JP4061522B2 - ポリアゾールポリマー系組成物及びそれを主成分とする膜、並びにポリアゾール系ポリマー組成物の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質膜として有用な膜及び、その主成分のポリアゾール系ポリマー組成物、並びに該組成物の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を挙げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン導電率と共に化学的、熱的、電気化学的及び力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちる他、膜の軟化も顕著となる。このため、将来が期待されるメタノールを燃料とする燃料電池においては、膜内のメタノール透過による性能低下が起こり、十分な性能を発揮することはできない。また、現在主に検討されている水素を燃料として80℃付近で運転する燃料電池においても、膜のコストが高すぎることが燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
【0003】
このような欠点を克服するため、芳香族環含有ポリマーにイオン性基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。例えば、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(Journal of Membrane Science, 83, 211(1993))、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(特開平6−93114号公報)、スルホン化ポリスチレン等である。しかしながら、これらのポリマーを原料として芳香環上に導入されたスルホン酸基は酸又は熱により脱スルホン酸反応が起こりやすく、燃料電池用電解質膜として使用するには耐久性が十分であるとは言えない。
ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリスチレン等に比べてさらに耐熱性を有するポリマーとして、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサゾールなどのポリアゾール系ポリマーが挙げられる。
【0004】
スルホン酸を含有したポリベンズイミダゾールについては、J. Polym. Sci., Polym. Chem., 15, 1309(1977)における3,3’−ジアミノベンジジンと3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸又は4,6−ジカルボキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸から合成するものが、米国特許第5312895号公報では1,2,4,5−ベンゼンテトラミンと2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸を主成分として合成するものが報告されている。これらの報告では、電解質膜用途などスルホン酸基が持つ電気化学的特性について顧みられることはなかった。
【0005】
一方、スルホン酸基含有のポリベンズオキサゾールやポリベンズチアゾールを中心にしたものについても、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオールと3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸又は4,6−ジカルボキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸から合成するものがJ. Polym. Sci., Polym. Chem., 34, 481(1996)に、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールと3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸によるものが特開平10−158213号公報に、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールとテレフタル酸などからなるものをスルホン化したものが特開平4−353533号公報に、2,5−ジカルボキシスルホン酸と各種ジアミンジオールやジアミンジチオールからなるものが米国特許第5492996号公報に見られる。しかしながら、これらのいずれにおいてもスルホン酸基をプロトンイオンを伝導させる官能基として着目しているものはない。例えば、米国特許第5492996号公報においては、ポリマーのアルコール溶解性を引き出すためにスルホン酸基をアルキルアンモニウム化処理することが特徴となっているが、上述のメタノール燃料型燃料電池などへの応用でアルコール溶解性があることは致命的欠点であることからも明らかである。
【0006】
また、スルホン酸基よりは耐熱性に優れると考えられるホスホン酸含有の芳香族ポリマーについて、高分子電解質の視点から着目したものはあまり見られない。例えば、米国特許第5498784号公報において4,4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン)ビス(2−アミノフェノール)からなるポリベンズオキサゾールにおいて、ジカルボン酸成分の5%〜50%を3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸とするポリマーが報告されているが、溶解性の良さと複合材料としての可能性に着目しているが、電池用途の高分子電解質としては考慮されることはなかった。実際、このポリマーはアルコール溶解性が特徴であり、メタノールを燃料とする燃料電池用の電解質膜と使用することに適さないことは明白である。また、特開平11−286545号公報では、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸を始めとする含リンポリアミド共重合体が報告されているが、これもその耐熱性に着目した性質しか調べられていない。
【0007】
イオン性基含有ポリアゾール系ポリマーは、単独で膜などの成形体の形態を保持できないものが多かった。これはポリマー主鎖の化学構造に加え、イオン性基の導入によって重合度の低いポリマーしか得られないことも理由として考えられる。そのため、プロトン交換膜など高分子電解質として利用できるポリマーはごく一部であった。また、成形可能なポリマーであっても、強度など機械特性は満足できるものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、機械特性に優れた膜の主成分として用いることのできるイオン性基含有ポリアゾール系ポリマー組成物及び該ポリマー組成物より得られる膜、並びに該ポリマー組成物の成形方法の提供である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、成形性に乏しいイオン性基含有ポリアゾール系ポリマーであっても、イオン性基を含有しないポリアゾール系ポリマーを配合した組成物とすることで良好な成形性を示すことを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(1) (A)イオン性基を含まないポリアゾール系ポリマーと、(B)イオン性基を有するポリアゾール系ポリマーとからなるポリマー組成物であり、
(2) (A)が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるポリマーであることを特徴とする(1)に記載のポリマー組成物であり、
【0011】
【化19】
【0012】
【化20】
【0013】
【化21】
[式中、XはO、S原子もしくはNH基のいずれかを表す。]
【0014】
(3) イオン性基がスルホン酸基もしくはホスホン酸基であることを特徴とする(1)又は(2)のポリマー組成物であり、
(4) (B)が下記一般式(4)もしくは(18)のいずれかで表されるポリマーであることを特徴とする(1)〜(3)記載のポリマー組成物。であり、
【0015】
【化22】
[一般式(4)において、Z1は−SO3H基もしくは−PO3H2基を、n1は0.1以上1.0以下の数を、m1は1〜4の整数を、A1及びA2は下記一般式(5)〜(8);
【0016】
【化23】
【0017】
【化24】
【0018】
【化25】
【0019】
【化26】
【0020】
で表される構造より選ばれる2価の基をそれぞれ表す。A1及びA2は同一であっても異なっていてもよい。B1は二価の芳香族基を表す。一般式(5)〜(8)においてX1は、S、O原子、−NH−基、及び下記一般式(9);
【0021】
【化27】
で表される構造より選ばれる基をそれぞれ表す。式(9)においてRは炭素数1〜10のアルキレン基、アラルキル基、芳香族基を表す。一般式(7)及び(8)においてX2は、下記一般式(10)〜(17);
【0022】
【化28】
【0023】
【化29】
【0024】
【化30】
【0025】
【化31】
【0026】
【化32】
【0027】
【化33】
【0028】
【化34】
【0029】
【化35】
【0030】
で表される構造より選ばれる基を表す。]
【0031】
【化36】
【0032】
[一般式(18)において、Z2は−SO3H基もしくは−PO3H2基を、n2は0.1以上1.0以下の数を、m2は1〜3の整数を、X3、X4は、S、O原子、−NH−基、及び一般式(9)で表される構造より選ばれる基を、それぞれ表す。X3及びX4は同一であっても異なっていてもよい。一般式(9)においてRは炭素数1〜10のアルキレン基、アラルキル基、芳香族基を表す。]
(5) (1)記載のポリマー組成物を主成分とする膜であり、
(6) (A)イオン性基を含まないポリアゾール系ポリマーと、(B)イオン性基を有するポリアゾール系ポリマーの混合溶液を成形加工するポリマー組成物の成形方法、である。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
【0034】
本発明でいうイオン性基含有ポリアゾールとは、イオン性基を含有する芳香族系のポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリイミダゾール類及びそれらが混在する組成物や共重合体をさす。一般的には下記一般式(19)のような繰り返し単位構造で示すことができる。
【0035】
【化37】
【0036】
[但し、一般式(19)において、Rはアゾール環を形成できる4価の芳香族基を示し、XはO、S、又はNHを表し、NHの場合はHがイオン性基を含む基で置換されていてもよい。R’は二価の芳香族基を示し、R’のすべて又は一部にイオン性基を有している。R、R’はいずれも単環であっても、複数の芳香環の結合体、あるいは縮合環であってもよく、イオン性基以外の安定な置換基を有していてもよい。また、R、R’の芳香環中にN,S,O等が存在するヘテロ環構造を有していてもかまわない。]
【0037】
また、一般式(19)と共に下記一般式(20)で示すような繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0038】
【化38】
(ここでXはO、S、又はNHを表し、R”はアゾール環を形成できる三価の芳香族基を示す。XがNHの場合はHがイオン性基を含む基で置換されていてもよい。)
【0039】
イオン性基としては、アミン、酸などイオンとして解離可能な基を表し、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が好ましい。中でも、スルホン酸基及びホスホン酸基がさらに好ましい。
【0040】
上記一般式(19)で示す本発明のスルホン酸含有ポリアゾールを合成する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すアゾール環を形成できる4価の芳香族基単位を形成する芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミン及びそれらの誘導体から選ばれる化合物と、R’で示す二価基を形成するジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる化合物の反応により合成することができる。その際、使用するジカルボン酸の中にイオン性基を含有するジカルボン酸を使用することで、得られるポリアゾール中にイオン性基を導入することができる。
【0041】
また、予め重合しておいたイオン性基を含有しないポリアゾールにイオン性基を導入してもよい。例えば、発煙硫酸、濃硫酸、無水硫酸及びその錯体、プロパンサルトンなどのスルトン類、α−ブロモトルエンスルホン酸、クロロアルキルホスホン酸などを用いることができる。例えば、高分子加工,49,146(2000)に記載されているようなN,N’−ジメチルアセトアミド中でポリベンズイミダゾールに1,3−プロパンサルトンを開環付加させることによるアルキルスルホン化や、特開平4−353553号公報に記載された、無水硫酸によるポリベンズオキサゾールのスルホン化などを挙げることができる。これらの化合物は、ポリアゾールに直接反応させてもよいし、ポリアゾールを適当な溶媒に溶解して反応させてもよい。
【0042】
芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミンの具体例としては、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジチオール、1,2,4,6−テトラアミノベンゼン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジオール、3,3’−ジジメルカプトベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジチオール、3,3’−ジアミノベンジジン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)スルフィド、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)メタン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)スルホン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、ビス(3,4,−ジアミノフェノキシ)ベンゼン、等が挙げられるがこれらに限定されることはない。また、これらの化合物を同時に複数使用することもできる。
【0043】
中でも、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジチオール、1,2,4,6−テトラアミノベンゼン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジオール、3,3’−ジジメルカプトベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジチオール、3,3’−ジアミノベンジジンが好ましく、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジチオール、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジオール、3,3’−ジジメルカプトベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジチオールがさらに好ましい。
【0044】
これらの芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミンは、必要に応じて塩酸、硫酸、リン酸などの酸との塩でもあってもよく、塩化すず(II)や亜リン酸化合物など公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0045】
イオン性基含有ジカルボン酸は、芳香族系ジカルボン酸中に1個から4個のイオン性基を含有するものを選択することができる。スルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸としては、例えば、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、4,6−ジカルボキシ−1,3−ジスルホン酸、などのスルホン酸含有ジカルボン酸及びこれらの誘導体を挙げることができる。またホスホン酸基含有芳香族ジカルボン酸としては、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ビスホスホノテレフタル酸、などのホスホン酸含有ジカルボン酸及びこれらの誘導体を挙げることができる。これらのイオン性基含有ジカルボン酸基のイオン性基は、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニア、アミンなどと塩を形成していてもよい。これらのイオン性基含有ジカルボン酸は1種類だけでなく数種類を混合したり、イオン性基を含有しないジカルボン酸と共に共重合の形で導入することができる。
【0046】
イオン性基を含有するジカルボン酸の純度は特に制限されるものではないが、98%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。イオン性基を含有するジカルボン酸を原料として重合されたポリアゾールは、イオン性基を含有しないジカルボン酸を用いた場合に比べて、重合度が低くなる傾向が見られるため、イオン性基を含有するジカルボン酸はできるだけ純度が高いものを用いることが好ましい。
【0047】
上記イオン性基含有ジカルボン酸と共に使用できるジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等ポリエステル原料として報告されている一般的なジカルボン酸及びその誘導体を使用することができ、ここで例示したものに限定されるものではない。イオン性基を含有しないジカルボン酸の使用量は特に限定されるものではないが、一般には全ジカルボン酸に対して0〜90モル%であることが好ましく、0〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0048】
上記のイオン性基含有ジカルボン酸及びそれと共に使用するジカルボン酸の誘導体とは、酸クロライド、酸無水物、金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、エステル、アミドなどを挙げることができる。また、カルボキシル基の代わりにシアノ基やトリハロメチル基など同等の反応をすることができる基を有していてもよい。
【0049】
上記一般式(20)で示されるポリアゾール単位を導入する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すアゾール環を形成できる三価の芳香族基単位を形成するオルト位にアミノ基を2個持つ芳香族カルボン酸、オルト位の関係でアミノ基とヒドロキシル基を持つ芳香族カルボン酸、オルト位の関係でアミノ基とメルカプト基を持つ芳香族カルボン酸及びそれらの誘導体から選ばれる化合物の重合により得ることができる。
【0050】
本発明のイオン性基含有ポリアゾールとして好ましい構造は一般式(4)又は(18)で示すことができる。
【0051】
【化39】
【0052】
[一般式(4)において、Z1は−SO3H基もしくは−PO3H2基を、n1は0.1以上1.0以下の数を、m1は1〜4の整数を、A1及びA2は下記一般式(5)〜(8);
【0053】
【化40】
【0054】
【化41】
【0055】
【化42】
【0056】
【化43】
【0057】
で表される構造より選ばれる2価の基をそれぞれ表す。A1及びA2は同一であっても異なっていてもよい。B1は二価の芳香族基を表す。一般式(5)〜(8)においてX1は、S、O原子、−NH−基、及び下記一般式(9);
【0058】
【化44】
【0059】
で表される構造より選ばれる基をそれぞれ表す。一般式(9)においてRは炭素数1〜10のアルキレン基、アラルキル基、芳香族基を表す。一般式(7)及び(8)においてX2は、下記一般式(10)〜(17);
【0060】
【化45】
【0061】
【化46】
【0062】
【化47】
【0063】
【化48】
【0064】
【化49】
【0065】
【化50】
【0066】
【化51】
【0067】
【化52】
【0068】
で表される構造より選ばれる基を表す。]
【0069】
【化53】
【0070】
[一般式(18)において、Z2は−SO3H基もしくは−PO3H2基を、n2は0.1以上1.0以下の数を、m2は1〜3の整数を、X3、X4は、S、O原子、−NH−基、及び一般式(9)で表される構造より選ばれる基を、それぞれ表す。X3及びX4は同一であっても異なっていてもよい。一般式(9)においてRは炭素数1〜10のアルキレン基、アラルキル基、芳香族基を表す。]
【0071】
一般式(4)、(18)において、n1、n2は、それぞれの繰り返し単位のモル比を表す。一般式(4)、(18)におけるn1、n2は0.5〜1.0であることが、m1、m2は1もしくは2であることが、それぞれ好ましい。一般式(7)、(8)におけるX2は式(10)、(11)、(16)で表される基であることがさらに好ましい。一般式(5)〜(8)、(18)におけるX1、X3、X4は、S、O原子であることが好ましい。一般式(4)における二価の芳香族基B1の例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、ナフタレン基、ジフェニレンエーテル基、ジフェニレンスルホン基、ビフェニレン基、ターフェニル基、2,2−ビス(4−カルボキシフェニレン)ヘキサフルオロプロパン基などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0072】
これらのイオン性基含有ポリアゾールの分子量は特に限定されるものではないが、1000〜1000000であることが好ましい。低すぎると、水への溶解など成形体から脱落してしまう恐れがある。
【0073】
これらのイオン性基含有ポリアゾールを上記モノマー類から合成する手法は、特には限定されないが、J.F.Wolfe, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Ed., Vol.11, P.601(1988)に記載されるようなポリリン酸を溶媒とする脱水、環化重合により合成することができる。また、ポリリン酸のかわりにメタンスルホン酸/五酸化リン混合溶媒系を用いた同様の機構による重合を適用することもできる。他に、適当な有機溶媒中や混合モノマー融体の反応でポリアミド構造などの前駆体ポリマーとしておき、その後の適当な熱処理などによる環化反応で目的のポリアゾール構造に変換する方法なども使用することができる。
【0074】
原料のイオン性基含有ジカルボン酸のイオン性基が塩を形成している場合、ポリマーのイオン性基も塩を形成している場合がある。必要に応じて、塩を形成しているイオン性基の一部又は全部を再沈や酸・塩基処理によって遊離のイオン性基にすることもできる。また、遊離のイオン性基の一部又は全部を動揺の処理で塩にすることもできる。本発明のイオン性基含有ポリアゾールは、イオン性基の一部がアルカリ金属などと塩を形成していてもよい。
【0075】
本発明でいうイオン性基を含まないポリアゾール系ポリマーとは、芳香族系のポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリイミダゾール類及びそれらが混在する組成物や共重合体をさす。一般的には下記一般式(21)のような繰り返し単位構造で示すことができる。
【0076】
【化54】
【0077】
[但し、一般式(21)において、Rはアゾール環を形成できる4価の芳香族基を示し、XはO、S、又はNHを表す。R’は二価の芳香族基を示す。R、R’はいずれも単環であっても、複数の芳香環の結合体、あるいは縮合環であってもよく、安定な置換基を有していてもよい。また、R、R’の芳香環中にN,S,O等が存在するヘテロ環構造を有していてもかまわない。]
【0078】
また、下記一般式(22)で示すような繰り返し単位でも示すことができる。
【化55】
(ここでXはO、S、又はNHを表し、R”はアゾール環を形成できる三価の芳香族基を示す。)
【0079】
また、一般式(21)及び(22)の両方を繰り返し単位とするポリマーであってもよい。
【0080】
イオン性基を含まないポリアゾールの好ましい例としては、、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスイミダゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスイミダゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズオキサゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズオキサゾール}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズチアゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズチアゾール}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズイミダゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズイミダゾール}、ポリ(2,6−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,5−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,6−ベンズチアゾール)、ポリ(2,5−ベンズチアゾール)、ポリ(2,6−ベンズイミダゾール)、ポリ(2,5−ベンズイミダゾール)などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。中でも、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ(2,6−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,5−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,6−ベンズチアゾール)、ポリ(2,5−ベンズチアゾール)が好ましい。
【0081】
イオン性基を含まないポリアゾールの重合度は対数粘度が2〜50dl/gの範囲であることが好ましい。あまり低すぎると組成物の成形性や機械特性が低下し、高すぎると加工性が悪くなる。より好ましくは5〜30dl/gである。
【0082】
本発明のポリアゾール系ポリマー組成物における、イオン性基を含まないポリアゾールの含有量は、1〜99重量%の範囲であることが好ましい。少なすぎると、成形性や機械特性が向上しなくなるし、多すぎると本来の目的である高分子電解質としての特性が失われてしまう。より好ましくは1〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。
【0083】
イオン性基含有ポリアゾールとイオン性基を含まないポリアゾールを混合する手段は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、両者を適当な溶媒に溶解して混合したり、溶融混練りしたり、粉砕して混合したりすることなどができるが、これらに限定されるものではない。中でも、両者を溶媒に溶解して混合する方法が好ましい。それぞれ溶解した溶液を混合してもよいし、一度に両者を混合してもよい。溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなど非プロトン極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸を用いることができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸を有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。低すぎると成形性が悪化し、高すぎると加工性が悪化する。好ましくは0.5〜5重量%である。
【0084】
本発明のポリアゾール組成物は、押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の方法で繊維やフィルムに成形することができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶液から成形体を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば加熱、減圧乾燥、ポリマーを溶解する溶媒と混和できるポリマー非溶媒への浸漬などによって、溶媒を除去しポリアゾール組成物の成形体を得ることができる。溶媒が有機溶媒の場合は、加熱又は減圧乾燥で溶媒を留去させることが好ましい。溶媒が強酸の場合には、水、メタノール、アセトンなどに浸漬することが好ましい。
【0085】
本発明のポリアゾール組成物を主成分とする膜を成形する好ましい方法は、溶液からのキャストである。キャストした溶液から前記のように溶媒を除去してポリアゾール組成物の膜を得ることができる。溶媒の除去は乾燥によることが膜の均一性からは好ましい。また、ポリマーや溶媒の分解や変質をさけるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することが好ましい。キャストする基板には、ガラス板やテフロン(登録商標)板などを用いることができる。溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。薄すぎると膜としての形態を保てなくなり、厚すぎると不均一な膜ができやすくなる。より好ましくは100〜500μmである。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
【0086】
本発明の膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。
【0087】
本発明のポリアゾール組成物はイオン伝導性に優れているため、フィルム、膜状にして燃料電池や電解装置などのイオン交換膜として使用するのに適している。さらに、本発明のポリマー構造を主成分にすることにより、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を作製するときのバインダー樹脂として利用することもできる。
【0088】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0089】
イオン伝導性測定:自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン((株)ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間の10KHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
ポリマー対数粘度:溶媒として硫酸もしくはメタンスルホン酸を用いてオストワルド粘度計を用いて測定した。硫酸を用いる場合は、0.5g/dlの硫酸溶液について30℃で測定した。また、メタンスルホン酸を用いる場合は、0.05g/dlのメタンスルホン酸溶液について25℃で測定した。
【0090】
実施例1
3,3’ジヒドロキシベンジジン(略号:HAB)1.730g(8.000x10-3mole)、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム(略号:SIA)1.430g(5.200x10-3mole)、テレフタル酸(略号:TPA)0.443g(2.800x10-3mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)24.98g、五酸化リン20.02gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温する。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温して1時間、190℃に昇温して5時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの硫酸溶液の対数粘度は0.80dl/gを示した。
合成したポリマー試料0.12gにメタンスルホン酸1.8gを加えて、数時間マグネティックスターラーで撹拌して溶解し、メタンスルホン酸溶液における固有粘度が24dl/gであるポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}の1重量%メタンスルホン酸ドープを4g加えて、さらに数時間撹拌し均一溶液とした。ホットプレート上でガラス板上に約400μm厚に流延し、1時間室温で放置した後、水中にガラス板を浸した。水を時々交換し、数日水浸漬を続ける。フィルムを取り出し、周りを固定して収縮を押さえながら風乾した。最後に減圧乾燥機により80℃終夜乾燥することでイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.039S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0091】
実施例2〜6
実施例1において、ジカルボン酸成分としてSIA、TPAに2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム(略号:STA)及び4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸(略号:DSDA)を組み合わせて混合比を変えて、合計で(8.000x10-3mole)になるようにして仕込む以外は、実施例1と同様にして重合及び各種測定を行った。測定結果を表1に示す。測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例7〜11
原料としてHABのかわりに3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン(略号:TAS)を用いて実施例1と同様の重合及び各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
実施例12
200mlガラス製セパラブルフラスコに、4,6−ジアミノレ ゾルシノール二塩酸塩(略号:DAR)7.443g(3.493 ×10−2mol)、STA6.090g(2.271×10−2 mol)及びTPA2.031g(1.223×10−2mol) 、ポリリン酸(五酸化リン含量84%)26.817g、五酸化リ ン15.693gを秤量し、窒素気流下70℃で0.5時間、12 0℃で5時間、135℃で13時間、190℃で5時間の順に攪拌しながらオイルバス中で加熱すると、深緑色の曳糸性のあるドープ が得られた。ドープはイオン交換水中に投入し、pH試験紙中性に なるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧 乾燥した。ポリマーのメタンスルホン酸溶液の対数粘度は、2.6 5dl/gを示した。
得られたポリマーを用いて、実施例1と同様にして、イオン伝導 性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝 導度は0.24S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり 安定した性能を保った。
【0096】
実施例13
原料としてSTA及びTPAのかわりにTPA3.772g(2. 291×10−2mol)、SIA3.279g(1.223×1 0−2mol)を用いた他は実施例12と同様にして重合したポリ マーから、実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを作 製した。ポリマーのメタンスルホン酸溶液の対数粘度は2.32d l/gだった。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.02 3S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能 を保った。
【0097】
実施例14
原料として、TPA及びSTAの代わりに3,5−ジカルボキシ フェニルホスホン酸(略号:DCP)8.598g(3.493× 10−2mol)を用いた他は実施例12と同様にして重合したポ リマーから、実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを 作製した。ポリマーのメタンスルホン酸溶液の対数粘度は1.35 dl/gだった。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.0 43S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0098】
実施例15
原料としてDAR 2.233g(1.048×10−2mol)、DCP 1.677g(6.812×10−3mol)、TPA 0.609g(3.668×10−3mol)、ポリリン酸(五酸化リン含量84%)39.832g、五酸化リン6.404gを用いた他は実施例12と同様にして重合したポリマーから、実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを作製した。ポリマーのメタンスルホン酸溶液の対数粘度は0.75dl/gだった。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.0012S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0099】
実施例16〜20
イオン性基を含有するポリアゾールとイオン性基を含まないポリアゾールの組成比を変更してフィルムを作製した。実施例1、7、12、13、15で重合したイオン性基含有ポリマー0.152gをメタンスルホン酸5.0gに加えて攪拌して溶解し、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}の1重量%メタンスルホン酸ドープを0.8gを加えてさらに攪拌して溶解した。得られた均一溶液から実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを作製した。得られたフィルムはやや脆かったため慎重な取扱いを要した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
実施例21〜25
イオン性基を含有するポリアゾールとイオン性基を含まないポリアゾールの組成比を変更してフィルムを作製した。実施例1、7、12、13、15で重合したイオン性基含有ポリマー0.096gをメタンスルホン酸1.2gに加えて攪拌して溶解し、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}の1重量%メタンスルホン酸ドープを6.4gを加えてさらに攪拌して溶解した。得られた均一溶液から実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを作製した。より強靭なフィルムが得られた。80℃95%RHにおけるイオン伝導度を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例26〜30
イオン性基を含有するポリアゾールとイオン性基を含まないポリアゾールの組成比を変更してフィルムを作製した。実施例1、7、12、13、15で重合したイオン性基含有ポリマー0.048gをメタンスルホン酸1.2gに加えて攪拌して溶解し、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}の1重量%メタンスルホン酸ドープを11.2gを加えてさらに攪拌して溶解した。得られた均一溶液から実施例1と同様にしてイオン伝導性測定用フィルムを作製した。さらに強靭なフィルムが得られた。80℃95%RHにおけるイオン伝導度を表5に示す。
【0104】
【表5】
【0105】
比較例1〜15
実施例1〜15で重合したイオン性基ポリアゾール0.15gをメタンスルホン酸5.8gに溶解した溶液をガラス板上に約300μmの厚みに展開して純水に浸漬したが、いずれのポリマーも評価可能なフィルムを形成しなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明のポリアゾール系ポリマー組成物により、燃料電池などの高分子電解質としても際立った性能を示す材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】HABとTPA/SIA(モル比34/66)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図2】HABとDSDA/SIA(モル比40/60)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図3】HABとTPA/STA(モル比34/66)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図4】TASとTPA/STA(モル比34/66)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズイミダゾールのIRスペクトル。
【図5】TASとTPA/SIA(モル比66/34)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズイミダゾールのIRスペクトル。
【図6】DARとTPA/STA(モル比33/67)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図7】DARとTPA/SIA(モル比67/33)で合成されたスルホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図8】DARとDCPで合成されたホスホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
【図9】DARとTPA/DCP(モル比33/67)で合成されたホスホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル。
Claims (2)
- (A)イオン性基を含まないポリアゾール系ポリマーと、(B)イオン性基を有するポリアゾール系ポリマーとからなるポリマー組成物の膜。
(A)は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるポリマーである。
[式中、XはO、S原子もしくはNH基のいずれかを表す。]
- (A)イオン性基を含まないポリアゾール系ポリマーと、(B)イオン性基を有するポリアゾール系ポリマーの混合溶液を成形加工することを特徴とするポリマー組成物の膜を成形する方法。
(A)は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるポリマーである。
[式中、XはO、S原子もしくはNH基のいずれかを表す。]
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