JP4232457B2 - シリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物分析方法 - Google Patents

シリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物を高感度に分析する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高濃度ドープのシリコン基板(例えばP++シリコン基板)上に低濃度のエピタキシャル層を形成することで高性能デバイスの製造が可能となる。P++シリコン基板上にシリコン単結晶をエピタキシャル成長する際や各種熱処理過程において、基板中のドーパントがオートドーピングや固相外方拡散してエピタキシャル層中に取り込まれることがある。これらの現象により、エピタキシャル層の抵抗率は不本意に変化してしまうので、デバイス特性に悪影響を及ぼす。エピタキシャル層を形成する面とは反対の裏面側よりドーパントがエピタキシャル層に移動して汚染するのを抑制するため、基板表面にエピタキシャル層を形成する前に、基板裏面にCVD法によって厚さ3000Å〜5000Åの表面酸化膜を形成することで裏面側からの汚染を防止している。
【0003】
一方、シリコン基板の表面に存在する不純物は、デバイス特性を劣化させ、デバイスの製造歩留りに大きな影響を与える。このうち金属不純物は、デバイス工程中の例えば酸化、拡散、エピタキシャル成長などの各種熱処理過程において、シリコン基板の内部へ容易に拡散して、析出物、転位、酸素誘起積層欠陥などの結晶欠陥を誘起したり、少数キャリアのライフタイムの低下、リーク電流の増大、酸化膜の絶縁破壊電圧の劣化などを引き起こすおそれがある。
【0004】
これら上記諸問題を解決する方策として、高濃度のフッ化水素酸(以下、HFという。)を直接基板表面に用いて表面酸化膜を回収し、回収液中に含まれる金属不純物を分析する方法や、シリコン基板表面に存在する金属不純物を定量分析する前に基板表面にHF蒸気を1〜10分間接触させるシリコン基板表面の金属不純物分析方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、HF蒸気に接触させることで、基板表面に形成されている自然酸化膜が溶解除去されるとともに、基板表面に存在する金属不純物の付着形態が統一化される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−153768号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示された方法を厚さ3000Å〜5000Åの表面酸化膜中に含まれる金属不純物の分析方法に適用する場合では、検出感度の低い原子吸光のような装置には使用できるが、HF蒸気に接触させて得られた測定試料中にはシリコン成分が混入しているため、シリコン成分が検出感度を低減するため検出感度の高い誘導結合プラズマ質量分析(以下、ICP−MSという。)には適用することができなかった。また、高濃度のシリコン成分が測定試料中に存在すると、装置内のコーンやネブライザーにシリコン成分が付着して詰まりを引き起こすおそれがあるため、ICP−MSのような高感度分析装置への適用は困難であった。
【0007】
本発明の目的は、簡便な方法で表面酸化膜中に含まれる金属不純物を回収し、かつ高い感度で検出し得る、シリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物分析方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、膜厚が3000Å〜5000Åの低温酸化膜(以下、LTOという。)又は熱酸化膜からなる表面酸化膜を有するシリコン基板の表面に存在するこの表面酸化膜中の金属不純物を分析する方法であって、シリコン基板表面に形成された金属不純物を含む表面酸化膜にHF蒸気を接触させる工程と、基板を加熱して基板表面に存在する金属不純物及びシリコン成分をそれぞれ含む水滴から水分及びシリコン成分を気化させる工程と、基板表面に希薄な酸の液滴を滴下させ、液滴を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、金属不純物を溶解した液滴を回収する工程と、回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する工程とを含むシリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物分析方法である。
請求項1に係る発明では、上記工程を経ることにより、簡便な方法で表面酸化膜中に含まれる金属不純物を回収し、測定試料内のシリコン成分を減少できるため、金属不純物を高い感度で検出することができる。
【0009】
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明であって、表面酸化膜に対してHF蒸気を30秒〜60分間接触させる方法である。
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明であって、希薄な酸がHFと過酸化水素(以下、H22という。)の混合溶液である方法である。
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明であって、定量分析をICP−MSにより行う方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明のシリコン基板は表面に金属不純物が含まれる酸化膜を有する。この表面酸化膜としては、LTOや熱酸化膜が挙げられる。この表面酸化膜の膜厚は3000Å〜5000Åである。
【0011】
先ず、シリコン基板表面に形成された金属不純物を含む表面酸化膜にHF溶液から発生する蒸気を接触させる。HF蒸気を接触させることで表面酸化膜が溶解される。HF溶液は40重量%以上の濃度に調製される。上記濃度範囲を満たさないHF溶液は表面酸化膜のエッチングが不十分となる不具合を生じる。
図1に示すように、HFに耐え得るケース10を用意し、このケース10内にポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン、以下、PTFEという。)製のステージ12を設置する。このステージ12上に表面酸化膜13aを有するシリコン基板13をこの酸化膜13aを上側にして載せる。HF溶液14aを貯えたビーカー14をケース10内に設置し、ケース10に上蓋11をして密閉空間を形成する。HF溶液14aから発生する蒸気14bをケース10内に充満させる。表面酸化膜13aと蒸気14bとを接触させて基板表面の表面酸化膜13aをエッチングする。表面酸化膜13aとHF蒸気14bとの接触は表面酸化膜の厚さによるが、30秒〜60分間程度である。
【0012】
この実施の形態ではケース内にHF蒸気14bを発生させて表面酸化膜13aを処理する例を示したが、図2に示すように、保持具16でシリコン基板13をHF溶液14aの入ったビーカー14上に間隔をあけて表面酸化膜13aをビーカー側に向けて保持し、表面酸化膜13aをHF蒸気14bに晒すことにより、基板表面の表面酸化膜13aを処理してもよい。
【0013】
HF蒸気14bを表面酸化膜13aに接触させると下記式(1)の反応が起こり、表面酸化膜が溶解除去される。
【0014】
SiO2 + 6HF↑ → H2SiF6 + 2H2O ……(1)
式(1)の反応で得られるH2SiF6は自然酸化膜等の膜厚が薄い膜の場合は、次の式(2)に示すように、SiF4とHFとに分解して気化する。
【0015】
2SiF6 → SiF4↑ + 2HF↑ ……(2)
しかし本発明の膜厚の厚いLTOや熱酸化膜では、上記式(1)の反応で得られるH2Oの存在が無視できない量となるため、図3に示すように、H2SiF6は水滴中に保持されて、基板表面上にシリコン成分が残留してしまうことになる。
このことから表面酸化膜の膜厚を自然酸化膜からLTOへと膜厚を厚くすればするほど、HF蒸気による分解で発生する水分量が多くなるため、その分だけ基板表面に残留するシリコン成分は増加することになる。
【0016】
この状態でシリコン基板表面に存在する水滴から金属不純物をDE法(one Drop Etching Method)などで回収し、回収液をICP−MSにより定量分析を施した場合、回収液中には多くのシリコン成分が含まれることになる。シリコン成分はICP−MSの検出元素として使用されるNiやCu、Znの質量数に近似した数値をとるため、ICP−MSの検出下限や分析精度が悪くなる問題が生じる。基板表面の表面酸化膜の膜厚を変化させたときのICP−MSの測定結果の一例を図8に示す。図8に示すように、シリコン成分が増加することで検出濃度が高くなってしまうことが判る。また、シリコン成分はICP−MS装置のコーンやネブライザーに付着して詰まりを引き起こす要因があるため、従来の方法では定量分析にICP−MSを用いることができなかった。
【0017】
そこで次の工程では、基板を加熱して基板表面に存在する金属不純物及びシリコン成分をそれぞれ含む水滴17から水分及びシリコン成分を気化させる。基板13を加熱することで、水滴17中の水分を蒸発させるとともに、シリコン成分であるH2SiF6を分解気化させる。この加熱工程により、水滴に含まれていたシリコン成分の大部分が分解気化するため、基板表面には金属不純物がパーティクルの状態で残留する。
【0018】
基板の加熱には、図4に示すように、基板13を清浄なウェーハ18を介してホットプレート19に載置して加熱することにより、シリコン成分と水分を除去してもよいし、図5に示すように、プレート21上に基板を載置して、基板の水滴が存在する面に対して赤外線ランプ22を照射して、シリコン成分と水分を除去してもよい。
【0019】
次に加熱処理を施したシリコン基板表面に希薄な酸の液滴を滴下させ、液滴を表面全体に行き渡らせて表面に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、金属不純物を溶解した液滴を回収する。ここでの工程ではDE法を用いて基板表面に残留する金属不純物を回収する。DE法はシリコン基板表面の端部に回収液を数滴滴下し、この液滴を基板表面全体に行き渡らせて、相対向する端部に再び液滴の形態で集めることにより、基板表面を清浄化して金属不純物を回収する方法である。
図6に示すように、表面を蒸気に接触させたシリコン基板13をプレート23に載置し、このシリコン基板13表面に希薄な酸の液滴24を滴下する。希薄な酸は、例えば1重量%〜5重量%のHFとH22の混合溶液が選択される。液滴24の滴下位置は、基板13表面全体に行き渡らせ易い基板の端部が好ましい。続いて、滴下した液滴24をシリコン基板13表面全体に行き渡らせて液滴により金属不純物を溶解し、溶解後にこの液滴を回収する。基板表面全体に液滴を行き渡らせる方法としては、端部から表面横方向に移動して基板表面の金属不純物を溶解する方法(図7(a))、縦方向に液滴を移動する方法(図7(b))、端部より螺旋状に中心部に向けて液滴を移動させる方法(図7(c))があり、これらを単独に行うか、又は組み合わせることで基板表面全体に行き渡らせる。
【0020】
回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する。定量分析にはICP−MSを用いる。ICP−MSによる測定を行うことができるため、表面酸化膜中に含まれる金属不純物を高い感度で分析することができる。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、酸化膜厚が10Åのシリコン基板を用意した。次いで、図2に示すように、この基板を保持具16で40重量%HF溶液14aの入ったビーカー14上に間隔をあけて表面酸化膜13aをビーカー側に向けて保持し、表面酸化膜13aをHF蒸気14bに晒すことにより、基板表面の表面酸化膜13aを分解させた。次に、図5に示すように、プレート21上に基板を載置して、基板の水滴が存在する面に対して赤外線ランプ22を照射して、シリコン成分と水分を除去した。次に、希薄な酸として2重量%のHFとH22の混合溶液を用意し、図6及び図7にそれぞれ示すように、基板表面に上記溶液の液滴を滴下し、液滴を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、金属不純物を溶解した液滴を回収した。この回収液を測定試料とした。
同様に酸化膜厚が100Å、500Å、1000Å及び5000Åのシリコン基板をそれぞれ用意し、上記工程と同様にして測定試料を得た。
【0022】
<比較例1>
実施例1と同様の基板をそれぞれ用意し、これらの基板に38重量%のHFと2重量%のH22の混合溶液を基板表面の酸化膜に直接滴下し、液滴を表面全体に行きわたらせて表面全体の酸化膜を溶解し、基板表面に残ったHFの液滴を回収した。この回収液を測定試料とした。
<比較例2>
赤外線ランプによる基板表面の加熱を施さない以外は実施例1と同様にして測定試料を得た。
【0023】
<比較試験及び評価>
実施例1及び比較例1,2でそれぞれ得られた測定試料をICP−MS分析装置により測定した。58Niと60Niを検出元素に用いた場合の測定結果を図9に、63Cuと65Cuを検出元素に用いた場合の測定結果を図10に、64Znと68Znを検出元素に用いた場合の測定結果を図11にそれぞれ示す。なお、図10及び図11中の「D.L.」はICP−MS分析装置の検出限界を示す。
【0024】
図9〜図11より明らかなように、比較例1及び2の測定試料を測定した結果では、膜厚が厚くなるにつれてシリコン成分の影響からブランク値が高くなる結果が得られた。これに対して実施例1の測定試料を測定した結果では、どの膜厚においてもICP−MSの検出限界以下となり、比較例1及び2ではシリコン成分の影響からブランク値が高くなるが、実施例1ではシリコン成分の影響を受けず、ICP−MSで検出できない程度のレベルにブランク値は低減されることが判る。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の金属不純物分析方法は、上記工程を経ることにより、簡便な方法で表面酸化膜中に含まれる金属不純物を回収し、測定試料内のシリコン成分を減少できるため、金属不純物を高い感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態を示すシリコン基板表面の表面酸化膜にHF蒸気を接触させた状態を示す図。
【図2】本実施の別の形態を示すシリコン基板表面の表面酸化膜にHF蒸気を接触させた状態を示す図。
【図3】金属不純物及びシリコン成分をそれぞれ含む水滴が表面に存在したシリコン基板の断面図。
【図4】シリコン基板表面の水滴をホットプレートを用いて加熱する状態を示す図。
【図5】シリコン基板表面の水滴を赤外線ランプを用いて加熱する状態を示す図。
【図6】シリコン基板表面に希薄な酸の液滴を滴下させた図。
【図7】(a) シリコン基板端部から相対向する端部へと表面横方向に液滴を移動させた状態を示す図。
(b) シリコン基板端部から相対向する端部へと表面縦方向に液滴を移動させた状態を示す図。
(c) シリコン基板端部から中心部へと螺旋状に液滴を移動させた状態を示す図。
【図8】ICP−MSに異なる検出元素を用いた場合の試料中に含まれるシリコン成分濃度と検出された濃度との関係を示す図。
【図9】ICP−MSの検出元素に58Niと60Niを用いた場合の、実施例1及び比較例1、2における異なる酸化膜厚での検出濃度の違いを示す図。
【図10】ICP−MSの検出元素に63Cuと65Cuを用いた場合の、実施例1及び比較例1、2における異なる酸化膜厚での検出濃度の違いを示す図。
【図11】ICP−MSの検出元素に64Znと68Znを用いた場合の、実施例1及び比較例1、2における異なる酸化膜厚での検出濃度の違いを示す図。
【符号の説明】
13 シリコン基板
13a 表面酸化膜
14b フッ化水素酸蒸気
17 金属不純物及びシリコン成分をそれぞれ含む水滴
24 希薄な酸の液滴

Claims (4)

  1. 膜厚が3000Å〜5000Åの低温酸化膜又は熱酸化膜からなる表面酸化膜を有するシリコン基板の表面に存在する前記表面酸化膜中の金属不純物を分析する方法であって、
    前記シリコン基板(13)表面に形成された金属不純物を含む前記表面酸化膜(13a)にフッ化水素酸蒸気(14b)を接触させる工程と、
    前記基板(13)を加熱して前記基板(13)表面に存在する金属不純物及びシリコン成分をそれぞれ含む水滴(17)から水分及び前記シリコン成分を気化させる工程と、
    前記基板(13)表面に希薄な酸の液滴(24)を滴下させ、前記液滴(24)を表面全体に行きわたらせて表面全体に残留する金属不純物を液滴内に溶解させ、前記金属不純物を溶解した液滴を回収する工程と、
    前記回収した液滴に含まれる金属不純物を定量分析する工程と
    を含むシリコン基板表面に存在する表面酸化膜中の金属不純物分析方法。
  2. 表面酸化膜(13a)に対してフッ化水素酸蒸気(14b)を30秒〜60分間接触させる請求項1記載の方法。
  3. 希薄な酸がフッ化水素酸と過酸化水素の混合溶液である請求項1記載の方法。
  4. 定量分析を誘導結合プラズマ質量分析により行う請求項1記載の方法。
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