JP4063882B2 - 新規テルフェニル化合物およびそれを含有する医薬 - Google Patents
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Description
本発明は医薬として有用な化合物とその製造方法、およびその用途に関する。詳しくは、免疫抑制作用、抗炎症作用および抗癌作用を有する新規テルフェニル化合物とその製造方法、並びにそれを含有する免疫抑制剤、抗炎症剤および抗癌剤に関する。
背景技術
近年数多く行なわれるようになった組織、臓器等の移植手術は、機能の低下した臓器および組織の機能回復を計る手法として脚光を浴びている。しかし、術後の移植部分を排斥しようとする拒絶反応が移植手術の大きな課題であり、それを回避することが移植手術の成否を決定するといっても過言ではない。
そうした中で、免疫抑制剤は臓器または組織移植に対する拒絶反応、骨髄移植によって起こる移植片対宿主反応の予防および治療に用いられており、重要な役割を担う薬剤である。また、移植手術に伴う拒絶反応以外にも、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療およびアレルギー性疾患の治療にも多用されている。現在、アザチオプリン、コルチコイド、シクロスポリンAやタクロリムス等種々の免疫抑制剤が開発・実用化されているが、効果や副作用の点で必ずしも満足できるものではない。
一方、抗癌剤も多数が実用化されてはいるが、それらの多くは強い抗癌作用の反面、副作用としての毒性も併せ持っている為、その使用量が限定されている。
これらの状況から、強い活性を有し、かつ安全に用いることができる免疫抑制剤および抗癌剤の開発が望まれていた。
本発明化合物と同系統の化合物が、ケミカル ファ−マシュ−ティックス ビュ−リチン(Chemical Pharmaceutics Bulletin,24(4),613−620(1976))、ザ ジャ−ナル オブ アンチバイオチックス(The Journal of Antibiotics,32(6),559−564(1979))およびアグリカルチュアル バイオロジカル ケミストリ−(Agricultural BiologicalChemistry,49(3),867−868(1985))等に記載されている。これらの文献には、ウニの胚細胞やヒラ細胞に対して毒性を有することが開示されているが、免疫抑制作用、抗炎症作用及び抗癌作用については全く言及されていない。
発明の開示
本発明の目的は、優れた免疫抑制作用、抗炎症作用または抗癌作用を有する新規化合物、その製造方法およびそれを含有する免疫抑制剤、抗炎症剤または抗癌剤を提供することにある。
本発明者らは、糸状菌の一種であるアスペルギルス カンディダス(Aspergillus candidus)RF−5762株の培養液中に強い免疫抑制作用、抗炎症作用および腫瘍細胞増殖抑制作用を有する化合物が含まれていることを見出し、その活性化合物を単離・精製し、本発明を完成した。
即ち、本発明は式(I):
(式中、R1は水素またはヒドロキシであり、R2はヒドロキシまたはメトキシである。)
で示される化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物を提供するものである。また、本発明はアスペルギルス属に属し、化合物(I)を産生し得る微生物を培養し、得られた培養物から化合物(I)を採取することを特徴とする化合物(I)の製造方法を提供するものである。さらに本発明は、化合物(I)の前駆体である、式(II):
(式中、R1およびR2は前記と同義である)
で示される化合物を3−メチル−2−ブテニル化することを特徴とする、化合物(I)の製造方法を提供するものである。
また、別の態様として、本発明は化合物(I)を含有する医薬、詳しくは免疫抑制剤、抗炎症剤または抗癌剤を提供する。さらに、化合物(I)を投与することを特徴とする、免疫反応の抑制の方法、炎症の治療または予防の方法および癌の治療の方法を提供する。さらに別の態様として、免疫反応の抑制、炎症の治療または予防および癌の治療のための医薬を製造するための、化合物(I)またはの使用を提供する。さらに、本発明はアスペルギルス カンディダス属に属し、化合物(I)を産生する微生物に関する。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明化合物(I)の微生物培養による製造方法および化学合成による製造方法を説明する。
微生物培養による製造方法
本微生物培養法においては、本発明化合物(I)を産生し得る微生物を通常の発酵生産に用いる培地組成、培地条件で培養し、通常の発酵生産物を分離採取する方法により化合物(I)を単離する。
本発明化合物(I)を産生し得る微生物としては、アスペルギルス属に属する微生物、例えばアスペルギルス カンディダス RF−5762株が例示される。アスペルギルス カンディダス RF−5762株は以下のような形態学的性状を有していた。
本菌株はツァペック寒天培地上、コロニーは白色からクリーム色を呈し、偏平で、辺縁は切裂状である。
分生子頭の生育は良好で、コロニー裏面は無色からクリーム色である。時として寒天中に茶色の色素を出す。分生子頭は直径150〜250μmのゆるい球形で、後に裂けて分枝し、同時に直径25〜50μmの小型分生子頭も形成される。
分生子柄は長さ20〜300μm、直径4.0〜6.0μmで壁面は薄く、隔壁がある。
頂のうは球形〜長球形で、13.0〜15.0×13.0〜15.0μmである。表面にメトレを形成するが、小型の分生子頭ではこれを欠き、ペニシラス状になる。
メトレは3.5〜4.5×6.5〜7.5μmで、ときに肥大化し、球形〜洋ナシ形となり、サイズは10.0〜14.0×10.0〜14.0μmである。
フィアライドは1.5〜2.5×4.0〜8.0μm。分生子は直径2.5〜4μmの球形で、表面は平滑である。
生育温度は14℃〜36℃であり、至適生育温度は22℃〜32℃である。
以上の性状を文献(ザ ジ−ナス アスペルギルス(The genus Aspergillus),347−350(1965)ウィリアムズ&ウィルキンス社(Williams&Wilkins);ジャ−ナル オブ ジ アンチバクテリウム アンド アンチフンガル エイジェンツ(Journal of the Antibacterium and Antifungal Agents)19(9),489−495(1991);菌類図鑑(下),1006−1045(1977)、講談社;コンペンディウム オブ ソイル フンギ リプリント(Compendium of Soil Fungi Reprint)1993,83−85)に記載されているアスペルギルス属の既知種と比較した。その結果、本菌をアスペルギルス カンディダス(Aspergillus candidus Link ex Link 1824)と同定した。
尚、本菌株は工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号、郵便番号305)に受託番号「FERM P−15439」として平成8年(1996年)2月15日より寄託されており、平成9年(1997年)3月21日に受託番号「FERM BP−5882」としてブタペスト条約に基づく国際寄託に移管された。
本発明化合物(I)の生産用培地としては、炭素源、窒素源及び無機塩を適当量含有するものであれば合成培地または天然培地のいずれでも好適に用いることができる。必要に応じて、ビタミン類またはその他栄養物質を適宜加えてもよい。
炭素源としては例えば、グルコ−ス、マルト−ス、フラクト−ス、シュ−クロ−ス、デンプン等の糖類、グリセロ−ル、マンニト−ル等のアルコ−ル類、グリシン、アラニン、アスパラギン等のアミノ酸類、グルコン酸、ピルビン酸、酢酸等の有機酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸およびそのグリセライド等のの一般的な炭素源より微生物の資化性を考慮して1種または2種以上を適宜選択して用いればよい。
窒素源としては、大豆粉、コ−ンスチ−プリカ−、ビ−フエキス、ペプトン、酵母エキス、各種アミノ酸等の有機含窒素化合物またはアンモニウム塩、硝酸塩、無機窒素化合物等が挙げられ、微生物の資化性を考慮して1種または2種以上を適宜選択して用いればよい。
無機塩としては、例えば炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化コバルト、各種リン酸塩を必要に応じて添加すれば良い。
また、消泡剤、例えば植物油、ラ−ド、ポリプロピレングリコ−ル等は必要に応じて添加することができる。
さらに、結晶セルロースやパルプのような固形分を培地に添加することにより、発酵を安定化することも可能である。
培養温度は微生物が発育し、本発明化合物(I)を生産する範囲で適宜変更できるが、好ましくは15℃〜30℃であり、さらに好ましくは20℃〜26℃である。pHは6〜8付近が好ましく、培養時間は通常数日〜数週間程度であるが、本発明化合物(I)の生産量が最高に達した時に培養を終了すればよい。培養方法は固相培養、通気撹拌培養等の通常用いられる方法であればいずれも好適に用い得る。なお、本培養工程では本発明化合物(I)の前駆体である化合物(II)も同時に産生され得る。
培養物から発酵生産物を分離採取する方法には、濾過、遠心分離、各種イオン交換樹脂やその他の活性吸着剤による吸脱着やクロマトグラフィ−、各種有機溶媒による抽出等を適当に組み合わせた通常の発酵生産物分離精製法を用いることができる。例えば、培養物より分離した菌体を有機溶媒(酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等)で抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーと高速液体カラムクロマトグラフィーを組み合わせて分離精製すればよい。
化学合成による製造方法
発酵により得られた化合物が本発明化合物(I)の前駆体である(式(II)で表わされる化合物である)場合には、適当な条件下、3−メチル−2−ブテニル化反応に付して本発明化合物(I)に誘導すればよい。
まず、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒を用いて前駆体を溶解し、これにアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩または三級アミン等の塩基性助剤を加える。ここで用いられるアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび炭酸カルシウム等が挙げられる。また、三級アミンとしては例えばトリエチルアミン等が挙げられる。
次いで得られた溶液に3−メチル−2−ブテニルブロマイド等の3−メチル−2−ブテニルハライドを加え、選択的に3−メチル−2−ブテニル化することにより本発明化合物(I)が得られる。
また、本発明化合物(I)の一つである、式(I)においてR1およびR2がヒドロキシである化合物(以下化合物(I−1)とする)をアルキル化反応に付すことによりR1がヒドロキシ、R2がメトキシである化合物(以下化合物(I−3)とする)が得られる。
具体的には、化合物(I−1)を有機溶媒に溶解し、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩または三級アミン等の塩基性助剤を加える。ここで用いることができる有機溶媒、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩および三級アミン等の塩基性助剤は前記と同様のものが挙げられる。次いで得られた溶液にジメチル硫酸、ベンゼンスルホン酸等のメチル硫酸エステル類またはヨウ化メチルおよび臭化メチル等のメチルハライド等のメチル化剤を加えてメチル化すればよい。
本発明化合物(I)は、生成可能であり、製薬上許容される塩をも包含し、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。塩は通常用いられる反応を用いて形成させることができる。
また、本発明化合物(I)はその水和物をも包含し、本発明化合物1分子に対して任意の数の水分子と結合していてもよい。
本発明化合物(I)は強い免疫抑制作用および抗炎症作用を有している。具体的には、IL−2、IL−4およびIL−5のサイトカイン産生抑制作用、T、B両細胞に対する非常に強い増殖抑制作用および/または抗体産生抑制作用(例えばIgE、IgG等、特にIgE)を有する。また、腫瘍細胞増殖抑制作用も有している為、医薬としてヒトを含む動物の免疫抑制、抗炎症または腫瘍増殖抑制のために投与することができる。
免疫抑制剤または抗炎症剤としての本発明化合物(I)は、臓器または組織移植に対する拒絶反応、骨髄移植によって起こる移植片対宿主反応、アレルギー性疾患(例えば気管支喘息、アレルギ−性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー等)、高好酸球症候群、アレルギー性結膜炎、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、MCTD、慢性関節リウマチ、炎症性大腸炎、虚血再潅流における傷害、花粉症、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹および乾癬等のアレルギー性疾患の予防または治療に有用である。また、抗癌剤として種々の血液系腫瘍、固形癌等の腫瘍の治療に有用である。
本発明化合物(I)を医薬として投与する場合、経口的、非経口的のいずれでも安全に投与することができる。経口投与は常法に従って錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、液剤、シロップ剤、バッカル剤または舌下剤等の通常用いられる剤型に調製して投与すればよい。非経口投与は、例えば筋肉内投与、静脈内投与等の注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等、通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。特に経口投与が好ましい。
本発明化合物(I)の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤とを必要に応じて混合し医薬製剤とすることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
具体的には、賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウムもしくは結晶セルロ−ス等、結合剤としてはメチルセルロ−ス、カルボキシメピロリドン等、崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末もしくはラウリル硫酸ナトリウム等、滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウムもしくはマクロゴ−ル等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴ−ルもしくはメチルセルロ−ス等を用いることができる。また液剤もしくは乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加しても良く、経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えても良い。
本発明化合物(I)の免疫抑制剤、抗炎症剤または抗癌剤としての投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、成人に経口投与する場合、通常0.05〜100mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005〜10mg/kg/日であり、好ましくは0.01〜1mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回〜数回に分けて投与すれば良い。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例
実施例1 化合物(I)の分離採取
1.発酵工程
アスペルギルス カンディダスRF−5762の発酵:グルコース5.0%、コーンスチープリカー5.0%、炭酸カルシウム0.2%および水道水からなる培地100ml(pH7.0、滅菌前)を含む500ml容マイヤーフラスコに、試験管に斜面培養したアスペルギルス カンディダスRF−5762を植菌し、220回転/分の回転振盪機上、25℃で4日間培養を行った。この培養液4mlずつを、グリセリン2.0%、シュ−クロ−ス2.0%、ビ−フエキス0.3%、酵母エキス0.2%よりなる発酵培地100ml(pH7.0、滅菌前)を含む500ml容マイヤ−フラスコ20本に植菌し、180回転/分の回転振盪機上、23℃で、12日間培養した。
2.分離・精製工程
発酵工程で得られた培養液2Lを減圧濾過によって瀘液と菌体に分けた。菌体部はアセトン500mlで2回抽出、減圧濾過後、瀘液を減圧下濃縮した後、先の濾液と共に酢酸エチル抽出(pH6、500ml×2)を行ない、水洗後減圧下溶媒を留去し粗製物質7.85gを得た。粗製物質7.85gを30mlのクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Merck Kieselgel60、70〜230mesh、32mm i.d.×300mm)に付した。クロロホルム300ml、次いでクロロホルム:メタノール(20:1)400mlで展開し、化合物(I−1)、(II−1)、(I−2)および(I−3)を含む分画Fr.1〜3(420ml)を集め、減圧下で濃縮乾固し粗精製物0.657gを得た。
続いて溶出されるFr.4〜7(280ml)は化合物(II−2)を含んでおり、それを濃縮乾固し、粗精製物0.577gを得た。さらに、クロロホルム:メタノール(20:1.5)400mlで展開し、溶出される分画Fr.8〜9(210ml)より化合物(II−3)1.6gを、続いてさらにメタノール含量を増やしたクロロホルム:メタノール(20:10)300mlで溶出される分画Fr.10〜12(160ml)より化合物(III)を含む粗精製物1.46gを得た。
2−1.化合物(I−1)、(II−1)、(I−2)、(I−3)の分離
化合物(I−1)、(II−1)、(I−2)および(I−3)を含む分画Fr.1〜3粗精製物(0.657g)は再びシリカゲルクロマトグラフィー(Merck Kieselgel60、70〜230mesh,20mm i.d.×350mm)に付した。粗精製物0.657gを展開溶媒トルエン:アセトニトリル(85:15)、5mlに溶解し、同溶媒で展開して5gずつフラクションを集めた。Fr.13〜16に化合物(I−2)、Fr.23〜26に化合物(I−3)、Fr.27〜33に化合物(I−1)および(II−1)がそれぞれ含まれており、各分画を濃縮乾固して97mg,128mg,117mgを各々得た。
2−2.化合物(I−1)、(II−1)の精製
化合物(I−1)および(II−1)を含む117mgをシリカゲルクロマトグラフィー(Merck Kieselgel60、70〜230mesh、20mm i.d.×350mm)に付し、展開溶媒トルエン:アセトニトリル(90:10)、3mlに溶解し、同溶媒で展開して5gずつフラクションを集めた。Fr.48〜65(90ml)に化合物(I−1)および(II−1)が溶出された。減圧下濃縮乾固し、90mgの分画を得た。次に中圧液体クロマトグラフィーにより分離精製を行なった。YMC GEL ODS−AM120−S50、20mm i.d.×500mmのカラムを用い、展開溶媒として50%アセトニトリル水溶液を用いた。594〜648mlに溶出される分画に化合物(II−1)が、702〜756mlに溶出される分画に化合物(I−1)が溶出された。各分画を集め、減圧下濃縮し、アセトニトリルを除いた後、残渣を酢酸エチルで抽出、無水硫酸ソーダで乾燥、濃縮乾固して純粋な無色粉末の(II−1)を10mg、純粋な無色粉末の化合物(I−1)を70mgそれぞれ得た。(II−1)は式(II)においてR1およびR2が水素である化合物であり、ケミカル ファ−マシュ−ティックス ビュ−リチン(Chemical Pharmaceutics Bulletin,24(4),613−620(1976))に記載の4″−デオキシテルフェニリンであった。
化合物(I−1):R1=R2=OH
化合物名:3’,6’−ジメトキシ−4−(3−メチル−2−ブテニルオキシ)−[1,1’:4’,1’’]テルフェニル−3,2’,4’’−トリオ−ル
性状:無色プリズム状結晶
溶解性:アセトン、酢酸エチル、クロロホルムに可溶 水に不溶
融点:155.5〜156℃
HR−LSIMS,m/z:計算値C25H26O6:422.1728
実測値 :422.1730[M]+
LSI−MS,m/z:422[M]+
UV(メタノール)nm(ε):
230(sh),277(25,700)
235(sh),297(26,200) 0.01N−NaOH添加
230(sh),276(24,500) 0.01N−HCl添加
IRcm-1(KBr):3393,2932,1611,1588,1522,1490,1117,1071,1001
1HNMR(アセトン−d6,600MHz)δ:1.77(3H,br.s like),1.79(3H,br.s like),3.37(3H,s),3.73(3H,s),4.63(2H,br.d like,J=6.6Hz),5.52(1H,m)、6.49(1H,s),6.83(1H,dd,J=2.2,8.2Hz),6.92(1H,d,J=2.2Hz),6.94(2H,7m),6.96(1H,d,J=8.2Hz),7.54(2H,m),7.62(1H,br.s),7.78(1H,s),8.64(1H,br.s)
13CNMR(アセトン−d6,150MHz)δ:18.31(q),26.00(q),56.04(q),60.67(q),66.18(t),103.85(d),112.75(d),116.06(d),117.61(s),118.97(d),121.44(d),123.15(d),127.91(s),130.48(s),130.85(d),133.54(s),137.50(s),140.04(s),146.23(s),146.79(s),149.24(s),154.51(s),157.79(s)
TLCRf値(濃硫酸試薬で検出):0.23(トルエン:アセトニトリル=85:15)
HPLC分析:
保持時間:5.6分
カラム:YMC−Pack ODS−AM、AM−302、4.6 i.d.×150mm(株式会社ワイエムシイ製)
移動相:アセトニトリル:水=55:45
流速:1ml/分
検出:280nm(UV)
2−3.化合物(I−2)の精製
化合物(I−2)成分を含む97mgは中圧液体クロマトグラフィーに付した。YMC GEL ODS−AM120−S5、20mm i.d.×500mmのカラムを用い展開溶媒として70%アセトニトリル水溶液を用いた。375〜435mlに溶出される分画を集め減圧下濃縮しアセトニトリルを除いた後、残渣を酢酸エチルで抽出、無水硫酸ソーダで乾燥、濃縮乾固して純粋な無色粉末の化合物(I−2)を70mg得た。
化合物(I−2):R1=H、R2=OH
化合物名:3’,6’−ジメトキシ−4−(3−メチル−2−ブテニルオキシ)−[1,1’;4’,1’’]テルフェニル−3,2’−ジオール
性状:無色粉末
溶解性:アセトン、酢酸エチル、クロロホルムに可溶 水に不溶
HR−LSIMS,m/z:計算値C25H26O5:406.1779
実測値 :406.1780[M]+
LSI−MS,m/z:406[M]+
UV(メタノール)nm(ε):
225(sh),274(17,600)
225(sh),255(sh),295(26,200)0.01N−NaOH添加
225(sh),273(18,000)0.01N−HCl添加
IRcm-1(KBr):3506,3465,2934,1585,1518,1408,1116,1070,1008
1HNMR(アセトン−d6,600MHz)δ:1.77(3H,s−like),1.78(3H,s−like),3.38(3H,s),3.73(3H,s),4.63(2H,br.d−like),5.53(1H,m),6.52(1H,s),6.84(1H,dd,J=2.0,8.2Hz),6.93(1H,d,J=2.0Hz),6.97(1H,d,J=8.2Hz),7.35(1H,m),7.44(1H,s),7.46(2H,m),7.65(1H,s),7.66(2H,m)
13CNMR(アセトン−d6,150MHz)δ:18.34(q),26.00(q),56.26(q),61.04(q),66.44(t),104.45(d),113.10(d),118.63(s),119.07(d),121.56(d),123.28(d),127.96(s),128.25(d),129.35(d),129.84(d),133.85(s),137.70(s),139.65(s),140.46(s),146.50(s),147.07(s),149.40(s),154.78(s)
TLCRf値(濃硫酸試薬で検出):0.54(トルエン:アセトニトリル=85:15)
HPLC分析:
保持時間;13.5分
カラム:YMC−Pack ODS−AM、AM−302、4.6 i.d.×150mm(株式会社ワイエムシイ製)
移動相:アセトニトリル:水=55:45
流速:1ml/分
検出:280nm(UV)
2−4.化合物(I−3)の精製
化合物(I−3)成分を含む128mgはアセトニトリル1mlに加熱溶解させた後、室温放置により生ずる沈澱物を瀘去後、瀘液を濃縮乾固し残査35mgを得た。これを高速液体クロマトグラフィーにより分離精製した。YMC−Pack ODS−AM、20mm i.d.×150mmのカラムを用い展開溶媒として70%アセトニトリル水溶液を用いた。1回の分取は5mgずつ行い、72〜76mlに溶出される分画を集めて減圧下濃縮し、アセトニトリルを除いた後、残渣を酢酸エチルで抽出、無水硫酸ソーダで乾燥、濃縮乾固して純粋な無色粉末の化合物(I−3)を2.7mg得た。
化合物(I−3):R1=OH、R2=OCH3
化合物名:3,3’,6’−トリメトキシ−4−(3−メチル−2−ブテニルオキシ)−[1,1’;4’,1’’]テルフェニル−2’,4’’−ジオ−ル
性状:無色粉末
溶解性:アセトン、酢酸エチル、クロロホルムに可溶 水に不溶
HR−LSIMS,m/z:計算値 C26H28O6:436.1884
実測値: :436.1880[M]+
LSI−MS,m/z:436[M]+
UV(メタノール)nm(ε):
230(sh),278(25,300)
235(sh),295(25,100) 0.01N−NaOH添加
230(sh),278(24,500) 0.01N−HCl添加
IRcm-1(KBr):3430,2432,1612,1522,1488,1398,1237,1116,1075
1HNMR(アセトン−d6,600MHz)δ:1.77(3H,b.s like),1.79(3H,br.s like),3.38(3H,s),3.74(3H,s),3.80(3H,s),4.59(2H,br.d like,J=6.7Hz),5.53(1H,m),6.50(1H,s),6.93(1H,dd,J=2.0,8.3Hz),6.95(2H,m),6.97(1H,d,J=8.3Hz),6.99(1H,d,J=2.0Hz),7.54(2H,m),7.83(1H,s),8.65(1H,s)
13CNMR(アセトン−d6,150MHz)δ.:18.19(q),25.84(q),56.13(q),56.16(q),60.65(q),66.18(t),104.17(d),113.80(d),116.06(d),116.42(d),117.70(s),121.63(d),124.37(d),127.73(s),130.50(s),130.79(d),133.66(s),137.40(s),140.17(s),148.37(s),149.16(s),149.98(s),154.52(s),157.80(s)
TLCRf値(濃硫酸試薬で検出):0.34(トルエン:アセトニトリル=85:15)
HPLC分析:
保持時間:7.4分
カラム:YMC−Pack ODS−AM,AM−302,4.6 i.d.×150mm(株式会社ワイエムシイ製)
移動相:アセトニトリル:水=55:45
流速:1ml/分
検出:280nm(UV)
2−5.化合物(II−2)の精製
化合物(II−2)成分を含む粗精製物0.577gはシリカゲルクロマトグラフィー(Merck Kieselgel60、70〜230mesh、2.4mm i.d.×200mm)で精製を行った。粗精製物0.577gはトルエン:アセトニトリル(80:20)3mlに溶解し、同溶媒で展開し、Fr.1〜3(120ml)を集め減圧下濃縮し部分精製物420mgを得た。次に中圧液体クロマトグラフィーにより分離精製を行なった。YMC GEL ODS−AM120−S50、20mm i.d.×500mmのカラムを用い展開溶媒として40%アセトニトリル水溶液を用いた。432〜468mlに溶出される分画を集め減圧下濃縮しアセトニトリルを除いた後、残渣を酢酸エチルで抽出、無水硫酸ソーダで乾燥、濃縮乾固して純粋な無色粉末の化合物(II−2)を90mg得た。化合物(II−2)は式(II)においてR1がヒドロキシ、R2が水素である化合物であり、アグリカルチュアル バイオロジカル ケミストリ−(Agricultural Biological Chemistry,49(3),867−868(1985)に記載のテルフェニリンであった。
2−6.化合物(II−3)の精製
化合物(II−3)成分を含む粗精製物1.6gはメタノ−ル(6ml)に溶解し、ノーリットSX−3(和光純薬工業社製)(80mg)を加え、室温で1時間撹拌後、ノーリットを瀘去して水(14ml)を加え、生じた沈殿を加熱溶解後、一晩室温放置する。生じた無色針状結晶を瀘取し、純粋な化合物(II−3)を1.0g得た。化合物(II−3)は式(II)においてR1およびR2がヒドロキシである化合物であり、アグリカルチュアル バイオロジカル ケミストリ−(Agricultural Biological Chemistry,49(3),867−868(1985))に記載の3−ヒドロキシテルフェニリンであった。
2−7.化合物(III)の精製
化合物(III)を含む粗精製物1.46gはシリカゲルクロマトグラフィー(Merck Kieselgel60、70〜230mesh、2.4mm i.d.×200mm)で精製を行った。粗精製物1.46gはトルエン:アセトニトリル(80:20)12mlに溶解し、同溶媒で展開し、Fr.4〜8(200ml)を集め減圧下濃縮して純粋な無色粉末の化合物(III)を800mg得た。化合物(III)はアグリカルチュアル バイオロジカル ケミストリ−(Agricultural Biological Chemistry,49(3),867−868(1985))に記載の3,3’’−ジヒドロキシテルフェニリンであった。
実施例2 化合物(II−3)を用いた化合物(I−1)の製造
化合物(II−3)354mgのアセトン(5ml)溶液に、無水炭酸カリウム402mgとプレニルブロマイド149mgをアセトン2mlと共に加え、室温下6時間撹拌した。不溶物を瀘去後、瀘液を減圧下濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー(カラム:YMC−GEL ODS−AM120−S5、20mm i.d.×500mm、溶媒:50%アセトニトリル水溶液)に付し、10gずつフラクションを集めた。Fr.43〜50に化合物(I−1)が溶出され、減圧下濃縮しアセトニトリルを除いた後、残渣を酢酸エチルで抽出、無水硫酸ソーダで乾燥、濃縮乾固して純粋な化合物(I−1)を138mg得た。
試験例1 マウス脾細胞の試験管内マイトジェン反応における抑制効果
1−1.コンカナバリンA(ConA)反応抑制効果
96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにBDF1マウス脾細胞5×105個を0.1mlの10%牛胎仔血清加RPMI1640培地(炭酸水素ナトリウム2mM、ペニシリン50単位/ml、ストレプトマイシン50μg/mlおよび2−メルカプトエタノ−ル5×10-5Mを添加)に浮遊したものを加え、その各ウェルにマイトジェンとしてConA5μg/mlと、化合物(I−1)、化合物(I−2)、化合物(I−3)を種々の濃度で加え、各ウェルの最終容量を0.2mlとした。各本発明化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、上記RPMI1640培地にて希釈し最終濃度100ng/ml以下になるように添加した。96ウェルマイクロタイタ−プレ−トは、湿度100%、二酸化炭素5%、空気95%に保持された培養器内で37℃、48時間培養し、ハ−ベストする6時間前に3H−チミジン(18.5KBq/ウェル)でパルスラベルし、培養終了後セルハ−ベスタ−にて細胞を回収し、細胞に取り込まれた放射能の量を測定して細胞増殖活性の指標とした。対照にはConA無添加(−ConA)を用いた。結果を表1に示す。
表1に示すように、化合物(I−1)、(I−2)および(I−3)は、マウス脾細胞のConA反応を化合物濃度依存的に強く抑制した。
1−2.リポポリサッカライド反応抑制効果
上記1−1と同様の方法でコンカナバリンAをリポポリサッカライド(LPS、10μg/ml)に変え、反応の抑制効果を検討した。対照としてはLPS無添加(−LPS)を用いた。結果を表2に示す。
表2に示すように、化合物(I−1)、(I−2)および(I−3)は、マウス脾細胞のLPS反応を化合物濃度依存的に強く抑制した。
試験例2 化合物(I−1)の細胞増殖抑制効果
96ウェルマイクロタイタ−プレ−トの各ウェルに各種細胞株の細胞数を0.1mlのスケ−ルで加え、試験例1と同じ培養条件下で1日前培養し、0〜10000ng/mlとなるように化合物(I−1)を0.1ml添加した。そして3〜4日間培養を続け、培養終了後、6mg/mlのMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾ−ル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド](シグマ製)溶液を25μl各ウェルに加え、37℃にて4時間同一条件下で培養した。培養終了後、生成したホルマザンを、20%ドデシルナトリウムスルホン酸(SDS)の0.02N塩酸溶液を50μl加え37℃で24時間放置して溶解させた。生細胞数に比例して生成したホルマザンを、570nmのフィルタ−を装着したイムノリ−ダ−(InterMed)で吸光強度(OD)を測定した。(ザ・ジャ−ナル・オブ・イムノロジカル・メソッド(The Journal of Immunological Method、65巻,55〜63頁,1983年参照)。そして、化合物(I−1)の濃度と吸光強度との相関より50%の細胞増殖阻止濃度(IC50値)を算出した。結果を表3に示す。
表3に示すように化合物(I−1)は、正常肺細胞CCD−19Luには作用せず、腫瘍細胞に対してのみ強い細胞増殖抑制効果がみられた。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを除く上記処方成分を均一に混合した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース8%(w/w)水溶液を結合剤として湿式造粒法にて打錠用顆粒を調製した。これにステアリン酸マグネシウムを混合した後、打錠機を用いて直径7mm、1錠重量130mgに形成し、内服錠とした。
発明の効果
以上の試験例から明らかなように、本発明化合物(I)は強い免疫抑制作用、抗炎症作用および腫瘍細胞増殖抑制作用を示す。従って、本発明化合物(I)は免疫抑制剤、抗炎症剤および抗癌剤として非常に有用である。
Claims (9)
- アスペルギルス カンディダス RF−5762(Aspergilluscandidus RF−5762)(FERM BP−5882)を培養し、得られた培養物から請求の範囲第1項記載の化合物を採取することを特徴とする該化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物の製造方法。
- 請求の範囲第1項記載の化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とする医薬。
- 請求の範囲第1項記載の化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とする免疫抑制剤。
- 請求の範囲第1項記載の化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とする抗炎症剤。
- 請求の範囲第1項記載の化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とする抗癌剤。
- 免疫反応の抑制、炎症の治療または予防および癌の治療のための医薬を製造するための、請求の範囲第1項記載の化合物もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの水和物の使用。
- 請求の範囲第1項記載の化合物を産生するアスペルギルス カンディダスRF−5762(Aspergillus candidus RF−5762)(FERM BP−5882)。
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