JP4086401B2 - 防水性手袋およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は防水性手袋およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、布帛に合成樹脂および/またはゴムを含浸および/または付着してなるシート状材料を裁断し縫製して手袋を形成し、それを防水処理した防水性手袋およびその製造方法に関するものであり、本発明の防水性手袋は、柔軟性および風合に優れ、しかも縫い糸や縫い目部分および手袋本体部分からの水の侵入がなく、耐久性に優れる高い防水性能を有する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニルレザー、合成皮革、人工皮革などのような、布帛に合成樹脂をコートまたは含浸して得られるシート状材料を裁断し縫製して得られる手袋は、軽量で、耐寒性、柔軟性、風合などに優れていることから、近年広く用いられるようになっている。このような手袋の縫製や装飾のために、ミシン縫いが一般に採用されているが、ミシン目の穴部分や縫い糸部分から水が侵入することが多く、また場合によっては手袋本体を構成するシート状材料部からも水が侵入し、防水性が十分であるとは云えない。
【0003】
防水性手袋としては、予め防水処理(撥水処理)を施したシート状材料を裁断し縫製して形成したものが知られている。しかしながら、この手袋は、手袋本体を構成するシート状材料部分は防水処理されているが、縫い目や縫い糸部分は防水処理が施されていないため、降雨時や降雪時に着用すると、縫製時にあけられたミシン目などの縫い穴や縫い糸部分から水が侵入してしまい、防水が完全ではないという欠点を有する。
【0004】
そこで、手袋の縫い目穴や縫い糸部分からの水の侵入を防ぐ各種の方法が従来から提案されている。そのような従来技術としては、例えば、▲1▼縫い目に裏面粘着テープを貼着したもの、▲2▼発泡剤を含有するポリウレタン樹脂等で予め処理した縫い糸を用いて手袋の縫製を行い、その後に縫製部分を熱処理して発泡剤を発泡させて縫い目穴を封鎖して、縫い目穴や縫い糸部分からの水の侵入を防止するようにしたもの(特開昭54−6968号公報)、▲3▼ミシン縫いにより生成した縫い目の上に2−シアノアクリレート硬化物よりなる被覆層を設けたもの(特開平1−183591号公報)、▲4▼縫製に際して低温熱溶融性繊維を併用し、縫製により生じた縫い目穴を縫製後に該低温熱溶融性繊維を加熱溶融することによって封鎖するもの(特開昭56−118958号公報)、▲5▼少なくとも90℃の熱水中では不溶性であるが、水を吸収して100%以上膨潤する縫い糸(ミシン糸)を用いて縫製を行い、手袋等に水がかかった時に縫い糸を水で膨潤させて縫い目穴を封鎖して水の侵入を防止するもの(特開昭58−174646号公報)などを挙げることができる。しかしながら、これらの従来法は、いずれも縫製して得られる手袋の風合の硬直化を招いたり、外観不良を生じ易く、そのため柔軟性や風合に優れる人工皮革などを用いて手袋を製造しても、人工皮革などが本来有する特性を十分に活かすことができない。
【0005】
また、天然皮革、人造皮革またはこれらの皮革の裏面に合成樹脂フォームシートを積層した複合皮革を裁断・縫製して手袋をつくり、その表面に、手袋の開口部から液が侵入しないようにしながら刷毛、スプレー、浸漬などによってフッ素系樹脂の有機溶媒溶液を付着させた後、有機溶媒を飛散させて縫い目を防水する方法が提案されている(特開平58−181634号公報)。しかしながら、この方法による場合は、皮革、縫い糸、縫い目部分の表面部分にフッ素系樹脂が主として付着し、内部にまでフッ素樹脂が含浸付着していないため、防水性能が十分ではなく、手袋を降雨や降雪時に長時間使用すると、縫い糸や縫い目穴部分から水が侵入するという欠点がある。しかも、この方法による場合は、フッ素系樹脂の有機溶媒溶液を使用して防水処理を行っているため、人造皮革に用いている合成樹脂や前記複合皮革の合成樹脂フォームシートが有機溶媒によって膨潤、溶解または侵食されて、手袋の形崩れ、合成皮革中の微孔の消失による硬質化や風合の低下、外観不良などを生じ易いという欠点がある。
【0006】
さらに、メリヤス布の表面に撥水性、撥油性を有するフッ素樹脂やシリコン樹脂の薄膜層を形成した後、それを裁断し、縫製して手袋をつくり、その手袋に塩化ビニル樹脂ペーストまたはゴムラッテクスを塗布して、表面に塩化ビニル樹脂またはゴムを被着した手袋を製造する方法が知られている(特開平58−180604号公報)。しかしながら、この方法は、メリヤス布の深部にまで塩化ビニル樹脂ペーストまたはゴムラッテクスが浸透してメリヤス布(手袋)が硬質化するのを防止する目的で、塩化ビニル樹脂ペーストまたはゴムラッテクスを塗布する前のメリヤス布にフッ素樹脂またはシリコン樹脂を薄膜状に塗布するものであり、そのため手袋生地の表面、縫い糸および縫い目部分は防水処理が施されておらず、防水性が十分ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、手袋を構成するシート状材料が本来有している柔軟性や良好な風合を損なうことなくそのまま保持していて、素材の変質、硬質化、手袋の変形、外観不良などがなく、その一方で手袋本体、縫い糸、縫い目穴部分などからの水の侵入が無くて、耐久性に優れる高い防水性能を有する、高品質の防水性手袋を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した優れた特性を有する防水性手袋の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは種々検討を重ねてきた。その結果、布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し縫製して形成した手袋において、縫製したシート状材料片の裁断端を手袋の内側に折り込んだだ形態にするか、および/または複数のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いをした形態にし、且つ手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目穴のすべてに有機フッ素化合物系防水剤を含浸付着させると、手袋を構成するシート状材料が本来有する優れた柔軟性および風合を損なうことなく、そのまま維持し、しかも手袋の形崩れや外観不良などを生ずることなく、耐久性のある高い防水性能を有する高品質の防水性手袋が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、そのような高品質の防水性手袋は、前記シート状材料を裁断し縫製して手袋を形成し、それを特定の条件下で防水処理する、前記のようにして縫製して得られた手袋を有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に浸漬して撹拌下に防水処理することによって円滑に生産性良く製造できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(i)布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し縫製して形成した防水性手袋であって;
(ii)縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んであるか、またはシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いをしてあり;且つ、
(iii)手袋を構成するシート状材料片の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が含浸付着している;
ことを特徴とする防水性手袋である。
【0010】
そして、本発明は、
(2) 手袋を構成するシート状材料が、1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革、該人工皮革の少なくとも片面を起毛してなるスエード調人工皮革または該人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革である前記(1)の防水性手袋;
(3) 手袋を構成するシート状材料が1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革であって、該銀付調人工皮革の銀付面が手袋の外側に位置し、且つ縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んである前記(1)または(2)の防水性手袋;
(4) 縫い目のピッチ数が8個/2.5cm以上である前記(1)〜(3)のいずれかの防水性手袋;
(5) バイクライダー用、自転車ライダー用、またはスポーツ用の手袋である前記(1)〜(4)のいずれかの防水性手袋;
を好ましい態様として包含する。
【0011】
さらに、本発明は、
(6) 布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し、最終的に得られる防水性手袋において縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態になるようにしてシート状材料片間の縫製を行うか、またはシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いを行って手袋を製造し、次いで該手袋を有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に浸漬して撹拌下に防水処理することを特徴とする防水性手袋の製造方法である。
【0012】
そして、本発明は、
(7) 手袋を構成するシート状材料が、1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革、該人工皮革の少なくとも片面を起毛してなるスエード調人工皮革または該人工皮革の少なくとも片面に樹脂層を形成してなる銀付調人工皮革である前記(6)の製造方法;
(8) 1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革を所定の形状および寸法を有する銀付調人工皮革片に裁断し、最終的に得られる防水性手袋において縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態になり且つ人工皮革の銀付面が手袋の外側になるようにしてシート状材料片間の縫製を行い、次いで該手袋を有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に浸漬して撹拌下に防水処理することからなる前記(6)または(7)の製造方法;
(9) 有機フッ素化合物系防水剤による防水処理を、ワッシャー機を使用して行い、防水処理後に加熱乾燥を行う前記(6)〜(8)のいずれか記載の製造方法;
を好ましい態様として包含する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、防水性手袋を構成するシート状材料として、布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料であって且つ柔軟性のある、縫製可能なシート状材料であればいずれも使用できる。
シート状材料を構成する布帛は、不織布、織物、編物、それらの2つ以上を積層した複合布帛などのいずれであってもよく、そのうちでも不織布であることが風合、縫目強力、切断面が露出するような状態で使用しても意匠性に優れるなどの点から好ましい。また、布帛を構成する繊維は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成繊維、レーヨンやキュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、綿、羊毛、絹などの天然繊維、それらの2種以上の併用などのいずれであってもよい。そのうちでも、防水性、耐水性、強度、種々の要求性能を満足できるなどの点から布帛は合成繊維から形成されていることが好ましい。また、布帛を構成する繊維は、単繊維繊度が1デニール未満の極細繊維、1デニール以上の繊維、それらの併用のいずれであってもよく、そのうちでも単繊維繊度が1デニール未満の極細繊維、特に0.5デニール以下の極細繊維であることが、シート状材料の柔軟性、風合、縫い目強力、切断面の意匠性などが良好になる点から好ましい。
【0014】
布帛に含浸および/または付着させる合成樹脂および/またはゴムとしては、柔軟で且つ耐水性および耐久性に優れる合成樹脂および/またはゴムであればいずれも使用でき、例えば、弾性ポリウレタン、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー類;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、SBR、NBRなどの合成ゴム;天然ゴム;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などのオレフィン系重合体;アクリル系重合体;ポリビニルアルコール系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド;などを挙げることができる。これらの重合体は単独で用いてもまたは2種以上を併用してもよい。
【0015】
そのうちでも、防水性手袋を構成するシート状材料としては、極細繊維よりなる絡合不織布にポリウレタンエラストマーなどの弾性重合体を含浸したいわゆる人工皮革、布帛に塩化ビニル樹脂をコーティングした塩化ビニルレザー、布帛にポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂をコーティングしたいわゆる合成皮革などが、柔軟性、風合、防水性、耐水性、耐久性、軽量、取り扱い性などの点から好ましく用いられる。これらのうちでも、極細繊維よるなる絡合不織布にポリウレタンなどの弾性重合体を含浸した人工皮革は、柔軟性、風合、防水性、耐水性に優れ、しかも耐摩耗性、引裂強度などの力学的特性、縫製性、縫目強度などの諸特性に優れていることから、本発明の防水性手袋を構成するシート状材料として特に好ましく用いられる。
【0016】
防水性手袋を構成するシート状材料として好ましく用いられる、極細繊維よりなる絡合不織布にポリウレタンなどの弾性重合体を含浸してなる人工皮革の製法は特に制限されず従来既知の方法のいずれによって製造してもよく、例えば、(i)溶解性および/または分解性の異なる2種類以上のポリマーを用いて混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法などにより紡糸して極細繊維発生型繊維を製造し、該極細繊維発生型繊維から絡合不織布を製造し、該絡合不織布に弾性重合体を含浸して凝固させた後に絡合不織布を構成する極細繊維発生型繊維からポリマーの一部を抽出または分解除去して極細繊維化する方法;(ii)前記(i)と同様にして紡糸を行って極細繊維発生型繊維を製造し、該極細繊維発生型繊維から絡合不織布を製造し、絡合不織布を構成する極細繊維発生型繊維からポリマーの一部を抽出または分解除去して極細繊維化した後に弾性重合体を含浸して凝固させる方法;(iii)前記(i)と同様にして紡糸を行って極細繊維発生型繊維を製造し、該極細繊維発生型繊維を形成している一部のポリマー成分を抽出または分解除去して極細繊維を形成し、その極細繊維を用いて絡合不織布を形成した後に弾性重合体を含浸して凝固させる方法;(iv)溶融ポリマーを紡糸ノズルから吐き出した直後に高速気体を吹き付けて繊維を吹き飛ばして細くするメルトブロー法によって極細繊維を製造し、該極細繊維から絡合不織布を形成し、それに弾性重合体を含浸して凝固させる方法などを採用することができる。
これらの方法のうちでも、上記(i)の方法が、人工皮革を製造する際の工程性、極細繊維化の容易性、生成する極細繊維の均一性、絡合不織布へのポリウレタンなどの弾性重合体の含浸作業の容易性および含浸の均一性、得られる人工皮革の柔軟性、風合、外観などの点から好ましく採用される。
【0017】
上記(i)〜(iii)の方法で製造される極細繊維発生型繊維において、極細繊維として残留させるポリマー成分の代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香環を有するポリエステル類;ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド類;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などを挙げることができ、これらのポリマーの1種または2種以上が好ましく用いられる。しかしながら、勿論これら以外の繊維形成性ポリマーであってもよい。また、該極細繊維発生型繊維において、抽出または分解除去されるポリマー成分の代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−エチレン共重合体などを挙げることができ、これらのポリマーの1種または2種以上が好ましく用いられる。しかしながら、これら以外のポリマーも、抽出または分解除去されるポリマーとして用いることができる。
【0018】
また、人工皮革の製造に用いる絡合不織布の製造法は特に制限されず、従来から知られている方法によって行うことができる。例えば、極細繊維発生型繊維または既に極細化された繊維に対して延伸、熱固定、捲縮、切断、解綿処理などを行って原綿を製造した後、この原綿をカードで解繊し、ウエーバでランダムウエブまたはクロスラップウエブなどを形成し、必要に応じて前記ウエブを複数枚積層して所望の厚さ又は重さ(目付け)にし、それを公知の手段で絡合処理して絡合不織布を形成することができる。その際に、絡合処理を施す前のウエブまたはウエブ積層体の重さ(目付け)は、本発明の防水性手袋の用途などによって異なり得るが、一般に100〜3000g/m2の範囲であることが、天然皮革様の風合を有する人工皮革が得られ易く、且つ工程通過性が良好であることから好ましい。また、ウエブまたはウエブ積層体の絡合処理は、例えば、ニードルパンチング法、高圧水流噴射法などの従来既知の絡合方法により行うことができる。
【0019】
そして、上記(i)〜(iv)の方法では、これらの方法で得られる人工皮革の柔軟性、耐摩耗性などを一層良好し得る点から、絡合不織布に含浸する弾性重合体として、ポリウレタンが好ましく用いられる。
絡合不織布に含浸するポリウレタンは、弾性を有し且つ柔軟性および耐摩耗性に優れるポリウレタンであればいずれでもよい。一般的には、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテルエステル系ジオール、ポリカーボネート系ジオールなどの高分子ジオールの1種または2種以上をソフトセグメント用成分として用い、この高分子ジオールにジイソシアネート化合物および低分子量鎖伸長剤を反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが好ましく用いられる。
【0020】
ポリウレタンの製造に用いる上記した高分子ジオールとしては、数平均分子量が500〜5000の範囲のものが好ましく、1000〜5000の範囲のものがより好ましい。高分子ジオールの数平均分子量が500未満であると、ポリウレタンの柔軟性が不足し、ひいては人工皮革の柔軟性および風合が低下したものになり易く、一方5000を超えると柔軟性、耐久性、耐熱性、耐加水分解性などの物性でバランスのとれた人工皮革が得られにくくなる。
【0021】
ポリウレタンの製造に用いる上記したジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物のいずれもが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのジイソシアネート化合物の1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
ポリウレタンの製造に用いる上記した低分子量鎖伸長剤としては、活性水素原子を2個有する低分子量ジオール、低分子量ジアミン、第3級アミノ基含有2官能性化合物などを用いることができ、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0023】
ポリウレタンは、上記した高分子ジオール、ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤を、一般に、イソシアネート基:全活性水素原子の比が1:0.9〜1.1(モル比)になるようにして反応させることによって好ましく製造される。
また、ポリウレタンの製造時に必要に応じて3官能以上の官能基を有する化合物を少量用いてもよい。
さらに、絡合不織布に含浸するポリウレタンは、必要に応じて、顔料、染料、凝固調節剤、安定剤などの他の成分を含有していてもよい。
【0024】
防水性手袋の製造に用いる人工皮革を製造する際の絡合不織布へのポリウレタンなどの弾性重合体の含浸方法は特に制限されず、例えば弾性重合体溶液または分散液を含浸させる方法、弾性重合体の溶融物を含浸させる方法などを採用し得るが、一般には風合のバランスの点から弾性重合体を溶液状にして含浸させる方法が好ましく採用される。その際の含浸方法としては、布帛を弾性重合体溶液中に浸漬させる方法、布帛に弾性重合体溶液を噴霧、ローラー塗布、流延などによって施す方法などが採用される。
人工皮革におけるポリウレタン等の弾性重合体の含浸量は、柔軟性、風合などの点から、極細繊維化後の絡合不織布:弾性重合体の重量比が30:70〜80:20の範囲であることが好ましく、40:60〜55:45の範囲であることがより好ましい。
【0025】
絡合不織布にポリウレタンなどの弾性重合体を含浸させた後、弾性重合体の種類などに応じて、弾性重合体を凝固、固化または硬化させる。例えばポリウレタン溶液を含浸した場合は、湿式凝固法や乾式凝固法などによりポリウレタンを絡合不織布中で凝固し固定させることができる。また、例えば弾性重合体の溶融物を含浸させた場合は含浸後に弾性重合体の融点以下の温度にすることによって弾性重合体を固化することができる。さらに、例えば加硫や架橋によって硬化する弾性重合体を含浸させた場合は、含浸後に加硫または架橋して硬化させる。
【0026】
弾性重合体を凝固、固化または硬化させた後の上記した弾性重合体含浸絡合不織布において、絡合不織布が極細繊維発生型繊維から形成されている上記した(i)の場合は、弾性重合体および極細繊維発生型繊維中の一部のポリマー成分を溶解または分解せず且つ極細繊維発生型繊維中の他の一部のポリマー成分を溶解または分解する溶剤または分解剤を用いて弾性重合体含浸絡合不織布を処理して、極細繊維発生型繊維中の一部のポリマー成分を除去して、絡合不織布を構成している極細繊維発生型繊維を極細繊維にすることによって、本発明で好ましく用いられる人工皮革が得られる。
【0027】
防水性手袋を形成するシート状材料として本発明で好ましく用いられる上記した人工皮革では、絡合不織布を構成している極細繊維の単繊維繊度は通常1デニール未満であり、人工皮革が柔軟で高級感のあるものとなることから0.5デニール以下であるのが好ましく、0.1デニール以下であるのがより好ましい。なお、極細繊維の太さは、極細繊維束の断面を電子顕微鏡により写真撮影し、その極細繊維束のデニールを束を構成している極細繊維の本数で割ることにより求めることが出来る。このような方法を採用できない場合は、不織布の断面を電子顕微鏡で写真撮影し、写真中の極細繊維100本を選出してそれらの断面積を求め、その合計値を極細繊維の合計本数(100本)で割ることにより求めることができる。
【0028】
防水性手袋の製造に好ましく用いられる人工皮革としては、(i)極細繊維よりなる絡合不織布にポリウレタン等の弾性重合体を含浸し凝固してなる前記した人工皮革、(ii)前記人工皮革の少なくとも片面に樹脂層よりなる銀付面を形成してなる銀付調人工皮革、(iii)前記人工皮革の少なくとも片面を起毛してなるスエード調人工皮革、(iv)前記人工皮革の片面を起毛してスエード調にし且つもう一方の面に樹脂層よりなる銀付面を形成した銀付調人工皮革などを挙げることができる。そのうちでも、人工皮革の少なくとも片方の面に樹脂層よりなる銀付面を有する上記(ii)および(iv)の銀付調人工皮革が好ましく用いられ、これらの銀付調人工皮革をその銀付面が外側になるようにして手袋を形成すると、手袋の表面が樹脂層(銀付面)で覆われていることによりその防水性能が一層高いものとなる。銀付調人工皮革における表面の樹脂層は絡合不織布の含浸に用いた弾性重合体と親和性の高い樹脂を用いて形成することが好ましく、絡合不織布に含浸した弾性重合体がポリウレタンである場合は、樹脂層をそれと同じかまたは異なるポリウレタンから形成することが好ましい。また、防水性手袋の製造に用いる人工皮革は、必要に応じて、染色や着色仕上げ、天然皮革様やその他の凹凸模様発現処理、柔軟化のための揉み処理などを施したものであってもよい。
【0029】
防水性手袋の製造に用いるシート状材料の厚さは、手袋の用途、形状などに応じて調節し得るが、一般には、柔軟性、風合、強度、耐久性、縫製時などでの取り扱い性などの点から、0.1mm〜3.0mmの範囲であることが好ましく、0.5mm〜2.0mmの範囲であることがより好ましい。
【0030】
本発明の防水性手袋は、上記したシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し縫製することによって得られ、しかも最終的に得られる防水性手袋において、縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んであるか、または複数(通常は2枚)のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本(通常は2本)のミシン縫いをしてあり、且つ手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が含浸付着している。それによって、本発明の防水性手袋は、シート状材料片の表裏面、裁断端部、縫い糸および縫い目穴部分などからの水の侵入や吸水が防止され、極めて高い防水性能を有する。その上、本発明の防水性手袋は、柔軟性および風合、力学的特性、耐摩耗性などの点でも優れている。
【0031】
本発明の防水性手袋では、縫製したシート状材料片の裁断端のすべて(指、手のひら、手の甲、手首および手袋の入口に位置する裁断端のすべて)が最終的に得られる防水性手袋において手袋の内側に折り込んだ形態になっていても、シート状材料片の縫製のすべてが複数(通常2枚)のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本(通常は2本)のミシン縫いにより行われていても、縫製したシート状材料片の裁断端の一部が手袋の内側に折り込んだ形態であり残りの部分が他の縫製形態(例えば前記した平行な複数本のミシン縫いの形態、1本縫いなど)、またはシート状材料片の縫製の一部が複数(通常2枚)のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本(通常は2本)のミシン縫いにより行われていてもよい。そのうちでも、縫製したシート状材料片の裁断端のすべて又は一部が最終的に得られる防水性手袋において少なくとも手袋の内側に折り込んだ形態になっているのが、より防水性により優れる手袋が得られる点から好ましい。その場合に、縫製したシート状材料片の裁断端の一部を手袋の内側に折り込んだ形態にする場合は、水の侵入し易い部分に位置する縫製した裁断端(例えば手の甲と平の接合部、指部などに位置する裁断端)を少なくとも手袋の内側に折り込んだ形態にするのがよい。
また、例えば、手袋の入口に位置する裁断端は、衣類の袖口の下になり(袖口に覆われ)、雨や雪などに晒されないことも多いので、手袋の内側に折り込んだり、前記した複数本の平行縫いを行わずに、そのまま手袋の外側に位置させておいてもまたは他の縫製形態であっても構わない。
【0032】
このような本発明の防水性手袋は、以下に説明する本発明の方法によって円滑に生産性良く製造することができる。
まず、布帛に合成樹脂および/またはゴムを含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し縫製して手袋をつくる。この裁断、縫製は、手袋の形状やサイズなどに応じて、(i)シート状材料を所定の形状および寸法を有する複数枚のシート状材料片に裁断してからそれらを手袋状に縫製する方法によって行っても、または(ii)シート状材料を2枚重ねて手袋状に縫製した後、縫製した縫い目に沿ってその近傍を裁断して手袋を製造する方法により行ってもよい。
但し、上記(i)および(ii)のいずれの場合も、最終的に得られる本発明の防水性手袋において、手袋を構成するシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込まれた形態になるようにして縫製を行うか、またはシート状材料片の複数(通常2枚)の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いをして縫製を行うことが必要であり、シート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態となる前者の縫製方法が防水性の点からより好ましく採用される。
特に、シート状材料として1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する上記した銀付調人工皮革を用い、それを所定の形状および寸法を有する銀付調人工皮革片に裁断し、最終的に得られる防水性手袋において、縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態になり且つ人工皮革の銀付面が手袋の外側になるようにして縫製を行って手袋を製造すると、防水性に極めて優れる手袋を得ることができる。
【0033】
何ら限定されるものでないが、最終的に得られる防水性手袋において、縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ状態となる縫製法の概略を図により例示すると、下記の(1)および(2)の方法を挙げることができる。
(1) 図1に示すように、シート状材料を裁断して得られた2つのシート状材料片AとA’の表側面1および1’を合わせて重ね、その周囲を手袋状に縫製し[図1の(a)]、次いで手袋を裏返して、シート状材料片AおよびA’の表側面1と1’を手袋の表面に位置させると共にシート状材料片AおよびA’の裁断端2a,2b,2c,2dが手袋の内側に折り込まれた状態にする方法[図1の(b)](図1において3は縫い目を示す)。
(2) 図2に示すように、シート状材料を裁断して得られた2つのシート状材料片AとA’の裁断端2a,2b,2c,2dを、シート状材料の表面側1,1’が外側になるようにして内側に折り込み、内側に折り込んだ裁断端2aと2cおよび2bと2dを重ねて、その部分で手袋状に縫製して、シート状材料片AおよびA’の裁断端2a,2b,2c,2dが内側に折り込まれた手袋を縫製により製造する方法(図2において3は縫い目を示す)。
上記した(1)および(2)の方法のうちでも、上記(1)の縫製方法が好ましく採用される。すなわち、上記(1)の方法による場合は、縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込まれているだけではなく、縫い糸および縫い目が手袋の外側に露出する割合が極めて少なくなり、そのため縫い糸および縫い目穴部分からの水の侵入や吸水をより効果的に防止でき、防水性能に一層優れる手袋を得ることができる。
【0034】
図1および図2には、手袋を手のひら側の1つのシート状材料片Aと手の甲側の1つのシート状材料片A’から形成する場合を例示しているが、本発明の手袋は2つのシート状材料片を縫製したものに何ら限定されず、3つ以上のシート状材料片から形成してもよい。例えば、手袋の各指に相当する部分にマチ用のシート状材料片を配してもよいし、手のひら側に相当する部分を2つ以上のシート状材料片を用いて形成してもよいし、手の甲側に相当する部分を2つ以上のシート状材料片を用いて形成してもよい。また、防水性が損なわれない限りは、必要に応じて、補強や装飾用の材料を手の甲、手のひら、手首などの適当な箇所に配してもよい。
【0035】
また、シート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いを行って本発明の防水性手袋を製造する際の縫製部分の概略図は図3に示すとおりである。図3においては、AおよびA’はシート状材料片、2aはシート状材料片Aの裁断端、2cはシート状材料片A’の裁断端を示す。図3では平行に2本のミシン縫いを行った場合を示しており、場合によっては平行に3本以上のミシン縫いを行ってもよい。但し、ミシン縫いの本数が多くなり過ぎると、ミシン目の穴およびミシン糸の部分が多くなり過ぎて、その部分から水の侵入を生じ易くなるので、平行に2〜3本のミシン縫いを行うのがよく、2本のミシン縫いを行うのが好ましい。ミシン縫いの本数が1本であると、ミシン目の穴およびミシン糸の部分は少なくなるが、縫製が全体的として緩くなり、シート状材料片AとA’の重ね合わせ部分から水の侵入が生じ易くなる。
【0036】
また、手袋の製造に用いるシート状材料は、予め防水処理を施してあっても又は施して無くてもいずれでもよい。シート状材料がスエード調人工皮革からなる場合は、シリコン系防水剤、有機フッ素化合物系防水剤などの防水剤で予め処理しておくことが防水性能の向上の点からより好ましい。
【0037】
最終的に得られる防水性手袋において、シート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ状態となるように縫製するに当たっては、ミシン縫いまたは手縫いのいずれで行ってもよいが、生産性、得られる手袋の防水性、縫製部分の強度などの点からミシン縫いが好ましく採用される。
また、複数のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本縫う場合は、上述のようにミシン縫いを行う。
いずれの場合も、ミシン縫いを行う際の縫い目のピッチ数は8個/2.5cm以上であることが、水の侵入防止、縫製強度などの点から好ましく、8個/2.5cm〜25個/2.5cmであることがより好ましく、12個/2.5cm〜20個/2.5cmであることが更に好ましい。縫い目のピッチ数が8個/2.5cm未満であると、縫い目の間隔が広すぎて水が侵入し易くなり、一方25個/2.5cmを超えると縫い目部分の強度が低下することがある。
【0038】
縫い糸は、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ビニロン、レーヨン、ポリプロピレンなどの化合繊維、綿、絹、麻、毛などの天然繊維、それらの混紡繊維などのいずれであってもよい。そのうちでも、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などのそれ自体で疎水性を有する繊維からなる縫い糸を用いることが防水性の点から好ましい。また、縫い糸は、防水処理(撥水処理)を予め施してあってもまたは施してなくてもよいが、防水処理を施してある縫い糸を用いるのが好ましい。縫い糸、特にミシン糸は、太くなるほど縫い目穴が大きくなってその部分からの水の侵入が大きくなるので、細い糸が好ましく、20番手よりも細い糸が望ましい。
【0039】
次いで、シート状材料を裁断し縫製して得られた手袋を、有機フッ素化合物系防水剤を用いて防水処理する。防水処理は、手袋の表を外に向けた状態(最終的に得られる手袋の形態)で行っても、または手袋を裏返した状態[例えば図1の(a)に示す状態]で行ってもいずれでもよいが、手袋の表を外に向けた状態で行うのが防水性により優れる手袋を得ることができるので望ましい。
縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込まれた本発明の防水性手袋において、手袋の表を外に向けた状態[例えば図1の(b)]で防水処理すると、手袋を構成するシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込まれた状態になっていることによって手袋の口が大きく開いた状態になり、そのため防水処理時に有機フッ素化合物系防水剤の水性分散液が手袋の内部に入り易くなり、手袋を構成するシート状材料の表裏両面、縫い糸および縫い目の外側と内側の両方から、有機フッ素化合物系防水剤が十分に且つ均一に含浸し付着し、高い防水性能が付与される。
【0040】
本発明では、手袋の防水処理に当たって、有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液を用い、且つ該水性分散液中に手袋を浸漬して撹拌下に行う方法を採用することが必要である。かかる方法を採用することによって、手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目のすべての部分に有機フッ素化合物系防水剤が十分に含浸・付着した、耐久性に優れる高い防水性能を有する本発明の防水性手袋が得られる。
本発明の方法とは異なり、有機フッ素化合物系防水剤を含有する溶液または水性分散液を単に手袋の表面から塗布したり噴霧するだけでは、また有機フッ素化合物系防水剤を含有する溶液または水性分散液中に撹拌を行わずに静置状態で手袋を浸漬するだけでは、手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目に有機フッ素化合物系防水剤が十分に含浸付着せず、耐久性のある防水性能を手袋に付与することができない。さらに、有機フッ素化合物系防水剤の水性分散液を用いる代わりに、有機フッ素化合物系防水剤の有機溶媒溶液を用いる場合は、シート状材料を構成している合成樹脂および/またはゴムなどが有機溶媒によって膨潤、溶解、変質し、手袋の形くずれ、人工皮革などのシート状材料中に存在する微孔の消失による硬質化や風合の低下、外観不良などを生じ易くなり、柔軟性、風合、外観、力学的特性などに優れる防水性手袋を得ることが困難になる。
【0041】
有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に手袋を浸漬して防水処理を行うに当たっては、水性分散液および手袋を撹拌しながら処理を行える方法および装置であればいずれも使用できるが、強力な撹拌を伴う方法および装置が好ましく採用される。そのうちでも、一般にワッシャー洗浄機と称されているワッシャー機を用いて防水処理を行うのがより好ましい。ワッシャー機を用いると、防水処理後にも手袋の風合および形が良好に維持され、且つ防水剤を手袋に均一且つ十分に含浸・付着させることができる。本発明で好ましく用いられるワッシャー機は、水槽とその内部に装着された多数の孔を有する籠(ケージ)を有する洗浄装置であって、水槽中に液(有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液)を入れ、ケージ中に被処理物(縫製後の手袋)を入れ、ケージの蓋および水槽の蓋を閉じて、ケージを動力によって回転させることによって、液(水性分散液)および被処理物(手袋)に撹拌、回転、反転が生じさせながら防水処理が行われる。
【0042】
手袋の防水処理に用いる有機フッ素化合物系防水剤としては、布帛、人工皮革、合成皮革、人造皮革、天然皮革などに対して従来から用いられている有機フッ素化合物系防水剤のいずれもが使用でき特に制限されず、例えば、アクリル酸のフロロアルキルエステル系重合体(例えば1,1−ジヒドロペルフルオロオクチルアクリレートポリマー、パーフルオロアルキルエチルアクリレート−アルキルアクリレート共重合体等)などを挙げることができる。具体的な製品としては、日華化学株式会社製「NKガードNDN7000」、ミネソタマイニング&マニュファクチャリン社製「スコッチガード」、デュポン社製「ゾニール」などを挙げることができる。
【0043】
本発明で用いる有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液は、上記した有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性エマルジヨンの形態であるのが好ましく、それによって、手袋を構成するシート状材料、縫い糸および縫い目部分への有機フッ素化合物系防水剤の含浸・付着が均一に且つ十分に行われる。有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中の有機フッ素化合物系防水剤の含有量は、防水処理の均一性、確実性、水性分散液の取り扱い性などの点から、0.02〜8重量%であるのが好ましく、0.2〜4重量%であるのがより好ましい。有機フッ素化合物系防水剤含有水性分散液は、場合によりシリコーン系の防水剤を更に含有していてもよい。
【0044】
防水処理時の、有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液:手袋の浴比は1:10〜1:500であるのが、防水処理の均一性、確実性、処理操作の容易性などの点から好ましい。防水処理温度としては、10〜80℃の温度、特に30〜50℃の温度が好ましく採用される。防水処理時間は、有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液における有機フッ素化合物系防水剤の濃度、浴比、防水処理装置などによって異なり得るが、一般に10分〜1時間が採用される。
【0045】
手袋における有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量は、最終的に得られる防水性手袋(乾燥後の手袋)の全重量に対して、有機フッ素化合物系防水剤固形分で0.01〜5重量%であることが、防水性能、防水性手袋の柔軟性、風合などの点から好ましく、0.1〜2.5重量%であることがより好ましい。
【0046】
有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中で手袋を防水処理した後、水性分散液から手袋を取り出して、脱水処理を行う。脱水方法は特に制限されず、例えば、遠心脱水、マングル、手絞りなどによる方法を挙げることができ、そのうちでも均一脱水、手袋の保形性等の点から遠心脱水が好ましく採用される。脱水処理後に乾燥を行う。乾燥方法としては、タンブラー乾燥、その他の乾燥機による乾燥、天日干し、アイロンかけ、風乾などを挙げることができる。そのうちでも、加熱を伴う乾燥方法が、含浸付着した有機フッ素化合物系防水剤を手袋を確実に固定でき、且つ乾燥時間を短縮できることから好ましく採用され、特にタンブラー乾燥機を用いる加熱乾燥が、前記した効果と併せて、柔軟で風合の良好な防水性手袋が得られる点からより好ましく採用される。タンブラー乾燥機を用いる際の乾燥温度は、50〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。乾燥温度が高すぎると、手袋を構成するシート状材料の変形、変質、硬質化などを生じ易くなる。
【0047】
上記した本発明の方法により、手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が均一且つ十分に含浸付着して耐久性に優れる高い防水性能を有し、水の侵入がなく、しかも柔軟性、風合および強度に優れる本発明の防水性手袋が得られる。
本発明の防水性手袋は、前記した優れた特性を活かして、防水性が要求される種々の用途に使用でき、例えば、バイクライダー用手袋、自転車ライダー用手袋、ゴルフ手袋、スキー用手袋、アイスホッケー用手袋などのスポーツ用手袋、登山用手袋、降雪地域用手袋などとして有用であり、特にバイクライダー用、自転車ライダー用、またはスポーツ用の手袋として適している。
【0048】
【実施例】
以下に実施例により本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、絡合不織布を構成する極細繊維の単繊維繊度は、以下のようにして測定した。
【0049】
[極細繊維の単繊維繊度の測定]
海成分を抽出除去する前の極細繊維発生型繊維の断面写真を電子顕微鏡で撮り、その中から任意に島成分を100個選び出し、それら100個のそれぞれの太さを断面積から求め、得られた100個のそれぞれの太さの値を合計し、その合計値を100で割り、それにより得られる値を極細繊維の単繊維繊度とした。
【0050】
《実施例1》
(1) 6−ナイロンとポリエチレンを50:50の重量比で用いて溶融混合紡糸を行って、6−ナイロンを島成分としポリエチレンを海成分とする混合紡糸繊維を製造した。この混合紡糸繊維を70℃の熱水中で2.5倍に延伸し、繊維油剤を付与し、機械捲縮を施して乾燥した後、切断して、繊維長51mm、単繊維繊度4デニールのステープルを製造した。
(2) 上記(1)で得られたステープルをカードで解繊し、クロスラッパ法で目付500g/m2のウエブを形成し、次いで両面から交互にニードルパンチを行い、約500パンチ/cm2のパンチ密度を有する絡合不織布とし、さらに加熱して平滑な表面を有する三次元絡合不織布を製造した。この絡合不織布の目付は540g/m2、見かけ密度は0.3g/cm3であった。
(3) 上記(2)で得られた絡合不織布に、ポリテトラメチレンエーテル系ポリウレタンを主体とするポリウレタンのジメチルホルムアミド(以下「DMF」と略記する)溶液を含浸し、それをDMF/水=2/8(容量比)の混合液中に浸してポリウレタンを湿式凝固した後、パークロロエチレンで海成分(ポリエチレン)を溶出除去して絡合不織布を構成する繊維を極細繊維化して人工皮革(シート状材料)を製造した。人工皮革中の極細繊維の平均単繊維繊度は0.07デニールであった。
【0051】
(4) 上記(3)で得られたを人工皮革を厚さ方向に二分割した後、分割面をバッフィングして、分割後の各シートの厚さを0.6mmに調整し、分割面とは反対の面に黒色顔料インクを含有するポリウレタン樹脂液をグラビアロールで固形分15g/m2の割合で塗布し、エンボスロールで型押した後、揉み加工を施して、黒色の銀付調人工皮革を製造した。
(5) 上記(4)で得られた銀付調人工皮革を、バイク用手袋形状を有する2つのシート状材料片に裁断し、両シート状材料片の表側面(銀付面)を合わせて[図1の(a)を参照]、ミシン糸としてナイロン糸(黒、50番手)を用いて、縫い目のピッチ数18個/2.5cmで、直線縫いミシンで手袋状に縫製した。
(6) 上記(5)で得られた縫製後の手袋を裏返して、その表側面(銀付面)を外側に出すとともにシート状材料片の裁断端を内側に折り込んだ手袋を得た[図1の(b)を参照]。
【0052】
(7) 防水処理装置としてワッシャー機(神前鉄工株式会社製の自動洗濯脱水機)を使用し、これに有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液(日華化学株式会社製「NKガードNDN7000」の90重量部と水10重量部との混合液)と、上記(6)で得られた手袋を、手袋:水性分散液の浴比=1:10で入れて、30℃の温度で30分間、撹拌下に防水処理を行った後、手袋をワッシャー機より取り出して、遠心脱水した(脱水率60%)。
(8) 上記(7)で遠心脱水した手袋を、タンブラー乾燥機(神前鉄工株式会社製)を使用して、120℃の温度で40分間乾燥して、柔軟性および風合に優れる防水性手袋を得た。この防水性手袋では、手袋重量に対して、有機フッ素化合物系防水剤を1.2重量%の割合で含浸付着していた。
【0053】
(9) 上記(8)で得られた防水性手袋を、ミシン穴の中央部を通るようにして手袋を構成する人工皮革を切断し、ミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて元素分析を行ったところ、それらのいずれからも、有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素が高濃度で検出された。この結果から、有機フッ素化合物系防水剤が手袋を構成する人工皮革の表裏面、縫い糸および縫い目のすべてにおいて十分に含浸付着していることが確認された。
(10) また、上記(8)で得られた防水性手袋を手にはめて、手袋の入口から水が入らないようにして、水槽中に水深20cm(手袋の先端の水深)で防水試験を30分間行ったところ、30分経過後も手袋内への水の侵入が全く生じず、防水性に優れていた。
【0054】
《実施例2》
(1) 実施例1の(3)で得られた人工皮革(シート状材料)を、厚さ方向に二分割した後、分割面と反対の面をサンドペーパーで毛羽立て、次いで含金錯塩染料により染色して鮮やかな茶色に染色されたスエード調人工皮革を製造した。
(2) 上記(1)で得られたスエード調人工皮革を、バイク用手袋形状を有する2つのシート状材料片に裁断し、両シート状材料片の表側面(スエード調面)を合わせ[図1の(a)を参照]、ミシン糸としてナイロン糸(茶、50番手)を用いて、縫い目のピッチ数18個/2.5cmで、直線縫いミシンで手袋状に縫製した。
(3) 上記(2)で得られた縫製後の手袋を裏返して、その表側面(スエード調面)を外側に出すとともにシート状材料片の裁断端を内側に折り込んだ手袋を得た[図1の(b)]。
(4) 上記(3)で得た手袋に対して、実施例1の(7)〜(8)と同様にして、防水処理、脱水処理および乾燥処理を行って、手袋重量に対して、有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量が1.4重量%である柔軟性および風合に優れる防水性手袋を得た。
【0055】
(5) 上記(4)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、それらのいずれからも、有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素が高濃度で検出された。この結果から、有機フッ素化合物系防水剤が手袋を構成する人工皮革の表裏面、縫い糸および縫い目のすべてにおいて十分に含浸付着していることが確認された。
(6) また、上記(4)で得られた防水性手袋を手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を30分間行ったところ、30分経過後も手袋内への水の侵入が全く生じず、防水性に優れていた。
【0056】
《実施例3》
(1) 実施例1の(4)で得られた銀付調人工皮革を、バイク用手袋形状を有する2つのシート状材料片に裁断し、両シート状材料片の裁断端同士を銀付面が手袋の表側になるようにして図3に示すように5mm幅で重ね合わせ、その重ね合わせ部分をナイロン糸(黒、50番手)を用いて、縫い目のピッチ数18個/2.5cm、2本の縫い線間の間隔約1mmで、直線縫いミシンを使用して平行に2本の縫い線で縫製して手袋を製造した。
(2) 上記(2)で得られた手袋に対して、実施例1の(7)〜(8)と同様にして、防水処理、脱水処理および乾燥処理を行って、手袋重量に対して、有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量が1.2重量%である柔軟性および風合に優れる防水性手袋を得た。
(3) 上記(2)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、それらのいずれからも、有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素が高濃度で検出された。この結果から、有機フッ素化合物系防水剤が手袋を構成する人工皮革の表裏面、縫い糸および縫い目のすべてにおいて十分に含浸付着していることが確認された。
(4) また、上記(2)で得られた防水性手袋を手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を30分間行ったところ、30分経過後も手袋内への水の侵入が生じず、防水性に優れていた。
【0057】
《比較例1》
(1) 実施例1の(4)で得られた銀付調人工皮革を、バイク用手袋形状を有する2つのシート状材料片に裁断し、両シート状材料片の裏側面を合わせて、ミシン糸としてナイロン糸(黒、50番手)を用いて、縫い目のピッチ数18個/2.5cmで、直線縫いミシンで縫製して、人工皮革よりなるシート状材料片の裁断端が手袋の外側にそのまま出ている手袋を製造した。
(2) 上記(1)で得られた手袋を、シート状材料片の裁断端を手袋の外側に出したままの状態で、実施例1の(7)〜(8)と同様にして、防水処理、脱水処理および乾燥処理を行ったところ、手袋重量に対して、有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量が1.2重量%である柔軟な手袋を得た。
(3) 上記(3)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、これらの箇所における有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素の検出量は実施例1および実施例2に比べてかなり少なく、手袋を構成する人工皮革の表面部分に多く付着していた。
(4) 上記(3)で得られたシート状材料片の裁断端が外側に出ている防水性手袋を、そのまま手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を行ったところ、20秒後に手袋の内部に水が侵入し、防水性に劣っていた。
【0058】
《比較例2》
(1) 実施例1の(4)で得られた銀付調人工皮革を用いて、実施例1の(5)および(6)と同様に人工皮革の裁断し縫製を行って、銀付面が表面にあり且つシート状材料片の裁断端を内側に折り込んだ手袋を製造した[図1の(b)参照]。
(2) 上記(1)で得られた手袋を、実施例1の(7)で用いたのと同じ、有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に、手袋の口から該水性分散液が入らないようにしながら静止状態で120分間浸漬し、次いで実施例1の(8)と同様にして脱水処理および乾燥処理を行って柔軟な手袋を得た。手袋重量に対する有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量は1.0重量%であった。
(3) 上記(3)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、これらの箇所における有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素の検出量は実施例1および実施例2に比べて大幅に少なく、手袋を構成する人工皮革の表面部分にその大半が付着していた。
(4) 上記(3)で得られたシート状材料片の裁断端が外側に出ている防水性手袋を、そのまま手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を行ったところ、30秒後に手袋の内部に水が侵入し、防水性に劣っていた。
【0059】
《比較例3》
(1) 比較例2の(2)の防水処理を、手袋の内部にも有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液が入るようにして静止状態で120分間行った外は、比較例2と同様に行って、柔軟な防水処理手袋を得た。手袋重量に対する有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量は1.2重量%であった。
(3) 上記(3)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、これらの箇所における有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素の検出量は実施例1および実施例2に比べてかなり少なく、手袋を構成する人工皮革の表面部分にその大半が付着していた。
(4) 上記(3)で得られたシート状材料片の裁断端が外側に出ている防水性手袋を、そのまま手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を行ったところ、60秒後に手袋の内部に水が侵入し、防水性に劣っていた。
【0060】
《比較例4》
(1) 実施例1の(4)で得られた銀付調人工皮革を用いて、実施例1の(5)および(6)と同様に人工皮革の裁断し縫製を行って、銀付面が表面にあり且つシート状材料片の裁断端を内側に折り込んだ手袋を製造した[図1の(b)参照]。
(2) 上記(1)で得られた手袋に対して、実施例1の(7)で用いたのと同じ有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液をスプレーで5秒間塗布し、次いで実施例1の(8)と同様にして脱水処理および乾燥処理を行って柔軟な手袋を得た。手袋重量に対する有機フッ素化合物系防水剤の含浸付着量は1.2重量%であった。
(3) 上記(3)で得られた防水性手袋におけるミシン穴部分、ミシン糸部分および人工皮革の厚さの中央部分のそれぞれについて実施例1の(9)と同様にして元素分析を行ったところ、これらの箇所における有機フッ素化合物系防水剤に由来するフッ素の検出量は実施例1および実施例2に比べて大幅に少なく、手袋を構成する人工皮革の表面部分にその大半が付着していた。
(4) 上記(3)で得られたシート状材料片の裁断端が外側に出ている防水性手袋を、そのまま手にはめて実施例1の(10)と同様にして防水試験を行ったところ、10秒後に手袋の内部に水が侵入し、防水性に劣っていた。
【0061】
上記した実施例1〜3および比較例1〜4の結果を表にまとめると、以下の表1に示すとおりである。
【0062】
【表1】
Figure 0004086401
【0063】
上記の表1の結果から、実施例1〜3の方法により得られた本発明の防水性手袋は、手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が均一且つ十分に含浸付着して、防水性能に極めて優れていること、しかも手袋を構成する人工皮革の優れた特性がそのまま保たれていて風合および柔軟性に優れていることがわかる。
さらに、上記の表1の結果から、実施例1〜3の本発明の方法による場合は、短い防水処理時間で、防水性能に優れる前記した高品質の防水性手袋を生産性良く製造できることがわかる。
これに対して、上記の表1の結果から、比較例1〜4で得られる手袋は、実施例1〜3で得られる手袋に比べて防水性の点で大幅に劣ることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の防水性手袋は、手袋を構成するシート状材料の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が均一且つ十分に含浸付着しており、しかも縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んであるか、または複数のシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いをしてあることにより、極めて高い防水性能を有し、しかもその防水性能は長期に亙って維持され、耐久性に優れる。
本発明の防水性手袋は、手袋を構成するシート状材料の柔軟性および良好な風合がそのまま保たれていて、手袋を構成するシート状材料中の微孔の消失による硬質化、手袋の変形、外観不良がない。
本発明の方法による場合は、前記した優れた特性を有する防水性手袋を、短い防水処理時間で生産性良く製造することができる。
本発明の防水性手袋は、前記した優れた特性を活かして、防水性が要求される種々の用途、例えば、バイクライダー用手袋、自転車ライダー用手袋、ゴルフ手袋、スキー用手袋、アイスホッケー用手袋などのスポーツ用手袋、登山用手袋、降雪地域用手袋などとして有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防水性手袋を製造する際の縫製方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の防水性手袋を製造する際の縫製方法の別の例を示す概略図である。
【図3】本発明の防水性手袋を製造する際の縫製方法の更に別の例を示す概略図である。
【符号の説明】
A シート状材料から裁断したシート状材料片
A’ シート状材料から裁断したシート状材料片
1 シート状材料片Aの表側
1’ シート状材料片A’の表側
2a シート状材料片Aの裁断端
2b シート状材料片Aの裁断端
2c シート状材料片A’の裁断端
2d シート状材料片A’の裁断端
3 縫い目

Claims (9)

  1. (i)布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し縫製して形成した防水性手袋であって;
    (ii)縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んであるか、またはシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いをしてあり;且つ、
    (iii)手袋を構成するシート状材料片の表裏面、縫い糸および縫い目穴のいずれにも有機フッ素化合物系防水剤が含浸付着している;
    ことを特徴とする防水性手袋。
  2. 手袋を構成するシート状材料が、1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革、該人工皮革の少なくとも片面を起毛してなるスエード調人工皮革または該人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革である請求項1に記載の防水性手袋。
  3. 手袋を構成するシート状材料が1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革であって、該銀付調人工皮革の銀付面が手袋の外側に位置し、且つ縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んである請求項1または2に記載の防水性手袋。
  4. 縫い目のピッチ数が8個/2.5cm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水性手袋。
  5. バイクライダー用、自転車ライダー用、またはスポーツ用の手袋である請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水性手袋。
  6. 布帛に合成樹脂およびゴムの少なくとも一種を含浸および/または付着してなるシート状材料を所定の形状および寸法を有するシート状材料片に裁断し、最終的に得られる防水性手袋において、縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態になるようにしてシート状材料片間の縫製を行うか、またはシート状材料片の裁断端を所定の幅に重ね合わせて平行に複数本のミシン縫いを行って手袋を製造し、次いで該手袋を有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に浸漬して撹拌下に防水処理することを特徴とする防水性手袋の製造方法。
  7. 手袋を構成するシート状材料が、1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革、該人工皮革の少なくとも片面を起毛してなるスエード調人工皮革または該人工皮革の少なくとも片面に樹脂層を形成してなる銀付調人工皮革である請求項6に記載の製造方法。
  8. 1デニール未満の極細繊維からなる絡合不織布にポリウレタンを含浸してなる人工皮革の少なくとも片面に樹脂層からなる銀付面を有する銀付調人工皮革を所定の形状および寸法を有する銀付調人工皮革片に裁断し、最終的に得られる防水性手袋において縫製したシート状材料片の裁断端が手袋の内側に折り込んだ形態になり且つ人工皮革の銀付面が手袋の外側になるようにしてシート状材料片間の縫製を行い、次いで該手袋を有機フッ素化合物系防水剤を含有する水性分散液中に浸漬して撹拌下に防水処理することからなる請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 有機フッ素化合物系防水剤による防水処理を、ワッシャー機を使用して行い、防水処理後に加熱乾燥を行う請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
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