JP4084055B2 - 電磁波シールド性接着フィルムの製造法 - Google Patents

電磁波シールド性接着フィルムの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はCRT、PDP(プラズマ)、液晶、ELなどのディスプレイ前面から発生する電磁波のシールド性および赤外線の遮蔽性を有する電磁波シールド性接着フィルムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年各種の電気設備や電子応用設備の利用が増加するのに伴い、電磁気的なノイズ妨害も増加の一途をたどっている。ノイズは大きく分けて伝導ノイズと放射ノイズに分けられ、伝導ノイズの対策としては、ノイズフィルタなどを用いる方法がある。一方、放射ノイズの対策としては、電磁気的に空間を絶縁する必要があるため、筐体を金属体または高導電体にするとか、回路基板と回路基板の間に金属板を挿入するとか、ケーブルを金属箔で巻き付けるなどの方法が取られている。これらの方法では、回路や電源ブロックの電磁波シールド効果を期待できるが、CRT、PDPなどのディスプレイ前面より発生する電磁波シールド用途としては、不透明であるため適用できなかった。
【0003】
電磁波シールド性と透明性を両立させる方法として、透明性基材上に金属または金属酸化物を蒸着して薄膜導電層を形成する方法(特開平1−278800号公報、特開平5−323101号公報参照)が提案されている。一方、良導電性繊維を透明基材に埋め込んだ電磁波シールド材(特開平5−327274号公報、特開平5−269912号公報参照)や金属粉末等を含む導電性樹脂を透明基板上に直接印刷した電磁波シールド材料(特開昭62−57297号公報、特開平2−52499号公報参照)、さらには、厚さが2mm程度のポリカーボネート等の透明基板上に透明樹脂層を形成し、その上に無電解めっき法により銅のメッシュパターンを形成した電磁波シールド材料(特開平5−283889号公報参照)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電磁波シールド性と透明性を両立させる方法として、特開平1−278800号公報、特開平5−323101号公報に示されている透明性基材上に金属または金属酸化物を蒸着して薄膜導電層を形成する方法は、透明性が達成できる程度の膜厚(数100Å〜2、000Å)にすると導電層の表面抵抗が大きくなりすぎるため、30MHz〜1GHzで要求される30dB以上のシールド効果に対して20dB以下と不十分であった。良導電性繊維を透明基材に埋め込んだ電磁波シールド材(特開平5−327274号公報、特開平5−269912号公報)では、30MHz〜1GHzの電磁波シールド効果は40〜50dBと十分大きいが、電磁波漏れのないように導電性繊維を規則配置させるために必要な繊維径が35μmと太すぎるため、繊維が見えてしまい(以後視認性という)ディスプレイ用途には適したものではなかった。また、特開昭62−57297号公報、特開平2−52499号公報の金属粉末等を含む導電性樹脂を透明基板上に直接印刷した電磁波シールド材料の場合も同様に、印刷精度の限界からライン幅は、100μm前後となり視認性が発現するため適したものではなかった。さらに特開平5−283889号公報に記載の厚さが2mm程度のポリカーボネート等の透明基板上に透明樹脂層を形成し、その上に無電解めっき法により銅のメッシュパターンを形成したシールド材料では、無電解めっきの密着力を確保するために、透明基板の表面を粗化する必要がある。この粗化手段として、一般にクロム酸や過マンガン酸などの毒性の高い酸化剤を使用しなければならず、この方法は、ABS以外の樹脂では、満足できる粗化を行うことは困難となる。この方法により、電磁波シールド性と透明性は達成できたとしても、透明基板の厚さを小さくすることは困難で、フィルム化の方法としては適していなかった。さらに透明基板が厚いと、ディスプレイに密着させることができないため、そこから電磁波の漏洩が大きくなる。また製造面においては、シールド材料を巻物等にすることができないため嵩高くなることや自動化に適していないために製造コストがかさむという欠点もあった。ディスプレイ前面から発生する電磁波のシールド性については、30MHz〜1GHzにおける30dB以上の電磁波シールド機能の他に、ディスプレイ前面より発生する900〜1、100nmの赤外線はリモートコントロールで操作する他のVTR機器等に悪影響を及ぼすため、これを遮蔽する必要がある。この他にも良好な可視光透過性、さらに可視光透過率が大きいだけでなく、電磁波の漏れを防止するためディスプレイ面に密着して貼付けられる接着性、シールド材の存在を肉眼で確認することができない特性である非視認性も必要とされる。接着性についてはガラスや汎用ポリマー板に対し比較的低温で容易に貼付き、長期間にわたって良好な密着性を有することが必要である。しかし、電磁波シールド性、赤外線遮蔽性、透明性・非視認性、接着性等の特性を同時に十分満たす接着フィルムとしては、これまで満足なものは得られていなかった。本発明はかかる点に鑑み、電磁波シールド性と赤外線遮蔽性、透明性・非視認性および良好な接着特性を有する電磁波シールド性接着フィルムおよび該フィルムを用いた電磁波遮蔽構成体、ディスプレイを得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プラスチックフィルムに、加熱により架橋・硬化する熱硬化型接着剤層、該接着剤層への貼合せ面が粗化されている導電性材料の金属箔の順になるよう貼り合せて、該接着剤層に金属箔の貼合せ面の粗化形状が転写される工程、及び、貼り合せた前記金属箔にケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ法により開口率が50%以上になるようにライン幅が40μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚さが40μm以下である幾何学図形を描く工程含むことを特徴とする、製造後に加熱される電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。また、本発明は、プラスチックフィルムに、熱硬化型接着剤層、該接着剤層への貼合せ面が粗化されている導電性材料の金属箔の順になるよう貼り合せて、接着剤層に金属箔の貼合せ面の粗化形状が転写される工程と、貼り合せた金属箔にケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ法により開口率が50%以上になるようにライン幅が40μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚さが40μm以下である幾何学図形を描く工程と、前記接着剤層が流動性又は接着性を有する程度に加熱して架橋・硬化させる工程を含む電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。
【0006】
そして、本発明は、熱硬化型接着剤層の硬化度が60%未満である電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。更に、本発明は、熱硬化型接着剤層の屈折率が硬化度を60%以上で1.45〜1.70の範囲にある電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。また、本発明は、熱硬化型接着剤層の厚さが導電性金属の厚さ以上である電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。また、本発明は、熱硬化型接着剤層中に赤外線吸収剤が含有されている電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。そして、本発明は、導電性金属が、厚さ0.5〜40μmの銅、アルミニウムまたはニッケルである電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。更に、本発明は、前記プラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムである電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。また、本発明は、前記導電性金属が銅であり、少なくともその表面が黒化処理されている電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。そして、本発明は、前記導電性金属が常磁性金属である電磁波シールド性接着フィルムの製造法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明に使用する熱硬化型接着剤層は、熱により樹脂と架橋剤・硬化剤とが架橋反応もしくは硬化反応を行い、3次元網目構造となる接着剤組成物のことである。導電性金属で描かれた幾何学図形、熱硬化型接着剤層及びプラスチックフィルムを基本構成とする電磁波シールド性接着フィルムは、これを被着体であるディスプレイやプラスチック板に接着させる必要があり、そのためには接着剤層が流動しなければならない。接着剤層は常温または加熱して接着剤層を流動化させ被着体と接着させることが望ましい。そして接着後あるいは接着と同時に接着剤層を熱により架橋・硬化させることが望ましい。このためには熱硬化型接着剤層は、接着の際に流動することが必要であり、硬化度が60%未満で有ることが好ましい。架橋・硬化した接着剤組成物でも加熱、加圧により流動し接着性を有するもので有れば使用することができる。回転粘度計により200℃において10000ポイズ以下の粘度を有するものであれば使用することができる。本発明で使用する熱硬化型接着剤層は、接着剤組成物を溶剤に溶解ないし分散させてワニスとし、そのワニスをプラスチックフィルム、金属箔などの支持体上に塗布、乾燥して得られる。この乾燥工程で接着剤組成物に熱が付与され有る程度の架橋・硬化が進む。架橋・硬化が進みすぎると接着剤層の流動性に乏しくなるので、適正な条件に制御して流動性のある状態としなければならない。この条件として硬化度を60%未満とするのが好ましい。硬化度は、DSC(示差走査熱分析)を用いて測定することができる。
【0008】
DSC(示差走査熱量測定法)は、測定温度範囲内で、発熱、吸熱の無い標準試料との温度差をたえず打ち消すように熱量を供給または除去するゼロ位法を測定原理とするものであり、測定装置が市販されておりそれを用いて測定できる。熱硬化型接着剤の反応は、発熱反応であり、一定の昇温速度で試料を昇温していくと、試料が反応し熱量が発生する。その発熱量をチャートに出力し、ベースラインを基準として発熱曲線とベースラインで囲まれた面積を求め、これを発熱量とする。室温から200℃まで5〜10℃/分の昇温速度で測定し、上記した発熱量を求める。これらは、全自動で行なうものもあり、それを使用すると容易に行なうことができる。つぎに、支持体に接着剤ワニスを塗布し、乾燥して得た接着剤の発熱量は、つぎのようにして求める。まず、25℃で真空乾燥器を用いて溶剤を乾燥させた未架橋・未硬化試料の全発熱量を測定し、これをA(J/g)とする。つぎに、塗工、乾燥した試料の発熱量を測定し、これをBとする。試料の硬化度C(%)(加熱、乾燥により発熱を終えた状態)は、つぎの数1で与えられる。
【0009】
(数1)
C(%)=(A−B)×100/A
【0010】
硬化度が60%未満の場合、網目構造が十分発生していないため、接着剤層の流動性があり、流動し被着体と接着させることができる。一方、硬化度が60%以上では、接着剤層の流動性に乏しくまた接着性にも劣るようになる。
【0011】
熱硬化型接着剤として例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられる。なお、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0012】
硬化反応系としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられる。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、アクリル樹脂(n=1.45〜1.47)、不飽和ポリエステル樹脂(n=1.52〜1.54)、飽和ポリエステル樹脂(n=1.52〜1.54)、ジアリルフタレート樹脂(n=1.57)、エポキシ樹脂(n=1.55〜1.60)、フラン樹脂(n=1.55)、ポリウレタン樹脂(n=1.5〜1.6)等が例示される。
【0013】
また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。汎用熱可塑性樹脂としては、たとえば天然ゴム(屈折率n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0014】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。これらの接着剤となるポリマーの軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好適で、150℃以下がさらに好ましい。電磁波シールド性接着フィルムの用途から、使用される環境が通常80℃以下であるので接着剤層の軟化温度は、加工性から80〜120℃が最も好ましい。一方、ポリマーの重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500以下では接着剤組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下するおそれがある。本発明で使用する接着剤樹脂組成物には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0015】
本発明で用いる熱硬化型接着剤層の硬化後の屈折率は1.45〜1.70のものを使用するのが好ましい。これは本発明で使用するプラスチックフィルムと接着剤層の屈折率、または導電性金属付きプラスチックフィルムのプラスチックフィルムに導電性金属を接着するために使用した接着剤と本発明で使用する接着剤層の屈折率が異なると可視光透過率が低下するためであり、屈折率が1.45〜1.70であると可視光透過率の低下が少なく良好で上述したポリマーの屈折率はこの範囲内にある。
【0016】
本発明の導電性金属として、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタンなどの金属、あるいはそれらの金属の2種以上を組み合わせた合金を使用することができる。導電性や回路加工の容易さ、価格の点から銅、アルミニウムまたはニッケルが適しており、厚さが0.5〜40μmの金属箔、めっき金属、蒸着などの真空下で形成される金属が使われる。厚さが40μmを超えると、細かいライン幅の形成が困難であったり、視野角が狭くなる。また厚さが0.5μm未満では、表面抵抗が大きくなり、電磁波シールド効果が劣る傾向にある。
【0017】
導電性金属が銅であり、少なくともその表面が黒化処理されたものであると、コントラストが高くなり好ましい。また導電性金属が経時的に酸化され退色されることが防止できる。黒化処理は、幾何学図形の形成前後で行えばよいが、通常形成後において、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、燐酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中、95℃で2分間処理することにより行うことができる。また導電性金属が、常磁性金属であると、磁場シールド性に優れるために好ましい。かかる導電性金属を上記プラスチックフィルムに密着させる方法としては、アクリルやエポキシ系樹脂を主成分とした上記の加熱または加圧により流動する接着剤層を介して貼り合わせるのが最も簡便である。導電性金属の導電層の厚みを小さくする必要がある場合は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解・電気めっき法などの薄膜形成技術のうちの1または2以上の方法を組み合わせることにより達成できる。導電性金属の厚みは40μm以下とすることが好ましく、厚みが薄いほどディスプレイの視野角が広がり電磁波シールド材料として好ましく、18μm以下とすることがさらに好ましい。
【0018】
本発明で使用するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上で厚さが1mm以下のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが好ましい。プラスチックフィルム厚さは、5〜500μmが好ましい。5μm未満だと取り扱い性が悪くなり、500μmを超えると可視光の透過率が低下してくる。10〜200μmとすることがより好ましい。
【0019】
本発明の導電性金属で描かれた幾何学図形は、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは正の整数)、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単位の単独の繰り返し、あるいは2種類以上組み合わせで使うことも可能である。電磁波シールド性の観点からは三角形が最も有効であるが、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がるが、可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要とされる。開口率は、60%以上がさらに好ましい。開口率は、電磁波シールド性接着フィルムの有効面積に対する有効面積から導電性金属で描かれた幾何学図形の導電性金属の面積を引いた面積の比の百分率である。ディスプレイ画面の面積を電磁波シールド性接着フィルムの有効面積とした場合、その画面が見える割合となる。
【0020】
このような幾何学図形を形成させる方法としては、上記導電性金属付きのプラスチックフィルムをマイクロリソグラフ法で作製するのが回路加工の精度および回路加工の効率の点から有効である。このマイクロリソグラフ法には、フォトリソグラフ法、X線リソグラフ法、電子線リソグラフ法、イオンビームリソグラフ法などがあり、これらの他にスクリーン印刷法なども含まれる。これらの中でも、その簡便性、量産性の点からフォトリソグラフ法が最も効率がよい。なかでも、ケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ法は、その簡便性、経済性、回路加工精度などの点から最も好ましい。フォトリソグラフ法の中ではケミカルエッチング法の他にも無電解めっきや電気めっきによる方法、または無電解めっきや電気めっきとケミカルエッチング法を組み合わせて幾何学図形を形成することも可能である。
【0021】
このような幾何学図形のライン幅は40μm以下、ライン間隔は100μm以上、ライン厚みは40μm以下の範囲とするのが好ましい。また幾何学図形の非視認性の観点からライン幅は25μm以下、可視光透過率の点からライン間隔は120μm以上、ライン厚み18μm以下がさらに好ましい。ライン幅は、40μm以下、好ましくは25μm以下が好ましく、あまりに小さく細くなると表面抵抗が大きくなりすぎてシールド効果に劣るので1μm以上が好ましい。ライン厚みは40μm以下が好ましく、あまりに厚みが薄いと表面抵抗が大きくなりすぎてシールド効果に劣るので0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。前述のようにディスプレイ前面に使用する場合、開口率は50%以上が必要であるが、60%以上がさらに好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波シールド性が低下するため、ライン幅は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
【0022】
本発明で使用する赤外線吸収剤として、酸化鉄、酸化セリウム、酸化スズや酸化アンチモンなどの金属酸化物、またはインジウム−スズ酸化物(以下ITO)、六塩化タングステン、塩化スズ、硫化第二銅、クロム−コバルト錯塩、チオール−ニッケル錯体またはアミニウム化合物、ジイモニウム化合物(日本化薬株式会社製商品名)またはアントラキノン系(SIR−114)、金属錯体系(SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、SIR−152、SIR−162)、フタロシアニン系(SIR−103)(以上、三井東圧化学株式会社製商品名)などの有機系赤外線吸収剤などが挙げられ、これらを上記接着剤層中に含有させることが好ましい。この他にバインダー樹脂中に分散させた組成物を接着剤としてプラスチックフィルム上に形成した加熱または加圧により流動する接着剤層の面に塗布したり、プラスチックの面に直接塗布しさらにその上に加熱または加圧により流動する接着剤層を形成したり、プラスチックフィルムに形成した接着剤層の面と反対側のフィルム背面に塗布することもできる。また、予めプラスチックフィルム中に赤外線吸収剤を含有させたプラスチックフィルムを使用することもできる。これらの赤外線吸収性化合物のうち、最も効果的に赤外線を吸収する効果があるのは、硫化第二銅、ITO、アミニウム化合物、ジイモニウム化合物や金属錯体系などの赤外線吸収剤である。有機系赤外線吸収剤以外の赤外線吸収剤の場合、これらの化合物の一次粒子の粒径に注意する必要がある。粒径が赤外線の波長より大きすぎると遮蔽効率は向上するが、粒子表面で乱反射が起き、ヘイズが増大するため透明性が低下する。一方、粒径が赤外線の波長に比べて短かすぎると遮蔽効果が低下する。好ましい粒径は0.01〜5μmで0.1〜3μmがさらに好ましい。
【0023】
赤外線吸収性の材料である赤外線吸収剤は、バインダー樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテンなどのジエン系樹脂、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、t−ブチルアクリレートなどからなるポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン系樹脂などのバインダー樹脂中に均一に分散される。その配合の最適量は、バインダー樹脂100重量部に対して赤外線吸収剤が0.01〜10重量部であるが、0.1〜5重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では赤外線遮蔽効果が少なく、10重量部を超えると透明性が損なわれる。
【0024】
接着剤層中に、上記の赤外線吸収剤を含有させた接着剤層はプラスチックフィルムの片面に形成され、さらにその接着剤層の面に導電性金属が被覆されると好ましい。また、前述したように、赤外線吸収剤を含有した組成物をプラスチックフィルム面に形成し、その上に加熱または加圧により流動する接着剤層(赤外線吸収剤を含有または含有してなくても良い)を形成してもよいし、プラスチックフィルム面に接着剤層を形成し、その上に赤外線吸収剤を含有した組成物を形成しても良い。さらに、電磁波シールド性接着フィルムの導電性金属の反対側の面に形成しても良い。また、電磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板から構成された電磁波遮蔽構成体のいずれかの層に形成しても良い。例えば、1枚の電磁波シールド性接着フィルムと1枚のプラスチック板から構成された電磁波遮蔽構成体であれば、電磁波シールド性接着フィルムの面A、電磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板の間の面B、プラスチック板の面Cのいずれの面に形成しても良い。この場合、赤外線吸収剤を含有した組成物は、これを直接上記のA,B,Cの少なくとも一つの面に形成しても良い。赤外線吸収剤を含有した層が少なくとも1層は必要であり、それ以外の層は赤外線吸収剤を含有してなくても良い。赤外線吸収剤を含有した層は、接着性を有していた方が、作業性や加工性が容易となり好ましい。具体的には、電磁波シールド性接着フィルムの接着剤層面またはフィルム背面に0.1〜10μmの厚さで塗布される。塗布された、赤外線吸収性の化合物を含む組成物は熱や紫外線を使用して硬化させてもよい。一方、赤外線吸収剤は上述した加熱硬化型接着剤層の接着剤組成物に直接混合して使うことも可能である。その際の添加量は接着剤の主成分となるポリマー100重量部に対して効果と透明性から、0.01〜5重量部が最適である。
【0025】
本発明で使用するプラスチック板は、プラスチックからなる板であり、具体的には、ポリスチレン樹脂(n=1.59)、アクリル樹脂(n=1.46)、ポリメチルメタクリレート樹脂(n=1.49)、ポリカーボネート樹脂(n=1.58)、ポリ塩化ビニル樹脂(n=1.54)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(n=1.6〜1.63)、ポリエチレン樹脂(n=1.51)、ポリプロピレン樹脂(n=1.50)、ポリアミド樹脂(n=1.52)、ポリアミドイミド樹脂(n=1.5)、ポリエーテルイミド樹脂(n=1.5)、ポリエーテルケトン樹脂(n=1.45)、ポリアリレート樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリアセタール樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(n=1.57)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(n=1.58)などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂(n=1.49)、フッ素樹脂(n=1.4〜1.5)、ポリスルホン樹脂(n=1.63)、ポリエーテルスルホン樹脂(n=1.45〜1.6)、ポリメチルペンテン樹脂(n=1.45〜1.6)、ポリウレタン樹脂(n=1.45〜1.6)、フタル酸ジアリル樹脂(n=1.45〜1.6)などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げれれる。これらの中でも透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂が好適に用いられる。本発明で使用するプラスチック板の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱性から好ましい。
【0026】
本発明の電磁波遮蔽構成体は、電磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板から構成され、その組合せは多数有る。図1は本発明の電磁波シールド性接着フィルムの斜視図(a)と断面図(b)であり、加熱または加圧により流動する接着剤層1と導電性金属で描かれた幾何学図形2とプラスチックフィルム3から電磁波シールド性接着フィルム4が構成される。この電磁波シールド性接着フィルム4は、図2(a)に示すようにディスプレイの画面5に直接形成しても良いし、図2(b)に示すようにプラスチック板6の片面に形成しどちらかの面をディスプレイ画面に接着剤又は取付治具を介してディスプレイ画面に設ける。図2(c)は、前述した赤外線吸収剤を含有した接着剤組成物7をプラスチック板6の一方の面に、他方の面に電磁波シールド性接着フィルム4を形成した電磁波遮蔽構成体8の例である。また、図2(d)はプラスチックフィルム3の片面に赤外線吸収剤を含有した接着剤組成物7を形成し接着剤面をプラスチック板6に接着させ、他方の面に電磁波シールド性接着フィルム4を形成した電磁波遮蔽構成体8の例である。図2(e)は、電磁波シールド性接着フィルム4とプラスチック板6より構成され、電磁波シールド性接着フィルム4の上面に接着剤層9を形成し、この接着剤層9をディスプレイ画面5に張り合わせる電磁波遮蔽構成体8である。図2(f)は、電磁波シールド性接着フィルム4のプラスチックフィルム面側に接着剤層9を形成しその面にプラスチック板6を設け、電磁波シールド性接着フィルム4の導電性金属で描かれた幾何学図形が形成された面にプラスチック板6を形成した電磁波遮蔽構成体8である。電磁波シールド性接着フィルムや電磁波遮蔽構成体のいずれかの面には、赤外線遮蔽性を有する層、反射防止処理を有する層、防眩処理を有する層、表面硬度の高い耐擦性を有する層を形成することができる。これらは例示であり、この他の形態で使用することができる。ガラス板の片面に電磁波シールド性接着フィルムを接着し、このガラス板をディスプレイ前面に取り付けガラス面がディスプレイ装置の外側になるようにしても良い。
【0027】
本発明の電磁波シールド性接着フィルムは、熱硬化型接着剤層、幾何学図形を有する導電性金属及びプラスチックフィルムから基本的に構成される。導電性金属は金属箔の使用が好ましく、この場合接着性向上のため金属箔の面を粗化形状にすることが多く、幾何学図形を形成すると、除去された金属部分は、接着層にその粗化形状を転写して金属と接している接着剤層の部分に粗化形状が転写されてしまい可視光線がそこで散乱されてしまうので光線透過率が低下し透明性が損なわれる。また、プラスチックフィルムにおいても、フィルムの成形加工性向上のため微量のフィラーを添加しフィルム表面に凹凸を付与しフィルム巻き取り時のフィルム同士の滑りを良くして巻き取り性を向上させたり、フィルム表面に接着剤との接着性向上のためマット加工等の粗化処理をされることがある。このように、接着剤層の導電性金属が除去された部分やプラスチックフィルム自体は密着性向上等のために意図的に凹凸を有していたり、導電性金属の背面形状を転写したりするためにその表面で光が散乱され、透明性が損なわれるが、本発明の接着剤層はプラスチックフィルムの凹凸面を埋めその凹凸面にプラスチックフィルムと屈折率が近い樹脂が平滑に塗布されると乱反射が最小限に押さえられ、また導電性金属の粗化形状の転写は、接着剤層が流動することにより解消され被着体の表面形状に沿って流動するので透明性が発現するようになると考えられる。さらにプラスチックフィルム上の導電性材料で形成された幾何学図形は、ライン幅が非常に小さいため肉眼で視認されない。またライン間隔も十分に大きいため見掛け上透明性を発現すると考えられる。一方、遮蔽すべき電磁波の波長に比べて、幾何学図形のライン間隔は十分に小さく、優れたシールド性を発現すると考えられる。
【0028】
【実施例】
次に実施例に於いて本発明を具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<電磁波シールド性接着フィルム1及び電磁波遮蔽構成体1作製例>プラスチックフィルムとして厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名A−4100、屈折率n=1.575)を用い、その片面に下記の赤外線吸収剤を含む接着剤層1を室温でアプリケータを用いて所定の乾燥塗布厚になるように塗布し、90℃、5分間加熱乾燥させた。その接着剤層1を介して導電性金属である厚さ12μmの電解銅箔を、その粗化面が接着剤側になるようにして、90℃、10Kgf/cmの条件で加熱ラミネートして導電性金属付きプラスチックフィルムである銅箔付きPETフィルムを得た。得られた銅箔付きPETフィルムにケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅25μm、ライン間隔250μmの銅格子パターンをPETフィルム上に形成し、電磁波シールド性接着フィルム1を得た。この電磁波シールド性接着フィルム1の可視光透過率は20%以下であった。この電磁波シールド性接着フィルム1を熱プレス機を使用し市販のアクリル板(コモグラス;株式会社クラレ製商品名、厚み3mm、n=1.49)に接着剤層が形成されている面が接するようにして110℃、20Kg/cm、15分の条件で加熱圧着し電磁波遮蔽構成体1を得た。接着剤層1の組成物を使用し、乾燥後の接着剤層1の厚みが20μmになるようにして作製した電磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板から得た電磁波遮蔽構成体1を実施例1とした。
【0029】
Figure 0004084055
上記の接着剤層1の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.54、硬化前のDSCの硬化度(ラミネート後)は10%であった。
【0030】
(実施例2)
<電磁波シールド性接着フィルム2及び電磁波遮蔽構成体2作製例>厚さ25μmのPETフィルムの片面に下記の赤外線吸収剤を含む接着剤層2を室温でアプリケータを用いて塗布し、90℃、5分間加熱乾燥させた。その接着剤層2を介して厚さ25μmのアルミ箔を加熱ラミネート(100℃、10Kgf/cm)して接着させアルミ箔付きPETフィルムを得た。このアルミ箔付きPETフィルムに前記実施例1の電磁波シールド性接着フィルム1及び電磁波遮蔽構成体1作製例と同様のフォトリソグラフ工程を経て、ライン幅15μm、ライン間隔125μmのアルミ格子パターンをPETフィルム上に形成した。この電磁波シールド性接着フィルム2の可視光透過率は20%以下であった。この電磁波シール性接着フィルム2を市販のアクリル板(コモグラス;株式会社クラレ製商品名、厚み3mm)に接着剤層が形成されている面が接するようにして120℃、30Kgf/cm、30分の条件で熱プレス機を使用して加熱圧着し電磁波遮蔽構成体2を得た。接着剤層2の組成物を使用し、乾燥後の接着剤層2の厚みが40μmになるようにして作製した電磁波シールド性接着フィルム2とプラスチック板から得た電磁波遮蔽構成体2を実施例2とした。
【0031】
Figure 0004084055
上記の接着剤層2の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.51、硬化前のDSCの硬化度(ラミネート後)は15%であった。
【0032】
(実施例3)
<電磁波シールド性接着フィルム3及び電磁波遮蔽構成体3作製例>厚さ50μmのPETフィルムの片面に下記の接着剤層3を室温でアプリケータを用いて塗布し、90℃、5分間加熱乾燥させた。その接着剤層に、マスク層を用いて無電解ニッケルめっきを格子状に形成することによりライン幅10μm、ライン間隔100μm、厚さ1μmのニッケル格子パターンを接着剤層3上に形成した電磁波シールド性接着フィルム3を作製した。この電磁波シールド性接着フィルム3の可視光透過率は20%以下であった。この後電磁波シールド性接着フィルム3をロールラミネータを使用し市販のアクリル板(コモグラス、株式会社クラレ製商品名、厚み3mm)に接着剤層が形成されている面が接するようにして110℃、20Kgf/cmの条件で加熱圧着し電磁波遮蔽構成体3を得た。接着剤層3の組成物を使用し、乾燥後の接着剤3の厚みが5μmになるようにして作製した電磁波シールド性接着フィルム3とプラスチック板から得た電磁波遮蔽構成体3を実施例3とした。
【0033】
Figure 0004084055
上記の接着剤層3の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.50、硬化前のDSCの硬化度(ラミネート前)は5%であった。
【0034】
(実施例4)
下記の接着剤層4の組成物を使用し、乾燥後の接着剤層4の厚みが20μmになるようにして、実施例1と同様にして得た電磁波シールド性接着フィルム4として、この電磁波シールド性接着フィルム4とプラスチック板から電磁波遮蔽構成体4を作製した。
Figure 0004084055
上記の接着剤層4の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.45、硬化前のDSCによる硬化度(ラミネート後)は3%であった。
【0035】
(実施例5)
下記の接着剤層5の組成物を使用し、乾燥後の接着剤層5の厚みが20μmになるようにして、実施例1と同様にして得た電磁波シールド性接着フィルム5として、この電磁波シールド性接着フィルム5とプラスチック板から電磁波遮蔽構成体5を作製した。
Figure 0004084055
上記の接着剤層5の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.47、硬化前のDSCによる硬化度(ラミネート後)は10%であった。
【0036】
(実施例6)
下記の接着剤層6の組成物を使用し、乾燥後の接着剤層6の厚みが20μmになるようにして、実施例1と同様にして得た電磁波シールド性接着フィルム6として、この電磁波シールド性接着フィルム6とプラスチック板から電磁波遮蔽構成体6を作製した。
Figure 0004084055
上記の接着剤層6の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.49、硬化前のDSCによる硬化度(ラミネート後)は5%であった。
【0037】
(実施例7)
プラスチックフィルムをPET(50μm)からポリカーボネートフィルム(50μm、n=1.58)に、接着剤層の厚みを20μmから30μmにした以外は実施例2と同様にして電磁波遮蔽構成体7を得た。
【0038】
(実施例8)
ライン幅を10μmから30μmに、ライン間隔を100μmから500μmに、接着剤層の厚みを5μmから10μmにした以外は実施例3と同様にして得た電磁波遮蔽構成体8を実施例8とした。
【0039】
(実施例9)
フォトリソグラフ工程を経てPETフィルム上に形成した銅格子パターンに黒化処理を施したこと以外は実施例1と同様にして得た電磁波遮蔽構成体9を実施例9とした。
【0040】
(比較例1)
実施例1の接着剤層1の組成物を用い、厚さ50μmのPETフィルム上にアプリケータを用いて乾燥後の接着剤層の厚みが20μmとなるように100℃で30分間、加熱乾燥させた。そのときのDSCによる硬化度は、80%であった。その後、実施例1と同様にして熱プレス機を使用し110℃、20Kg/cm、15分の条件で加熱圧着し電磁波遮蔽構成体10を作製した。
【0041】
(比較例2)
実施例2の接着剤層2の組成物を用い、厚さ25μmのPETフィルムの片面にアプリケータを用いて乾燥後の接着剤層の厚みが40μmとなるように100℃で30分間、加熱乾燥させた。そのときのDSCによる硬化度は、85%であった。その後、実施例2と同様にして熱プレス機を使用し120℃、30Kg/cm、30分の条件で加熱圧着し電磁波遮蔽構成体11を作製した。
【0042】
(比較例3)
実施例3の接着剤層3の組成物S−1005の代わりに、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(Mw=5万)を使用し、スミジュールNを除いて接着剤層7の組成物とした。それ以外の条件は実施例3と同様にして得た電磁波遮蔽構成体12を比較例3とした。上記の接着剤層7の組成物の溶媒乾燥硬化後の屈折率は1.73、硬化前のDSCによる硬化度は5%であった。
【0043】
(比較例4)
接着剤の厚みを20μmから5μmにした以外は実施例1と同様にして電磁波遮蔽構成体13を作製し比較例4とした。
【0044】
(比較例5)
ライン間隔を250μmから50μmにした以外は実施例1と同様にして電磁波遮蔽構成体14を作製し比較例5とした。
【0045】
(比較例6)
ライン幅を25μmから50μmにライン間隔を250μmから150μmした以外は実施例1と同様にして電磁波遮蔽構成体15を作製し比較例6とした。
【0046】
(比較例7)
接着剤層2の組成物から赤外線吸収剤を除いた以外は実施例2と同様にして電磁波遮蔽構成体16を作製し比較例7とした。
【0047】
(比較例8)
導電材料として0.1μm(1、000Å)全面蒸着させたITO蒸着PETを使い、パターンを形成しないで、直接接着剤層1の組成物から赤外線吸収剤を除いた組成物を塗布し、実施例1と同様にして得た電磁波遮蔽構成体を17を比較例8とした。
【0048】
(比較例9)
接着剤としてポリジメチルシロキサン(Mw=4.5万、n=1.43)を使用し、接着剤層10の組成物とした。それ以外の条件は実施例3と同様にして得た電磁波遮蔽構成体18を比較例9とした。
【0049】
以上のようにして得られた電磁波シールド性接着フィルムの導電性金属材料で描かれた幾何学図形の開口率、電磁波シールド性、可視光透過率、非視認性、赤外線遮蔽率、加熱処理前後の接着特性、を測定した。結果を表1、2に示した。
【0050】
なお接着剤層の組成物の屈折率は、屈折計(株式会社アタゴ光学機械製作所製、アッベ屈折計)で測定した。導電性金属で描かれた幾何学図形の開口率は顕微鏡写真をもとに実測した。DSCは、示差走査型熱量計(デュポン社製910型−DSC)で昇温速度10℃/分、室温(25℃)〜200℃まで測定した。電磁波シールド性は、同軸導波管変換器(日本高周波株式会社製、TWC−S−024)のフランジ間に試料を挿入し、スペクトラムアナライザー(YHP製、8510Bベクトルネットワークアナライザー)を用い、周波数30MHz〜1GHzで測定した。可視光透過率の測定は、ダブルビーム分光光度計(株式会社日立製作所製、200−10型)を用いて、400〜700nmの透過率の平均値を用いた。非視認性は、アクリル板に電磁波シールド性接着フィルムを貼り付けた電磁波遮蔽構成体を0.5m離れた場所から目視して導電性金属で形成された幾何学図形を認識できるかどうかで評価し、認識できないものを良好とし、認識できるものをNGとした。赤外線遮蔽率は、分光光度計(株式会社日立製作所製、U−3410)を用いて、900〜1、100nmの領域の赤外線吸収率の平均値を用いた。接着力は、引張り試験機(東洋ボールドウィン株式会社製、テンシロンUTM−4−100)を使用し、幅10mm、90°方向、剥離速度50mm/分で測定した。
【0051】
【表1】
Figure 0004084055
【0052】
【表2】
Figure 0004084055
【0053】
比較例1、2は、接着剤層の硬化度が60%以上と高く、接着剤層が流動しにくく導電性金属の銅箔やアルミニウム箔で形成された幾何学図形の厚み相当以上の流動性がなく被着体のプラスチック板に十分に密着しないので接着力に劣った。また、転写された接着剤層の表面に形成された粗化形状が流動性がないためほとんどその形状が維持され透過光が散乱されてしまい可視光透過率に劣った。比較例3は、接着剤層7の屈折率が1.73と高く接着剤層とプラスチック板との界面での散乱が大きく可視光透過率に劣った。比較例4は、接着剤層1の厚み5μmが導電性金属である銅箔の厚み12μmより薄いため、接着剤層1が流動してプラスチック板との密着性は良いが、導電性金属を十分に埋めることができず可視光透過率に劣った。比較例5は、ライン間隔が50μmで電磁波シールド性が良好であり、ライン幅が25μmと細いため非視認性に優れるが、ライン間隔が狭く開口率が50%以下の25%であるため可視光透過率に劣った。比較例6は、ライン幅が、50μmであり、非視認性に劣った。比較例7は、赤外線吸収剤を配合しない接着剤層を使用したものであり、赤外線遮蔽性に劣った。比較例8は、PETフィルムにITO(インジウム−スズ酸化物)を蒸着したものであるが、電磁波シールド性に劣った。比較例9は、接着剤層に屈折率が1.43の接着剤層10を使用したものであるが、比較例3と同様、接着剤層とプラスチック板との界面での散乱が大きく可視光透過率に劣った。これらの比較例に対して、本発明の実施例で示した、導電性金属で描かれた幾何学図形を有し、その開口率が50%以上で、接着剤層に熱硬化型接着剤層を用いその硬化度が60%未満であり、硬化後の屈折率が1.45〜1.70の範囲にあり、接着剤層の厚みが導電性金属の厚さ以上で、赤外線吸収剤が含有されている接着剤層がいずれも好ましい値を示した。また、導電性金属で描かれたライン幅が、40μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚みが40μm以下の導電性金属が好ましい値を示した。また、実施例9で示した銅を黒化処理した電磁波遮蔽構成体は、コントラストが大きく鮮明な画像を快適に鑑賞することができた。
【0054】
【発明の効果】
本発明で得られる電磁波シールド性接着フィルムは実施例からも明らかなように、被着体に容易に貼付けて使用でき、しかも密着性が優れているので電磁波漏れがなくシールド機能が特に良好である。また可視光透過率、非視認性などの光学的特性が良好で、しかも長時間にわたって高温での接着特性に変化が少なく良好であり、優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。マイクロリソグラフ法をフォトリソグラフ法とすることにより、安価で量産性に優れた電磁波シールド性と透明性、および簡便な接着性を有する電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。接着剤層の硬化度を60%未満とすることにより、被着体に容易に貼付けることができ、取り扱い性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。接着剤層の硬化後の屈折率を1.45〜1.70とすることにより、透明性、像鮮明性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。接着剤層の厚さを導電性金属の厚さ以上にすることにより、透明性、接着性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。接着剤層中に赤外線吸収剤が含有されていることにより、赤外線遮蔽性および透明性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。導電性金属で描かれた幾何学図形のライン幅を40μm以下、ライン間隔を100μm以上、ライン厚みを40μm以下とすることにより、電磁波シールド性と透明性及び広視野角の電磁波シールド性接着フィルムを得ることができる。導電性金属を、厚さ0.5〜40μmの銅、アルミニウムまたはニッケルとすることにより、電磁波シールド性、加工性、及び安価な電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。ケミカルエッチング法により導電性金属を描画することにより、安価で可視光透過率に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。導電性金属付きプラスチックフィルムのプラスチックフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムとすることにより、安価で透明性、耐熱性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。導電性金属が銅であり、少なくともその表面が黒化処理されていることにより、コントラストと電磁波シールド性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。導電性金属を常磁性金属とすることにより、磁場シールド性に優れた電磁波シールド性接着フィルムを提供することができる。
【0055】
磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板から構成される電磁波遮蔽構成体とすることにより、透明性を有する電磁波シールド性に優れた基板とすることができ、ディスプレイに提供することができる。電磁波シールド性接着フィルムをプラスチック板の少なくとも片面に貼り合わせ、熱硬化型接着剤層の硬化度を60%以上とした電磁波遮蔽構成体とすることにより、透明性を有する電磁波シールド性に優れた基板とすることができ、取扱性が容易で、ディスプレイに提供することができる。電磁波シールド性接着フィルムをプラスチック板の片面に貼り合わせ熱硬化型接着剤層の硬化度を60%以上とし、他面に赤外線遮蔽性を有する接着剤または接着フィルムを貼り合わせた電磁波遮蔽構成体とすることにより、赤外線遮蔽性、透明性を有する電磁波シールド性基板を提供することができる。電磁波シールド性と透明性を有する電磁波シールド性接着フィルムをディスプレイに用いることにより、軽量、コンパクトで透明性に優れ電磁波漏洩が少ないディスプレイを提供することができる。電磁波シールド性と透明性を有する電磁波遮蔽構成体をディスプレイに用いることにより、軽量、コンパクトで電磁波漏洩が少なくディスプレイ保護板を兼用したディスプレイを提供することができる。ディスプレイに使用した場合、可視光透過率が大きく、非視認性が良好であるのでディスプレイの輝度を高めることなく通常の状態とほぼ同様の条件下で鮮明な画像を快適に鑑賞することができる。本発明で得られる電磁波シールド性接着フィルム及び電磁波遮蔽構成体は、電磁波シールド性や透明性に優れているため、ディスプレイの他に電磁波を発生したり、あるいは電磁波から保護する測定装置、測定機器や製造装置の内部をのぞく窓や筐体、特に透明性を要求される窓のような部位に設けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電磁波シールド性接着フィルムの斜視図(a)とその断面図(b)である。
【図2】 本発明の電磁波シールド性接着フィルムのディスプレイ使用例(a)及び電磁波シールド性接着フィルムとプラスチック板から構成される電磁波遮蔽構成体((b)〜(f))の例。
【符号の説明】
1 接着剤層
2 導電性金属で描かれた幾何学図形
3 プラスチックフィルム
4 電磁波シールド性接着フィルム
5 ディスプレイの画面
6 プラスチック板
8 電磁波遮蔽構成体
9 接着剤層

Claims (10)

  1. プラスチックフィルムに、加熱により架橋・硬化する熱硬化型接着剤層、該接着剤層への貼合せ面が粗化されている導電性材料の金属箔の順になるよう貼り合せて、接着剤層に金属箔の貼合せ面の粗化形状が転写される工程、及び、貼り合せた前記金属箔にケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ法により開口率が50%以上になるようにライン幅が40μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚さが40μm以下である幾何学図形を描く工程含むことを特徴とする、製造後に加熱される電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  2. プラスチックフィルムに、熱硬化型接着剤層、該接着剤層への貼合せ面が粗化されている導電性材料の金属箔の順になるよう貼り合せて、接着剤層に金属箔の貼合せ面の粗化形状が転写される工程、貼り合せた前記金属箔にケミカルエッチング法を使用したフォトリソグラフ法により開口率が50%以上になるようにライン幅が40μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚さが40μm以下である幾何学図形を描く工程、及び、前記接着剤層が流動性又は接着性を有する程度に加熱して架橋・硬化させる工程を含むことを特徴とする電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  3. 熱硬化型接着剤層の硬化度が60%未満である請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  4. 熱硬化型接着剤層の屈折率が、硬化度60%以上で1.45〜1.70の範囲にある請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  5. 熱硬化型接着剤層の厚さが導電性金属の厚さ以上である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  6. 熱硬化型接着剤層中に赤外線吸収剤が含有されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  7. 前記導電性金属が、厚さ0.5〜40μmの銅、アルミニウムまたはニッケルである請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  8. 前記プラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  9. 前記導電性金属が銅であり、少なくともその表面が黒化処理されている請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
  10. 前記導電性金属が常磁性金属である請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の電磁波シールド性接着フィルムの製造法。
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