JP7201103B2 - 板状の窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
なお、そもそも、非特許文献1によれば、MDシミュレーションから算出されるβ型窒化ケイ素の理論熱伝導率はa軸方向が170W/m・K、c軸方向が450W/m・Kと報告されており、高熱伝導な長軸(c軸)方向の粒径を無視して、短軸径(a軸方向の粒径)を規定することの意味は不明瞭である。
なお、上記の特許文献2から特許文献13においては、焼結過程における酸素揮発量および重量減少量は全く考慮されておらず、焼結体中の酸素含有量も記載されていない。
本発明は、
(I)a)β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m2/g以上13.0m2/g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の第一の窒化ケイ素粉末40~94重量部と、
b)β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m2/g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である第二の窒化ケイ素粉末60~6重量部と
を含む窒化ケイ素原料に、
c)焼結助剤として、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が0.40≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.4を満足するような配合比で、アルカリ土類金属酸化物および有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物を、窒化ケイ素原料と焼結助剤の合計重量を基準として3.2~7.0重量%含む
出発組成物を調製し、
(II)出発組成物からシート成形プロセスによりグリーンシートを作製し、
(III)グリーンシートを脱脂し、その後、
(IV)窒素含有ガス圧力が0.15MPa以上3MPa以下の加圧雰囲気下、最高保持温度が1790℃以上1910℃以下の温度範囲に保持して焼結することにより、
(V)板状の窒化ケイ素質焼結体を得ること、
ここで、得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であり、相対密度が98%以上であること
を特徴とする板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法(以下、方法Aともいう)を提供する。
本発明の一態様においては、算術平均粗さRaが0.05μm以上0.5μm以下に研磨された表面にX線を照射した際に得られる窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素の(200)面の回折強度I(200)および(210)面の回折強度I(210)の平均値{I(200)+I(210)}/2と(101)面の回折強度I(101)との比{I(200)+I(210)}/{2×I(101)}が1.10以上1.50以下である板状の窒化ケイ素質焼結体を製造することを特徴とする。
窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が10μmを超える粒子の個数が、切断面1mm2当たりに1200個以上10000個以下であって、全窒化ケイ素粒子の面積を基準として、長軸径が10μmを超える粒子の面積分率が6.5%以上39%以下である板状の窒化ケイ素質焼結体を製造することを特徴とする。
焼結助剤として、酸化マグネシウムと希土類金属酸化物との重量比が0.42≦酸化マグネシウム/希土類金属酸化物≦1.1を満足するような配合比で、酸化マグネシウム、有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物および二酸化シリコンを添加し、焼結助剤の添加量は、窒化ケイ素粉末と焼結助剤の合計重量を基準として4.0~6.5重量%とすること、
シート成形プロセスにより作製された板状の成形体(グリーンシート)を脱脂し、その後、窒素含有ガス圧力が0.15MPa以上0.9MPa以下の加圧雰囲気下、最高保持温度が1820℃以上1910℃以下の温度範囲で、当該最高保持温度にて6時間以上20時間以下保持して焼結すること、
得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、実測マグネシウム含有量と実測希土類金属含有量との比率が0.07≦実測マグネシウム含有量/実測希土類金属含有量≦0.75であって、前記の実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.6重量%以上4.0重量%以下であり、実測酸素含有量が1.6重量%以上2.6重量%以下であり、相対密度が98%以上である、
ことを特徴とする。
本発明の一態様においては、前述の「方法A」(段落0020)に規定された第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末とを含み、β分率が7%以上64%以下、酸素含有量が0.74重量%以上1.95重量%以下、BET法による比表面積が6.3m2/g以上12.8m2/g以下、粒度分布における平均粒子径が0.66μm以上1.5μm以下であり、得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5~1.2μmの範囲(第一ピーク)と1.1~3.8μmの範囲(第二ピーク)にあって、該第二のピークは該第一のピークよりも0.5~3.0μm大きな値であることを特徴とする板状窒化ケイ素質焼結体製造用の窒化ケイ素粉末が提供される。
この窒化ケイ素粉末配合物においても、「方法A」の変形として上述した態様と同様の態様及びその特徴を、窒化ケイ素粉末配合物に適用できる限りにおいて、有することができる。
本発明の一態様においては、前述の「方法A」(段落0020)に規定された特徴を有する、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末と焼結助剤とを含む板状窒化珪素質焼結体製造用の原料粉末組成物が提供される。
この原料粉末組成物においても、「方法A」の変形として上述した態様と同様の態様及びその特徴を、原料粉末組成物に適用できる限りにおいて、有することができる。
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体は、焼結体としての実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量(希土類金属の有効イオン半径は87pm以上のもの)との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であって、
実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量の実測値が1.5重量%以上4.5重量%以下であり、
相対密度が98%以上であることを特徴とする。
この板状の窒化ケイ素質焼結体は、シート成形プロセスにより作製された板状の成形体を雰囲気ガス圧力3MPa以下で焼結して製造することができる。
焼結体としての実測酸素含有量が1.3重量%以上2.8重量%以下であり、
焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が10μmを超える粒子の個数が切断面1mm2当たりに1200個以上10000個以下である板状の窒化ケイ素質焼結体であることを特徴とする。
また、本発明の一態様においては、上記の各段落に記載された板状の窒化ケイ素質焼結体を用いる基板が提供される。本発明によって得られるこれらの窒化ケイ素質焼結体基板は、絶縁性、熱伝導性に優れることより絶縁基板または回路基板に好適である。
本発明は、一つの側面において、
(I)a)β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m2/g以上13.0m2/g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の第一の窒化ケイ素粉末40~94重量部と、
b)β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m2/g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である第二の窒化ケイ素粉末60~6重量部と
を含む窒化ケイ素原料に、
c)焼結助剤として、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が0.40≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.4を満足するような配合比で、アルカリ土類金属酸化物および有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物を、窒化ケイ素原料と焼結助剤の合計重量を基準として3.2~7.0重量%含む
出発組成物を調製し、
(II)出発組成物からシート成形プロセスによりグリーンシートを作製し、
(III)グリーンシートを脱脂し、その後、
(IV)窒素含有ガス圧力が0.15MPa以上3MPa以下の加圧雰囲気下、最高保持温度が1790℃以上1910℃以下の温度範囲に保持して焼結する
(V)ことにより、板状の窒化ケイ素質焼結体を得ること、
ここで、得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であり、相対密度が98%以上であること
を特徴とする板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法にある。
高い熱伝導率と優れた機械的強度を両立させ、高い熱伝導率と優れた機械的強度を併せ持つ窒化ケイ素質焼結体を得るためには、出発原料となる窒化ケイ素粉末の選択が非常に重要であり、原料粉末の性状を高度に制御する必要がある。即ち、本発明においては、特定の比表面積と酸素含有量を有するα型の第一の窒化ケイ素粉末と、第一の窒化ケイ素粉末よりも比表面積が小さくて、平均粒子径が大きなβ分率60以上100%以下の第二の窒化ケイ素粉末を配合した原料粉末を用いる。
第一の窒化ケイ素粉末は、β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m2/g以上13.0m2/g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の窒化ケイ素粉末である。
これに対して、第二の窒化ケイ素粉末は、β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m2/g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合は、第一の窒化ケイ素粉末が40重量部~94重量部、第二の窒化ケイ素粉末が60重量部~6重量部である。第二の窒化ケイ素粉末の配合割合が6重量部未満であると、主としてβ型粒子より成る窒化ケイ素粉末を添加した効果が無く、焼結体の微細構造を均質化するという作用が低下するためか、機械的特性は良好であるものの、熱伝導率が低下するので好ましくない。第二の窒化ケイ素粉末の配合割合が60重量部を超えると、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末とを配合した効果が見られなくなり、焼結速度が低下する。また、高密度な窒化ケイ素質焼結体が得られたとしても、熱伝導率はあまり低下しないものの、曲げ強度と破壊靱性値が低下して、機械的特性が悪化するので好ましくない。したがって、第二の窒化ケイ素粉末の配合割合は60重量部~6重量部であることが好ましく、50重量部~10重量部であることがより好ましく、さらに45重量部~15重量部であることが特に好ましくい。
本発明は、一つの側面において、第一の窒化ケイ素粉末を40重量部~94重量部、第二の窒化ケイ素粉末を60重量部~6重量部の割合で配合した、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末との配合物であって、β分率が7%以上64%以下、酸素含有量が0.74重量%以上1.95重量%以下、BET法による比表面積が6.3m2/g以上12.8m2/g以下、粒度分布における平均粒子径が0.66μm以上1.5μm以下であり、得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、該ピークのピークトップが0.5~1.2μmの範囲(第一ピーク)と1.1~3.8μmの範囲(第二ピーク)にあって、該第二のピークは該第一のピークよりも0.5~3.0μm大きな値である粉末配合物を提供する。このような特性を有する第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末との配合物は板状窒化ケイ素質焼結体製造用の原料粉末として好適に使用される。なお、第二ピーク(粗粒側)のピークトップにおける頻度は、第一ピーク(微粒側)のピークトップにおける頻度よりも低く、平均粒子径は体積基準の粒度分布における平均粒子径である。
窒化ケイ素の焼結においては、焼結過程で生成するシリケート系融液相への窒化ケイ素粒子の溶解と析出を通じて、緻密化が進行する。α型の窒化ケイ素粒子は、β型の窒化ケイ素粒子よりもシリケート系融液相への溶解速度が速いため、この窒化ケイ素粉末配合物におけるβ分率は7%以上64%以下であることが望ましい。β分率が7%未満では、焼結体の微細構造(柱状のβ型窒化ケイ素粒子の短軸径、長軸径、アスペクト比などの分布)を制御することが難しくなる。β分率が64%を超えると焼結速度が低下し、高密度な窒化ケイ素質焼結体を得ることが難しくなる。また、気孔率が増加する。
前記のシリケート系融液相が生成するためには、窒化ケイ素粉末が含有している酸素の存在が必須であり、窒化ケイ素粉末配合物において、酸素含有量0.74重量%未満では、十分な量の融液相が生成せず、緻密化が阻害され、開気孔率が増大すると共に最大開口径が大きくなる恐れがある。一方、酸素含有量が1.95重量%を超えると、融液相の体積が多過ぎ、焼結後に粒界相として残存するため、熱伝導率と機械的特性(強度、破壊靱性)の両方を低下させる恐れがある。特に熱伝導率の低下が著しい恐れがある。酸素含有量のより好ましい範囲は0.9重量%以上1.8重量%以下である。
窒化ケイ素粉末配合物において、緻密化を支配する重要な粉体特性であるBET法による比表面積は6.3m2/g以上12.8m2/g以下である。BET法による比表面積が6.3m2/g未満の場合には焼結の駆動力が低下するので、焼結助剤の添加量を7.0重量%を超える量にしない限り高密度な窒化ケイ素質焼結体が得られなくなる恐れがある。一方、焼結助剤の添加量が7.0重量%を超えると熱伝導率が低下するので好ましくない。BET法による比表面積が12.8m2/gを超えると、グリーン密度が低下して成形が難しくなるばかりでなく、焼結時に反り、うねり等の変形が大きくなって、寸法精度に悪影響を及ぼすので好ましくない。BET法による比表面積のより好ましい範囲は8.5m2/g以上12.0m2/g以下である。
窒化ケイ素粉末配合物は、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径(D50)が0.66μm以上1.5μm以下である。体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.66μm未満の場合には、塗工用スラリーの調製工程で粒子が凝集して、同様にグリーンシートの成形が難しくなる他、得られる窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率が低下する傾向にある。一方、BET法による比表面積6.3m2/gの窒化ケイ素粉末の球相当径は0.30μmであり、窒化ケイ素粉末配合物のレーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が1.5μmを超える場合には、凝集指標(平均粒子径と比表面積から算出される球相当径との比率)が5.0以上となり、凝集が強すぎて、得られる窒化ケイ素質焼結体の微細組織が不均一となるので好ましくない。さらに、体積基準の粒度分布における平均粒子径(D50)が1.5μmを超えると、焼結速度が遅くなるばかりでなく、得られる窒化ケイ素質焼結体の機械的特性に悪影響を与えるので好ましくない。体積基準の粒度分布における平均粒子径(D50)のより好ましい範囲は0.7μm以上1.2μm以下である。
窒化ケイ素粉末配合物の粒度分布測定から得られる頻度分布曲線は、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末との配合に起因する二つのピークを有し、該ピークのピークトップが0.5~1.2μmの範囲(第一ピーク)と1.1~3.8μmの範囲(第二ピーク)にあって、該第二ピーク(粗粒側)は該第一ピーク(微粒側)よりも0.5~3.0μm大きな値である。
(焼結助剤)
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法においては、高熱伝導率の窒化ケイ素質焼結体を得るためには、窒化ケイ素粉末に焼結助剤として、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が0.40≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.4を満足するような配合比で、アルカリ土類金属酸化物および有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物を、窒化ケイ素粉末と焼結助剤の合計重量を基準として3.2~7.0重量%添加する。
ここで、焼結体としての前記の実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量との比率を、酸化物基準で焼結体中のアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比に換算すると、アルカリ土類金属がマグネシウム、希土類金属がエルビウムの場合には0.07≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.23、アルカリ土類金属がマグネシウム、希土類金属がイットリウムの場合には0.06≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.11である。同様に、酸化物基準で焼結体中のアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物とのモル比に換算すると、アルカリ土類金属がマグネシウム、希土類金属がエルビウムの場合には0.69≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦11.7、アルカリ土類金属がマグネシウム、希土類金属がイットリウムの場合には0.37≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦6.22である。
このように、焼結助剤成分が揮発して、窒化ケイ素質焼結体の主として粒界に含まれる焼結助剤の含有量が出発原料の配合組成と異なってくるため、本発明においては、窒化ケイ素質焼結体の焼結前後における重量減少率が2.5重量%~8.0重量%となるように、雰囲気ガス圧力、最高保持温度および最高保持温度における保持時間などの焼結条件を設定する。本発明者らは、焼結前後における重量減少率と得られる窒化ケイ素質焼結体の化学組成の関係を詳細に調べた。その結果、焼結助剤成分だけでなく、窒化ケイ素自体も一部揮発しており、焼結前後における重量減少率を前記の範囲内に管理しないと、得られる窒化ケイ素質焼結体の実測アルカリ土類金属含有量、実測希土類金属含有量および両者の比率を制御できないことを見出し、本発明を完成させた。焼結前後における重量減少率のより好ましい範囲は3.5重量%~7.5重量%、さらに好ましい範囲は4.5重量%~7.5重量%である。
前記のように、窒化ケイ素質焼結体においては、粒界相の熱伝導率が低いため、粒界相量が増えると熱伝導率が低下する。熱伝導率を高めるには、窒化ケイ素質焼結体の酸素含有量を制御することが肝要である。酸素含有量が低いほど熱伝導率は高くなるが、過度に酸素含有量が低いと緻密化が困難となり、気孔が残存して、熱伝導率が著しく低下してしまう。このため、気孔が残存しない範囲内において、焼結体の酸素含有量を低減する必要がある。
アルカリ土類金属酸化物としては酸化マグネシウムが、希土類金属酸化物としては酸化イットリウム、酸化エルビウムおよび酸化イッテルビウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物が好適に用いられる。
前記のように窒化ケイ素質成形体の焼結過程においては、焼結助剤として添加した酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物や希土類金属酸化物の一部が、窒化ケイ素原料中のシリカ成分と共に蒸発により揮散してしまう。さらに、高温において溶融状態にある粒界相に窒素が溶解する。このため、焼結後の降温過程において、Y2Si3O3N4(N-メリライト)、Y10Si7O23N4(H相)、Y4Si2O7N2(J相)、YSiO2N(K相)などの結晶相が析出して、取り出した板状の窒化ケイ素質焼結体に結晶相析出に伴う色調ムラを生じる。前記の析出結晶相は、一般に非晶質相よりも真密度が高いため、収縮により析出結晶相の周辺部にマイクロポアの密集領域を生ずる。マイクロポアの密集領域は繰り返し応力や熱サイクルによる負荷に伴うキ裂成長の起点となり、疲労破壊や熱サイクル破壊の原因となる。また、析出結晶相の成長面の配向とマイクロポア密集領域の存在とが相俟って、焼結体表面に色調ムラを発生させる。本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体は、粒界相を構成するJ相(RE4Si2O7N2)のメインピーク((22-1)面)の回折強度とN-メリライト相(RE2Si3O3N4)のメインピーク((211)面)の回折強度の合計が当該窒化ケイ素焼結体中のβ型窒化珪素の(200)面の回折強度に対して0.07未満(ゼロを含む)、さらには0.05以下(ゼロを含む)であるので、色調ムラが抑制されているという特徴がある。色調ムラが抑制されるということは、応力サイクルや熱サイクルの印加による劣化が起こり難く、信頼性の高い材料であることを意味する。
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造においては、シート成形プロセスにより板状の成形体(グリーンシート)を作製する。シート成形法はテープ成形法とも呼ばれ、原料粉末100質量部に対して、例えば8質量部以上の有機バインダーまたは樹脂バインダーを含むスラリーを、ドクターブレードやダイコーターなどの装置を用いて、キャリアフィルム上に所定の厚みでキャストしてグリーンシートを作製する。押出し成形法や射出成型法によるグリーンシート作製もシート成形法に含まれるが、本発明においては、CIP成形法や金型プレス成形法はシート成形法には含まれない。特に、有機バインダーや樹脂バインダーを添加せず、厚さ3mm以上のバルクのCIP成形体を焼結した後、得られた窒化ケイ素質焼結体を切削・研磨加工することで得られる試験片の曲げ強度を、本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の曲げ強度と比較することはできない。
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造においては、シート成形プロセスにより作製された板状の成形体(グリーンシート)を雰囲気ガス圧力3MPa以下で焼結して、相対密度が98%以上の焼結体を得ることができる。シート成形プロセスにより作製された板状の成形体(グリーンシート)を雰囲気ガス圧力0.15MPa以上3MPa以下で、最高保持温度1790℃以上1910℃以下の温度範囲に保持して焼結し、焼結体としての実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量の比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であって、相対密度が98%以上の焼結体とすることができる。
焼結過程において、成形体(グリーンシート)が収縮して緻密化してゆくと、成形体(グリーンシート)内の開気孔が徐々に減少し、数%の閉気孔のみが残存した状態となる。さらに緻密化が進むと、この閉気孔も消滅してゆくが、雰囲気ガス圧力が3MPaより高いと、前記の閉気孔内に高圧の窒素ガスが取り込まれてしまう。いったん取り込まれた高圧の窒素ガスは焼結体の外に出ることが出来ないため、焼結後に残存する気孔周辺に残留応力を生じ、窒化ケイ素質焼結体の高温での機械的特性や熱サイクル特性に悪影響を与える。また、雰囲気ガス圧力は等方的に作用するため、本発明のような柱状のβ型窒化ケイ素粒子が配向した焼結体は得られない。具体的には、「c軸配向に係る回折強度比」が1.0近傍または1.0よりも小さな値となるので、熱伝導率と機械的特性のバランス上、好ましくない。さらに、雰囲気ガス圧力を3MPaよりも高めるには、高圧下で使用できる特殊な焼結炉が必要となり、設備費が著しく高くなるので好ましくない。
1790℃以上1910℃以下の温度範囲における保持時間が6時間未満であると、所望の相対密度、所望の柱状β型窒化ケイ素粒子を有する板状の窒化ケイ素質焼結体を得ることが難しくなる恐れがある。1790℃以上1910℃以下の温度範囲における保持時間が20時間を超えると、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の成長が進み過ぎるばかりでなく、板状の窒化ケイ素質焼結体製造に長時間を要し、コストアップに繋がるので好ましくない。特に、1910℃を超える最高保持温度、20時間を超える保持時間という、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の成長が著しく速い焼結条件で得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、長軸径の累積粒度分布曲線における50%径D50や80%径D80が過度に大きくなるため、熱伝導率は高いものの機械的特性が著しく劣る恐れがある。例えば、曲げ強度が700MPa未満に低下する。さらには、上記温度範囲における保持時間は、8時間以上や、14時間以下であってよい。
上記の焼結を行った後の冷却過程においては、1500℃までを350℃/hr以上の速度で降温することが好適である。逆に、粒界での前記のMgSiN2結晶相の生成を抑制できる範囲内において、1000℃までを200℃/hr以下の降温速度で徐冷するか、または、1450℃~1650℃の範囲の温度で一定時間保持することによって熱伝導率および機械的特性の更なる改善を行うことも可能である。
本発明は、一つの側面において、板状の窒化ケイ素質焼結体であって、
焼結体としての実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量(希土類金属の有効イオン半径は87pm以上のもの)との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であり、
実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.5重量%以上4.5重量%以下であり、
相対密度が98%以上であり、
算術平均粗さRaが0.05μm以上0.5μm以下に研磨された表面から0.08mm以上内側まで研削して得られた平面にX線を照射した際に得られるβ型窒化ケイ素の(200)面の回折強度I(200)および(210)面の回折強度I(210)の平均値{I(200)+I(210)}/2と(101)面の回折強度I(101)との比{I(200)+I(210)}/{2×I(101)}が1.10以上1.40以下であることを特徴とする板状の窒化ケイ素質焼結体を提供する。
本発明における板状の窒化ケイ素質焼結体は、シート成形プロセスにより作製できるものであるが、厚さが1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下であり、厚さ/面積比が0.015(1/mm)以下であるものを言う。研削または研磨加工による厚み方向に垂直な板面表層部の除去量は、好ましくは片面当たり0.02mm以下であり、さらに好ましくは片面当たり0.01mm以下である。シート成形プロセスにより作製された板状の成形体を、分離材層を介して重ねて焼結した場合には、この分離材層で剥離して得られる、厚さが1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下さらに好ましくは0.4mm以下の板状の窒化ケイ素質焼結体のことであり、厚さ/面積比が0.015(1/mm)以下であり、研削または研磨加工による厚み方向に垂直な板面表層部の除去量が片面当たり0.02mm以下のものであってよい。例えば、パワーモジュール用高熱伝導窒化ケイ素基板としては、厚み0.32±0.05mmのものが求められている。
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の金属不純物含有量は第二の窒化ケイ素粉末中に含まれる金属不純物含有量に依存しているが、実測アルミニウム含有量および実測鉄含有量がそれぞれ60ppm以下であり、実測クロム含有量、実測ニッケル含有量、実測タングステン含有量、実測銅含有量および実測マンガン含有量がそれぞれ18ppm以下であることができる。より好ましくは、実測アルミニウム含有量および実測鉄含有量はそれぞれ40ppm未満、実測クロム含有量、実測ニッケル含有量、実測タングステン含有量、実測銅含有量および実測マンガン含有量はそれぞれ10ppm以下である。金属不純物は窒化ケイ素質焼結体の粒界に蓄積されるため、実測アルミニウム含有量または実測鉄含有量が100ppmを超えると、熱伝導率が低下する恐れがある。また、実測クロム含有量、実測ニッケル含有量、実測タングステン含有量、実測銅含有量および実測マンガン含有量の合計量が100ppmを超えても、熱伝導率が低下する恐れがある。
窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素粒子の性状を最適化することにより、熱伝導率および曲げ強度を高めることができる。本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造においては、原料として使用するα型の第一の窒化ケイ素粉末とβ型窒化ケイ素を含む第二窒化ケイ素粒子の性状と、これらの配合割合によって、焼結体を構成する窒化ケイ素粒子の配向が変化することが認められた。本発明は、α型の第一の窒化ケイ素粉末とβ型窒化ケイ素を含む第二窒化ケイ素粒子の性状と配合割合、ならびに焼結条件を高度に制御することにより焼結後のβ型窒化ケイ素粒子の配向を制御したものである。具体的には、得られる窒化ケイ素質焼結体のX線回折パターンから算出される「c軸配向に係る回折強度比」が制御されている。課題を解決する手段の欄(段落0044)に記載したように、「c軸配向に係る回折強度比」とは、β型窒化ケイ素の(200)面の回折強度I(200)および(210)面の回折強度I(210)の平均値{I(200)+I(210)}/2と(101)面の回折強度I(101)との比{I(200)+I(210)}/{2×I(101)}のことである。
さらに、本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体のミクロ組織は、マトリックスに良熱伝導体である長軸径が3μm以上である柱状のβ型窒化ケイ素粒子を含んでいる。この柱状のβ型窒化ケイ素粒子の短軸径および長軸径は、原料として使用する2種類のSi3N4粉末の性状と配合割合および焼結条件(昇温速度、最高保持温度および最高保持温度での保持時間)を調整することによって制御することができる。
なお、粒界相の面積分率は、全窒化ケイ素粒子と粒界相との合計面積を基準として、15面積%以下であることがより好ましく、13面積%以下であることがさらに好ましい。
本発明の板状の窒化ケイ素質焼結体においては、表面が研磨されていなくてもよいが、研磨されていること、表面の算術平均粗さRaを0.05μm以上0.5μm以下、さらには0.40μm以下、0.30μm以下とすることが好ましい。算術平均粗さRaが0.05μm未満では、加工時の残留応力等により板状の窒化ケイ素質焼結体の曲げ強度が低下する。逆に、算術平均粗さRaが0.5μmを超えると、回路形成用の金属板との接合が困難となるので好ましくない。特に、活性金属ロウ材を用いない直接接合法(DBC法)による銅板やアルミニウム板との接合が困難となる。
一方、最大開口径が1.0μmを超える大きな値になると、絶縁抵抗や絶縁耐圧が悪化し、絶縁基板や回路基板などの電気絶縁材料用途への適用が難しくなる。
本発明によれば、従来は熱伝導性と機械的特性の両面で性能不足であったシート成形プロセスによって、高熱伝導性と優れた機械的特性とを兼ね備えた板状の窒化ケイ素質焼結体を製造することが出来るので、製造コスト面で有利である。即ち、本発明によれば、熱伝導率が室温において110W/(m・K)以上であり、4点曲げ強度が室温において900MPa以上であり、IF法(インデンテーション法)により測定した破壊靭性値KI Cが8.0MPa√m以上である、高熱伝導性と優れた機械的特性とを兼ね備えた板状の窒化ケイ素質焼結体を製造することができ、熱伝導性と機械的特性とのバランスの取れた板状の窒化ケイ素質焼結体として、基板用途に供することができる。基板とは絶縁基板、回路基板などの電子基板があげられる。
窒化ケイ素粉末のX線回折パターン測定には、(株)リガク製RINT-TTRIII型広角X線回折装置を使用した。CuKα線を用いた粉末X線回折測定を行い、非特許文献3に記載されたGazzara& Messierの方法により、生成窒化ケイ素粉末の結晶相(α相およびβ相)を同定し、β分率を算出した。
本発明の窒化ケイ素粉末の比表面積は、Mountech社製Macsorbを用いて、窒素ガス吸着によるBET1点法にて測定して求めた。
本発明の窒化ケイ素粉末の粒度分布は、以下のようにして測定した。前記粉末を、ヘキサメタリン酸ソーダ0.2質量%水溶液中に投入して、直径26mmのステンレス製センターコーンを取り付けた超音波ホモジナイザーを用いて300Wの出力で6分間分散処理して希薄溶液を調製し、測定試料とした。レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3000)を用いて測定試料の粒度分布を測定した。得られた本発明の窒化ケイ素粉末の体積基準の粒度分布データより、積算ふるい下分布に基づく頻度(体積%)を求め、累積粒度分布曲線を得た。累積粒度分布曲線におけるメジアン径(50%径)を平均粒子径(D50、d50)とし、積算ふるい下分布80%に相当する粒子径を80%径(D80、d80)とし、積算ふるい下分布95%に相当する粒子径を95%径(D95、d95)とした。
第一の窒化ケイ素粉末が40重量部~75重量部、第二の窒化ケイ素粉末が60重量部~25重量部という配合範囲においては、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布の頻度分布曲線に明瞭な二つのピークが現われ、第一ピーク(微粒側)のピークトップと第二ピーク(粗粒側)のピークトップとを容易に識別できる。あるいは、第一ピーク(微粒側)の裾野に、第一の窒化ケイ素粉末の粒度分布と比べて頻度分布曲線が上に凸のカーブとなっている部分が存在することで、凸カーブの変曲点として第二ピーク(粗粒側)を識別できる。第一の窒化ケイ素粉末が75重量部~94重量部、第二の窒化ケイ素粉末が25重量部~4重量部という配合範囲においても、第一ピーク(微粒側)と第二ピーク(粗粒側)が十分に離れている場合には、それぞれのピークトップを容易に識別できる。しかしながら、第一ピーク(微粒側)と第二ピーク(粗粒側)が近づいて、例えば4μm以内の範囲に入ってくると、第二の窒化ケイ素粉末の粒度分布との兼ね合いで、体積基準の粒度分布の頻度分布曲線では第二ピークを識別することは難しい場合が生じる。その場合には、ガウス関数とローレンツ関数とを組合せたフォークト(Voigt)分布型曲線を仮定し、ピーク分離により第二ピーク(粗粒側)を識別できる。本発明においては、第二ピーク(粗粒側)を識別することは難しい場合(第一の窒化ケイ素粉末が90重量部~95重量部、第二の窒化ケイ素粉末が10重量部~5重量部である実施例および比較例)には、ピーク分離法により第二ピーク(粗粒側)のピークトップを確認した。さらに、下記の「窒化ケイ素粉末のアスペクト比の測定方法」(段落0166)に記載の走査型電子顕微鏡(SEM)観察法により、面積基準の粒度の頻度分布データを測定することによって、第二ピーク(粗粒側)のピークトップの粒子径を求めることも可能である。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察倍率2000倍にて、窒化ケイ素粉末の粒子形状を観察した。200μm×500μm視野面積内にある計500個の窒化ケイ素粒子を無作為に選定して画像を取り込み、画像解析装置(三谷商事(株)製WinROOF
Ver5.6.2)により個々の窒化ケイ素粒子の長辺の長さと短辺の長さを求めた。長辺の長さと短辺の長さとの比率:長辺の長さ/短辺の長さがアスペクト比であり、500個の窒化ケイ素粒子の平均値を求めて、窒化ケイ素粉末のアスペクト比とした。
比表面積11.2m2/g、酸素含有量1.6重量%、β型窒化ケイ素含有割合1.8%の窒化ケイ素(Si3N4)粉末(表1に記載されたA-1)90重量部に燃焼合成法により作製されたβ型窒化ケイ素粉末10重量部を配合した。この配合物94.8重量部に、焼結助剤として前記の酸化イットリウム3.3重量部および前記の酸化マグネシウム1.9質量部を添加し、ソルビタンエステル系の分散剤を粉末に対して2重量部溶解したトルエン-イソプロパノール-キシレン溶媒および粉砕媒体である窒化ケイ素製ボールと共にボールミル用樹脂製ポットに投入して、24時間湿式混合した。得られたスラリーを目開き44μmの篩に通した後、前記樹脂製ポット中の混合粉末100重量部に対しPVB系樹脂バインダー16重量部および可塑剤(ジメチルフタレ-ト)4重量部を溶解したトルエン-イソプロパノール-キシレン溶媒を添加し、さらに24時間湿式混合して、シート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーの粘度が50ポイズ程度となるよう真空脱泡して溶媒量を調整後、ドクターブレード装置を使用して、得られた混合粉末スラリーをキャリアフィルム上に所定の厚みでキャストして、シート成形されたグリーンシートを得た。さらに、得られたグリーンシートを温度120℃、所定の圧力で3枚積層圧着処理して、焼き上がり寸法が0.35mm程度の厚みとなる積層成形体シートを作製した。作製した積層成形体シートに対して、外観検査を行い、クラックの有無を確認した。そして、この積層成形体シートを60mm×70mmに切断し、寸法、平均厚さならびに重量を測定して成形体密度を算出した。本実施例における積層成形体シート密度は2.0g/cm3であった。また、焼結体の嵩密度測定および熱伝導率測定のために、前記のグリーンシートの積層枚数を増やし、焼き上がり寸法が直径10mm、厚さ1.0mmとなるように円盤状試験片用の成形体シートを切り出した。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の外観検査を行い、目視により色調ムラの有無を判定すると共に、CCDカメラにより色調の異なる模様の有無を確認した。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の嵩密度は、細線に吊るした試験片の重量と浮力を測定するアルキメデス法により測定した。嵩密度から相対密度(配合組成に基づく理論密度に対する比率)を求めた。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体のX線回折パターン測定には、(株)リガク製RINT-TTRIII型広角X線回折装置を使用した。X線源はCuKα線であり、β型窒化ケイ素の各回折ピーク((200)面、(101)面および(210)面)のピーク強度を調べると共に、MgSiN2に起因する回折ピークの有無を調べた。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体表面の算術平均粗さRaはJIS B 0601-2001(ISO4287-1997)に準拠して測定した。触針式の表面粗さ計を用い、窒化ケイ素質焼結体の研磨された表面に、触針先端半径が2μmの触針を当て、測定長さを5mm、触針の走査速度を0.5mm/秒に設定して表面粗さを測定し、この測定で得られた5箇所の平均値を算術平均粗さRaの値とした。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の曲げ強度測定には、幅4.0mm×厚さ0.35mm×長さ40mmの曲げ試験片を使用した。インストロン社製万能材料試験機を用いて、試験片の厚み(0.35mmt)が異なる以外は、JIS R1601に準拠した方法で、内スパン10mm、外スパン30mmの四点曲げ試験冶具により、室温の四点曲げ強度を測定した。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の破壊靱性値測定は、JIS-R1607:2015に準拠したIF法で測定した。板状の窒化ケイ素質焼結体の鏡面研磨された表面にビッカース圧子を所定の圧子押込み荷重(5kgf(49N))で15秒間押し込み、ビッカース圧痕の一方の対角線が板状の窒化ケイ素質焼結体の厚さ方向と垂直になるようにして、ビッカース圧痕の対角線の長さと対角線の延長上に発生する亀裂長さを測定した。得られた測定長さから破壊靭性値KICを算出した。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率測定用に、前記の方法で、直径10mmφ×厚さ1mmtの円盤状試験片を作製した。この円盤状試験片を用いて、JIS R1611に準拠したフラッシュ法により熱伝導率を室温で測定した。
窒化ケイ素質焼結体の微細構造観察に際しては、窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な断面を研削加工し、更にダイアモンド砥粒で鏡面研磨した後、粒界相が見易くなる程度に軽くエッチング処理を行った。得られた試料を走査型顕微鏡(SEM)を用いて、観察倍率1000倍にて、研磨面の0.01mm2(1mm2の1/100)の領域を任意に3箇所観察した。さらに、微細組織を定量評価するために、得られたSEM写真を用いて、画像解析装置(三谷商事(株)製WinROOF Ver5.6.2)により窒化ケイ素粒子と粒界とを二値化し、3観察視野・測定総面積に存在する全β型窒化ケイ素粒子の長辺の長さおよび短辺の長さを測定した。測定された長辺の長さまたは短辺の長さのβ型窒化ケイ素粒子の頻度分布は、それぞれの粒子の面積分率(窒化ケイ素粒子全体の面積に対する割合)として表示した。なお、X線回折測定により、窒化ケイ素粒子は総てβ型窒化ケイ素であることを確認している。
また、観察領域中に存在する長辺の長さ(長軸径)が10μmを超える柱状のβ型窒化ケイ素粒子(粗大β型粒子)の個数を調べ、切断面1mm2当たりの個数に換算した後、その平均値を求めた。
研磨された表面における最大開口径および開気孔率は、以下のようにして算出した。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察倍率2000倍にて、窒化ケイ素質焼結体の研磨された表面から、1観察視野当たり60μm×44μmに設定した領域の5観察視野の画像を取り込んだ。画像解析装置(三谷商事(株)製WinROOF Ver5.6.2)により、5観察視野・測定総面積13200μm2の中で最も大きい開気孔の径を測定することで最大開口径を求めた。次に、同画像解析装置により、画像内の1視野の測定面積を400μm2,測定視野数を12,つまり測定総面積を4800μm2として、当該測定総面積における開気孔の面積を求めた。当該開気孔の面積を測定総面積で除して、測定総面積における当該開気孔の面積の割合を表面の開気孔率とした。これにより、表面における開気孔率を算出することができた。
得られた板状の窒化ケイ素質焼結体を破砕・解砕し、目開き250μmの篩を通した。JIS R1603-10酸素の定量方法に準拠した不活性ガス融解-二酸化炭素赤外線吸収法(LECO社製、TC-136型)により、解砕物試料の酸素含有量を測定した。
前記の解砕物試料0.5gを硝酸およびフッ化水素酸と共に分析用のテフロン(登録商標)製加圧分解容器に入れ、マイクロ波を照射して加熱分解した後、超純水で定容して検液とした。次に、島津製作所製ICPE-9820型誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置により検液中の各金属元素(イットリウム、マグネシウム、エルビウム、イッテルビウム、アルミニウム、鉄、クロム、ニッケル、タングステン、銅およびマンガン)の定量分析を行った。
なお、表2~表4において、実施例1~44は本発明の実施例であり、比較例1~22は本発明に対する比較例である。室温での曲げ強度とは4点曲げ強度、粗大β粒子個数とは窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な切断面の1mm2の領域に観察される、β型窒化ケイ素粒子の長軸径(長辺の長さ)が10μmを超えるβ型窒化ケイ素粒子の個数を表わす。
焼結温度を1900℃に上げた以外は、実施例1と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。原料組成物の配合組成を表2に、焼結条件と得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成を表3に、得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の特性を表4に示す。焼結温度を上げることで、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きくなると共に、粗大β粒子の面積分率が大きくて、熱伝導率が上昇し、曲げ強度と破壊靭性値も高いレベルであった。
β型である第二の窒化ケイ素粉末の種類を変え、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合(90/10)はそのままで、実施例1(焼結温度1850℃)及び実施例2(焼結温度1900℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と諸特性を表3および表4に示す。実施例4では、最高保持温度が高いため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、熱伝導率が上昇し、曲げ強度と破壊靭性値も高いレベルであった。
β型である第二の窒化ケイ素粉末の種類を変え、第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合(90/10)はそのままで、実施例1(焼結温度1850℃)及び実施例2(焼結温度1900℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と諸特性を表3および表4に示す。実施例6では、最高保持温度が高いため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。実施例7では、焼結助剤の配合割合と添加量を変えたために粒成長が促進された影響か、最高温度での保持時間が若干短くても(7時間)、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合(90/10)はそのままで、焼結助剤に二酸化シリコン粉末0.5重量%を追加してみた。実施例1(焼結温度1850℃)及び実施例2(焼結温度1900℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例9では、最高保持温度が高いため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。実施例10では、焼結助剤の配合割合と添加量を変え、最高温度での保持時間を延長したためか(20時間)、Mg含有量の減少が著しく、重量減少率も大きかったが、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合を変えた(75/25)以外は、実施例8(焼結温度1850℃)および実施例9(焼結温度1900℃)と同様にして、表1~表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。窒化ケイ素原料の配合割合を変えることで、積層成形体シート密度は若干上昇した(2.05g/cm3)。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例12では、最高保持温度が高いため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の配合割合(50/50または40/60)および二酸化シリコン粉末の追加量を変えてみた以外は、実施例8(焼結温度1850℃)および実施例9(焼結温度1900℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例14および17では、最高保持温度が高いため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。実施例15では、1800℃での保持時間を20時間に延長してみた所、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が増加し、1850℃焼結品(実施例16)と同等の熱伝導率と機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の種類の組合せを変えてみた。配合割合(90/10)はそのままで、実施例8(焼結温度1850℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例18では、酸化マグネシウムと酸化イットリウムの比率を変えてみた所、実施例8と比べて機械的特性が悪化した。実施例19では、助剤添加量を4.5重量%に減らしてみたが、特に大きな影響はなかった。実施例20では雰囲気圧力を0.4MPaに下げてみたが、特に大きな影響はなく、ガス圧力0.4MPaでも0.8MPaの場合とほぼ同等の特性を有する窒化ケイ素質焼結体が得られので0.4MPaに下げても焼結できることを確認できた。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の種類の組合せを変え、配合割合(75/25)で、実施例8(焼結温度1850℃)と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例22では、最高保持温度(1880℃)での保持時間を18時間に延長してみたが、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
焼結助剤として使用する希土類酸化物をEr2O3あるいはYb2O3に変えたこと以外は、実施例8と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。希土類酸化物を変えることによって粒成長が促進され、熱伝導率および曲げ強度がが若干上昇した。
第一の窒化ケイ素粉末がA-3、第二の窒化ケイ素粉末がB-2という組合せで、その配合割合を変えた(75/25または90/10)以外は、実施例8と同様にして、表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例26では、1880℃における保持時間を延長したため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の組合せをA-2とB-2を変えた以外は、実施例8と同じ配合割合(90/10)で、同例と同様にして、表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例30では、1900℃における保持時間を短縮してみたが、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
焼結助剤の添加量を減らした以外は、実施例27と同様にして、表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。1850℃における保持時間を延長したため、焼結時の重量減少率および酸素揮発率が大きく、c軸配向に係る回折強度比が適切な範囲であって、粗大β粒子の面積分率も大きいため、高い熱伝導率と優れた機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)を示した。
焼結温度を1800℃に下げて焼結した以外は、実施例1と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。実施例1と比べて、焼結温度を下げると、重量減少率および酸素揮発率が低下して、得られる窒化ケイ素質焼結体の酸素含有量が2.7重量%~2.9重量%に増加すると共に長軸径(長辺の長さ)が10μmを超えるβ型窒化ケイ素粒子の個数が減少するため、熱伝導率も機械的特性(曲げ強度および破壊靭性値)もやや悪化した。
焼結助剤である酸化マグネシウム(MgO)と酸化イットリウム(Y2O3)の添加量を減らした以外は、実施例14と同様にして、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。焼結助剤の添加量を減らしても、1900℃での保持時間を延長したために、到達密度は問題なかった。しかしながら、実施例14と比べて、高温長時間焼結により、重量減少率および酸素揮発率が著しく増加して、焼結体の実測酸素含有量が1.3重量%まで低下した。このため、粒成長が進行して、熱伝導率は上昇したが、機械的特性(曲げ強度と破壊靭性値)が低下した。
第一の窒化ケイ素粉末と第二の窒化ケイ素粉末の組合せと配合割合、および焼結条件(焼結助剤の添加量と焼結時の最高温度および保持時間)を種々変えて、表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。しかしながら、いずれの条件においても、対応する実施例(例えば、実施例21~23、26~28および31)と比べて、酸素揮発率が不十分で、焼結体の酸素含有量が高いため、得られる窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率(曲げ強度および破壊靱性値)も機械的特性も若干低下した。
比較例1および2は、窒化ケイ素原料として、第一の窒化ケイ素粉末(A-1)のみを使用した例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。高α分率の窒化ケイ素原料を用いることにより、機械的特性(曲げ強度、破壊靭性値など)の優れた板状の窒化ケイ素質焼結体を得ることができた。しかしながら、窒化ケイ素質焼結体を構成する粒子が微細で、粒成長が遅いため、熱伝導率はやや低いという結果となった。
比較例3および4は、第一の窒化ケイ素粉末(A-1)に第二の窒化ケイ素粉末(B-1)を配合した原料組成物を使用した例である。最高温度での保持時間は10時間とし、実施例1と同様に、表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。焼結体の実測酸素含有量は焼結温度の上昇に伴って、2.75重量%から2.35重量%に低下した。しかしながら、5重量%の第二の窒化ケイ素粉末の配合では、c軸配向に係る回折強度比が小さくて、粗大β粒β型窒化ケイ素粒子の粒成長が不足するためか、期待したほどの特性(熱伝導率、曲げ強度および破壊靱性値)改善は認められなかった。
比較例5~7も、第一の窒化ケイ素粉末(A-1)に第二の窒化ケイ素粉末(B-1)を配合した原料組成物を使用した例である。焼結助剤である酸化マグネシウムと希土類金属酸化物との重量比を種々変え、比較例1と同様に、表2および表3に記載された条件にて板状の窒化ケイ素質焼結体を作製してみた。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。比較例5および6では、低比表面積の第二窒化ケイ素粉末の配合割合が多過ぎるためか、到達密度も低く、焼結体の特性(熱伝導率、曲げ強度および破壊靱性値)が著しく悪化した。比較例7では、焼結助剤である酸化マグネシウムと希土類金属酸化物との重量比が不適切であり(酸化マグネシウム/希土類金属酸化物が1.5)、1900℃で10時間保持という高温焼結条件においても期待したほどの特性(熱伝導率、曲げ強度および破壊靱性値)改善は認められず、低レベルの熱伝導率、曲げ強度および破壊靱性値であった。
β分率100%の第二の窒化ケイ素粉末(B-4)のみを原料組成物に使用した例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。焼結助剤の配合比を変えてみたが、c軸配向に係る回折強度比が小さくて、同じ焼結温度で比較すると粗大β粒β型窒化ケイ素粒子の粒成長が不足するためか、低レベルの特性(熱伝導率、曲げ強度および破壊靱性値)しか得られなかった。
第一の窒化ケイ素粉末として、β分率が14質量%で、低比表面積かつ低酸素含有量の窒化ケイ素粉末(A-5)を配合した原料組成物を使用した例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。低比表面積かつ低酸素含有量であるために、粒成長が進んだせいか、熱伝導率は高いものの、機械的特性が著しく悪化した。
比較例11および12は焼結助剤の添加量を変えた例であり、比較例13はアルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比を変えた例(アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が小さ過ぎる)である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。焼結助剤の添加量が少な過ぎても多過ぎても、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が低過ぎでも、表2および表3に記載された焼結条件(最高温度と同温度での保持時間)では、得られた窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率が著しく低下した。さらに比較例12では焼結助剤量が多過ぎたせいか、機械的特性(曲げ強度と破壊靭性値)も著しく低下した。
比較例13および14は、比表面積が低過て、粒径が粗大な第二の窒化ケイ素粉末を使用した例である。粗大なβ型窒化ケイ素粒子の存在により、到達密度が低下して、熱伝導率および機械的特性(曲げ強度と破壊靭性値)が著しく低下した。
比較例15は、二酸化ケイ素の添加量が多過ぎた例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。二酸化ケイ素の添加量が多過ぎると、焼結体の実測酸素含有量が高くて、粒成長が不足しているため、熱伝導率も低く、機械的特性も低レベルであった。
比較例16および17は、焼結時の最高温度が低過ぎる例であり、比較例18は1850℃における保持時間が短過ぎる例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。最高温度が低く過ぎても、1850℃における保持時間が短か過ぎても、著しく焼結不足であり、窒化ケイ素質焼結体の相対密度が低下するばかりでなく、焼結過程における焼結助剤(酸化マグネシウムと希土類金属酸化物)や窒化ケイ素原料中の二酸化ケイ素(SiO2)成分の蒸発が抑制された。このため、比較例16および17では、焼結体の実測酸素含有量は2.9重量%前後であった。一方、比較例18では原料組成物自体の酸素含有量が少なくためか、酸素揮発量が小さく、かつ保持時間が短過ぎるためか、長軸径が10μmを超えるβ型窒化ケイ素粒子の個数が著しく減少した。これらの比較例においては、熱伝導率および機械的特性(曲げ強度と破壊靭性値)の両方が低下した。
比較例19は第二の窒化ケイ素粉末のβ分率が50質量%と低く、低比表面積かつ高酸素含有量で95%径D95が大きな粗大粒子を含む例である。表2および表3に記載された条件にて、板状の窒化ケイ素質焼結体を得た。得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。このような原料組成物を使用すると、粒成長が著しく阻害されてしまうため、熱伝導率も低く、機械的特性(曲げ強度と破壊靱性値)も低レベルであって、好ましくない。
比較例20および21は、逆に粒成長が進み過ぎた例である。最高保持温度1850℃で30時間保持または最高保持温度1900℃での保持時間22時間という、高温-長時間の厳しい焼結条件でないと高密度な焼結体が得られない場合には、得られた窒化ケイ素質焼結体の実測マグネシウム含有量と実測希土類金属含有量との重量比(実測マグネシウム含有量/実測希土類金属含有量)が0.03~0.28、実測酸素含有量は1.48重量%~1.56重量であった。より厳しい焼結条件が設定されたため、長軸の長さが10μmを超えるβ型窒化ケイ素粒子の個数が著しく増加し(10000個/mm2超)、曲げ強度および破壊靭性値は低かった。また、研磨された表面における開気孔率は1.5%前後、最大開気孔径は2.0μm前後であり、絶縁基板や回路基板への適用が難しいものであった。
比較例22は、窒化ケイ素原料の特性が不適切な例である。表2および表3に記載された条件にて得られた板状の窒化ケイ素質焼結体の化学組成と特性を表3および表4に示す。第一の窒化ケイ素粉末として、β粉率が高くて、低比表面積・低酸素含有量の粉末を使用しているため、粒成長が抑制されており、その結果として熱伝導率が低下した。機械的特性(曲げ強度と破壊靭性値)も低目の値であった。
実測酸素含有量が1.3重量%以上2.8重量%以下であり、
窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が10μmを超える粒子の個数が、切断面1mm2当たりに1200個以上10000個以下であって、全窒化ケイ素粒子の面積を基準として、長軸径が10μmを超える粒子の面積分率が6.5%以上39%以下であることから、室温における熱伝導率が110W/(m・K)以上、4点曲げ強度が900MPa以上、破壊靭性値KICが8.0MPa√m以上という優れた熱的・機械的特性を有しており、安定した放熱性と優れた耐久性を発揮できることが分かった。
Claims (24)
- (I)a)β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m2/g以上13.0m2/g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の第一の窒化ケイ素粉末40~94重量部と、
b)β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m2/g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である第二の窒化ケイ素粉末60~6重量部と
を合計100重量部含む窒化ケイ素原料に、
c)焼結助剤として、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が0.40≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.4を満足するような配合比で、アルカリ土類金属酸化物および有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物を、窒化ケイ素原料と焼結助剤の合計重量を基準として3.2~7.0重量%含む
出発組成物を調製し、
(II)出発組成物からシート成形プロセスによりグリーンシートを作製し、
(III)グリーンシートを脱脂し、その後、
(IV)窒素含有ガス圧力が0.15MPa以上3MPa以下の加圧雰囲気下、最高保持温度が1790℃以上1910℃以下の温度範囲に保持して焼結する
(V)ことにより、板状の窒化ケイ素質焼結体を得ること、
ここで、得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であり、相対密度が98%以上であること
を特徴とする板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。 - 窒化ケイ素質焼結体の実測酸素含有量が1.3重量%以上2.8重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 板状の窒化ケイ素質焼結体が、厚さが1.5mm以下で、厚さ/面積比が0.015(1/mm)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 第二の窒化ケイ素粉末の累積粒度分布曲線における95%径が10.0μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 第二の窒化ケイ素粉末のアルミニウム含有量および鉄含有量がそれぞれ100ppm以下であり、クロム含有量、ニッケル含有量、タングステン含有量、銅含有量およびマンガン含有量がそれぞれ30ppm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 焼結助剤は、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物に加え、二酸化シリコン粉末を含み、窒化ケイ素原料と焼結助剤の合計重量を基準として、二酸化シリコンの含有量が0.1重量%以上2.5重量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 焼結体としての実測アルカリ土類金属含有量と前記の実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.5重量%以上4.5重量%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- アルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムであり、有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物が酸化イットリウム、酸化エルビウムおよび酸化イッテルビウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 焼結前後における重量減少率が2.5重量%~8.0重量%となるように、焼結条件を設定することにより、前記の板状の窒化ケイ素質焼結体を得ることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 算術平均粗さRaが0.05μm以上0.5μm以下に研磨された表面から0.08mm以上内側まで研削して得られた平面にX線を照射した際に得られる窒化ケイ素質焼結体中のβ型窒化ケイ素の(200)面の回折強度I(200)および(210)面の回折強度I(210)の平均値{I(200)+I(210)}/2と(101)面の回折強度I(101)との比{I(200)+I(210)}/{2×I(101)}が1.10以上1.40以下であり、
窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が10μmを超える粒子の個数が、1mm2当たりに1200個以上10000個以下であって、長軸径が10μmを超える粒子の面積分率が6.5%以上39%以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。 - 焼結助剤として、酸化マグネシウムと希土類金属酸化物との重量比が0.42≦酸化マグネシウム/希土類金属酸化物≦1.1を満足するような配合比で、酸化マグネシウム、有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物および二酸化シリコンを添加し、
焼結助剤の添加量は、窒化ケイ素粉末と焼結助剤の合計重量を基準として4.0~6.5重量%とすること、
前記焼結は、窒素含有ガス圧力が0.15MPa以上0.9MPa以下の加圧雰囲気下、最高保持温度が1820℃以上1910℃以下の温度範囲で、当該最高保持温度にて6時間以上20時間以下保持して焼結すること、
得られる板状の窒化ケイ素質焼結体は、実測マグネシウム含有量と実測希土類金属含有量との比率が0.07≦実測マグネシウム含有量/実測希土類金属含有量≦0.75であり、前記の実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.6重量%以上4.0重量%以下であり、実測酸素含有量が1.6重量%以上2.6重量%以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。 - a)β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m 2 /g以上13.0m 2 /g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の第一の窒化ケイ素粉末40~94重量部と、
b)β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m 2 /g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である第二の窒化ケイ素粉末60~6重量部と
を合計100重量部含み、かつ、β分率が7%以上64%以下、酸素含有量が0.74重量%以上1.95重量%以下、BET法による比表面積が6.3m2/g以上12.8m2/g以下、粒度分布における平均粒子径が0.66μm以上1.5μm以下であり、得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5~1.2μmの範囲(第一ピーク)と、1.1~3.8μmの範囲(第二ピーク)にあって、該第二ピークは該第一ピークよりも0.5~3.0μm大きいことを特徴とする板状窒化ケイ素質焼結体製造用の窒化ケイ素粉末。 - a)β分率が10%以下、酸素含有量が0.75重量%以上2.2重量%以下、BET法による比表面積が7.0m 2 /g以上13.0m 2 /g以下、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.55μm以上1.5μm以下であるα型の第一の窒化ケイ素粉末40~94重量部と、
b)β分率が60%以上100%以下、酸素含有量が0.55重量%以上2.0重量%以下であり、BET法による比表面積が2.5m2/g以上10.0m 2 /g以下であって第一の窒化ケイ素粉末の比表面積よりも小さな値であり、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布における平均粒子径が0.7μm以上2.0μm未満であって第一の窒化ケイ素粉末の平均粒子径よりも大きな値であり、アスペクト比が3以下である第二の窒化ケイ素粉末60~6重量部と
を合計100重量部含み、さらに
c)焼結助剤として、アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との重量比が0.40≦アルカリ土類金属酸化物/希土類金属酸化物≦1.4を満足するような配合比で、アルカリ土類金属酸化物および有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物を、窒化ケイ素原料と焼結助剤の合計重量を基準として3.2~7.0重量%と
を含む板状窒化珪素質焼結体製造用の原料粉末組成物。 - 板状の窒化ケイ素質焼結体であって、
焼結体としての実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量(希土類金属の有効イオン半径は87pm以上のもの)との比率が0.05≦実測アルカリ土類金属含有量/実測希土類金属含有量≦0.85であり、
実測アルカリ土類金属含有量と実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.5重量%以上4.5重量%以下であり、
相対密度が98%以上であり、
算術平均粗さRaが0.05μm以上0.5μm以下に研磨された表面を有しており、かつその表面からさらに0.08mm以上内側まで研削して得られた平面にX線を照射した際に、得られるβ型窒化ケイ素の(200)面の回折強度I(200)および(210)面の回折強度I(210)の平均値{I(200)+I(210)}/2と(101)面の回折強度I(101)との比{I(200)+I(210)}/{2×I(101)}が、1.10以上1.40以下である
ことを特徴とする板状の窒化ケイ素質焼結体。 - さらに、焼結体としての実測酸素含有量が1.3重量%以上2.8重量%以下であり、焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が10μmを超える粒子の個数が1mm2当たりに1200個以上10000個以下であることを特徴とする請求項14に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、板状の窒化ケイ素質焼結体が、厚さが1.5mm以下で、厚さ/面積比が0.015(1/mm)以下であることを特徴とする請求項14または15に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、アルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムであり、有効イオン半径が87pm以上の希土類金属酸化物が酸化イットリウム、酸化エルビウムおよび酸化イッテルビウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物であることを特徴とする請求項14~16のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、焼結体としての実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量(希土類金属は有効イオン半径が87pm以上のもの)との比率が0.07≦実測マグネシウム含有量/実測希土類金属含有量≦0.75であり、前記の実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.6重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする請求項14~17のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、焼結体としての実測酸素含有量が1.6重量%以上2.6重量%以下であることを特徴とする請求項18に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、焼結体としての実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量(希土類金属は有効イオン半径が87pm以上のもの)との比率が0.09≦実測マグネシウム含有量/実測希土類金属含有量≦0.65であり、前記の実測マグネシウム含有量と前記の実測希土類金属含有量とを合計した、ケイ素を除く焼結助剤由来の金属元素含有量が1.7重量%以上3.5重量%以下であることを特徴とする請求項18または19に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、窒化ケイ素質焼結体の板面に垂直な切断面を観察したとき、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、長軸径が3μm以上の粒子の面積分率が45面積%以上87面積%以下であり、長軸径が10μmを超える粒子の面積分率が6.5面積%以上39面積%以下であることを特徴とする請求項18~20のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、柱状のβ型窒化ケイ素粒子の内、面積%基準で表した長軸径の累積粒度分布曲線における50%径D50が5.5μm以上6.8μm以下であり、80%径D80が8.1μm以上12.5μm以下である板状の窒化ケイ素質焼結体であることを特徴とする請求項21に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- さらに、熱伝導率が室温において110W/(m・K)以上であり、4点曲げ強度が室温において900MPa以上であり、IF法(インデンテーション法)により測定した破壊靭性値KICが8.0MPa√m以上であることを特徴とする請求項18~22のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体。
- 請求項14~23のいずれか一項に記載の板状の窒化ケイ素質焼結体を用いることを特徴とする基板。
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