JP4791832B2 - 化粧シートの製造方法 - Google Patents
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Description
従来は、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるフィルムまたはシートが使用されていたが、ポリ塩化ビニル系樹脂に配合される可塑剤のブリードや、焼却時の環境対策の問題があるため、非塩化ビニル系樹脂(例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等)が使用されるようになりつつあり、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル系共重合体などのオレフィン系樹脂からなるフィルムまたはシートを使用したものが主に使用されている。
たとえ、このような易接着処理を施さないオレフィン系樹脂の表面(以下、「未処理面」とも言う)に、塗料やインクを塗布できたとしても、乾燥後にオレフィン系樹脂フィルムから剥離してしまうことが多く、密着性の面で問題となった。
透明樹脂層の表面を前処理するA工程、
A工程で前処理が施された面に表面処理剤を塗布し乾燥するB工程、
透明樹脂層の裏面を前処理するC工程、
C工程で前処理が施された面に印刷層を設けるD工程、
という4工程を経ることで、透明樹脂層の一方の面(表面側)に表面処理剤を塗布し、反対の面(裏面側)に印刷を行ってから、
この表面処理と印刷とが施された透明樹脂層と、基材層とを貼り合わせるE工程、
の少なくとも計5工程を経るのが一般的である。
上記工程中のA工程とC工程とにおいて行われる透明樹脂層への易接着処理(前処理)は、通常、A〜E工程の連続した工程内で行われるのではなく、独立した工程で行われる。すなわち、前段階として、透明樹脂層の両面に易接着処理を行い、その透明樹脂層をロール状に巻き取り、その後上記化粧シート生産工程に投入されることになる。
両面が易接着処理された透明樹脂層は、処理された直後でも、ロール状にされると巻き芯に近い部分がブロッキングしてしまい、化粧シートの生産には使用することができずに処分されていた。
また、易接着処理を行ってから、時間が経過すればするほど、ブロッキングして使用できない部分が多くなってしまい、透明樹脂層の歩留まりが低下してしまう問題が生じる。
さらに、透明樹脂層に表面処理層を設けて(B工程)から、基材との貼り合わせを行う(E工程)ために、貼り合わせ加工時等において表面処理層の表面に傷や部分剥離が発生する問題もあった。
そのため、少なくとも一方の易接着処理を省くことができる方法について検討を行ったところ、オレフィン系樹脂層かならる透明樹脂層の未処理面上に表面処理剤を塗布した後、直ちに特定の温度条件下で処理することで、コロナ処理などの前処理をしたときと同等の表面処理剤との密着を得ることができるとの知見を得た。
さらに、基材層が発泡性合成樹脂層を有している場合には、第5工程において発泡性合成樹脂層を発泡させて発泡合成樹脂層を形成することができる。
また、第5工程の加熱時間としては、表面処理剤の乾燥と発泡性合成樹脂層の発泡を考慮すると120〜200秒が好ましい。
この透明樹脂層は、化粧シートの表面側に設けられ、下層の印刷層を視認できる所定の透明性を有し、例えば、オレフィン系樹脂をフィルム化したものが用いられる。
オレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルモノマー部の含有割合5〜30%)、エチレン−アクリル系共重合体(アクリル系モノマー部の含有割合5〜50%)、ポリオレフィン、ポリオレフィンアイオノマー等が好ましく使用できる。
なお、エチレン−アクリル系共重合体のアクリル系モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、メチルメタアクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MA)等が使用でき、これらのモノマーはそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて混合使用することもできる。
複数層とする場合は、各層のオレフィン系樹脂を同種のものにしてもよいし、異種のものとすることもできる。
異種のものとする場合は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、エチレン−メタクリル酸共重合体と、ポリオレフィンアイオノマーの3種の層とすることもできる。
なお、複数層とする場合、最上層のものに表面処理剤が塗布され、最下層のものに前処理がなされ印刷層が設けられることになる。
この印刷層は、上記の透明樹脂層を通して視認され、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の通常の印刷技術で、パターン印刷(模様印刷)、ベタ塗り印刷、文字印刷等を形成すればよい。
積層する方法としては、通常の透明樹脂層と基材層とを貼り合わせる方法を使用することができる。例えば、該印刷層を形成した透明樹脂層の印刷層面と基材層のどちらか一方もしくは両方に接着剤を塗布して貼り合わせたり、プライマー処理を行ったあとに基材層と透明樹脂層とを熱ラミネートによる貼り合わせ等により積層一体化することができる。
基布層としては、織布、編布、不織布などを使用することができる。
続いて、第5工程は、180〜240℃にて該表面処理剤を完全にキュアして表面処理層を形成する工程である。
表面処理剤を塗布後直ちに、加熱工程を低温と高温の2段階で行うのは、最初に低温の予備乾燥において、表面処理剤を透明樹脂層上に塗布された状態に留めるために、表面処理剤中の水や有機溶剤からなる溶媒を一部気化させ、次の高温加熱により、溶媒を完全に除去することで表面処理層を一体化(形成)させ、透明樹脂層との均一な密着(固着)を得るためである。
予備乾燥のための低温加熱において、120℃未満であると、表面処理剤が透明樹脂層上に均一に固着できず、表面処理剤が付着していない部分が発生する虞があると共に、密着強度が低下してしまう虞がある。一方、180℃を超えてしまうと表面処理剤が透明樹脂層上に均一に成膜できず、成膜の際にひび割れなどが発生する虞がある。
第5工程の高温が180℃未満であると、完全キュアするのに時間を要すると共に、密着強度の低下となる虞があり、240℃を超えてしまうと基材層が変形を起こしたり、密着強度の低下や、表面処理層の変色が起こる虞がある。
加熱方法は、上記の温度条件が得られれば、特に限定されず、例えば、製造ライン中に加熱オーブン等を2カ所設けてそれぞれの加熱温度を設定しても良いし、1つの加熱オーブンで行う場合は、部分的に温度変化させるような対応でも良い。
これらの表面処理剤であれば、化粧シートを保護するのに十分な柔軟性を有するのみならず、オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層の未処理面に対して高い密着性を得ることができ、本発明の目的を効果的に達成することができる。
加熱時間が60秒未満であると、予備乾燥が不十分であり、120秒を超えてしまうと生産効率の低下となると共に、密着性が低下する虞がある。
また、第5工程中の加熱時間としては120〜200秒であることが好ましい。
加熱時間が120秒未満であると、完全にキュアされずに密着性の低下となり、200秒を超えてしまうと生産効率の低下となると共に、基材層の変形、変色が生じる虞がある。
発泡性合成樹脂層を形成するために使用される発泡剤としては、マイクロカプセル等の熱膨張型発泡剤、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン(DPI)、オキシビスベンゼン・スルホニルヒドラジド(OBSH)等の熱分解型発泡剤のいずれも使用できる。発泡剤の配合量は、所望の発泡倍率や発泡剤の種類によって異なるため、一概には決められないが、上記の樹脂成分100重量部に対して、発泡剤を1〜5重量部程度とするのが好ましい。
カレンダー成形等を用い、後述する発泡性合成樹脂層の原料を混練・シーティング・トッピングして未発泡状態で発泡性合成樹脂層を形成し、該発泡性合成樹脂層にその他の層を積層一体化し、基材層を形成する。
上記エチレン−アクリル系共重合体のアクリル系モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、メチルメタアクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MA)等が使用でき、これらのモノマーはそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて混合使用することもできる。
このエンボス加工は、加熱発泡直後の化粧シート全体が加熱状態にある間に行うことが、エンボス加工による凹凸紋を良好に形成する上で好ましい。
なお、エンボス加工は、透明樹脂層のみに凹凸紋が形成されるようにしてもよいし、印刷層、基材層に渡って凹凸紋が形成されるものであってもよい。
また、透明樹脂層の片面にのみ易接着処理を施すだけでよいので、別工程で透明樹脂層の易接着処理を行いロール状に巻いて移動や保管を行っても、巻芯部分等にブロッキングが発生することがなく、透明樹脂層を無駄なく使用することが可能であり、易接着処理を行った透明樹脂層をロール状に巻いた状態で貯蔵保管することも可能であるので生産効率が優れている。
図1中、1がオレフィン系樹脂からなる透明樹脂層、2が透明樹脂層1の裏面に施された印刷層、4が基材層、5が表面処理層である。
<第1工程>エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルモノマー部15%)製0.1mm厚の透明樹脂層1の裏面をコロナ放電処理にて粗化した。
<第2工程>この粗化面上にグラビア印刷2を施した。
<第3工程>得られた印刷層2の全面に、溶剤型エポキシ系樹脂接着剤を塗布し、厚さ2.0mmの基材層4を貼り合わせた。
<第4工程>第3工程後の透明樹脂層1の表面に、表1に示す表面処理剤をグラビア塗布後、直ちに表1に示す温度条件にて予備乾燥した後に、
<第5工程>表1に示す温度条件にて加熱し、表面処理層5を形成し、化粧シート10を得た。
<A工程>エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルモノマー部15%)製の0.1mm厚の透明樹脂層の両面をコロナ放電処理にて粗化した。
<B工程>この粗化面上に実施例1と同じ表面処理剤をグラビア塗布後、乾燥させた。
<C工程>表面処理剤を塗布した裏面の粗化面上にグラビア印刷を施した。
<D工程>得られた印刷層の全面に、溶剤型エポキシ系樹脂接着剤を塗布し、厚さ2.0mmの基材層を貼り合わせ、化粧シートを得た。
<第1工程>〜<第3工程>は、上記実施例1と同様に行った。
<第4工程>第3工程後の透明樹脂層1の表面に、表1に示す表面処理剤をグラビア塗布後、直ちに表1に示す温度条件にて予備乾燥した後に、
<第5工程>表1に示す温度条件にて加熱し、表面処理層5を形成し、化粧シート10を得た。
得られた化粧シートの表面を目視にて観察し、部分剥離及びキズの有無を確認した。
○:部分剥離・キズ、クラックが全く見られないもの
△:化粧シート自体の表面に部分剥離やキズ、クラックが若干観察されるもの
得られた化粧シートの表面に、25mm幅×50mm長のセロテープ(登録商標)を貼着し、これを剥がし、表面処理剤(塗料)の剥離の有無を確認し、下記の要領で評価した。
◎:剥離が全く見られず、完全密着しているもの
○:テープ上に剥離した塗料が若干観察され、完全密着とはいえないもの
×:ほぼ全ての塗料が化粧シートより分離し、セロテープ上に貼着したもの
得られた化粧シートの表面を、ガイドロールにこすれる想定でラバーを巻きつけたロールで擦り、表面処理剤(塗料)の剥離の有無を確認し、下記の要領で評価した。
○:剥離が全く見られないもの
△:ロール上に剥離した塗料が若干観察されるが、化粧シートとして使用可能なもの
×:化粧シート自体の表面に部分剥離が明らかに観察されるもの
また、上記ロールの解反状態の観察から、透明樹脂層の歩留まり、移動保管性も向上することが判る。
このような製造方法により得られる化粧シートは、清掃のし易さ、施工の容易さ、交換のし易さ等から、床や壁などに敷設するシートとして、一般家屋、オフィスビル、店舗用建物、商業施設、公共施設、寺院、その他各種の建築物において幅広く使用することができる。
1 ポリオレフィン系透明樹脂層
2 印刷層
4 基材層
5 表面処理層
Claims (3)
- 下から順に基材層、印刷層、ポリオレフィン系透明樹脂層、表面処理層を少なくとも有する化粧シートの製造方法であって、
透明樹脂層の裏面のみを前処理する第1工程、
第1工程で得た前処理面に印刷層を設ける第2工程、
第2工程で得た印刷層を下面にして透明樹脂層と基材層とを積層する第3工程、
透明樹脂層の未処理表面に表面処理剤を塗布後、直ちに120〜180℃にて前記処理剤を初期乾燥する第4工程、
さらに、前記処理剤を180〜240℃で加熱して表面処理層を形成する第5工程、
を含むことを特徴とする化粧シートの製造方法。 - 基材層が発泡性合成樹脂層を有し、
第5工程において発泡性合成樹脂層を発泡させて発泡合成樹脂層を形成することを特徴とする請求項1に記載の化粧シートの製造方法。 - 第5工程における加熱を、120〜200秒間行うことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートの製造方法。
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