JP4070369B2 - フィードバック制御装置および半導体製造装置並びにその温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィードバック制御技術、特に、制御対象の制御量と目標値との偏差を積分して制御信号を生成するフィードバック制御技術に関し、例えば、熱処理炉を備えた半導体製造装置に利用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、拡散装置や熱CVD装置等の熱処理炉を備えた半導体製造装置(以下、熱処理装置という。)においては、熱処理炉を加熱するヒータをフィードバック制御装置によってフィードバック制御することにより、熱処理炉の温度を指定された温度シーケンスに精密に追従させることが行われている。
【0003】
図1に示されているように、熱処理装置に一般的に使用されるフィードバック制御装置は制御対象である熱処理炉のヒータ1の温度(制御量に相当する。以下、括弧内について同じ。)としての熱処理炉の実際の温度を測定する熱電対等の温度センサ(測定部)2を備えており、温度センサ2は測定温度(測定量)を減算部3を介して制御部4に送信し得るように接続されている。制御部4にはヒータ1に電力(操作量)を加えるヒータ駆動装置(操作部)5が接続されており、減算部3には目標温度(目標値)を設定する設定部6が接続されている。
【0004】
そして、減算部3および制御部4は例えばPID演算により、温度センサ2によって測定された測定温度と設定部6からの目標温度との偏差が零になる制御出力信号を出力し、ヒータ駆動装置5に与える。ヒータ駆動装置5は制御出力信号に比例した電力をヒータ1に出力する。このようにしてヒータ1によって加熱される熱処理炉内の温度を目標温度に一致させる閉ループ制御(フィードバック制御)が実行されている。
【0005】
ところで、実際に熱処理装置のヒータをフィードバック制御する場合には、コストや安全性等の制約からヒータ駆動装置5の電力に上限および下限を設定することが必要になる。そこで、従来の熱処理装置のフィードバック制御装置においては制御部に出力制限部(リミッタ)が設けられている。
【0006】
一方、構成が単純であること、直観的に制御則を理解し易いこと、所望の制御性能を備えていることから、制御信号の演算方法としてはPID演算が採用されている。そして、このPID演算に代表されるように、フィードバック制御装置においては目標値と制御量との偏差を無くすために、積分(I)演算が広く用いられる。
【0007】
このように積分演算が用いられる場合においては、例えば、目標値が変更されたり制御量に大きな外乱が加わったりすると、制御出力信号の演算結果がPID演算の場合にはP(比例)演算およびD(微分)演算の影響によって極端に大きくなったり、小さくなったりする。そして、フィードバック制御装置の制御部に出力制限部が設けられた場合においては、演算した制御信号と実際に出力される制御出力信号との不一致が発生して過積分の原因になるため、オーバシュート(行き過ぎ)量またはアンダシュート量が大きくなる所謂リセットワインドアップ現象が発生し易くなる。
【0008】
そこで、従来から、積分演算を用いたフィードバック制御装置においては、図2に示されている制御部10を採用することにより、リセットワインドアップ現象について対策を講じている。すなわち、図2に示されている制御部10はPD演算部11、積分演算部12、加算部13、出力制限部14および積分抑制部15を備えており、次のような作用によって過剰な積分を防止するように構成されている。
【0009】
減算部3において求められた目標値と制御量との差からなる偏差がPD演算部11と積分演算部12と加算部13とにおいてPDI演算され、その演算結果が出力制限部14を通じて制御出力信号として出力される。積分抑制部15は出力制限部14の入力値と出力値とを比較して、入力値と出力値とが異なる時すなわちPID演算の結果が積分抑制部15に設定された許容値域を超えている時には、積分演算部12の積分演算を停止する。この積分抑制部15の積分演算停止処置によって過剰な積分が防止される。
【0010】
なお、積分抑制部を設けて過剰な積分を防止するフィードバック制御装置を述べている文献としては、特開平6−168004号公報がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、熱処理装置においては300℃〜1000℃程度の高温度によって可及的速やかに熱処理炉を昇温させる必要があり、また、熱エネルギーの消費量を可及的に少なく抑制する必要がある。そこで、熱処理装置においてはヒータを大電力によって駆動し、かつ、ヒータを断熱材によって被覆して熱エネルギーの漏洩を小さく抑制するように構成されている。
【0012】
このような熱処理装置においては、設定される目標温度(目標値)によっては制御温度(制御量)が所定の目標温度に整定した時の電力(操作量)が最大出力値に比べて小さくなってしまう。例えば、出力制限部の許容値域が0%〜100%の場合に300℃に整定させたとすると、最終的な制御出力信号の定常値は数%程度になってしまう。
【0013】
すなわち、図3(b)に示されているように、昇温時の積分演算値は急速に大きくなるものの、リセットワインドアップ対策用の積分抑制部のために制御出力信号が最終的に定常値になるまでに長時間を要してしまうため、図3(a)に示されているようにオーバシュート量が大きくなってしまう。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御対象から出力される制御量を迅速かつ正確に目標値へ変化させることができ、かつ、オーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができるフィードバック制御技術およびこれを使用した半導体製造技術並びにその温度制御技術を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するための第一の手段は、制御対象の制御量と目標値との偏差を少なくとも積分して制御信号を生成し、この制御信号を予め設定された第一の制限範囲により制限して制御対象への制御出力信号として出力するフィードバック制御装置において、
前記制御信号が前記第一の制限範囲内であって、かつ、前記第一の制限範囲よりも小さい第二の制限範囲を超えた場合に前記積分を抑制する積分抑制部を備えていることを特徴とする。
【0016】
課題を解決するための第二の手段は、熱処理炉への温度目標値とこの熱処理炉からの温度測定値との偏差を積分演算する積分演算部と、この積分演算部を含む演算部からの制御信号を第一の制限範囲により制限して前記熱処理炉への制御出力信号として出力する出力制限部と、前記制御信号が前記第一の制限範囲と異なる第二の制限範囲を超えた場合に前記積分演算部に積分抑制信号を出力する積分抑制部とを備えていることを特徴とする。
【0017】
課題を解決するための第三の手段は、熱処理炉への温度目標値とこの熱処理炉からの温度測定値との偏差を少なくとも積分して制御信号を生成し、この制御信号を第一の制限範囲により制限して熱処理炉への制御信号として出力する半導体製造装置の温度制御方法において、
前記制御信号が前記第一の制限範囲と異なる第二の制限範囲を超えた場合に前記積分を抑制するように設定されていることを特徴とする。
【0018】
前記した第一の手段によれば、制御信号が第一の制限範囲よりも小さい第二の制限範囲を超えた場合には積分抑制部によって過剰な積分が抑制されるため、制御対象から出力される制御量を迅速かつ正確に目標値へ変化させつつ、オーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができる。
【0019】
前記した第二の手段によれば、積分演算部の制御信号が第一の制限範囲よりも小さい第二の制限範囲を超えた場合には積分抑制部によって積分演算部の過剰な積分が抑制されるため、熱処理炉の温度を迅速かつ正確に目標温度へ変化させつつ、熱処理炉の温度におけるオーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができ、半導体製造装置の品質や信頼性および性能を向上させることができる。
【0020】
前記した第三の手段によれば、制御信号が第一の制限範囲よりも小さい第二の制限範囲を超えた場合には積分演算部の過剰な積分が抑制されるため、熱処理炉の温度を迅速かつ正確に目標温度へ変化させつつ、熱処理炉の温度におけるオーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができ、半導体製造装置の温度制御方法の品質や信頼性および性能を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0022】
本実施形態において、本発明に係るフィードバック制御装置は、本発明に係る半導体製造装置の一実施形態である半導体ウエハに熱処理を施す熱処理装置に搭載されており、半導体ウエハが搬入された熱処理炉を加熱するためのヒータをフィードバック制御することにより、本発明の一実施形態である熱処理装置の温度制御方法を実施するように構成されている。
【0023】
すなわち、図4に示されているように、半導体ウエハに熱処理を施す熱処理装置の熱処理炉(以下、プロセスチューブという。)20は、フィードバック制御装置の制御対象であるヒータ21によって加熱されるようになっており、プロセスチューブ20の処理室内には熱電対からなる温度センサ22がプロセスチューブ20内の温度(制御量)を測定し得るように設置されている。温度センサ22は減算部23を介して制御部24に接続されており、測定温度(測定量)を送信し得るように構成されている。制御部24にはヒータ21に電力(操作量)を加えるヒータ駆動装置(操作部)25が接続されており、減算部23には目標温度(目標値)を設定する設定部26が接続されている。
【0024】
制御部24はPD演算部31、積分演算部32、加算部33、第一の出力制限部34、第二の出力制限部35および積分抑制部36を備えており、後述する作用を実行するように構成されている。
【0025】
第一の出力制限部34および第二の出力制限部35は上限値と下限値とが予め設定され、入力値が上限値よりも大きい時には上限値を出力し、入力値が下限値よりも小さい時には下限値を出力するように構成されている。ここでは、第一の出力制限部34は制御出力信号の出力許容範囲に従って、上限値が100%に、下限値が0%に設定されている。
【0026】
第二の出力制限部35の上限値と下限値とは第一の出力制限部34の出力範囲であって、かつ、現在の目標温度(目標値)に対する制御出力信号の定常値が上下限値の中間値となるように設定されている。ここでは、第一の出力制限部34の下限値と上限値との範囲が0%〜100%、制御出力信号の定常値が3%として、第二の出力制限部35の下限値と上限値との範囲は0%〜6%に設定されている。すなわち、第二の出力制限部35が規定する第二の制限範囲は、ヒータ21の温度(制御対象の制御量)が目標温度(目標値)に整定しているときのヒータ(制御対象)21への制御出力信号を基準値として、この基準値から正負両側に略同じ値であるように設定されている。
【0027】
次に、前記構成に係る熱処理装置に搭載されたフィードバック制御装置の作用を説明することにより、本発明の一実施形態である熱処理装置の温度制御方法を説明し、図5および図6によって過剰な積分の防止の作用を説明する。
【0028】
設定部26による目標温度が上昇されると、減算部23は設定部26からの目標温度と温度センサ22からの測定温度との差からなる偏差を出力し、PD演算部31および積分演算部32にそれぞれ送信する。PD演算部31は偏差についてのPD演算の結果を加算部33に送信し、積分演算部32は偏差についての積分演算の結果を加算部33に送信する。加算部33は両者の加算結果である制御信号を第一の出力制限部34、第二の出力制限部35および積分抑制部36にそれぞれ送信する。第一の出力制限部34は制御信号が制御出力信号の出力許容範囲内である場合には、制御出力信号としてヒータ駆動装置25に送信する。
【0029】
ヒータ駆動装置25はその制御出力信号に比例した電力をヒータ21に供給する。この電力によってヒータ21はプロセスチューブ20を加熱するため、プロセスチューブ20の処理室の温度は上昇する。上昇した温度は温度センサ22によって測定され、測定温度として減算部23に送信される。以降、前述した閉ループが繰り返されることにより、プロセスチューブ20の処理室の温度は目標温度に整定される。
【0030】
以上の閉ループ制御において、第二の出力制限部35は加算部33からの制御出力が出力許容範囲の0%〜6%の範囲外である場合には、制御信号を上限値または下限値に制限して積分抑制部36の一方の端子に入力する。積分抑制部36は第二の出力制限部35からの制御出力と加算部33からの制御信号とを比較し差値が積分抑制部36に設定された許容値域を超えている時には、積分演算部32の積分演算を停止する。この積分抑制部36の積分演算停止処置によって過剰な積分が防止される。
【0031】
ところで、第二の出力制限部が設けられていない図2に示されている従来例においては、制御出力信号の定常値が制御出力信号の最大値に比べて非常に小さい場合、例えば、制御出力の範囲が0%〜100%で定常値が3%であった場合には、制御出力が3%〜100%の大きな範囲にある時に積分が「正」に行われ、制御出力が0%〜3%の小さな範囲にある時に積分が「負」に行われ、それ以外ではリセットワインドアップ用の積分抑制部によって積分されないため、積分値が早く増加しゆっくりと減少するというアンバランスな積分が実行されることになる。
【0032】
しかし、本実施形態においては、第二の出力制限部35が設けられていることにより、「正負」の積分が同じ範囲である「3%〜6%」と「0%〜3%」との間でそれぞれ実行されるため、「正」に過剰に積分することなく、定常値に早く収束する。次に、第二の出力制御部35の作用効果を図5および図6について説明する。
【0033】
図5(a)は本実施形態のステップ応答と図2に示された従来例のステップ応答とを比較して示した線図であり、図5(b)はその時の本実施形態における積分値を示した線図である。ここで、目標値「100」の制御出力信号の定常値は、3%である。
【0034】
従来例の積分値を示した図3(b)と本実施形態の積分値を示した図5(b)との比較から明らかな通り、本実施形態においては温度(制御量)の上昇時に積分が抑制され、早く定常値に収束される。その結果、図6(a)に示されている通り、本実施形態の場合の整定時間は従来例の場合の整定時間に比べて大幅に短縮されることなる。すなわち、図6(a)は本実施形態によれば制御性能が向上されることを示している。
【0035】
図6は過剰な積分の防止の作用を説明するための各線図であり、縦軸には%、横軸には時間がそれぞれ取られている。図6(a)の曲線K31(以下、K31という。)は本実施形態におけるPD演算部31の出力波形であり、曲線K11(以下、K11という。)は図4に示された従来例におけるPD演算部11の出力波形である。図6(b)の曲線K32(以下、K32という。)は本実施形態における積分演算部32の出力波形であり、曲線K12(以下、K12という。)は図4に示された従来例における積分演算部12の出力波形である。図6(c)の曲線K34(以下、K34という。)は本実施形態における第一の出力制限部34の出力波形すなわち制御出力信号の波形であり、曲線K14(以下、K14という。)は図2に示された従来例における第一の出力制限部14の出力波形すなわち制御出力信号の波形である。
【0036】
図6(c)中、範囲Lは第二の出力制限部35の下限値および上限値の範囲(以下、値域という。)を示しており、ここでは「0%〜6%」になっている。なお、第二の出力制限部35の出力波形はK34が「0%〜6%」の範囲内で制限されたものとなる。ちなみに、本実施形態における第一の出力制限部34および従来例における第一の出力制限部14の値域は「0%〜100%」である。
【0037】
まず、K12とK14との変化について説明する。第一の時点(以下、t1 という。各時点について同じ。)において、K14が100%を超えているので、K12はその値を保持する。t2 において、K12は演算を再開する。t5 において、K14が0%未満であるので、K12は積分を停止する。t7 以降はK14が0%になったり、数%になったりを繰り返すため、K12は徐々に減少する。
【0038】
次いで、K32とK34との変化について説明する。t1 において、K34が6%を超えているので、K32は積分を停止する。t3 において、K32は積分を再開する。t4 において、K34が0%未満であるので、K32は積分を停止する。t6 において、K32は積分を再開する。
【0039】
ステップ開始直後(横軸0.5〜2程度)におけるK14とK34との相違はK12とK32との相違に基づく。そのため、K12の積分停止はK32の積分停止よりも遅くなり、それだけ、K14の行き過ぎ量がより一層大きくなる。t7 以降にK12が速やかに減少しない理由は、K11が大きな負値すなわちオーバシュートしているため、K12が減少すると、K14が0%未満となり、積分停止してしまうアンチリセットワインドアップの機能が発揮されているためである。つまり、ステップ開始直後の過剰積分が原因でオーバシュートが起こるので、そのときの積分を第二の出力制限部35を設けることにより停止するように工夫したのが本実施形態に係るフィードバック制御装置である。
【0040】
これを理解し易く説明する。今、ステップ直後の安定時の制御出力信号が「0」に近い値、例えば、3%の時を考えると、ヒータの温度(制御量)を上昇させることができる能力は、3〜100%の「97」ポイントあるが、ヒータの温度を下降させる能力は0〜3%の「3」ポイントしかない。つまり、ヒータの温度を上昇させる能力は大きいが、温度を下降させる能力はかなり小さいことになる。このため、制御出力信号のオーバシュートが一度起こると、なかなか整定しないことになる。ところが、従来例のフィードバック制御装置10においてPID演算を実行しているPD演算部11および積分演算部12はこの事情を認識していないことにより、ヒータの温度上昇能力と温度下降能力とを同一として取り扱うため、オーバシュートを引き起こすことになる。
【0041】
そこで、本実施形態においては、PID演算の特にオーバシュートの原因になり易い積分演算部32に「ヒータの温度を下降させる能力が小さい」という事情を第二の出力制限部35によって教示する工夫が創意されている。
【0042】
なお、オーバシュートの場合について説明したが、安定時の制御出力信号が例えば97%の時もアンダシュートの解決方法として説明することができる。また、安定時の制御出力信号が50%の場合には通常の閉ループが繰り返されることになる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱処理装置の熱処理炉における温度を迅速かつ正確に目標温度へ変化させつつ、熱処理炉の温度におけるオーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができるため、熱処理装置の熱処理の品質や信頼性および製造歩留りを向上させることができ、しいては、半導体製品の品質や信頼性および性能を向上させることができる。
【0044】
図7は本発明の他の実施の形態であるフィードバック制御装置が搭載された熱処理装置を示すブロック図である。
【0045】
本実施形態が前記実施形態と異なる点は、第二の出力制限部35に定常値テーブル37が接続されている点である。定常値テーブル37は目標温度(目標値)が入力され、その目標温度に対応した制御出力信号の定常値を出力して第二の出力制限部35に送信するように構成されている。定常値テーブル37は制御温度(制御量)が目標値に整定している時の制御出力信号の定常値を幾つか予め求めて記憶させることにより構成してもよいし、適当な近似式による変換により構成してもよい。
【0046】
本実施形態によれば、定常値テーブル37によって定常値を適宜に変化させることができるため、各状況に応じた過剰な積分の防止機能を発揮することができ、前記実施形態の性能をより一層高めることができる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0048】
例えば、本発明に係るフィードバック制御装置は、熱処理装置に搭載するに限らず、半導体ウエハに成膜を施すガス処理炉を備えた半導体製造装置、真空排気炉を備えた半導体製造装置等の半導体製造装置全般に搭載することができるし、熱処理装置のヒータの温度制御方法に限らず、他の半導体製造装置のヒータの温度制御方法や半導体製造装置のガス流量制御方法および圧力制御方法等の半導体製造装置の制御方法全般に適用することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、制御信号が第一の制限範囲よりも小さい第二の制限範囲を超えた場合には積分抑制部によって過剰な積分が防止されるため、制御対象から出力される制御量を迅速かつ正確に目標値へ変化させつつ、オーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができる。
【0050】
例えば、熱処理炉を備えた半導体製造装置にフィードバック制御装置が搭載された場合には、熱処理炉の温度を迅速かつ正確に目標温度へ変化させつつ、熱処理炉の温度におけるオーバシュートやアンダシュートを小さく抑制することができ、半導体製造装置の熱処理の品質や信頼性および製造歩留りを向上させることができ、しいては、半導体製品の品質や信頼性および性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のフィードバック制御装置を示すブロック図である。
【図2】従来の他のフィードバック制御装置を示すブロック図である。
【図3】図2の作用を説明するための各線図である。
【図4】本発明の一実施形態であるフィードバック制御装置が搭載された熱処理装置を示すブロック図である。
【図5】その作用を説明するための各線図である。
【図6】過剰な積分の防止作用を説明するための各線図である。
【図7】本発明の他の実施形態であるフィードバック制御装置が搭載された熱処理装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
20…プロセスチューブ(熱処理炉)、21…ヒータ(制御対象)、22…温度センサ(測定部)、23…減算部、24…制御部、25…ヒータ駆動装置(操作部、26…設定部、31…PD演算部、32…積分演算部、33…加算部、34…第一の出力制限部、35…第二の出力制限部、36…積分抑制部、37…定常値テーブル。
Claims (6)
- 制御対象の制御量と目標値との偏差を少なくとも積分して制御信号を生成し、この制御信号を予め設定された第一の制限範囲により制限して制御対象への制御出力信号として出力するフィードバック制御装置において、
前記第一の制限範囲が設定され、前記制御出力信号を出力する第一の出力制限部と、
前記制御対象からの制御量が目標値に一致しているときの制御対象への制御出力信号を基準値として、この基準値から正負両側に略同じ値であるように第二の制限範囲が設定される第二の出力制限部と、
前記制御信号が前記第一の制限範囲内であって、かつ、前記第一の制限範囲よりも小さい前記第二の制限範囲を超えた場合に前記積分を抑制する積分抑制部と、
を備えていることを特徴とするフィードバック制御装置。 - 熱処理炉内の温度を測定する測定部と、温度目標値を設定する設定部と、前記測定部によって測定された温度測定値と前記設定部に設定された温度目標値との偏差が零になる制御出力信号を出力し、半導体ウエハが搬入された熱処理炉を加熱するためのヒータを制御することにより、前記熱処理炉の温度を前記温度目標値に一致させる制御部とによって構成される半導体製造装置であって、
前記制御部は、
前記温度目標値と前記温度測定値との偏差を積分演算する積分演算部と、
この積分演算部を含む演算部からの制御信号を第一の制限範囲により制限して前記熱処理炉への制御出力信号として出力する第一の出力制限部と、
前記第一の制限範囲内であって前記ヒータの温度が前記目標値に一致しているときの制御出力信号を基準値として第二の制限範囲に設定される第二の出力制限部と、
前記制御信号が前記第一の制限範囲と異なる前記第二の制限範囲を超えた場合に前記積分演算部に積分抑制信号を出力する積分抑制部と、を備えている、
ことを特徴とする半導体製造装置。 - 前記基準値が上限値下限値の中間値となるように設定されている請求項2記載の半導体製造装置。
- 前記基準値は、前記設定部に設定される温度目標値に応じて前記第二の出力制限部に設定される請求項2記載の半導体製造装置。
- 前記基準値は、数%である請求項2記載の半導体製造装置。
- 熱処理炉内の温度を測定する測定部と、温度目標値を設定する設定部と、前記測定部によって測定された温度測定値と前記設定部に設定された温度目標値との偏差が零になる制御出力信号を出力し、半導体ウエハが搬入された熱処理炉を加熱するためのヒータを制御することにより、前記熱処理炉の温度を前記温度目標値に一致させる制御部と、によって構成される半導体製造装置の温度制御方法であって、
前記温度目標値と前記温度測定値との偏差を少なくとも積分して制御信号を生成し、この制御信号を第一の制限範囲により制限して前記熱処理炉への制御出力信号として出力する半導体製造装置の温度制御方法において、
前記第一の制限範囲であって、かつ、前記ヒータの温度が前記温度目標値に一致しているときの制御出力信号を基準値として、前記基準値が上限値下限値の中間値となるように設定される第二の制限範囲を超えた場合に、前記積分が抑制されることを特徴とする半導体製造装置の温度制御方法。
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