以下、本発明の一実施の形態であるテープ印刷装置1の構成を図1を参照して説明する。テープ印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット(図示外)から排出されるテープに対して印字を行い、印字済みのテープを外部排出する印刷装置であり、図示外の筐体上にキーボード3と液晶ディスプレイ4を有している。また、テープ印刷装置1は、接続インターフェース71により外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と有線または無線接続することができる。従って、テープ印刷装置1は、外部機器から送信された印字データを印字することも可能である。本実施の形態のテープ印刷装置1では、高速印字の場合(一例として、印字媒体の搬送速度が40mm/sより大の場合)には、現在の印字ドットに対して主走査方向で隣接する印字ドッドの補助加熱は、後述する第一印字制御により、当該隣接する印字ドッドに対向する発熱素子に行う。また、低速印字の場合(一例として、印字媒体の搬送速度が40mm/s以下の場合)には、現在の印字ドットに対して主走査方向で隣接する印字ドッドの補助加熱は、当該現在の印字ドットの印字周期内で行うようになっている。
次に、テープ印刷装置1の電気的構成について、図1を参照して詳細に説明する。テープ印刷装置1内には、制御基板(図示外)が配設されており、この制御基板上には、制御部60、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
制御部60は、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66により構成されている。また、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、サーミスタ73、キーボード3、接続インターフェース71にも接続されている。CPU61は、テープ印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、このCPU61は、キーボード3等からの入力信号及び後述する各種制御プログラム等に基づいて、液晶ディスプレイ4等の各周辺装置を制御する。また、ヘッド駆動回路68にはサーマルヘッド41が接続され、切断用モータ駆動回路69には切断用モータ72が接続され、搬送モータ駆動回路70には、テープ搬送モータ2が接続されている。
また、CG−ROM62は、印字される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。また、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該テープ印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。そして、ROM64には、テープ印刷装置1における各種制御プログラムやデータが格納されている。従って、後述する制御プログラムは、このROM64に格納されている。
また、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。このRAM66には、キーボード3の入力により生成された印字データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印字データも格納される。そして、タイマ67は、テープ印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。具体的には、タイマ67は、後述する制御プログラムにおいて、図2に示すサーマルヘッド41の発熱素子41Aに対する通電(パルス印加)等の開始・終了を判断する際に参照される。また、サーミスタ73はサーマルヘッド41の温度を検出する為のセンサであり、サーマルヘッド41に取り付けられている。
ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号に基づいて、後述する制御プログラムに基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を供給し、サーマルヘッド41の駆動状態を制御する回路である。この時、ヘッド駆動回路68は、発熱素子41A毎に対応付けられたストローブ番号に関連付けられた信号(ストローブ(STB)信号)に基づいて、各発熱素子41Aの通電(パルス印加)の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を供給し、切断用モータ72の駆動制御を行う回路である。また、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を供給し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う制御回路である。これにより、「搬送装置」が構成される。
次に、図2を参照して、サーマルヘッド41の構造について説明する。図2に示すように、サーマルヘッド41は、複数(例えば、384個や1024個や2048個)の発熱素子41Aを1列に列設させたラインヘッド41B等で構成される。発熱素子41Aが1列に並んだ方向が「サーマルヘッド41の主走査方向A」である。これに対して、「サーマルヘッド41の主走査方向A」に垂直な方向が「サーマルヘッド41の副走査方向B」である。尚、サーマルヘッド41は、プレート42に固定されている。
本実施形態では、サーマルヘッド41が駆動されて、ラインヘッド41Bによる1ライン毎の印字処理が行われる際には、ラインヘッド41Bを構成する複数の発熱素子41Aは、図3に示すように、以下の(1)〜(3)のいずれかの駆動状態にされる。
(1)主加熱された第一発熱素子41C。
(2)補助加熱された第二発熱素子41D。
(3)駆動(主加熱も補助加熱も)されていない第3発熱素子41E。
主加熱とは、印刷媒体100(図5参照)に印字ドットを形成することができるエネルギーを与えることをいう。この点、本実施形態に係るテープ印刷装置1では、後述するように、インクリボンを使用するので、主加熱が行われることによって第一発熱素子41Cの駆動状態になる発熱素子41Aには、インクリボン上のインクを溶融或いは昇華させることができるエネルギーが与えられる。尚、インクリボンを使用せず、印刷媒体100として感熱テープを使用しても良い。
補助加熱とは、単独では印刷媒体100に印字ドットを形成することができないが主加熱と相俟って印刷媒体100に印字ドットを形成することができるエネルギーを与えることをいう。この点、本実施の形態に係るテープ印刷装置では、後述するように、インクリボンを使用するので、補助加熱が行われることによって第二発熱素子41Dの駆動状態になる発熱素子41Aには、インクリボン上のインクを溶融或いは昇華させることができるエネルギーまでは与えられない。
ここで、図4を参照して、副走査方向における補助加熱の一例を説明する。例えば、現在の1ラインの印字処理Q(N)で主加熱が行われないものに補助加熱が行われ、次の1ラインの印字処理Q(N+1)で主加熱されて第一発熱素子41Cの駆動状態となる。
このような主加熱と補助加熱による熱履歴制御(サーマルヘッド41の駆動制御)を、サーマルヘッド41のラインヘッド41Bを構成する各発熱素子41Aに対する印加パルス制御を図5、図6及び図7を参照して説明する。図7では、横軸は時間(t)を示し、縦軸は印加パルスの電圧値又は電流値を示す。従って、図6では、左から右に向かって時間が経過し、印加パルスはロウ・アクティブで表示される。
図5は、高速印字の場合に、テープ印刷装置1のサーマルヘッド41により、印刷媒体100に形成される印字ドットの一例を示した図であり、図5においては、矢印C方向が副走査方向であり、矢印C方向と直交する方向が主走査方向である。図5に示すように、印刷媒体100上において、印字ドット102及び103が副走査方向に連続してサーマルヘッド41の発熱素子41Aの主加熱により印字され、ドット111,112,113,114,101,104は印字がされない非印字ドットである。
図5に示すように、印字ドット102が、図3に示す発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されるが、主走査方向において、隣接するドット112は、発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されず、また、副走査方向において、印字ドット102の1つ前のドット101も発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されない場合には、印字ドット102を印字するサーマルヘッド41の発熱素子41Aの発熱不足を補うために、サブパルスSUB1により印字ドット102の隣接ドット112に対向するサーマルヘッド41の発熱素子41Aの補助加熱を行う。また、後述するSUB2により、印字ドット102の副走査方向に於ける直前の非印字ドット101に対向する発熱素子41Aに補助加熱を行う。従って、ドット102は、エネルギー不足に成らずに、印字され、かすれも生じない。
図6は、低速印字の場合に、テープ印刷装置1のサーマルヘッド41により、印刷媒体100に形成される印字ドットの一例を示した図であり、図6においては、矢印C方向が副走査方向であり、矢印C方向と直交する方向が主走査方向である。図6に示すように、印刷媒体100上において、印字ドット202及び203が副走査方向に連続してサーマルヘッド41の発熱素子41Aの主加熱により印字され、ドット211,212,213,214,201,204は印字がされない非印字ドットである。
図6に示すように、印字ドット202が、図3に示す発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されるが、主走査方向において、印字ドット202に隣接するドット212は、発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されず、また、副走査方向において、印字ドット202の1つ前のドット201も発熱素子41Aにより印刷媒体100に印字されない場合には、印字ドット202を印字するサーマルヘッド41の発熱素子41Aの発熱不足を補うために、後述するサブパルスSUB1により印字ドット202を印字するサーマルヘッド41の発熱素子41Aの補助加熱を行う。また、SUB2により、印字ドット202の副走査方向に於ける直前の非印字ドット201に補助加熱を行う。従って、ドット202は、エネルギー不足に成らずに、印字され、かすれも生じない。
次に、高速印字時のサーマルヘッド41の発熱素子41Aの主加熱と補助加熱について、図5及び図7の印加パルスのタイミングチャートを参照して説明する。サーマルヘッド41の発熱素子41Aにより印字ドット102を印字する主加熱のパルスは、図7に示すメインパルスMPである。メインパルスMPは、所定幅の矩形波の基本パルスRPと、チョッピングパルスCPとから構成される。また、印字ドット102の主走査方向において隣接するドット112は印字されないが、主走査方向において、印字ドット102を印字する発熱素子41Aに隣接し、ドット112に対向する発熱素子41Aが補助加熱される。この主走査方向の隣接ドットの発熱素子41Aを補助加熱のためのパルスがサブパルスSUB1である。サブパルスSUB1は、メインパルスMPを構成する基本パルスRPとチョッピングパルスCPの一部から構成される。このチョッピングパルスCPの一部の長さは、サーマルヘッド41を用いた印字の実験により、過熱の防止に適切な長さに定められるものである。
また、副走査方向において、印字ドット102の直前のドット101が印字されない場合には、当該ドット101に対向する発熱素子41Aが補助加熱される。この副走査方向の隣接する直前のドット101に対向する発熱素子41Aの補助加熱のためのパルスがサブパルスSUB2である。
次に、低速印字時のサーマルヘッド41の発熱素子41Aの主加熱と補助加熱について、図6及び図8の印加パルスのタイミングチャートを参照して説明する。サーマルヘッド41の発熱素子41Aにより印字ドット202を印字する主加熱のパルスは、図8に示すメインパルスMPである。メインパルスMPは、所定幅の矩形波の基本パルスRPと、チョッピングパルスCPとから構成される。また、印字ドット202の主走査方向において隣接するドット212は印字されないので、印字ドット202を印字する発熱素子41Aが補助加熱される。この補助加熱のためのパルスがサブパルスSUB1である。このチョッピングパルスCPの一部の長さは、サーマルヘッド41を用いた印字の実験により、過熱の防止に適切な長さに定められるものである。また、サブパルスSUB1は、印字ドット202の印字周期内に付加される。これは、印字ドット202の印字は、低速印字であり、印字ドット202の印字周期の長さに余裕があるためである。また、低速印字時は、印字ドット202の印字に高速印字時に比べてエネルギーが要るからである。
また、副走査方向において、印字ドット202の直前のドット201が印字されない場合には、当該ドット201に対向する発熱素子41Aが補助加熱される。この副走査方向の隣接する直前のドット201の補助加熱のためのパルスがサブパルスSUB2である。
次に、サーマルヘッド41による高速印字処理の流れを図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。現在の1ライン(1ドット)の印字周期が、タイミングT0からタイミングT5までを1周期として行われるとする。この現在の1ライン印字周期では、例えば、図5に示すドット102が印字処理される場合、ドット102を印字する発熱素子41Aに、タイミングT0からT1まで、メインパルスMPを構成する基本パルスRPが印加され、タイミングT1からT3まで、メインパルスMPを構成するチョッピングパルスCPが印加される。従って、発熱素子41Aが主加熱されて第一発熱素子41Cの駆動状態になり、印字ドット102が印字される。ここで、メインパルスMPを基本パルスRPとチョッピングパルスCPとで構成しているのは、ドット102を印字するために、基本パルスRPにより所定の温度まで一気に加熱し、チョッピングパルスCPにより、一定に温度を保つ制御を行い過熱を防止するためである。また、現在の1ライン前の印字処理により、ドット101が印字されないので、ドット101に対向する発熱素子41Aには、現在の印字周期の直前の印字周期内の最後にタイミングTBからT0まで、補助パルスSUB2が事前に印加される。
更に、ドット102の現在の印字周期において、ドット102を印字する発熱素子に、主走査方向で隣接する非印字のドット112に対向する発熱素子41Aには、タイミングT0からT2までサブパルスSUB1が印加される。具体的には、サブパルスSUB1として、タイミングT0からT1まで、メインパルスMPを構成する基本パルスRPが印加され、タイミングT1からT2までは、メインパルスMPを構成するチョッピングパルスCPの一部が印加される。従って、ドット102に主走査方向において隣接するドット112は印字されないが、印字ドット102を印字する発熱素子は、エネルギー不足に成らずに、印字ドット102にかすれを生じずに印字できる。尚、サブパルスSUB1を基本パルスRPとチョッピングパルスCPの一部とで構成しているのは、サブパルスSUB1のデータの準備を早くするためである。尚、サブパルスSUB1が印加されるタイミングT0からT2までの時間は、前記ラインヘッド41Bの印字データの切り替え時間より長い時間になっている。
次に、サーマルヘッド41による低速印字処理の流れを図8に示すタイミングチャートを参照して説明する。現在の1ライン(1ドット)の印字周期が、タイミングTL0からタイミングTL6までを1周期として行われるとする。この現在の1ライン印字周期では、例えば、図6に示すドット202が印字処理される場合、ドット202を印字する発熱素子41Aに、タイミングTL0からTL1まで、メインパルスMPを構成する基本パルスRPが印加され、タイミングTL1からTL3まで、メインパルスMPを構成するチョッピングパルスCPが印加される。従って、発熱素子41Aが主加熱されて第一発熱素子41Cの駆動状態になり、印字ドット202が印字される。ここで、メインパルスMPを基本パルスRPとチョッピングパルスCPとで構成しているのは、ドット202を印字するために、基本パルスRPにより所定の温度まで一気に加熱し、チョッピングパルスCPにより、一定に温度を保つ制御を行い過熱を防止するためである。また、現在の1ライン前の印字処理により、ドット201が印字されないので、ドット201に対向する発熱素子41Aには、現在の印字周期の直前の印字周期内の最後にタイミングTLBからTL0まで、補助パルスSUB2が事前に印加される。
更に、ドット202の現在の印字周期内において、ドット202を印字する発熱素子41Aに、主走査方向で隣接する非印字のドット212が印字されないためのエネルギー不足を補うためのサブパルスSUB1が、タイミングTL4からTL5まで印加される。具体的には、サブパルスSUB1として、タイミングTL4からTL5まで、メインパルスMPを構成するチョッピングパルスCPの一部が印加される。従って、ドット202に主走査方向において隣接するドット212は印字されないが、印字ドット202を印字する発熱素子は、エネルギー不足に成らずに、印字ドット202にかすれを生じずに印字できる。尚、サブパルスSUB1をチョッピングパルスCPの一部で構成しているのは、サブパルスSUB1のデータの準備を早くするためである。尚、サブパルスSUB1が印加されるタイミングTL4からTL5までの時間は、前記ラインヘッド41Bの印字データの切り替え時間より長い時間になっている。
次に、サーマルヘッド41による印字処理の流れを図9から図11に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、図9を参照して、テープ印刷装置1の制御部60のCPU61が実行する主印字制御について説明する。尚、図9から図11に示すフローチャートの制御プログラムは、ROM64に記憶されており、CPU61が実行する。
まず、図9に示す主印字制御では、印字速度の変化があることを印字データ等からCPU61が検出すると(S1:YES)、変化する印字速度が、40mm/s以下か否かが判断される(S4)。変化する印字速度が、40mm/s以下の場合には(S4:YES)、低速印字制御である第二印字制御(図11参照)で印字を行う(S5)。また、変化する印字速度が、40mm/s以下でない場合には(S4:NO)、高速印字制御である第一印字制御(図10参照)で印字を行う(S6)。尚、高速印字、低速印字の閾値は、40mm/sに限られず、使用するサーマルヘッド41の発熱素子41Aの特性及び使用する印字媒体の感熱の特性に応じて、実験等により決められる。尚、印字速度の変化がない場合には(S1:NO)、その他の通常処理(S2)を行い、印字が終了でない場合には(S3:NO)、S1に戻る。また、印字が終了の場合には(S3:YES)、主印字制御を終了する。
次に、図10のフローチャートを参照して、テープ印刷装置1のサーマルヘッド41の高速印字時に行われる第一印字制御のサブルーチンについて説明する。図10のフローチャートで示された制御プログラムは、ROM64等に記憶されており、CPU61により実行される。
図10に示すように、サーマルヘッド41の第一印字制御では、先ず、CPU61は、RAM66から印字データの先読みを行い、サーマルヘッド印字列データ(サブパルスSUB1、SUB2、メインパルスMP)を作成する(S11)。このとき、CPU61は、補助加熱条件に基づき、1ライン分のサブパルスデータやメインパルスデータが各印字周期毎に整理された「サーマルヘッド印字列データ」を作成する。ここで、補助過熱条件は、一例として、SUB1については、印字されるドットの主走査方向において隣接するドットが印字されない場合である。また、SUB2については、印字されるドットの副走査方向の直前のドットが印字されない場合である。尚、この補助過熱条件は、上記の条件に加えて、発熱素子41Aの印字履歴に基づいた蓄熱を考慮して決めても良い。また、最初の印字周期の1ライン分の「サーマルヘッド印字列データ」については、サーミスタ73によるサーマルヘッド41の検出温度Zに基づいて決定された「温度情報」などが、サブパルスSUB2の印加パルス幅の決定に反映される。尚、その1ライン分のサブパルスデータやメインパルスデータは、サーマルヘッド41のラインヘッド41Bを構成する各発熱素子41A毎に決定されている。
S11では、さらに、CPU61は、サブパルスデータSUB2をヘッド駆動回路68に対して転送する。次いで、CPU61は、サブパルスSUB2の開始タイミングであるか否かを判断する(S12)。この判断は、タイマ67等を使用して行われる。すなわち、サブパルスSUB2の印加が開始されるタイミングTBであるか否かが判断される。ここで、サブパルスSUB2の開始タイミングでない場合には(S12:NO)、CPU61は、サブパルスSUB2をヘッド駆動回路68に対して転送し、メインパルスMP及びサブパルスSUB1を作成する(S14)。その後、S12に戻ることによって、サブパルスSUB2の開始タイミングが到来するまで待機する。
一方、サブパルスSUB2の開始タイミングである場合には(S12:YES)、CPU61は、サブパルスSUB2の印加を開始する(S13)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、この時点で転送されているサブパルスデータSUB2をラッチさせ、ストローブ(以下、「STB」と言う。)信号をLOWにして、補助加熱対象の発熱素子41AにサブパルスSUB2を印加させて第二発熱素子41Dの駆動状態にする(S13)。
次いで、CPU61は、印字周期の開始時点又は終了時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)であるか否かを判断する(S15)。この判断は、タイマ67等を使用して行われる。すなわち、サブパルスSUB2の印加が終了され、メインパルスMPの印加が開始される主加熱開始時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)であるタイミングT0であるか否かが判断される(S15)。
ここで、印字周期の開始時点及び終了時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)でない場合には(S15:NO)、CPU61は、この時点での転送対象であるメインパルスMP及びサブパルスSUB1のデータをヘッド駆動回路68に対して1回に限り転送する(S17)。その後は、CPU61はS15に戻る。
一方、印字周期の開始時点又は終了時点である場合には(S15:YES)、CPU61は、メインパルスMP及びサブパルスSUB1による加熱を開始する(S16)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、上記S17で転送されたメインパルスMP及びサブパルスSUB1のデータをラッチさせ、主加熱対象の発熱素子41AにメインパルスMPを印加させて第一発熱素子41Cの駆動状態にする(S16)。また、主加熱対象の発熱素子41Aに主走査方向で隣接する発熱素子41AにサブパルスSUB1を印加させ第二発熱素子41Dの駆動状態にする。ここでは、STB信号をLOWに維持する。
次いで、基本パルスRPの時間終了か否かを判断する(S18)。即ち、基本パルスRPの時間が終了するタイミングT1の場合には(S18:YES)、チョッピングパルスCPの印加を開始する(S19)。チョッピングパルスCPは、STB信号のON/OFFの繰り返しにより実現する。また、タイミングT0とT1の間で基本パルスRPの時間が終了する時間でない場合には(S18:NO)、メインパルスMPだけを準備し(S20)、S18の判断処理に戻る。
次いで、サブパルスSUB1の終了時間(タイミングT2)になるまでの間に(S21:NO)、メインパルスMPのデータをヘッド駆動回路68に対して転送する(S23)。サブパルスSUB1の終了時間(タイミングT2)になった場合には(S21:YES)、CPU61は、メインパルスMPによる加熱を開始する(S22)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、上記S23で転送されたメインパルスMPのデータをラッチさせ、主加熱対象の発熱素子41AにメインパルスMPを印加させて第一発熱素子41Cの駆動状態にする。また、チョッピングパルスCPによるチョッピングは、継続する(S22)。
次いで、メインパルスMPのチョッピングパルスCPの終了時間までは(S24:NO)、次のラインのサブパルスSUB2のデータを準備する(図8に示すタイミングT4からのサブパルスSUB2を準備する)(S26)。メインパルスMPのチョッピングパルスCPの終了時間となった場合には(S24:YES)、STB信号をHIにして、発熱素子41AをOFFにする(S25)。
次いで、未印字の印字データが残っており、印字終了でない場合には(S27:NO)、次のラインのサブパルスSUB2の作成をし、メインパルスMP及びサブパルスSUB1の準備を行い(S28)、その他の処理を行い(S29)、S12に戻り、S12からS27の処理を繰り返す。また、未印字の印字データが無く、印字終了の場合には(S27:YES)、印字処理を終了し、図9に示す主印字制御に戻る。
次に、図11のフローチャートを参照して、テープ印刷装置1のサーマルヘッド41の低速印字時に行われる第二印字制御のサブルーチンについて説明する。図11のフローチャートで示された制御プログラムは、ROM64等に記憶されており、CPU61により実行される。
図11に示すように、サーマルヘッド41の第二印字制御では、先ず、CPU61は、RAM66から印字データの先読みを行い、サーマルヘッド印字列データ(サブパルスSUB1、SUB2、メインパルスMP)を作成する(S41)。このとき、CPU61は、補助加熱条件に基づき、1ライン分のサブパルスデータやメインパルスデータが各印字周期毎に整理された「サーマルヘッド印字列データ」を作成する。ここで、補助過熱条件は、一例として、SUB1については、印字されるドットの主走査方向において隣接するドットが印字されない場合である。また、SUB2については、印字されるドットの副走査方向の直前のドットが印字されない場合である。尚、この補助過熱条件は、上記の条件に加えて、発熱素子41Aの印字履歴に基づいた蓄熱を考慮して決めても良い。また、最初の印字周期の1ライン分の「サーマルヘッド印字列データ」については、サーミスタ73によるサーマルヘッド41の検出温度Zに基づいて決定された「温度情報」などが、サブパルスSUB2の印加パルス幅の決定に反映される。尚、その1ライン分のサブパルスデータやメインパルスデータは、サーマルヘッド41のラインヘッド41Bを構成する各発熱素子41A毎に決定されている。
S41では、さらに、CPU61は、サブパルスデータSUB2をヘッド駆動回路68に対して転送する。次いで、CPU61は、サブパルスSUB2の開始タイミングであるか否かを判断する(S42)。この判断は、タイマ67等を使用して行われる。すなわち、サブパルスSUB2の印加が開始されるタイミングTLBであるか否かが判断される。ここで、サブパルスSUB2の開始タイミングでない場合には(S42:NO)、CPU61は、サブパルスSUB2をヘッド駆動回路68に対して転送し、メインパルスMPを作成する(S44)。その後、S42に戻ることによって、サブパルスSUB2の開始タイミングが到来するまで待機する。
一方、サブパルスSUB2の開始タイミングである場合には(S42:YES)、CPU61は、サブパルスSUB2の印加を開始する(S43)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、この時点で転送されているサブパルスデータSUB2をラッチさせ、ストローブ(以下、「STB」と言う。)信号をLOWにして、補助加熱対象の発熱素子41AにサブパルスSUB2を印加させて第二発熱素子41Dの駆動状態にする(S43)。
次いで、CPU61は、印字周期の開始時点又は終了時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)であるか否かを判断する(S45)。この判断は、タイマ67等を使用して行われる。すなわち、サブパルスSUB2の印加が終了され、メインパルスMPの印加が開始される主加熱開始時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)であるタイミングTL0であるか否かが判断される(S45)。
ここで、印字周期の開始時点及び終了時点(サブパルスSUB2による補助加熱の終了時点)でない場合には(S45:NO)、CPU61は、この時点での転送対象であるメインパルスMPのデータをヘッド駆動回路68に対して1回に限り転送する(S47)。その後は、CPU61はS45に戻る。
一方、印字周期の開始時点又は終了時点である場合には(S45:YES)、CPU61は、メインパルスMPによる加熱を開始する(S46)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、上記S47で転送されたメインパルスMPのデータをラッチさせ、主加熱対象の発熱素子41AにメインパルスMPを印加させて第一発熱素子41Cの駆動状態にする(S46)。ここでは、STB信号をLOWに維持する。
次いで、基本パルスRPの時間終了か否かを判断する(S48)。即ち、基本パルスRPの時間が終了するタイミングTL1の場合には(S48:YES)、チョッピングパルスCPの印加を開始する(S49)。チョッピングパルスCPは、STB信号のON/OFFの繰り返しにより実現する。また、タイミングTL0とTL1の間で基本パルスRPの時間が終了する時間でない場合には(S48:NO)、サブパルスSUB1のデータをヘッド駆動回路68に対して転送し(S50)、S48の判断処理に戻る。
次いで、メインパルスMPのチョッピングパルスCPの終了時間(タイミングTL3)になるまでの間に(S51:NO)、次のラインのサブパルスSUB2のデータを準備する(S53)。メインパルスMPのチョッピングパルスCPの終了時間(タイミングTL3)になった場合には(S51:YES)、CPU61は、タイミングTL4からサブパルスSUB1による補助加熱を開始する(S52)。すなわち、CPU61は、ヘッド駆動回路68に対して、上記S50で転送されたサブパルスSUB1のデータをラッチさせ、主加熱対象の発熱素子41AにサブパルスSUB1を印加させて、第二発熱素子41Dの駆動状態にする。また、サブパルスSUB1のチョッピングは継続する(S52)。
次いで、サブパルスSUB1のチョッピングの終了時間までは(S54:NO)、次のラインのメインパルスMPのデータを準備する(図8に示すタイミングTL4からの次のラインのメインパルスMPのデータを準備する)(S56)。サブパルスSUB1のチョッピングの終了時間(タイミングTL5)となった場合には(S54:YES)、STB信号をHIにして、発熱素子41AをOFFにする(S55)。
次いで、未印字の印字データが残っており、印字終了でない場合には(S57:NO)、次のラインのサブパルスSUB2の作成をし(S58)、その他の処理を行い(S59)、S42に戻り、S42からS57の処理を繰り返す。また、未印字の印字データが無く、印字終了の場合には(S57:YES)、印字処理を終了し、図9に示す主印字制御に戻る。
以上説明したように、本実施の形態のテープ印刷装置1では、印字ドット102が、印刷媒体100に印字される場合に、主走査方向において印字ドット102に隣接するドット112が印刷媒体100に印字されない場合には、高速印字時には、主走査方向において印字ドット102に隣接するドット112に対向する発熱素子41AにサブパルスSUB1を印加する。また、低速印字時には、印字ドット102を印字する発熱素子41AにサブパルスSUB1を印加する。従って、印字速度に拘わらず、印字ドット102を印字する発熱素子41Aがエネルギー不足になることがなく、印字ドット102のかすれを防止できる。また、副走査方向において、印字ドット102の1つ前のドット101も印刷媒体100に印字されない場合には、印字ドット102を印字する発熱素子41AへのメインパルスMP以外に、印字ドット102の副走査方向における1つ前のドット101にサブパルスSUB2を印加するので、印字ドット102を印字する発熱素子41Aがエネルギー不足になることがなく、印字ドット102のかすれを防止できる。また、サブパルスSUB2は、印字ドット102を印字する印字周期内には、付加されず、サブパルスSUB1は、メインパルスMPの印加タイミングT0と同時に印加され、当該サブパルスSUB1は、メインパルスMPの基本パルスRPとチョッピングパルスCPの一部から構成されるので、印字周期を長くすることがなく、高速に印字できる。また、低速印字には、印字ドット102を印字する発熱素子41AにサブパルスSUB1が印加されるので、印字エネルギーの要る低速印字にも、印字ドット102のかすれを防止できる。
尚、本実施の形態は、各種の変形が可能である。例えは、本実施形態では、「印刷装置」の一例として、テープ印刷装置1を用いて説明したが、サーマルヘッド41を搭載する種々のサーマルプリンターであっても、本発明を適用することができる。そして、例えば、印刷媒体が感熱紙であるサーマルプリンターの場合には、主加熱とは、印刷媒体である感熱紙を発色させることができるエネルギーを与えることであり、補助加熱とは、単独では印刷媒体である感熱紙を発色させられないが主加熱と相俟って印刷媒体である感熱紙を発色させることができるエネルギーを与えることである。また、印刷媒体にインクリボンから転写する印刷装置の場合には、主加熱とは、インクリボンから転写できるエネルギーを与えることであり、補助加熱とは、単独ではインクリボンから転写できないが、主加熱と相俟って印刷媒体にインクリボンから転写できるエネルギーを与えることである。