JP4061700B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華法等の気相法を用いて炭化珪素等の単結晶を成長させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素(SiC)単結晶は半導体基板等の材料として有用であり、例えば、昇華法によって製造することができる。昇華法は、黒鉛製のルツボを用いてその底部にSiC原料粉末を配するとともに、SiC原料粉末に対向するルツボ内壁面に種結晶を接合し、原料粉末を加熱、昇華させたガスを種結晶上で再結晶させて単結晶を成長させるものである。
【0003】
昇華法によって単結晶を成長させる場合、成長結晶径は種結晶径により制限される。種結晶としては、通常、アチソン法による単結晶が用いられるが、現状では、アチソン法で十分径の大きい単結晶が得られないため、これを種結晶として大口径の単結晶を直接得ることは難しい。このため、大口径の単結晶を得る方法として、特開平6−48898号公報に記載されるように、単結晶部の周囲にある多結晶部を除去しながら、結晶成長の行程を繰り返し行うことにより、単結晶を大きくしていく方法、特開平6−227886号公報に記載されるように、単結晶の成長速度が面方位に依存することに着目し、種結晶の側面の面方位を(0001)面、(1−100)面のいずれからも傾いた面とすることで、径の拡大を図る方法等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の方法では、径方向の拡大率が十分とはいえず、大口径化するには、得られた単結晶を種結晶としてさらに結晶成長を繰り返す必要がある。このため、製作に手間がかかり、コスト高になりやすいという問題があった。
【0005】
一方、シリコン基板上にSiC単結晶をCVD法(化学的気相エピタキシャル成長法)等によりエピタキシャル成長させ、シリコン(Si)基板を除去して得られるSiC単結晶膜を、種結晶として用いる方法が知られている。Si基板は、アチソン結晶より大口径のものが得られているため、その上にSiC単結晶膜を成長させることで、種結晶の大口径化が期待できる。
【0006】
ところが、この方法を用いて大口径のSiC単結晶膜を成長させた場合、得られるSiC単結晶膜にクラックや反りが生じやすい等の不具合があることが判明し、未だ実用化には至っていない。
【0007】
しかして、本発明の目的は、大口径の単結晶を、より簡易な方法で効率よく得ることができ、製作コストの低減が可能な単結晶の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、種結晶上に原料ガスを供給して単結晶を成長させる単結晶の製造方法において、上記種結晶として、各単結晶間に空隙が形成されないように同一面内に密接配置され、成長面の面方位を中心部と周辺部とでわずかに傾けた複数の単結晶の集合体を用いることを特徴とするものである(請求項1)。これにより、例えばアチソン法によるSiC単結晶を組み合わせて、任意の径の種結晶を得ることができ、従来にない大口径のSiC基板を得ることが可能である。
【0009】
例えば、軸方向を結晶の優先成長方向とする中心部に対し、周辺部の優先成長方向をわずかに外方に傾けると、その径方向成分により、周辺部では、径方向の成長速度が速くなる。上記種結晶を構成する各単結晶間の面方位が大きくずれない程度にその傾きを小さくすれば、単結晶の成長が十分可能であり、径の拡大が容易になされる。
【0010】
複数の単結晶を種結晶とする際、各単結晶の加工精度を高めて隣合う単結晶間の隙間をなくすことで、境界部の影響を極力小さくし、単一の種結晶と同様に機能させることが可能である。よって、例えばアチソン法によるSiC単結晶を組み合わせて、任意の径の種結晶を得、従来にない大口径のSiC基板を得ることが可能である。あるいは、品質の良好な部分を利用して、小径かつ高品位の多数のSiC基板を製作することもできる。いずれも場合も、結晶成長を繰り返し行う等の必要がないので、製作工程が簡略化でき、製作コストの大幅な低減が可能である。
【0016】
上記方法により成長可能な単結晶としては、例えば、炭化珪素が挙げられ(請求項2)、大口径化によるメリットが大きい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明方法を炭化珪素(SiC)単結晶の成長に適用した例について説明する。図1(a)は、本発明に用いる単結晶製造装置の概略図で、黒鉛製のルツボ1は上端開口の容器体11と蓋体12からなる。ルツボ1内には、底部に原料粉末2としてのSiC粉末が収容してあり、原料粉末2に対向する蓋体12の下面中央部には種結晶3が配置してある。
【0018】
種結晶3は、図1(b)に示す参考例のように、複数の小口径のSiC単結晶31の集合体からなる。各SiC単結晶31は、成長面の面方位が同じになるように、かつ隣り合う単結晶31間に空隙が形成されないように、予め所定形状に成形されており、これらSiC単結晶31を、面内の結晶方向(図中に矢印で示す)が一致するように、同一面内の所定位置に密接して配置して種結晶3とする。
【0019】
種結晶3を構成するSiC単結晶31としては、例えばアチソン法による単結晶、またはアチソン結晶から成長させた昇華法単結晶等を用いることができる。各SiC単結晶31の形状、サイズ等は、特に制限されず、所望の径、形状の種結晶3が得られるように、適宜組み合わせて使用すればよい。例えば、図1(b)では、それぞれ略矩形、略三角形等に加工した9個のSiC単結晶31を同一面上に密接させて配置して、円板形状の種結晶3を構成している。
【0020】
SiC単結晶31の加工方法は、隣り合う単結晶31間に空隙が形成されないような精度よい加工が可能な方法であれば、どのような方法によってもよい。例えば、ELID研削で大体の外形を整えた後、研磨して形状成形するとともに表面の傷を取り除く方法、レーザー加工法等を用いることができる。いずれの場合も、加工精度が高いほど、各単結晶31間の境界部の影響を小さくし、その上に成長する単結晶の品質を向上させることができる。さらにRIEエッチングを行って表面の加工ひずみ層を取り除いてもよい。
【0021】
上記図1(a)の装置を用いて、SiC単結晶を成長させる場合には、種結晶3を構成する複数のSiC単結晶31を、台座となる蓋体12下面の所定位置に接合し、蓋体12を容器体11の上端開口に設置する。容器体11の底部にはSiC原料粉末2が充填してあり、種結晶3はこれに対向して位置する。このルツボ1を、加熱装置内に配設し、不活性ガス雰囲気中、減圧下で、所定温度に加熱すると、原料粉末2が昇華し始め、この昇華ガスGが種結晶3表面で再結晶して、種結晶3上にSiC単結晶4が成長する。この時、単結晶が成長する種結晶3側が原料粉末2側より低温となるように、ルツボ1内に温度勾配を設けるとよい。
【0022】
上記方法によれば、種結晶3を複数の単結晶31の集合体で構成したので、その使用個数を適宜選択することで、任意の径とすることができる。また、複数の単結晶31は、成長面の面方位、結晶方向が一致しており、各単結晶31間に空隙を有しないように成形されているので、結晶全面にわたり結晶面、結晶方向が同一で、面全体に連続性が保たれた品質の良好な単結晶を成長させることが可能である。よって、1回の結晶成長で、従来にない大口径のSiC単結晶4を得ることができる。従って、所望の径とするために繰り返し結晶成長を行う必要がなく、製造コストの大幅な低減が可能である。また、得られた単結晶から多数の小口径の基板を切り出すことももちろんできる。この場合、境界部の影響を小さくすることができるので、簡易な方法で、高品質の多数の基板を一度に得ることができ、経済性に優れる。
【0023】
上記種結晶3は複数の単結晶31を密接配置して構成したが、単結晶の成長に影響を及ぼさない材料よりなる隔壁によって互いに区画され、成長面の面方位および面内の結晶方向を一致させて同一面内に配置した複数の単結晶の集合体を用いることもでき、成長結晶を大口径化する同様の効果が得られる。
【0024】
図2は、その具体的構成を示すもので、図中、種結晶5は、エピタキシャル成長により形成される多数のSiC単結晶膜51と、これらSiC単結晶膜51を区画する隔壁52とからなる。隔壁52は、通常、シリコン(Si)基板上にパターニングにより形成され、SiC単結晶膜51の形成時に発生する内部応力を緩和する作用を有する。隔壁52を構成する材料としては、SiC単結晶の成長に影響を及ぼさない材料で、1400℃以上の耐熱性を有し、かつパターニング可能な材料が望ましく、例えば、二酸化珪素(SiO2 )、窒化珪素(Si3 N4 )、炭化珪素(SiC)多結晶またはシリコン(Si)多結晶等が使用できる。特に、SiO2 は軟化温度が1600℃であり、Si基板上であれば弗酸により選択比よくエッチングできるためパターニング性が良好で、隔壁52材料として好適である。
【0025】
SiC単結晶膜51は、隔壁52を形成したSi基板上に、例えば、CVD法(化学的気相エピタキシャル成長法)等により、SiC単結晶をエピタキシャル成長させてなる。ここでは、隔壁52を格子状に形成し、各SiC単結晶膜51の形状が矩形(周辺部では略矩形ないし略三角形)となるようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。成長結晶への隔壁52の影響を小さくするには、各SiC単結晶膜51が大きく、隔壁52の幅が小さいほどよいが、特に制限されるものではない。各SiC単結晶膜51上に成長する単結晶をそれぞれ基板材料として利用する場合には、その用途に応じてサイズ、形状を決定してもよく、例えば、パワーデバイスへの応用を考えた場合には、通常、1cm角程度とする。
【0026】
種結晶5を製作する方法としては、まず、Si基板等のSiC以外の単結晶基板上に、熱酸化法等によりSiO2 膜を堆積する。次いで、このSiO2 膜の所定位置を、レジストをマスクとしてエッチングし、パターニングして隔壁52を形成する。その後、所定位置に隔壁52を形成したSi基板上にCVD法等によりSiC単結晶膜51をエピタキシャル成長させる。その後、Si基板を除去することにより種結晶5が得られる。
【0027】
この種結晶5を台座に張り付け、図1(a)に示した装置を用いて、同様の方法でSiC単結晶を成長させることができる。この場合、予めSi基板上に隔壁52を形成して、SiC単結晶膜51を複数の部分に区画したので、成膜時の内部応力が緩和され、クラックや反りの発生を防止する効果を有する。よって、種結晶5を任意の径とすることができ、この上に大口径のSiC単結晶を成長させることができる。
【0028】
本発明方法では、種結晶を構成する複数の単結晶の面方位を完全に一致させず、わずかに傾けて構成する。図3(a)、(b)はその一例を示すもので、種結晶6は、中央部のSiC単結晶61と周辺部のSiC単結晶62を、同一面内に、各単結晶間に空隙が形成されないように密接配置してなる。ここで、中央部のSiC単結晶61は、軸方向を結晶の優先成長方向(図(a)矢印)とするように成長面の面方位を決定しており、これに対し、周辺部のSiC単結晶62では、結晶の優先成長方向が軸方向よりやや外方を向くように、成長面の面方位をわずかに傾けている。
【0029】
この時、図3(c)に示すように、種結晶6上に成長する単結晶7は、中心部では軸方向に早く成長するが、周辺部では傾いた方向に優先的に成長しようとする。そして、周辺部では径方向の分解ベクトル分bが径拡大方向に成長速度を与えるため、大口径の単結晶7が得られる。ただし、中央部のSiC単結晶61と周辺部のSiC単結晶62の面方位の傾きが大きくなると、得られる単結晶の品質が低下するため、傾きはできるだけ小さい方がよく、各SiC単結晶の境界部におけるずれが最大でも10°程度となるようにすることが望ましい。
【0030】
なお、図3の種結晶6は、中央部のSiC単結晶61を円形とし、周辺部のSiC単結晶62を扇形に形成したが、それぞれ、他の形状としてももちろんよい。
【0031】
このように、本発明方法では、種結晶を構成するSiC単結晶の形状は任意に設定することができる。例えば、図4のように、種結晶8を構成する複数のSiC単結晶81を六角形とすれば、設置位置が制限されず、面方向も合わせやすい。従って、予め、同一形状、同一サイズのSiC単結晶81を多数形成しておけば、容易に任意の径の種結晶8を得ることができる。また、SiCは六方晶(4H、6H)なので、六角形の自形をもつため、面方向が分かりやすい等の利点がある。
【0032】
上記各実施の形態では、SiC単結晶の製造について説明したが、本発明に基づいて製造可能な単結晶はSiCに限られるものではなく、例えば、ZnSe、ZnS、CdS、CdSe、AlN、GaN、BN等、昇華法等の気相法により成長可能な単結晶のいずれに適用してもよい。
【0033】
【参考例】
(参考例1)
上記図1(a)に示した黒鉛製ルツボ1を用い、図1(b)に示した種結晶3上に、実際にSiC単結晶4を成長させた。台座となる蓋体12下面に種結晶3を貼り付け、底部に原料粉末2として成長に十分な量のSiC粉末を充填した容器体11の上端開口に固定した。この時、種結晶3は、アチソン法により得られた複数の単結晶31を、成長面の面方位が(0001)面となるように成形し、所定形状に加工したものを密接配置して、直径=10cmの円板状に形成した。
【0034】
このルツボ1内を、図略の真空排気系にて排気してアルゴンガス雰囲気に置換した。その後、図略の加熱装置内にて、原料粉末2が2300℃、種結晶3が2230℃となるように加熱し、温度が安定した後、雰囲気圧を約500Torrから約1Torrに減圧した。雰囲気圧を約1Torrに保持し、原料粉末2を昇華させて、種結晶3上にSiC単結晶4を成長させた。数時間後、加熱を停止し、アルゴンガスを導入することにより雰囲気圧を上げ、単結晶成長を終了した。
【0035】
上記の成長条件で単結晶成長を行うことにより、成長速度0.5mm/時間でSiCインゴットが得られた。このSiCインゴットからSi面に切り出したウェハについて、X線回折を行ったところ、単結晶であることが確認された。また、溶融KOHで500℃、10分間のエッチングを行った結果、エッチピットが種結晶3を構成する複数の単結晶31の境界部付近に見られたが、粒界の形成は見られず、成長結晶全面にわたって単一の結晶が成長していた。
【0036】
(参考例2)
以下の方法で、上記図2に示した種結晶5を作製した。まず、面方位が(111)のSiウエハ上に、熱酸化法によりSiO2 膜を形成した。この時、1100℃、2時間のウェット酸化を行い、約1μmのSiO2 膜が形成した。この表面をレジストにて被覆し、所定位置をホトリソグラフィーにより開口した。開口部の形状は、正方形(約1cm角)とし、外周部では周縁に沿う形状とした。その後、開口部より露出するSiO2 膜を弗酸によりエッチングしパターニングした。パターニング後、レジストを剥離し、5%の弗酸で、1分間洗浄した。さらに超純粋洗浄を行った後、乾燥させた。
【0037】
このようにして表面の所定位置に隔壁52を形成したSiウエハ上に、CVD法によりSiC膜を形成した。このCVD法では、シラン(2sccm)、プロパン(2sccm)をキャリアガス水素(10slm)に希釈し、圧力100mbarの条件下で、1380℃までSiウエハを加熱し、10時間でSiC膜を約20μm堆積した。この時、Siウエハ上のシリコン露出部にはSiC単結晶膜がエピタキシャル成長し、面方位はSiウエハと同じく(111)となる。一方、非結晶のSiO2 からなる隔壁52上には多結晶SiCが堆積する。このSiウエハを冷却した後、CVD装置から取出して種結晶5とした。
【0038】
得られた種結晶5を用い、上記実施例1と同様の方法で、単結晶の成長を行った。これに先立って、Siの融点以上に昇温することにより、Siを溶融してSiウエハを除去した。得られたSiCインゴットからSi面に切り出したウェハについて、X線回折を行い、単結晶が成長していることを確認した。また、溶融KOHで500℃、10分間のエッチングを行った結果、エッチピットが種結晶5の隔壁52付近に見られたが、粒界の形成は見られず、成長結晶全面にわたって単一の結晶が成長していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明方法に基づく単結晶製造装置の全体概略断面図、図1(b)は本発明方法で用いられる種結晶の構造を示す概略図である。
【図2】図2は本発明方法で用いられる種結晶構造の他の例を示す概略図である。
【図3】図3(a)は本発明方法で用いられる種結晶構造の他の例を示す概略斜視図、図3(b)は種結晶の概略正面図、図3(c)はこの種結晶を用いて単結晶を成長させた時の作用効果を説明するための図である。
【図4】図4は本発明方法で用いられる種結晶構造の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ルツボ
11 容器体
12 蓋体
2 原料粉末
3 種結晶
31 SiC単結晶
4 単結晶
5 種結晶
51 SiC単結晶
52 隔壁
6 種結晶
61、62 SiC単結晶
7 成長結晶
8 種結晶
81 SiC単結晶
Claims (2)
- 種結晶上に原料ガスを供給して単結晶を成長させる単結晶の製造方法において、上記種結晶として、各単結晶間に空隙が形成されないように同一面内に密接配置され、成長面の面方位を中心部と周辺部とでわずかに傾けた複数の単結晶の集合体を用いることを特徴とする単結晶の製造方法。
- 上記単結晶が炭化珪素である請求項1記載の単結晶の製造方法。
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