JP4075045B2 - 穴かがりミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、穴かがりミシンに関し、特に穴かがり縫目の傾斜状流れ閂部分や鳩目部の両端の角部における針落ち点軌跡を各種の曲率半径からなる種々の円弧状に形成できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、穴かがりミシンとして、特開平4─26436号公報、特開平4─261695号公報などに記載のように、鳩目部とこれに連続する直線状の足部とからなる鳩目穴かがり縫目を縫製する鳩目穴かがりミシンにおいては、針棒とこの針棒に対向するルーパーとを同期させて駆動する駆動機構と、ルーパーを設けたルーパー土台と針棒とを平面視で反時計回りに回動させる回動機構と、加工布を載置する送り台をX方向とY方向とに夫々移動させる送り機構が設けられ、鳩目穴かがり縫目の為の縫目データに基づいて、これら送り機構と回動機構とを駆動制御することにより、加工布上に鳩目穴かがり縫目が形成される。
【0003】
この種の鳩目穴かがりミシンの針棒揺動機構は機械駆動式であって、内針から外針に至る針振り幅を、機械的に規定するようになっている。それ故、内針から外針までの針振り幅は、機械的に規定されるため、2つの角部153c,153dにおける針落ち点軌跡を折線状とする傾斜状流れ閂部分153bを含む鳩目穴かがり縫目150の内針の針落ち位置の為の縫目データを作成するだけで、外針の針落ち位置も含めた鳩目穴かがり縫目150を繰り返して縫製できるようになっている。
【0004】
また、ジーンズ等の生地に形成する鳩目穴かがり縫目150は、図10に2点鎖線で示すように、鳩目部151と、直線部152と、流れ閂止め部153とからなっている。この場合、流れ閂止め部153における傾斜状流れ閂部分153bの両端の角部153c,153dにおける針落ち点軌跡は、使用者の嗜好のにより、或いは、傾斜状流れ閂部分153bの見栄えをよくする為に折線状になっている。
【0005】
一方、送り台をX方向とY方向に移動させる送り機構を縫目形成専用のカム板により駆動させるようにした機械駆動式鳩目穴かがりミシンにより、流れ閂止め部を有する鳩目穴かがり縫目を縫製する場合には、円盤状の縫目形成用カム板を使用するようにし、この縫目形成用カム板に形成した溝カムを追従子で追従させる関係上、流れ閂止め部153の傾斜状流れ閂部分153bの両端の角部153c,153dにおける針落ち点軌跡は、折線状に形成することができず、やむを得ず、実施形態の図9に示すように、円弧状に形成するようになっている。
【0006】
但し、この場合、傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dにおける円弧状針落点軌跡の曲率半径は、使用する縫目形成用カム板により規定されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、内針の針落ち位置の為の縫目データにより鳩目穴かがり縫目を縫製する鳩目穴かがりミシンでは、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落ち点軌跡を折線状にしか縫製できないため、使用者の嗜好により、滑らかな円弧状に形成することができないという問題がある。また、円盤状の縫目形成用カム板を用いる機械駆動式鳩目穴かがりミシンでは、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落ち点軌跡を、一定の曲率半径を有する一種類の円弧状にしか形成することができないという問題がある。
【0008】
この場合、曲率半径の異なる複数種類の縫目形成用カム板を予め準備することも可能であるが、角部における円弧状針落ち点軌跡の曲率半径を変更する場合には、その都度、縫目形成用カム板を交換することになり、作業能率が悪化すること、複数種類の縫目形成用カム板の管理が複雑化すること、等の問題がある。
本発明の目的は、流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落ち点軌跡や鳩目部の開始端及び終了端の角部における針落ち点軌跡を、所望の曲率半径からなる円弧状に形成できるようにすること、等である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る穴かがりミシンは、送り台にセットされた加工布に流れ閂止め部を含む穴かがり縫目を縫製する穴かがりミシンにおいて、流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の曲率半径情報を入力可能な入力手段と、入力手段により入力された第1の曲率半径情報を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする針落ち位置を演算する第1針落ち位置演算手段とを備えたものである。
【0010】
穴かがり縫目を縫製するに際して、流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の第1の曲率半径情報が入力設定されると、第1針落ち位置演算手段は入力設定された入力数値を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を第1の曲率半径の円弧状にするように、流れ閂止め部における少なくとも外針の針落ち位置を演算により求める。そして、これら演算で求められた複数の針落ち位置からなる縫製データに基づいて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状とする穴かがり縫目が縫製される。
【0011】
請求項2に係る穴かがりミシンは、請求項1の発明において、前記穴かがり縫目が鳩目穴かがり縫目であり、入力手段は、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の第2の曲率半径情報を入力可能に構成され、第1針落ち位置演算手段は、入力手段により入力された第2の曲率半径情報を用いて、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧にする針落ち位置を演算するものである。
【0012】
穴かがり縫目が鳩目穴かがり縫目の場合には、第1針落ち位置演算手段は、鳩目穴かがり縫目の鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡について、入力設定された第2の曲率半径となる円弧状に形成する少なくとも外針の針落ち位置を演算する。それ故、この場合には、傾斜状流れ閂部分の両端の角部だけでなく、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を第2の曲率半径の円弧状に形成することができる。しかも、この鳩目部における両端の角部の円弧の曲率半径と、傾斜状流れ閂部分の両端の角部の円弧の曲率半径とを異ならせることができる。その他、請求項1と同様の作用を奏する。
【0013】
請求項3に係る穴かがりミシンは、請求項1又は2の発明において、前記入力手段から入力された少なくとも針振り幅と傾斜状流れ閂部分の針振り方向と直交する送り方向長さを含む入力数値に基づいて、傾斜状流れ閂部分の流れ閂傾斜角を求め、この流れ閂傾斜角を用いて傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を折線状にする針落ち位置を演算する第2針落ち位置演算手段と、第1,第2針落ち位置演算手段を択一的に作動させる選択指定手段とを設けたものである。
【0014】
この場合、選択指定手段により、第1針落ち位置演算手段が作動するように指定された場合には、請求項1のように、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする針落ち位置が演算により求められるが、第2針落ち位置演算手段が作動するように指定された場合には、入力された少なくとも針振り幅と傾斜状流れ閂部分の針振り方向と直交する送り方向長さを含む入力数値に基づいて求めた流れ閂傾斜角を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を折線状にする少なくとも外針の針落ち位置が演算により求められる。その他、請求項1又は2と同様の作用を奏する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施の形態は、加工布に形成する鳩目穴の周囲をかがり縫いする鳩目穴かがりミシンに本発明を適用した場合のものである。
鳩目穴かがりミシンMは、図1に示すように、略矩形箱状をなすベッド部1に、その後方部上部から前方に連続して延びるアーム部2を一体的に備えて構成され、ミシンテーブル16上に載置されている。
【0016】
このミシンテーブル16には、針棒4やルーパー6a(図2参照)などを同期駆動させる駆動機構の駆動源となるミンシモータ24(図3参照)、鳩目穴かがり縫いに際して、縫い目ピッチなどの各種の数値を入力設定する為の操作パネル23や足踏み式の起動・停止スイッチ20などが設けられ、更に各機構の作動を制御するマイクロコンピュータなどからなる制御装置35が設けられている。また、前記アーム部2の先端部下部には、縫針3を備えた針棒4が上下動可能に設けられている。
【0017】
詳しく図示はしないが、前記ミンシモータ24の駆動により回転される主軸5の回転力がカム機構により伝達され、針棒4が所定幅分だけ左右に揺動しながら上下駆動されるようになっている。また、前記ベッド部1には、針棒4に対向して、前記主軸5の回転力がカム機構により伝達された針棒4に同期して作動される2個のルーパー6aを備えたルーパー土台6が設けられ、主軸5の回転が図示しないカム機構を介してルーパー6aにも伝達され、このルーパー6aが針棒4の上下動と同期して駆動されるようになっている。ここで、駆動機構は、これらミンシモータ24、主軸5、カム機構等から構成されている。
【0018】
また、針棒4及びルーパー土台6は、ベッド部1内に設けられたステッピングモータからなるθ方向駆動モータ26及びギヤ機構7からなる回動機構8により、夫々水平面において、鉛直軸回りに一体的に回動するようにっている。前記ベッド部1には、ルーパー土台6の後方側に位置して固定配置された下メス9が設けられるとともに、この下メス9に対して上方より接離する打ち抜き用ハンマー10が揺動可能に設けられている。
【0019】
このハンマー10は、ベッド部1内に設けられたエアシリンダ11(図3参照)などからなるハンマー駆動機構12により駆動され、下メス9との協働により、鳩目穴かがり縫目50(図9参照)の内部に鳩目穴(図示略)を加工布に形成するようになっている。そして、ベッド部1の上面部には、加工布がセットされる送り台13が設けられている。この送り台13は、全体として薄形の矩形箱状をなし、その下面のうち、ルーパー土台6及び下メス9に対応する部位が開放されている。
【0020】
また、この送り台13の上面には、図2に示すように、開口部14aを有する金属製のクロスプレート14が設けられている。そして、この送り台13は、詳しく図示はしないが、ベッド部1内に設けられたX方向駆動モータ30及びY方向駆動モータ32などからなる送り機構15(図3参照)により、鳩目穴かがり縫目50の直線部52と平行なY方向(これが針振り方向と直交する送り方向に相当する)と、このY方向に直交するX方向(左右方向)とに独立に水平移動可能になっている。尚、前記クロスプレート14上には、前記開口部14aの左右両側に位置して加工布を押さえる為の布押え(図示略)が設けられている。
【0021】
次に、鳩目穴かがりミシンMの制御系の概要について、図3のブロック図に基づいて説明する。
ミシンMの制御装置35は、CPU36とROM37及びRAM38とを含むマイクロコンピュータと、そのマイクロコンピュータにデータバスなどのバス39を介して接続された入力インターフェース40及び出力インターフェース41とから構成され、入力インターフェース40には、起動・停止スイッチ20と、布押えに連結された布押えスイッチ21と、タイミング信号発生器22と、操作パネル23からの信号が供給される。
【0022】
また出力インターフェース41からは、ミシンモータ24の為の駆動回路25と、θ方向駆動モータ26の為の駆動回路27と、ハンマー駆動機構12に設けられたエアシリンダ11を駆動する電磁切換え弁28の為の駆動回路29と、送り機構15のX方向駆動モータ30の為の駆動回路31とY方向駆動モータ32の為の駆動回路33に加えて、操作パネル23の各々に駆動信号や駆動パルス信号が供給される。ここで、これらX方向駆動モータ30とY方向駆動モータ32は、夫々ステッピングモータで構成されている。前記タイミング信号発生器22は、ミシンMの主軸5に連係させて設けられ、主軸5の回転位相を検出して、各種の位相信号を出力するものである。
【0023】
ROM37には、縫目データに基づいて、ルーパー6aと針棒4とを駆動する駆動機構のための駆動制御プログラムに加えて、ハンマー駆動機構12や送り機構15や回動機構8を駆動する駆動制御プログラム、後述する本願特有の縫目データ作成制御の制御プログラムなどが格納されている。また、RAM38には演算により求めた内針と外針の針落ち位置データ及びこれら複数の針落ち位置データからなる縫目データを格納する縫目データメモリに加えて、各種のワークメモリやバッファなどが設けられている。
【0024】
次に、操作パネル23(入力手段に相当する)には、図示しないが、曲率半径情報等の各種のパラメータのための数値を入力するテンキー、数値を変更する為の数値アップキー及び数値ダウンキーと、数値設定を確定する確定キー等の各種のキーが設けたキーボードと、設定用の複数の項目名や入力した数値を表示する液晶ディスプレイが設けられている。ここで、鳩目穴かがり縫目50について簡単に説明すると、図6に示すように、鳩目部51と、この鳩目部51に夫々連続する左右1対の略直線状の直線部52と、その直線部52に夫々連続する左右1対の流れ閂止め部53とを有する。
【0025】
各流れ閂止め部53は足部分(F)53aと傾斜状流れ閂部分53bを有し、傾斜状流れ閂部分53bの両端には角部53c,53dが存在する。また、角部53cは下端角部NKL に含まれ、角部53dは上端角部NKU に含まれる。
次に、鳩目穴かがりミシンMの制御装置35により実行される鳩目穴かがり縫目データ作成制御のルーチンについて、図4〜図5のフローチャートに基づいて説明する。但し、図中符号Si(i=11、12、13・・・)は各ステップである。
【0026】
操作パネル23のキーボードに設けられた縫製データ作成キーが操作されるとこの制御が開始され、先ず操作パネル23のディスプレイに縫製モード設定画面が表示される(S11)。この縫製モード設定画面には、項目「傾斜状流れ閂部分を円弧状にする」と、項目「傾斜状流れ閂部分を折線状にする」の2つの項目名が夫々表示されるため、オペレータは何れかの項目をカーソルにて指示してから確定キーを操作する等の縫製モード選択指定処理が実行される(S12)。
【0027】
そして、オペレータが項目「傾斜状流れ閂部分を円弧状にする」を選択指定した場合には(S13:Yes) 、円弧縫製モードが設定される(S14)。この場合、操作パネル23のディスプレイにパラメータ入力画面が表示されるので、オペレータは必要に応じて種々の数値を入力設定する(S15)。ここで、流れ閂止め部53に関する複数のパラメータについて、図6に基づいて説明しておく。
【0028】
パラメータとしては、「送りピッチ」P、「メススペース」SP、「針振り幅」B、「オフセット量」OF、「針振り幅補正量」W、「流れ閂止め長さ」L2、「流れ閂傾斜角」α等である。それ故、これら複数のパラメータを用いて、
A=SP、
針振り幅B=2×OF+W、
傾斜幅C=(A+B)−B/2、
傾斜状流れ閂部分53bのY方向長さD=C×tanα、
元の足部分(F)53aのY方向長さL1=L2−D、であるため、
L1=L2−(SP+OF+W/2)×tanαとなる。
【0029】
ここで、流れ閂止め長さL2は流れ閂止め部53のY方向長さである。但し、送りピッチPと、流れ閂傾斜角」α(例えば、約60°)と、メススペースSPと、駆動機構により決定される基本振り幅(この場合、2×OF)は、予め設定されているものとする。即ち、オペレータが入力すべきパラメータは、針振り幅Bを直接に入力するか、又は針振り幅Bの補正量Wを入力し、更に流れ閂止め部53における曲線半径情報Rを入力するだけでよい。ここで、予め設定されているパラメータを変更する場合には、その変更したいパラメータの数値を、設定項目に対応させて設定することが可能である。
【0030】
先ず、傾斜状流れ閂部分53bの下端角部NKL の下半部分について説明する。β=π/2−α
Y0=L1−(P×I)
Y1=r×tan(β/2)
G=Y1−Y0
F=L1−Y1 とすると、図7に示すように、
円弧nは、R×R=(x−R)×(x−R)+y×y
直線m1 は、y=−(G/R)×x+G である。
その結果、これら円弧nの式と直線m1 の式から、交点Vを求めると、
【0031】
(1+(G×G)/(R×R))×x×x−2×(1+(G×G)/(R×R))×R×x+G×G=0 である。ここで、
H=1+(G×G)/(R×R)
J=−2×H×R
K=G×G とすると、
交点Vを求める式は、H×x×x−2×J×x+K=0 であるため、
x=(−J−(J×J−4×H×K)1/2 )/(2×H)
y=−(G/R)×x+G
=−(G/R)×(−J−(J×J−4×H×K)1/2 )/(2×H)+G
【0032】
次に、傾斜状流れ閂部分53bの下端角部NKL の上半部分について説明する。
図8に示すように、直線m2の傾きQは、
Q=(−Y−Y1)/(R−Ytanβ)
円弧nの式と直線m2の式から、交点Vを求めると、
(1+Q×Q)×x×x−2×R×(1+Q×Q)×x+Q×Q×R×R=0
ここで、
【0033】
S=1+Q×Q
T=−2×S×R
U=Q×Q×R×R とすると、
交点Vを求める式は、S×x×x−2×T×x+U=0 であるため、
x=(−T−(T×T−4×S×U)1/2 )/(2×S)
y=Q×(x−R)
=Q×((−T−(T×T−4×S×U)1/2 )/(2×S)−R
【0034】
次に、右側(最初)の流れ閂止め部53の縫目データ作成処理(図5参照)が実行される(S16)。この制御が開始されると、先ず、針数カウンタのカウント値Iに初期値「0」がセットされる(S30)。但し、S31〜S36により、流れ閂止め部53における足部分(F)53aに関する針落ち位置の座標演算が実行される。即ち、縫い開始位置における内針の座標演算が行われる(S31)。この場合、内針のX座標とY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。
【0035】
次に、演算で求められた内針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶され(S32)、針数カウント値Iが1つインクリメントされる(S33)。次に、座標演算が足部分53aである場合には(S34:No)、外針の座標演算が行われる(S35)。即ち、外針のX座標及びY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。次に、演算で求められた外針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶される(S36)。
【0036】
そして、S31〜S36が繰り返して実行され、座標演算が足部分53aを終了した場合には(S34:Yes)、S37〜S42により、傾斜状流れ閂部分53bの下端角部NKL の下半部分における針落ち位置の座標演算(図7参照)が実行される。即ち、先ず内針の座標演算が行われる(S37)。この場合、内針のX座標とY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。次に、演算で求められた内針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶され(S38)、針数カウント値Iが1つインクリメントされる(S39)。
【0037】
次に、座標演算が下端角部NKL の下半部分である場合には(S40:No)、外針の座標演算が行われる(S41)。即ち、外針のX座標及びY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。次に、演算で求められた外針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶される(S42)。そして、S37〜S42が繰り返して実行され、座標演算が下端角部NKL の下半部分を終了した場合には(S40:Yes)、S43〜S48により、傾斜状流れ閂部分53bの下端角部NKL の上半部分における針落ち位置の座標演算(図8参照)が実行される。
【0038】
即ち、先ず内針の座標演算が行われる(S43)。この場合、内針のX座標とY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。次に、演算で求められた内針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶され(S44)、針数カウント値Iが1つインクリメントされる(S45)。次に、座標演算が下端角部NKL の下半部分である場合には(S46:No)、外針の座標演算が行われる(S47)。即ち、外針のX座標及びY座標については図示の演算式により夫々求められる。但し、回動角Tは「0」である。次に、演算で求められた外針の座標がRAM38の縫目データメモリに記憶される(S48)。
【0039】
そして、S43〜S48が繰り返して実行され、座標演算が下端角部NKL の下半部分を終了した場合には(S46:Yes)、傾斜状流れ閂部分53bの上端角部NKU における針落ち位置の座標演算が実行され、縫目データメモリに記憶され(S49)、この制御を終了して、鳩目穴かがり縫目データ作成制御のS17に戻る。この上端角部NKU における針落ち位置の座標演算は、S31〜S48と同様の演算方法により実行されるため、その詳しい説明を省略する。
【0040】
そして、鳩目穴かがり縫目データ作成制御において、流れ閂止め部53に連続する右側の直線部52の縫目データ作成処理(S17)と、鳩目部51の縫目データ作成処理(S18)と、左側の直線部52の縫目データ作成処理(S19)と、左側の流れ閂止め部53の縫目データ作成処理(S20)が夫々順次実行され、この制御を終了して、メインルーチンに戻る。この場合、S17とS19の各処理制御は従来と同様のため、その詳しい説明を省略する。
【0041】
但し、S20の左側の流れ閂止め部53の縫目データ作成制御は、S16の右側の流れ閂止め部53と同様にして、つまりY軸と対称に内針と外針の各針落ち位置の座標演算が行われるため、その説明を省略する。また、S18の鳩目部51の縫目データ作成制御においては、S16の右側の流れ閂止め部53と同様の演算方法により、両端の角部51a,51bにおける針落点軌跡を円弧状とする演算処理が実行されるため、その詳しい説明を省略する。そして、最終的に、内針の針落ち位置に対する実際の外針の針落ち位置が求められ、しかも、各内針と外針の相対的な針落ち位置が求められる。
【0042】
ここで、図4の鳩目穴かがり縫目データ作成制御の、特にS16〜S20が第1針落ち位置演算手段に相当する。例えば、流れ閂止め部53の傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部や鳩目部51の開始端と終了端の角部における針落ち点軌跡を円弧状にする曲率半径として「R=7.5mm」に設定し、針振り幅Bとして「4mm」を入力設定した場合、図9に示すように、傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dの針落ち点軌跡が夫々円弧状になるとともに、鳩目部51の開始端と終了端の角部51a,51bにおいても、針落点軌跡が夫々円弧状になった鳩目穴かがり縫目50が形成される。
【0043】
ところで、図4の鳩目穴かがり縫目データ作成制御において、オペレータが項目「傾斜状流れ閂部分を折線状にする」を選択指定した場合(S13:No)、折線縫製モードが設定される(S21)。この場合、操作パネル23のディスプレイにパラメータ入力画面が表示されるので、オペレータは必要に応じて種々の数値を入力設定する(S22)。そして、従来と同様に、傾斜状流れ閂部分53bにおける角部53c,53dと、鳩目部51の両端の角部51a,51bを折線状にする穴かがり縫目データ作成処理が実行され(S23)、この制御を終了して、メインルーチンにリターンする。
【0044】
このS23における鳩目穴かがり縫目データ作成制御においては、入力設定された針振り幅と傾斜状流れ閂部分53bのY方向長さ等の各種のパラメータに基づいて、先ず、流れ閂傾斜角αが求められ、この流れ閂傾斜角αを用いて傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dにおける針落点軌跡を折線状にする鳩目穴かがり縫目データが作成される。ここで、S23における鳩目穴かがり縫目データ作成制御が第2針落ち位置演算手段に相当する。また、S12とS13等が選択指定手段に相当する。
【0045】
このように、流れ閂止め部53の傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dにおける針落点軌跡を円弧状にする為の曲率半径情報Rを入力するだけで、その入力設定された入力数値を用いて、傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dにおける針落点軌跡を円弧状にする内針及び外針の針落ち位置が夫々演算により求められる。それ故、流れ閂止め部53の傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dにおける針落点軌跡を、オペレータの嗜好により、所望の曲率半径Rからなる円弧状に形成することができる。
【0046】
次に、前記実施形態の変更形態について説明する。
1]図4に示す縫目穴かがり縫目データ作成制御において、曲率半径情報を入力設定した場合には、円弧縫製モードを自動的に設定し、曲率半径情報を入力設定しない場合には、折線縫製モードを自動的に設定するようにしてもよい。
2]流れ閂止め部53の内針による内側の縫い状態は縫いが重なるため、内針の針落点軌跡については、従来と同様に折線状であってもよい。
3]Y方向に布送りするとともに、x方向に針揺動するように構成した各種の穴かがりミシンに適用することが可能である。
【0047】
4]傾斜状流れ閂部分53bの両端の角部53c,53dと、鳩目部51の両端の角部51a,51bとを個別に、しかも異なる曲率半径により円弧状に形成できるように構成してもよい。
5]既存の技術や当業者に自明の技術に基いて種々の変更を加えることもあり得る。更に、種々の鳩目穴かがり縫目だけでなく、種々のねむり穴かがり縫目など、種々の穴かがり縫目を縫製する各種の穴かがりミシンに本発明を適用し得ることは勿論である。
【0048】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、送り台にセットされた加工布に流れ閂止め部を含む穴かがり縫目を縫製する穴かがりミシンにおいて、入力手段と、第1針落ち位置演算手段とを設けたので、流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の曲率半径情報が入力設定されると、その入力設定された入力数値を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にするように、流れ閂止め部における少なくとも外針の針落ち位置が演算により求められる。それ故、流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落ち点軌跡を、オペレータの嗜好により、所望の曲率半径からなる円弧状に形成することができる。
【0049】
請求項2の発明によれば、前記穴かがり縫目が鳩目穴かがり縫目であり、入力手段は、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の第2の曲率半径情報を入力可能に構成され、第1針落ち位置演算手段は、入力手段により入力された第2の曲率半径情報を用いて、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧にする針落ち位置を演算するので、この場合には、傾斜状流れ閂部分の両端の角部だけでなく、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を第2の曲率半径の円弧状に形成することができる。しかも、この鳩目部における両端の角部の円弧の曲率半径と、傾斜状流れ閂部分の両端の角部の円弧の曲率半径とを異ならせることができる。その他、請求項1と同様の効果を奏する。
【0050】
請求項3の発明によれば、前記入力手段から入力された少なくとも針振り幅と傾斜状流れ閂部分の針振り方向と直交する送り方向長さを含む入力数値に基づいて、傾斜状流れ閂部分の流れ閂傾斜角を求め、この流れ閂傾斜角を用いて傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を折線状にする針落ち位置を演算する第2針落ち位置演算手段と、第1,第2針落ち位置演算手段を択一的に作動させる選択指定手段とを設けたので、第1針落ち位置演算手段が作動するように選択指定された場合には、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする針落ち位置が演算により求めることができる。
【0051】
一方、第2針落ち位置演算手段が作動するように選択指定された場合には、入力された少なくとも針振り幅と傾斜状流れ閂部分の針振り方向と直交する送り方向長さを含む入力数値に基づいて求めた流れ閂傾斜角を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を折線状にする少なくとも外針の針落ち位置を演算により求めることができる。その他、請求項1又は2と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る鳩目穴かがりミシンの側面図である。
【図2】鳩目穴かがりミシンの送り台の部分平面図である。
【図3】鳩目穴かがりミシンの制御系のブロック図である。
【図4】鳩目穴かがり縫目データ作成制御のフローチャートである。
【図5】流れ閂止め部の縫目データ作成制御のフローチャートである。
【図6】鳩目穴かがり縫目とパラメータとを説明する説明図である。
【図7】傾斜状流れ閂部分の下端角部の下半部分の円弧状針落ち点軌跡を求める説明図である。
【図8】傾斜状流れ閂部分の下端角部の上半部分の円弧状針落ち点軌跡を求める説明図である。
【図9】傾斜状流れ閂部分の両端の角部及び鳩目部の両端の角部を円弧状にした鳩目穴かがり縫目である。
【図10】従来技術に係る流れ閂止め部を有する鳩目穴かがり縫目である。
【符号の説明】
M 鳩目穴かがりミシン
13 送り台
23 操作パネル
35 制御装置
36 CPU
37 ROM
38 RAM
50 鳩目穴かがり縫目
51 鳩目部
51a 角部
51b 角部
53 流れ閂止め部
53b 傾斜状流れ閂部分
53c 角部
53d 角部

Claims (3)

  1. 送り台にセットされた加工布に流れ閂止め部を含む穴かがり縫目を縫製する穴かがりミシンにおいて、
    前記流れ閂止め部の傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の曲率半径情報を入力可能な入力手段と、
    前記入力手段により入力された第1の曲率半径情報を用いて、傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を円弧状にする針落ち位置を演算する第1針落ち位置演算手段と、
    を備えたことを特徴とする穴かがりミシン。
  2. 前記穴かがり縫目が鳩目穴かがり縫目であり、前記入力手段は、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧状にする為の第2の曲率半径情報を入力可能に構成され、
    前記第1針落ち位置演算手段は、前記入力手段により入力された第2の曲率半径情報を用いて、鳩目部の開始端と終了端の角部における針落点軌跡を円弧にする針落ち位置を演算することを特徴とする請求項1に記載の穴かがりミシン。
  3. 前記入力手段から入力された少なくとも針振り幅と傾斜状流れ閂部分の針振り方向と直交する送り方向長さを含む入力数値に基づいて、傾斜状流れ閂部分の流れ閂傾斜角を求め、この流れ閂傾斜角を用いて傾斜状流れ閂部分の両端の角部における針落点軌跡を折線状にする針落ち位置を演算する第2針落ち位置演算手段と、
    前記第1,第2針落ち位置演算手段を択一的に作動させる選択指定手段とを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の穴かがりミシン。
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