JP5459053B2 - シリコン単結晶の不純物評価方法 - Google Patents

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本発明は、シリコン単結晶を全溶解して不純物濃度を評価する方法に関する。
従来、半導体シリコンの結晶中に含有する、極微量の金属不純物の検出および評価の手法として、フッ化水素酸および硝酸の混合液からなる混酸を用いて、試料となるSiを溶解し、対象となる金属不純物を抽出し、濃縮して計測する全溶解法が知られている。この全溶解法については、混酸液にシリコン試料を投入して溶解する液相法と、混酸をガス化して供給し、シリコン試料を分解する気相法がある(特許文献1−3参照)。
液相法、気相法ともに、上記試料溶解後、不純物を抽出/濃縮した後に、高感度な分析装置であるICP−MS(結合誘導プラズマ質量分析計)により、不純物を計測することが一般的である。
また、対象となる半導体シリコンの結晶中に含有される金属不純物は非常に微量で、近年では管理不純物レベルが5×10atoms/cm以下であることが要求される。このような、5×10atoms/cmの濃度の不純物を検出するためには、3g程度のSiの全溶解が必要となるが、液相法、気相法ともに問題点がある。
液相法では、3gのシリコンの溶解には、50mlを越える混酸が必要であり、これを濃縮/抽出すると、市販される超高純度とされる酸試薬を用いても、試薬中に含有される金属不純物量が、シリコン中に含まれる微量不純物量を超えてしまうことが問題となる。一方、気相法では、反応に時間がかかることが問題で、10時間を越えて反応させることもある。反応時間の短縮のため、密閉容器内で加熱し、加圧分解を行う方法もあるが、この場合、分解容器の容量にもよるが、1gを越えるシリコンの分解は難しい。
特開2000−35424号公報 特開2004−212261号公報 特開2008−130696号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、不純物の混入を防止しながらシリコン試料を短時間で溶解することができ、これによりシリコン単結晶中の不純物の検出下限を低くすることができるシリコン単結晶の不純物評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、サンプルカップ内のシリコン試料を気相全溶解して揮散させ、前記サンプルカップ内に残存した残存物を回収し、該回収した残存物から前記シリコン試料中の不純物を評価するシリコン単結晶の不純物評価方法であって、少なくとも、前記シリコン試料の気相全溶解を、個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸を発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱し、該加熱されたフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気により前記シリコン試料を気相全溶解することを特徴とするシリコン単結晶の不純物評価方法を提供する。
このように、フッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気によりシリコン試料を気相全溶解することで、シリコンの分解が効率的に進行して、比較的短時間で全溶解することができる。また、発煙硝酸を用い、さらにはフッ化水素酸と別個の容器とすることで、比較的低い温度でも硝酸蒸気を効率的に供給できる。また、発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱することで、発煙硝酸が沸騰することが無いため、不純物のほとんどない高純度の酸蒸気でシリコン試料を溶解することができる。このように、比較的低温加熱で全溶解できるため、サンプルカップからの不純物の溶出もほとんどない。
以上より、本発明によれば、簡易な方法で、従来より多くのシリコン試料を高純度の酸蒸気で効率的に溶解することができ、低い検出下限値で高感度の不純物評価を行うことができる。
このとき、前記シリコン試料の気相全溶解を、前記個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸、及び前記サンプルカップ内のシリコン試料を同じ反応槽内に載置し、前記発煙硝酸の温度が80℃以上で、かつ、沸点より低い温度になるように、ホットプレート上で加熱し、該加熱されたフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気により前記シリコン試料を気相全溶解することが好ましい。
このように、個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸、及び前記サンプルカップ内のシリコン試料を同じ反応槽内に載置し、発煙硝酸の温度が80℃以上で、かつ、沸点より低い温度になるように設定したホットプレート上で加熱することで、発生した酸蒸気のシリコン試料への供給が効率的に行われ、当該酸蒸気の供給状態の所定時間の保持も容易であるため、簡易な方法でシリコン試料を全溶解することができる。
このとき、前記1つのサンプルカップ内に3g以上の前記シリコン試料を入れて、複数の前記サンプルカップ内の前記シリコン試料を同時に気相全溶解することが好ましい。
このように、1つのサンプルカップ内に3g以上のシリコン試料を入れて、複数のサンプルカップ内のシリコン試料を同時に気相全溶解することで、多くのシリコン試料を効率的に全溶解することができ、検出下限値がより下がって、さらに高感度な不純物評価を行うことができる。
以上のように、本発明によれば、簡易な方法で、従来より多くのシリコン試料を高純度の酸蒸気で効率的に溶解することができるため、低い検出下限値で高感度の不純物評価を行うことができる。
シリコン試料を気相全溶解する際の説明図である。
従来の全溶解法において、液相法では、5gのシリコン試料を全溶解する場合、超高純度試薬が混合された混酸では、100ml程度の試薬が必要となる。市販される超高純度試薬の保証純度は各金属10pptw以下であり、この混酸にシリコン試料を投入して得られた溶解液を蒸発乾固して1mlの回収試薬で抽出すると、混酸が含有している金属不純物は、最大1ppbwにまで濃縮される。この不純物量は、5gのシリコン単結晶中に含有されている微量不純物量を越える。そのため、液相法によりシリコン試料を溶解して不純物を抽出する場合、更に高純度な酸試薬を精製取得することが必要となるためコストが高くなる。
また、気相法の分解では、反応ガス中の金属不純物が少ないため、薬液要因の不純物の外乱が抑えられるが、分解反応に時間がかかることや、反応を促進させるために、耐圧密閉容器などを使用する必要がある等の問題があり、一検体の重量が1g以下になり、十分な汚染回収が難しい。仮に、硫酸を用いた場合には、分解後の残存物から硫酸成分を蒸発させて除去する際に200℃以上まで加熱する必要があり、この高温加熱により、清浄なサンプルカップ内で蒸発乾固を行ってもカップからの不純物が溶出してしまうことが懸念される。
このような課題に対して、本発明者が鋭意検討した結果、シリコン試料の気相全溶解において、酸試薬を非沸騰蒸留状態にすることで、高純度な酸蒸気を発生させることができ、シリコン試料の不純物の検出下限を低くすることができることを見出した。そして、この酸試薬としてフッ化水素酸と発煙硝酸を用いて、これらを別個の容器に入れることで、発煙硝酸の沸点より低い温度で、非沸騰蒸留状態を維持しながら、酸蒸気を十分に発生させることができるため、シリコンを効率的に溶解することができることを見出して、本発明を完成させた。
この際、発煙硝酸の沸点(98.5℃)より低い温度で気相全溶解でき、さらに、硫酸を用いないため200℃以上で加熱する必要もなく、サンプルカップからの不純物溶出もほとんどない。
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、シリコン試料を気相全溶解する方法を説明するための説明図である。
シリコン単結晶の不純物評価を実施するために、まず、評価対象のシリコン単結晶から所望の大きさ、重さに切り出されたシリコン試料を気相全溶解して揮散させる。本発明では、個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸を発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱し、該加熱されたフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気によりシリコン試料を気相全溶解する。
フッ化水素酸の蒸気(HF↑)及び発煙硝酸の蒸気(HNO↑)とシリコンとの主反応は、以下のように進行する。
Si+4HNO↑ → SiO+4NO↑+2HO+2O↑ …(1)
SiO+4HF↑ → SiF+2HO …(2)
SiF↑+2HF↑ → HSiF …(3)
上記一連の反応(1)〜(3)により、シリコンが分解され揮散し、気相全溶解が可能となる。このように、気相全溶解にフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気を用いることで、シリコンの分解反応が効率的に進行する。また、一般的に用いられる60〜68wt%(質量%)の硝酸は沸点が120℃強で、一方発煙硝酸は沸点が100℃未満(98.5℃)であり、発煙硝酸を用いることで、100℃未満で加熱しても十分な蒸気を供給することができる。このとき、発煙硝酸の温度が80℃以上で、かつ、沸点より低い温度であれば、効率よくシリコンを全溶解することができる。このため、比較的低温で全溶解を実施できるため、サンプルカップ等からの不純物の溶出も生じにくい。また、発煙硝酸をフッ化水素酸と混合すると、混酸中のHNO濃度が下がり、沸点も100℃を超えてしまうため、混合せずに個別に加熱することで、比較的低温で、硝酸の蒸気の供給を効率的に行い、酸蒸気中の硝酸濃度を上げることができる。
上記一連の反応(1)〜(3)により、Si1molに対し、HF及びHNOはそれぞれ4mol必要となる。例えば、50wt%HF100ml、発煙硝酸100ml中の成分は、3mol、2.37molであるため、等量投入では発煙硝酸でも不足する場合がある。このため、蒸気中の硝酸濃度をHFより多くするために、本発明のように、別個の容器にいれて加熱することで、反応系内の硝酸の蒸気濃度を上げて、効率的にシリコンの分解を行うことができる。
また、発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱することで、発煙硝酸が沸騰することもなく、高純度の蒸気とすることができ、シリコン単結晶の不純物評価の検出下限をより低くできる。
本発明において、シリコン試料を気相全溶解する方法としては、特に限定されず、例えば、図1(b)に示すように、個別の容器に入ったフッ化水素酸12と発煙硝酸14、及びサンプルカップ11内のシリコン試料10を同じ反応槽16内に載置し、発煙硝酸14の温度が80℃以上で、かつ、沸点より低い温度になるようにホットプレート15上で加熱することにより、個別の容器に入ったフッ化水素酸12と発煙硝酸14を発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱し、該加熱されたフッ化水素酸12と発煙硝酸14の蒸気によりシリコン試料10を気相全溶解することが好ましい。
このように、同じ反応槽内で加熱することで、各酸の蒸気が反応槽内に充満し、酸蒸気をシリコン試料へ効率的に供給することができ、分解反応をスムーズに進行させることができる。当該酸蒸気の供給状態を保持するのも容易である。また、本発明であれば加圧等は不要であるため、この反応槽は気密保持しなくてもよく、板状の蓋を反応槽の開口部に載せる程度でも十分である。このため、本発明の方法を実施するために、特別な装置は不要で、低いコストで実施できる。具体的には、ホットプレートが105℃以下であれば、反応槽内のフッ化水素酸、発煙硝酸は、発煙硝酸の沸点(98.5℃)より低くなるように加熱されるため、確実に本発明を実施することができる。
また、図1(b)に示すように、1つのサンプルカップ11内に3g以上のシリコン試料10を入れて、複数のサンプルカップ11内のシリコン試料10を同時に気相全溶解することができる。
このように、本発明の方法であれば、例えばシリコン試料5gでも8時間程度の比較的短い時間で全溶解することができ、図1(b)のように、10gのシリコン試料を5gずつ2つのサンプルカップに分けて入れて溶解すれば、一度で効率的に溶解することができる。また、反応槽をより大きなものを用いれば、1つのサンプルカップ内に入れるシリコン試料を5gより大きく、例えば10gとすることができ、より一層高感度な不純物分析が可能となる。
本発明において、反応槽、サンプルカップ、又は、フッ化水素酸、発煙硝酸を入れる容器としては、特に限定されず、耐熱性や耐薬品性を有する材質のものであればよく、例えば、PFA等のフッ素樹脂を用いることが好ましい。
なお、上記では同一反応槽内での溶解について説明したが、例えば、反応槽内で酸蒸気を発生させて、サンプルカップが置かれた別の反応槽内へ当該酸蒸気を供給することもできる。
以上のようなシリコンの気相全溶解後に、サンプルカップ内には、反応生成物の水やケイ素化合物(フルオロケイ酸及びその塩、メタケイ酸等)、酸蒸気の凝集したものが残存物として残存する。
この残存物をサンプルカップから回収する方法としては、例えば、サンプルカップのままで120℃、2時間の加熱処理をして蒸発乾固させた後、1wt%の硝酸1mlでサンプルカップ内の残存物(不純物)を回収することができる。そして、回収した残存物をICP−MSで不純物濃度を測定して、測定値を基に、元のシリコン単結晶中の原子濃度を算出し、不純物評価することができる。
以上のような、本発明によれば、高純度の蒸気により、1検体につき3g以上のシリコン試料を全溶解して不純物評価を行うことができるため、検出下限値を低くすることができ、高感度、高精度の不純物評価を行うことができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1、比較例1)
実施例1、比較例1ともに、シリコン試料は、同じp−型シリコン単結晶から切り出したものとした。
実施例1として、フッ化水素酸(50wt%)を200ml及び発煙硝酸(≧98wt%)を200mlそれぞれ個別のビーカーに入れて、シリコン試料がそれぞれ5g入ったサンプルカップ二つ(合計10g)と同じ反応槽内に載置し、105℃に設定されたホットプレート上で加熱してフッ化水素酸及び発煙硝酸の温度を80℃に保持し、気相全溶解した。反応槽はPFA製の容量約8リットルのタンク様のものとし、反応槽の蓋は平板状のものを載せたのみで、密閉しなかった。
比較例1として、実施例1と同条件で、ただし、フッ化水素酸(50wt%)を200ml及び発煙硝酸(≧98wt%)を200mlそれぞれ個別のビーカーに入れる代わりに、50wt%のフッ化水素酸と60wt%の硝酸を各200ml混合してビーカーに入れ、気相全溶解した。
以下、表1に実施例1と比較例1の条件及び結果を示す。
Figure 0005459053
表1に示すように、実施例1において、シリコン試料が全溶解するのに要した時間は8時間で、比較例1においては、シリコン試料が全溶解するのに24時間要した。
このように、本発明であれば、フッ化水素酸と硝酸を混合した比較例1に比べて同量のシリコン試料を三分の一の時間で気相全溶解することができた。
(実施例2−5、比較例2)
実施例1と同様に、ただし、フッ化水素酸及び発煙硝酸の保持温度をそれぞれ変更してシリコン試料が全溶解するまで保持した。
以下、表2に実施例2−5と比較例2の条件及び結果を示す。
Figure 0005459053
表2に示すように、実施例2の保持温度70℃では、十分な酸蒸気が発生せず、試料の溶解が不十分であったが、硝酸とフッ化水素酸を混合して同一温度(70℃)で保持した場合に比べれば溶解速度は速かった。実施例3−5の保持温度80℃以上では、十分な酸蒸気が発生し、短い時間で全溶解できた。また、比較例2の保持温度98.5℃(発煙硝酸の沸点)では、試料は7時間と短い時間で全溶解できたが、発煙硝酸が沸騰して不純物が試料に混入してしまい、不純物の検出下限が高かった。
(参考例)
実施例1と同様に、ただし、シリコン試料を入れずにサンプルカップのみで、さらに、フッ化水素酸及び発煙硝酸の保持温度をそれぞれ変更して8時間保持した。この際、発煙硝酸は、Feが10〜15ppb程度含まれるものを用いた。
次に、8時間保持後のサンプルカップに硝酸(1wt%)を1ml注入して、内面を走査し回収したもののFe濃度をICP−MSで測定した。
以下、表3に参考例の条件及び結果を示す。
Figure 0005459053
表3に示すように、保持温度80〜98℃では、サンプルカップ内からFeが検出されないか、極微量の検出量であった。一方、保持温度98.5℃では、サンプルカップ内からFeが約1ppbと多量に検出された。これは、発煙硝酸が沸騰してしまい、発煙硝酸に含まれていたFeがサンプルカップに付着したためと考えられる。このため、保持温度が98℃以下と発煙硝酸の沸点より低い温度であれば、発煙硝酸は非沸騰蒸留状態が良好に維持され、高純度の酸蒸気が生じて試料の検出下限を低くできることが分かる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
10…シリコン試料、 11…サンプルカップ、 12…フッ化水素酸、
13…硝酸とフッ化水素酸の混酸が入ったビーカー、 14…発煙硝酸、
15…ホットプレート、 16…反応槽。

Claims (3)

  1. サンプルカップ内のシリコン試料を気相全溶解して揮散させ、前記サンプルカップ内に残存した残存物を回収し、該回収した残存物から前記シリコン試料中の不純物を評価するシリコン単結晶の不純物評価方法であって、少なくとも、
    前記シリコン試料の気相全溶解を、個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸を発煙硝酸の沸点より低い温度まで加熱し、該加熱されたフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気により前記シリコン試料を気相全溶解することを特徴とするシリコン単結晶の不純物評価方法。
  2. 前記シリコン試料の気相全溶解を、前記個別の容器に入ったフッ化水素酸と発煙硝酸、及び前記サンプルカップ内のシリコン試料を同じ反応槽内に載置し、前記発煙硝酸の温度が80℃以上で、かつ、沸点より低い温度になるように、ホットプレート上で加熱し、該加熱されたフッ化水素酸と発煙硝酸の蒸気により前記シリコン試料を気相全溶解することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の不純物評価方法。
  3. 前記1つのサンプルカップ内に3g以上の前記シリコン試料を入れて、複数の前記サンプルカップ内の前記シリコン試料を同時に気相全溶解することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコン単結晶の不純物評価方法。
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