JP4066623B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物における壁材、天井材、床材等の建築内装材、建具の表面材、家具や家電製品等の表面材、車両内装材等に用いるための化粧シートに関するものであり、特に、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等、各種の被貼着基材の表面に貼り合わせて、化粧板等の化粧材として用いるための化粧シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護上の問題が懸念されている塩化ビニル樹脂製化粧シートに替わるものとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが、既に数多く提案されている(特開平2−128843号、特開平4−83664号、特開平6−1881号、特開平6−198831号、特開平9−328562号等)。しかし、これらのオレフィン系樹脂製化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことにより、焼却時の有毒ガス等の発生は無くなるが、通常のポリエチレン樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂などを始め、ポリプロピレン樹脂であっても一般的なポリプロピレン樹脂もしくは軟質ポリプロピレン樹脂などを使用しているため、表面の耐傷付き性が悪く、従来の塩化ビニル化粧シートの表面傷付き性からは遥かに劣るものであった。
【0003】
係る状況に鑑み本発明者らは、曲げ初期弾性率が1000MPa以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂を使用した化粧シートを既に提案し(特開2000−85076号等)、耐傷付き性について優れた利点を見出した。しかしこの化粧シートは、後加工工程においてVカットやラッピング等の折り曲げ加工を行った際に、その加工形状や加工温度、加工速度等の加工条件によっては、化粧シートの破断や外周部の割れなどが発生する場合があるという問題点があった。
【0004】
そこで本発明者らはさらに、mmmm分率(ペンタッド分率)が96%以上、MFR(メルトフローレート)が5〜40g/10min(230℃)、分子量分布(MWD=Mw/Mn)(但し、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)が4以下、球晶の平均粒径が1〜50μmである高結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とする透明樹脂層を具備する化粧シートを提案し(特願2000−82514号)、Vカット等の折り曲げ加工適性の大幅な改善と表面耐傷付き性の向上との両立を成し遂げた。しかし、係る如き化粧シートを用いた化粧板の用途が益々拡大していると共に、消費者の品質に対する意識も益々高度化していることにより、表面傷付き性の更なる向上に対する益々強まる要求には、上記の化粧シートでも必ずしも十分には対応できていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記した問題点を解決すべくなされたものであり、その課題とするところは、従来の高結晶性ポリプロピレン樹脂を使用した化粧シートを上回る極めて優れた耐傷付き性を有し、しかもVカット等の折り曲げ加工適性にも優れた化粧シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂90〜100重量%を主成分とする透明樹脂層を少なくとも具備してなる化粧シートであって、前記高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部が、擬六方晶系部10〜90重量%及び単斜晶系部90〜10重量%からなり、かつ、結晶部における球晶の平均粒径が5〜10μmであることを特徴とする化粧シート。
【0008】
また、前記化粧シートの中でも特に、前記高結晶性ポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10minであり、分子量分布(MWD=Mw/Mn)が4以下であることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記化粧シートの中でも特に、総厚が80〜250μmであることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧シートは、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が少なくとも95%以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂(これはプロピレンの単独重合体すなわちホモポリマーである)を少なくとも90重量%以上含有する透明樹脂層を少なくとも具備してなる化粧シートであって、該透明樹脂層中における前記高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部が、準安定相である擬六方晶系部と、安定相である単斜晶系部との2種類の結晶部から構成されており、それらの構成比率が、擬六方晶系部が10〜90重量%、単斜晶系部が90〜10重量%の範囲内で構成されていることが重要である。
【0011】
本発明において、擬六方晶系部と単斜晶系部との構成比率を上記の通り特定した理由は、耐傷付き性と折り曲げ加工性(耐破断性、耐白化性)とを両立させるためである。すなわち、高結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とする透明樹脂層中のポリプロピレン結晶部が、準安定相である擬六方晶系部のみによって構成されていると、この擬六方晶系の結晶は、結晶内部における隣接するラメラ同士が応力により容易にずれ易い結晶構造となっており、応力に対して液晶(スメクチック液晶)に近い挙動を示す性質を有していることにより、折り曲げ加工時には容易に外形の変化に追従して結晶が塑性変形し、破断や白化を発生することなく透明性を維持することができるほか、衝撃的な応力が加えられた際にも、上記した結晶の塑性変形によって衝撃のエネルギーを吸収することができることにより、耐衝撃性も良好である。しかしその反面、表面を硬質物で擦られると、硬質物が接触した部分では接触応力によって結晶が上記した様に容易に塑性変形することにより、擦られた後が凹み(傷)となって残ってしまう。
【0012】
これに対し、ポリプロピレン結晶部が安定相である単斜晶系部のみによって構成されていると、単斜晶系の結晶は、ポリプロピレン樹脂の分子鎖が最も緊密に充填されており、隣接するラメラ同士のすべりも発生しにくい結晶構造となっていることから、表面を硬質物で擦られても、硬質物との接触応力によく耐えて結晶が塑性変形しにくく、従って傷がつきにくいのである。しかしその反面、折り曲げ加工時には外形の変化に追従して結晶が塑性変形することが困難であるので、外形の変化に追従するためには結晶同士の界面や結晶部と非晶部との界面において微細な剥離を発生して相互にずれることによって変形する必要がある。この微細な剥離によって発生する空洞部が、透過する光を散乱して白化として観察されるのであり、また甚だしい場合には、透明樹脂層の内部で多数発生した空洞部が透明樹脂層の表面や裏面まで相互に繋がることにより、シートの亀裂や破断に至るのである。また、衝撃的な応力が加えられた際にも、結晶の塑性変形によって衝撃のエネルギーを十分に吸収することができずに、上記と同様に結晶同士の界面や結晶部との界面での微細剥離により、白化や亀裂、破断等を発生し易い。
【0013】
そこで本発明は、上記のように互いに性質を異にする2種類の結晶部を共存させることにより、両者の長所を活かし短所を補い合って、耐傷付き性と折り曲げ加工性との両立が可能となり、耐衝撃性にも優れたものが得られることを見出して完成されたものである。擬六方晶系部と単斜晶系部との構成比率は、一方の比率が10重量%を下回るとその長所が十分に活かされないので、双方共に10重量%以上存在するように、擬六方晶系部10〜90重量%、単斜晶系部90〜10重量%の範囲内とするのが良く、この範囲内で耐傷付き性と折り曲げ加工適性との兼ね合いにより適宜設計すれば良い。つまり、耐傷付き性よりも折り曲げ加工適性を優先する場合には擬六方晶系部、逆の場合には単斜晶系部をそれぞれ多目に設計する。一般的な化粧板の用途の場合には、擬六方晶系部20〜60重量%、単斜晶系部80〜40重量%程度の構成比率で通常は良好な結果が得られる。
【0014】
上記の様にしてポリプロピレン結晶部における擬六方晶系部と単斜晶系部との構成比率により化粧シートの性能を最適化するに当たっては、ポリプロピレン樹脂としては立体規則性の高い高結晶性ポリプロピレン樹脂を使用することが重要である。立体規則性の低いポリプロピレン樹脂は一般に、通常の成形条件では結晶部が容易に単斜晶系に結晶し易いので、準安定相である擬六方晶系部を生成させることが難しく、その一方で、得られる結晶化度があまり高くないために、結晶部の殆どが単斜晶系に結晶するにも拘わらず、得られる耐傷付き性はあまり高くないからである。従って、本発明の化粧シートに用いるポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が少なくとも95%以上、より好ましくは96%以上、更に好ましくは97%以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂を使用することが重要である。
【0015】
なお、上記アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR(核磁気共鳴)測定法により、上記透明樹脂層を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂組成物中の原子配列、電子構造、分子の微細構造を規定するものであり、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率とは、13C−NMR測定法により求めたプロピレン単位が5個所定配置で並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられている。
【0016】
また、上記高結晶性ポリプロピレン樹脂には、例えば押出製膜性の改善、折り曲げ加工性や耐衝撃性の向上等、所望の目的により、必要に応じて他の樹脂、例えばランダム重合ポリプロピレン樹脂や低密度ポリエチレン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂等の各種オレフィン系樹脂や、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体又はその水素添加物、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー共重合体等のエラストマー成分などを添加することも可能である。但し、高結晶性ポリプロピレン樹脂との相溶性に乏しいものを使用すると、折り曲げ加工時に樹脂間の界面で剥離して白化や亀裂、破断等の原因となるから、また、これらの添加物の添加量が増加すれば当然に、高結晶性ポリプロピレン樹脂の有する優れた特性が減殺される結果となる。従って、上記各種添加物の添加量は10重量%以下に抑え、上記高結晶性ポリプロピレン樹脂を少なくとも90重量%以上含有する組成とすることが重要である。
【0017】
本発明の化粧シートを製造するにあたり、透明樹脂層に含有される高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部に占める擬六方晶系部と単斜晶系部との構成比率を制御するためには、周知の結晶成長の理論を応用すればよい。すなわち、一般に、結晶性の高分子を溶融状態から冷却固化するに当たり、結晶成長速度を上回る冷却速度で急冷すれば非晶質体となり、逆に徐冷すれば結晶体となる。高結晶性ポリプロピレン樹脂の場合には、押出成形等の様な通常の樹脂成形条件の冷却速度では非晶質体とはならないが、安定相である単斜晶系にまで完全に結晶化が進行することができずに、準安定相である擬六方晶系に留まる(これが、従来の高結晶性ポリプロピレン樹脂を用いた化粧シートにおいて、必ずしも十分な耐傷付き性が得られていなかった原因である)。一方、押出製膜後冷却固化前に徐冷炉を通す等の特殊な成形条件で徐冷すれば、結晶化過程が完結して単斜晶系となる。そこで、徐冷工程における冷却速度を急冷と徐冷との中間の範囲で適宜設定するか、或いは、結晶化の進行の途中で冷却速度を変化させる(すなわち、急冷工程と徐冷工程とを組み合わせる)ことによって、冷却固化の過程において擬六方晶系部と単斜晶系部との両方を生成させるというのが一つの方法である。
【0018】
但し、上記の方法では、樹脂成形後に徐冷工程を必要とするため、化粧シートの製造設備が複雑且つ大型で高価なものとなり、徐冷工程に要する時間のために生産性も低いなどの難点もある。そこで、係る特別な製造設備や工程を必要とせずに、通常の製造方法によって擬六方晶系部と単斜晶系部との両方を生成させる方法として、造核剤を利用する方法も考えられる。すなわち、予め造核剤を通常の配合比で添加した高結晶性ポリプロピレン樹脂を加熱溶融して通常の成形条件で成形冷却固化させると、徐冷工程を経ずとも結晶化過程が完全に進行し、結晶部のほぼ全てが単斜晶系部からなる高結晶性ポリプロピレン樹脂成形体が得られる。従って、高結晶性ポリプロピレン樹脂の全体には造核剤の効果が及ばないように、造核剤の配合量を通常よりも著しく少なく設計すれば、通常の樹脂成形条件で擬六方晶系部と単斜晶系部との両方を同時に生成させることが理論的には可能である。
【0019】
しかしながら、上記の2通りの方法はいずれも、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率を所定範囲に精密に制御することが困難であるという短所を有している。何となれば、冷却速度による制御では、徐冷炉の炉内温度の変動や樹脂の押出速度の変動の影響により、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率が変動し易いし、造核剤の添加量による制御では、造核剤の添加量は通常でも非常に少量であるので、これを更に減らして極端な微小量とすると、造核剤の配合時の僅かな秤量誤差が大きく影響して、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率が大きく変動したり、極少量の造核剤を樹脂中に均一に分散することも困難となって、その分散ムラのために成形体の場所により擬六方晶系部と単斜晶系部との比率が変動したりする要因ともなるからである。
【0020】
その他、前者の冷却速度による制御では、徐冷のために高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶成長が進みすぎて、球晶の平均粒径が極端に大きなものとなり易く、折り曲げ加工時に個々の球晶が非常に大きな変形作用を受ける結果、球晶の脆性破壊が発生し易く、一方、後者の造核剤の添加量による制御では、造核剤の作用によって冷却中に結晶核が大量に生成する結果、球晶の平均粒径が極端に小さなものとなり易く、折り曲げ加工時に球晶内のラメラ同士のずれによって全体の変形を吸収することが事実上不可能となって、球晶間の界面剥離による変形が主体となり、その結果いずれの場合も、折り曲げ加工時の白化や亀裂、破断等の原因となるのである。係る観点からは、球晶の平均粒径は1〜50μm、より好ましくは1〜20μmの範囲内となる様に制御することが望ましいのであるが、上記した冷却速度による制御と造核剤の添加量による制御とのいずれの場合も、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率と、球晶の平均粒径との双方を、最適な範囲内に制御することは、必ずしも容易ではない。
【0021】
これに対して、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率と、球晶の平均粒径との双方を、それぞれ独立して精密に制御することが可能な方法として、再加熱法(アニール法)がある。すなわち、高結晶性ポリプロピレン樹脂に造核剤を添加することなく、まず通常の条件で成形冷却固化して、高結晶性ポリプロピレン結晶部が実質的に擬六方晶系部のみからなる成形体を作製し、これを結晶部の相転移温度(約70℃)以上融点(約160℃)以下のある一定温度で、ある一定時間加熱(再加熱)することによって、成形体の内部における擬六方晶系の結晶の一部を、単斜晶系に相転移させる方法である。
【0022】
この方法によれば、再加熱時の相転移速度は、溶融状態からの冷却時の結晶化速度と比較すれば遥かに緩慢であるから、前記した冷却速度による制御法と比較すれば、再加熱工程の温度及び時間の条件により、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率をより精密に制御することが容易である。また、最初の成形冷却固化時の加工条件によって球晶の平均粒径を制御しておけば、後の再加熱工程では球晶の平均粒径は殆ど変化しないので、擬六方晶系部と単斜晶系部との比率と、球晶の平均粒径とを、全く独立に自由に制御することが容易に可能である利点もある。
【0023】
なお、実際の化粧シートの製造工程における上記再加熱工程の位置付けとしては、例えばシート製膜後のエージングによる再加熱、再加熱ロールに通すことによる再加熱、熱圧エンボス工程による再加熱、他のシートとの熱ラミネート(ダブリング)工程による再加熱等、適宜選択が可能である。
【0024】
本発明の目的の達成のために高結晶性ポリプロピレン樹脂に要求される要因としては、前述したアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)及び球晶の平均粒径の他、メルトフローレート(MFR)及び分子量分布(MWD=Mw/Mn)も重要である。すなわち、前述した結晶の塑性変形においては、結晶内の隣接するラメラ同士が変形に追従してずれていくことが重要であるが、分子量分布が大き過ぎたり、メルトフローレートが小さ過ぎたりすると、ラメラ間の帯分子による拘束力が強過ぎ、ずれを阻害するために、結晶が塑性変形しにくくなり、折り曲げ加工時の白化や亀裂、破断等の原因となる場合がある。また、メルトフローレートが逆に大き過ぎると、成形工程での溶融粘度が低い為に形状維持が不安定となる他、成形工程での結晶化過程や再加熱工程での相転移過程において、樹脂分子の拡散速度が大きいために、球晶の平均粒径や相転移比率等が不安定となり易い。従って、メルトフローレート(MFR)は5〜40g/10min(230℃)の範囲内であり、分子量分布(MWD=Mw/Mn)は4以下である高結晶性ポリプロピレン樹脂を採用することが望ましい。
【0025】
以上が、本発明の主要な構成の技術的原理である。以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施の形態を、図面に従って詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【0026】
図1に示すのは、前述した通りの構成の透明樹脂層1を用いた本発明の化粧シートの一例としての単層化粧シートであり、必要に応じて片面又は両面をコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性にした透明樹脂層1(高結晶性ポリプロピレン樹脂シート)の一方の面に絵柄層2及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層1の反対の面にトップコート層4を設けた構成の化粧シートである。隠蔽層3の被貼着基材に対する接着性に問題があれば重ねてプライマー層5を適宜設けてもかまわない。また、意匠性を向上させるためにトップコート層4側にエンボス模様を適宜設けてもよい。
【0027】
上記エンボス模様は、透明樹脂層1(高結晶性ポリプロピレン樹脂シート)に直接付与されるもので、その形成方法としては、予めシート状に製膜された高結晶性ポリプロピレン樹脂シートの表面に熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などが有る。ここではエンボス部にインキを埋め込みさらに意匠性を向上させることも可能である。
【0028】
透明樹脂層1としての高結晶性ポリプロピレン樹脂シートの成形方法は、所定の厚さに安定して製膜できさえすれば特に問題はなく、何ら規定されるものでは無いが、例えば押出機を用いて溶融樹脂をTダイからシート状に押し出す押出製膜法や、Oリングダイから押し出し空気圧で延伸させた後に切り開くインフレーション製膜法、カレンダー装置を用いて溶融樹脂をシート状に圧し延ばすカレンダー製膜法等が知られており、中でも押出製膜法が最も一般的である。
【0029】
ここで使用される透明樹脂層1としての高結晶性ポリプロピレン樹脂シートには、必要に応じて例えば熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、難燃剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としてはヒンダードアミン系等を任意の組み合わせで添加するのが一般的である。特に本用途に用いる場合は一般に耐候性を考慮する必要があり、紫外線吸収剤及び光安定剤を添加することが望ましく、添加量はそれぞれ0.1〜1.0%が適量である。
【0030】
絵柄層2及び隠蔽層3を設ける方法としては、透明樹脂層1としての高結晶性ポリプロピレン樹脂シートの片面に、例えば直接グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷等の適宜の印刷方法を任意に用いて形成することができる。また特に、隠蔽層3を施す場合には、例えばコンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、グラビアコーター等のコーターによる塗工法や、金属蒸着あるいはスパッタ法等を用いてもよい。トップコート層4を設ける方法も、隠蔽層3や絵柄層2等を設ける方法と同様で、何ら規定されるものではない。
【0031】
絵柄層2にインキを使用する場合はバインダーとしては硝化綿、セルロース、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物等の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法はウレタン系のインキでイソシアネートで硬化させる方法である。これらバインダー以外には通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特によく用いられる顔料には縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
【0032】
隠蔽層3に使用される材料も基本的には絵柄層2と同様のものでよいが、目的として隠蔽性を持たせる必要があるために顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用する。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、真鍮、青銅、アルミニウム等の金属粉末を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミニウム粉末を添加させることが多い。塗布厚みは2μm未満では隠蔽性を付与しにくく、10μmを越えると樹脂層の凝集力が弱くなるため、2〜10μmが妥当である。
【0033】
トップコート層4に使用される材料も特に規定されるものではないがポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能でかつ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでも良い。中でもイソシアネートの反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。イソシアネートにはトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選定できるが、耐候性を考慮すると2重結合をもつタイプよりも直鎖状の構造を持つタイプ、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が最適である。表面の硬度をさらに向上させるためには紫外線や電子線照射で硬化する樹脂の使用も可能である。さらに耐候性を向上させるために紫外線吸収材及び光安定材を適宜添加してもよい。また各種機能を付与するために抗菌材、防カビ材等の機能性添加材の添加も任意に行える。さらに、表面の意匠性から艶の調整のためあるいはさらに耐磨耗性を付与するためにアルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加も任意に行える。塗布厚みは通常2〜10μmが妥当である。
【0034】
プライマー層5に使用される材料も基本的には絵柄層2、隠蔽層3と同様のものでよいが、シート裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮するとブロッキングを避けてかつ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させても良い。塗布厚みは基材との密着を確保することが目的であるので0.1μm〜3.0μmが妥当である。
【0035】
図2及び図3に示すのは、表面に絵柄層2の施された基材シート7と透明層(透明樹脂層1、接着性樹脂層8、接着層6等)との積層体からなる複層化粧シートの例である。ここで、各層の積層方法及び透明層の層数は任意に選択できる。重要なことは、複数層の樹脂層から構成した多層構成の透明層を有する化粧シートの場合には、透明層中の少なくとも最表面の樹脂層を、本願発明において特定する高結晶性ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層1から構成することである。
【0036】
以下に図面にそって詳細に説明する。図2に示すのは、上から順にトップコート層4、透明樹脂層1、接着層(感熱接着層、アンカーコート層又はドライラミネート接着剤層等)6、絵柄層2、基材シート7、プライマー層5と積層された化粧シートの構成の一例である。ここで、トップコート層4、エンボスは必要とあれば設ければよく、プライマー層5も基材シート7がオレフィン系樹脂等のように表面不活性な材料からなる場合には設けておくことが望ましいが、表面が活性な材料からなる場合は必ずしも必要なものではない。また、基材シート7にオレフィン系樹脂のような表面が不活性な材料を用いる場合は、基材シート7の表裏にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。さらには、絵柄層2との密着性を確保するために、基材シート7と絵柄層2との間にプライマー層を設ける場合もある。また、化粧シートに隠蔽性を付与したい場合には、基材シート7として隠蔽性の着色シートを使用しても良いし、基材シート7の表面又は裏面に隠蔽層を設けても良い。
【0037】
図2に示す化粧シートにおいて、基材シート7としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレンープロピレン共重合ゴム、エチレンープロピレンージエン共重合ゴム、スチレンーブタジエン共重合ゴム、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合ゴム、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意に選定可能である。但し、本発明の当初の目的に鑑み、塩化ビニル樹脂等の様に塩素等のハロゲン元素を含有する材料は避けるべきである。なお、基材シート7は透明樹脂層1と同一の樹脂組成物からなるシートであってもかまわない。また、絵柄層2、トップコート層4、プライマー層5等については、図1に示した化粧シートの場合と同様である。
【0038】
接着層6は、基材シート7と透明樹脂層1等との接着方法によって任意の材料選定が可能であり、接着方法としては例えば熱ラミネート法、押出しラミネート法、ドライラミネート法等が有り、接着剤としては例えばアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。通常はその凝集力から、イソシアネートとポリオールとの反応を利用した2液硬化タイプのウレタン系接着剤が望ましい。
【0039】
積層方法にも特に規制はないが熱圧を応用した方法、押し出しラミネート法及びドライラミネート法等が一般的である。またエンボス模様を施す場合には、一旦各種方法でラミネートした積層シートに後から熱圧によりエンボスを施す方法、凹凸模様を設けた冷却ロールを用いて押出しラミネートと同時にエンボスを施す方法、押出し製膜と同時に凹凸模様を設けた冷却ロールを用いてエンボスを施した透明樹脂層1と基材シート7とを熱ラミネート法あるいはドライラミネート法等により貼り合わせる方法等がある。絵柄層2及び接着層6を施す位置は通常通り基材シート7側でもよいし、透明樹脂層1側でもよい。さらに、エンボスの凹部インキを埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
【0040】
図3には、図2に示したものとは異なるタイプの複層化粧シートの構成の一例を示す。この化粧シートは、プライマー層5、基材シート7、絵柄層2、透明樹脂層1、トップコート層4、接着剤層(アンカーコート層)6等は図2に示したものと全く同様であるが、異なるところは接着剤層(アンカーコート層)6と透明樹脂層1の間に接着性樹脂層8が設けられているところである。これは、特に押出しラミネート方法で本発明の化粧シートを製造する場合に、さらなるラミネート強度を求める場合に行うものであり、その具体的製法としては、透明樹脂層1と接着性樹脂層8との共押出し法でラミネートを行うのが最も好適である。
【0041】
上記接着性樹脂層8は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂や、オレフィン−アクリル系共重合体等の樹脂に、マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物のグラフト共重合による酸変性を施したものが好適に用いられ、その厚みは接着力向上目的から2μ以上が望ましく、一方逆に厚すぎると、せっかく高結晶性ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層1を用いて表面硬度を向上させたにも拘わらず、接着性樹脂自体の柔らかさの影響を受けて耐傷付き性が低下する原因となるため、20μ以下が望ましい。また、化粧シートの耐候性の面から、絵柄層3及び基材シート7を保護するために、前記のようにトップコート層4及び透明樹脂層1に耐候性処方を施すだけではなく、接着剤層6にも紫外線吸収剤及び光安定剤を添加することも好適に行うことができる。
【0042】
本発明の化粧シートの厚さは80〜250μmの範囲内とすることが望ましい。厚さが80μmを下回ると、この化粧シートを各種の被貼着基材の表面に貼り合わせて化粧材とした際に、化粧材の表面硬度が下地の被貼着基材の影響を受けるために、高結晶性ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層1が本来持つ優れた表面物性が必ずしも十分に発揮されない。一方250μmを上回ると、Vカット等の折り曲げ加工時におけるシートの変形量が非常に大きくなって透明樹脂層1が追従し切れず、白化や亀裂、破断等の原因となる場合があるからである。
【0043】
本発明の化粧シートにおける個々の構成層の厚さは、化粧シートの総厚を80〜250μmの範囲内とすることを念頭に、各層の機能や形成条件等から要求される厚さを適宜勘案して決定する。例えば、図1に示した単層化粧シートの場合、透明樹脂層1の厚さは化粧シートの総厚から絵柄層2、隠蔽層3、プライマー層5、トップコート層4の厚さを差し引いた厚さであるから、概ね50〜220μm程度の範囲であるが、単層化粧シートの場合は硬質の高結晶性ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層1が厚さの大部分を占めることから、全体としての柔軟性を維持する意味で、透明樹脂層1の厚さ50〜170μm程度、総厚80〜200μm程度とすることが望ましい。一方、図2及び図3に示した複層化粧シートの場合には、基材シート7の厚さとしては印刷作業性、コスト等を考慮して30〜150μm程度、透明樹脂層1の厚さとしては意匠性、後加工性、コスト等を考慮して30〜150μm程度とし、全体として総厚が80〜250μm程度とすることが望ましい。
【0044】
【作用】
以上のような本発明の化粧シートは、使用する樹脂に塩化ビニル樹脂を使用しないため、焼却時等に有毒ガスの発生もなく環境に優しいだけでなく、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とし、しかも該高結晶ポリプロピレン樹脂の結晶部が、応力により塑性変形し易く折り曲げ加工時の変形を容易に吸収できる擬六方晶部と、応力に対する抵抗性に強く硬質物との擦れに良く耐える単斜晶系部とを、それぞれ10重量%以上と、それぞれの長所を活かし短所を補い合える比率で含有してなることにより、塩化ビニル樹脂製化粧シートと同等の耐傷付き性及び折り曲げ加工適性を具備する優れた化粧シートとなる。
【0045】
【実施例】
〈実施例1〉
mmmm分率(ペンタッド分率)が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)500ppm、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppm、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppmを添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しを行い、厚さ80μの透明高結晶性ポリプロピレン樹脂シートを製膜した。但し、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、高結晶性ポリプロピレン樹脂の球晶の平均粒径を5〜10μmに調整し、その後130℃の再加熱ロールに1秒通すことによって、結晶部の結晶系の比率を擬六方晶系部約30〜35重量%及び単斜晶系部約65〜70重量%(X線法による測定値)に調整した。このシートの両面にコロナ処理を施し、表面の濡れを40dyn/cm以上とした。一方、隠蔽性のある厚さ70μmのポリプロピレン系樹脂シートの表面に2液型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造社製)にて柄印刷を施し、また、裏面にプライマーコートを施して基材シートを用意した。しかる後、前記基材シートの柄印刷面に前記透明高結晶性ポリプロピレン樹脂シートをドライラミネート用接着剤(タケラックA540:武田薬品工業社製、塗布量2g/m2)を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。この積層シートの透明高結晶性ポリプロピレン樹脂シート面にエンボスを施した後、2液型ウレタントップコート(W184:大日本インキ化学工業社製)を乾燥後の塗布量3g/m2に塗布して、総厚154μmの図2に示す構成の本発明の化粧シートを得た。
【0046】
〈実施例2〉
mmmm分率(ペンタッド分率)が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)500ppm、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppm、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppmを添加した樹脂を、ポリエチレン系の接着性樹脂と共に、押出機を用いて前者が80μm、後者が10μmの厚みとなるように共押出しを行い、同時に基材シート(隠蔽性のある厚さ70μmのポリプロピレン系樹脂シートの表面に、2液型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造社製)にて柄印刷を施し、また、裏面にプライマーコートをしたもの)の柄印刷面に積層(エクストルージョンラミネート)した。但し、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、高結晶性ポリプロピレン樹脂層の球晶の平均粒径を5〜10μmに調整し、その後130℃の再加熱ロールに1秒通すことによって、結晶部の結晶系の比率を擬六方晶系部約30〜35重量%及び単斜晶系部約65〜70重量%(X線法による測定値)に調整した。この複層シートの高結晶性ポリプロピレン樹脂層の面にエンボスを施した後、2液型ウレタントップコート(W184:大日本インキ化学工業社製)を乾燥後の塗布量3g/m2に塗布して、総厚155μmの図3に示す構成の本発明の化粧シートを得た。
【0047】
〈実施例3〉
mmmm分率(ペンタッド分率)が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)500ppm、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppm、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)2000ppmを添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しを行い、厚さ100μの透明高結晶性ポリプロピレン樹脂シートを製膜した。但し、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、高結晶性ポリプロピレン樹脂層の球晶の平均粒径を5〜10μmに調整し、その後130℃の再加熱ロールに1秒通すことによって、結晶部の結晶系の比率を擬六方晶系部約30〜35重量%及び単斜晶系部約65〜70重量%(X線法による測定値)に調整した。得られた透明高結晶性ポリプロピレン樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、表面の濡れを40dyn/cm以上に保ち、裏面に2液型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造社製)にて柄印刷を施し、重ねて2液型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造社製)による隠蔽層を乾燥後の6g/m2に塗布し、更に重ねてプライマー層として2液型ウレタンインキ(PET−E レジウサー:大日精化社製)を乾燥後の塗布量1g/m2に塗布した。このシートの表面にエンボスを施した後、2液型ウレタントップコート(W184:大日本インキ化学工業社製)を乾燥後の塗布量3g/m2に塗布して、総厚110μmの図1に示す構成の本発明の化粧シートを得た。
【0048】
〈比較例1〉
上記実施例2において、mmmm分率(ペンタッド分率)が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂の代わりに、mmmm分率(ペンタッド分率)が94.2%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3のホモポリプロピレン樹脂を使用し、その他は上記実施例2と全く同一の要領で化粧シートを得た。
【0049】
〈比較例2〉
上記実施例2において、130℃の再加熱ロールによる再加熱処理時間を1秒から5秒に変更して、ポリプロピレン結晶部の結晶系の比率を擬六方晶系部5重量%未満及び単斜晶系部95重量%超(X線法による測定値)に調整し、その他は上記実施例2と全く同一の要領で化粧シートを得た。
【0050】
〈比較例3〉
上記実施例2において、高結晶性ポリプロピレン樹脂に造核剤としてリン酸2,2−メチレンビスナトリウム(旭電化工業社製;アデカスタブ NA−11)を3重量%添加すると共に、再加熱ロールによる処理を省略し、その他は上記実施例2と全く同一の要領で化粧シートを得た。この化粧シートのポリプロピレン結晶部の球晶の平均粒径は1μm以下であり、その結晶系の比率は、擬六方晶系部5重量%未満及び単斜晶系部95重量%超(X線法による測定値)である。
【0051】
〈比較例4〉
上記実施例2において、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂の押出製膜後、再加熱ロールによる処理を省略し、その他は上記実施例2と全く同一の要領で化粧シートを得た。この化粧シートのポリプロピレン結晶部の結晶系の比率は、擬六方晶系部95重量%超及び単斜晶系部5重量%未満(X線法による測定値)である。
【0052】
〈性能比較試験〉
上記実施例1〜3及び比較例1〜4の化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、鉛筆硬度試験にて表面硬度を、Vカット試験にてVカット適性の有無を評価した。結果を以下の表に示す。尚、Vカット試験は、加工機や加工時の環境等の条件が最も厳しい場合を想定して、低温(試験環境温度5℃)、高速折り曲げ条件(直角までの折り曲げ速度0.2秒)にて実施した。
【0053】
【0054】
上表から明らかなように、擬六方晶部と単斜晶部との構成比率本発明の化粧シートは、に注意が払われていなかった従来の化粧シートと比較して、表面耐傷付き性に優れ、且つVカット加工適性が良好な化粧シートとであると言える。
【0055】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の化粧シートは、塩化ビニル樹脂を一切使用していないので環境に優しいだけでなく、従来のポリオレフィン樹脂系の化粧シートと比較して、表面の耐傷付き性が一段と優れ、しかもVカット等の折り曲げ加工性も優秀であり、従来の塩化ビニル樹脂系の化粧シートをも上回る優れた性能を有する化粧シートである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【図3】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 透明樹脂層
2 絵柄層
3 隠蔽層
4 トップコート層
5 プライマー層
6 接着層
7 基材シート
8 接着性樹脂層
Claims (3)
- アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上である高結晶性ポリプロピレン樹脂90〜100重量%を主成分とする透明樹脂層を少なくとも具備してなる化粧シートであって、前記高結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部が、擬六方晶系部10〜90重量%及び単斜晶系部90〜10重量%からなり、かつ、結晶部における球晶の平均粒径が5〜10μmであることを特徴とする化粧シート。
- 前記高結晶性ポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10minであり、分子量分布(MWD=Mw/Mn)が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
- 総厚が80〜250μmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の化粧シート。
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