JP4016492B2 - 空気通路切替装置および車両用空調装置 - Google Patents

空気通路切替装置および車両用空調装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気通路の切替を空気通路の開口面に沿って摺動するスライドドアにより行う空気通路切替装置、およびそれを用いた車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人においては、特開平8−258538号公報等において、この種のスライドドアにより車両用空調装置における空気通路の切替を行うものを既に提案している。この従来技術では、図11に示すように、スライドドア26に、概略平坦な形状のドア基板26aと、このドア基板26aに支持される樹脂製のフィルム部材26bとを設け、ドア基板26aに設けた開口部26cを通して空気通路内の風圧をフィルム部材26bに作用させる。
【0003】
この風圧によりフィルム部材26bがケース12aの開口部22、23の周縁シール面22b、23bに圧着することにより、ケース側開口部22、23を閉塞し、また、スライドドア26を摺動させて、フィルム部材26bがケース側開口部22、23から開離することにより、ケース側開口部22、23を開口させている。これにより、空気通路の切替を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のごときフィルム式スライドドア26を実際に試作検討してみると、ケース側開口部22、23の開口面積が大きくなると、開口部22、23の閉塞状態においてフィルム部材26bが開口部22、23内に図11のように大きく湾曲して入り込むという現象が発生する。すると、開口部22、23の周縁シール面22b、23bとフィルム部材26bとの間に隙間が発生し、矢印Bのごとく風洩れが発生するという問題がある。
【0005】
また、フィルム部材26bが開口部22、23内に大きく湾曲して入り込むと、次に、スライドドア26の操作位置を移動する際に、フィルム部材26bの湾曲部が開口部22、23の周縁角部に食い込み、スライドドア26の移動を妨げるので、スライドドア26の操作力を増大させるという問題がある。
そこで、図12のごとくケース13側に開口部22、23の中間に開口面を紙面垂直方向に2つに仕切る格子22a、23aを形成して、フィルム部材26bの湾曲を抑制することを検討したが、単に、格子22a、23aを形成しただけであると、フィルム部材26bが格子22a、23aに衝突して打音を発生するという問題が生じることが判明した。
【0006】
すなわち、フィルム部材26bはある程度の可撓性があり、摩擦抵抗の小さい、通気性のない樹脂材料、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなるが、必要強度確保のために、かなりの硬さ、剛性を持った材質で成形されているので、空気通路内へ送風が開始されると、風圧によりフィルム部材26bが格子22a、23aの端面に衝突して打音を発生する。
【0007】
また、フィルム部材26bはドア基板26aとの間に所定間隔が設定され、自由に変形可能な状態にあるので、スライドドア26の移動に伴ってフィルム面が波うった状態に歪む(図12参照)という現象が起きる。この結果、この歪みに起因する弾性反力にてフィルム部材26bが格子22a、23aに衝突して打音を発生したり、あるいは、車両走行時の振動によりフィルム部材26bが振動して格子22a、23aに衝突して打音を発生することがある。
【0008】
さらには、フィルム部材26bの波状の凹凸面がスライドドア26の移動に伴って格子22a、23aの端面との間で接触、離脱を繰り返し、ビビリ音を発生することがある。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、フィルム部材と格子との衝突に起因する打音の発生を防止することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1〜5記載の発明では、空気通路(22、23)に開口面を複数に仕切る格子(22a、23a)を形成するとともに、この格子(22a、23a)をスライドドア(26)の摺動方向(A)と平行に配置し、空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および格子(22a、23a)の端面に圧着して空気通路(22、23)を閉塞するフィルム部材(26b)と、フィルム部材(26b)を支持するドア基板(26a)とを、スライドドア(26)に備え、
フィルム部材(26b)を空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および格子(22a、23a)の端面に押圧する押圧手段(26e)をドア基板(26a)に設けたことを特徴としている。
【0010】
これによると、フィルム部材(26b)が空気通路(22、23)内に図11のように大きく湾曲して入り込むという現象を格子(22a、23a)により確実に防止できる。
しかも、フィルム部材(26b)を常に、周縁シール面(22b、23b)および格子(22a、23a)の端面に押しつけた状態を維持できるので、空気通路内への送風開始時や車両走行時の振動によってフィルム部材(26b)が周縁シール面(22b、23b)や格子(22a、23a)の端面に衝突することを防止できる。従って、フィルム部材(26b)の衝突に起因する打音の発生を未然に防止できる。
【0011】
さらには、フィルム部材(26b)が波状の凹凸面を形成することも押圧手段(26e)によって防止できるので、波状の凹凸面が格子(22a、23a)の端面との間で断続的に接触、離脱を繰り返すという現象がなくなり、この断続的な接触、離脱の繰り返しによるビビリ音も良好に防止できる。
請求項2記載の発明のように、押圧手段(26e)は、弾性反力にてフィルム部材(26b)を押圧する弾性材により構成することができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明のように、押圧手段(26e)は、スライドドア(26)の摺動方向(A)と平行に延びる、細長形状からなり、この細長形状の押圧手段(26e)を空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および格子(22a、23a)の端面にそれぞれ対応して複数配置する構成とすることができる。
【0013】
また、複数の押圧手段(26e)のうち、フィルム部材(26b)を格子(22a、23a)の端面に押圧する押圧手段(26e)は、請求項4記載のように、格子(22a、23a)の端面に直接対向する位置に配置したり、あるいは、請求項5記載のように格子(22a、23a)の端面から側方にずれた近傍位置に配置してもよい。
【0014】
さらに、請求項6記載のように、本発明は、車両用空調装置における、車室内への吹出空気の複数の空気通路(22、23)を開閉する空気通路切替装置として好適に実施できる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図7は本発明の第1実施形態を示すもので、本実施形態の車両用空調装置は、車室内が大きいワンボックス車等の後席側空間を空調する後席用空調装置に係るものである。
【0016】
先ず、図1において、10は後席用車両用空調装置を示し、この空調装置10の主体は車両後方部の床面近傍位置において車両外壁と車両内壁との間に設置される。車両用空調装置10は、大別して車両前後方向に並ぶように配置された送風ユニット11と、エアコンユニット12とからなる。
送風ユニット11は、空調装置10内部に車室内後部の内気を吸引するためのものであって、本実施形態では車両用空調装置は内気のみを吸い込むようになっている。送風ユニット11は、車両幅方向(図1の紙面表裏方向)の両側にそれぞれ図示しない内気吸入口が形成されている。
【0017】
送風ユニット11には、遠心式電動送風機13が備えられている。この送風機13は、遠心ファン14と、ファン駆動用モータ14aとを有し、遠心ファン14はスクロールケーシング15内に配置されている。
送風ユニット11のスクロールケーシング15の空気下流側には、車両前後方向に延びる流路を構成するダクト部16が形成されている。このダクト部16は、送風ユニット11から送風された送風空気を下方から上方へ向かって流れを変更させてエバポレータ17に導入するためのものである。このダクト部16により送風ユニット11の出口部がエアコンユニット12の入口部に接続される。
【0018】
エアコンユニット12は、送風ユニット11より車両後方側に配置されており、樹脂製ケース12aにより空気流路が下方から上方に延びるように形成されている。エアコンユニット12のケース12a内には、空調空気の冷却用熱交換器をなすエバポレータ17と、その空気下流側に位置するヒータコア(加熱用熱交換器)18が配設されている。エバポレータ17およびヒータコア18は、エアコンユニット12内に、その通風面が略水平となるように車両上下方向に積層して配置されている。
【0019】
従って、上記送風機13から送風された送風空気は、上記ダクト部16によって車両前方から後方へ向かって流れたのち、エアコンユニット12のケース12a内に導入される。そして、ケース12a内に導入された送風空気は、下方から上方に向かうように流れを変更して、上記エバポレータ17およびヒータコア18を通過する。
【0020】
エバポレータ17は、図示しない圧縮機、凝縮器、受液器、減圧器とともに配管結合された周知の冷凍サイクルを構成するものであり、ケース12a内の空気を冷却除湿する。ヒータコ18は、自動車エンジンからの温水(冷却水)を熱源とする加熱用熱交換器であり、上記エバポレータ17にて冷却された冷風を加熱する。
【0021】
本実施形態では、ヒータコア18への温水量を調整する温水弁19をヒータコア18の温水回路に設け、この温水弁19の開度調整によりヒータコア18への温水量を調整することにより、車室内への吹出空気温度を調整する。
また、エアコンユニット12のケース12a内には、エバポレータ17を通過した空気(冷風)がヒータコア18をバイパスして流れる冷風バイパス通路20が設けられている。この冷風バイパス通路20は、冷風バイパスドア21にて開閉される。
【0022】
エアコンユニット12のケース12aにおいて、ヒータコア18の下流側部位(車両上方部位)には、フェイス用開口部22とフット用開口部23とが形成されている。フェイス用開口部22は、ヒータコア18で温度調整された空調風を後席側乗員の上半身に向けて送風するためのものであり、フェイス用ダクト24を介して車両天井部の後席用フェイス吹出口(図示せず)に連結されている。
【0023】
一方、フット用開口部23は、ヒータコア18で温度調整された空調風を後席側乗員の足元部に向けて送風するためのものであり、フット用ダクト25を介して後席乗員の足元部に位置する後席用フット吹出口(図示せず)に連結されている。
これらフェイス用開口部22とフット用開口部23はスライドドア26にて開閉され、これにより、吹出モードとして周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモードが切替可能になっている。
【0024】
次に、このスライドドア26の駆動機構の具体例について図2、図3により説明する。スライドドア26は、エアコンユニット12のケース12aに設けられたフェイス用開口部22およびフット用開口部23の空気通路開口面に沿って図示の矢印A方向に摺動するものである。
図4〜図7に示すように、スライドドア26は、ドア基板26aとこのドア基板26aに支持されるフィルム部材26bとを備えている。ドア基板26aは、ポリプロピレン等の樹脂にて田の字状の平坦な枠体形状(図6)に成形されている。そして、このドア基板26aの上面部(開口部22、23側の面)にはフィルム部材26bがドア基板26aの4つの開口部26cを覆うように取付られている。このフィルム部材26bは上記開口部22、23を閉塞するために上記開口部22、23より大きい面積を有している。
【0025】
このフィルム部材26bは、ある程度の可撓性があり、摩擦抵抗の小さい、通気性のない薄膜状の樹脂材料にて成形されている。具体的には、フィルム部材26bは、例えば、厚さ188μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる。ドア基板26aは上記4つの開口部26cによりケース12a内の風圧をフィルム部材26bに加えることができる。
【0026】
エアコンユニット12のケース12aのフェイス用開口部22およびフット用開口部23は図4のように略長方形の形状であり、その中央部にはそれぞれ格子22a、23aが一体成形されている。この格子22a、23aはスライドドア26の摺動(移動)方向Aと平行に延びて、開口部22、23の開口面を2つに仕切っている。ここで、両開口部22、23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面は、後述の図7に示すようにスライドドア26のフィルム部材26bに対して同一平面上に形成されている。
【0027】
そして、ドア基板26aの田の字状の枠体形状は、両開口部22、23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に対向してドア摺動方向Aと平行に延びる板面26d(図6)を有し、この板面26dに弾性押圧部材26eが接着等の手段で固着されている。この弾性押圧部材26eは上記板面26dの幅より若干狭い幅寸法でもって延びる断面矩形状の細長形状のものである。
【0028】
弾性押圧部材26eの自由状態での板厚t(図6)は、スライドドア26がケース12a内に組付られた状態におけるドア基板26aとケース12a側の周縁シール面22b、23bとの間隔L(図7)より大きく設定してある。これにより、スライドドア26のケース12a内への組付状態では、弾性押圧部材26eをその板厚t方向に弾性的に所定量圧縮することができる。その結果、弾性押圧部材26eに弾性反力が発生し、この弾性反力にて、フィルム部材26bを両開口部22、23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に所定の力で常に押圧することができる。
【0029】
具体的設計例としては、弾性押圧部材26eの自由状態での板厚t=5mm、間隔L=4mmとし、弾性押圧部材26eを1mm弾性的に圧縮して、フィルム部材26bを常時、周縁シール面22b、23b側へ押圧する。
フィルム部材26bは、空調装置作動時には図7に示すように、開口部26cを通して加わる風圧によって、開口部22または23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に圧着して、開口部22または23を確実に閉塞することができる。
【0030】
このように、フィルム部材26bがシール機能を果すので、弾性押圧部材26eはシール機能が不要であり、また、弾性押圧部材26eはフィルム部材26bに接するだけで、ケース12a側の面を直接摺動することがないので、特別に耐久性を高める必要もない。従って、弾性押圧部材26eは弾性材であれば、安価な材料を使用できる。具体的には、スポンジ状の多孔質樹脂発泡材を弾性押圧部材26eとして使用できる。
【0031】
次に、フィルム部材26bの具体的取付構造を説明すると、フィルム部材26bは図6に示すようにドア摺動方向Aの両端部に曲げ部26fを有する形状に成形され、この曲げ部26fに複数の円形取付穴26gを開けている。一方、ドア基板26aの両端部には、取付穴26gと同数の取付ピン26hを一体に突出成形し、この取付ピン26hにフィルム部材26bの曲げ部26fの取付穴26gを嵌合した後に取付ピン26hの先端部を熱かしめすることにより、フィルム部材26bをドア基板26aに取り付けている。なお、図4、5、7において、26iは取付ピン26hの先端部の熱かしめ後の拡大部である。
【0032】
また、ドア基板26aのうち、ドア摺動方向Aと直交方向の左右両端の側面に、それぞれ2箇所づつガイドピン26jが一体に突出成形されている。このガイドピン26jは、スライドドア26の矢印方向Aへの摺動を案内するものである。すなわち、エアコンユニット12のケース12aにおいて、フェイス用開口部22およびフット用開口部23よりも下方の内壁面に、ドア摺動方向Aと平行に延びる水平方向のガイド溝27、28(図2、4)が左右両側に設けられ、このガイド溝27、28内にそれぞれガイドピン26jが摺動可能に嵌入されている。このため、スライドドア26はガイドピン26jとガイド溝27、28との嵌合部により摺動可能にケース12aに保持される。
【0033】
さらに、ドア基板26aの下面部(ヒータコア18側の面)には、ドア摺動方向Aと平行に延びる直線状ギヤ(ラック)26kがドア基板26aと一体成形で設けられている。この直線状ギヤ26kは、図6、7に示すように、ドア基板26aの下面部のうち、中央部の板面26dの下面部に形成されている。
一方、図2に示すように、ケース12a内において、スライドドア26の直ぐ下方の部位で、フェイス用開口部22とフット用開口部23との中間部位に、回転軸29がドア摺動方向Aと直交する方向に配置されている。この回転軸29は樹脂製であり、ケース12aの壁面の軸受穴(図示せず)により回転自在に支持される。この回転軸29のうち、上記直線状ギヤ26kと対応する中間部位に円形連結ギヤ(ピニオン)30が樹脂により一体成形で設けてある。この連結ギヤ30はケース12a内に位置して直線状ギヤ26kとかみ合うものである。
【0034】
また、回転軸29の一端部はケース12aの外部へ突出し、この突出端部に円形の駆動側ギヤ31を配置している。この駆動側ギヤ31も樹脂により回転軸29と一体成形で設けてある。ドア駆動装置を構成するサーボモータ32は、図2に示すようにケース12aの上方側に配置され、その出力軸33に扇ギヤ34が連結されている。この扇ギヤ34は上記した駆動側ギヤ31にかみ合っている。これにより、サーボモータ32の回転が出力軸33、扇ギヤ34、駆動側ギヤ31を介して回転軸29に伝達される。さらに、回転軸29の回転は、連結ギヤ30と直線状ギヤ26kとのかみ合いによりスライドドア26の直線運動に変換される。
【0035】
なお、本実施形態では、冷風バイパス通路20を開閉する冷風バイパスドア21の回転軸21aをリンク35、36を介して扇ギヤ34のピン部34aに連結して、扇ギヤ34の回転位置に連動して冷風バイパスドア21を回動操作するようになっている。
次に、上記構成において作動を説明すると、サーボモータ32の出力軸33の回転方向および回転量を選択することにより、スライドドア26の矢印A方向への摺動位置を任意に設定でき、これにより、フェイス用開口部22とフット用開口部23とを開閉して、フェイス、バイレベル、フットの各モードを所望に選択できる。
【0036】
その際、本実施形態によると、スライドドア26による空気通路の切替作用において次の利点を有している。
▲1▼開口部22、23に、スライドドア26の摺動方向Aと平行に延びて開口面を仕切る格子22a、23aを配置して、この格子22a、23aによりフィルム部材26bの中央部の膨出変形を制限することができる。そのため、フィルム部材26bが開口部22、23内に大きく湾曲して入り込むことを阻止できる。その結果、フィルム部材26bの大きな湾曲により開口部22、23の周縁シール面22b、23bとフィルム部材26bとの間に隙間が発生することを防止できる。
【0037】
従って、フィルム部材26bは、開口部26cを通して加わる風圧により開口部22、23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に確実に圧着するので、開口部22、23をフィルム部材26bにより確実に閉塞して、風洩れを良好に防止できる。
▲2▼フィルム部材26bが開口部22、23内に大きく湾曲して入り込むという現象がなくなるから、次に、スライドドア26の操作位置を移動する際に、スライドドア26を小さな操作力で軽快に移動させることができる。
【0038】
▲3▼開口部22、23の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に対してフィルム部材26bを弾性押圧部材26eの弾性反力により常時、押圧しているから、通風開始時にフィルム部材26bが周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aに衝突するという現象がなくなる。同様に、車両走行時の振動によりフィルム部材26bが振動して周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aに衝突するという現象もなくなる。従って、フィルム部材26bの衝突による打音発生を未然に防止できる。
【0039】
▲4▼フィルム部材26bを弾性押圧部材26eの弾性反力により常時、押圧するという組付構造を採用しない場合は、前述の図12のように、フィルム部材26bが波うった状態に歪み、これに起因してフィルム部材26bの打音やビビリ音を発生することがある。しかし、本実施形態によると、フィルム部材26bを弾性押圧部材26eの弾性反力により常時、周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に押圧しているから、上記のような打音およびビビリ音をも防止することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態を示すもので、第1実施形態では格子22a、23aの直下の位置(格子端面に直接対向する位置)に弾性押圧部材26eおよびドア基板26aの板面26dを配置しているが、第2実施形態では弾性押圧部材26eおよびドア基板26aの板面26dを格子22a、23aの直下の位置でなく、格子の側方に若干ずれた近傍位置に配置している。
【0041】
このように格子側方の近傍位置に弾性押圧部材26eを配置しても、弾性押圧部材26eによる押圧力をフィルム部材26bに作用させて、フィルム部材26bを格子22a、23aに押圧することができ、第1実施形態とほぼ同様の作用効果を発揮できる。
(第3実施形態)
図9は第3実施形態を示すもので、フィルム部材26bの具体的材質の他の例を示すものであり、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる樹脂基板層100と、この樹脂基板層100に樹脂系の接着剤層101を介して接着された織布層102と、この織布層102の表面に含浸された樹脂コート層103とからなる4層構造にしている。
【0042】
織布層102はナイロン繊維等を織ったもので、フィルムの強度を効果的に向上できる。樹脂コート層103はケース12a側の周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面に接触して摺動する摺動面を形成するもので、低摩擦係数および耐熱性を有するシリコン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等からなる。
【0043】
第3実施形態によると、フィルム部材26bが上記のごとき多層構造からなり、特に織布層102の採用により機械的強度を効果的に向上できるので、必要強度を保持したまま、フィルム部材26bの剛性を低下(換言すると、可撓性を向上)させることができる。この結果、フィルム部材26bと周縁シール面22b、23bおよび格子22a、23aの端面との密着性が向上し、打音およびビビリ音の低減効果、シール効果をより一層向上できる。
【0044】
(第4実施形態)
図10は第4実施形態を示すもので、第1実施形態ではスライドドア26のドア基板26aを平坦な枠体形状に成形しているので、スライドドア26の全体形状が平板状になっているが、第4実施形態ではドア基板26aを比較的大きな曲率半径を持つ円弧状に成形して、スライドドア26の全体形状を円弧状にしている。これに伴って、ケース12a側の開口部22、23の開口面も円弧状(図示せず)に形成する。
【0045】
このようにしても、第1実施形態とほぼ同様の作用効果を発揮できる。なお、スライドドア26の駆動機構は、直線状ギヤ26kをドア基板26aの円弧形状に沿った円弧形状に変更するだけで、他の点は第1実施形態と同じでよい。
(他の実施形態)
なお、本発明によるスライドドアを車両用空調装置の内外気切替ドア、あるいはヒータコア18を通過する温風と、ヒータコア18の冷風バイパス通路を通過する冷風との風量割合を調整するエアミックスドア等にも適用することができる。さらに、車両用空調装置以外の用途の空気通路切替装置にも広く本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を適用する車両後席用空調装置の概略縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大正面図である。
【図3】図2に示すスライドドア駆動機構の分解斜視図である。
【図4】図2の要部の分解斜視図である。
【図5】図4のスライドドア単体の拡大斜視図である。
【図6】図5のスライドドア単体の分解斜視図である。
【図7】(a)は図5のスライドドアとケース側開口部との組付関係を示す断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示す要部断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態によるフィルム部材の一部断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態によるスライドドア単体の拡大斜視図である。
【図11】従来技術によるスライドドアとケース側開口部との組付関係を示す断面図である。
【図12】図11のケース側開口部に格子を追加した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
22…フェイス開口部、23…フット開口部、26…スライドドア、
26a…ドア基板、26b…フィルム部材、26e…弾性押圧部材。

Claims (6)

  1. 空気通路(22、23)の開口面に沿って摺動するスライドドア(26)を備え、前記空気通路(22、23)を前記スライドドア(26)により開閉する空気通路切替装置であって、
    前記空気通路(22、23)に開口面を複数に仕切る格子(22a、23a)を形成するとともに、
    前記格子(22a、23a)を前記スライドドア(26)の摺動方向(A)と平行に配置し、
    前記空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および前記格子(22a、23a)の端面に圧着して前記空気通路(22、23)を閉塞するフィルム部材(26b)と、前記フィルム部材(26b)を支持するドア基板(26a)とを、前記スライドドア(26)に備え、
    前記フィルム部材(26b)に風圧を作用させる開口部(26c)を前記ドア基板(26a)に設け、
    さらに、前記フィルム部材(26b)を前記空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および前記格子(22a、23a)の端面に押圧する押圧手段(26e)を前記ドア基板(26a)に設けたことを特徴とする空気通路切替装置。
  2. 前記押圧手段(26e)は、弾性反力にて前記フィルム部材(26b)を押圧する弾性材からなることを特徴とする請求項1に記載の空気通路切替装置。
  3. 前記押圧手段(26e)は、前記スライドドア(26)の摺動方向(A)と平行に延びる細長形状からなり、
    前記細長形状の押圧手段(26e)を前記空気通路(22、23)の周縁シール面(22b、23b)および前記格子(22a、23a)の端面にそれぞれ対応して複数配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の空気通路切替装置。
  4. 前記複数の押圧手段(26e)のうち、前記フィルム部材(26b)を前記格子(22a、23a)の端面に押圧する押圧手段(26e)を、前記格子(22a、23a)の端面に直接対向する位置に配置したことを特徴とする請求項3に記載の空気通路切替装置。
  5. 前記複数の押圧手段(26e)のうち、前記フィルム部材(26b)を前記格子(22a、23a)の端面に押圧する押圧手段(26e)を、前記格子(22a、23a)の端面から側方にずれた近傍位置に配置したことを特徴とする請求項3に記載の空気通路切替装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空気通路切替装置を備え、前記スライドドア(26)により車室内への吹出空気の複数の空気通路(22、23)を開閉することを特徴とする車両用空調装置。
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