態では、共通化された汎用部とキャビティを形成する専用部1とで構成されたダイカスト金型の専用部1を成形用金型とし、該成形用金型の保全治具及び成形用金型の保全方法について具体的に説明する。
【0024】
まず、上記成形用金型としてのダイカスト金型の専用部1の詳細を説明する。上記ダイカスト金型の専用部1(以下、単に専用部1と称す)は、図4及び図5に示すように、汎用部の固定側主型に脱着可能に設けられる固定側入子2と、汎用部の可動側主型に脱着可能に設けられる可動側入子3と、成形品のアンダーカット部の形状が賦与されたスライドコア4と、を含んで構成されている。上記専用部1は、固定側入子2と可動側入子3とを連結する連結機構と、連結された固定側入子2と可動側入子3との間にスライドコア4を保持するスライドコア保持機構とを具備し、これら連結機構とスライドコア保持機構とにより一体化が可能な構造になっている。
【0025】
図6〜図8に示すように、上記連結機構は、固定側入子2の略対角線上に配設された一対のボールジョイント5と、各ボールジョイント5に整合させて可動側入子3に配置したボールジョイント係合孔6と、に大別される。上記ボールジョイント5は、固定側入子2の合わせ面2aに立設されたボス7の内周面で摺動可能に支持されて圧縮コイルばね8により固定側入子2の合わせ面2a側から背面2b(汎用部の固定側主型との連結面)側に向かう方向(図6における紙面視左方向)に付勢されるシャフト9を備えている。該シャフト9には、一側の直径がD1(図8参照)の大径軸部9aと、直径がD2(図8参照)の小径軸部9bと、が境界部にR部を有して形成されている。また、上記ボス7には、シャフト9の大径軸部9aが摺接する大径孔部7bと、シャフト9の小径軸部9bが摺接する小径孔部7cと、が形成されている。
【0026】
また、ボス7の大径孔部7bには、当該ボス7の軸線回りに環状に等配された複数のボール収納孔10が設けられている。該ボール収納孔10はボス7の内周面から外周面7aに向けて内径が小さくなるようなテーパ状に形成されており、各ボール収納孔10には所定の直径を有する鋼製のボール11が収納されている。そして、図6に示すように、シャフト9が圧縮コイルばね8のばね力で付勢されてボス7に対して図6における紙面視左方向に位置することで、各ボール11はシャフト9の大径軸部9aに当接してボス7の外周面7a側に突出する。また、図7に示すように、シャフト9に圧縮コイルばね8を圧縮させるような外力が加えられた場合には、シャフト9がボス7に対して図6における状態から図6における紙面視右方向に移動することにより、各ボール11はボール収納孔10とシャフト9の小径軸部9bとの間の空間を移動可能な状態となり、各ボール11がボス7の外周面7aから退避させることができる構造になっている。
【0027】
一方、図6及び図7に示すように、上記ボールジョイント係合孔6は、ボールジョイント5のボス7の外周面7aが嵌合可能に形成されており、当該ボールジョイント係合孔6には、固定側入子2と可動側入子3との互いの合わせ面2a,3aが密着されることにより当該ボールジョイント係合孔6に嵌合したボス7のボール収納孔10と連通する環状溝12が形成されている。該環状溝12には、固定側入子2と可動側入子3との互いの合わせ面2a,3aを密着させた状態で、環状溝12の両側面がボス7のボール収納孔10のテーパ(先細り形状)と整合(連続)するように、底面に向けてテーパ状に形成されている。なお、上記ボールジョイント係合孔6は、ボールジョイント5のボス7の嵌合を容易にするためにテーパ状に形成されており、ボールジョイント5は、ボス7の外周面7aがボールジョイント係合孔6に整合したテーパ状に形成されている。
【0028】
そして、固定側入子2と可動側入子3とを連結させる場合には、まず、ボールジョイント5の圧縮コイルばね8を圧縮させて、シャフト9をボス7に対して図8における紙面視右方向に移動させる。この状態では、ボス7に形成されたボール収納孔10が、シャフト9の小径軸部9bに臨むように位置する。次に、この状態で各ボールジョイント5のボス7を可動側入子3のボールジョイント係合孔6に嵌合して、固定側入子2と可動側入子3との互いの合わせ面2a,3aを密着させる。これにより、図7に示すように、ボールジョイント5のボス7の各ボール収納孔10が、ボールジョイント係合孔6の環状溝12に臨むように位置する。そして、この状態で圧縮コイルばね8を伸長させることにより、図6に示すように、各ボール11がシャフト9の大径軸部9aでシャフト半径方向に押し出され、各ボール11がボス7の外周面7aに開口したボール収納孔10から突出してボールジョイント係合孔6の環状溝12に嵌合する。
【0029】
これにより、ボールジョイント5のボス7とボールジョイント係合孔6との軸線方向の相対移動が規制され、固定側入子2と可動側入子3とが連結される。また、固定側入子2と可動側入子3とを連結させた状態からこの連結を解放する場合には、図6に示す状態でボールジョイント5の圧縮コイルばね8を圧縮して、シャフト9をボス7に対して図6における紙面視右方向に移動させる。これにより、図7に示すように、ボス7に形成されたボール収納孔10がシャフト9の小径軸部9bに臨むように位置し、ボール11がボール収納孔10とシャフト9の小径軸部9bとの間の空間を移動可能な状態となる。この状態で、図8に示すように、ボール11をボス7の外周面7aから退避させて固定側入子2と可動側入子3との連結を解放する。なお、固定側入子2の背面2bには、上記固定側入子2と可動側入子3との連結を解放するためのブロックが各ボールジョイント5毎に配設されている。
【0030】
次に、スライドコア保持機構の詳細を説明する。図4及び図5に示すダイカスト金型の専用部1は、固定側入子2と可動側入子3との間に形成された各スライドコア嵌合部13に、図4における紙面視で上下左右の4方向から挿入されたスライドコア4が嵌合されてキャビティが形成される構造になっている。各スライドコア4には、固定側入子2の合わせ面2a側に突出させたスライドコア保持ピン14が一対で配設され、また固定側入子2の合わせ面2aには、各スライドコア4のスライドコア保持ピン14の一対が嵌合可能な凹部15が、各スライドコア保持ピン14(本実施例では8本のスライドコア保持ピン14)に整合させて配設されている。そして、上記スライドコア保持機構は、各スライドコア4の一対のスライドコア保持ピン14が固定側入子2に配した各凹部15に嵌合されることにより、各スライドコア4が固定側入子2と可動側入子3との間のスライドコア嵌合部13に保持される構造になっている。
【0031】
なお、図5に示すように、専用部1の可動側入子3の背面(汎用部の可動側主型との連結面)3bには、成形品を可動側入子3から離脱させるための押出し板16が取り付けられ、該押出し板16には、図12に示すように、複数の押出しピン17が組み付けられている。また、上記押出し板16は、ダイカスト金型がダイカストマシンに装着された状態では、専用部1の可動側入子3と汎用部の可動側主型との間の空間に収容されている。これにより、本ダイカスト金型は、成形品毎に仕様が異なる専用部品の全てを一体化させることが可能な構造になっている。また、図5に示すように、本ダイカスト金型の専用部1には、可動側入子3の両側面3cに、後述する成形用金型の保全治具18のクランパ19を係合させるためのクランプ溝20が配設されている。また、ダイカスト金型の汎用部には各スライドコア4に対応させたスライドホルダが配設されており、各スライドホルダは、汎用部の所定位置に配設された油圧シリンダのシリンダロッドに連結されている。そして、各スライドホルダとスライドコア4とは、所要の連結機構により連結可能な構造になっている。
【0032】
次に、図1〜図3に示す成形用金型の保全治具18の詳細を説明する。本成形用金型の保全治具18(以下、単に保全治具18と称す)は、対向する一対の支持面21a,21b間にダイカスト金型の一体化された専用部1を保持する支持台22を具備している。該支持台22は、上記一対の支持面21a,21b間に、ベンチ状に接合された2枚の支持プレート23a,23bを架設して形成され、各支持プレート23a,23bは一端部から接合部に向けて所要形状に切り欠かれている。また、各支持面21a,21bには、各支持面21a,21bと直交する同一の軸線上に配された軸24が各支持面21a,21bの外側に立設されている。また、本保全治具18は、レベルが所要に調節された架台25を具備し、該架台25上には、所定間隔を有して配設された一対の支柱26が設置されている。そして、本保全治具18では、各支持面21a,21bに立設した軸24が各支柱の上端部に固定された軸受27により軸支され、この構成により上記支持台22が軸24の回りに回動可能となっている。
【0033】
また、本保全治具18では、対向する一対の支持面21a,21bのうち図1における紙面視で右側に位置される支持面21aに設けられた軸24が、図1〜図3に示すように、減速機28を介してハンドル29に接続されており、該ハンドル29の回転に連動して支持台22が回動される構造になっている。また、上記減速機28にはブレーキが設けられ、該ブレーキにより、ハンドル29の操作で軸24の軸線(以下、回動軸と称す)の回りに回動させた支持台22を、回動軸の回りに位置決めした状態で保持する構造になっている。なお、本保全治具18では、支持台22は、一体化された専用部1が取り付けられた状態で、固定側入子2が上方に位置する状態(図9参照)から図9における軸24の回りに反時計回りに回動可能であって、可動側入子3の押出し板16が上方に位置する状態(図10参照)までの180度の範囲で位置決め可能に構成されている。
【0034】
また、本保全治具18では、図1及び図2に示すように、ベンチ状となるように接合された2枚の支持プレート23a,23bのうち可動側入子3の底面3dを当接させる側の支持プレート23bの上面に、可動側入子3の左右方向の幅(図1に示すH)に略等しい間隔を有して互いの案内面30aを対向させて配置した一対のアングル部材30が設けられている。さらに、ベンチ状となるように接合された2枚の支持プレート23a,23bのうち、可動側入子3の背面3bを当接させる側の支持プレート23aには、可動側入子3に設けられた上記した各クランプ溝20に係合可能なクランパ19が配設されている。該クランパ19は、上記支持プレート23aの図1における紙面視で左右両側端面23c(図9〜図11参照)に、所定の間隔で上下に一対で設けられている。また、図2に示すように、各クランパ19は、断面が略コの字状に形成され、一側に上記クランプ溝20に係合させる係合爪が設けられて他側には先端を上記支持プレート23aの背面に当接させた押しボルト31が螺合されている。また、図3に示すように、各クランパ19の係合爪と押しボルト31との間の面には、支持プレート23aの厚み方向に延びる長孔32がクランパ19の幅方向に所定の間隔を有して一対で配設されており、各長孔32にはボルト33が挿通されて各ボルト33が支持プレート23aの端面23cの所定位置に配設されたねじ孔に螺合されている。
【0035】
これにより、本保全治具18では、上記一対のアングル部材30の対向する案内面30aで可動側入子3の両側面3cを案内することにより、専用部1が支持台22の一対の支持面21a,21bの間に所定に位置決めされ、専用部1の可動側入子3の各クランプ溝20に各クランパ19の係合爪を係合させて押しボルト31を締付け方向(時計回り)に回転させることにより、上記可動側入子3が支持プレート23aに引き寄せられる。この状態で、各押しボルト31をダブルナットにより固定して、各ボルト33を締付けてクランパ19を支持プレート23aの端面23cに締結させることにより、クランパ19で可動側入子3が把持されて専用部1が支持台22に強固に固定される構造になっている。
【0036】
以下に、このような保全治具18を用いた成形用金型(ダイカスト金型の専用部)の保全方法を具体的に説明する。
(鋳抜きピンの交換)
専用部1の可動側入子3に配した鋳抜きピン34(図12参照)を交換する方法を説明する。図9に示すように、固定側入子2と可動側入子3とが一体化された専用部1を本保全治具18に載置するに際して、支持台22を回動軸の回りに回動させて当該支持台22の支持プレート23aの可動側入子3背面3bが当接する側の面が上方に向いた状態(以下、角度位相が0度の状態と称す)に、支持台22を位置決めさせておく。そして、ブレーキを作用させて支持台22を角度位相が0度の状態で保持し、この状態で固定側入子2と可動側入子3とスライドコア4とが一体化された専用部1をダイカストマシンから取り外し、取り外された専用部1を、角度位相が0度の状態の支持台22に固定側入子2の背面2bが上方を向くようにして保全治具18の支持台22に載置する。この際、可動側入子3の両側面3cを上記アングル部材30の対向する一対の案内面30aで案内して、専用部1を支持台22の一対の支持面21a,21bの間の適正位置に位置決めする。
【0037】
次に、専用部1の可動側入子3の両側面3cに配設された各クランプ溝20に保全治具18の各クランパ19を係合させ、各クランパ19で専用部1(可動側入子3)を強固に把持して専用部1を支持台22に固定する(図9参照)。この状態で、固定側入子2と可動側入子3との連結を解放するブロックを操作して固定側入子2と可動側入子3との連結を解放する。そして、固定側入子2をクレーン等を用いて吊り上げてパレットに仮置して、固定側入子2を取り外した後、各スライドコア4を順次取り外してパレットに仮置きする。次に、ブレーキを解放した後、支持台22のハンドル29を操作して支持台22を軸24の回りに図9の紙面視における反時計回りに180度回動させる。これにより、支持台22が可動側入子3背面3bが上方に向けられた状態(以下、角度位相が180度の状態と称す)に位置決めされ(図10参照)、ブレーキを作用させて支持台22を角度位相が180度の状態で保持する。この状態で、押出し板16に組み付けられている押出しピン17(図12参照)を当該押出し板16と一体で取り外し、取り外し後、図12に示す鋳抜きピン押え板35を可動側入子3から取り外す。
【0038】
次に、ブレーキを解放した後、支持台22のハンドル29を操作して支持台22を軸24の回りに図10の紙面視における時計回りに90度回動させ、該支持台22を可動側入子3のキャビティ部が当該保全治具18の正面に向けられた状態(以下、角度位相が90度の状態と称す)に位置決めして(図11参照)、ブレーキを作用させて支持台22を角度位相が90度の状態で保持する。この状態で、鋳抜きピン34(図12参照)を、キャビティ部側(図11における紙面視左側)から押圧して取り外し、新しい鋳抜きピン34に交換する。そして、新たに取り付けられた鋳抜きピン34をキャビティ部側から確認後、ブレーキを解放した後、支持台22のハンドル29を操作して支持台22を軸24の回りに図11の紙面視における反時計回りに90度回動させ、該支持台22を角度位相が180度の状態に位置決めしてブレーキで保持する。この状態で、上記鋳抜きピン押え板35を可動側入子3の所定位置に取り付けた後、押出し板16に組み付けられている押出しピン17を押出し板16と一体で可動側入子3に装着する。そして、ブレーキを解放した後、支持台22のハンドル29を操作して支持台22を軸24の回りに図10の紙面視における時計回りに180度回動させ、該支持台22を角度位相が0度の状態に位置決めし、ブレーキを作用させて支持台22を角度位相が0度の状態で保持する(図9参照)。
【0039】
そして、各スライドコア4を可動側入子3の所定位置に戻した後、パレットに仮置きされた固定側入子2をクレーン等で吊り上げ、固定側入子2のボールジョイント5と可動側入子3のボールジョイント係合孔6とで位置合わせするようにして固定側入子2を可動側入子3上に載置する。これにより、ボールジョイント5とボールジョイント係合孔6とからなる連結機構が機能して、固定側入子2と可動側入子3とが連結される。この状態では、図5に示すように、各スライドコア4に配設されたスライドコア保持ピン14の一対が、固定側入子2の合わせ面2aに配設された対応する凹部15に嵌合され、各スライドコア4が固定側入子2と可動側入子3との間に保持される。これにより、本保全治具18の支持台22上で、固定側入子2と可動側入子3とスライドコア4とが一体化される。
【0040】
(押出しピンの交換)
次に、押出し板16に組み付けられた押出しピン17(図12参照)を交換する方法を説明する。なお、上述した鋳抜きピン34の交換方法と説明が重複する部分においてはその説明を省く。まず、図9に示すように、保全治具18の支持台22を角度位相が0度の状態に位置決めして保持し、この支持台22に、固定側入子2の背面2bを上方に向けた状態で専用部1を載置して専用部1(可動側入子3)をクランパ19で強固に把持して支持台22に固定する。そして、専用部1を支持台22に固定した後、支持台22を軸24の回りに図9の紙面視における反時計回りに180度回動させ、支持台22を角度位相が180度の状態に位置決めして保持する(図10参照)。この状態で、押出し板16に組み付けられている押出しピン17(図12参照)を押出し板16と一体で取り外し、破損した押出しピン17を交換する。
【0041】
この第1の実施の形態では、以下の効果を奏する。
ダイカスト金型の専用部1をダイカストマシン上で一体化し、該一体化された専用部1を保全治具18の支持台22に載置するので、従来の保全作業で行われていた、ダイカストマシンから取り外されたダイカスト金型を床面等に載置する際にダイカスト金型と床面等との間にまくら木を介在させる作業を廃止して、作業時間を短縮することが可能となる。また、ダイカスト金型をクレーンで吊持した状態での作業を廃止して、作業を安全に行うことができると共に作業者への負担を軽減することができる。
支持台22の支持プレート23bに、互いに対向する一対の案内面30aで可動側入子3の両側面3cを案内する一対のアングル部材30が配設されるので、一体化された専用部1を、支持台22の対向する一対の支持面21a,21bの間の適正位置に容易に位置決めすることが可能となる。
可動側入子3の両側面3cに形成された各クランプ溝20に係合可能なクランパを支持台22に配設し、各クランパ19を可動側入子3の各クランプ溝20に係合させて各クランパ19で可動側入子3を把持するので、支持台22に載置された可動側入子3を支持台22に強固に固定することが可能となる。
対向する一対の支持面21a,21bの間にベンチ状に形成された支持プレート23a,23bを介在させて支持台22を形成し、各支持プレート23a,23bに所要形状の切欠きを形成したので、可動側入子3に取り付けられた押出し板16が支持台22と干渉することがなく、また専用部1の所要部位を露呈させて保全の作業性を向上させることが可能となる。
支持台22を、支持面21a,21bと直交すると共に固定側入子2と可動側入子3との合わせ面2a,3aに略平行な軸24の軸線回りに回動可能で、且つ該軸の回りに位置決め可能に構成した。従って、専用部1の向きを容易に、迅速に、且つ安全に変えることが可能となり、金型保全作業の効率を飛躍的に向上させることができると共に、中腰や屈んだ姿勢での作業がなくなり、作業者への負担を大幅に軽減することができる。
ブレーキを備える減速機28を介して軸24に連結されたハンドル29の回転動作に連動して支持台22が回動するので、ハンドル29を操作して支持台22を軸24の回りに回動させて回動軸の回りに位置決めし、減速機28のブレーキを作用させることにより、支持台22を位置決めした状態で保持することができる。
【0042】
なお、第1の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
第1の実施の形態では、可動側入子3の両側面3cに配設された各クランプ溝20に各クランパ19を係合させて各クランパ19で可動側入子3を把持して専用部1を支持台22に固定したが、各クランプ溝20を固定側入子2の両側面に配設して、該固定側入子2の各クランプ溝20に支持台22の各クランパ19を係合させて各クランパ19で固定側入子2を把持して専用部1を支持台22に固定してもよい。
成形用金型をダイカスト金型に変えて、射出成形金型としてもよい。この場合、射出成形金型においても専用部を一体化させる機構が必要となり、また射出成形金型には保全治具18のクランパ19を係合させるためのクランプ溝20が両側面に形成される。
第1の実施の形態では、減速機28に設けられたブレーキにより回動軸の回りに位置決めされた支持台22を保持したが、例えば、軸24に当該軸24と一体で回転可能な円板を取り付け、該円板に軸24の軸心を中心とする複数の位置合わせ孔を所要位置に配設し、また保全治具18の支柱26の所定位置には円板の各位置合わせ孔と整合可能な位置決め孔を設けておいて、整合された位置合わせ孔と位置決め孔とにピンを貫通させて支持台22を回動軸の回りに位置決めし保持してもよい。この場合、位置決め孔にピンが挿入されていることを検出するセンサを保全治具18に設けて、位置決め孔にピンが挿入されていない場合に、支持台22が保持されていないことをパトライト等で作業者に喚起することが望ましい。
【0043】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図13〜図19に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施の形態と構成が同一又は同等部分には同一の名称及び符合を付与して、重複する説明を省く。図13〜図15に示す成形用金型の保全治具41は、支持台22の支持面21aに立設された軸24が電動モータ42(モータ)で駆動され、これにより支持台22が軸24の軸線(以下、回動軸と称す)回りに回動する構造になっている。そして、支持台22が所要の角度位相に位置した時に電動モータ42を停止して、該電動モータ42の停止と同時にブレーキ43を作動させると共に該ブレーキ43を電動モータ42が停止している間持続させることにより、支持台22を回動軸の回りの任意の角度位相に位置決めして保持する構造になっている。
【0044】
図13及び図14に示すように、上記電動モータ42は減速機28の一側面に設置され、出力が減速機28に入力される構造になっている。また、図15〜図17に示すように、減速機28の他側面にはトルクアーム44が固着され、該トルクアーム44の端部と支柱26(治具本体)とをタイロッド45で連結することにより、減速機28が回動軸の回りに回動するのが規制されると共に減速機28(トルクアーム44)の図13における紙面視左右方向への振れが許容される構造になっている。これにより、軸24を電動モータ42で駆動して支持台22を回動軸の回りに回動させることができると共に、例えば金型(専用部1)の重量で軸24が撓んだ際には、減速機28を当該軸24の撓みに追従させることができるように構成されている。
【0045】
また、図13に示すように、上記ブレーキ43は、軸24に装着されたブレーキディスク46と架台25に設置されたブレーキキャリパ47とで構成され、ブレーキディスク46をブレーキキャリパ47に対向して配置されたブレーキパッド48の対で挟持することで、軸24が軸線回りに回動するのを規制して支持台22を回動軸の回りに位置決めして保持する構造になっている。また、ブレーキ43は、制御装置49の信号に基づいて作動のON/OFFが制御され、電動モータ42が停止すると同時に作動してその作動状態を電動モータ42が停止している間持続する、無励磁作動型電磁ブレーキが採用されている。これにより、電動モータ42で軸24を駆動して支持台22を回動軸の回りに回動させ、支持台22が回動軸の回りの所望角度位相に位置した時点で電動モータ42を停止させることにより、電動モータ42の停止と同時にブレーキ43が作動して、支持台22を所望角度位相に位置決めして保持することができる構造になっている。
【0046】
また、図18及び図19に示すように、ブレーキ43は、ブレーキパッド48の一対を備えたブレーキキャリパ47が、架台25に設置したキャリパベース50にブレーキディスク46の接線方向(図18における左右方向)に所定間隔で並設されている。上記キャリパベース50は、治具本体の架台25に固定されるベース部51と、該ベース部51の上面に配置されベース部51に対して回動軸の方向(図19における左右方向)へスライド可能なスライドプレート52と、を含んで構成されている。上記スライドプレート52は図18における左右に並設され、各スライドプレート52はそれぞれ独立してベース部51に対して回動軸の方向へスライド移動可能な構造になっている。そして、図18に示すように、各スライドプレート52には各ブレーキキャリパ47が固定させる。これにより、図19に示すように、ブレーキディスク46に振れが生じた場合、スライドプレート52を回動軸の方向へスライドさせることによりブレーキキャリパ47をブレーキディスク46の振れ動作に追従させて、ブレーキディスク46の振れを吸収する構造になっている。
【0047】
なお、図15に示すように、上記制御装置49には、両手スイッチ53、パトライト54、及び警報ブザー55が接続されており、制御装置49は、両手スイッチ53からの操作信号を検出することでブレーキ43を解放すると共に電動モータ42で軸24を駆動し、これにより支持台22が回動軸の回りに回動される構造になっている。そして、制御装置49は、両手スイッチ53がONしている間、即ち支持台22が回動軸の回りに回動している間、パトライト54及び警報ブザー55を作動させて、周囲に注意を喚起するように構成されている。また、両手スイッチ53が配置された操作ボックスには電動モータ42の回転方向を選択する回動方向選択スイッチが設けられ、該回動方向選択スイッチを操作することで支持台22の回動軸の回りの回動方向を選択可能な構造になっている。
【0048】
次に、第2の実施の形態の作用を図1〜図3を参照して説明する。まず、固定側入子2と可動側入子3とスライドコア4とが一体化された専用部1を本保全治具41に載置するに際して、両手スイッチ53をONして支持台22を回転軸の回りに回動させ、支持台22の支持プレート23aにおける専用部1の可動側入子3の背面3bが当接する側の面が上方を向いた状態(以下、角度位相が0度の状態と称す)に、支持プレート22を回転軸の回りに位置決めする。この時、両手スイッチ53をONすることでブレーキ43が解放され、同時に電動モータ42により軸24が駆動されて両手スイッチ53がONしている間、支持台22が回動方向選択スイッチで選択された方向への回動動作が継続されると共に、支持台22の回動動作中、パトライト54及び警報ブザー55が作動して周囲に注意を喚起する。そして、支持台22の角度位相が0度の状態になった時点で両手スイッチ53をOFFする。これにより、電動モータ42が停止すると同時にブレーキ43が作動して該ブレーキ43が両手スイッチ53がOFFの間作動状態が維持され、支持台22は角度位相が0度の状態に位置決めされて保持される。
【0049】
次に、一体化された専用部1をダイカストマシンから取り外し、取り外された専用部1を、角度位相が0度の状態の支持台22に固定側入子2の背面2bが上方を向くようにして保全治具41の支持台22に載置する。この時、可動側入子3の両側面3cを上記アングル部材30の対向する一対の案内面30a(図1参照)で案内して、専用部1を支持台22の一対の支持面21a,21bの間の適正位置に位置決めする。また、軸24に装着されたブレーキディスク46をブレーキキャリパ47で挟持するブレーキ43で支持台22を保持したことにより、専用部1を支持台22上に降ろした時の衝撃をブレーキ43で吸収してタイロッド45に伝わる衝撃を緩和し、タイロッド45が破損するのを防止することができる。さらに、上記ブレーキ43により、衝撃等が支持台22に入力された場合であっても減速機28等のバックラッシュに起因して支持台22が回動軸の回りに振れるのを防止することができ、またタイロッド45が万一破損した場合であっても、支持台22が急激に回動軸の回りに回動するのを防ぐことができる。
【0050】
また、図17及び図19に示すように、本保全治具41では、ブレーキディスク46を軸24に装着したことで、専用部1の重量により軸24に撓みが生じた場合、ブレーキディスク46が軸24の湾曲に応じて回動軸方向(図19における左右方向)に振れるが、ブレーキキャリパ47をブレーキディスク46の振れに追従させて回動軸方向へスライドさせることにより、ブレーキディスク46に無理な力が作用するのを防いで当該ブレーキディスク46が破損するのを防止することができる。さらに、図15及び図16に示すように、減速機28に固定されたトルクアーム44と支柱26(治具本体)とをタイロッド45で連結したことにより、軸24に撓みが生じた場合、減速機28が軸24の湾曲に応じて軸受27の回りに回動する。これにより、軸23に撓みが生じても減速機28に無理な力が作用することがなく、減速機28が破損するのを回避することが可能となる。
【0051】
そして、専用部1を支持台22の適正位置に載置した後、専用部1の可動側入子3の両側面3cに配設された各クランプ溝20に保全治具18の各クランパ19を係合させ、各クランパ19で専用部1(可動側入子3)を強固に把持して専用部1を支持台22に固定する(図1及び図9参照)。専用部1を支持台22に固定後、両手スイッチ53及び回動方向選択スイッチを操作して支持台22を回動軸の回りに必要に応じて順次位置決め保持し、専用部1の保全作業を行う。
【0052】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、さらに以下の効果を奏する。
ダイカスト金型の専用部1をダイカストマシン上で一体化し、該一体化された専用部1を保全治具41の支持台22に載置するので、従来の保全作業で行われていた、ダイカストマシンから取り外されたダイカスト金型を床面等に載置する際にダイカスト金型と床面等との間にまくら木を介在させる作業を廃止して、作業時間を短縮することが可能となる。また、ダイカスト金型をクレーンで吊持した状態での作業を廃止して、作業を安全に行うことができると共に作業者への負担を軽減することができる。
支持台22の軸24を電動モータ42で駆動して支持台22を軸24の軸線回りに回動させたので、保全する金型が大型化した場合であっても電動モータ42の動力で支持台22を回動させることができ、専用部1の向きを容易に、迅速に、且つ安全に変えることが可能となる。これにより、金型保全作業の効率を飛躍的に向上させることができ、また中腰や屈んだ姿勢での作業がなくなり作業者への負担を大幅に軽減することができる。
ブレーキディスク46が支持台22の軸24に装着されると共にブレーキキャリパ47が架台25(治具本体)に設置したキャリパベース50に固定され、電動モータ42が停止すると同時に作動して、支持台22が回動軸の回りに回動するのを規制して当該支持台22を位置決めし、電動モータ42が停止している間作動状態を持続して、支持台22を回動軸の回りに位置決めされた状態で保持するブレーキ43を設けた。従って、専用部1を支持台22上に載置した時の衝撃をブレーキ43で吸収することで衝撃がタイロッド45に直接伝達されるのを防ぐことが可能となり、タイロッド45が破損するのを防止することができる。また、減速機28のバックラッシュ等に起因する支持台22の回動軸の回りの振れが抑制され、支持台22の安定した姿勢を維持して保全作業を安全に行うことが可能となる。また、タイロッド45が万一破損した場合であっても、支持台22が急激に回動軸の回りに回動することがなく、保全作業の安全を確保することができる。
キャリパベース50に、ブレーキキャリパ47を支持台22の軸24の軸線方向へスライド可能に設けたので、例えば、専用部1の重量で軸24に撓みが生じてブレーキディスク46が軸24の軸線方向へ振れた場合であっても、ブレーキキャリパ47を軸24の軸線方向へスライドさせてブレーキディスク46の振れに追従させることができる。従って、無理な力が作用してブレーキディスク46を破損させてしまったり、ブレーキパッド48がブレーキディスク46に偏当りして偏減りしたり異音を生じたりすることを防止することができる。また、金型(専用部1)の大型化に容易に対応することが可能となる。
減速機28に固定したトルクアーム44と支柱26(治具本体)とをタイロッド45で連結したので、減速機28を支持台22の軸24に対して回り止めすることができると共に、例えば、専用部1の重量で軸24に撓みが生じた場合であっても、タイロッド45のロッドエンドが回動して軸24の湾曲に応じて減速機28の位置を変位させることができ、減速機28に無理な力が作用して減速機28が破損するのを防ぐことができ、金型(専用部1)の大型化に容易に対応することが可能となる。
【0053】
なお、第2の実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
減速機28に電動モータ42とハンドル29とを並設し、必要に応じて電動モータ42による支持台22の駆動と、ハンドル29の操作による手動での支持台22の駆動と、を所要に応じて選択するように構成してもよい。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、安全、且つ効率よく成形用金型の保全が行える成形用金型の保全治具及び保全方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の成形用金型の保全治具の正面図である。
【図2】第1の実施の形態の成形用金型の保全治具の平面図である。
【図3】第1の実施の形態の成形用金型の保全治具の側面図である。
【図4】成形用金型としてのダイカスト金型の専用部の説明図で、特に、固定側入子と可動側入子3とスライドコアとが一体化された専用部を固定側入子側から見た際の概略を示す図である。
【図5】成形用金型としてのダイカスト金型の専用部の説明図で、図4におけるA−A断面を示す図である。
【図6】固定側入子と可動側入子3との連結機構の説明図で、図4におけるB−B断面を示す図である。
【図7】固定側入子と可動側入子3との連結機構の説明図で、ボールジョイントのボールとボールジョイント係合孔の環状溝との係合が外れた状態を示す図である。
【図8】固定側入子と可動側入子3との連結機構の説明図で、固定側入子と可動側入子3とが離反された状態を示す図である。
【図9】本発明の成形用金型の保全方法の説明図で、角度位相が0度の状態の支持台に一体化された専用部が保持された状態を示す図である。
【図10】本発明の成形用金型の保全方法の説明図で、角度位相が180度の状態の支持台に、固定側入子が取り外された専用部が保持された状態を示す図である。
【図11】本発明の成形用金型の保全方法の説明図で、角度位相が90度の状態の支持台に、固定側入子及び押出し板が取り外された専用部が保持された状態を示す図である。
【図12】成形用金型としてのダイカスト金型の専用部の説明図で、特に、可動側入子3に配設された鋳抜きピンと、押出し板に組み付けられた押出しピンと、を示す図である。
【図13】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の正面図である。
【図14】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の平面図である。
【図15】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の側面図である。
【図16】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の説明図で、減速機に固定されたトルクアームと治具本体とがタイロッドで連結された状態を示す図である。
【図17】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の説明図で、特に、支持台の軸が湾曲した場合のタイロッドの作用を示す図である。
【図18】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の説明図で、特に、ブレーキを支持台の回転軸方向の視線で見た場合の図である。
【図19】第2の実施の形態の成形用金型の保全治具の説明図で、特に、ブレーキディスクの振れにブレーキキャリパが追従する様子を示す図である。
【符号の説明】
1 専用部(成形用金型)
2 固定側入子
3 可動側入子
18,41 保全治具
19 クランパ
20 クランプ溝
21a 支持面
21b 支持面
22 支持台
28 減速機
42 電動モータ(モータ)
43 ブレーキ
45 タイロッド
46 ブレーキディスク
47 ブレーキキャリパ
Claims (7)
- 共通化された汎用部とキャビティを形成する専用部とで構成され、前記専用部が固定側入子と可動側入子とを含む成形用金型の保全治具であって、前記固定側入子と前記可動側入子とが一体化された前記専用部を対向する一対の支持面間に保持する支持台を備え、該支持台は、前記支持面と直交すると共に前記固定側入子と前記可動側入子との合わせ面に略平行に設けられた軸が治具本体に回動可能に軸支されて該軸の軸線回りに位置決め可能であることを特徴とする成形用金型の保全治具。
- 前記支持台の軸に接続されて該軸に回動駆動力を伝動する減速機を備え、該減速機の所定位置にタイロッドの一端を連結させると共に該タイロッドの他端を前記治具本体に連結して前記減速機が前記軸の軸線回りに回動するのを規制することを特徴とする請求項1に記載の成形用金型の保全治具。
- 前記専用部の前記固定側入子又は前記可動側入子の両側面にクランプ溝を配設し、前記支持台に、各クランプ溝に係合して前記専用部を保持するクランパを設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用金型の保全治具。
- 前記支持台の軸を駆動して前記支持台を前記軸の回りに回動させるモータと、前記軸と同軸上に配置されて前記軸と一体で回転するブレーキディスクと該ブレーキディスクの軸線回りの回転動作を規制するブレーキキャリパとを含んで構成され前記モータが停止することで作動して前記モータが停止している間作動状態を持続するブレーキと、を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形用金型の保全治具。
- 前記ブレーキは、前記ブレーキキャリパが前記治具本体に対して前記軸の軸線方向へ変位可能に設けられることを特徴とする請求項4に記載の成形用金型の保全治具。
- 共通化された汎用部とキャビティを形成する専用部とで構成され、前記専用部が固定側入子と可動側入子とを含む成形用金型の保全方法であって、前記専用部を前記固定側入子と前記可動側入子とを一体化して成形機から取り外し、この成形機から取り外された前記専用部を保全治具の支持台の一対の支持面間に載置し、前記支持台に設けられたクランパを前記専用部の両側面に配設されたクランプ溝に係合させて前記専用部を前記クランパで把持して前記支持台に固定し、前記専用部が固定された前記支持台を、前記支持面と直交すると共に前記固定側入子と前記可動側入子との合わせ面に略平行な回動軸の回りに必要に応じて回動させて前記軸の回りに位置決めし、前記専用部を分解することを特徴とする成形用金型の保全方法。
- 前記支持台をモータで駆動して前記回動軸の回りに回動させ、前記モータを停止させると同時にブレーキを作動させて前記支持台の可動動作を規制し、前記支持台を前記回動軸の回りに位置決めして、前記モータが停止している間前記ブレーキを持続させることを特徴とする請求項6に記載の成形用金型の保全方法。
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