JP4078980B2 - シリコン基板表面の金属不純物分析方法 - Google Patents

シリコン基板表面の金属不純物分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物やパーティクル等が付着しているシリコン基板表面で結合している金属不純物を容易にかつ汚染なく回収し、分析する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン基板の表面に存在する不純物は、デバイス特性を劣化させ、デバイスの製造歩留りに大きな影響を与える。このうち金属不純物は、デバイス工程中の例えば酸化、拡散、エピタキシャル成長等の各種熱処理過程において、シリコン基板の内部へ容易に拡散して、析出物、転位、酸素誘起積層欠陥などの結晶欠陥を誘起したり、少数キャリアのライフタイムの低下、リーク電流の増大、酸化膜の絶縁破壊電圧の劣化などを引き起こすおそれがある。
シリコン基板表面の金属不純物を回収する方法として、フッ化水素酸(以下、HFという。)と硝酸(以下、HNO3という。)と塩酸を含む回収液を用いてニッケルのような回収し難い金属不純物を溶解させて回収する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に示される方法には、DE法(one Drop Etching Method)が用いられている。図3に示すように、DE法はシリコン基板13表面の端部に回収液21を数滴滴下し、続いて図4(a)〜図4(c)に示すように、この液滴21を基板13表面全体に行き渡らせて、相対向する端部に再び液滴の形態で集めることにより、基板13表面を清浄化して金属不純物を回収する方法である。
【0003】
また、HFとHNO3との混合液をシリコン基板表面に供給して混合液を回収し、この混合液を分析する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に示される回収方法には、DSE法(one Drop Sandwich Etching Method)が用いられている。図5に示すように、DSE法は混合液23を清浄なポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン、以下、PTFEという。)製等の耐食性のプレート22上に滴下し、この滴下した混合液23を挟むように基板13表面を下にしてプレート22に載せて基板13表面をエッチングする。即ち、混合液23をプレート22と基板13表面との間に挟むサンドイッチ状として5分間程度保持し、その反応を促進させる。反応終了と考えられる5分後に基板13をプレート22より除去し、プレート22に残った混合液23を回収する方法である。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−198544号公報
【特許文献2】
特開平7−130808号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示された方法では、回収液に強い酸を用いて基板表面をエッチングしながら金属不純物を回収していくため、一定箇所に必要以上の時間がかかってしまうとその箇所だけが深くエッチングされてしまい、液滴が基板全体に回らなくなる問題点があった。
また、上記特許文献2に示された方法では、シリコン基板に有機物が付着していてもほぼ全ての金属不純物を基板から回収することができるが、繁雑な作業が生じ、分析に時間がかかる問題があった。
また基板表面にHF蒸気を接触させて、基板表面の酸化膜を分解させ、その後酸で回収する方法もあるが、シリコン基板表面で結合している金属不純物の回収率は低く、有機物等が付着しているシリコン基板からの回収では、回収液が有機物に邪魔されて動かない問題があった。
【0006】
本発明の目的は、基板表面の金属不純物の回収率を高め、正確な定量分析ができる、シリコン基板表面の金属不純物分析方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、有機物やパーティクル等が付着した基板表面から金属不純物を簡便な方法で回収し得る、シリコン基板表面の金属不純物分析方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、支持台12に置かれたシリコン基板13と、基板13に接触しないようにしてHNO3と硫酸(以下、H2SO4という。)の混合比が重量濃度比で、HNO 3 :H 2 SO 4 =1:10〜10:1である混合溶液14とを密閉された反応容器10内にそれぞれ収容し、反応容器10を加熱及び加圧することなく混合溶液14よりHNO3蒸気17を発生させ、基板13表面とHNO3蒸気17を1分間〜60分間接触させる工程と、図3及び図4に示すように、基板13表面にHFと過酸化水素(以下、H 2 2 という。)の混合溶液である希薄な酸の液滴21を滴下させ、液滴21を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、金属不純物を溶解した液滴を回収する工程と、回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する工程とを含むシリコン基板表面の金属不純物分析方法である。
請求項1に係る発明では、上記工程をそれぞれ経ることにより、基板表面に不純物やパーティクル等が付着している基板についても金属不純物を容易に回収、定量分析できる。
【0008】
HNO3とH2SO4の混酸溶液から発生するHNO3蒸気に1分間〜60分間接触させることで基板表面の金属不純物を回収し易い硝酸塩の形態にする。
【0009】
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明であって、定量分析を原子吸光分析(以下、AASという。)又は誘導結合プラズマ質量分析(以下、ICP−MSという。)により行う方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず、図1に示すように、支持台12に置かれたシリコン基板13と、基板13に接触しないようにしてHNO3とH2SO4の混合溶液14とを密閉された反応容器10内にそれぞれ収容し、反応容器10を加熱及び加圧することなく混合溶液14よりHNO3蒸気17を発生させ、基板13表面とHNO3蒸気17を接触させる。HNO3蒸気17を接触させることで基板13表面に存在する金属不純物が硝酸塩の形態をとるため、後に続く工程において金属不純物が回収し易くなる。シリコン基板13表面に対してHNO3とH2SO4の混合溶液14より発生する蒸気16は1分間〜60分間接触させる。好ましい接触時間は5分間〜20分間である。1分間未満の接触では、金属不純物の硝酸塩化が不十分であり、60分間を越えてもその効果は変わらない。混合溶液14のHNO3とH2SO4の混合比は重量濃度比で、HNO3:H2SO4=1:10〜10:1である。好ましくは、HNO3:H2SO4=3:4〜4:3である。上記濃度範囲を満たさない混合溶液はHNO3蒸気による金属不純物の硝酸塩の形成が不十分となる不具合を生じる。
具体的には、68重量%のHNO3と98重量%のH2SO4をHNO3:H2SO4=3:4の割合で調製した混合溶液を用いた場合では、シリコン基板にHNO3蒸気を10分間〜20分間接触させることが好ましい。また、68重量%のHNO3と98重量%のH2SO4をHNO3:H2SO4=4:3の割合で調製した混合溶液を用いた場合では、シリコン基板にHNO3蒸気を5分間〜10分間接触させることが好ましい。
【0011】
この工程は、気相分解法(Vapor Phase Decomposition、以下、VPD法という。)により行われる。図1に示すように、反応容器10はシリコン基板13の金属不純物を硝酸塩にするHNO3とH2SO4の混合溶液14を収容する収容容器11と、この収容容器11を密閉する上蓋11aとを有する。この容器11と上蓋11aはそれぞれ縦100〜400mm、横100〜400mm、高さ100〜200mm、厚さ2mmのポリプロピレン、PTFE等のプラスチック製のボックスである。この収容容器11内には支持台12が配置される。支持台12はPTFEから作られ、スタンド部12aとテーブル12bを有する。スタンド部12aは収容容器11の底面に置かれ、混合溶液14の液面より上に突出しかつ容器11の深さの半分程度の高さを有する。テーブル12bはスタンド部12aの上部にこのスタンド部12aと一体的に形成され、上面にシリコン基板13が置かれる。テーブル12bの周縁の大部分にはフランジが突設される。収容容器11、上蓋11a及び支持台12はシリコン基板13を分解する前に十分に清浄にしておく必要がある。HNO3とH2SO4の混酸溶液14はテーブル12bより僅かに下方にその液面とするように収容容器11に貯えられる。
【0012】
図1に示すように、混合溶液14を収容容器11に貯え、テーブル12bの上面にシリコン基板13を水平におき、上蓋11aを被せて反応容器10を密閉状態にすると、混合溶液14中のH2SO4が混合溶液中のHNO3の水分を吸収するとともに、反応容器10内の密閉された空気中の水分を吸収し、密閉空間16の湿度を低くする。これにより混合溶液14を加熱しなくてもまた密閉された反応容器10を特別に加圧しなくても混合溶液14の気化が促進され、その気化した高濃度のHNO3蒸気17がテーブル12b上のシリコン基板13に接触する。シリコン基板13表面は比較的冷たいので、HNO3蒸気17を発生させることによってHNO3蒸気17が基板13表面に集まって液滴となり、基板13表面とその表面に存在する金属不純物との結合を破壊して、金属不純物の硝酸塩を形成する。図2に示すように、基板表面には硝酸塩となった金属不純物が存在することになる。
【0013】
次いで、図3及び図4に示すように、基板13表面に希薄な酸の液滴21を滴下させ、液滴21を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、金属不純物を溶解した液滴を回収する。硝酸塩となった金属不純物は、基板表面に希薄な酸を滴下し、この滴下液を基板表面全体に行き渡らせることで容易に回収することができる。
ここでの工程では上述したDE法を用いて基板表面に残留する金属不純物を回収する。DE法はシリコン基板表面の端部に回収液を数滴滴下し、この液滴を基板表面全体に行き渡らせて、相対向する端部に再び液滴の形態で集めることにより、基板表面を清浄化して金属不純物を回収する方法である。
【0014】
図3に示すように、金属不純物の硝酸塩が残留するシリコン基板13をプレート19に載置し、このシリコン基板13表面に希薄な酸の液滴21を滴下する。希薄な酸は、例えば1重量%〜5重量%のHFとH22の混合溶液が選択される。液滴21の滴下位置は、基板13表面全体に行き渡らせ易い基板の端部が好ましい。
続いて、滴下した液滴21をシリコン基板13表面全体に行き渡らせて液滴により金属不純物を溶解し、溶解後にこの液滴を回収する。基板表面全体に液滴を行き渡らせる方法としては、端部から表面横方向に移動して基板表面の金属不純物を溶解する方法(図4(a))、縦方向に液滴を移動する方法(図4(b))、端部より螺旋状に中心部に向けて液滴を移動させる方法(図4(c))があり、これらを単独に行うか、又は組み合わせることで基板表面全体に行き渡らせる。
【0015】
次に、回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する。定量分析にはAAS又はICP−MSを用いる。ICP−MSによる測定を行うことができるため、基板表面に存在する金属不純物を高い感度で分析することができる。このように簡便で早く基板表面の金属不純物を分析できるため、KOH洗浄後や研磨後等の半導体基板製造工程の検査工程に使用することが可能である。
また、有機物やパーティクルの存在しているシリコン基板表面からの金属不純物の回収においても従来法では回収液が動かない問題があったが、この方法を用いることによって硝酸により有機物やパーティクルを分解しかつ表面も酸化されるため、HFとH22の混合溶液で容易に回収が可能である。
【0016】
【実施例】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、有機物中にCuを混合し、この混合液を3枚の基板の表面へそれぞれ塗布して表面Cu濃度が2×109atoms/cm2となるようにシリコン基板表面を強制汚染させた(基板A−1〜基板A−3)。
次いで、図1に示すように、基板A−1〜基板A−3に対してVPD法により基板表面に存在する金属不純物に硝酸蒸気を接触させて金属不純物の硝酸塩を形成した。次に、図3及び図4に示すように、基板A−1〜基板A−3に対してDE法により酸の液滴で基板表面に存在する金属不純物を回収した。更に回収した液滴をAASにより定量分析して、基板表面のCu濃度を測定した。この定量分析を1回目分析とした。
続いて1回目分析を終えた基板A−1〜基板A−3に対して図5に示すように、DSE法により基板表面を混合液によりエッチングし、このエッチングした混合液を回収した。更に混合液をAASにより定量分析して、基板表面のCu濃度を測定した。この定量分析を2回目分析とした。表1及び図6に1回目分析、2回目分析でそれぞれ得られた基板表面のCu濃度を示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004078980
【0018】
表1及び図6より明らかなように、2回目の分析ではAASの検出限界である1.0×109atoms/cm2よりも低いCu濃度となったため、検出できなかった。これは1回目の分析において金属不純物の回収が十分になされたことを示すものであり、1回目分析、即ち本発明の分析方法を用いることにより、有機物やパーティクル等が付着していても簡便な方法で基板表面から金属不純物を回収でき、かつ正確な定量分析が得られることが判る。
【0019】
<実施例2>
先ず、有機物中にFeを混合し、この混合液を3枚の基板の表面へそれぞれ塗布して表面Fe濃度が2×109atoms/cm2となるようにシリコン基板表面を強制汚染させた(基板B−1〜基板B−3)。
これらの基板B−1〜基板B−3を実施例1と同様の方法を用いて1回目分析、2回目分析をそれぞれ行った。表2及び図7に1回目分析、2回目分析でそれぞれ得られた基板表面のFe濃度を示す。
【0020】
【表2】
Figure 0004078980
【0021】
表1及び図6より明らかなように、2回目の分析ではAASの検出限界である1.0×109atoms/cm2よりも低いFe濃度となったため、検出できなかった。これは1回目の分析において金属不純物の回収が十分になされたことを示すものであり、1回目分析、即ち本発明の分析方法を用いることにより、有機物やパーティクル等が付着していても簡便な方法で基板表面から金属不純物を回収でき、かつ正確な定量分析が得られることが判る。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、上記工程をそれぞれ経ることにより、基板表面に不純物やパーティクル等が付着している基板についても金属不純物を容易に回収、定量分析できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるシリコン基板表面に存在する金属不純物を硝酸塩にしている状況を示す気相分解装置の断面構成図。
【図2】金属不純物の硝酸塩が残留するシリコン基板の断面図。
【図3】シリコン基板表面に希薄な酸の液滴を滴下させた図。
【図4】(a) シリコン基板端部から相対向する端部へと表面横方向に液滴を移動させた状態を示す図。
(b) シリコン基板端部から相対向する端部へと表面縦方向に液滴を移動させた状態を示す図。
(c) シリコン基板端部から中心部へと螺旋状に液滴を移動させた状態を示す図。
【図5】DSE法を用いたシリコン基板表面からの金属不純物の回収を示す工程図。
【図6】実施例1の基板表面のCu汚染濃度を示す図。
【図7】実施例2の基板表面のFe汚染濃度を示す図。
【符号の説明】
10 反応容器
12 支持台
13 シリコン基板
14 硝酸と硫酸の混合溶液
17 硝酸蒸気
21 希薄な酸の液滴

Claims (2)

  1. 支持台(12)に置かれたシリコン基板(13)と、前記基板(13)に接触しないようにして硝酸と硫酸の混合比が重量濃度比で、硝酸:硫酸=1:10〜10:1である混合溶液(14)とを密閉された反応容器(10)内にそれぞれ収容し、前記反応容器(10)を加熱及び加圧することなく前記混合溶液(14)より硝酸蒸気(17)を発生させ、前記基板(13)表面と硝酸蒸気(17)を1分間〜60分間接触させる工程と、
    前記基板(13)表面にフッ化水素酸と過酸化水素の混合溶液である希薄な酸の液滴(21)を滴下させ、前記液滴(21)を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、前記金属不純物を溶解した液滴を回収する工程と、
    前記回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する工程と
    を含むシリコン基板表面の金属不純物分析方法。
  2. 定量分析を原子吸光分析又は誘導結合プラズマ質量分析により行う請求項1記載の方法。
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