JP4089974B2 - 窒化ケイ素質粉末、窒化ケイ素質焼結体及びこれを用いた電子部品用回路基板 - Google Patents
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また、本発明の課題は、窒化ケイ素質粉末のβ分率、含有酸素量、不純物量およびα型窒化ケイ素質粉末との混合比等を規定することにより、高い熱伝導率および高い強度を有する窒化ケイ素質焼結体を提供することである。
また、本発明の課題は、高強度・高熱伝導性の発現のために用いる窒化ケイ素質粉末を提供することである。
また、本発明の課題は、前記高強度・高熱伝導性に富んだ窒化ケイ素質焼結体を用いて構成される放熱性の良好な高強度・高熱伝導性に富んだ電子部品用回路基板を提供することである。
前記酸化物換算含有量の合計が0.6wt%未満では焼結時の緻密化作用が不十分となり相対密度が95%未満となり好ましくなく、7wt%超では窒化ケイ素質焼結体の第2のミクロ組織成分である熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり焼結体の熱伝導率が100W/(m・K)未満になる。これら窒化ケイ素質含有量の合計は0.6〜4wt%がより好ましい。前記窒化ケイ素質焼結体は、常温における熱伝導率が100〜300W/(m・K)であり、常温における3点曲げ強度が600〜1500MPaであり高強度・高熱伝導性に富んでいる。また前記窒化ケイ素質焼結体が、含有するMgを酸化マグネシウム(MgO)換算し、また含有するLa,YおよびYbを含む希土類元素(RE)から選択される少なくとも1種の元素を酸化物(RExOy)換算し、それら酸化物換算含有量の合計が0.6〜7wt%であり、かつMgO/RExOyで表される重量比が1〜70である場合に特に高強度・高熱伝導性が向上する。(MgO/RExOy)(重量比)が1未満では粒界相中の希土類酸化物の割合が増大するため焼結過程で液相線温度が上昇し難焼結性となり緻密な焼結体が得られない。(MgO/RExOy)(重量比)が70超では焼成時におけるMgの拡散を抑制することができず焼結体表面に色むらの発生を生じる。MgO/RExOy(重量比)が1〜70の範囲にある場合、1650〜1850℃の焼結温度で成形体を予備焼成し、次いで1850〜1900℃の熱処理を行うと高熱伝導化が顕著になり120w/(m・K)を超える窒化ケイ素質焼結体を得られ特に好ましい。この熱処理による高熱伝導化は窒化ケイ素粒子の成長と、蒸気圧の高いMgO基とした粒界相成分が効率よく窒化ケイ素質焼結体外へ揮発することの複合効果による。
(実施例1)
含有酸素量がSiO2換算で2.0wt%未満、平均粒子径0.2〜2.0μmのイミド分解法による窒化ケイ素質粉末をBN製るつぼに充填し、次いで常圧〜1.0MPa(10気圧)のN2雰囲気中にて1400℃〜1950℃で1〜20時間加熱する熱処理を施し、次いで室温まで冷却した。得られた窒化ケイ素質粉末のβ分率は90〜100%であり、酸素含有量は0.2〜0.4wt%であった。図1に得られた窒化ケイ素質粉末例のSEM観察像を示す。当該粉末のβ分率は100%、酸素量は0.2wt%、FeおよびAl量はそれぞれ、50ppmおよび40ppmである。当該粉末には粒子の長軸方向と平行に溝部が形成されており、これは気相を介して粒成長が起こる場合の特徴で、特に酸素量が微量であるほど顕著となることが実証された。当該粉末の次いで、得られたβ型Si3N4を主体とする粉末窒化ケイ素質粉末5〜30重量部と、酸素含有量が0.3〜1.5wt%であり平均粒子径0.5μmのα型窒化ケイ素(Si3N4)粉末99.5〜66重量部とを配合し、さらに焼結助剤として平均粒子径0.2μmのMgO粉末、および平均粒子径0.2〜2.0μmの表1に記載されるRExOy粉末(焼結助剤)を配合し、さらに2wt%の分散剤(レオガードGP)を配合し、エタノールを満たしたボ−ルミル容器中に投入し、次いで混合した。得られた混合物を真空乾燥し、次いで目開き150μmの篩を通して造粒した。次に、プレス機により直径20mm×厚さ10mmおよび直径100mm×厚さ15mmのディスク状の成形体を圧力3tonのCIP成形により得た。次いで1750〜1900℃,0.9MPa(9気圧)の窒素ガス雰囲気中で5時間焼成した。得られた窒化ケイ素質粉末のFe,Alの不純物分析はプラズマ発光分析(ICP)法により行った。また、酸素含有量は赤外線加熱吸収法により測定した。また得られた窒化ケイ素質粉末のβ分率はCu−Kα線を用いたX線回折強度比から式(1)により求めた。
β分率(%)={(Iβ(101)+Iβ(210))/(Iβ(101)+Iβ(210)+Iα(102)+Iα(210))}×100 (1)
Iβ(101):β型Si3N4の(101)面回折ピーク強度,
Iβ(210):β型Si3N4の(210)面回折ピーク強度,
Iα(102):α型Si3N4の(102)面回折ピーク強度,
Iα(210):α型Si3N4の(210)面回折ピーク強度。
また、得られた窒化ケイ素質粉末の平均粒子径および平均アスペクト比は、SEM観察にて観察倍率×2000倍で得られたSEM写真を用い、200μm×500μm視野面積内にある計500個の窒化ケイ素質粒子を無作為に選定して画像解析装置により最小径と最大径を測定し、その平均値を求めて評価した。次に得られた窒化ケイ素質焼結体から、直径10mm×厚さ3mmの熱伝導率および密度測定用の試験片、ならびに縦3mm×横4mm×長さ40mmの曲げ試験片を採取した。密度はマイクロメータにより寸法を測定し、また重量を測定し、算出した。熱伝導率はレーザーフラッシュ法により常温での比熱および熱拡散率を測定し熱伝導率を算出した。3点曲げ強度は常温にてJIS R1606に準拠して測定を行った。以上の製造条件の概略および評価結果を、表1,2の試料No.1〜11に示す。
表1に記載の製造条件とした以外は実施例1と同様にしてβ分率の異なる窒化ケイ素質粉末を作製した。次いで得られた窒化ケイ素質粉末を用いて窒化ケイ素質焼結体を作製し、評価した。以上の製造条件の概略および評価結果を、表1,2の試料No.31〜41に示す。
No.31では、窒化ケイ素質粒子のβ分率が30%未満では曲げ強度が顕著に低下し500MPa程度になる。
またNo.32では、窒化ケイ素質粉末中に不可避に含有する酸素量が0.5wt超では熱伝導率が70w/(m・K)以下に劣化する。
またNo.33およびNo.34では、窒化ケイ素質粉末中に含有する不純物のFeおよびAlの含有量がそれぞれ100ppmを超えると熱伝導率が65w/(m・K)以下に低下する。
またNo.35およびNo.36では、窒化ケイ素質粉末の平均粒子径が2μm未満では熱伝導率は60w/(m・K)以下に低下し、10μmより大きい場合には緻密な焼結体が得られず熱伝導率は60w/(m・K)以下になり、曲げ強度は600MPa以下に低下する。
またNo.37では、窒化ケイ素質粉末のアスペクト比が10以上では、緻密な焼結体が得られず、曲げ強度は600MPa以下に低下した。
またNo.38およびNo.39では、窒化ケイ素質粉末の添加量が1.0wt%未満では曲げ強度は600MPa以下に低下し、50wt%より大きい場合には熱伝導率は70w/(m・K)以下に低下した。
またNo.40およびNo.41では、焼結助剤成分が0.6wt%未満では焼結体の密度が低下し、このために熱伝導率および曲げ強度は著しく低下した。また焼結助剤成分が7.0wt%を超えると焼成過程で充分なガラス相が生成するので焼結体の緻密化は達成されたが、その反面、低熱伝導相である粒界相の増加により熱伝導率は60w/(m・K)以下に低下した。
実施例1で作製したβ化率が30%以上の窒化ケイ素質粉末に3wt%MgO、1wt%Y2O3の焼結助剤を添加した混合粉末を作製した。次いで、アミン系の分散剤を2wt%添加したトルエン・ブタノール溶液を満たしたボールミルの樹脂製ポット中に作製した混合粉末および粉砕媒体の窒化ケイ素製ボールを投入し、48時間湿式混合した。次いで、前記ポット中の混合粉末100重量部に対しポリビニル系の有機バインダーを15重量部および可塑剤(ジメチルフタレ−ト)を5重量部添加し、次いで48時間湿式混合しシート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーを調整後、ドクターブレード法によりグリーンシート成形した。次いで、成形したグリーンシートを空気中400〜600℃で2〜5時間加熱することにより、予め添加し有機バインダー成分を十分に脱脂(除去)した。次いで脱脂体を0.9MPa(9気圧)の窒素雰囲気中で1850℃×5時間の焼成を行い、次いで同窒素雰囲気中で1900℃×24時間の熱処理を行い、その後室温に冷却した、得られた窒化ケイ素質焼結体シートに機械加工を施し縦50mm×横50mm×厚さ0.6mmの半導体装置用の基板を製造した。
この窒化ケイ素質焼結体製基板を用いて図2に示す回路基板を作製した。図2において、回路基板1は作製した前記縦50mm×横50mm×厚さ0.6mmの寸法の窒化ケイ素質焼結体製基板2の表面に銅製回路板3を設け、前記基板2の裏面に銅板4をろう材5により接合して構成されている。
この回路基板1に対し、3点曲げ強度の評価および耐熱サイクル試験を行った。その結果、曲げ強度が600MPa以上と大きく、回路基板1の実装工程における締め付け割れおよびはんだ付け工程時の熱応力に起因するクラックの発生する頻度がほぼ見られなくなり、回路基板を使用した半導体装置の製造歩留まりを大幅に改善できることが実証された。また、耐熱サイクル試験は、−40℃での冷却を20分、室温での保持を10分および180℃における加熱を20分とする昇温/降温サイクルを1サイクルとし、これを繰り返し付与し、基板部にクラック等が発生するまでのサイクル数を測定した。その結果、1000サイクル経過後においても窒化ケイ素質焼結体製基板2の割れや銅製回路板2の剥離はなく、優れた耐久性と信頼性を兼備することが確認された。また、1000サイクル経過後においても耐電圧特性の低下は発生しなかった。
2:窒化ケイ素質焼結体基板
3:銅製回路板
4:銅板
5:ろう材
Claims (5)
- α型窒化ケイ素質粉末原料を窒素あるいは窒素/水素の非酸化性雰囲気下にて1800〜1950℃で熱処理することにより、β分率が30〜100%であり、酸素量が0.5wt%未満であり、平均粒子径が2〜10μmであり、アスペクト比が10以下であり、粒子の長軸方向と平行に溝部が形成された柱状粒子となしたβ型窒化ケイ素質粉末を含むことを特徴とする窒化ケイ素質粉末。
- Fe含有量及びAl含有量がそれぞれ100ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素質粉末。
- α型窒化ケイ素質粉末原料を窒素あるいは窒素/水素の非酸化性雰囲気下にて1800〜1950℃で熱処理することにより、β分率が30〜100%で、酸素量が0.5wt%未満、Fe含有量及びAl含有量がそれぞれ100ppm以下、平均粒子径が2〜10μmの範囲にあり、アスペクト比が10以下であり、粒子の長軸方向と平行に溝部が形成された柱状粒子を含むβ型窒化ケイ素質粉末1〜50重量部と、平均粒子径が0.2〜4μmの範囲にあるα型窒化ケイ素粉末99〜50重量部と、焼結助剤とからなる焼結体であって、当該焼結体中にMgと、La,Y及びYbを含む希土類元素(RE)から選択された少なくとも1種の希土類元素を含有しており、前記Mgは酸化マグネシウム(MgO)換算し、La,Y及びYbを含む希土類元素(RE)から選択された少なくとも1種の元素を酸化物(RExOy)換算し、これらの酸化物換算含有量の合計が0.6〜7wt%、かつ(MgO/RExOy)で表される重量比が1〜70の範囲で含有させてなることを特徴とする窒化ケイ素質焼結体。
- 常温における熱伝導率が100〜300W/(m・K)であり、常温における3点曲げ強度が600〜1500MPaであることを特徴とする高強度・高熱伝導性に富んだ請求項3に記載の窒化ケイ素質焼結体。
- 請求項3または4に記載の窒化ケイ素質焼結体に回路板を接合して構成されることを特徴とする高強度・高熱伝導性に富んだ電子部品用回路基板。
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