JP4078583B2 - 触媒層転写用ロールプレス装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒層転写用ロールプレス装置に関する。更に詳しくは、固体高分子電解質膜型燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜に触媒層を転写するロールプレス装置である。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質膜型燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜と触媒層とを接合して触媒層−電解質膜接合体を形成する手法として、特開2000−90944号公報に記載されているように、「インク状あるいはペースト状の触媒混合物を沈降法・印刷法・スプレー法などの方法で触媒層形成基体上に塗布して、均一な触媒層を形成した後、これと電解質膜とを加熱圧接することで、触媒層と電解質膜とを一体に接合する転写法が考案されている」(特開2000−90944号公報、(2)頁)。この場合ホットプレス(熱間プレス)あるいはホットロール(加熱加圧ロール)を用いて固体高分子電解質膜と予め触媒層担持基材の上に形成した触媒層と加熱加圧して一体的に接合することが行われる。
【0003】
例えば特開平10−64574号公報には、ホットプレス(熱間プレス)を用いる手法及びホットロール(加熱加圧ロール)を用いる手法がいずれも開示されている。この公報に開示されているホットロールを用いる手法は、図1に示すように、長尺の固体高分子電解質膜81とその両側に配された触媒層82、83を担持した長尺の触媒層担持基材としてのフィルム84、85とを一緒に一対の加熱加圧ロール86で挟んで加熱加圧することによって、固体高分子電解質膜81と触媒層82、83とを一体的に接合して、その後触媒層82、83を担持しているフィルム84、85を一対の剥離ロール87を用いて触媒層82、83から剥離するという手法である。この公報にはホットプレスを用いて固体高分子電解質膜に触媒層担持基材上に形成された触媒層を転写する手法も開示されているが、ホットロールを用いて転写する手法の方が固体高分子電解質膜への触媒層の転写が連続的に行えるので、ホットプレスを用いて転写する手法よりも生産的であると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ただこのように触媒層を固体高分子電解質膜に転写する場合において、触媒層担持基材上に形成された触媒層を全て固体高分子電解質膜に転写して接合するのではなく、触媒層担持基材状に形成された触媒層の所定の部分を固体高分子電解質膜に転写したい場合がある。
【0005】
これは、図2に示すように、固体高分子電解質膜Aの表面の全て触媒層Bで覆うのではなく、固体高分子電解質膜Aの縁端部を残して触媒層Bで覆った触媒層−電解質膜接合体C、言い換えれば固体高分子電解質膜Aの方が触媒層Bよりも面積が広く、固体高分子電解質膜Aが触媒層Bからはみ出した触媒層−電解質膜接合体Cを作製するためである。
【0006】
このように触媒層Bを固体高分子電解質膜Aよりも表面積を小さくすることによって、触媒層Bによって覆われていない縁端部にはフッ素樹脂例えばポリテトラフルオロエチレン等から成るスペーサそしてスペーサの上には電気的絶縁体としてシリコンゴム等を積層して燃料ガス及び酸素ガス等が漏れないように触媒層からシールすることができる。その結果触媒層−電解質膜接合体を両側から挟むように配置されているアノード側セパレータとカソード側セパレータとの間で電気的な短絡が生じないようにすることができる。
【0007】
このように固体高分子電解質膜に所定の形状の触媒層を転写する場合に用いる加熱加圧ロールについて、本出願人は特開2001−196070号公報に開示している。この加熱加圧ロール88は、図3に示すように、加熱加圧ロール88の外周面に所定の形状を有する凸状の転写部88aを彫刻したロールである。このような凸状の転写部88aを彫刻した加熱加圧ロール88を用いて触媒層を担持したフィルムと固体高分子電解質膜とを加熱加圧すると、触媒層と固体高分子電解質膜に対する加熱と加圧は、この凸状の転写部88aの部分に作用し、この凸状の転写部88a以外の部分には作用しない。従ってこの転写部88aの部分に相当する触媒層の部分が固体高分子電解質膜と接合し一体化することになる。そしてこの転写部以外の部分に相当する触媒層の部分は転写部88aの部分に相当する触媒層の部分からフィルムと共に剥離されることになる。このように固体高分子電解質膜に転写部88aの形状に合わせた触媒層を転写することができる。
【0008】
しかし、このように加熱加圧ロールの外周面に凸状の転写部を設けて、転写部の形状に合わせた触媒層の部分を固体高分子電解質膜に転写しようとすると次のような問題が発生することが明らかになった。
【0009】
一方の加熱加圧ロールを外周面に凸状の転写部を設けた転写部付き加熱加圧ロールとする一対の加熱加圧ロールを備えるロールプレス装置を用いて、固体高分子電解質膜に触媒層を転写する場合には、図4に示すように、この凸状の転写部90aを設けた転写部付き加熱加圧ロール90と凸状の転写部を設けていない通常の加熱加圧ロール91とによって触媒層92を表面に形成した触媒層担持基材93と固体高分子電解質膜94とを一緒に挟んで加熱加圧して、触媒層92を固体高分子電解質膜94に転写する。この場合どちらか一方の加熱加圧ロール90にエアシリンダ95を取り付けて、2つの加熱加圧ロール90、91で荷重する圧力と2つの加熱加圧ロール90、91間のクリアランスとを調整制御して、固体高分子電解質膜94及び表面に触媒層92を形成した触媒層担持基材93とを挟圧する。そしてこの一対の加熱加圧ロールをモータ等の駆動手段(図示しない)を用いて回転させて、固体高分子電解質膜94に触媒層92を連続的に転写する。図4に示す一対の加熱加圧ロール90、91の例では、転写部付き加熱加圧ロール90の方にエアシリンダ95を取り付けて、転写のための圧力を制御している。
【0010】
このようにして転写部付き加熱加圧ロール90と通常の加熱加圧ロール91とを用いて触媒層92を固体高分子電解質膜94に転写しようとすると、転写部付き加熱加圧ロール90が有する凸状の転写部90a相互の間に位置する溝部分即ち凹状部分90bに、相手方の通常の加熱加圧ロール91によって押圧された触媒層92、触媒層担持基材93、及び固体高分子電解質膜94等は押し込まれて、歪み若干入り込むような形になる。
【0011】
そして一対の加熱加圧ロール90、91は回転しながら、順次触媒層92を担持した触媒層担持基材93と固体高分子電解質膜94とを順次挟圧して触媒層92を連続的に固体高分子電解質膜94に転写することから、図5に示すように、凸状の転写物90aの間に位置する溝部分即ち凹状部分90bの側に押し込まれて歪み若干入り込んだ触媒層92、触媒層担持基材93、固体高分子電解質膜94等は凸状の転写部90aの端部即ちエッジに当たり、挟圧されている固体高分子電解質膜94や触媒層92に過大な押圧力が加わることになる。その結果固体高分子電解質膜94や触媒層92にダメージが生じるという問題が発生した。
【0012】
またこのように一方の加熱加圧ロールの外周面に凸状の転写部を設けて、触媒層を固体高分子電解質膜に転写する場合には、相手方の加熱加圧ロールについては加圧面即ち外周面の表面をゴムで被覆したゴム被覆加熱加圧ロールとを用いることが一般的である。このように一方の加熱加圧ロールの外周面にゴム被覆を施するのは、加熱加圧ロールやワークの面精度を吸収して転写部の表面に加えられる面圧を均一にし、転写不良を防止するためである。
【0013】
このように転写部付き加熱加圧ロールとゴム被覆加熱加圧ロールとを回転させながら固体高分子電解質膜と触媒層を担持した触媒層担持基材とを加熱加圧して固体高分子電解質膜に転写部の形状に合わせた触媒層を転写しようとすると、先に述べたゴム被覆がされていない通常の加熱加圧ロールを用いた場合によりも過大な押圧力が凸状の転写部の端部に加わり易くなる。
【0014】
即ち転写部付き加熱加圧ロールの相手方がゴム被覆加熱加圧ロールの場合には、凸状の転写部に間に位置する溝部分即ち凹状部分に相手方のゴム被覆加熱加圧ロールの外周面の表面に被覆されたゴムが押圧力によって変形して食い込むことになる。そのため加熱加圧ロールの回転によってゴム被覆加熱加圧ロールに向かい合う位置に来る転写部の端部に対して変形したゴムによって過大な押圧力が加えられることになる。その結果、この転写部の端部と変形したゴムとの間に挟まれた固体高分子電解質膜及び触媒層の部分が過剰に圧縮、変形して、この部分の固体高分子電解質膜及び触媒層にダメージが生ずるという問題が生ずることになる。
【0015】
そこで、本発明の目的とするところは、転写部を有する加熱加圧ロールを用いて触媒層を転写部の形状に固体高分子電解質膜に転写する触媒層転写用ロールプレス装置において、固体高分子電解質膜へのダメージを低減することができる触媒層転写用ロールプレス装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
(1)固体高分子電解質膜へのダメージは、上述したように、転写部付き加熱加圧ロールの凸状の転写部と凸状転写部との間の凹状部分に向けて、相手方の加熱加圧ロールによって固体高分子電解質膜や触媒層を表面に形成した触媒層担持基材が押し込まれ、そして相手方の加熱加圧ロールが加熱加圧ロールの回転によって凸状の転写部の端部(エッジ)に過大な押圧力が作用して、その結果凹状部分の方向に押し込まれた固体高分子電解質膜や触媒層に過大な圧力が作用することで発生する。
【0017】
(2)第1発明(請求項1〜請求項10)
本発明者は、この場合に、転写部付き加熱加圧ロールの転写部が弾性的に変位するように設定することで、相手方加熱加圧ロールからの過大な押圧力が転写部の端部にそのまま作用することを防止することができると考えた。
【0018】
そして、本発明者は、第1発明として、燃料電池の固体高分子電解質膜と触媒層が表面に形成された触媒層担持基材とを挟圧して固体高分子電解質膜の表面に触媒層を転写する一対の加熱加圧ロールを有し、一対の加熱加圧ロールの少なくとも一方は、ロール状の本体部とこの本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有する転写部付き加熱加圧ロールである触媒層転写用ロールプレス装置において、転写部付き加熱加圧ロールは、転写部に作用する押圧力により転写部が弾性的に変位することによって転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段を有し、防止手段を転写部付き加熱加圧ロールのロール状の本体部と凸状の転写部と他方の加熱加圧ロールとの間に少なくとも一つ設けていることを特徴とする触媒層転写用ロールプレス装置を発明した。
【0019】
即ちこの転写部に作用する押圧力によって転写部が弾性的に変位するようにすれば、転写部に過大な押圧力が作用することを防止することができる。その結果転写部の存在による固体高分子電解質膜へのダメージの発生を低減することができる。
【0020】
この場合転写部が弾性的に変位するようにする防止手段として、相手方の加熱加圧ロールからの押圧力を受けて、転写部自体は特に変形することなく転写部全体が弾性的に変位するようにする手法と、転写部が変形して転写部の表面が弾性的に変位するようにする手法とが考えられる。
【0021】
始めに転写部全体が弾性的に変位する手法を用いた防止手段を説明する。
【0022】
この防止手段は、本体部と転写部との間に介在された弾性体とすることができる。この場合において、弾性体は、高弾性率の観点からゴムを用いることが好ましい。加熱加圧ロールのロール状の本体部と転写部の間にゴム等の弾性体を介在させた場合には、転写部に対して相手方の加熱加圧ロールから押圧力が加えられるとこの弾性体が弾性的に変形し即ち圧縮されて、転写部自体は加熱加圧ロールの中心方向に弾性的に変位して、転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止することができる。
【0023】
またこの防止手段は、本体部と転写部と間に介在されたばねとすることができる。加熱加圧ロールのロール状の本体部と転写部の間にばねを介在させた場合には、転写部に対して相手方の加熱加圧ロールから押圧力が加えられるとこのばねが圧縮されて転写部自体は加熱加圧ロールの中心方向に弾性的に変位して、転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止することができる。
【0024】
同様にこの防止手段は、本体部と転写部との間に介在されたエアシリンダとすることができる。この場合も転写部に対して相手方の加熱加圧ロールから押圧力が加えられるとこのエアシリンダが圧縮されて転写部自体は加熱加圧ロールの中心方向に弾性的に変位して、転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止することができる。
【0025】
このように防止手段を本体部と転写部との間に介在された弾性体、ばね、エアシリンダとした場合には、転写部の端部をテーパー面又はR形状とすることが好ましい。このように転写部の端部の形状をテーパー面又はR形状とすることで、転写部の端部に作用する押圧力が一気に端部に作用するのではなく、徐々に端部に作用するようにすることができる。その結果転写部に局所的に過大な押圧力が作用することをより効果的に防止することができ、その結果固体高分子電解質膜や触媒層にダメージが発生することをより低減することができる。
【0026】
ここで「転写部の端部をテーパー面とする」とは、凸状の転写部と凸状の転写部との間の溝部分即ち凹状部分を区画する溝区画面を半径方向に対して角度をもたせて、転写部の溝区画面と転写部の転写面即ち表面との角度を直角より大きくすることをいう。また「転写部の端部をR形状とする」とは、転写部の転写面と溝区画面とによって構成される角部分を丸くしてR形状とすることをいう。
【0027】
なお転写部付き加熱加圧ロールの相手方となる加熱加圧ロールは、ロール状の本体部とこの本体部の外周面を覆うゴム被覆部とを有する形態とすることができる。
【0028】
また防止手段を本体部と転写部との間に介在された弾性体、ばね、エアシリンダとした場合には、転写部付き加熱加圧ロールの相手方の加熱加圧ロールはロール状の本体部とこの本体部の外周面を被覆した弾性体からなる被覆部とを有する形態とすることが好ましい。この場合弾性体としては、高弾性率の観点からゴムを用いることが好ましい。このように転写部付き加熱加圧ロールの相手方の加熱加圧ロールの外周面に弾性体からなる被覆を施すことで、転写部に対して均一に圧力を加えることができ、転写不良を防止することができる。
【0029】
次に転写部が変形して転写部の表面が弾性的に変位するようにする手法を用いた防止手段を説明する。
【0030】
転写部が変形することで転写部の表面が弾性的に変位するようにする手法は、具体的には、転写部の表面に弾性体を被覆して、この弾性体が押圧力によって変形することで実現することができる。
【0031】
即ち転写部付き加熱加圧ロールの転写部が本体部の外周面に形成された凸状の基盤と基盤の表面を被覆する弾性体からなる表面層とを有するようにして、防止手段は表面層として被覆された弾性体とすることができる。
【0032】
転写部の表面層を弾性体とすることで、相手方の加熱加圧ロールから押圧力が転写部に加えられると、この弾性体が弾性的に変形して転写部の表面が変位する。その結果転写部の表面特に転写部の端部に過大な押圧力が作用することを防止することができる。従って過大な押圧力が作用することで固体高分子電解質膜にダメージが発生するという事態を低減することができる。この場合弾性体としては高弾性率の観点からゴムを用いることが好ましい。
【0033】
このように転写部に表面層を設けた場合には転写部付き加熱加圧ロールに対向する加熱加圧ロールは、ゴム被覆を有しない通常の加熱加圧ロールとすることも、表面がゴム被覆で覆われた形態とすることもできる。
【0034】
なおこの場合には、転写部付き加熱加圧ロールに対向する加熱加熱ロールはゴム被覆を有しない形態とする方が好ましい。両方共にゴム被覆を施すより、一方のみにゴム被覆を施した方が固体高分子電解質膜に転写する触媒層の形状をシャープにすることができる。
【0035】
このように本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、転写部付き加熱加圧ロールの転写部が相手方の加熱加圧ロールからの押圧力で弾性的に変位することで、転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止することができ、その結果触媒層が転写される固体高分子電解質膜へのダメージの発生を低減することができる。
【0036】
(3)第2発明(請求項11〜請求項12)
また本発明者は、凸状の転写部の端部(エッジ)に過大に押圧力が作用するのは、転写部と転写部との間の溝部分即ち凹状部分においても相手方の加熱加圧ロールからワーク即ち固体高分子電解質膜及び触媒層を表面に形成した触媒層担持基材に押圧力が加えられており、この凹状部分においても加えられていた押圧力が加熱加圧ロールの回転によって、転写部の端部においてそのまま作用するからだと考えた。従って、転写部間の凹状部分において固体高分子電解質膜及び触媒層担持基材とに加熱加圧ロールから押圧力が加えられないようにすればよいと考えた。
【0037】
そして、本発明者は、第2発明として、燃料電池の固体高分子電解質膜と触媒層が表面に形成された触媒層担持基材とを挟圧して固体高分子電解質膜の表面に触媒層を転写する一対の加熱加圧ロールを有する触媒層転写用ロールプレス装置において、一対の加熱加圧ロールは共にロール状の本体部と本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有し、一方の加熱加圧ロールの転写部と他方の加熱加圧ロールの転写部は一対の加熱加圧ロールによって挟圧される固体高分子電解質膜を対称面として面対称であることを特徴とする触媒層転写用ロールプレス装置を発明した。
【0038】
このように一対の加熱加圧ロールの両方に、加熱加圧ロールで挟圧される固体高分子電解質膜を対称面として面対称となる転写部を設けて、この一対の加熱加圧ロールの転写部同士が対応するように一対の加熱加圧ロールを同期して回転させることによって、転写部と転写部との間に位置する溝部分即ち凹状部分において固体高分子電解質膜と触媒層を表面に形成した触媒層担持基材とが一対の加熱加圧ロールによって挟圧されることがないようにすることができる。従って転写部間の凹状部分においては加熱加圧ロールから固体高分子電解質膜及び触媒層を担持した触媒層担持基材とに押圧力が加えられることがなく、転写部の端部において固体高分子電解質膜及び触媒層を担持した触媒層担持基材とに過大に押圧力が作用するということを避けることができる。その結果固体高分子電解質膜や触媒層にダメージが発生することを低減することができる。
【0039】
なおこの場合において、転写部の端部をテーパー面又はR形状とすることが好ましい。このように転写部の端部の形状をテーパー面又はR形状とすることで、転写部の端部において押圧力が一気に作用するのではなく、徐々に端部に作用するようにすることができる。その結果転写部に局所的に過大な押圧力が作用することをより防止することができ、その結果固体高分子電解質膜や触媒層にダメージが発生することをより低減することができる。
【0040】
このように本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、転写部と転写部との間に位置する凹状部分において、固体高分子電解質膜や触媒層に押圧力が加わらないので、一対の加熱加圧ロールの回転により対向する一対の転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止することができ、その結果触媒層が転写される固体高分子電解質膜へのダメージの発生を低減することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下本発明の触媒層転写用ロールプレス装置の実施の形態を説明する。
【0042】
(1)始めに本発明の触媒層転写用ロールプレス装置の構成について説明する。
【0043】
本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置及び第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置のいずれにおいても、燃料電池の固体高分子電解質膜(以下「電解質膜」と適宜略す)と触媒層が表面に形成された触媒層担持基材とを挟圧してこの電解質膜の表面に触媒層を転写する一対の加熱加圧ロールを有する触媒層転写用ロールプレス装置である。そして第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置においては、一対の加熱加圧ロールの少なくとも一方がロール状の本体部とこの本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有する転写部付き加熱加圧ロールであり、第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置においては、一対の加熱加圧ロールの両者が転写部付き加熱加圧ロールである。
【0044】
本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、一対の加熱加圧ロールの構成に特徴があることを除けば、一対の加熱加圧ロールを用いて電解質膜に触媒層を転写する触媒層転写用ロールプレス装置の通常の構成を用いて実現することができる。即ち一対の加熱加圧ロールの他に、加熱加圧ロールを加熱するヒータ等の加熱装置、更に一対の加熱加圧ロールの間に圧力を作用させるエアシリンダ等の加圧装置、加熱加圧ロールを回転させるモータ等の駆動手段等を用いて構成することができる。
【0045】
つまり本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、第1発明及び第2発明のいずれにおいても、一対の加熱加圧ロールに特徴があり、他の部分の構成については、基本的に一対の加熱加圧ロールを用いた通常の触媒層転写用ロールプレス装置と同一の構成にして実現することができる。
【0046】
(2)そこで次に第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いることができる一対の加熱加圧ロールの形態について説明する。
【0047】
第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いる一対の加熱加圧ロールは、一対の加熱加圧ロールの少なくとも一方は、ロール状の本体部と、この本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有する転写部付き加熱加圧ロールであって、この転写部付き加熱加圧ロールは、転写部に作用する押圧力により該転写部が弾性的に変位することによって該転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段とを有している。
【0048】
なおこの一対の加熱加圧ロールについて、一方を転写部付き加熱加圧ロールとし、他方を他方を凸状の転写部を有しない通常の加熱加圧ロールを用いた形態とすることができる。また一方を転写部付き加熱加圧ロールとし、他方をロール状の本体部とこの本体部の外周面に覆うゴム被覆部とを有する加熱加圧ロールとすることができる。更に、いずれも転写部付き加熱加圧ロールとすることもできる。この場合には、一対の加熱加圧ロールの各転写部は、一対の加熱加圧ロールで挟圧される電解質膜を対称面として面対称となるように構成することができる。
【0049】
▲1▼転写部の表面を弾性的に変形させることで転写部を変位させて転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段として、転写部付き加熱加圧ロールの凸状の転写部を本体部の外周面に形成された凸状の基盤とこの基盤の表面を被覆する弾性体からなる表面層とを有するようにした場合における表面層として被覆された弾性体を挙げることができる。
【0050】
この場合弾性体として、ゴム、高弾性の合成樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0051】
例えばゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)などを用いることができる。また高弾性の合成樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂等の弾性の大きいものを用いることができる。更に各種熱可塑性エラストマーを用いることができる。この場合急激な圧力上昇を防止するという観点から、ゴムを用いることが好ましい。
【0052】
この場合に弾性体からなる表面層の厚さは、使用する弾性体の種類によって適切な厚さに設定することができるが、概ね0.1〜10mmとすることができ、好ましくは0.5〜5mmとすることができる。
【0053】
ここで一方が凸状の転写部100aの表面層100aaとして転写部100aの凸状の基盤100abの表面に被覆された弾性体を有する転写部付き加熱加圧ロール90であり、他方が通常の加熱加圧ロール101である一対の加熱加圧ロールを図6に示す。なお以下図6、図7、図8、図9及び図10における符号については、同種の部材については、同一の符号を用いた。
【0054】
この転写部付き加熱加圧ロール100の転写部100aを凸状の基盤100abとこの基盤100abの表面を被覆する弾性体からなる表面層100aaとで構成する形態においては、ロール状の本体部100bとその表面に形成される凸状の基盤100abとを形成し、この基盤100abの表面に弾性体を被覆して表面層100aaを形成することで転写部付き加熱加圧ロール100を作製することができる。
【0055】
この場合ロール状の本体部と凸状の基盤とは通常の加熱加圧ロールを彫刻することで一体的に成形することができる。このようにロール状の本体部と凸状の基盤とを一体的に成形する場合には、例えばJIS規格G4051 S45C(以下「S45C」と略す)の炭素鋼にHCrメッキを施したものを材料としてを用いることができる。
【0056】
また予め凸状の基盤となるようなプレートを用意してそのプレートの表面に弾性体を被覆して表面層を形成してから、この表面層を形成したプレートをロール状の本体部に接着することもできる。この場合には本体部を上述のS45Cの炭素鋼にHCrメッキを施したものを材料として用い、凸状の基盤となるプレートも同様にS45Cの炭素鋼にHCrメッキを施したものを材料として用い、ロール状の本体部と向かい合う面を本体部の形状と対応させた形状にして作製することができる。
【0057】
▲2▼転写部自体を弾性的に変位させることによって、転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段として、ロール状の本体部と凸状の転写部との間に介在された弾性体、ばね、エアシリンダ等を挙げることができる。
【0058】
ここでロール状の本体部100bと凸状の転写部100aとこれらの間に介在された弾性体100cとを有する転写部付き加熱加圧ロール100を図7に示す。図7に示した加熱加圧ロール100は、本体部100bと転写部100aとの間に介在された弾性体100cが本体部100bの外周面全域に亘って被覆し、この本体部100bの外周面を全域に亘って被覆した弾性体100cの表面に凸状の転写部100aが形成されるという構成で作製されている。この場合転写部100aと本体部100bとの間に弾性体100cが介在しているので、転写部100aは、ロール状の本体部100bの外周面に適合した形状を有する凸状のプレートによって構成することができる。この場合には、ロール状の本体部100bの外周面を被覆した弾性体100cの表面に凸状のプレートを接着して凸状の転写部100aを形成することができる。
【0059】
ここで用いる弾性体としては、先に述べた転写部の表面層として用いられた弾性体と同様に、ゴム、高弾性の合成樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0060】
即ち例えばゴムとしてはニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)などを用いることができる。また高弾性の合成樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂等の弾性の大きいものを用いることができる。更に各種熱可塑性エラストマーを用いることができる。なお急激な圧力上昇の観点から、ゴムを用いることが好ましい。
【0061】
この場合においてロール状の本体部の外周面を被覆した弾性体の厚さは、使用する弾性体の種類に応じて、適切に設定することができるが、概ね0.5〜20mmとすることができ、好ましくは2〜5mmとすることができる。
【0062】
弾性体を本体部と転写部との間に介在させる転写部付き加熱加圧ロールは、図7で示した形態の他に、転写部と本体部との間にだけ弾性体を介在させるという形態とすることもできる。即ち特に本体部の外周面を全域に亘って弾性体を被覆しなくても、転写部に対応する本体部の外周面に弾性体を被覆する形態とすることができる。
【0063】
またロール状の本体部100bと凸状の転写部100aとこれらの間に介在されたばね100dとを有する加熱加圧ロールを図8に示す。この図8に示した加熱加圧ロールにおいては、本体部100bと転写部100aとの間に空隙を設けておき、この本体部100bと転写部100aとの間に介在されたばね100dによって転写部100a自体が半径方向に弾性的に変位することができるように構成されている。即ち本体部100bと転写部100aとの間の介在するばね100dが圧縮する場合に転写部100aもばね100dの圧縮によって転写部付き加熱加圧ロール100の半径方向を中心に向かって変位するように設定されている。
【0064】
ばねとしては、コイルばね、板ばね、皿ばね等のばねを用いることができる。この場合コイルばねを用いることが好ましい。コイルばねは、組み付け性、ストロークに優れ、荷重コントロールを容易に行うことができる。
【0065】
この場合転写部は、本体部との間においてばねを介在させた状態において、ロール状の本体部の外周面に適合した形状を有する凸状のプレートを用いて構成することができる。従ってこの場合において、転写部と本体部との間にばねが介在した状態で、転写部と本体部との結合が行われることになる。このようにばねを用いる場合には、加熱下でばね特性が変化しないようにすることが好ましい。
【0066】
なおこの図8で示された転写部付き加熱加圧ロールにおいて、ばねの部分はエアシリンダとすることも可能である。エアシリンダとして場合も本体部と転写部とに間に空隙を設けておき、この本体部と転写部との間に介在されたエアシリンダによって転写部自体が転写部付き加熱加圧ロールの半径方向に弾性的に変位することができるように構成されている。即ち本体部と転写部との間の介在するエアシリンダが圧縮する場合に転写部もこの圧縮によって転写部付き加熱加圧ロールの半径方向を中心に向かって変位するように設定されている。
【0067】
この場合も転写部は、本体部との間でエアシリンダを介在させた状態でロール状の本体部の外周面に適合した形状を有する凸状のプレートを用いて構成することができる。この場合において、転写部と本体部との結合は、エアシリンダが介在して行われることになる。
【0068】
なおこの場合の転写部付き加熱加圧ロールの本体部は通常の加熱加圧ロールを構成するのに用いることができる材料を用いて構成することができる。例えばS45Cの炭素鋼にHCrメッキを施したものを用いることができる。また凸状の転写部に用いられる凸状のプレートについてもS45Cの炭素鋼にHCrメッキを施したものを用いることができる。
【0069】
これらの場合凸状のプレートを用いた転写部と本体部とは、以下のように結合させることができる。図9に凸状の転写部100aとロール状の本体部100bとの間にばね100dを介在させた転写部付き加熱加圧ロール100を軸方向で切断したときの一部断面図を示す。この転写部付き加熱加圧ロール100の転写部100aの両側の端面には、転写部付き加熱加圧ロール100の軸方向に延びる挿入用ピン100fが取り付けられている。そして本体部100bの両側の端面にはそれぞれ円盤状板体100gがボルト100iによって固定されている。そしてこの円盤状板体100gには挿入孔100hが設けられ、挿入用ピン100fが挿入されるようになっている。この挿入孔100hは、転写部付き加熱加圧ロール100の半径方向に一定の長さを有しており、挿入用ピン100fはその挿入孔100hの半径方向の長さの範囲内で転写部付き加熱加圧ロール100の半径方向に移動できるようになっている。そして挿入用ピン100fは、転写部付き加熱加圧ロールの周方向については固定されている。
【0070】
このように転写部100aの端面に取り付けられた挿入用ピン100fが本体部100bに取り付けられた円盤状板体100gの挿入孔100hに挿入されることで、転写部100aを半径方向に移動可能な状態で本体部100bと結合することができる。凸状の転写部100aが押圧されると、この挿入用ピン100fが半径方向に移動できる範囲内で転写部100aが半径方向に変位することができる。
【0071】
なおここでは、ばね100dを介在させた場合を例にして説明したが、ばねでなくても、エアシリンダを介在させた場合でもこのように結合することができる。更にはゴム等の弾性体を介在させた場合でもこのように結合することが可能である。
【0072】
このように一対の加熱加圧ロールの一方の加熱加圧ロールを本体部と転写部とこれらの間に介在された弾性体、ばね又はエアシリンダとを有する形態とした場合においては、転写部の端部をテーパー面又はR形状とすることが好ましい。転写部の端部をテーパー面とした場合には転写部の溝区画面と転写部の転写面即ち表面との角度を転写面と溝区画面との角度は100〜150度とすることが好ましい。
【0073】
また転写部の端部をR形状とした場合にはR形状の半径は概ね0.2〜1mmとすることが好ましい。
【0074】
また一対の加熱加圧ロールの一方の転写部付き加熱加圧ロールを本体部と転写部とこれらの間に介在された弾性体、ばね又はエアシリンダとを有する形態とした場合には、他方の加熱加圧ロールは、図10に示すように、ロール状の本体部102aとこの本体部の外周面に被覆された弾性体からなる被覆部102bとを有する弾性体被覆部付き加熱加圧ロール102とすることが好ましい。この場合弾性体からなる被覆部102bの厚さは、弾性体の種類に応じて適切な厚さとすることができるが、概ね0.5〜20mmとすることができ、好ましくは2〜5mmとすることができる。
【0075】
このように相手方の加熱加圧ロールの外周面を弾性体とすることで、転写の際に加熱加圧ロールの転写部の面精度のばらつきを吸収して、電解質膜及びその両側に位置する表面に触媒層を担持した触媒担持基材に均一に圧力を付与することができる。その結果、転写不良を防止することができる。
【0076】
この場合においても、弾性体は、先に述べた転写部に表面に被覆する弾性体と同様のものを用いることができる。即ちゴム、高弾性の合成樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。ゴムとしては、例えばニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)などを用いることができる。また高弾性の合成樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂等の弾性の大きいものを用いることができる。更に熱可塑性エラストマーとしては、各種熱可塑性エラストマーを用いることができる。なお急激な圧力上昇を防止するという観点から、ゴムを用いることが好ましい。
【0077】
なお加熱加圧ロールの直径は特に限定はなく、加熱加圧ロールを加熱する加熱装置、更に一対の加熱加圧ロールの間に圧力を作用させるエアシリンダ等の圧力装置、加熱加圧ロールを回転させるモータ等の駆動手段等の能力を考慮して適切な大きさに設定することができる。
【0078】
転写部付き加熱加圧ロールについては特に限定はなく、適切な大きさに設定することができるが、ロール状の本体部の直径はφ200〜300mm程度に設定し、転写部を含めた場合の直径はφ300〜500mm程度に設定することが好ましい。
【0079】
(3)更に第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いることができる一対の加熱加圧ロールの形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0080】
第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いる一対の加熱加圧ロールは、共にロール状の本体部とこの本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有し、一方の加熱加圧ロールの転写部と他方の加熱加圧ロールの転写部とは、一対の加熱加圧ロールで挟圧される電解質膜を対称面として面対称であることを特徴とする。
【0081】
ここでこの一対の加熱加圧ロール110、111を図11に示す。この一対の加熱加圧ロール110、111は、ロール状の本体部110b、111bとこの本体部110b、111bの外周面に形成された凸状の転写部110a、111aを有し、一方の加熱加圧ロール110の転写部110aと他方の加熱加圧ロール111の転写部111aは一対の加熱加圧ロール110、111で挟圧される電解質膜(図示しない)を対称面として面対称であるので、一対の加熱加圧ロール110、111の凹状部分110e、111eにおいては、挟圧される電解質膜に押圧力は働かない。
【0082】
この第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いる加熱加圧ロールは、例えばS45Cの炭素鋼にHCrメッキを施したものからなる加熱加圧ロールを用いて、転写したい触媒層の形状にあわせて外周面の表面を彫刻して、転写部を形成することで、ロール状の本体部と凸状の転写部とを一体的に成形することができる。
【0083】
なお加熱加圧ロールの直径は特に限定はなく、加熱加圧ロールを加熱する加熱装置、更に一対の加熱加圧ロールの間に圧力を作用させるエアシリンダ等の圧力装置、加熱加圧ロールを回転させるモータ等の駆動手段等の能力を考慮して適切な大きさに設定することができる。概ね加熱加圧ロールの直径はφ300〜500mm程度に設定することが好ましい。
【0084】
なおこの場合において、転写部の端部をテーパー面又はR形状とすることが好ましい。転写部の端部をテーパー面とした場合には転写部の溝区画面と転写部の転写面即ち表面との角度を転写面と溝区画面との角度は100〜150度とすることが好ましい。
【0085】
また転写部の端部をR形状とした場合にはR形状の半径は概ね0.1〜1mmとすることが好ましい。
【0086】
(4)実施例
ここで一方の加熱加圧ロールをロール状の本体部と転写部と本体部と転写部との間に介在されたばねとを有する加熱加圧ロールとし、他方の加熱加圧ロールをロール状の本体部とこの本体部の外周面に被覆されたゴムからなる被覆部とを有する加熱加圧ロールとした一対の加熱加圧ロールを用いた触媒層転写用ロールプレス装置を用いて、電解質膜に触媒層を転写した実施例を説明する。
【0087】
触媒層の電解質膜への転写は、通常の場合と同様に、電解質膜を中心に配置して、その両側にアノード触媒層を表面に形成したシート及びカソード触媒層を表面に形成したシートを積層して、触媒層を担持した2つのシートとその間の電解質膜とを合わせて一対の加熱加圧ロールで挟んで加熱加圧した。
【0088】
この実施例では、一対の加熱加圧ロール間に作用させる圧力はエアシリンダを用いて制御し、転写面圧が3MPaとなるようにした。更に転写部と本体部との間に介在するばねの荷重が最大で、4MPaを超えないように設定した。一対の加熱加圧ロールの温度は、棒ヒータを用いて120℃に設定した。
【0089】
また加熱加圧ロールの送り速度は、駆動モータを用いて1m/分とした。
【0090】
このような条件で、アノード及びカソード触媒層を電解質膜に転写するときの面圧挙動をロードセルで計測した。なおこのとき感圧紙を用いて面当たりを確認しながら計測した。
【0091】
また比較例として、ばね等の防止手段を備えていない通常の転写部付き加熱加圧ロールとロール状の本体部とこの本体部の外周面に被覆されたゴムからなる被覆部とを有する加熱加圧ロールとした一対の加熱加圧ロールを備えた触媒層転写用ロールプレス装置を用いて電解質膜に触媒層を転写した。この比較例では「ばねの荷重が最大で、4MPaを超えないように設定した」という条件を除いて、同一の条件で行った。
【0092】
比較例では転写面圧が1MPaから5MPaの間を推移して、従って転写面圧のばらつきが概ね±2MPa程度と大きく、特に転写部の端部辺りでばらつきが顕著であった。
【0093】
これに対して実施例では転写面圧が3MPaと4MPaの間を推移し、従って転写面圧のばらつきが±0.5MPa程度と小さく押えることができた。その結果電解質膜との転写不良、密着性不良、過大面圧による電解質膜のダメージが抑制され、良好な触媒層−電解質膜接合体の製作が可能となった。
【0094】
(5)次に触媒層転写用ロールプレス装置を触媒層を電解質膜に転写する転写工程に用いて、触媒層−電解質膜接合体を作製する工程を説明する。
【0095】
▲1▼触媒層−電解質膜接合体を作製する工程の概略
この触媒層−電解質膜接合体を作製する工程の概略を模式的に図12に示す。この工程は、触媒層転写用ロールプレス装置を用いて触媒層−電解質膜接合体を作製する場合の一般的な工程から成っており、本発明の触媒層転写用ロールプレス装置は、このような一般的な工程に組み込んで使用することができる。
【0096】
従ってここで示す工程で用いることができる触媒層転写用ロールプレス装置の一対の加熱加圧ロールは、第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置において用いられる一対の加熱加圧ロールを用いることも、第2発明の触媒層転写ロールプレス装置において用いられる一対の加熱加圧ロールを用いることもできる。なお図12では触媒層転写用ロールプレス装置が有する一対の加熱加圧ロールのみを図示し、他の構成要素、部材、例えば、加圧装置、加熱装置、駆動手段等は図示を省略した。
【0097】
この触媒層−電解質膜接合体を作製する工程は、触媒層転写用ロールプレス装置を用いて電解質膜に触媒層を転写する転写工程の前工程として、触媒層担持基材の表面に触媒層を塗工して触媒層担持基材の表面に触媒層を形成し担持させる担持工程と触媒層担持基材の表面に形成された触媒層を乾燥する乾燥工程とを有している。また触媒層転写工程の後工程として、電解質膜に転写された触媒層を触媒層担持基材から剥離する剥離工程を有している。
【0098】
▲2▼担持工程
担持工程は、アノード触媒層ANを表面に担持するアノード用シートAS、このアノード用シートASを巻き出すアノード用シート巻き出しロール20、カソード触媒層CTを表面に担持するカソード用シートCS、このカソード用シートCSを巻き出すカソード用シート巻き出しロール30、またアノード用シートASの表面にアノード触媒層ANを塗工するアノード触媒層塗工装置25及びカソード用シートCSの表面にカソード触媒層CTを塗工するカソード触媒層塗工装置35、更にアノード用シート巻き出しロール20からアノード触媒層塗工装置25にアノード用シートASを送り出すアノード用シート第1送り出しロール21とアノード用シート第3送り出しロール23及びカソード用シート巻き出しロール30からカソード触媒層塗工装置35にカソード用シートCSを送り出すカソード用シート第1送り出しロール31とカソード用シート第3送り出しロール33等を用いて実行することができる。
【0099】
なおアノード用シートASがアノード触媒層ANを担持する触媒層担持基材であり、カソード用シートCSがカソード触媒層CTを担持する触媒層担持基材である。これらアノード用シートAS、カソード用シートCSとしては、後述する触媒混合物に接触しても溶解したり反応したりすることがなく、また後述の乾燥工程での温度、転写工程での温度に耐える耐熱性のある材料からなるシートを用いることができる。例えばポリテトラフルオロエチレン(四フッ化樹脂)等のフッ素樹脂フィルム、また ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
【0100】
担持工程が実行される様子を説明する。アノード用シートASとカソード用シートCSはそれぞれアノード用シート巻き出しロール20及びカソード用シート巻き出しロール30に巻かれている。そしてこのアノード用シート巻き出しロール20及びカソード用シート巻き出しロール30から巻き出されたアノード用シートAS及びカソード用シートCSは、それぞれアノード用シート第1送り出しロール21とアノード用第3送り出しロール23及びカソード用シート第1送り出しロール31とカソード用第3送り出しロール33によってアノード触媒層塗工装置25及びカソード触媒層塗工装置35に送り出される。
【0101】
そしてアノード触媒層塗工装置25によってアノード用シートASの表面にアノード触媒層を塗工し、カソード触媒層塗工装置35によってカソード用シートCSの表面にカソード触媒層を塗工する。このようにしてアノード用シートASの表面にアノード触媒層を形成し、カソード用シートCSの表面にカソード触媒層用触媒層を形成する。
【0102】
これらの触媒層の塗工は、触媒層塗工装置25、35として、例えばダイコータを用いて連続的に塗工することができる。またスプレー法によって触媒層を形成することもできる。
【0103】
また触媒層として塗工される触媒インク即ち触媒混合物は、適切に選択することができる。この触媒混合物はインク状であって、エタノールやイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール、水等の溶媒に、白金その他の白金属金属或いはそれらの合金等の触媒金属を担持したカーボン粉末、更にフッ素系イオン交換樹脂からなる電解質溶液等を添加し、攪拌したものを用いることができる。また触媒層の厚み、また触媒の含有量も適切に選択することができる。
【0104】
▲3▼乾燥工程
乾燥工程は、アノード触媒層ANが表面に塗工されたアノード用シートASを平坦に延ばす位置に設置されたアノード用シート第3送り出しロール23、カソード触媒層CTが表面に塗工されたカソード用シートCSを平坦に延ばす位置に設置されたカソード用シート第3送り出しロール33、平坦に延ばされたアノード用シートASの表面に担持されたアノード触媒層ANを乾燥させる温風乾燥機(図示しない)及び平坦に延ばされたカソード用シートCSの表面に担持されたカソード触媒層CTを乾燥させる温風乾燥機(図示しない)等を用いて実行することができる。なお乾燥工程が行われる箇所を図12においてHで示した。
【0105】
乾燥工程が実行される様子を説明する。アノード触媒層ANを表面に塗工したアノード用シートAS及びカソード触媒層CTを表面に塗工したカソード用シートCSは、それぞれアノード用シート第3送り出しロール23及びカソード用シート第3送り出しロール33に向かってアノード塗工装置40及びカソード塗工装置50から送り出される。
【0106】
そしてアノード用シートAS及びカソード用シートCSがアノード用シート第3送り出しロール23及びカソード用シート第3送り出しロール33に至る過程においてそれぞれ温風乾燥機によってアノード触媒層AS及びカソード触媒層CSを乾燥することができる。
【0107】
ここで用いる乾燥機は温風ヒータでもスチームヒータでもいずれも適切なものを用いることができる。
【0108】
ここでの温度は、触媒混合物に用いられる溶媒の種類によって適切な温度を設定することができる。この場合通常溶媒としては、水またはアルコール系のものを用いるので、概ね90〜150℃とすることができる。この場合、段階的に温度を高くして乾燥することが好ましい。
【0109】
そして表面に担持したアノード触媒層ANを乾燥させたアノード用シートAS及び表面に担持したカソード触媒層CTを乾燥させたカソード用シートCSは、それぞれアノード用シート第3送り出しロール23及びカソード用シート第3送り出しロール33によって次の工程に送り出される。
【0110】
▲4▼転写工程
転写工程は、電解質膜MEを巻いた電解質膜巻き出しロール10、電解質膜巻き出しロール10に巻かれた電解質膜MEを送り出す電解質膜第1送り出しロール11、送り出された電解質膜MEの両側に乾燥工程においてそれぞれの表面に担持した触媒層を乾燥させたアノード用シート及びカソード用シートを重ね合わせる一対の積層用ロール40、一対の加熱加圧ロール50、51を有する触媒層転写用ロールプレス装置等を用いて実行することができる。なお触媒層転写用ロールプレス装置の他の部材、例えば、加熱装置、加圧装置、駆動手段等は図示を省略した。
【0111】
転写工程が実行される様子を説明する。電解質膜MEは、電解質膜巻き出しロール10に巻かれている。電解質膜巻き出しロール10に巻かれた電解質膜MEは、電解質膜第1送り出しロール11によって電解質膜巻き出しロール10から巻き出される。そしてこの巻き出された電解質膜MEの両側に、アノード用シート第3送り出しロール23から送り出されたアノード用シートAS及びカソード用シート第3送り出しロール33から送り出されたカソード用シートCSが一対の積層用ロール40によって積層される。
【0112】
なお電解質膜MEは、市販されている商品を用いることも、予め公知の方法、例えば押出法、キャスティング等の方法で製造しておくことができる。通常市販されている商品としては、デュポン社の商品名ナフィオン膜、ジャパンゴアテック社の商品名ゴアセレクト膜を用いることができる。なお電解質膜MEの厚さは概ね30〜50μmのものを用いた。
【0113】
この一対の積層用ロール40によって、積層された電解質膜ME、アノード触媒層ANを表面担持したアノード用シートAS及びカソード触媒層CTを表面に担持したカソード用シートCSは、本発明の触媒層転写用ロールプレス装置の一対の加熱加圧ロール50、51によって加熱加圧されて、アノード触媒層AN及びカソード触媒層CTが電解質膜MEに転写される。この場合一対の加熱加圧ロールの一方は転写部50aを有する転写部付き加熱加圧ロール50であり、他方は表面が弾性体からなる被覆部51aを有する弾性体被覆部付き加熱加圧ロール51であり、この転写部50aの形状に対応した形状でアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTが電解質膜MEに転写される。
【0114】
この場合、一対の加熱加圧ロール50、51の温度は、ヒータ、油温調整装置等の加熱装置(図示しない)を用いて、電解質膜ME、触媒層等の材質に適合した温度に設定することができる。この場合通常、電解質膜MEの種類によって軟化温度が異なり、電解質膜MEのガラス転移点温度付近の温度で電解質膜MEを軟化させて接合することになる。概ね80〜130℃程度とすることができる。また一対の加熱加圧ロール50、51の間に作用させる圧力は、エアシリンダ等の加圧装置(図示しない)を用いて、概ね1〜10MPaとすることができ、好ましくは概ね2〜5MPaとすることができる。
【0115】
また一対の加熱加圧ロール50、51の送り速度は、モータ等の駆動手段(図示しない)を用いて、概ね0.5〜10m/分とすることができ、好ましくは概ね1〜5m/分とすることができる。
【0116】
なお図12においては、第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置に用いることができる一対の加熱加圧ロール50、51であって、一方が転写部付き加熱加圧ロール50で、他方が弾性体からなる被覆部を表面に有する弾性体被覆部付き加熱加圧ロール51を図示した。即ち一方の加熱加圧ロールは、転写部付き加熱加圧ロール50であって、転写部に作用する押圧力により転写部が弾性的に変位することによって転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段(特に図示しない)を有する加熱加圧ロールである。
【0117】
この場合、防止手段は、上述したように、転写部の表面層として被覆された弾性体であっても、加熱加圧ロールの本体部と転写部との間に介在したばねであっても、弾性体であっても、エアシリンダであってもよい。
【0118】
なお図12において、第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置で用いられる一対の加熱加圧ロールを図示したが、この転写工程で用いられる触媒層転写用ロールプレス装置の一対の加熱加圧ロールは、第1発明の触媒層転写用ロールプレス装置で用いられる一対の加熱加圧ロールに限定されない。第2発明の触媒層転写用ロールプレス装置で用いられる一対の加熱加圧ロールを用いることもできる。
【0119】
▲5▼剥離工程
剥離工程は、電解質膜MEに転写されたアノード触媒層ANからアノード用シートASを剥離し、電解質膜MEに転写されたカソード触媒層CTからカソード用シートCSを剥離するアノード用シート剥離装置26及びカソード用シート剥離装置36、転写されたアノード触媒層ANが剥離されたアノード用シートASを巻き取るアノード用シート巻き取りロール24、転写されたカソード触媒層CTが剥離されたカソード用シートCSを巻き取るカソード用シート巻き取りロール34、電解質膜MEにアノード触媒媒層AN及びカソード触媒層CTが転写されて形成された触媒層−電解質膜接合体MEAを巻き取る接合体巻き取りロール13、接合体巻き取りロール13に触媒層−電解質膜接合体MEAを送り出す接合体送り出しロール12等を用いて実行することができる。なおシート剥離装置26、36としては押さえ板を用いた。
【0120】
以下剥離工程が実行される様子を説明する。転写工程において、一対の加熱加圧ロール50、51を用いて電解質膜MEの両側にアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTとが転写部の形状で転写される。そしてアノード触媒層ANとカソード触媒層CTが転写された電解質膜MEからその両側に積層されているアノード用シートCSとカソード用シートASをアノード用シート剥離装置26及びカソード用シート剥離装置36を用いてそれぞれ剥離して、触媒層−電解質膜接合体MEAが形成される。
【0121】
この場合転写部50aの形状で電解質膜MEに転写されたアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTは、それぞれアノード用シートAS及びカソード用シートCSから剥離して電解質膜MEの側に残されて、触媒層−電解質膜接合体MEAが形成される。また電解質膜MEに転写されなかったアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTはアノード用シートAS及びカソード用シートCSの表面に担持された状態で残される。
【0122】
そして触媒層−電解質膜接合体MEAは、接合体送り出しロール12によって送り出されて接合体巻き取りロール13に巻き取られる。またアノード用シートAS及びカソード用シートCSは、アノード用シート巻き取りロール24及びカソード用シート巻き取りロール34に巻き取られる。
【0123】
このようにして電解質膜MEに触媒層AN、CTを転写した触媒層−電解質膜接合体MEAを製造することができる。
【0124】
(6)なお本発明の触媒層転写用ロールプレス装置を用いることができる触媒層−電解質膜接合体を作製する工程は、(5)において説明した工程に限定されるものではない。
【0125】
例えば、アノード触媒層とカソード触媒層の電解質膜への転写は、上述の例では、同時に行われているが、別々の工程で行うことができる。この場合には、転写工程は、2回行われることになる。
【0126】
また上述した触媒層−電解質膜接合体MEAを作製する工程では、転写工程の前の乾燥工程で、アノード用シートASの表面に形成されたアノード触媒層AN及びカソード用シートCSの表面に形成されたカソード触媒層CTは、塗工された触媒層混合物を乾燥させて触媒層混合物中の溶媒を除去することが一般的である。従って転写工程でアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTは乾燥した状態で電解質膜MEに転写される。そして剥離工程でアノード用シート及びカソード用シートを剥離した後、触媒層−電解質膜接合体MEAはそのまま接合体巻き取りロール13に巻き取られる。
【0127】
しかしこのようにして触媒層−電解質膜接合体MEAを形成すると、以下のような問題が発生する。即ちアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTを完全に乾燥した状態で加熱加圧して電解質膜に転写するので、アノード触媒層AN及びカソード触媒層CTと電解質膜MEとの密着性が不十分であったり、またアノード触媒層ANやカソード触媒層CTが加熱加圧によって塑性変形して潰れてしまい、3次元構造が崩れ、ガス拡散性が阻害されて触媒反応活性が低下するという問題が生じた。
【0128】
そこで乾燥工程において、触媒混合物中の溶媒を完全に除去しないまま、いわば予備乾燥の状態にしておいて、アノード触媒層AN及びカソード触媒層CTを電解質膜の転写することができる。
【0129】
この場合、アノード用シートAS、カソード用シートCSに担持される触媒混合物に用いられ、触媒金属を担持したカーボン粉末等の触媒担持粉末等を分散させる溶媒として、水よりも沸点が高くかつパーフルオロスルホン酸樹脂等の電解質樹脂と相溶性がよいプロピレングリコール、エチレングリコール、プロパノール等の高沸点溶媒を用いることができる。
【0130】
このような構成の触媒混合物をアノード用シート、カソード用シートに塗工して触媒層AN、CTを形成することで、溶媒を残留させた状態で電解質膜MEに触媒層AN、CTを転写することができる。
【0131】
この場合▲3▼で説明した乾燥工程は、溶媒を一部残留させるために、触媒層AN、CTの予備乾燥工程として、通常の温風乾燥よりは、スチーム乾燥とすることが好ましい。この場合温度は、(5)で説明した乾燥工程の温度よりは低く、概ね80〜130℃とすることができる。このようにすることで、アノード及びカソード触媒層AN、CTの発熱や電解質膜MEのドライアップを防止することができる。
【0132】
そしてこのように高沸点溶媒を一部残留させた状態で電解質膜MEにアノード及びカソード触媒層AN、CTを転写することができる。この場合高沸点溶媒が一部残留した状態で転写が行われることから、一対の加熱加圧ロール50、51の間に作用させる圧力は通常より低い圧力に設定して転写を行うことができる。例えば1〜5MPa程度の圧力に設定することができる。また一対の加熱加圧ロール50、51の温度も通常より低い温度に設定して転写することができる。例えば60〜120℃程度の温度に設定することができる。
【0133】
このように溶媒が一部残留した状態で加熱加圧して電解質膜にアノード及びカソード触媒層AN、CTを転写するので、電解質膜MEとアノード及びカソード触媒層AN、CTとの密着性を向上することができ、アノード及びカソード触媒層AN、CTの気孔率を確保することができる。
【0134】
また高沸点溶媒を一部残留させた状態でアノード及びカソード触媒層AN、CTを電解質膜MEに転写した場合には、剥離工程において、更に触媒層中の溶媒を完全に除去する本乾燥工程を設けることができる。即ちアノード用シートAS及びカソード用シートCSを電解質膜MEに転写されたアノード触媒層AN及びカソード触媒層CTから剥離して、触媒層−電解質膜接合体MEAを形成した後に、本乾燥工程を設けて、アノード及びカソード触媒層AN、CTに残留している高沸点溶媒を乾燥除去することができる。この場合この本乾燥工程の温度は、概ね100〜150℃とすることが好ましい。
【0135】
このようにアノード及びカソード触媒層を電解質膜に転写してから、高沸点溶媒を乾燥除去するので、アノード及びカソード触媒層の気孔率及び3次元構造を確保することができる。
【0136】
以上のように本発明の触媒層転写用ロールプレス装置を用いることによって、電解質膜にダメージを与えることなく、転写部の形状に合わせた触媒層を電解質膜に連続的に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一対の加熱加圧ロールを用いて、触媒層を電解質膜に転写する様子を示した図である。
【図2】固体高分子電解質膜の面積を触媒層の面積よりも広くして触媒層−電解質膜接合体を示す図である。
【図3】転写部付き加熱加圧ロールを示した図である。
【図4】転写部付き加熱加圧ロールと転写部を有しない加熱加圧ロールを用いて固体高分子電解質膜に触媒層を転写する様子を示した図である。
【図5】加熱加圧ロールの凹状部分で触媒層、触媒層担持基材、固体高分子電解質膜等が歪む様子を示した図である。
【図6】転写部の表面層として転写部の凸状の基盤の表面に被覆された弾性体を有する転写部付き加熱加圧ロールと通常の加熱加圧ロールとからなる一対の加熱加圧ロール示した図である。
【図7】ロール状の本体部と凸状の転写部とこれらの間に介在された弾性体とを有する転写部付き加熱加圧ロールを示した図である。
【図8】ロール状の本体部と凸状の転写部とこれらの間に介在されたばねとを有する加熱加圧ロールを示した図である。
【図9】ばねを介在した状態で、転写部と本体部とを結合した転写部付き加熱加圧ロールの一部断面図である。
【図10】ロール状の本体部とこの本体部の外周面に被覆された弾性体からなる被覆部とを有する弾性体被覆部付きロールを示した図である。
【図11】ロール状の本体部とこの本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有し、一方の加熱加圧ロールの転写部と他方の加熱加圧ロールの転写部とは、この一対の加熱加圧ロールで挟圧される電解質膜を対称面として面対称である一対の加熱加圧ロールを示した図である。
【図12】触媒層−電解質膜接合体を作製する工程の概略を模式的に示した図である。
【符号の説明】
100:転写部付き加熱加圧ロール
100a:凸状の転写部
100aa:表面層
100ab:凸状の基盤
100b:ロール状の本体部
100c:弾性体
100d:ばね
100f:挿入用ピン
100g:円盤状板体
100h:挿入孔
100i:ボルト
101:通常の加熱加圧ロール
102:弾性体被覆部付き加熱加圧ロール
110:転写部付き加熱加圧ロール
110a:凸状の転写部
110b:ロール状の本体部
110e:凹状部分
111:転写部付き加熱加圧ロール
111a:凸状の転写部
111b:ロール状の本体部
111e:凹状部分
AN:アノード触媒層
AS:アノード用シート
CT:カソード触媒層
CS:カソード用シート
ME:電解質膜
MEA:触媒層−電解質膜接合体
10:電解質膜巻き出しロール
11:電解質膜第1送り出しロール
12:接合体送り出しロール
13:接合体巻き取りロール
20:アノード用シート巻き出しロール
21:アノード用シート第1送り出しロール
22:アノード用シート第2送り出しロール
23:アノード用シート第3送り出しロール
24:アノード用シート巻き取りロール
25:アノード触媒層塗工装置
26:アノード用シート剥離装置
30:カソード用シート巻き出しロール
31:カソード用シート第1送り出しロール
32:カソード用シート第2送り出しロール
33:カソード用シート第3送り出しロール
34:カソード用シート巻き取りロール
35:カソード触媒層塗工装置
36:カソード用シート剥離装置
40:一対の積層用ロール
50:転写部付き加熱加圧ロール
50a:転写部
51:弾性体被覆部付き加熱加圧ロール
51a:被覆部
Claims (12)
- 燃料電池の固体高分子電解質膜と触媒層が表面に形成された触媒層担持基材とを挟圧して該固体高分子電解質膜の表面に該触媒層を転写する一対の加熱加圧ロールを有し、一対の前記加熱加圧ロールの少なくとも一方は、ロール状の本体部と該本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有する転写部付き加熱加圧ロールである触媒層転写用ロールプレス装置において、
前記転写部付き加熱加圧ロールは、前記転写部に作用する押圧力により前記転写部が弾性的に変位することによって前記転写部に局所的に過大な押圧力が作用することを防止する防止手段を有し、
前記防止手段を前記転写部付き加熱加圧ロールの前記ロール状の本体部と前記凸状の転写部と他方の加熱加圧ロールとの間に少なくとも一つ設けていることを特徴とする触媒層転写用ロールプレス装置。 - 前記防止手段は、前記本体部と前記転写部との間に介在する弾性体である請求項1記載の触媒層転写装置。
- 前記弾性体は、ゴムである請求項2載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記防止手段は、前記本体部と前記転写部との間に介在するばねである請求項1記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記防止手段は、前記本体部と前記転写部との間に介在するエアシリンダである請求項1記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記転写部の端部をテーパー面又はR形状とした請求項2〜5記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記転写部付き加熱加圧ロールの相手方となる加熱加圧ロールは、ロール状の本体部と該本体部の外周面を被覆した弾性体からなる被覆部とを有する請求項2〜6記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記弾性体は、ゴムである請求項7記載の触媒転写用ロールプレス装置。
- 前記転写部は、前記本体部の外周面に形成された凸状の基盤と該基盤の表面を被覆する弾性体からなる表面層とを有し、前記防止手段は該表面層として被覆された該弾性体である請求項1記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 前記弾性体はゴムである請求項9記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
- 燃料電池の固体高分子電解質膜と触媒層が表面に形成された触媒層担持基材とを挟圧して該固体高分子電解質膜の表面に該触媒層を転写する一対の加熱加圧ロールを有する触媒層転写用ロールプレス装置において、
一対の前記加熱加圧ロールは共にロール状の本体部と該本体部の外周面に形成された凸状の転写部とを有し、一方の前記加熱加圧ロールの該転写部と他方の前記加熱加圧ロールの該転写部は一対の前記加熱加圧ロールによって挟圧される前記固体高分子電解質膜を対称面として面対称であることを特徴とする触媒層転写用ロールプレス装置。 - 前記転写部の端部をテーパー面又はR形状とした請求項11記載の触媒層転写用ロールプレス装置。
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