JP4086579B2 - 熱履歴制御装置、熱履歴制御方法、熱履歴制御用プログラム、及び熱履歴制御を行うサーマルプリンタ - Google Patents

熱履歴制御装置、熱履歴制御方法、熱履歴制御用プログラム、及び熱履歴制御を行うサーマルプリンタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱履歴制御装置、熱履歴制御方法、熱履歴制御用プログラム及び熱履歴制御を行うサーマルプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばPOS装置等に搭載される小型のサーマルプリンタ等においてコストを下げる手段として、低性能、低価格なマイクロプロセッサの選択や、RAM、ROM等のメモリを低容量化するといった手法がとられることが多かった。しかしながら、印字速度の高速化、高印字品位を追求していくにつれ、これらの構成では十分な性能を得ることは困難な場合が多く、外部に専用の印字制御回路を設けておき、なるべくプロセッサ処理を軽減させておくことが必須条件となってきたが、それ故にシステムコストが再び増大してしまうことも多かった。
【0003】
ところが、近年のマイクロプロセッサの高性能化、メモリのビット単価の低価格化に伴い、この様なアプリケーションでも比較的容易に高性能プロセッサと大容量メモリを搭載することが出来る様になった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来技術における第1の問題点は、外部回路、又はLSI等のコストが増大することにある。その理由は、過去の印字ラインを保持する機構を外部の専用LSI内に設けておく必要があるが、高精度な熱履歴制御を行うためにはその保持ライン数を多くしておく必要があるからである。つまりLSIにフリップフロップ回路で構成されたレジスタ回路を大量に設けておく必要があるからである。
【0005】
第2の問題点は、ハードウェア的に制御可能な熱エネルギーの限界値が決まってしまうことにある。その理由は、専用LSI内部に保持された過去の印字データから熱履歴制御を行うため、保持できる過去の印字ライン数以上は制御対象とは出来ないからである。同様に、サーマルヘッドの印字幅についてもこの専用LSIが保持する過去の印字データのビット幅が決定されてしまうからである。
【0006】
本発明の目的は、専用LSI等の代わりに高性能プロセッサ上で動作するソフトウェアにより処理を行うことでシステムのコスト低減と性能機能向上とが一度に実現されるサーマルプリンタの熱履歴制御装置、サーマルプリンタの熱履歴制御方法、及びサーマルプリンタの熱履歴制御用プログラムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱履歴制御装置は、これから印字するラインのドットイメージと、すでに印字が完了した後の印字ラインのドットイメージとが数ライン分保持されている印字データ格納エリアと、前記これから印字するラインのドットそれぞれに対する履歴パターンを格納している履歴パターン格納エリアとを含むRAMと、前記印字データ格納エリアに格納されている前記ドットイメージのうち、前記これから印字するラインに含まれるドットが、非印字ドットである場合には通電を行わず、印字ドットである場合には、前記ドットに対して蓄熱の影響を及ぼす可能性がある過去の印字ドットの印字履歴を示す履歴要因に基づいて、前記ドットに対応する発熱素子に対する印加時間を示す通電時間から過去に印字した履歴要因に割り当てられた時間のみ間引くよう演算する熱履歴制御アルゴリズムを用いて、前記これから印字するラインに含まれるドットごとの演算結果である履歴パターンを生成する処理と、前記演算結果の前記履歴パターンを前記履歴パターン格納エリアに格納する処理と、前記各履歴要因に割り付けた時間を示す履歴タイマ値をタイマ回路へセットする処理とを実行するCPUと、バスインタフェースから受けた前記履歴パターンを示すパラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路と、前記履歴タイマ値によりタイマカウント動作を行うタイマ回路と、前記タイマ回路で生成されたタイミングに従って、データラッチ信号の出力を調整するヘッド制御信号生成回路とを有し、前記発熱素子に出力する印加信号を生成するシフトレジスタに、前記データラッチ信号と、前記シリアルデータを出力するサーマルヘッドインタフェースLSIとを備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の熱履歴制御方法は、印字データ格納エリアに、これから印字するラインのドットイメージと、1ライン前からnライン前までの前記すでに印字が完了した後の印字ラインのドットイメージとが格納され、これから印字するラインの各ドットに対して、
前記印字データ格納エリアを参照し、前記これから印字するラインのドットが非印字ドットである場合には通電を行わない履歴パターンを、印字ドットである場合には、前記ドットに対して蓄熱の影響を及ぼす可能性がある過去の印字ドットの印字履歴を示す履歴要因に基づいて、前記ドットに対応する発熱素子に対する印加時間を示す通電時間から過去に印字した履歴要因に割り当てられた時間のみ間引くよう演算する熱履歴制御アルゴリズムを用いて、前記これから印字するラインに含まれるドットごとの演算結果である履歴パターンとを演算し、その結果、生成された履歴パターンを、履歴パターン格納エリアへ格納していき、過去nライン分全ての演算が完了した後、サーマルヘッドインタフェースLSIが有するパラレル/シリアル変換回路へ、各履歴要因に対応する前記履歴パターンごとに転送を行い、同時に前記演算結果に基づき、前記履歴パターンが有する前記各履歴要因に割り付けた時間を示す履歴タイマ値を前記サーマルヘッドインタフェースLSIが有するタイマ回路へセットすることで生成されたタイミングに基づいて、ヘッド制御信号生成回路から出力される制御信号に含まれるデータラッチ信号の発生タイミングを調整し、前記パラレル/シリアル変換回路から出力されるシリアルデータの出力を制御して、シフトレジスタが前記発熱素子に出力する印加信号の出力を調整することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明によるサーマルプリンタの熱履歴制御装置は、過去に印字したドットイメージの一部を記憶しておき、そのドットパターンによってサーマルヘッドの発熱素子に対する印加時間の制御を行うという、従来の熱履歴制御をソフトウェアで実現することを特徴とする。
【0012】
熱履歴制御とは、例えば特開平4−146158号公報に示されるように、過去の印字履歴を参照しこれから印字しようとするドットに対して過去の印字動作による蓄熱の影響を抑える制御であり、印字完了後のラインを数ライン分保持しておき、これから印字するドットに対して蓄熱の影響を及ぼす可能性がある過去の印字ドットを調査する。仮に該当のドットを過去に印字していた場合は、何も印字していない場合と比べて蓄熱の影響があると考えられる為、サーマルヘッドへの通電時間を短くする。尚、蓄熱は過去の印字ドット数、ドット位置により影響度が異なることから、図6に示す様に過去の印字履歴を一定のパターンに従ってモデル化し、そのモデルを構成する各ドット(以降、履歴要因と呼ぶ)に対して時間的な重みを付けておく。その後、過去にどの位置のドットが印字していたかを判定し、印字していた要因に対応する時間を全体の印加時間から間引く方法がとられている。
【0013】
本発明の特徴をより具体的に説明すると、図1において、印字データ格納エリア31にこれから印字するドットイメージと、1ライン前からnライン前までの、過去の印字ラインのドットイメージが格納されている。CPU1はこれから印字するラインの各ドットに対してこの印字データ格納エリア31を参照し、図3の様に過去の印字ラインの対応するドット列又はその左右のドットが過去に印字していたかどうかをnライン分全てについて比較を行い該当ドットが過去に印字していた場合“0”、印字していない場合“1”とする様に演算を行う。その演算結果を履歴パターン格納エリア32へ格納していき、過去nライン分全ての演算が完了した後、パラレル/シリアル変換回路41へ、各履歴要因に対応する演算結果(以降、履歴パターンと呼ぶ)ごとに転送を行う。同時に各履歴要因に割り付けた時間をタイマ回路42へその都度セットすることで、データラッチ信号の発生タイミングを調整し、各履歴要因に割り付けた時間的な重み付けを行うことができる(以降、この時間を履歴タイマ値と呼ぶ)。
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態をブロックで示す図1を参照すると、この実施の形態のサーマルプリンタの熱履歴制御装置は、CPU1とROM2とRAM3とサーマルヘッドインタフェースLSI4とサーマルヘッド5とから構成される。
【0016】
CPU1はROM2に格納されている熱履歴制御アルゴリズムに従い、過去の印字ドットを参照し各履歴要因に対する履歴パターンの生成処理を実行する。
【0017】
RAM3は印字データ格納エリア31、履歴パターン格納エリア32を含む。印字データ格納エリア31は、これから印字するラインのドットイメージと、既に印字が完了した後のドットイメージとが数ライン分保持されている。ここに保持する過去の印字ライン数は、例えば高精度な熱履歴制御を行いたい場合はライン数を増やし、簡素な熱履歴制御で良いという場合は保持ライン数を少なくする。つまり、印字データ格納エリア31に格納された印字ライン数が多ければ多い程、履歴要因数が増えることになり高精度な熱履歴制御を行うことができる。履歴パターン格納エリア32は、過去の印字データに基づき演算された結果を各履歴要因ごとに格納している。
【0018】
サーマルヘッドインタフェースLSI4は、サーマルヘッド5とのインタフェースを行う回路を設けており、バスインタフェースのパラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路41と、各履歴要因に割り付けた時間である履歴タイマ値によりタイマカウント動作を行うタイマ回路42と、このタイマ回路42で生成されたタイミングに従いサーマルヘッド5に内蔵されているシフトレジスタ51の制御信号を生成するヘッド制御信号生成回路43とを有している。
【0019】
次に、サーマルヘッドの特性を示す図5及び熱履歴制御の概要を示す図6を参照して、熱履歴制御の概略について説明する。 図5(1)はサーマルヘッドの理想的な熱特性を示した図である。図に示す様に、印加信号SPがオン期間中は、ヘッド表面温度は初期温度TIから一定の時定数に従って上昇する。次に印加信号SPがオフに切り替わってから次の印加タイミングであるTim2迄の間に再び初期温度TIまで温度が戻る場合は、印加信号SPのパルス幅はどんな場合でも一定に出来る。よって理想的な特性の場合は熱履歴制御の必要はない。
【0020】
ところが、実際は図5(2)に示す様に蓄熱E1の影響により印加信号SPをオフしても次の印加タイミングTim2の発生迄に初期温度TIまでサーマルヘッドの表面温度は下降しない。これは、サーマルヘッド自体の熱特性にも依存するが、印字速度を高速化させる場合にも印加周期T2が短くなるために蓄熱の影響を受けやすくなる。結果として高速印字の妨げになっていた。
【0021】
そこで、サーマルプリンタでは過去に印字されたドットイメージを参照して、いま印字しようとしているドットの蓄熱を想定することで印加信号SPのパルス幅を調節し、常に一定の熱エネルギーをサーマルヘッドに印加させるという熱履歴制御が一般的に使われている。
【0022】
図6(1)に示す例ではこれから印字するデータと過去4ライン分のドットイメージとを保持しておき、一定のパターンに従ってモデル化する。
【0023】
また、図6(2)の様に過去に何も印字していない場合に必要な印加時間をTとして、これをモデル化した過去の印字要因(履歴要因)でこの時間を分割する。この時、それぞれ分割する時間配分は各履歴要因がこれから印字するドットに及ぼす蓄熱の影響度により決定する。例えば、図のモデルにおいて直前ドットTaと3ライン前のドットTc0では、Taの方がこれから印字するドットに対する蓄熱影響度が大きい為、Tc0よりも大きな時間を割当てておくのが一般的である。その後、これから印字するドットに着目した時に、過去にどの履歴要因を印字しているかを調査し、印字していた履歴要因に対応する部分を通電しないデータとして“0”を、印字していない履歴要因部分を通電データとして“1”をセットする。つまり、履歴制御を無視して純粋に感熱紙が発色する様な熱エネルギーに対応する印加時間をTとすると、そこから過去に印字した要因があれば時間的に間引くことで、結果として印加信号TSを調節する方法がとられている。
【0024】
図6(2)の例では、これから印字するドットに対して、過去に印字していたドットはTb2、Tb0、Tc0の3箇所である。つまり、過去に何も印字していない場合に比べ、この時点でこれら3箇所の印加による蓄熱が発生していると考えられるため、印加時間=T−(Tb2+Tb0+Tc0)
とすることで熱エネルギーが補正される。この時、Tb2、Tb0、Tc0にはそれぞれ予め蓄熱の影響度に応じた重み付けとして、各要因に時間が割り当てられている。
【0025】
この様にして1ライン中の全ドットに対して同様の処理を行い、これらの処理結果を1履歴要因づつサーマルヘッドへ転送していく。つまり1ラインを印字する為に、印加すべきデータを複数回(本例の場合だとこれから印字するドット位置に対する要因T0も含めて9要因)をサーマルヘッドに転送する。
【0026】
以上の動作を過去の印字ラインの保持も含めて、これまでは専用回路を用いてハードウェアで行っていた。
【0027】
次に、本発明の一実施の形態の動作について図1、図2及び図3を用いて説明する。
図1において、いまRAM3内の印字データ格納エリア31には、これから印字するドットイメージと、1ライン前から4ライン前までの、過去の印字ラインのドットイメージが格納されているものとする。印字動作を開始するにあたり、ROM2に格納されている履歴パタ―ン生成アルゴリズムで履歴パターンを生成していく。
【0028】
図3に履歴パターン生成アルゴリズムの一例を示す。
まず、第一番目の履歴要因であるTaの生成を行うものとすると、印字データ格納エリア31からこれから印字する印字データ(N)の最下位側から32ビットと、1ライン過去の印字データ(K1)の最下位側から32ビットを、CPU1内部の演算用レジスタへロードする。本例では32ビット単位でロードしているが、CPU1内蔵レジスタが16ビットや8ビットの場合等は、それぞれに見合ったサイズでロードしてくるものとする。各々をロード後、履歴パターンの演算処理を行う。尚、図3に示す演算式は一例であるが、本演算式は履歴要因Taに対応する履歴パターンの生成式である。これから印字する各ドットに対して、まずそのドット自身が印字ドットなのか否かについて判断し、もし非印字ドットであれば、無条件に通電しないデータ“0”とする。その上で履歴パターンの生成として、第一番目の履歴要因であるTaの位置で印字していれば“0”、印字していなければ“1”となる様に演算する。演算結果は、履歴パターン格納エリア32へ格納していく。この処理を1ライン分、すなわち本例では640ドットであるから640ビット分行い履歴要因Taの履歴パターン生成を完了する。
【0029】
次に、第二番目の履歴要因であるTb1に対応する履歴パターンの生成処理に移行する。図6(1)を参照するとTb1はこれから印字するドットT0から見て直前ドットTaの左側に位置しており、同様に印字データ格納エリア31からレジスタへロード後1ビット右へシフト演算してから履歴パターンの演算処理を行う。尚、その際予め33ビット目の値を調べておき、“1”であれば右シフト後の最上位ビットは1を挿入する演算を追加で行う。本例では“0”として記述している(図4参照)。その後、Taと同様に履歴パターン格納エリア32へストアしていき、この処理を1ライン分に相当する回数分行う。 第三番目の履歴要因であるTb2は、図6(1)を参照するとTb1とは逆に、直前ドットの右側に位置していることから、ロード後は左シフトして同様の演算を行っていく。
【0030】
以降、第四番目の履歴要因であるTb0から第八番目の履歴要因であるTdまでを同様のアルゴリズムで履歴パターン生成していき、全ての履歴パターンが生成を完了させる。
【0031】
その後、図1のパラレル/シリアル変換回路41へ、各履歴要因に対応する、履歴パターンを転送し、一つの履歴パターンの転送が終了した時点で、その履歴パターンごとの印加時間を決定する履歴タイマ値をタイマ回路42へセットし、並行して印加中の一つ前の履歴要因の印加が終了するのを待つ。
【0032】
タイマ回路42はセットされた値をカウント後、ヘッド制御信号生成回路43へカウントアップを通知する。ヘッド制御信号生成回路43は、タイマ回路42からのカウントアップ通知を受けて、データラッチ信号をサーマルヘッド5内のシフトレジスタ51へ出力する。シフトレジスタ51は、データラッチ信号を受信し、それまでにシフトインしていた履歴パターンをラッチして次のラッチ信号が受信されるまで、発熱素子を駆動する。ヘッド制御信号生成回路43はこのデータラッチ信号の他、発熱素子の駆動を許可する印加許可信号と、実際に履歴パターンをシフトインさせるために必要なシフトクロック信号の出力も行う。
【0033】
本動作例によるタイミングを図2に示す。尚、履歴パターンの転送順序、印加許可信号の電気的論理、及び、履歴要因数は本実施の形態に適用するものであって、これに限定するものではない。 本発明の他の実施の形態としては、図1において、サーマルヘッドインタフェースLSI4を用いているが、使用するCPUによりCPU自体に内蔵される、タイマ回路、シリアルインタフェース回路等を用いて、サーマルヘッド5を直接制御することも可能である。この場合、サーマルヘッドインタフェースLSI4は不要となり、よりコストの低減が見込まれる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の効果は、履歴パターンの生成処理をソフトウェアで行うことにより、システムのコスト低減が可能となることである。
その理由は、これまで履歴パターン生成処理は、図8に示す様に外部に設けた専用回路である熱履歴制御回路44により行っており、また過去の印字データを保持する機構もこの回路に設ける必要があった。この為、回路規模が非常に大きくなり、結果的にシステムコストの増大を招いていたが、近年のマイクロプロセッサの高速化により、この様な処理をソフトウェアで実現することが可能となったからである。
【0035】
第2の効果は、より高精度な熱履歴制御を行うことができることである。
その理由は、図8に示す様に従来の方法では、外部に設けた熱履歴制御回路44を用いて、履歴パターンの生成処理を行っており、過去の印字データを保持する機構もこの回路に設けておく必要があるが、この為、ハードウェアとして保持できる印字ライン数が固定されてしまい、結果として最大で生成できる履歴パターン数が限られてしまう。これは更なる印字速度の高速化等で、より高精度な熱履歴制御を行う必要が出てきた場合には大きな障壁となる。本発明では従来熱履歴制御回路44に頼っていた処理をソフトウェアで処理することにより、マイクロプロセッサの性能と物理的な印加周期の制限を除けば理論上は無限に履歴パターンを生成出来るからである。
【0036】
第3の効果は、従来の熱履歴制御のアルゴリズムでは不可能だった制御を行うことで、より的確な熱エネルギーのコントロールを行えることにある。
【0037】
その理由は、従来の熱履歴制御は、単純に過去の印字ドットが印加されていれば、印字を行わないという原理に成り立っており、この仕組みだけでも実際は十分熱エネルギーの制御は可能である。しかしながら厳密に言えば、例として図7の様なパターンを考えた時、まずパターンAとパターンBでは理論上はパターンBの方が蓄熱が多いと考えられるが、実際は共に蓄熱による影響を最も与える直前ドットTaを印字しており、蓄熱量としてはその後方のドットTb0の有無を無視出来る程に影響を与えている場合が多い。この為パターンAとパターンBにおいてT0を印加する時点では、ほぼ同等の蓄熱量と考えられる。ところが、熱履歴制御によりパターンAの方はTb0を印字していない為、Tb0に対応する履歴パターンは通電するデータとして生成され印加される。
この結果、パタ―ンAとパターンBでの印字結果に印字濃度の差が出てしまう可能性がある。これを回避するには、Tb0に割り当てている時間、つまり履歴タイマ値を小さくすることによりTb0の通電する時間を短くする必要がある。
【0038】
一方、パターンCとパターンDを見ると、パターンCはTb0を印加しているため、T0に対する蓄熱の影響を考慮する必要があるが、ここで先の理由でTb0に割り当てている時間を短くしていた場合、十分な熱エネルギーの減衰が出来なく、結果として、パターンDを印加する場合と同様、最大に近いエネルギーで印加されることになる。故にこれらの相反する現象を回避するには、直前ドットTaを印字した場合にのみTb0の印字結果を無視すれば良いが、従来の熱履歴制御ではハードウェアで制御方法が固定化されており、この様な処理に柔軟に対応できなかった。
【0039】
本発明のソフトウェアで熱履歴制御を行う方法の場合は、この様な処理にも対応でき各サーマルヘッドの特性に合致した制御を柔軟に行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】この実施の形態おける動作タイミングチャートの一例を示す図である。
【図3】この実施の形態における履歴要因Taに対応する履歴パターンの生成例を示す図である。
【図4】この実施の形態における履歴要因Tb1に対応する履歴パターンの生成例を示す図である。
【図5】この実施の形態におけるサーマルヘッドの特性を示す図である。
【図6】この実施の形態における熱履歴制御の概要
【図7】この実施の形態における熱履歴制御のパターン例を示す図である。
【図8】従来例の構成を示すブロック図である。
【図9】従来例の動作タイミングを示す図である。
【符号の説明】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 サーマルヘッドインタフェースLSI
5 サーマルヘッド
31 印字データ格納エリア
32 履歴パターン格納エリア
41 パラレル/シリアル変換回路
42 タイマ回路
43 ヘッド制御信号生成回路
51 シフトレジスタ

Claims (5)

  1. これから印字するラインのドットイメージと、すでに印字が完了した後の印字ラインのドットイメージとが数ライン分保持されている印字データ格納エリアと、
    前記これから印字するラインのドットそれぞれに対する履歴パターンを格納している履歴パターン格納エリアとを含むRAMと、
    前記印字データ格納エリアに格納されている前記ドットイメージのうち、前記これから印字するラインに含まれるドットが、
    非印字ドットである場合には通電を行わず、
    印字ドットである場合には、前記ドットに対して蓄熱の影響を及ぼす可能性がある過去の印字ドットの印字履歴を示す履歴要因に基づいて、前記ドットに対応する発熱素子に対する印加時間を示す通電時間から過去に印字した履歴要因に割り当てられた時間のみ間引くよう演算する熱履歴制御アルゴリズムを用いて、前記これから印字するラインに含まれるドットごとの演算結果である履歴パターンを生成する処理と、
    前記演算結果の前記履歴パターンを前記履歴パターン格納エリアに格納する処理と
    前記各履歴要因に割り付けた時間を示す履歴タイマ値をタイマ回路へセットする処理とを実行するCPUと、
    バスインタフェースから受けた前記履歴パターンを示すパラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路と、前記履歴タイマ値によりタイマカウント動作を行うタイマ回路と、前記タイマ回路で生成されたタイミングに従って、データラッチ信号の出力を調整するヘッド制御信号生成回路とを有し、前記発熱素子に出力する印加信号を生成するシフトレジスタに、前記データラッチ信号と、前記シリアルデータを出力するサーマルヘッドインタフェースLSIとを備える熱履歴制御装置。
  2. 前記CPUは、前記熱履歴制御アルゴリズムに基づいて、
    前記これから印字するラインのドットイメージの各ドットに対して、
    前記印字データ格納エリアを参照し、
    前記すでに印字が完了した後の印字ラインのドットイメージのうち、
    前記各ドットを印字する各発熱素子が過去に印字したドットを示すドット列であり、かつ過去nライン分の印字ラインに含まれる印字ドット、及びその左右の印字ドットが過去に印字していた場合“0”、印字していない場合“1”として演算を行うことで、履歴パターンを生成する処理を行う請求項1に記載の熱履歴制御装置。
  3. 印字データ格納エリアに、これから印字するラインのドットイメージと、1ライン前からnライン前までの前記すでに印字が完了した後の印字ラインのドットイメージとが格納され、
    これから印字するラインの各ドットに対して、
    前記印字データ格納エリアを参照し、
    前記これから印字するラインのドットが、
    非印字ドットである場合には通電を行わない履歴パターンを、
    印字ドットである場合には、前記ドットに対して蓄熱の影響を及ぼす可能性がある過去の印字ドットの印字履歴を示す履歴要因に基づいて、前記ドットに対応する発熱素子に対する印加時間を示す通電時間から過去に印字した履歴要因に割り当てられた時間のみ間引くよう演算する熱履歴制御アルゴリズムを用いて、前記これから印字するラインに含まれるドットごとの演算結果である履歴パターンとを演算し、その結果、生成された履歴パターンを、
    履歴パターン格納エリアへ格納していき、
    過去nライン分全ての演算が完了した後、サーマルヘッドインタフェースLSIが有するパラレル/シリアル変換回路へ、各履歴要因に対応する前記履歴パターンごとに転送を行い、同時に前記演算結果に基づき、前記履歴パターンが有する前記各履歴要因に割り付け た時間を示す履歴タイマ値を前記サーマルヘッドインタフェースLSIが有するタイマ回路へセットすることで生成されたタイミングに基づいて、
    ヘッド制御信号生成回路から出力される制御信号に含まれるデータラッチ信号の発生タイミングを調整し、前記パラレル/シリアル変換回路から出力されるシリアルデータの出力を制御して、シフトレジスタが前記発熱素子に出力する印加信号の出力を調整する熱履歴制御方法。
  4. 請求項3記載の熱履歴制御を行うことを特徴とするサーマルプリンタ。
  5. コンピュータに請求項2に記載の前記熱履歴制御アルゴリズムの処理を実行させるための熱履歴制御用プログラム。
JP2002219830A 2002-07-29 2002-07-29 熱履歴制御装置、熱履歴制御方法、熱履歴制御用プログラム、及び熱履歴制御を行うサーマルプリンタ Expired - Fee Related JP4086579B2 (ja)

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