JP4348659B2 - 高熱伝導窒化ケイ素質焼結体およびそれを用いた基板、半導体素子用回路基板 - Google Patents

高熱伝導窒化ケイ素質焼結体およびそれを用いた基板、半導体素子用回路基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い強度と熱伝導率を有する窒化ケイ素質焼結体に関するものであり、半導体用基板、発熱素子用ヒ−トシンク等の電子部品用部材や、一般機械器具用部材、溶融金属用部材、熱機関用部材等の構造用部材として好適な窒化ケイ素質焼結体である。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素質焼結体は、高温強度特性、耐摩耗性等の機械的特性に加え、耐熱性、低熱膨張性、耐熱衝撃性、金属に対する耐食性に優れているので、従来からガスタ−ビン用部材、エンジン用部材、製鋼用機械部材、溶融金属の耐溶部材等の各種構造用部材に用いられている。また、高い絶縁性を利用して電気絶縁材料として使用されている。
【0003】
近年、高周波トランジスタ、パワーIC等の発熱量の大きい半導体素子の発展に伴い、電気絶縁性に加えて放熱特性を得ることができるように高い熱伝導率を有するセラミックス基板の需要が増加している。このようなセラミックス基板として、窒化アルミニウム基板が用いられているが、機械的強度や破壊靭性等が低く、基板ユニットの組立て工程での締め付けによって割れを生じたり、また、シリコン(Si)半導体素子を実装した回路基板では、Si金属と基板との熱膨張差が大きいため、熱サイクルにより窒化アルミニウム基板にクラックや割れを招いて実装信頼性が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、窒化アルミニウム基板より熱伝導率は劣るものの、熱膨張率がSiに近似すると共に、機械的強度、破壊靭性、耐熱疲労特性に優れる高熱伝導窒化ケイ素質焼結体からなる基板が注目され、種々の提案が行われている。
【0005】
例えば、特開平4−175268号には、実質的に窒化ケイ素からなり、不純物として含有されるアルミニウム(Al)および酸素(O)が共に3.5重量%以下であり、密度が3.15g/cm3以上であって、40W/(m・K)以上の熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体が記載されている。
【0006】
また、特開平9−30866号には、85〜99重量%のβ型窒化ケイ素粒と残部が酸化物または酸窒化物の粒界相とから構成され、粒界相中にMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Ybのうちから選ばれる1種または2種以上の金属元素を0.5〜10重量%含有すると共に、粒界相中のAl原子含有量が1重量%以下であり、気孔率が5%以下でかつβ型窒化ケイ素粒のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が10〜60体積%である窒化ケイ素質焼結体が記載されている。
【0007】
また、日本セラミックス協会1996年年会講演予稿集1G11、同1G12、特開平10−194842号には、原料粉末に柱状の窒化ケイ素粒子またはウイスカーを予め添加し、ドクターブレード法あるいは押出成形法を用いて、この粒子を2次元的に配向させた成形体を得た後、焼成することにより熱伝導に異方性を付与して特定方向の熱伝導率を高めた窒化ケイ素質焼結体が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特開平4−175268号では、40W/(m・K)以上の熱伝導率が得られているが、なお一層熱伝導率を高めるとともに機械的強度に優れる材料が望まれているという課題がある。また、特開平9−30866号、特開平10−194842号等では、窒化ケイ素質焼結体中に巨大な柱状粒子を得るために、成長核となる種結晶あるいはウィスカ−を予め添加した上に、2000℃以上、100気圧以上の窒素雰囲気下の高温・高圧での焼成が不可欠である。したがって、ホットプレスあるいはHIP等の特殊な高温・高圧設備が必要となり経済的な負担がかかる問題がある。また、窒化ケイ素粒子を配向させた成形体を得るための成形プロセスが複雑であるため、生産性ならびに量産性が著しく低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に対処してなされたものであり、種結晶あるいはウィスカ−を添加することなく2000℃以上、100気圧以上での高温・高圧焼成といったコストの高い焼成法を必要とせず、機械的強度に優れるとともに、熱伝導の方向に異方性を持たず、かつなお一層熱伝導率を高めた高熱伝導窒化ケイ素質焼結体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の目的を達成するため、窒化ケイ素質焼結体中の不純物元素であり熱伝導率低下の要因となるアルミニウム(Al)および酸素(O)の含有量を厳選することにより70W/(m・K)以上の熱伝導率が安定して得られ、焼結体中の窒化ケイ素粒子の性状を特定することにより十分な曲げ強度が得られることを見出した。また、炭素(C)の含有量が熱伝導率に影響を及ぼすことを確認し、C含有量を最適化することにより、さらに、焼結助剤をMgO基として焼結性を向上させ周期律表第3a族元素(RE)の酸化物を特定範囲に含有させることにより一層熱伝導率を高められることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体は、酸素含有量が0.3〜1.5wt%である窒化ケイ素粉末に、マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算して、Y、La、Ce、Gd、Dy、Ybのうち少なくとも1種を酸化物(RExOy)換算して、その合計量が0.6〜7.0wt%、MgO/RExOyで表される重量比が1〜70の割合で焼結助剤を含有させて焼結したものであって、窒化ケイ素粒子とその周囲の粒界相からなり、前記窒化ケイ素粒子と粒界相に不純物として含まれるアルミニウム(Al)が0.1wt%以下、前記窒化ケイ素粒子と粒界相に含まれる酸素(O)が2.5wt%以下となし、β型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が、10体積%未満、且つ前記β型窒化ケイ素粒子のアスペクト比が15以下であり、常温における熱伝導率が70W/(m・K)以上、常温における4点曲げ強度が600MPa以上であることを特徴とする。
【0014】
上記本発明の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体において、炭素(C)が2.0wt%以下含有されることが望ましい。また、高熱伝導窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が10体積%未満であること、焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子のアスペクト比が15以下であることが望ましい。
【0015】
上記本発明の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体においては、窒化ケイ素粒子相とその周囲の粒界相とから構成される。含有される酸素(O)は、これら2相にそれぞれ含有されるが、窒化ケイ素粒子中の酸素含有量は少ない程望ましく、具体的には0.6wt%以下、さらに望ましくは0.3wt%以下が望ましい。
【0016】
さらに、マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算して、周期律表第3a族元素(RE)を酸化物(RExOy)換算して、その合計量が0.6〜7.0wt%の割合で含有すること、およびMgO/RExOyで表される重量比が1〜70の割合で含有することが好ましい。ここで、周期律表第3a族元素としては、Y、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。さらにはY、La、Ce、Gd、Dy、Ybであることが望ましい。
【0017】
【作用】
窒化ケイ素質焼結体において不純物として存在する異種イオン、特にアルミニウム(Al)、酸素(O)はフォノン散乱源となり熱伝導率を低減させる。
【0018】
窒化ケイ素質焼結体は、窒化ケイ素粒子相とその周囲の粒界相とから構成され、アルミニウムおよび酸素は、これら2相にそれぞれ含有される。アルミニウムは窒化ケイ素の構成元素であるSiのイオン半径に近いため窒化ケイ素粒子内に容易に固溶する。よって窒化ケイ素粒子自身の熱伝導率が低下し、結果として焼結体の熱伝導率は著しく低下する。
【0019】
また、酸素は焼結助剤として主に酸化物を添加するため、その多くは粒界相成分として存在する。焼結体の高熱伝導化を達成するには、主相の窒化ケイ素粒子に比して熱伝導率が低い粒界相の量を低減することが肝要であり、焼結助剤成分の添加量を相対密度85%以上の焼結体が得られる量を最小限とし、酸素量を低減させることが必要である。ここで焼結助剤をMgO基とした場合、その焼結性は他の酸化物を用いた場合よりも優れるため助剤量をより少なくすることが可能となる。これに加えて、含有酸素量が少ない窒化ケイ素粉末を原料とした場合も、粒界相成分に含まれる酸素量が低減でき、これにより粒界相量が減少することになり焼結体の高熱伝導化が達成される。含有酸素量の少ない窒化ケイ素粉末を使用する場合、焼成過程で生成するSiO2成分が減少し難焼結性となるが、焼結助剤をMgO基とすることにより緻密質の焼結体を得ることができる。いずれの場合においても焼結体中の酸素量を低下することによって低熱伝導相である粒界相量を低減させ、熱伝導率を飛躍的に向上させることが可能である。したがって70W/(m・K)以上の熱伝導率を得るためには、窒化ケイ素質焼結体中のアルミニウム(Al)が0.2wt%以下かつ酸素(O)が3.0wt%以下であることが必要不可欠である。
【0020】
また、窒化ケイ素質焼結体中の炭素(C)含有量が2.0wt%を超えると、焼結阻害により密度が低下し、かつ部分的な黒化が顕著となり均一な色調が得られず外観の品質が劣化する。しかしながら、成形体中にある程度Cが残留していることが焼結体中の酸素量を低減させるのに有効である。すなわち、残留している少量のCは、焼結過程において窒化ケイ素原料中の酸素や焼結助剤の酸化物として存在する酸素を還元してCOガスやCO2ガスとして除去する作用があり、結果として焼結体中の酸素が低減し、C自身も脱酸素過程で消費される。このため焼結体中ではこれらCやOの含有量を飛躍的に低減することができ熱伝導率を向上させ得る。焼結体中のC含有量は好ましくは0.5wt%以下、より好ましくは0.3wt%以下である。
【0021】
窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が、10体積%以上では、焼結体の熱伝導率は向上するものの、組織中に導入された粗大粒子が破壊の起点として作用するため破壊強度が著しく低下し、600MPa以上の曲げ強度が得られない。また、β型窒化ケイ素粒子のアスペクト比が15を超えると600MPa以上の曲げ強度を得られない。好ましいアスペクト比は10以下である。また、好ましい曲げ強度は700MPa以上である。
【0022】
窒化ケイ素粒子内に含有される酸素は、この部分で熱伝導媒体であるフォノンの散乱を起し、窒化ケイ素粒子自身、ひいては窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率を低下させる。したがって、粒子内に含有される酸素は少ない程望ましく、具体的には0.5wt%以下、さらに好ましくは0.3wt%以下が望ましい。
【0023】
マグネシウムおよび周期律表第3a族元素のイットリウム(Y)は、焼結助剤として用いられ、窒化ケイ素原料粉末の緻密化に有効である。これらの元素は、窒化ケイ素質焼結体を構成する第1ミクロ組織成分である窒化ケイ素結晶に対する固溶度が小さいので、窒化ケイ素結晶、ひいては窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率を高い水準に保つことができる。
【0024】
イットリウム同様に窒化ケイ素結晶に対する固溶度が小さく、焼結助剤として作用する元素には、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の希土類元素が挙げられ、なかでも温度、圧力が高くなり過ぎずに焼成ができる点でLa、Ce、Gd、Dy、Ybが好ましい。
【0025】
マグネシウムを酸化マグネシウム換算して、周期律表第3a族元素を酸化物換算して、その合計量が0.6wt%未満では、焼結時の緻密化作用が不十分となり、相対密度が95%未満となり好ましくない。一方7.0wt%を超えると、窒化ケイ素質焼結体の第2のミクロ組織成分である熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり、焼結体の熱伝導率が70W/(m・K)未満となる。これらの酸化物は合計量で0.6〜4.0wt%含有することがより好ましい。なお、周期律表第3a族元素は1種または2種以上添加することができる。
【0026】
酸化マグネシウム(MgO)と、周期律表第3a族元素の酸化物(RExOy)の重量比MgO/RExOyが1未満では、粒界ガラス相中の希土類酸化物の割合が増大するため焼結過程で液相線温度が上昇し難焼結性となり緻密な焼結体が得られない。また、MgO/RExOyが70を超えると焼成時におけるMgの拡散を抑制することができず焼結体表面に色むらを生じる。MgO/RExOyが1〜70の範囲にある場合、1650〜1850℃の焼結温度で成形体を予備焼成した後、1850〜1900℃の熱処理を加えると、高熱伝導化の効果が著しく120W/(m・K)を超えるものが得られる。
【0027】
本発明の窒化ケイ素質焼結体からなる基板は、高強度・高靭性ならびに高熱伝導率の特性を生かして、パワ−半導体用基板、マルチチップモジュ−ル用基板などの各種基板、あるいはペルチェ素子用熱伝板、各種発熱素子用ヒ−トシンクなどの電子部品用部材に好適である。
【0028】
本発明材を半導体素子用基板に適用した場合、半導体素子の作動に伴う繰り返しの熱サイクルによって基板にクラックが発生することが少なく、耐熱衝撃性ならびに耐熱サイクル性が著しく向上し、耐久性ならびに信頼性に優れたものとなる。また、高出力化および高集積化を指向する半導体素子を搭載した場合でも、熱抵抗特性の劣化が少なく、優れた放熱特性を発揮する。さらに、優れた機械的特性により本来の基板材料としての機能だけでなく、それ自体が構造部材を兼ねることができるため、基板ユニット自体の構造を簡略化できる。
【0029】
また、本発明の窒化ケイ素質焼結体は、上述の電子部品用部材以外に熱衝撃および熱疲労の耐熱抵抗特性が要求される材料に幅広く利用できる。構造用部材として、各種の熱交換器部品や熱機関用部品、アルミニウムや亜鉛等の金属溶解の分野で用いられるヒーターチューブ、ストークス、ダイカストスリーブ、溶湯攪拌用プロペラ、ラドル、熱電対保護管等に適用できる。また、アルミニウム、亜鉛等の溶融金属めっきラインで用いられるシンクロール、サポートロール、軸受、軸等に適用することにより、急激な加熱や冷却に対して割れづらい部材となり得る。また、鉄鋼あるいは非鉄の加工分野では、圧延ロール、スキーズロール、ガイドローラ、線引きダイス、工具用チップ等に用いれば、被加工物との接触時の放熱性が良好なため、耐熱疲労性および耐熱衝撃性を改善することができ、これにより摩耗が少なく、熱応力割れを生じにくくできる。
【0030】
さらに、スパッタターゲット部材にも適用でき、例えば磁気記録装置のMRヘッドやGMRヘッドなどの用いられる電気絶縁膜や、熱転写プリンターのサーマルヘッドなどに用いられる耐摩耗性皮膜の形成に好適である。スパッタして得られる被膜は、本質的に高熱伝導特性を持つとともに、スパッタレートも十分高くでき、被膜の電気的絶縁耐圧が高いものとなる。このため、このスパッタターゲットで形成したMRヘッドやGMRヘッド用の電気絶縁性被膜は、高熱伝導ならびに高耐電圧の特性を有するので、素子の高発熱密度化や絶縁性被膜の薄膜化が図れる。また、このスパッタターゲットで形成したサ−マルヘッド用の耐摩耗性被膜は、窒化ケイ素本来の特性により耐摩耗性が良好であることはもとより、高熱伝導性のため熱抵抗が小さくできるので印字速度を高めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
第1の実施例
酸素含有量が0.3〜1.5wt%で、平均粒径0.5μmの窒化ケイ素(Si3N4)粉末に、焼結助剤として、平均粒径0.2μmの酸化マグネシウム(MgO)粉末、平均粒径0.2〜2.0μmの希土類酸化物粉末の中から選ばれる1種ないし2種の焼結助剤用粉末の所定量を添加し、適量の分散剤を加えエタノール中で粉砕、混合した。ついで、真空乾燥後、篩を通して造粒し、プレス機により直径20mm×厚さ10mmおよび直径100mm×厚さ15mmのディスク状の成形体を作製し、これを1750〜1900℃、9気圧の窒素ガス雰囲気中で5時間焼成した。
【0032】
得られた窒化ケイ素質焼結体から、直径10mm×厚さ3mmの熱伝導率および密度測定用の試験片、縦3mm×横4mm×長さ40mmの4点曲げ試験片を採取した。密度はマイクロメ−タによる寸法測定と重量測定の結果から求めた。熱伝導率はレーザーフラッシュ法により常温での比熱および熱拡散率を測定し熱伝導率を算出した。4点曲げ強度は常温にてJIS R1606に準拠して測定を行った。
【0033】
窒化ケイ素粒子の体積%は、焼結体をフッ化水素酸にて粒界ガラス相を溶出することにより、窒化ケイ素粒子を個々に取り出しSEM観察して求めた。本発明では、面積%の値を体積%として評価した。窒化ケイ素質焼結体中のアルミニウム(Al)含有量は誘導プラズマ発光分析法(略称ICP法)により、酸素(O)および炭素(C)含有量は赤外線吸収法により測定した。
【0034】
本実施例に係わる結果を表1および表2に示す。なお、試料No.3、5〜11は本発明例であり、試料No.1、2、4と31〜36は比較例である。なお、表2中の「XX」は焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合(体積%)を示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004348659
【0036】
【表2】
Figure 0004348659
【0037】
表1および表2の試料No.1〜11の結果から、窒化ケイ素質焼結体中のアルミニウム(Al)が0.2wt%以下でかつ酸素(O)が3.0wt%以下含有するものは、常温における熱伝導率が70W/(m・K)以上、常温における4点曲げ強度が600MPa以上が得られた。また、本発明例の試料No.3、5〜11の結果から、Alが0.1wt%以下、Oが2.5wt%以下含有するものは、熱伝導率100W/(m・K)以上が得られた。さらに、Alが0.05wt%以下、Oが2.2wt%以下含有するものは、熱伝導率150W/(m・K)以上が得られた。従来技術の熱伝導率40W/(m・K)以上のレベルに比べると、熱伝導率を飛躍的に高めることができた。
【0038】
また、本発明例の試料No.3、5〜11では、焼結助剤として、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)換算して、周期律表第3a族元素から選択したY、La、Ce、Gd、Dy、Ybのうち少なくとも1種を酸化物(RExOy)換算して、その合計量が0.6〜7.0wt%、MgO/RExOyで表される重量比が1〜70の割合で含有するものは、熱伝導率が70W/(m・K)以上、4点曲げ強度が600MPa以上を得られた。
【0039】
また、比較例試料No.31〜36の結果から、窒化ケイ素質焼結体中のAlが0.2wt%を超えるもの、またOが3.0wt%を超えるものは、常温における熱伝導率が70W/(m・K)未満となった。以上、常温における4点曲げ強度が600MPa以上が得られた。
【0040】
窒化ケイ素質焼結体中の炭素(C)が2.0wt%を超えると、熱伝導率が70W/(m・K)未満となった。さらに、窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が、10体積%以上になると破壊強度は著しく低下し600MPa以下の材料強度となった。
【0041】
さらに、焼結助剤成分が0.6wt%未満では、焼結体の密度は低く、このため熱伝導率および曲げ強度は著しく低下した。また、焼結助剤成分が7.0wt%を超えると、焼成過程で充分なガラス相が生成するため焼結体の緻密化は達成されたが、その反面、低熱伝導相の増加により熱伝導率は60W/(m・K)以下に低減した。
【0042】
第2の実施例
本発明の窒化ケイ素粉末に所定量の焼結助剤を添加した混合粉末を、アミン系の分散剤を所定量添加したトルエン・ブタノール溶液中に挿入し、樹脂製ポットならびに窒化ケイ素製ボールを用いて48時間湿式混合した後、ポリビニル系の有機バインダーおよび可塑剤を加え、24時間混合しシート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーを調整後、ドクターブレード法によりグリーンシートを得た。ついで、グリーンシートを空気中400〜600℃で1〜2時間加熱して、予め添加していた有機バインダー成分を十分に除去し脱脂を行った。この脱脂体を窒素雰囲気、1850℃、5時間、9気圧の焼成を行った後、1900℃、窒素雰囲気、24時間、9気圧の熱処理を加え、窒化ケイ素質焼結体シートを得た。これに機械加工を施し寸法50mm×50mm×厚さ0.8mmの半導体装置用の基板を製造した。
【0043】
この窒化ケイ素質焼結体製基板を用いて図1に示すような回路基板を作製した。図1において、本発明例の回路基板1は窒化ケイ素質焼結体製基板2の表面に銅回路板3を、裏面に銅板4をろう材5により接合して構成される。この回路基板に対し、4点曲げ強度の評価および耐熱サイクル試験を行った。
【0044】
本発明例の窒化ケイ素質焼結体製回路基板によれば、曲げ強度が600MPa以上と大きく、回路基板の実装工程における締め付け割れが発生する頻度が抑制され、回路基板を使用した半導体装置の製造歩留まりを大幅に改善することが実証された。
【0045】
耐熱サイクル試験は、−40℃での冷却を20分、室温での保持を10分および180℃における加熱を20分とする昇温・降温サイクルを1サイクルとし、これを繰り返し付与し、基板部にクラック等が発生するまでのサイクル数を測定した。結果、1000サイクル経過後においても、窒化ケイ素質基板の割れや金属回路板の剥離はなく、優れた耐久性と信頼性を兼備することが確認された。また、1000サイクル経過後においても耐電圧特性の低下は発生しなかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明の窒化ケイ素質焼結体は、本来有する高強度・高靭性に加えて高い熱伝導率が付与されるので、半導体素子用基板として用いた場合、半導体素子の作動に伴う繰り返しの熱サイクルによって基板にクラックが発生することが少なく、耐熱衝撃性ならびに耐熱サイクル性が著しく向上し、耐久性ならびに信頼性に優れた基板材料となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例の窒化ケイ素質焼結体製回路基板の断面図を示す。
【符号の説明】
1 回路基板、 2 基板、 3 銅回路板、 4 銅板、 5 ろう材

Claims (6)

  1. 酸素含有量が0.3〜1.5wt%である窒化ケイ素粉末に、マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算して、Y、La、Ce、Gd、Dy、Ybのうち少なくとも1種を酸化物(RExOy)換算して、その合計量が0.6〜7.0wt%、MgO/RExOyで表される重量比が1〜70の割合で焼結助剤を含有させて焼結したものであって、窒化ケイ素粒子とその周囲の粒界相からなり、前記窒化ケイ素粒子と粒界相に不純物として含まれるアルミニウム(Al)が0.1wt%以下、前記窒化ケイ素粒子と粒界相に含まれる酸素(O)が2.5wt%以下となし、β型窒化ケイ素粒子のうち短軸径5μm以上を持つものの割合が、10体積%未満、且つ前記β型窒化ケイ素粒子のアスペクト比が15以下であり、常温における熱伝導率が70W/(m・K)以上、常温における4点曲げ強度が600MPa以上であることを特徴とする高熱伝導窒化ケイ素質焼結体。
  2. 前記窒化ケイ素粒子に含まれる酸素(O)は0.6wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体。
  3. 炭素(C)が2.0wt%以下含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体。
  4. 1750〜1900℃で焼結したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の高熱伝導窒化ケイ素質焼結体からなることを特徴とする基板。
  6. 請求項5に記載の基板の表面に銅回路板を接合し、裏面に銅板を接合してなることを特徴とする半導体素子用回路基板。
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