JP4093031B2 - 流体通路制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体通路内で膜状のフィルム材を移動させることにより流体流れを制御する流体通路制御装置に関するもので、車両用空調装置の空気通路切換装置に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気通路切換装置に用いられるフィルム材は、樹脂フィルム層と織布フィルム層とを交互に積層するとともに、樹脂フィルム層の両面側に織布フィルム層を設けることにより、引っ張り強度、曲げ強度及び引き裂き強度を向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−201234号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発明者はフィルム材の製造原価低減を図るべく、樹脂フィルム層の片面側のみに織布フィルム層を設けたフィルム材を試作検討したところ、以下のような問題が発生した。
【0005】
すなわち、フィルム材は平坦な状態で配置されることは希で、多くの場合は図1に示すように、屈曲した状態で配置されるため、フィルム材に屈曲状態が転写されて、いわゆる「曲げぐせ」が発生し易い。
【0006】
そして、転写(曲げぐせ)が発生すると、フィルム材と空調ケーシングとの間に隙間が発生してしまうので、シール不足による風漏れやビビリ音等の異音が発生し易い。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、第1には、従来と異なる新規な流体通路制御装置を提供し、第2には、フィルム材に発生する転写の量を抑制することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、平面膜状のフィルム材(13、20)が屈曲した状態で流体通路内に配置され、フィルム材(13、20)を流体通路内で移動させることにより流体流れを制御する流体通路制御装置であって、フィルム材(13、20)は、第1の膜材(f1)より温度変化に対する伸び量が大きい第2の膜材(f2)が、第1の膜材(f1)の厚み方向に重ねられたラミネーションフィルムであり、さらに、フィルム材(13、20)は、フィルム材(13、20)の略全域に渡って、曲げの内側に第2の膜材(f2)が位置し、かつ、曲げの外側に第1の膜材(f1)が位置するように配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のフィルム材(13、20)のごとく、温度変化に対する伸び量が異なる膜材を貼り合わせたフィルム材の雰囲気温度が上昇変化すると、バイメタルのように温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するようにフィルム材が湾曲するので、温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するようにフィルム材を屈曲させたまま、その雰囲気温度が上昇変化すると、大きな転写が発生する。
【0010】
これに対して、本発明では、温度変化に対する伸び量が大きい第2の膜材(f2)を内側にしているので、温度変化に対する伸び量が小さい第1の膜材(f1)が外側に位置することとなるので、温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するように屈曲させたフィルム材に比べて、転写量を小さくすることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、第2の膜材(f2)は繊維を織った織布材であり、第1の膜材(f1)は樹脂膜にて構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明では、第1の膜材(f1)は、ポロエチレンテレフタレート製の膜材であり、第2の膜材(f2)は、ポロエチレンテレフタレート製の繊維を織った織布材であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明では、フィルム材(13、20)は、第1の膜材(f1)と第2の膜材(f2)とを接着する接着層(f3)、及び摺動面側に設けられた樹脂コート層(f4)からなるラミネーションフィルムであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明では、フィルム材(13、20)の移動方向両端側には、フィルム材(13、20)を巻き取る巻き取り手段(11、12、17、18)が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本実施形態は、本発明に係る流体通路制御装置を車両用空調装置の空気通路切換装置に適用したものであって、図1は空調ケーシング1及び空調ケーシング1内に収納された機器の配置状態を示すものである。
【0017】
空調ケーシング1は、車室内計器盤の左右方向の略中央部位に搭載され、その車両前方側部位の側面に空気入口2が開口し、この空気入口2には、車室内計器盤の助手席側に配置された送風ユニット(図示せず)の空気出口部が接続されている。
【0018】
また、空調ケーシング1内には、その空気流れ上流側から順に蒸発器3、ヒータコア4が設けられている。なお、蒸発器3は、周知の蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器であり、減圧された低温・低圧冷媒と室内に吹き出す空気とを熱交換させて室内に吹き出す空気を冷却する。また、ヒータコア4は、内部を流れる温水(エンジン冷却水)を熱源として空調ケーシング1内の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0019】
また、空調ケーシング1の空気流れ下流端側には複数の吹出空気開口5〜7が形成されており、この各空気開口5〜7の下流側に、さらに、空調空気を車室内の所定場所に向けて吹き出させるための吹出ダクト(図示せず)が接続される。
【0020】
これら開口部5〜7のうち、デフロスタ空気開口5には、空調空気を車室内フロントガラス内面に向けて吹き出すためのデフロスタ吹出口を有するデフロスタダクトが接続され、フェイス空気開口6はセンターフェイス開口6aとサイドフェイス開口6bとに分岐され、これらの開口6a、開口6bはそれぞれフェイスダクトを介して、空調空気を前席中央の乗員上半身に向けて吹き出すセンターフェイス吹出口と、空調空気を前席サイドガラス側の乗員上半身に向けて吹き出すサイドフェイス吹出口に連通するようになっている。
【0021】
また、フット空気開口7には、樹脂製の空調ケーシング1に一体に設けられたフット吹出通路8が接続され、このフット吹出通路8には、空調空気を運転席側乗員の足元部に向けて吹き出すための運転席側フット吹出口9a、及び空調空気を助手席側乗員の足元部に向けて吹き出すため助手席側フット吹出口9bが形成されている。
【0022】
また、フット吹出通路8には、空調空気を後席乗員足元に向けて吹き出すためのリアフット吹出口を有するリアフットダクト(図示せず)が接続されるリアフット空気開口10が設けられている。
【0023】
空調ケーシング1内には、第1駆動軸11と第1従動軸12が、空調ケーシング1に対して回転自在に支持されている。この第1駆動軸11及び第1従動軸12には、可撓性を有する膜状のフィルム材にて構成されたエアミックス用膜状部材13の両端が連結された状態で巻かれている。
【0024】
そして、このエアミックス用膜状部材13は、第1駆動軸11とヒータコア4の側面と第1従動軸12とによって、ヒータコア4を通る温風通路14と、ヒータコア4をバイパスするバイパス通路15、16とをそれぞれ横切るようにして、一定の張力が付与された状態で空調ケーシング1内に張設されている。
【0025】
なお、第1駆動軸11はステップモータ等の駆動手段によって回転駆動され、エアミックス用膜状部材13はヒータコア4を固定する固定部4aに接触してその移動が案内される。
【0026】
また、エアミックス用膜状部材13には空気を通過させるための開口部が形成されており、第1駆動軸11を正逆両方向に回転させて開口部を任意の位置で停止させることによって、上記各通路14〜16を通る空気量を調節するる。
【0027】
また、空調ケーシング1内には、第2駆動軸17と第2従動軸18が、空調ケーシング1に対して回転自在に支持されている。この第2駆動軸17及び第2従動軸18には、吹出モード切換用膜状部材20の両端が連結されて巻かれている。ここで、吹出モード切換用膜状部材20もエアミックス用膜状部材13と同様に可撓性に富んだフィルム材からなる。
【0028】
そして、第2駆動軸17と第2従動軸18との間の中間部位には中間ガイド軸19が配置されており、この中間ガイド軸19は、空調ケース1の内壁面に沿って吹出モード切換用膜状部材20を屈曲させて吹出モード切換用膜状部材20の移動を案内する。
【0029】
なお、空調ケーシング1内には、蒸発器3後の冷風を直接、フェイス空気開口6側に導く冷風バイパス通路21、及びこの冷風バイパス通路21を開閉する冷風バイパスドア22が設けられている。この冷風バイパスドア22は、エアミックス用膜状部材13の開口部が温風通路14を全閉してバイパス通路15、16を全開する最大冷房運転時に冷風バイパス通路21を開く。
【0030】
ところで、エアミックス用膜状部材13及び吹出モード切換用膜状部材20は共に、図2に示すように、第1の膜材f1より温度変化に対する伸び量が大きい第2の膜材f2が、第1の膜材f1の厚み方向に重ねられたラミネーションフィルム材から構成されたものである。
【0031】
具体的には、第1の膜材f1は、ポロエチレンテレフタレート(PET)製の膜材であり、第2の膜材f2は、ポロエチレンテレフタレート製の繊維を織った織布材であり、両膜材f1、f2はポリエステル系の接着剤f3により接着されているとともに、中間ガイド軸19や固定部4a等の案内部に対して摺動する摺動面側にはシリコーン樹脂等の摩擦係数が小さい樹脂からなる樹脂コート層f4が設けられた多層構造フィルムである。
【0032】
因みに、本実施形態では、両膜状部材13、20の厚みは50〜250μmであり、第1の膜部材f1の厚みは25〜125μmであり、第2の膜部材f2の厚みは25〜125μmである。
【0033】
そして、本実施形態では、図1、図3に示すように、膜状部材の巻き取り部、つまり第1駆動軸11、第1従動軸12、第2駆動軸17及び第2従動軸18を含めて両膜状部材13、20の略全域に渡って、曲率半径が小さくなる曲げの内側に第2の膜材f2が位置し、かつ、曲率半径が大きくなる曲げの外側に第1の膜材f1が位置するように両膜状部材13、20が取り回されている。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0035】
両膜状部材13、20等の温度変化に対する伸び量が異なる膜材を貼り合わせたフィルム材の雰囲気温度が上昇変化すると、バイメタルのごとく、温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するようにフィルム材が湾曲するので、温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するようにフィルム材を屈曲させたまま、その雰囲気温度が上昇変化すると、大きな転写が発生する。
【0036】
これに対して、本実施形態では、温度変化に対する伸び量が大きい第2の膜材f2を内側にしているので、温度変化に対する伸び量が小さい第1の膜材f1が外側に位置することとなるので、温度変化に対する伸び量が大きい方の膜材が外側に位置するように屈曲させたフィルム材に比べて、転写量を小さくすることができる。
【0037】
したがって、フィルム材(両膜状部材13、20)と空調ケーシング1との間に隙間が発生してしまうことを抑制できるので、シール不足による風漏れやビビリ音等の異音が発生することを抑制できる。
【0038】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明に係る流体通路制御装置を車両用空調装置の空気通路切換装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
【0039】
また、フィルム材(両膜状部材13、20)の材質は、上述の実施形態にされたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る空調ケーシングの模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルム材の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフィルム材の取り回しを示す説明図である。
【符号の説明】
13、20…フィルム材、11、17…巻き取り用駆動軸、
17、18…巻き取り用従動軸、f1…第1の膜材、
f2…第2の膜材、f4…樹脂コート層。

Claims (5)

  1. 平面膜状のフィルム材(13、20)が屈曲した状態で流体通路内に配置され、前記フィルム材(13、20)を前記流体通路内で移動させることにより流体流れを制御する流体通路制御装置であって、
    前記フィルム材(13、20)は、第1の膜材(f1)より温度変化に対する伸び量が大きい第2の膜材(f2)が、前記第1の膜材(f1)の厚み方向に重ねられたラミネーションフィルムであり、
    さらに、前記フィルム材(13、20)は、前記フィルム材(13、20)の略全域に渡って、曲げの内側に前記第2の膜材(f2)が位置し、かつ、曲げの外側に前記第1の膜材(f1)が位置するように配置されていることを特徴とする流体通路制御装置。
  2. 前記第2の膜材(f2)は繊維を織った織布材であり、
    前記第1の膜材(f1)は樹脂膜にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体通路制御装置。
  3. 前記第1の膜材(f1)は、ポロエチレンテレフタレート製の膜材であり、
    前記第2の膜材(f2)は、ポロエチレンテレフタレート製の繊維を織った織布材であることを特徴とする請求項1に記載の流体通路制御装置。
  4. 前記フィルム材(13、20)は、前記第1の膜材(f1)と第2の膜材(f2)とを接着する接着層(f3)、及び摺動面側に設けられた樹脂コート層(f4)からなるラミネーションフィルムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の流体通路制御装置。
  5. 前記フィルム材(13、20)の移動方向両端側には、前記フィルム材(13、20)を巻き取る巻き取り手段(11、12、17、18)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の流体通路制御装置。
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