JP4067694B2 - 軟質フィルム用艶消し剤およびこれらを含む艶消し軟質フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性の軟質フィルムやシート(以下両者を代表してフィルムと称することにする。)に配合することにより、フィルムの柔軟性、強靱性、風合いを損なわしめることなく、フィルムに優れた艶消し性を付与する軟質フィルム用艶消し剤およびこれらを含む艶消し軟質フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性の軟質フィルムは壁紙、化粧板のハウジング内装材や家庭電器製品のハウジング装置、自動車の内部パネルのオーバーレイフィルムや保護フィルムとして広く使用されているがその表面は光沢を抑えた深みのある艶消し性が求められる。これまでフィルムの艶消し剤としては、シリカ等の無機系化合物の粒子やポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のガラス状ポリマー粒子が使われており、これらのうち特にガラス状ポリマー粒子を用いた場合、フィルムは透明感のある艶消し性が得られるという特徴がでる。しかしポリオレフィン、アクリル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の軟質フィルムに艶消し剤として上記ガラス状ポリマー粒子を練り込んだ場合、軟質フィルムが本来有する柔軟性、強靱性、風合いが損なわれるばかりか、折り曲げや延伸時に白化を起こしたり、透明性が損なわれるという欠点がある。これらの原因は軟質フィルムの引張り、折り曲げ時にかかる応力にガラス状ポリマー粒子が追従し難いためと考えられる。
【0003】
この問題を解決するため、ゴム状ポリマー粒子、たとえば低級アルキルアクリレートと多官能ビニルモノマーを共重合させた粒子(特開平3−37201)、低級アルキルアクリレートと多官能ウレタン(メタ)アクリレートを共重合させた粒子(特開平4−65405)などを軟質フィルムに配合することが提案されている。これら低級アルキルアクリレートなどのゴム状ポリマーを与えるモノマー含有量を増加すればより軟らかく弾性のあるポリマー粒子が得られ、上記問題点をある程度解決することができる。
しかし、ゴム状ポリマー粒子を用いる場合の大きな問題点として、ガラス転移点の低い低級アルキルアクリレートなどの含有量が多くなると、懸濁重合で製造する際の合成段階で粒子同士の凝集、融着、合一等が起こる場合がある。さらに、合成終了後の脱水時あるいは乾燥時の加熱によりポリマー粒子が凝集、融着するため、粒子としての形状を保持したまま製品として取り出すことができない場合もある。また、これらのポリマー粒子が得られたとしても、ブロッキング等のハンドリング上の問題や、軟質フィルムに混練、配合した際、ポリマー粒子がフィルムの中でもとの一次粒子まで分散しないため、充分な艶消し性が得られないばかりか、フィルムの外観が非常に悪くなる場合等の問題が起こる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軟質フィルムが本来持つ柔軟性、強靱性、風合いを損なわせぬために、ゴム弾性を有しながらも、微粒子自身のブロッキング性やフィルムへの分散性が改善された軟質フィルム用艶消し剤を提供することを目的とする。さらにはこの軟質フィルム用艶消し剤を混練することにより、透明感のある優れた艶消し性を有する艶消し状軟質フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、懸濁重合によりゴム状ポリマーを形成し(一段目反応)、それに引き続きガラス状ポリマーを形成するモノマーを添加し懸濁重合を行う(二段目反応)という操作により前記課題を解決しうる多相構造を有するポリマー粒子が得られることを見いだした。本発明における多相構造とは、一段目反応で形成されるポリマーと二段目反応で形成されるポリマーが、一つの粒子内で各々異なる相として存在している構造を指し、2層またはそれ以上の多層構造やサラミ構造の他、一段目反応の粒子の表面を二段目反応のポリマーが部分的に被覆しているような構造も含まれる。このポリマー粒子は表面が硬質のポリマーで覆われているため、製造時の脱水、乾燥による粒子間の融着もない。また軟質フィルムの艶消し剤として使用したとき混練時の分散が容易であり、加工されたフィルムは柔軟性、強靱性、風合いを維持しながら、折り曲げや延伸時の白化や強度の低下もなく、透明感のある艶消し性が得られることが判った。即ち本発明は、(1)ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)の懸濁重合によりガラス転移温度が20℃以下のゴム状ポリマーを形成する一段目反応と、それに引き続きガラス転移温度が50℃以上のガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)を添加して懸濁重合を行う二段目反応により製造される重量平均粒子径4〜80μmの多相構造粒子を含有する軟質フィルム用艶消し剤、
(2)ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)が、アルキル(メタ)アクリレート(a)50〜99.9重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(b)0.1〜20重量%およびその他の共重合性モノマー(c)0〜49.9重量%からなるモノマー混合物である(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(3)ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜100重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびその他の共重合性モノマー(g)0〜50重量%からなるモノマーまたはモノマー混合物である(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(4)ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜99.5重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびウレタン(メタ)アクリレート0.5〜30重量%を含むその他の共重合性モノマー(g)0.5〜50重量%からなるモノマー混合物であり、軟質フィルムが軟質ウレタンフィルムある(3)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(5)ゴム状ポリマーとガラス状ポリマーの重量比が、95/5〜30/70である(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(6)二段目反応を、ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)と界面活性剤を含む乳化液を一段目反応液に添加して一段目粒子に吸収または付着させたのち懸濁重合を行う(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(7)軟質フィルムに(1)〜(6)のいずれかに記載の軟質フィルム用艶消し剤を含有させた艶消し軟質フィルム、
(8)軟質フィルム100重量部に対し、軟質フィルム用艶消し剤を3〜200重量部含有させた(7)記載の艶消し軟質フィルム、である。
【0006】
(5)ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜100重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびその他の共重合性モノマー(g)0〜50重量%からなるモノマーまたはモノマー混合物である前記(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(6)ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜99.5重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびウレタン(メタ)アクリレート0.5〜30重量%を含むその他の共重合性モノマー(g)0.5〜50重量%からなるモノマー混合物であり、軟質フィルムが軟質ウレタンフィルムある前記(5)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(7)ゴム状ポリマーとガラス状ポリマーの重量比が、95/5〜30/70である前記(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(8)二段目反応を、ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)と界面活性剤を含む乳化液を一段目反応液に添加して一段目粒子に吸収または付着させラジカル重合を行う前記(1)記載の軟質フィルム用艶消し剤、
(9)軟質フィルムに前記(1)〜(8)のいずれかに記載の軟質フィルム用艶消し剤を含有させた艶消し軟質フィルム、および
(10)軟質フィルム100重量部に対し、軟質フィルム用艶消し剤を3〜200重量部含有させた前記(9)記載の艶消し軟質フィルム、
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における一段目反応は重合によりゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)を懸濁重合により、ガラス転移温度が20℃以下のゴム状ポリマーを形成させる反応である。ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマーとして好ましいものは、アルキル(メタ)アクリレート(a)50〜99.9重量%、分子内に2個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(b)0.1〜20重量%およびその他の共重合性モノマー(c)0〜49.9重量%からなるモノマー混合物である。前記のアルキル(メタ)アクリレート(a)としては、例えばエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等アルキル基の炭素数が2〜20のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。それらの中でもブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどアルキル基の炭素数が2〜10のものが好ましく、特にブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレートが好ましい。このアルキル(メタ)アクリレートは、ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)中、通常50〜99.9重量%、好ましくは60〜99.9重量%の範囲で用いられる。
【0008】
またこのゴム状ポリマーのガラス転移温度が20℃よりも高い場合は、十分なフィルムの柔軟性、強靱性、風合いが得られないことがある。したがって、ゴム状ポリマーのガラス転移温度は−60〜20℃が好ましく、−60〜10℃がさらに好ましい。
この一段目反応には、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能モノマー(b)を用いることにより、ゴム状ポリマーの弾性率のコントロール、あるいは耐熱性、耐溶剤性等を付与させることが可能になる。
分子内に二個以上のビニル基を有する多官能モノマー(b)としては、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニルモノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等、また異なる反応性のビニル基を有するモノマーとしては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等、またウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等も挙げることができるが、特にエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0009】
このような分子内に二個以上のビニル基を有する多官能モノマー(b)は、ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)中通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で用いられる。
さらに、一段目反応における(a)および(b)と共重合可能な共重合性モノマー(c)としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。またエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を持ったモノマーを共重合させることもできる。例えばエポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、アミノ基を持つモノマーとしては、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。
【0010】
これらの共重合性モノマー(c)は、ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)中、通常0〜49.9重量%、好ましくは0〜39.9重量%の範囲で用いられる。この一段目反応は、先に述べたゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)、分散安定剤、油溶性のラジカル重合開始剤およびイオン交換水を重合容器に仕込んで、攪拌下懸濁重合を行う。油溶性のラジカル重合開始剤は、予め重合性モノマーに溶解させておくことが好ましい。前記分散安定剤としては、例えば、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール部分ケン化物等の水溶性高分子、リン酸三カルシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の無機物などが例示できる。これらの分散安定剤のうち、特にポリビニルアルコール部分ケン化物、ヒドロキシプロピルセルロース、リン酸三カルシウムが好ましく用いられる。またこれらの分散安定剤は一種類又は二種類以上使用できる。
【0011】
分散安定剤の使用量は、例えば一段目反応の重合性モノマー(I)100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部程度である。
油溶性のラジカル開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、o−メトキシベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物等が例示される。これらのラジカル重合開始剤のうち、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等が好ましく用いられる。またこれらのラジカル重合開始剤は一種類又は二種類以上使用できる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば一段目反応の重合性モノマー(I)100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度である。必要に応じてモノマーの液滴の分散安定化のため界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤やポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルなどのノニオン界面活性剤等を添加しても良い。またこれらの界面活性剤は一種類又は二種類以上使用できる。
【0012】
界面活性剤の使用量は、例えば一段目反応の重合性モノマー(I)100重量部に対して0.05〜2重量部程度である。また必要に応じて水相重合の禁止剤、例えば亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。
重合性モノマー(I)を懸濁重合してゴム状ポリマー粒子を生成させる工程では、反応開始に先立って、重合性モノマー(I)、分散安定剤、油溶性のラジカル重合開始剤およびイオン交換水の混合物を攪拌による剪断力により、モノマー滴を所望の大きさに調整するのが好ましい。この場合、100μm以下の微小なモノマー滴を形成するためには、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、ラインミキサー等の各種の分散手段を使用するのが好ましい。モノマー滴の大きさは、分散手段の回転速度などによる剪断力の調整により、制御することが可能である。
このようにして調製された重合性モノマー分散液を、通常ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度まで昇温し重合反応を行うことにより一段目反応のゴム状ポリマー粒子懸濁液が得られる。例えば、ラウロイルパーオキサイドを用いる場合は55℃以上に、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを用いる場合は65℃以上に昇温しラジカル重合を行うことにより、一段目反応のゴム状ポリマー粒子懸濁液が得られる。
次に二段目反応においては、上述した一段目反応で得られたゴム状ポリマー粒子懸濁液の存在下に、ガラス状ポリマーを形成するモノマーを添加し、ガラス転移温度が50℃以上を有するガラス状ポリマーを形成させる。このガラス転移温度が50℃より低い場合は、粒子間の融着が起こり、ブロッキング等により作業性の悪化もしくはフィルムに混練した際の分散性に問題が生じることがある。したがって、ガラス状ポリマーのガラス転移温度は、50〜140℃が好ましく、60〜130℃がさらに好ましい。
【0013】
本発明における二段目反応は、一段目反応により得られたゴム状ポリマー粒子の懸濁液に、ガラス転移温度が50℃以上のガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)を添加して懸濁重合させ、多相構造粒子懸濁液を得る反応である。ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)として好ましいものは、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも1種類のモノマー、必要によりさらに分子内に2個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)およびその他の共重合可能な共重合性モノマー(g)からなるものである。アルキル(メタ)アクリレート(d)には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートなど、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族ビニルモノマー(e)としては、たとえばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどを挙げることができる。この(d)および(e)のモノマーの合計使用量は、二段目反応に用いられる重合性モノマー(II)中、通常50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%である。二段目反応において分子内に二個以上のビニル基を有する多官能モノマー(f)を用いることにより、ポリマー粒子の分散性がさらに向上することもある。この分子内に2個以上ビニル基を有する多官能モノマーとしては、前述の(b)と同じものが使用でき、二段目反応の重合性モノマー(II)中、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の範囲で使用することができる。
【0014】
この二段目反応においては、(d)、(e)および(f)のモノマーと共にこれらと共重合可能なその他の共重合性モノマー(g)、例えば(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート以外のアルキルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を共重合させることも可能である。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を持ったモノマーを共重合させることもできる。たとえばエポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしてはメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、アミノ基を持つモノマーとしては、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。
このその他の共重合可能な共重合性モノマー(g)の使用量は、二段目反応における重合性モノマー(II)中、通常0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%である。
【0015】
軟質フィルムが軟質ウレタンフィルムである場合は、その他の共重合可能な共重合性モノマー(g)としてウレタン(メタ)アクリレートを二段目反応における重合性モノマー(II)中0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%使用するのがよい。この場合、その他の共重合可能な共重合性モノマー(g)としてウレタン(メタ)アクリレート以外のモノマーを併用しても良い。従って、ウレタン(メタ)アクリレートを含むその他の共重合可能な共重合性モノマー(g)を使用する場合その使用量は、二段目反応における重合性モノマー(II)中、0.5〜50重量%、好ましくは1〜50重量%である。
この様に二段目反応にウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより得られた艶消し剤は、軟質ウレタンフィルムに用いた場合、さらに優れた艶消し効果が得られることがある。
二段目反応に用いられる重合性モノマー(II)の添加時期は、一段目反応の重合転化率が90%以上となった時期が望ましい。この時期があまり早すぎると、ポリマー粒子の脱水時や乾燥時にポリマー粒子間で凝集、融着が起こることがある。二段目反応における重合性モノマー(II)の添加方法としては、先に述べた界面活性剤もしくは分散安定剤と共に予め乳化液、あるいは懸濁液を調製し、一括もしくは所定の時間をかけて供給する方法が好ましく用いられる。
【0016】
二段目反応において更に重合開始剤を添加することもできるが、油溶性のラジカル重合開始剤の場合は二段目反応の重合性モノマー(II)に溶解して添加し、また、水溶性ラジカル重合開始剤の場合は水溶液の状態で別途添加することができる。二段目反応に使用できる重合開始剤としては、前述の油溶性のラジカル重合開始剤が使用でき、また水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系重合開始剤、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]等のアゾ系重合開始剤等を用いることができる。またこれらのラジカル重合開始剤は一種類又は二種類以上使用できる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば二段目反応の重合性モノマー(II)100重量部に対し0.1〜10重量部、好ましくは0.05〜2重量部程度である。この添加量が多すぎると、新たな粒子や異形の粒子を生成し、多相構造をとらせることが困難となる。
一段目反応のゴム状ポリマーと二段目反応のガラス状ポリマーの重量比は、通常95/5〜30/70、好ましくは90/10〜50/50の範囲である。
【0017】
一段目反応のゴム状ポリマーがこの範囲よりも少ない場合は、十分なゴム弾性が得られないことがある。一方、一段目反応のゴム状ポリマーがこの範囲よりも多い場合は、ポリマー粒子の脱水時や乾燥時にポリマー粒子間で凝集、融着が起こることがあり、また、たとえポリマー粒子が得られたとしても、ブロッキング等により作業性の悪化もしくはフィルムに混練した際の分散性に問題が生じることがある。このようにして製造される多相構造粒子の重量平均粒子径は、好ましくは4〜80μm、さらに好ましくは5〜50μmの範囲のものである。重量平均粒子径2μm以下のものは、この重合法では製造が困難であり、また重量平均粒子径100μm以上のものは、軟質フィルムに混練したときの艶消し効果が低く、表面のざらつきがひどくなる。反応終了後に得られたポリマー粒子の単離方法としては、例えば遠心分離機や減圧濾過機により脱水し、減圧乾燥機等により乾燥する方法や、噴霧乾燥等が挙げられる。また単離前に、ポリマー粒子に付着した分散安定剤や界面活性剤を除去するため必要に応じて洗浄を行うことが望ましい。ポリマー粒子の乾燥は、常圧または減圧下、80℃以下の低温で行うことが好ましい。乾燥温度が80℃を越えると一部ポリマー粒子が融着することがある。得られたポリマー粒子は、そのまま、またはフィルム成形時のフィシュアイの発生等を防止するため、例えば、100〜400メッシュ程度の篩にかけて製品とすることができる。またこれらポリマー粒子は、さらに必要により、微粒子状シリカ等の無機微粒子、滑剤、他のポリマー微粒子等と混合して製品としてもよい。
【0018】
本発明の軟質フィルム用艶消し剤を、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、天然ゴム等の軟質樹脂(フィルム化した場合柔軟性があり、延伸や折り曲げによる白化がおこらない樹脂)100重量部に対し、要求される艶消し性に応じて3〜200重量部、好ましくは5〜120重量部、混練させることにより艶消し軟質フィルムが得られる。上記艶消し軟質フィルムの製造は、例えば軟質樹脂と軟質フィルム用艶消し剤をミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラー等で混合し、単軸もしくは二軸押し出し機で溶融混練後、Tダイ法やインフレーション法により行うことが出来る。
本発明の軟質フィルム用艶消し剤に加えて、必要に応じて、種々の添加剤を適当量加えて使用してもよい。このような添加剤としては、補強材、無機充填剤、難燃化剤、離型剤、耐候安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐熱性付与剤、滑剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお実施例及び比較例中に用いる略語は下記の通りである。
【0020】
実施例1
軟質フィルム用艶消し剤Aの調製および艶消し軟質フィルムBの作成
5リットル容器内にDIW 2000g、5%PVA水溶液300gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により7000rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 10gを溶解した、BA 610g、BGA 10g、ALMA 10gからなるモノマー混合液を一括で添加した。さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を得た。この容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。そのまま2時間反応を行った後、ポリマー粒子懸濁液からサンプリングを行い、モノマ−の重合転化率を測定したところ、96%であった。次いで、ポリマー粒子懸濁液を60℃に冷却し、以下に示す二段目反応用モノマー乳化液を10分かけて連続的に添加した。
二段目反応用モノマー乳化液
MMA 340g
EA 20g
EGMA 10g
AIBN 4g
1%SSS水溶液 100g
DIW 100g
【0021】
重合が始まり発熱ピークが観測された時点で80℃まで昇温し、3時間熟成反応を行った。得られた懸濁液を室温まで冷却した後遠心機を用いて脱水洗浄し、更に60℃にて一昼夜送風乾燥し、200メッシュの篩にかけることにより、粒子間に凝集のない軟質フィルム用艶消し剤A 950gを得た。コールターマルチサイザーII(コールター(株)製)により軟質フィルム用艶消し剤Aの重量平均粒子径を測定したところ8μmであった。また、軟質フィルム用艶消し剤Aの動的粘弾性測定により、ゴム状ポリマ−のガラス転移温度は−40℃であり、ガラス状ポリマ−のガラス転移温度は113℃であった。
得られた軟質フィルム用艶消し剤A 100gと軟質アクリル樹脂(MMA/BA=95/5の共重合物)900gを240℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ30μmの軟質フィルムBを得た。得られた軟質フィルムBの光沢度は30(日本電色工業(株)製 GLOSS METER(60゜−60゜測定))であり、軟質フィルムBを折り曲げた時の白化も見られなかった。これに対し軟質フィルム用艶消し剤を添加しないフィルムの光沢度は140であった。
【0022】
実施例2
軟質フィルム用艶消し剤Cの調製および艶消し軟質フィルムDの作成
5リットル容器内にDIW 2000g、5%PVA水溶液300gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により5500rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 10gを溶解した、BA 720g、BGA 10g、ALMA 10gからなるモノマー混合液を一括で添加した。さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を得た。この重合容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。そのまま2時間反応を行った後、ポリマー粒子懸濁液からサンプリングを行い、モノマ−の重合転化率を測定したところ、96%であった。次いで、ポリマー粒子懸濁液を60℃に冷却し、以下に示す二段目反応用モノマー乳化液を10分かけて連続的に添加した。
二段目反応用モノマー乳化液
SM 250g
DVB 10g
1%SSS水溶液 100g
1%SHC水溶液 100g
【0023】
重合が始まり発熱ピークが観測された時点で80℃まで昇温し3時間熟成反応を行った。得られた懸濁液を室温まで冷却した後遠心機を用いて脱水洗浄し、更に60℃にて一昼夜送風乾燥し、200メッシュの篩にかけることにより、粒子間に凝集のない軟質フィルム用艶消し剤C 960gを得た。コールターマルチサイザーII(コールター(株)製)により軟質フィルム用艶消し剤Cの重量平均粒子径を測定したところ13μmであった。
また、軟質フィルム用艶消し剤Cの動的粘弾性測定により、ゴム状ポリマ−のガラス転移温度は−40℃であり、ガラス状ポリマ−のガラス転移温度は120℃であった。
得られた軟質フィルム用艶消し剤C 200gと軟質アクリル樹脂(MMA/BA=95/5の共重合物)800gを240℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ50μmの軟質フィルムDを得た。
得られた軟質フィルムDの光沢度は20(日本電色工業(株)製 GLOSSMETER(60゜−60゜測定))であり、軟質フィルムDを折り曲げた時の白化も見られなかった。これに対し軟質フィルム用艶消し剤を添加しないフィルムの光沢度は140であった。
【0024】
実施例3
軟質フィルム用艶消し剤Eの調製および艶消し軟質フィルムFの作成
5リットル容器内にDIW 1950g、5%PVA水溶液175gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により4400rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 8gを溶解した、BA 450g、MMA 148g、BGA 2gからなるモノマー混合液を一括で添加した。
さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を得た。この重合容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。そのまま2時間反応を行った後、ポリマー粒子懸濁液からサンプリングを行い、モノマ−の重合転化率を測定したところ、97%であった。次いで、ポリマー粒子懸濁液を60℃に冷却し、以下に示す二段目反応用モノマー乳化液を10分かけて連続的に添加した。
二段目反応用モノマー乳化液
MMA 360g
EA 20g
BGA 10g
UA 10g
AIBN 8g
1%SSS水溶液 125g
1%SHC水溶液 125g
DIW 125g
【0025】
重合が始まり発熱ピークが観測された時点で80℃まで昇温し3時間熟成反応を行った。得られた懸濁液を室温まで冷却した後遠心機を用いて脱水洗浄し、更に60℃にて一昼夜送風乾燥し、200メッシュの篩にかけることにより、粒子間に凝集のない軟質フィルム用艶消し剤E 960gを得た。コールターマルチサイザーII(コールター(株)製)により軟質フィルム用艶消し剤Eの重量平均粒子径を測定したところ18μmであった。また、軟質フィルム用艶消し剤Eの動的粘弾性測定により、ゴム状ポリマ−のガラス転移温度は−2℃であり、ガラス状ポリマ−のガラス転移温度は118℃であった。
得られた軟質フィルム用艶消し剤E 500gと熱可塑ポリウレタン樹脂(エラストラン C85A 武田バ−ディッシュウレタン工業(株)製)500gを230℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ200μmの軟質フィルムFを得た。得られた軟質フィルムFの光沢度は1(日本電色工業(株)製 GLOSS METER(60゜−60゜測定))であり、延伸時や折り曲げ時の白化も全く見られなかった。これに対し、軟質フィルム用艶消し剤を添加しなかったフィルムの光沢度は140であった。
【0026】
実施例4
軟質フィルム用艶消し剤Gの調製および艶消し軟質フィルムHの作成
5リットル容器内にDIW 2000g、5%PVA水溶液200gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により6000rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 8gを溶解した、BA 530g、MMA 147.5g、BGA 2.5gからなるモノマー混合液を一括で添加した。
さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を得た。この重合容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。そのまま2時間反応を行った後、ポリマー粒子懸濁液からサンプリングを行い、モノマ−の重合転化率を測定したところ、97%であった。次いで、ポリマー粒子懸濁液を60℃に冷却し、以下に示す二段目反応用モノマー乳化液を10分かけて連続的に添加した。
二段目反応用モノマー乳化液
MMA 246g
EA 16g
BGA 10g
UA 48g
AIBN 6.4g
1%SSS水溶液 100g
1%SHC水溶液 100g
DIW 100g
【0027】
重合が始まり発熱ピークが観測された時点で80℃まで昇温し3時間熟成反応を行った。得られた懸濁液を室温まで冷却した後遠心機を用いて脱水洗浄し、更に60℃にて一昼夜送風乾燥し、200メッシュの篩にかけることにより、粒子間に凝集のない軟質フィルム用艶消し剤G 960gを得た。コールターマルチサイザーII(コールター(株)製)により軟質フィルム用艶消し剤Gの重量平均粒子径を測定したところ10μmであった。また、軟質フィルム用艶消し剤Gの動的粘弾性測定により、ゴム状ポリマ−のガラス転移温度は−4℃であり、ガラス状ポリマ−のガラス転移温度は110℃であった。
得られた軟質フィルム用艶消し剤G 500gと熱可塑ポリウレタン樹脂(エラストラン C95A 武田バ−ディッシュウレタン工業(株)製)500gを230℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ100μmの軟質フィルムHを得た。得られた軟質フィルムHの光沢度は1(日本電色工業(株)製 GLOSS METER(60゜−60゜測定))であり、延伸時や折り曲げ時の白化も全く見られなかった。これに対し、軟質フィルム用艶消し剤を添加しなかったフィルムの光沢度は140であった。
【0028】
比較例1
ポリマ−粒子Iの調製および軟質フィルムJの作成
5リットル容器内にDIW 2200g、5%PVA水溶液300gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により7500rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 10gを溶解した、MMA 950g、EGMA 50gからなるモノマー混合液を一括で添加した。さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を得た。この重合容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。
重合が始まり発熱ピ−クが観測された時点で80℃まで昇温し4時間熟成反応を行なった。得られた懸濁液を室温まで冷却した後遠心機を用いて脱水洗浄し、更に60℃にて一昼夜送風乾燥し、200メッシュの篩にかけることにより、粒子間に凝集のないポリマ−粒子I 960gを得た。
コールターマルチサイザーII(コールター(株)製)によりポリマー粒子Iの重量平均粒子径を測定したところ8μmであった。また、ポリマ−粒子Iの動的粘弾性測定により、このポリマ−粒子Iのガラス転移温度は120℃であった。
得られたポリマー粒子I 100gと軟質アクリル樹脂(MMA/BA=95/5の共重合物)900gを240℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ30μmの軟質フィルムJを得た。得られた軟質フィルムJの光沢度は30(日本電色工業(株)製 GLOSS METER(60゜−60゜測定))であったが、軟質フィルムJの柔軟性はなくなり、折り曲げにより容易に白化した。
【0029】
比較例2
ポリマ−粒子Kの調製および軟質フィルムLの作成
5リットル容器内にDIW 2200g、5%PVA水溶液300gを加え、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)により7500rpmで攪拌を行ないながら、あらかじめ重合開始剤としてLPO 10gを溶解した、BA 610g、MMA 340g、EA 20g、BGA 10g、EGMA 10g、ALMA 10gからなるモノマー混合液を一括で添加した。さらに一時間分散処理を行いモノマー分散液を調整した。この重合容器に撹拌機および還流冷却器を取り付け、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。
重合が始まり発熱ピ−クが観測された時点で80℃まで昇温し4時間熟成反応を行なった。その後、室温まで冷却し、ポリマ−粒子の懸濁液を得た。この懸濁液をコールターマルチサイザーII(コールター(株)製)により重量平均粒子径を測定したところ8μmであった。このポリマ−粒子の懸濁液を遠心機を用いて脱水洗浄すると、ポリマー粒子間の凝集が激しく、更に60℃にて一昼夜送風乾燥することでポリマー粒子間の融着まで進んだポリマー粒子K(ポリマー塊状物)が得られた。
また、ポリマー粒子Kの動的粘弾性測定により、このポリマ−粒子Kのガラス転移温度は2℃であった。
得られたポリマー粒子K(ポリマー塊状物)100gと軟質アクリル樹脂(MMA/BA=95/5の共重合物)900gを240℃で混練後、Tダイより押し出し、厚さ30μmの軟質フィルムLを得た。得られた軟質フィルムLの光沢度は50(日本電色工業(株)製 GLOSS METER(60゜−60゜測定))であったが、ポリマー粒子Kは粒子間の融着が激しく、樹脂中で一次粒子まで分散しないため、表面のざらつきがひどかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の軟質フィルム用艶消し剤を軟質樹脂に混練した場合、ポリマ−粒子が一次粒子まで分散し、透明感のある優れた艶消し性を有する軟質フィルムを得ることができる。また、本軟質フィルム用艶消し剤は、軟質フィルムが本来有する柔軟性、強靱性、風合いを損なうことなく、さらにはフィルムの折り曲げや延伸時に白化現象を起こすことがない。
Claims (8)
- ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)の懸濁重合によりガラス転移温度が20℃以下のゴム状ポリマーを形成する一段目反応と、それに引き続きガラス転移温度が50℃以上のガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)を添加して懸濁重合を行う二段目反応により製造される重量平均粒子径4〜80μmの多相構造粒子を含有する軟質フィルム用艶消し剤。
- ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマー(I)が、アルキル(メタ)アクリレート(a)50〜99.9重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(b)0.1〜20重量%およびその他の共重合性モノマー(c)0〜49.9重量%からなるモノマー混合物である請求項1記載の軟質フィルム用艶消し剤。
- ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜100重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびその他の共重合性モノマー(g)0〜50重量%からなるモノマーまたはモノマー混合物である請求項1記載の軟質フィルム用艶消し剤。
- ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)が、アルキル(メタ)アクリレート(d)および芳香族ビニルモノマー(e)から選ばれた少なくとも一種類のモノマー50〜99.5重量%、分子内に二個以上のビニル基を有する多官能性モノマー(f)0〜10重量%およびウレタン(メタ)アクリレート0.5〜30重量%を含むその他の共重合性モノマー(g)0.5〜50重量%からなるモノマー混合物であり、軟質フィルムが軟質ウレタンフィルムある請求項3記載の軟質フィルム用艶消し剤。
- ゴム状ポリマーとガラス状ポリマーの重量比が、95/5〜30/70である請求項1記載の軟質フィルム用艶消し剤。
- 二段目反応を、ガラス状ポリマーを形成する重合性モノマー(II)と界面活性剤を含む乳化液を一段目反応液に添加して一段目粒子に吸収または付着させたのち懸濁重合を行う請求項1記載の軟質フィルム用艶消し剤。
- 軟質フィルムに請求項1〜6のいずれかに記載の軟質フィルム用艶消し剤を含有させた艶消し軟質フィルム。
- 軟質フィルム100重量部に対し、軟質フィルム用艶消し剤を3〜200重量部含有させた請求項7記載の艶消し軟質フィルム。
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