JP4098736B2 - エレクトロクロミックミラー - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両に適用される室内もしくは室外用の後写鏡に関し、特に、電圧を印加することにより反射率を可変できるエレクトロクロミックミラーに関する。
従来から、自動車等の車両に適用される後写鏡において、反射率を電気的に変化させることで、夜間の後続車のヘッドライトの眩しさを低減可能とした、所謂「エレクトロクロミックミラー」が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図2に示す如く、特許文献1に開示されているエレクトロクロミックミラー100では、ガラス基板102の裏面に、透明電極104,水酸化イリジウム(Ir(OH))106,五酸化タンタル(Ta)108,三酸化タングステン(WO)110,アルミニウム(Al)電極112の薄膜が、順次真空蒸着等の手段によって積層形成されると共に、このアルミニウム(Al)電極112側に、上記各薄膜を保護するガラス板114が封止剤(接着剤)116によって張り合わされた構成である。そして、電源装置118によって、透明電極104とアルミニウム(Al)電極112の間に電圧が印加されると、水酸化イリジウム(Ir(OH))106と三酸化タングステン(WO)110の各薄膜が着色反応し、エレクトロクロミックミラー100の反射率が変化するものである(図2の矢印B参照)。
しかしながら、このエレクトロクロミックミラー100においては、上述した各薄膜の膜厚や膜質のバランスを保たないと、一旦着色したものが元に戻らなくなる場合がある。しかも、各膜厚のバラツキが性能に敏感に影響するため、難しい製造条件が課せられると共に、真空蒸着により多層膜を形成するため、高価になるといった問題もある。
一方、電気的に着色する溶液である、所謂「エレクトロクロミック溶液」の着色反応により、反射率を変化させる構成としたエレクトロクロミックミラーも知られている(例えば、特許文献2参照)。
図3に示す如く、特許文献2に開示されているエレクトロクロミックミラー200では、2枚のガラス基板202,204が一定の間隔をもって平行に配されており、この2枚のガラス基板202,204の対向する各内面には、それぞれ透明電極膜206が形成されている。この各透明電極膜206の間におけるシール剤208によって密閉された空間(セル)の内部には、エレクトロクロミック溶液210が封入されている。さらに、ガラス基板204の裏面(図3では、下側の面)には、反射膜212と保護塗装膜214が形成されている。そして、電源装置216によって、各透明電極膜206間に電圧が印加されると、エレクトロクロミック溶液210が着色反応し、エレクトロクロミックミラー200の反射率が変化するものである。
しかしながら、このエレクトロクロミックミラー200においては、2枚のガラス基板202,204をシール剤206を介して高い精度で平行に張り合わせないと、反射膜212による反射光(図3の矢印C参照)と、ガラス基板202の表面(図3では、上側の面)による反射光の像が一致せず、所謂二重像が発生し、極めて見にくいミラーとなる。特に、自動車用のミラーは、一般的に曲面鏡を使用しており、この場合には極めて製造が難しくコストが高くなるという欠点がある。
実公昭62−2587号公報 特許第2672083号公報
本発明は、上記事実を考慮し、製造が容易で低コストとなり、しかも、二重像の発生がない、シンプルで高性能なエレクトロクロミックミラーを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項記載の発明に係るエレクトロクロミックミラーは、裏面に導電性を有する透明電極膜が形成されると共に、還元着色するエレクトロクロミック膜が前記透明電極膜の上から重ねて形成され、ロジウムから成る光反射膜が前記エレクトロクロミック膜の上から重ねて形成された透明基板と、少なくとも一方の面側において導電性を有する導電部が単一の材料で構成され、前記導電部が前記光反射膜と対向する状態で前記透明基板に近接して設けられた基板と、少なくともリチウムイオンと、中性分子もしくは負のイオンで酸化可能であって、前記エレクトロクロミック膜の還元反応による着色を保証する材料とを含み、前記透明基板の前記光反射膜と前記基板の前記導電部との間に封入された電解液と、を備えたことを特徴としている。
請求項記載のエレクトロクロミックミラーでは、透明基板の裏面に、導電性を有する透明電極膜が形成されると共に、この透明電極膜の上から還元着色するエレクトロクロミック膜が重ねて形成され、さらに、このエレクトロクロミック膜の上からロジウムの光反射膜が重ねて形成されており、エレクトロクロミック膜は、透明電極膜と光反射膜との間に形成されている。
また、透明基板の裏面側には基板が近接して設けられており、透明基板の光反射膜と基板の導電部が対向している。透明基板の光反射膜と基板の導電部との間には、電解液が封入されており、この電解液には、少なくともリチウムイオンと、中性分子もしくは負のイオンで酸化可能な材料とが含まれている。
ここで、例えば、車両に搭載された電源装置(バッテリーなど)により、透明基板の透明電極膜に負の電圧を印加すると共に、基板の導電部に正の電圧を印加すると、電解液に含まれるリチウムイオンが、透明基板の光反射膜側へ移動して、リチウム原子として光反射膜内を通過し、エレクトロクロミック膜へ移動する。このため、エレクトロクロミック膜では以下の還元反応が起きる、
Figure 0004098736
なお、Li+はリチウムイオン、MOはエレクトロクロミック膜の材料、e-は電子である。このエレクトロクロミック膜の材料(MO)としては、三酸化タングステン(WO)及び三酸化モリブデン(MoO)、並びにこれらのうち少なくとも一方を含む混合物が最も好ましい材料である。
一方、上述した如く、電解液には中性分子もしくは負のイオンで酸化可能な材料が含まれており、エレクトロクロミック膜の上述した還元反応が保証される構成である。
すなわち、電解液に酸化可能な中性分子が含まれる場合には、この中性分子をAとすると、電解液内において正の電圧が印加される基板の導電部近傍では、以下の酸化反応が起きる、
Figure 0004098736
また、電解液に酸化可能な負のイオンが含まれる場合には、この負のイオンをBとすると、電解液内において正の電圧が印加される基板の導電部近傍では、以下の酸化反応が起きる、
Figure 0004098736
したがって、例えば、エレクトロクロミック膜の材料がWOとされると共に、電解液に酸化可能な中性分子が含まれる場合における、全体の反応としては、
Figure 0004098736
また、例えば、エレクトロクロミック膜の材料がWOとされると共に、電解液に酸化可能な負のイオンが含まれる場合における、全体の反応としては、
Figure 0004098736
となり、エレクトロクロミック膜が還元着色する。(なお、前記(6)式と(7)式の整合が図られるためには、電解液中に負イオンが含まれている。また、電解液中の反応により電解液は着色しなくてもよい。)
したがって、透明基板の表面側(透明電極膜、エレクトロクロミック膜および光反射膜が形成された面とは反対側)から透明基板内に入射して光反射膜で反射される光は、着色したエレクトロクロミック膜を通過することによって減光されるため、エレクトロクロミックミラーの反射率が変化し、防眩効果を奏する。
しかも、本エレクトロクロミックミラーにおいては、透明基板の裏面に透明電極膜、エレクトロクロミック膜および光反射膜の3層の膜のみが形成されたシンプルな構成であり、これら各膜の膜質や膜厚などが性能に影響しにくい構成である。したがって、製造が容易で低コストになる。
また、エレクトロクロミック膜が、負の電圧が印加される透明電極膜と光反射膜との間に形成された構成であるため、リチウムイオンが強制的にエレクトロクロミック膜へ引き込まれる。これにより、エレクトロクロミック膜の還元着色のレスポンスが向上する。
さらに、透明基板に入射した光が、この透明基板の裏面に形成された光反射膜で反射される構成であるため、二重像の発生も防止される。
またさらに、電解液として、一般的に反応性の強い液体を使う場合があるが、三酸化タングステン等のエレクトロクロミック膜に使われる材料は、これらの電解液に少しずつ溶けることがある。このような場合においても、本エレクトロクロミックミラーでは、エレクトロクロミック膜は、光反射膜の内側に形成されており、光反射膜により保護されるため、広い範囲で電解液を選択することが可能となる。
このように、本発明に係るエレクトロクロミックミラーでは、製造が容易で低コストとなり、しかも、二重像の発生がなくシンプルで高性能である。
なお、透明基板の光反射膜の材料としては、リチウム原子が透過しなければばらないので、白金、ロジウム、パラジウムなどの白金族の貴金属、もしくは、それらを含む合金(例えば、銀と白金族元素の合金など)が望ましい。この中でロジウムは、リチウム原子を大変よく透過することが発見された。この点、請求項1記載のエレクトロクロミックミラーでは、光反射膜の材料がロジウムとされているため好適である。
また、透明基板の透明電極膜としては、酸化インジウムと酸化スズの混合物から成る、所謂「ITO膜」,酸化スズにフッ素をドープした、所謂「FTO膜」,又は、酸化スズにアンチモンをドープした、所謂「ATO膜」などが好ましい。
さらに、本エレクトロクロミックミラーの基板としては、導電性を有する金属板などを適用することもできるが、透明基板と熱膨張率が近いものが好ましい。このため、透明基板と同種類の材料(例えば、ガラスや合成樹脂など)で形成された基板の板面に、金属膜や透明導電膜などの導電性を有する薄膜を形成して、これを導電部(電極膜)とする構成が好ましい。
請求項記載の発明に係るエレクトロクロミックミラーは、請求項1記載のエレクトロクロミックミラーにおいて、前記基板の前記導電部は、前記基板に形成された導電性を有する電極膜とされる、ことを特徴としている。
請求項記載のエレクトロクロミックミラーでは、基板の導電部は、基板に形成された導電性を有する電極膜とされている。したがって、例えば、基板の材料を透明基板と熱膨張率が近いものとすることができ、好適である。
請求項記載の発明に係るエレクトロクロミックミラーは、請求項1記載又は請求項2記載のエレクトロクロミックミラーにおいて、前記透明基板の前記エレクトロクロミック膜の材料は、三酸化タングステン及び三酸化モリブデンのうち少なくとも一方を含んで構成される、ことを特徴としている。
請求項記載のエレクトロクロミックミラーでは、透明基板のエレクトロクロミック膜の材料は、三酸化タングステン及び三酸化モリブデンのうち少なくとも一方を含んで構成されている。したがって、好適である。
請求項記載の発明に係るエレクトロクロミックミラーは、請求項1乃至請求項の何れか1項記載のエレクトロクロミックミラーにおいて、前記電解液は、前記電解液と反応しないポリマーもしくは無機物を含有してゲル状とされる、ことを特徴としている。
請求項記載のエレクトロクロミックミラーでは、電解液は、電解液と反応しないポリマーもしくは無機物を含有してゲル状とされている。したがって、エレクトロクロミックミラーの破損時に液漏れを防ぐことができる。
以上説明したように、本発明のエレクトロクロミックミラーによれば、製造が容易で低コストとなり、しかも、二重像の発生がなくシンプルで高性能である。
(第1の参考例
図1には、本発明の第1の参考例に係るエレクトロクロミックミラー10の構成が断面図により示されている。
エレクトロクロミックミラー10は、透明基板とされるガラス基板12を備えている。このガラス基板12の裏面(図1では、下側の面)には、透明電極膜14が真空蒸着等の手段によって薄膜状に形成されている。この透明電極膜14は、本第1の参考例では、酸化インジウムと酸化スズとの混合物から成る、所謂「ITO膜」とされる。
また、ガラス基板12の裏面には、還元着色するエレクトロクロミック膜16が、透明電極膜14の上から真空蒸着等の手段によって薄膜状に重ねて形成されている。このエレクトロクロミック膜16の材料は、本第1の参考例では、三酸化タングステン(WO)とされる。
さらに、ガラス基板12の裏面には、光反射膜18がエレクトロクロミック膜16の上から真空蒸着等の手段によって薄膜状に重ねて形成されている。この光反射膜18の材料は、本第1の参考例では、ロジウムとされる。
なお、ガラス基板12の幅方向両端部(図1では、左右方向両端部)には、エレクトロクロミック膜16及び光反射膜18は形成されておらず、透明電極膜14のみが形成されている。
ガラス基板12の裏面側には、基板20が近接して設けられている。基板20は、ガラス基板22と、該ガラス基板22の一方の面に真空蒸着等の手段によって薄膜状に形成された導電部としての電極膜24とで構成されており、電極膜24側の面が光反射膜18に対向する状態で、電極膜24側の端縁部がシール剤26によって透明電極膜14に張り付けられている。この電極膜24の材料は、本第1の参考例では、クロム等の金属とされる。
そして、ガラス基板12の光反射膜18と基板20の電極膜24との間には、シール剤26によって密閉された空間が形成されており、この空間には、電解液28が封入されている。電解液28は、本第1の参考例では、炭酸プロピレンを溶媒としており、水素イオン剤としての硫酸(HSO)、および酸化剤としての中性物質であるフェロセン(Fe(C)を含有するものである。
また、ガラス基板12の透明電極膜14と基板20の電極膜24には、電源装置30が配線32を介して接続されている。電源装置30は、直流電源34とスイッチ36を有しており、スイッチ36が「ON」に操作された状態では、直流電源34のマイナス極が透明電極膜14に接続され、直流電源34のプラス極が電極膜24に接続される構成である。なお、透明電極膜14と電極膜24とは、図示しない回路を介して短絡することができる構成である。
次に、本第1の参考例の作用について説明する。
上記構成のエレクトロクロミックミラー10では、電源装置30のスイッチ36が「ON」に操作されると、直流電源34により透明電極膜14に負の電圧が印加され、電極膜24に正の電圧が印加される。このため、電解液28に含まれる水素イオンが、光反射膜18側へ移動して、水素原子として光反射膜18内を通過し、エレクトロクロミック膜16へ移動する。これにより、エレクトロクロミック膜16では、以下の還元反応が起きる。
Figure 0004098736
なお、H+は水素イオン、e-は電子である。
このとき、電解液28内における電極膜24の近傍では、以下の酸化反応が起きる。
Figure 0004098736
したがって、全体としての反応は、
Figure 0004098736
となり、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が着色する。これにより、ガラス基板12の表面側からガラス基板12内に入射して、光反射膜18で反射される光(図1の矢印参照)は、着色したエレクトロクロミック膜16を通過することによって減光されるため、エレクトロクロミックミラー10の反射率が変化し、防眩効果を奏する。
一方、電源装置30のスイッチ36が「OFF」に操作されて透明電極膜14と電極膜24に印加されていた電圧が解除されると共に、図示しない回路を介して透明導電膜14と電極膜24が短絡されると、エレクトロクロミック膜16と反応していた水素原子が、電解液28中に戻り、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が消色する。
ここで、本エレクトロクロミックミラー10においては、ガラス基板12に、透明電極膜14、エレクトロクロミック膜16及び光反射膜18の3層の膜のみが形成されたシンプルな構成であり、しかも、この透明電極膜14、エレクトロクロミック膜16及び光反射膜18の膜厚や膜質などが性能に影響しにくい構成である。したがって、製造が容易で低コストとなる。
また、エレクトロクロミック膜16が、負の電圧が印加される透明電極膜14と光反射膜18との間に形成された構成であるため、水素イオンが強制的にエレクトロクロミック膜16へ引き込まれる。これにより、エレクトロクロミック膜16の還元着色のレスポンスが向上する。
さらに、ガラス基板12に表面側から入射した光が、このガラス基板12の裏面に形成された光反射膜18で反射される構成であるため、二重像の発生も防止される。
このように、上記構成のエレクトロクロミックミラー10では、製造が容易で低コストとなり、しかも、二重像の発生がなくシンプルで高性能である。
なお、本第1の参考例においては、電解液28に含まれる水素イオン剤として硫酸を使用する構成としたが、これに限らず、電解液28に含まれる水素イオン剤としては、一般的な酸が使用可能であり、塩酸、燐酸、酢酸、シュウ酸、蟻酸、過塩素酸などがある。
また、本第1の参考例において、電解液28に含まれる中性分子(中性物質)として使用したフェロセン(Fe(C)は鉄を含む化合物であるが、これに限らず、電解液28に含まれる中性分子(中性物質)としては、一般的にメタロセンと呼ばれる化合物を使用することができる。
(実施の形態)
次に本発明の実施の形態について説明する。なお、前記第1の参考例と基本的に同一の構成・作用については前記第1の参考例と同符号を付してその説明を省略する。
図1に示す如く、本実施の形態に係るエレクトロクロミックミラー50は、前記第1の参考例に係るエレクトロクロミックミラー10と基本的に同一の構成であり、電解液のみが異なる構成である。エレクトロクロミックミラー50の電解液52は、炭酸プロピレンを溶媒としており、リチウムイオン剤としての過塩基酸リチウム(LiClO)、及び酸化剤としての中性物質であるフェロセン(Fe(C)を含有するものである。
上記構成のエレクトロクロミックミラー50では、電源装置30のスイッチ36が「ON」に操作されると、直流電源34により透明電極膜14に負の電圧が印加され、電極膜24に正の電圧が印加される。このため、電解液52に含まれるリチウムイオンが、光反射膜18側へ移動して、リチウム原子として光反射膜18内を通過し、エレクトロクロミック膜16へ移動する。これにより、エレクトロクロミック膜16では、以下の還元反応が起きる。
Figure 0004098736
なお、Li+はリチウムイオン、e-は電子である。
このとき、電解液52内における電極膜24の近傍では、前記第1の参考例における(12)式と同様の酸化反応が起きる。
したがって、全体としての反応は、
Figure 0004098736
となり、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が着色する。これにより、ガラス基板12の表面側からガラス基板12内に入射して、光反射膜18で反射される光(図1の矢印参照)は、着色したエレクトロクロミック膜16を通過することによって減光されるため、エレクトロクロミックミラー10の反射率が変化し、防眩効果を奏する。
一方、電源装置30のスイッチ36が「OFF」に操作されて透明電極膜14と電極膜24に印加されていた電圧が解除されると共に、図示しない回路を介して透明導電膜14と電極膜24が短絡されると、エレクトロクロミック膜16と反応していたリチウム原子が、電解液52中に戻り、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が消色する。
なお、本実施の形態においては、電解液52に含まれるリチウムイオン剤として過塩素酸リチウム(LiClO)を使用する構成としたが、これに限らず、電解液52に含まれるリチウムイオン剤としては、フッ化ホウ素酸リチウム(LiBF)、フッ化ヒ素酸リチウム(LiAsF)などのリチウム塩がある。
(第参考例
次に本発明の第参考例について説明する。なお、前記第1の参考例と基本的に同一の構成・作用については前記第1の参考例と同符号を付してその説明を省略する。
図1に示す如く、本第参考例に係るエレクトロクロミックミラー60は、前記第1の参考例に係るエレクトロクロミックミラー10と基本的に同一の構成であり、電解液のみが異なる構成である。エレクトロクロミックミラー60の電解液62は、溶媒に炭酸プロピレンを使用し、電解質としてフェロシアン酸(H[Fe(CN)])を使用した構成である。
このエレクトロクロミックミラー60では、電源装置30のスイッチ36が「ON」に操作されて、直流電源34により透明電極膜14に負の電圧が印加され、電極膜24に正の電圧が印加されると、エレクトロクロミック膜16では、前記第1の参考例における(11)式と同様の還元反応が起きる。
一方、電解液62内における電極膜24の近傍では、以下の酸化反応が起きる。
Figure 0004098736
したがって、全体としての反応は、
Figure 0004098736
となり、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が着色する。これにより、ガラス基板12の表面側からガラス基板12内に入射して、光反射膜18で反射される光(図1の矢印参照)は、着色したエレクトロクロミック膜16を通過することによって減光されるため、エレクトロクロミックミラー50の反射率が変化し、防眩効果を奏する。
(第参考例
次に本発明の第参考例について説明する。なお、前記第1の参考例と基本的に同一の構成・作用については前記第1の参考例と同符号を付してその説明を省略する。
図1に示す如く、本第参考例に係るエレクトロクロミックミラー70は、前記第1の参考例に係るエレクトロクロミックミラー10と基本的に同一の構成であり、電解液のみが異なる構成である。エレクトロクロミックミラー70の電解液72は、溶媒に水を使用し、電解質としてフェロシアン化カリウム(K[Fe(CN)])を使用した構成である。この場合には、電解液72に含まれる水素イオンとして、水の水素イオンを使うことになる。
このエレクトロクロミックミラー70では、電源装置30のスイッチ36が「ON」に操作され、直流電源34により透明電極膜14に負の電圧が印加されると共に、電極膜24に正の電圧が印加されると、エレクトロクロミック膜16では、前記第1の参考例における(11)式と同様の還元反応が起き、電解液72内における電極膜24の近傍では、前記第参考例における(16)式と同様の酸化反応が起きる。
したがって、全体としての反応は、
Figure 0004098736
となり、エレクトロクロミック膜16の材料である三酸化タングステン(WO)が着色する。(なお、(18)式に記載されていない、カリウムイオン(K+)と水酸基イオン(OH-)は変化しない。)
これにより、ガラス基板12の表面側からガラス基板12内に入射して、光反射膜18で反射される光(図1の矢印参照)は、着色したエレクトロクロミック膜16を通過することによって減光されるため、エレクトロクロミックミラー60の反射率が変化し、防眩効果を奏する。
なお、前記実施の形態及び前記第1乃至第参考例において、電解液28、52、62、72にアクリル樹脂を混入することで、電解液28、52、62、72をゲル化させる構成とすれば、エレクトロクロミックミラー10、50、60、70の破損時に液漏れを防ぐことができる。
また、前記実施の形態及び前記第1乃至第参考例において、電解液28、52、62、72にシリカを混入することで、電解液28、52、62、72をゲル化させる構成とすれば、エレクトロクロミックミラー10、50、60、70の破損時に液漏れを防ぐことができる。
本発明の実施の形態及び第1乃至第参考例に係るエレクトロクロミックミラーの構成を示す断面図である。 従来のエレクトロクロミックミラーの構成を示す断面図である。 従来のエレクトロクロミックミラーの構成を示す断面図である。
符号の説明
10 エレクトロクロミックミラー
12 ガラス基板(透明基板)
14 透明電極膜
16 エレクトロクロミック膜
18 光反射膜
20 基板
22 ガラス基板(基板)
24 電極膜(基板)
28 電解液
50 エレクトロクロミックミラー
52 電解液
60 エレクトロクロミックミラー
62 電解液
70 エレクトロクロミックミラー
72 電解液

Claims (4)

  1. 裏面に導電性を有する透明電極膜が形成されると共に、還元着色するエレクトロクロミック膜が前記透明電極膜の上から重ねて形成され、ロジウムから成る光反射膜が前記エレクトロクロミック膜の上から重ねて形成された透明基板と、
    少なくとも一方の面側において導電性を有する導電部が単一の材料で構成され、前記導電部が前記光反射膜と対向する状態で前記透明基板に近接して設けられた基板と、
    少なくともリチウムイオンと、中性分子もしくは負のイオンで酸化可能であって、前記エレクトロクロミック膜の還元反応による着色を保証する材料とを含み、前記透明基板の前記光反射膜と前記基板の前記導電部との間に封入された電解液と、
    を備えたエレクトロクロミックミラー。
  2. 前記基板の前記導電部は、前記基板に形成された導電性を有する電極膜とされる、
    ことを特徴とする請求項1記載のエレクトロクロミックミラー。
  3. 前記透明基板の前記エレクトロクロミック膜の材料は、三酸化タングステン及び三酸化モリブデンのうち少なくとも一方を含んで構成される、
    ことを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載のエレクトロクロミックミラー。
  4. 前記電解液は、前記電解液と反応しないポリマーもしくは無機物を含有してゲル状とされる、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のエレクトロクロミックミラー。
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