JP4067721B2 - 沸騰水型原子力発電プラント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は構造材の応力腐食割れを防止して健全性を維持し、安全で長寿命な原子力発電プラントに関する。
【0002】
【従来の技術】
高温高圧水を長期に亘り使用するプラント、特に高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWR と記す)では炉内構造物の構造材料の経年劣化現象の1つに応力腐食割れ(以下、SCC と記す)現象がある。SCC は応力、腐食環境、材料の3因子が重畳して発生する現象であり、その緩和技術として、残留応力を低減させる技術、水質環境改善技術、及び耐SCC 特性を有する材料の採用や表面処理といった材料対策などが提案されている。
【0003】
応力緩和によるSCC 緩和法では、例えば特開平7−266230号公報に開示されているように、ショットピーニングによる残留応力改善方法が具体的に記載されている。これは水中又は水中と同等な環境中で金属材料表面に金属小球を衝突させ、その衝撃エネルギーにより金属材料表面に圧縮応力を付与するものである。また、特開平7−248397号公報ではレーザーピーニングによる圧縮応力の付与方法が開示されている。
【0004】
腐食環境緩和によるSCC 緩和法では、例えば特開平5−256993号公報に開示されているように、水素注入技術の有効性が確認されている。これは、炉水中に水素ガスを供給し、炉水中の水素と酸素及び過酸化水素を再結合させ、炉内機器の腐食電位を低下させることにより、SCC の発生及び進展を抑制させることに基づいている。
【0005】
また、耐SCC 特性を有する材料としてはオーステナイト系ステンレス鋼では316L鋼など、炭素の含有率を低下させた金属材料が有用であることが知られているが、一般に、SCC が起こるのは溶接や熱処理工程では不可避に受ける加熱がもたらした、いわゆる鋭敏化組織部分の割れである。
【0006】
その証左としてはSCC 感受性が高い304 鋼では結晶粒界に炭化物(M23C6 )の析出反応を起こしやすいことが確認されている。そこで、炭素含有量を低下させ炭化物の生成を抑制することが有効な対策となるわけである。
【0007】
さらに、例えば特開昭59−177383号公報にはステンレス鋼製躯体の腐食媒体との界面にロジウム等の白金族のメッキを施すステンレス鋼のSCC 緩和技術が開示されている。
【0008】
これら各々のSCC 緩和法は有効なものであるが、各々に課題を有しており、単一技術だけで完全にSCC を抑制できるものではない。このような背景から、安全を最優先する原子力発電プラントにおいては依然として応力腐食割れ緩和技術は重要な開発課題となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のSCC 緩和技術が持つ課題は以下のとおりである。
まず、ショットピーニングやレーザーピーニングなどによる応力緩和技術は既設プラントに適用されている技術であり、プラントにおける管理区域内作業が主体となる。施工にあたっては、実際の施工工程に加えて、管理区域内への膨大な機材の持ち込みや、その撤去などその準備に膨大な作業量を要する。
【0010】
一般的にこれら技術の施工作業はプラントの定期検査期間中に計画されるが、その作業量から定期検査期間の延長は免れない。言い換えれば、非常に高コストであると言わざるを得ないのである。
【0011】
また、特に問題となる点は、その施工部位が限られていることである。これはシュラウドの溶接線などのスペース的に余裕のある大物の施工に最適であるが、原子炉底部のスタブチューブ周りの溶接線といった狭隘部に対しては施工が非常に困難であることを意味している。
【0012】
水素注入による腐食環境緩和技術は、炉水に注入される過剰の水素ガスによって気液移行のバランスが変化し、タービン系の線量率が上昇する大きな課題を有している。
【0013】
そこで、近年、タービン系の線量率があまり上昇しない程度の少量の水素注入で目的を達し得る技術が知られている。これは貴金属注入技術と称され、例えば特開平10−186085号公報に開示されている。これによれば、炉水温度が低いプラント停止操作時や昇温操作時にプラチナやバナジウムといった貴金属を炉水に注入し、構造材の表面に付着させることにより、少量の水素で構造材の腐食電位を低下させることができるとしている。
【0014】
しかしながら、上記方法では当然のことながら燃料被覆管表面にも貴金属が付着することになり、燃料の健全性が懸念される。また、貴金属は容易に溶解しないことから、この技術ではアセチルアセトナートなどの有機金属化合物などとして添加が提案されており、取り扱う上でその毒性や爆発性に注意する必要があるばかりでなく、注入後にあっては構造材への影響も無視できないものと考えられる。
【0015】
材料改善によるSCC 緩和技術は建設時や機器の交換時にのみ適用が可能な技術であり、一般的には運転中の原子力発電プラントに対しての対策としては成立しないのが実情である。
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、建設中で供用前沸騰水型原子力発電プラント、建設後の供用中沸騰水型原子力発電プラント、供用中の沸騰水型原子力発電プラントにおいて接液部を有する構造材の少なくとも一部を交換する沸騰水型原子力発電プラント、又は除染後の沸騰水型原子力発電プラントなどの状態や運転中の状態の沸騰水型原子力発電プラントに対しても適用でき、SCC の発生を抑制し得る沸騰水型原子力発電プラントを提供することにある。
また、SCC による亀裂進展を抑制し、全面腐食を抑制して構造材の健全性を維持し、安全で長寿命な沸騰水型原子力発電プラントを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、建設中の供用前構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする。これにより、構造材の健全性を向上させることができる。なお、構造材の接液部表面は材料の表面である。
【0018】
請求項2の発明は、高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、建設後の供用中に構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする。これにより、構造材の健全性を向上させることができる。
【0019】
請求項3の発明は、一次冷却材接液部を有する構造材の少なくとも一部を交換する高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、前記構造材表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする。これにより、構造材の健全性を向上させることができる。
【0020】
請求項4の発明は、高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、除染後の構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする。これにより、構造材の健全性を向上させることができる。
【0021】
請求項5の発明は、前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、レーザークラッディング、メッキ、ドライプレーティング、溶射、イオン注入、ライニング、プレフィルミング、コーティング、塗布から選択された少なくとも1つの付与手段によることを特徴とする。
【0022】
この発明では、プラントの履歴や状態によって上記付与手段が異なり、対象となる構造材にアクセスし、各種の付与手段を選択することにより容易に目的を達成することができる。
【0023】
請求項6の発明は、前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、前記構造材の一次冷却材接液部表面にクロム酸化物層を生成させた後、亜鉛イオンを冷却材中に注入することを特徴とする。
【0024】
この発明では、供用中のプラントや除染後のプラントにおいては対象部位へのアクセス性の問題、つまり物理的にアクセス不能であったり、又は高放射線場で作業不能である場合、薬液の注入やプラントの運転による間接的な方法で目的を達成することができる。
【0025】
請求項7の発明は、前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、冷却材中にクロム酸イオンと亜鉛イオンを同時に注入することを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、構造材表面に亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与することができ、構造材の健全性を向上させることができる。
【0027】
請求項8の発明は、前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する処理の前工程として、ショットピーニング又はレーザーピーニング処理により前記構造材表面に圧縮応力場を付与してなることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、ピーニング処理を施すことにより、健全性のさらなる向上を図ることができる。なお、ピーニング処理の程度によって効果が変わるだけでなく、対象となる部位の材料や履歴、曝されている環境で効果の程度が変化することはもちろんである。
【0029】
請求項9の発明は、前記構造材の一次冷却材接液部表面にクロム酸化物層を付与するにあたり、冷却材中に還元剤を共存させた環境下でクロム酸イオンを注入することを特徴とする。この発明によれば、構造材の健全性を向上させることができる。
【0030】
請求項10の発明は、前記構造材の一次冷却材接液部にクロム酸化物層を付与するにあたり、冷却材中の酸素濃度、又は過酸化水素濃度を調整することを特徴とする。この発明によれば、クロム含有金属の腐食を促進させることができる。
【0031】
請求項11の発明は、前記クロム酸イオンを冷却材中に注入するためにクロム注入装置を設けてなることことを特徴とする。
【0032】
この発明において、クロムを注入する部位は原子炉冷却材再循環系や原子炉冷却材浄化系出口などの高温高圧系に直接注入するのが最も効果的であるが、復水浄化系出口以降の低温部でも支障はない。ただし、低温部注入の場合には注入したクロム酸イオンが炉内に達する前に給水加熱器において一部は付着する可能性がある。そこで、この場合にはクロム注入装置の裕度を多めに持たせる配慮が必要となる。
【0033】
なお、給水加熱器に付着する量は僅かであり、さらに付着によって防蝕性が高まりこそすれ、なんらマイナスの問題は発生しない。注入するクロム酸イオン濃度については高濃度の方が短時間で処理が終了するものの、実機BWR で実績のある100ppb以下で行えば、なんら問題が発生する危険性はない。
【0034】
請求項12の発明は、冷却材中に還元剤を共存させた還元水質環境下で前記クロム酸イオンと亜鉛イオンとを同時に冷却材中に注入することを特徴とする。還元剤としては水素を使用する。これによりさらなる構造材の健全性の向上を図ることができる。
【0035】
請求項13の発明は、前記亜鉛イオンを冷却材中に注入するために亜鉛注入装置を設けてなることを特徴とする。亜鉛を注入する際には給水中及び原子炉冷却材中の鉄クラッドをできるだけ抑制させる。亜鉛イオン濃度は原子炉冷却材、つまり炉水中で100ppb以下とする。亜鉛注入装置は原子炉再循環系の各配管に接続するのが望ましく、また原子炉浄化系出口に設けることもできる。
【0036】
請求項14の発明は、前記亜鉛イオンは、その同位体構成比において亜鉛64,亜鉛68,亜鉛70のうち1つ又は複数の同位体の含有率が、天然に存在する亜鉛64,亜鉛68,亜鉛70の含有率より低下させた亜鉛イオンであることを特徴とする。この発明によれば、二次的な放射能を発生させることがなく、副次的な影響を抑制し、その有効性をより一層高めることができる。
【0037】
請求項15の発明は、前記クロム酸イオン又は亜鉛イオンを注入するにあたり、腐食抑制効果を確認するための腐食モニタと、炉内構造物への付着放射能の推移を確認するための放射能付着モニタと、イオン種濃度を測定するためのイオン種濃度モニタとを具備し、前記各々のモニタのデータから注入するイオン種濃度を自動的に設定することのできるイオン種濃度調整システムを設けてなることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、各種モニタのデータを連続的又は一定時間毎に採取し、注入するイオン種に対し、その許容濃度以下の条件で最適な濃度を算出し、各注入装置の注入ポンプを自動調整して注入を行うことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1から図5により本発明に係る原子力発電プラントの第1の実施の形態を説明する。
本発明者らはSCC 緩和技術として共存イオン種の効果について継続的に試験を実施した。これはイオン種の注入といった手段によれば、原子炉内のどのような部位においてもほぼ均一な水質環境を達成し得ることが背景にあり、ピーニングの狭隘部における施工性の問題、水素注入によるタービン系線量率上昇の問題、材料対策による適用時期が限定される問題などを全て解決できると考えた末の結果である。
【0040】
本発明者らは低ひずみ引張試験(Slow Strain Rate Tensile:SSRT)装置、及び亀裂進展試験(Compact Tension :CT)装置を駆使し、微量の各種イオン種存在下で鋭敏化ステンレス304 鋼試験片を用いた材料破壊試験を行った。その膨大なスクリーニング試験の結果、亜鉛イオンとクロム酸イオンが液中に共存すると材料のSCC 感受性が低下することを見出した。
【0041】
図1は700 ℃、2時間の鋭敏化処理を施したステンレス304 鋼を試験体とし、原子炉再循環系の環境を模擬した水質条件下(溶存酸素濃度/溶存水素濃度=200 /25ppb )で行ったSSRT試験の結果を示したものである。試験では各々のイオン濃度を10ppb に制御し、歪速度5×10-5sec -1で試験体が破壊するまで引張試験を行った。図1では純水条件における破断時間を1に規格化し、各種イオン存在下における破断時間とを相対値で比較している。
【0042】
この試験では従来得られている知見と同様に僅か10ppb 程度の塩素イオンや硫酸イオンなどの陰イオンの存在によって破断時間が急激に短縮し、SCC 感受性が増加したと推定される結果が得られた。試験体の破断面は典型的な粒界型応力腐食割れの様相を呈していたことから、試験方法及びその結果については信頼性が高いものと判断している。
【0043】
一方、10ppb のニッケルイオン、亜鉛イオン、クロム酸イオン、銅イオンなどのイオン種の存在はSCC 感受性に顕著な影響を与えておらず、これも多くの研究者が報告している結果と一致していた。ところが、亜鉛イオンとクロム酸イオンが各々10ppb 共存した試験では破断に至るまでの時間が純水条件より長くなり、SCC 感受性が低下したと推定される結果が得られたのである。
【0044】
次に、CT試験装置を用い亀裂進展試験をクロム酸イオン単独存在、亜鉛イオン単独存在、及び両イオン共存の3条件で連続的に実施した。本試験における供試体は溶接金属であるインコネル182 を0.8 インチ厚のCT型試験片)0.8T−CT試験片)に加工し、予亀裂を入れた形状を有しており、応力拡大係数は30Mpa √m 一定を目標とした。
【0045】
なお、試験水質はBWR 炉底部の環境で水素注入を行っていない通常水質を模擬した条件(溶存酸素濃度/溶存水素濃度/過酸化水素=200 /25/100ppb)とした。試験では亀裂長さを電位差法によって連続測定しながら、水質を約300 時間毎に無添加条件、クロム酸イオン単独存在条件、亜鉛イオン単独存在条件、亜鉛イオンとクロム酸イオン共存条件と、変化させた。なお、各イオン種濃度は10ppb を目標とした。
【0046】
図2(a)は試験結果を示しており、横軸(X軸)に試験時間、縦軸(Y軸)に亀裂長さを示している。亀裂進展速度は無添加条件で4×10-7sec -1と測定され、その後、クロム酸イオン単独存在条件、亜鉛イオン単独存在条件と変化させても有意な変化が見られなかった。ところが、亜鉛イオンとクロム酸イオン共存条件においてその鈍化が測定された。この期間における亀裂進展速度は2.5 ×10-7sec -1を示しており、40%弱の亀裂進展の抑制効果が得られたと評価された。
【0047】
また、図2(b)は応力拡大係数を図2(a)の1/2 とした条件での結果である。亜鉛イオン、クロム酸イオン単独存在条件における亀裂進展速度は約3×10-8sec -1となり、図2(a)の約1/10に低下していたが、亜鉛イオン、クロム酸イオンが共存する条件では亀裂進展速度がほぼ停止したデータが得られた。
【0048】
試験後の分析結果によれば、試験体表面には亜鉛を含有したクロムとの複合酸化物層が生成しており、X線回折法による結晶解析では亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層と同定された。さらに亀裂部位を強制破断させ、接液部位を観察したところ、一般表面と同様に亜鉛を含有したクロムとの複合酸化物層が生成していることを確認した。
【0049】
これらの結果を総合的に勘案し、本発明者らはこの複合酸化物層が材料表面を被覆することによって材料のSCC 感受性と亀裂進展速度を低下させたと解釈した。さらに、試験体の詳細な酸化皮膜分析を進めたところ、亜鉛イオン、クロム酸イオンが共存する条件では酸化皮膜生成量が少なく材料の全面腐食速度をも低下させている可能性があることを突き止めた。
【0050】
これを確認するために、亜鉛イオンとクロム酸イオンを共存させ、BWR 一次系における腐食環境を模擬した環境下でステンレス316L鋼を通水式の高温高圧ループに浸漬し、500 時間の腐食試験を行った。試験は縦:横:厚さ=20mm:10mm:2mmの短冊状の試験体を用い、原子炉再循環系の環境を模擬した水質条件下(溶存酸素濃度/溶存水素濃度=200 /25ppb )で行った。
【0051】
試験体は1/2 インチの配管中に固定治具を製作して保持し、表面流速は約50cm/sec と算出された。イオン種は微量高圧ポンプを用いて、試験体部位の直前に注入し、目標濃度は各々10ppb とした。さらに、放射能トレーサとして58Coを約0.08Bq/mlの濃度で同時に注入した。
【0052】
図3(a)は浸漬後、試験体に付着した58Co量をゲルマニウム半導体検出器で測定した結果を示している。放射能付着量はクロム酸イオンの存在によっては変化しなかったが、亜鉛イオンの存在、さらには亜鉛イオン+クロム酸イオンの共存条件で約1/2 に抑制されていた。その後、試験体を詳細に分析し、腐食皮膜量を比較した結果が図3(b)である。
【0053】
これによれば、放射能付着量が抑制された亜鉛イオン、亜鉛イオン+クロム酸イオンの条件では皮膜量が明らかに減少していることが確認できた。つまり、亜鉛イオン、又は亜鉛イオン+クロム酸イオン水質では、材料の全面腐食速度が抑制された。その結果として皮膜中に取り込まれる放射能量が低減されたと解釈されるデータが得られたのである。
【0054】
図4は走査型電子顕微鏡による試験体の接液部表面に付与した腐食皮膜の観察結果を示している。図4中、ぶつぶつと米粒のように見える部分が母材表面に形成された複合酸化物層で、この複合酸化物層は1μm以下の細かな粒子で構成されており、均一で緻密に成長している様子が観察される。大きめの白い粒は試験中に付着した不純物であり、鉄の酸化物と推定される。溝のように見える部分は寸法出しする際のバイトの跡である。本発明者らはこの緻密な複合酸化物層が母材構成金属の拡散障壁となり、全面腐食を抑制されたと推定した。
【0055】
また、低応力条件で亀裂進展速度がほぼ停止することに関しては、亀裂内部に亜鉛クロマイトとクロム酸化物との複合酸化物層が生成し、新生面の出現を抑制していると理解される。図5(a)、(b)はこれを模式的に示したものである。引張応力場で粒界型応力腐食割れが発生すると、図5(a)のように粒界が解離して亀裂が進展したような様相を呈する。
【0056】
このような状況下で液相中に亜鉛イオンとクロム酸イオンが共存すると、図5(b)に示すように亀裂内部表面を亜鉛クロマイトとクロム酸化物との複合酸化物層が覆い、これが亀裂先端におけるクロムなどの溶出を抑制するものと推定される。
【0057】
さらに、原子力発電プラントにおける実際の使用環境において構造材が受ける応力は、加速条件で行われる各種材料試験で用いられる応力よりもかなり低いことを考慮すれば、原子力発電プラントでは本発明の適用により亀裂進展速度がほぼ停止する事態が一般的と考えることもできる。
一方、材料の全面腐食を抑制することによって放射能の発生を抑制し、最終的には被曝低減効果がある。以下にその理由を説明する。
【0058】
まず、原子力発電プラントにおいては、1)中性子の高照射下にある炉心構造材が放射化され、その一部が溶解して原子炉水中に放出される放射能、2)原子炉内の構造材から発生した腐食生成物、又は、給水系や復水系材料の腐食によって発生し、原子炉内に持ち込まれた腐食生成物が燃料被覆管表面に付着し、中性子の照射により放射性腐食生成物に変換され、その後、溶解や剥離によって原子炉水(冷却材)中に放出される放射能、3)放射性腐食生成物の発生や移行を抑制するなどのために水質コントロール等の目的で意図的に添加した化学種が腐食生成物と同様に燃料被覆管表面に付着し、中性子の照射により放射化物に変換され、その後、溶解や剥離によって原子炉水中に放出される放射能など発生プロセスが異なる様々な放射能が存在している。
【0059】
なお、これらの放射能は溶解現象で放出された場合は主にイオン状で、剥離現象で放出された場合は主に粒子状で存在する。これら各種のプロセスを経て発生した放射能は、一次冷却材を媒体としてプラントの一次系全領域に達し、各系統を汚染させることとなる。
【0060】
また、一次冷却材の接液部はほぼ金属材料であり、汚染ということは、局所的に見ればこの金属材料に放射能が取り込まれる現象に他ならない。さらに、粒子状の放射能の取り込みは、金属材料表面における物理的な吸着や重力沈降による付着が主なプロセスであり、一方、イオン状の放射能は、金属材料が腐食する際、表面に生成される腐食皮膜中に酸化物として共析したり、同位体交換反応によって取り込まれたりする。
【0061】
たとえば、60Co2+は鉄鋼材料の腐食に伴い次の2式で皮膜中に取り込まれると考えられている。
Fe2 O3 +60Co2++H2 O=60CoFe2 O4 +H2
60Co2++CoFe2 O4 =Co2++60CoFe2 O4
【0062】
このようにして一次冷却材と接した金属材料は、放射能を取り込み、その量は腐食皮膜の成長によって経年的に増加する量と、放射性壊変によって取り込まれた放射能量が減少する速度とがバランスするまで、増加の一途をたどることになる。
【0063】
配管表面や機器表面に放射能が蓄積されると、空間線量率が高まり、直接その部位の点検を行う作業員の被曝線量が増加するばかりでなく、付近で作業を行う作業員の被曝線量をも増加させ、ひいては、プラントの定期検査期間における総被曝線量(トータルマンシーベルト)を確実に押し上げる。
【0064】
上記の3種類の放射能の発生と移行のプロセスにおいて、材料の全面腐食を抑制することによって1),2)の放射能の発生を抑制でき、結果的には被曝低減効果が期待されることとなる。
【0065】
以上の試験結果から、接液部の材料表面に亜鉛を含有させたクロムとの複合酸化物層を存在させることによってSCC に起因する亀裂の発生を抑制できること、たとえ亀裂が既に存在する部位においてもその進展を抑制できること、加えて材料の全面腐食速度を抑制できることの確信を得、このことはプラントの健全性維持と、長寿命化に及ぼす効果が大きくなる。
【0066】
本実施の形態に係る原子力発電プラントに適用する場合、構造材の接液部位に亜鉛を含有するクロムとの複合酸化物層を付与させる方法には、1)運転前に予め亜鉛を含有するクロムとの複合酸化物を接液部位に付与する方法、2)運転前に予め金属クロムを接液部位に付与し、運転開始後に亜鉛イオンを注入する方法、3)運転中にまず、クロム酸化物層を生成させた後、亜鉛イオンを注入する方法、4)亜鉛イオンとクロム酸イオンを同時に注入する方法の4つがある。
【0067】
このうち、1),2)は建設中の供用前原子力発電プラント、又は接液部を有する構造材の一部、ないしは全部を交換する原子力発電プラントに適しており、3),4)は供用中や除染後の原子力発電プラントに適した手段である。
【0068】
金属材料表面に亜鉛を含有するクロムとの複合酸化物層や金属クロム層を付与させる技術手段としてはレーザークラッディング、メッキ、ドライプレーティング、溶射、イオン注入、ライニング、プレフィルミング、コーティング、塗布等を適用する。これらの技術手段は1種類のみでなく複数選択して使用することもできる。
【0069】
又、運転中にクロム酸化物層を生成させる技術手段としては、冷却材中に還元剤を共存させた環境下でクロム酸イオンを注入する方法や、冷却材中の酸素濃度、又は過酸化水素濃度を調整し、クロム含有金属の腐食を促進させることによってクロム酸化物層を生成させる方法を適用する。
【0070】
クロム酸イオンや亜鉛イオンの注入にあたっては、炉水中におけるこれらのイオン種濃度をモニタし、目的とする濃度との差分をクロム注入装置や亜鉛注入装置によって注入する方法が最も望ましい。
【0071】
更に、亜鉛イオンの注入に際しては、給水系からの鉄クラッドの持ち込みや炉水系での鉄クラッドの発生を低減することによって必要な亜鉛量を低減できる。これは、鉄クラッドはクロムと同様に亜鉛イオンと反応し、亜鉛フェライト(ZnFe2 O4 )を生成し、亜鉛クロマイトの生成効率を低下させることからである。
【0072】
そこで、亜鉛クロマイトを有効に生成させるには、環境中の鉄クラッド濃度を抑制することが効率的なのである。しかし、如何に鉄クラッド濃度が低い状況でも、亜鉛イオンが100ppbを超えると亜鉛は酸化亜鉛(ZnO)として単独の酸化物として析出するため、亜鉛イオンが亜鉛クロマイトの生成に対し有効に機能しない。そこでこの値が亜鉛イオンを注入する際の上限濃度となる。
【0073】
さらに、注入する亜鉛はその同位対比を調整し、二次的な放射能を発生させないことによってその有効性を飛躍的に高めることができる。具体的にはZn64(天然存在比率:48.6%)、Zn68(同:18.8%)、Zn70(同:0.6 %)を極力除外し、Zn66、Zn67の存在比率を高めた亜鉛を用いることを意味している。亜鉛クロマイトの生成は還元雰囲気で加速されるために、例えば水素ガスが共存した水質で行えば一層効果的である。
【0074】
ところで、供用中、又は除染後の原子力発電プラントにおいて、構造材の接液部表面に亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与させる場合、付与処理に先立ち接液部位に対して予めショットピーニング又はレーザーピーニング処理を施し、表面に圧縮応力場を付与することにより有効性をさらに高めることができる。
【0075】
本実施の形態によれば、原子力発電プラントで構造材の接液部位に亜鉛を含有したクロムとの複合酸化物層を付与することによって、以下の3つの効果がある。(1) 構造材のSCC に起因する亀裂の発生を抑制できる。(2) たとえ、構造材にSCC に起因する亀裂が既に存在する部位においても、その後の進展を抑制できる。(3) 材料表面に緻密かつ良好な酸化皮膜を形成し、一次系配管,機器の全面腐食を抑制することで放射能発生量を低減でき、ひいては被曝低減効果がある。
【0076】
さらに、本発明によって構造材のSCC 感受性を低減させることができれば、少量の水素注入を併用することによってタービン系線量率上昇時の副次的影響の小さい予防保全水化学を達成でき、より一層安全で長寿命の原子力発電プラントを提供できる。
【0077】
つぎに、本発明に係る原子力発電プラントの第2の実施の形態を図6(a),(b)により説明する。
図6(a)はBWR 発電プラントの一次系のシステム構成図で、図6(b)は図6(a)における原子炉圧力容器の内部構造を示している。図6中、符号1は原子炉圧力容器で、原子炉圧力容器1内には炉心2が配置されており、炉心2で発生した蒸気は主蒸気管3を通して高圧タービン4及び低圧タービン5で仕事をした後、復水器6に導かれ、復水器6で冷却凝縮され、水に戻り復水となる。
【0078】
この復水は冷却材として復水ポンプ7,復水浄化系8を経て高圧復水ポンプ9,給水加熱器10及び給水ポンプ11により昇圧され、給水管12を通り、原子炉圧力容器1内に給水される。
【0079】
一方、原子炉圧力容器1内の冷却材は原子炉再循環ポンプ13によってその一部または全部が原子炉再循環系14を強制再循環しており、この原子炉再循環系14から分岐して原子炉冷却材浄化系15が設けられている。
【0080】
原子炉圧力容器1内は図6(b)に示したように、炉心2を包囲する炉心シュラウド16が設けられており、炉心シュラウド16内の炉心2の上部に上部格子板17が設けられ、炉心2の下部に炉心支持板18が設けられている。上部格子板17上にはシュラウドヘッド19が設けられて、炉心シュラウド19内は炉心上部プレナム20となっている。
【0081】
シュラウドヘッド19上にはスタンドパイプ21を介して気水分離器22が設けられ、気水分離器22の上方にドライヤ23が設置されている。原子炉圧力容器1と炉心シュラウド16との間にはジェットポンプ24とジェットポンプノズル25が設置され、ジェットポンプノズル25には冷却材入口ノズル26が接続している。
【0082】
冷却材入口ノズル26の下方には冷却材再循環出口ノズル27が原子炉圧力容器1に取付けられている。炉心2の下方は炉心下部プレナム28となっており、炉心下部プレナム28に制御棒案内管29が位置し、制御棒案内管29は原子炉圧力容器1の底部に貫通して取付けられたスタブチューブ30に接続している。図6(b)中、符号31は給水スパージャで、給水スパージャ配管(図示せず)に接続している。32は原子炉圧力容器1の上端部開口を閉塞する圧力容器上部ドームである。
【0083】
ところで、近年、BWR 発電プラントではジェットポンプと、その原子炉再循環系を設置しないで、インターナルポンプと称するポンプを複数基炉心下部に直接取付け、炉水を強制循環させるタイプの改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の発電プラントが運転を開始している。
【0084】
上記改良型ABWR発電プラントにおいて、それが建設中の供用前であったり、又接液部を有する構造材の一部、ないしは全部を交換する時期にあった場合には、構造材の接液部表面に直接亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与させることができる。
【0085】
なお、これらの原子力発電プラントでは材料対策によるSCC 緩和法の適用も当然検討されるが、その対象とする部位や費用を総合的に勘案し、材料代替によらず本発明を適用する事態の存在も否定できない。
【0086】
BWR 発電プラントにおいて、例えばジェットポンプのスロート管の内面や外表面などの接液部に亜鉛クロマイトとクロム酸化物との混合微粉末を溶射して複合酸化膜を付与させることができる。又、メッキ、ドライプレーティング、イオン注入、ライニング、プレフィルミング、コーティング、塗布等の施工により複合酸化物を付着(付与)することができる。これらの施工は供用前の新品に対するものであることから、一般工場における作業であり、低コストで実施できる。
【0087】
さらに、これら構成機器の取付方法としては、ボルト,ナット等の締結部品による場合と、溶接による圧力容器との直接接続の場合がある。溶接による場合にあっては、溶接線に沿って同様な施工が可能である。この場合には発電所内の現地作業であり、特に構成機器の交換作業の場合には管理区域内の被曝可能性のある作業であることから短時間で終了する溶射技術の採用が最も現実的であるが、他の付与技術の採用を否定するものではない。
【0088】
また、原子炉圧力容器1には主蒸気管3、給水管12、炉心スプレイノズル、低圧スプレイノズル、頂部スプレイノズル、冷却材再循環出口ノズル27、冷却水入口ノズル26、各種計装ノズルなどが溶接で取付けられている。このうち、主蒸気管3と冷却材再循環出口ノズル27を除く主要な配管ノズル類は全てサーマルスリープ付きであり、ステンレス鋼の配管に接続するノズルにはステンレス鋼またはインコネルのセーフエンドを設けている。
【0089】
さらに、炉心底部にはスタブ構造と称した切り株状の貫通座が原子炉圧力容器1 と溶接で接続されており、ここに制御棒駆動機構ハウジングが溶接、又は高圧水シール構造で接続されている。このように原子炉圧力容器1の貫通口近傍には溶接箇所が多数存在している。
【0090】
そこで、これらの溶接部位に、溶接終了後に亜鉛クロマイトとクロム酸化物との混合微粉末を溶射して複合酸化膜を付与することにより、溶接部位の健全性を飛躍的に高めることができる。溶射用の設備は溶接用の設備を改造することによって代用することも可能である。つまり、溶接作業ができる場所にはすべて本発明の適用が可能であることを意味している。
【0091】
溶射に用いる亜鉛クロマイトやクロム酸化物粉末は直径が数μmから10μm程度のものが作業性に優れている。また、付着させる酸化物量はラボ試験における皮膜分析の結果から厚みにして100 μm以下で十分である。さらに、亜鉛クロマイとクロム酸化物との混合割合は任意であるが、ラボ試験における皮膜分析の結果から同様に亜鉛クロマイトの量は全体の酸化皮膜量の半分以下であることから、クロム酸化物量の同量以下が目安となる。
【0092】
上記実施例で溶接終了後にあって、亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与させる前に、予め付与する部位に対しショットピーニング又はレーザーピーニング処理を施し、表面に圧縮応力場を付与することによって多重安全が図られ、より安全な原子力発電プラントが達成し得る。
【0093】
つぎに本発明に係る原子力発電プラントの第3の実施の形態を図7により説明する。
図7は図6(a)に示した原子炉再循環系14の配管構成図を示している。高温高圧水の流れは以下のとおりである。つまり、冷却材再循環出口ノズル27から取出された原子炉冷却材は原子炉再循環ポンプ13に導かれ、ここで加圧され、垂直配管32、ヘッダー管33、ライザー管34を経て原子炉圧力容器1内に送られている。原子炉再循環ポンプ13の前後には吸込側仕切弁35、吐出側仕切弁36が設けられており、ポンプの隔離ができる構造となっている。また、原子炉再循環系14は2ないし3系統設置されているのが一般的である。
【0094】
供用中の原子力発電プラントにおいては、上記原子炉再循環系14の構成配管の交換工事が行われる。これは主に材料対策によるSCC 緩和を目的として行われる場合が多い。そこで、このような作業時には、新規に取付ける配管の内面に亜鉛クロマイトとクロム酸化物との混合微粉末を溶射して複合酸化膜を付与することができる。
【0095】
この溶射による付与は供用前の新品に対するものであることから、一般工場における作業であり、低コストで実施できる。もちろん、メッキ、ドライプレーティング、イオン注入、ライニング、プレフィルミング、コーティング、塗布等による各付与技術も適用が可能である。
【0096】
また、仕切弁や再循環ポンプの開放点検などの場合にはこれら機器の接液部位に亜鉛クロマイトとクロム酸化物との混合微粉末を溶射技術で付着させるなどのオプションが可能となる。この場合には管理区域内の被曝可能性のある作業であることから短時間で終了する溶射技術の採用が最も現実的であるが、他の付与技術の採用を否定するものではない。
【0097】
上記実施の形態において、亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与させる前に、付与部位に対し予めショットピーニングないしは、レーザーピーニング処理を施し、表面に圧縮応力場を付与させることによって多重安全が図られ、より安全な原子力発電プラントが達成し得る。
【0098】
つぎに本発明に係る原子力発電プラントの第4の実施の形態を図8(a),(b)により説明する。
図8(a)はステンレス304 鋼を用い、285 ℃の高温高圧水中で行った溶存酸素濃度をパラメータとした際の腐食試験結果を示している。試験では縦:横:厚さ=20mm:10mm:2mmの短冊状の試験体を用い、溶存酸素濃度を10から10000ppbの4段階で各々500 時間の浸漬試験を行った。
【0099】
浸漬試験終了後、生成している腐食皮膜量を測定した。浸漬前の試験体重量をW1、浸漬後の試験体重量をW2、腐食皮膜を除去した後の試験体重量をW3とした場合、試験体の腐食量Wc、腐食皮膜量Wf、腐食放出量Wdには以下の式(1) 〜(3) の関係が成立する。
【0100】
Wc=W0−W2 …(1)
Wf=W1−W2 …(2)
Wd=Wc−0.72Wf …(3)
ここで、(3) 式中の係数0.72はマグネタイト(Fe3 O4 )を想定した近似的な酸化皮膜中の金属重量の割合を示している。
【0101】
図8(b)は各溶存酸素濃度における腐食皮膜量と腐食放出量を加えた腐食量を比較している。ステンレス304 鋼は低溶存酸素条件で腐食が加速されているが、これは腐食放出量の増大によることが分かる。溶存酸素濃度の上昇に伴い腐食放出量は減少し、腐食皮膜量が腐食量と一致するようになる。
【0102】
一方、酸化皮膜の組成は図8(a)で示されるように溶存酸素濃度の上昇に伴って鉄からクロムへと移行する。このことからステンレス304 鋼は高溶存酸素濃度条件では表層に緻密でクロムリッチの酸化皮膜が生成され、腐食速度が抑制されることが分かる。
【0103】
この現象を本実施の形態に係る原子力発電プラントに適用することによって、クロム含有金属からなる構造材の接液部に亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与させることができる。つまり、炉内構造物は主にステンレス鋼などのクロム含有金属である。
【0104】
そこで、プラントの運転初期などに炉水中の溶存酸素濃度を一時的に上昇させ、クロム含有金属の接液部にクロム酸化物層を生成させる。この処理は除染によって接液部の腐食皮膜を除去した後に行うことが最も効果的であるが、すでに腐食皮膜が存在する供用中のプラントにおいてもある程度の効果は期待できる。
【0105】
また、材料の腐食加速は溶存酸素より過酸化水素の方がより効果的であることから、プラントの運転初期などに過酸化水素を注入し、炉内の腐食を一時的に加速させる手段も考えられる。一時的に溶存酸素濃度や、過酸化水素濃度を高めた後、冷却材中に亜鉛イオンを注入することによって、クロム含有金属の接液部に亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を生成させることができる。
【0106】
つぎに本発明に係る原子力発電プラントの第5の実施の形態を図9及び図10により説明する。
図9にBWR炉水条件におけるクロムの電位とpHとの関係を示す。この図9は特定の電位とpHで規定される水質条件にクロムが存在した場合、クロムのどの形態が最も化学平衡論的に安定であるかを示している。
【0107】
図9中、横軸は285 ℃でのpHを示し、縦軸は電位(E)を示している。高温では水の解離定数が大きいため、中性のpHは5.6 となる。通常、炉水で検出される不純物の濃度はモル濃度に換算すると10-8のオーダーであり、不純物が存在しても水中のH+ ,OH- 各イオン濃度はほとんど変動せず、pHの値の変動幅も小さい。
【0108】
図9から明らかなように、中性領域では低電位でCr2 O3 が、高電位領域でCrO4 2-が安定である。また、クロムを酸化物として安定化させるためにはpHを下げるか、又は電位を低下させる方法があることが分かる。
【0109】
pHを調整してクロムを酸化物として安定化させる方法に関しては、BWR 水質を酸性に移行させるために、水素イオン基を有する硫酸(H2 SO4 )や塩酸(HCl)等の酸類を注入することによって容易に達成できるが、これら酸類の存在は構造材の健全性を危うくするのは明らかであり、現実的な選択ではない。
【0110】
一方、電位を下げクロムを酸化物として安定化させる方法に関しては、冷却材中に還元剤を共存させればよく、例えば水素ガスを注入することによって容易に構造材の電位を低下させることができ、この方法が最も簡便であろう。
【0111】
そこで、プラントの運転初期や運転中に水素ガスを注入して還元雰囲気とし、その条件下でクロム酸イオンを注入して、構造材の接液部にクロム酸化物層を生成させる。この処理は除染によって接液部の腐食皮膜を除去した後に行うことが最も効果的であるが、供用中のプラントにおいても実施が可能である。
【0112】
図10(a)は本実施例で用いられるクロム注入装置37の例を示している。このクロム注入装置37は注入するクロム酸イオン溶液を作成する手段として試薬のクロム酸(CrO3 )を希釈して用いる装置で、主な構成は、溶液タンク38及びクロム酸イオン流出ライン39に設けた高圧注入ポンプ49であり、非常にシンプルな構造である。
【0113】
すなわち、溶液タンク38の上部にはクロム酸原液を導入するための原液注入ライン40、純水を供給するための純水供給ライン41、クロム酸イオン溶液42中の溶存酸素を除くためにバブラー構造43を有する窒素ガス注入ライン44、余剰の窒素ガスを系外に放出するためのシールポット45、溶液42を攪拌するためのインペラ46、及び溶液42を回転させるための攪拌モータ47が設けられている。
【0114】
また、溶液タンク38の底部にはクロム酸イオン溶液流出ライン39と、クロム酸イオン溶液42のドレンライン48が接続されている。溶液タンク38の底部の流出ライン39から取出されるクロム酸イオン溶液42は高圧注入ポンプ49により隔離バルブ50を通して注入点に導かれる。
【0115】
このクロム注入装置37では原液注入ライン40から導入されるクロム酸原液濃度はパーセントオーダーになる可能性がある。高濃度のクロム酸溶液は毒性が強く、原液の取扱いには保護具の使用は欠かせない注意点がある。
【0116】
クロムを注入する部位は原子炉再循環系や原子炉冷却材浄化系出口などの高温高圧系に直接注入するのが最も効果的であるが、復水浄化系出口以降の低温部でも支障はない。ただし、低温部注入の場合には注入したクロム酸イオンが炉内に達する前に給水加熱器において一部は付着する可能性がある。そこで、この場合にはクロム注入装置37の裕度を多めに持たせる配慮が必要となる。
【0117】
なお、給水加熱器に付着する量は僅かであり、さらに付着によって防蝕性が高まりこそすれ、何らマイナスの問題は発生しない。注入するクロム酸イオン濃度については高濃度の方が短時間で処理が終了するものの、実機BWR で実績のある100ppb以下で行えば何ら問題が発生する危険性はない。
【0118】
還元雰囲気中において上記クロム注入装置を用い、クロム酸イオンを冷却材中に注入することによって構造材の接液部にクロム酸化物層を生成させた後、冷却材中に亜鉛イオンを注入することにより、構造材の接液部に亜鉛クロマイト(ZnCr2 O4 )とクロム酸化物(Cr2 O3 )とが混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を生成させることができる。
【0119】
図10(b)は亜鉛注入装置51の例を示している。この亜鉛注入装置51では試薬の酸化亜鉛(ZnO)又は水酸化亜鉛(Zn(OH)2 )の細粉末を炭酸ガスをバブリングさせた純水中に投入し、粉末を溶解させて亜鉛イオンを発生させている。この装置51の構成は前出の図12に示すクロム注入装置37と類似しているが若干の相違点がある。
【0120】
すなわち、図10(a)中、符号44は溶液42中の溶存酸素を除くための窒素ガス注入ラインを示していたが、図10(b)中、これに該当する符号53は溶液52中に炭酸ガスを注入するための炭酸ガス注入ラインとしている。また、亜鉛イオン溶液流出ライン54のタンク水の取出し口はタンク38底部ではなく、タンク側面に取付けられている。これは、この装置51では不溶解の試薬の酸化亜鉛もしくは水酸化亜鉛がタンク38の底部に堆積し、注入によってスラリー状のこれらが混入される危険性があり、これを回避するための配慮である。
【0121】
本装置51におけるインペラ46は溶液52の不均一性を是正するために設置されたものであり、スラリーが存在した場合、これを舞い上がらせるほどの回転は防止されるべきである。そのための回転数は数100rpm以下が目安となる。
【0122】
本装置51では試薬の粉末の溶解を促進させるために溶液タンク38をそのまま超音波洗浄バスに浸けるような構成が効果的である。また、本装置51の連続運転にあたっては試薬粉末の溶解には所定の時間を要するため、同様の溶液タンク38を複数設け、バルブ切替えによって使用するタンクを変更するような使用法も検討に値する。
【0123】
注入される亜鉛イオンは天然の亜鉛をそのまま用いた場合には最も含有率の高い亜鉛64が(n,γ)反応で放射化し亜鉛65となり新たな放射能となる。亜鉛65はγ線のエネルギーが1115keV と高く、新たな被曝問題を引き起こす可能性がある。また、亜鉛68、亜鉛70も同様の問題がある。一方、亜鉛66、亜鉛67に関しては、中性子を吸収してもγ線を放出することはない。
【0124】
そこで、本実施例においては、二次的な放射能を発生させないために亜鉛66、亜鉛67の存在比率を高めた亜鉛を用いることによって、副次的な影響を抑制し、その有効性を格段に高めることができる。
【0125】
また、亜鉛イオンの注入に際しては、給水系からの鉄クラッドの持ち込みや炉水系での鉄クラッドの発生を低減することによって、必要な亜鉛量を低減できることは既に述べた。これは、鉄クラッドはクロムと同様に亜鉛イオンと反応し、亜鉛フェライト(ZnFe2 O4 )を生成し、亜鉛クロマイトの生成効率を低下させるからである。
【0126】
そこで、亜鉛クロマイトを有効に生成させるためには、環境中の鉄クラッド濃度を抑制することが効果的なのである。給水系からの鉄クラッドの持ち込みを抑制するには復水系配管や抽気系配管を従来の炭素鋼から耐候性鋼や低合金鋼に変更する材料対策や発生した鉄クラッドを除去する高クラッド除去樹脂の採用や中空糸フィルタの設置が有効であり、これらの対策は新しいプラントにおいてほぼ完了に近いものの、古いプラントに対しては対策の余地がある。
【0127】
さらに、炉水系では鉄クラッドを発生させる構造材は古いプラントにおいてさえ大きな接液面積を持たず、問題視されない状態であるものの、使用されている全ての材料の種類に関しては十分調査し、鉄クラッドが発生する可能性を極小とする努力は常に必要である。
【0128】
しかし、如何に鉄クラッド濃度が低い状況でも、亜鉛イオンが100ppbを超えると亜鉛は酸化亜鉛(ZnO)として単独の酸化物として析出するため、亜鉛イオンが亜鉛クロマイトの生成に対し有効に機能しない。
【0129】
そこで、この値が亜鉛イオンを注入する際の上限濃度となる。BWR 発電プラントにおいては沸騰に伴って不純物イオン種の濃縮現象が燃料表面上で生じる。これは冷却材中では低濃度であるものの、沸騰に伴って局所的に濃度が上昇し、溶解度を超え酸化物として析出する現象を指している。
【0130】
燃料表面上で濃縮される割合は燃料の熱出力に大きく左右されるが、その外には被覆管表層に存在する濃縮サイトの有無の影響も無視できない。例えば、ジルコニウム合金からなる燃料被覆管が異常腐食していた場合には、空隙率の高い酸化皮膜が形成されることが知られている。このポーラスな母材の酸化皮膜は十分濃縮サイトとして機能する。
【0131】
さらに被覆管表面に鉄クラッドが厚く付着している場合には同様な作用をするとの指摘もある。このようなことから一義的に亜鉛濃度の上限を規定することは困難であるものの、従来のプラントデータのレビューから炉水濃度で100ppbまでは亜鉛酸化物の生成やそれに起因する現象は報告されていないことから、運用上この値が上限となろう。
【0132】
つぎに本発明に係る原子力発電プラントの第6の実施の形態を図11により説明する。
供用中の原子力発電プラントにおいて、その運転中、冷却材にクロム酸イオンと亜鉛イオンを各注入装置で同時に注入し、発明の目的を達成することができる。図11はこのシステム構成図を示している。図11ではクロム注入装置37を原子炉冷却材浄化系15の出口に、亜鉛注入装置51を原子炉再循環系14の各配管に接続させ、各イオン種を注入している。
【0133】
これら2台の注入装置37,51の設置場所は上記実施の形態の逆とすることも可能であるばかりでなく、注入ラインを分岐することによって同一注入点でも何ら問題はない。クロム酸イオンと亜鉛イオンを同時に注入する場合にあっては、還元水質環境下で行い、各々の濃度の上限値は第5の実施の形態に記述するとおりである。
【0134】
つぎに本発明に係る原子力発電プラントの第7の実施の形態を図12及び図13により説明する。
図12は供用中、又は除染後の原子力発電プラントにおいて、各種のイオン種を注入する際にあって腐食抑制効果を確認するための腐食モニタ56と、炉内構造物への付着放射能の推移を確認するための放射能付着モニタ57と、イオン種濃度を測定するためのイオン種濃度モニタ58とを具備し、これらのデータから注入するイオン種濃度を自動的に設定することのできるイオン濃度調整システム59を付帯した原子力発電プラントのシステム概念図を示している。
【0135】
本実施の形態では原子炉冷却材浄化系配管55を分岐させ炉水を腐食モニタ56、放射能付着モニタ57、イオン種濃度モニタ58に導いている。腐食モニタ56のデータ、放射能付着モニタ57のデータ、及びイオン種濃度モニタ58のデータは全てイオン種濃度調整システム59に送られ、最適な効果を達成させるために、クロム注入装置37と亜鉛注入装置51から注入するイオン種濃度を制御している。
【0136】
腐食モニタ56は調整した水質環境下での亀裂の発生やその抑制効果を測定する目的で設置されるもので、亀裂進展試験装置を用いて、予亀裂を付加した試験体を一定速度で引張り、予亀裂の進展度合いを測定するのが最も適している。
【0137】
放射能付着モニタ57は注入したイオン種によって構造材への放射能の付着速度が変化するかどうかを測定する目的で設置されるものであり、その一例として図13に示す。
【0138】
図13で示される放射能付着モニタ57は原子炉冷却材を取出してきた原子炉冷却材浄化系配管55をそのまま試験体とし、そこに付着する放射能をゲルマニウム半導体検出器61によって連続測定するシステムであり、上記各モニタ56〜58のデータから注入するイオン種濃度を自動的に設定することのできるイオン種濃度調整システム59に接続している。
【0139】
原子炉冷却材浄化系配管55には原子炉冷却材の温度の低下を防止するために保温材60が巻回されている。ただし、原子炉冷却材の取出し口からこのモニタ57まで距離があり、10℃以上の温度の低下が見込まれる場合には、保温材60ばかりでなくリボンヒータなどの外部加熱装置を取付け、温度の低下を防止する措置も生じる場合がある。
【0140】
検出器61はコリメータ付きの鉛遮蔽体62に覆われている。コリメータは厚い鉛に10mmφ程度の穴を設けている構造を指しており、周囲の放射線場に影響を受けず、対象物からのみの放射線を測定することができる。また、ゲルマニウム半導体検出器61は液体窒素温度で冷却する必要があるため、液体窒素供給装置63と接続されている。
【0141】
なお、電気冷凍機でも所定の温度まで検出器の温度を低下させることができ、液体窒素供給装置63をこれに代えることもできる。イオン種濃度モニタ58は水中のイオン種を連続的に測定する目的で設置させているものであり、インラインのイオンクロマトグラフィなどの分析機器が適している。
【0142】
イオン種濃度調整システム59では各種モニタ56〜58のデータを連続的又は一定時間毎に採取し、注入するイオン種に対しその許容濃度以下の条件で、かつ最適な濃度を算出し、各注入装置の注入ポンプを自動調整して注入を行う。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、建設中、建設後、供用中又は除染後の沸騰水型原子力発電プラントに対してSCC の発生を抑制することができる。また、構造材のSCC の発生を抑制するだけでなく、SCC による亀裂進展を抑制し、全面腐食を抑制して構造材の健全性を維持し、安全で長寿命な沸騰水型原子力発電プラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る原子力発電プラントの実施の形態を説明するための、SCC 発生に及ぼすイオン種の影響を示す棒線図。
【図2】(a)は図1と同じく、亀裂進展試験の第1の結果を示す特性図、(b)は(a)と同じく第2の結果を示す特性図。
【図3】(a)は図1と同じく試験体に付着した放射能付着量を示す棒線図、(b)は(a)における腐食皮膜量を示す棒線図。
【図4】腐食皮膜の電子顕微鏡写真図。
【図5】(a)は引張り応力により亀裂発生状態を示す模式図、(b)は(a)と同じく複合酸化物生成による亀裂の修復状態を示す模式図。
【図6】(a)は本発明に係る原子力発電プラントの第2の実施の形態を説明するためのシステム構成図、(b)は(a)における原子炉圧力容器の内部構造を示す縦断面図。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態を説明するための原子炉冷却材再循環系を示す立面図。
【図8】(a)は本発明に係る第4の実施の形態を説明するためのステンレス鋼の溶存酸素濃度と金属組成との関係を示す棒線図、(b)は(a)と同じく腐食量との関係を示す棒線図。
【図9】本発明に係る第5の実施の形態を説明するためのBWR 冷却材(炉水)条件でのクロムの電位とpHとの関係を示す特性図。
【図10】(a)は本発明に係る第5の実施の形態におけるクロム注入装置を示す機器配管系統図、(b)は(a)と同じく亜鉛注入装置を示す機器配管系統図。
【図11】本発明に係る第6の実施の形態を説明するための原子力発電プラントを示すシステム構成図。
【図12】本発明に係る第7の実施の形態を説明するための原子力発電プラントを示すシステム構成図。
【図13】図12における放射能付着モニタを一部ブロックで示す縦断面図。
【符号の説明】
1…原子炉圧力容器、2…炉心、3…主蒸気管、4…高圧タービン、5…低圧タービン、6…復水器、7…復水ポンプ、8…復水浄化系、9…高圧復水ポンプ、10…給水加熱器、11…給水ポンプ、12…給水管、13…原子炉再循環ポンプ、14…原子炉再循環系、15…原子炉冷却材浄化系、16…炉心シュラウド、17…上部格子板、18…炉心支持板、19…シュラウドヘッド、20…炉心上部プレナム、21…スタンドパイプ、22…気水分離器、23…ドライヤ、24…ジェットポンプ、25…ジェットポンプノズル、26…冷却材入口ノズル、27…冷却材再循環出口ノズル、28…炉心下部プレナム、29…制御棒案内管、30…スタブチューブ、31…給水スパージャ、32…垂直配管、33…ヘッダー管、34…ライザー管、35…吸込側仕切弁、36…吐出側仕切弁、37…クロム注入装置、38…溶液タンク、39…クロム酸イオン溶液流出ライン、40…原液注入ライン、41…純水供給ライン、42…クロム酸イオン溶液、43…バブラー構造、44…窒素ガス注入ライン、45…シールポット、46…インペラ、47…攪拌モータ、48…ドレンライン、49…高圧注入ポンプ、50…隔離バルブ、51…亜鉛注入装置、52…亜鉛イオン溶液、53…炭酸ガス注入ライン、54…亜鉛イオン溶液流出ライン、55…原子炉冷却材浄化系配管、56…腐食モニタ、57…放射能付着モニタ、58…イオン種濃度モニタ、59…イオン種濃度調整システム、60…保温材、61…ゲルマニウム半導体検出器、62…コリメータ付き鉛遮蔽体、63…液体窒素供給装置。
Claims (15)
- 高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、建設中の供用前構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする沸騰水型原子力発電プラント。
- 高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、建設後の供用中構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする沸騰水型原子力発電プラント。
- 高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、交換される一次冷却材接液部を有する構造材表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする沸騰水型原子力発電プラント。
- 高温高圧の純水を使用する沸騰水型原子力発電プラントにおいて、除染後の構造材の一次冷却材接液部表面にZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与してなることを特徴とする沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、レーザークラッディング、メッキ、ドライプレーティング、溶射、イオン注入、ライニング、プレフィルミング、コーティング、塗布から選択された少なくとも1つの付与手段によることを特徴とする請求項1又は3記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、前記構造材の一次冷却材接液部表面にクロム酸化物層を生成させた後、亜鉛イオンを冷却材中に注入することを特徴とする請求項2又は4記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する手段は、冷却材中にクロム酸イオンと亜鉛イオンを同時に注入することを特徴とする請求項2又は4記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記ZnCr 2 O 4 とCr 2 O 3 が混在する亜鉛とクロムとの複合酸化物層を付与する処理の前工程として、ショットピーニング又はレーザーピーニング処理により前記構造材表面に圧縮応力場を付与してなることを特徴とする請求項2又は4記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記構造材の一次冷却材接液部表面にクロム酸化物層を付与するにあたり、冷却材中に還元剤を共存させた環境下でクロム酸イオンを注入することを特徴とする請求項6記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記構造材の一次冷却材接液部にクロム酸化物層を付与するにあたり、冷却材中の酸素濃度、又は過酸化水素濃度を調整することを特徴とする請求項6記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記クロム酸イオンを冷却材中に注入するためにクロム注入装置を設けてなることを特徴とする請求項7記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 冷却材中に還元剤を共存させた還元水質環境下で前記クロム酸イオンと亜鉛イオンとを同時に冷却材中に注入することを特徴とする請求項7記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記亜鉛イオンを冷却材中に注入するために亜鉛注入装置を設けてなることを特徴とする請求項6又は7記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記亜鉛イオンは、その同位体構成比において亜鉛64,亜鉛68,亜鉛70のうち1つ又は複数の同位体の含有率が、天然に存在する亜鉛64,亜鉛68,亜鉛70の含有率より低下させた亜鉛イオンであることを特徴とする請求項6又は7記載の沸騰水型原子力発電プラント。
- 前記クロム酸イオン又は亜鉛イオンを注入するにあたり、腐食抑制効果を確認するための腐食モニタと、炉内構造物への付着放射能の推移を確認するための放射能付着モニタと、イオン種濃度を測定するためのイオン種濃度モニタとを具備し、前記各々のモニタのデータから注入するイオン種濃度を自動的に設定することのできるイオン種濃度調整システムを設けてなることを特徴とする請求項6又は7記載の沸騰水型原子力発電プラント。
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